JP2004020469A - 表面形状計測方法及びその方法のプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】測定対象物の全ての部分において、復元誤差を少なくした表面形状を計測できるような表面形状計測方法等を得る。
【解決手段】計測対象物16の表面との距離を計測するための距離センサ11〜15を配置し、計測対象物16との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行って計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法において、演算回路18は、距離センサ11〜15において同時計測された距離に基づいて差分値を算出する工程と、高速フーリエ変換を行って差分値について周波数領域に変換して周波数毎に定められた倍率で補正し、再度逆変換した値をその移動距離における表面形状を表す値とする工程とを有し、高速フーリエ変換を行う際差分値のデータ数を2のべき乗とするためのダミーデータを直流成分が0となるような値にするものである。
【選択図】 図1
【解決手段】計測対象物16の表面との距離を計測するための距離センサ11〜15を配置し、計測対象物16との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行って計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法において、演算回路18は、距離センサ11〜15において同時計測された距離に基づいて差分値を算出する工程と、高速フーリエ変換を行って差分値について周波数領域に変換して周波数毎に定められた倍率で補正し、再度逆変換した値をその移動距離における表面形状を表す値とする工程とを有し、高速フーリエ変換を行う際差分値のデータ数を2のべき乗とするためのダミーデータを直流成分が0となるような値にするものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば、レール製造プロセスにおけるレール波形状測定、鋼板の圧延機における圧延ロール表面プロフィール測定等に用いられる表面形状測定方法等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図10は従来から表面形状の計測に用いられている装置を表す図である。この装置は、例えば特開昭64−61605号公報や鉄道技術研究報告No.1336等に開示されている方法(以下、この方法を3点法という)を用いて表面形状の計測を行うものである。ここでは例として、この装置を用いて鋼板の圧延ロールの長手方向の表面形状を計測する場合について説明する。ここで、表面形状を計測するとは、ある距離を基準として(例えば相対的な移動方向に対して前端となる部分)、その距離からの変動を計測し、その形状を復元することをいうものとする。ただ、計測対象物全体の幅、厚さ等をもって表面形状を表現してもよい。
【0003】
図10において、距離センサ取り付け台100には、3つの距離センサ101、102及び103が固定されている。この3つの距離センサ101、102及び103は、自身と計測対象物104との間の距離を計測し、演算回路106においてその距離(計測値)を判断する。距離センサ101及び103は、距離センサ102を中心として、距離センサ102から等間隔の位置に固定されている。
【0004】
測定時には測定対象物104と3つの距離センサ101、102及び103とを相対的に移動させる。この移動には、計測対象物104を搬送して移動する場合と、距離センサ101、102及び103を移動させる場合とがある。移動の際、移動距離を正確に測定するために計測対象物104上を倣わせるのが倣いロール107である。
【0005】
計測対象物104と3つの距離センサ101、102及び103との相対的な移動距離を、例えばロータリエンコーダ等の移動距離検出手段105が計測し、演算回路106においてその距離を判断する。そして、3つの距離センサ101、102及び103が同時にそれぞれ測定した計測値と、移動距離とに基づいて、演算回路106が計測対象物104の表面形状を計測する。
【0006】
ここで、移動距離検出手段105により計測される移動距離は正確に計測されるものと考える。したがって、理想的には1つの距離センサと計測対象物104との間の距離と移動距離との関係がわかれば表面形状の計測を行える。ただ、距離センサ取り付け台100において、搬送又は移動に伴ってガタやヨーイングが生じる場合があり、距離センサ101、102及び103の測定によって判断した計測値には、距離方向の誤差や傾きによる誤差が含まれている場合がある。そのために3点法を用いるのである。
【0007】
3点法では、このような距離変動誤差や傾き誤差を相殺する目的で差分値を利用した方法(差分法)を用いている。図11の距離センサ101、102及び103において、距離変動誤差や傾き誤差がない理想的な測定値をそれぞれhR1、hR2、hR3とし、距離センサ取り付け台100の距離変動量をδ、傾き量をk、距離センサの間隔をLaとすると、距離センサ101、102及び103による計測値は、以下のような式(1)〜(3)で表される。
h1=hR1+δ−k×La …(1)
h2=hR2+δ …(2)
h3=hR3+δ+k×La …(3)
【0008】
ここで、以下のように差分値Δhを定義すると、次式(4)のように距離変動量δ、傾き量kに影響されず、誤差のない理想的な測定値hR1、hR2、hR3だけで表現できることがわかる。
【0009】
図11は周期(周波数)とゲインGとの関係を表す図である。図11は、距離センサの間隔Laを750mmとしたときのゲインGの状態を表している。ここで、ゲインGとは、ある移動距離における表面形状と差分値Δhとの比であるとする。計測対象物104の表面形状は一定の周期で変動しているとすると、差分値Δhは計測対象物104の表面形状の周期λ(周波数1/λ)によりゲインGが異なる。この場合、ゲインGは0≦G≦2の値を採る(理想的には周期にかかわらず1となるべきである)。このゲインGは距離センサ間隔Laによって異なるものである。
【0010】
以上を数式で表す。計測対象物104の表面形状がAsin(2π×x/λ)で表される(xは移動距離)と仮定し、(4)式に代入すると、次式(5)のようになる。
【0011】
【0012】
したがって、差分値Δhの表面形状に対するゲインGは、次式(6)で表される。
G=(1−cos(2π×La/λ)) …(6)
【0013】
すなわち、ゲインGは表面形状の周期λによって変化し、さらに距離センサの間隔Laに依存することになる。そのため、差分値Δhは計測対象物104の表面形状だけに基づいて変化するものではなく、ゲインGによっても変化するので、計測対象物104の表面形状を正確に表現しているわけではない。そこで、ゲインGを一定値(=1)にするような補正値を差分値Δhに乗算すれば、その値は表面形状のみにより変化する値を表すものとなる。
【0014】
図12は3点法による表面形状の計測の流れを表す図である。図12(a)は実際の表面形状を表す。図12(b)は差分法による差分値Δhを表す。図12(c)は差分値周波数を表し各周波数における正弦波の成分を表す。図12(d)はゲイン補正値と周波数との関係を表す。また、図12(e)は3点法により計測した最終的な表面形状を表す。3点法では、演算回路106において、距離センサの間隔Laに基づいた周期λ(周波数1/λ)におけるゲインGをあらかじめ用意しておく。そして、差分値Δhを(5)式に基づいて周波数領域に変換し、周波数毎のゲインGの逆数の値を乗算した上で(実際には、そのうちの1つの周波数だけが表面形状を表すことになる)、さらに周波数逆変換を施して(A及びλを算出、推定することにより)正確な表面形状に復元する方法(周波数補正法)を提案している。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、DC(直流:周波数が0の部分)成分を表面形状に逆変換すると、この差分値ΔhのDC成分は復元した表面形状に円弧状にあらわれる。そのため、周波数補正法を単純に適用すると、円弧状の誤差が発生することになる。これは図12に示されるようにDC成分のゲインGが0であるからである。つまり、この部分の逆数は無限大となるために補正を行うことができず、差分値ΔhのDC成分はそのまま逆変換されるが、DC成分に含まれる誤差もそのまま逆変換されることになる。したがって、DC成分に含まれる誤差は円弧状で現れるのである。これは表面形状が円弧状の場合により顕著にあらわれる。さらに、この周波数補正法には、高速に演算を行うことができるFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)を用いた解析が望まれているが、FFTを用いるには2のべき乗分(512、1024、2048等)のデータ数を用意しておく必要がある。
【0016】
また、経年の使用等により距離センサ間のアライメント(alignment :整列)がずれを起こす場合がある。このずれを起こしたまま算出された差分値ΔhにはバイアスとなるDC成分が重畳する。そのため、上述したように円弧状の誤差が発生する。
【0017】
また、計測対象物104の長手方向形状を求めるために、距離センサ取り付け台100を固定して計測対象物104を搬送ロールに乗せて搬送する場合を考える。搬送ロールの高さが不揃いであれば、計測対象物104が搬送ロールから浮いてしまう箇所が発生する。そのため、計測対象物104を支持するロール点数が減り、支持間隔が広がってしまう。これにより計測対象物104が搬送ロールに衝突して振動が発生したり、弾性変形が生じたりして正確な形状計測が行われない可能性が生じる。
【0018】
そこで、本発明では、測定対象物の全ての部分において、復元誤差を少なくした表面形状を計測できるような表面形状計測方法等を得ることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
そのため、本発明に係る表面形状計測方法は、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、1組以上移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が移動距離以下となるように複数配置し、計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行って計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法において、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出する工程と、高速フーリエ変換を行って差分値について周波数領域に変換する工程と、周波数毎に定められた倍率で補正して、周波数毎に差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とする工程とを有し、高速フーリエ変換を行う際、差分値のデータ数を2のべき乗とするために付加するダミーデータを、周波数変換を行った際の直流成分が0となるような値にするものである。
本発明においては、中心となる距離センサとその距離センサと等距離にある1組以上の距離センサとに基づいて(つまり3つ以上の距離センサが存在する)、表面形状の計測を行う場合に、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出する。高速フーリエ変換を行う場合には、2のべき乗数のデータ数を必要とするが、実際の差分値のデータが足りない場合に付加するダミーデータについては、全体に対して差分値を構成するDC(直流)成分が0になるような重み付けを行った値にして、直流成分による円弧状の誤差を減少させ、より正確な表面形状測定を行う。
【0020】
また、本発明に係る表面形状計測方法は、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、1組以上移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が移動距離以下となるように複数配置し、計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行って計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法において、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出し、差分値を周波数領域に変換した際、周波数が0となる直流成分での値が0となるように差分値を補正する工程と、周波数毎に定められた倍率で補正して、周波数毎に差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とする工程とを有するものである。
本発明においては、中心となる距離センサとその距離センサと等距離にある1組以上の距離センサとに基づいて、表面形状の計測を行う場合に、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出する。その際、差分値に含まれている直流成分(周波数が0の部分)の影響を除去する補正を差分値に対して行う。そして、周波数毎に定められた倍率で補正して、周波数毎に差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とすることにより、例えば、アライメントにより生じた直流成分による円弧状の誤差を減少させ、より正確な表面形状測定を行う。
【0021】
また、本発明に係る表面形状計測方法は、計測対象物に倣わせて相対移動させるための倣いロールを最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に設けるものである。
本発明においては、倣いロールを最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に設け、できるだけ長い移動距離分(時間)、距離センサと計測対象物との間の距離を正確に保ち、計測対象物の全長にわたって表面形状の計測を正確に行う。
【0022】
また、本発明に係る表面形状計測方法は、複数の搬送ロール上を搬送される計測対象物の表面形状を計測する際、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサにより計測された計測値に基づいて計測値を構成する周波数毎の成分を算出する工程と、算出した成分が含まれる周波数域に基づいて計測対象物に振動が発生しているかどうかを判断する工程とを有するものである。
本発明においては、不揃いの搬送ロールと計測対象物との衝突により弾性変形が生じ、それによる振動が測定値に高周波成分として現れることを利用し、測定値に基づいて、振動が発生しているかどうかを判断し、計測対象物に弾性変形が生じているかどうかを判断する。
【0023】
また、本発明に係る表面形状計測方法は、振動が発生していると判断すると、その旨を教示するものである。
本発明においては、弾性変形等により振動が発生していれば、有効な表面形状計測が行えないことから、その旨を教示することで、搬送ロールの精度管理について注意を喚起することができる。
【0024】
また、本発明に係る表面形状計測方法のプログラムは、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、1組以上移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が移動距離以下となるように複数配置し、計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物の表面との距離に基づいた演算を演算手段に行わせて計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法のプログラムにおいて、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出させ、高速フーリエ変換を行って差分値について周波数領域に変換させ、周波数毎に定められた倍率で補正させて、周波数毎に差分値を構成する成分を算出させた上で逆変換して算出させた値を、その移動距離における表面形状を表す値とさせる処理を演算手段に行わせ、高速フーリエ変換を行わせる際、差分値のデータ数を2のべき乗とするために付加させるダミーデータを、周波数変換を行った際の直流成分が0となるような値にするものである。
本発明においては、中心となる距離センサとその距離センサと等距離にある1組以上の距離センサとに基づいて(つまり3つ以上の距離センサが存在する)、表面形状の計測を行う場合に、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出させる処理を行わせる。高速フーリエ変換を行う場合には、2のべき乗数のデータ数を必要とするが、実際の差分値のデータが足りない場合に付加するダミーデータについては、全体に対して差分値を構成するDC(直流)成分が0になるような重み付けを行った値にして、直流成分による円弧状の誤差を減少させ、より正確な表面形状を測定できるような処理を演算手段に行わせる。
【0025】
また、本発明に係る表面形状計測方法のプログラムは、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、1組以上移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が移動距離以下となるように複数配置し、計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物の表面との距離に基づいた演算を演算手段に行わせて計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法のプログラムにおいて、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出させ、差分値を周波数領域に変換させた際に、周波数が0となる直流成分での値が0となるように差分値を補正させ、周波数毎に定められた倍率で補正させて、周波数毎に差分値を構成する成分を算出させた上で逆変換して算出させた値を、その移動距離における表面形状を表す値とする処理を演算手段に行わせる。
本発明においては、中心となる距離センサとその距離センサと等距離にある1組以上の距離センサとに基づいて、表面形状の計測を行う場合に、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出させる。その際、差分値に含まれている直流成分(周波数が0の部分)の影響を除去する補正を差分値に対して行わせる。そして、周波数毎に定められた倍率で補正させて、周波数毎に差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出させた値を、その移動距離における表面形状を表す値とさせることにより、例えば、アライメントにより生じた直流成分による円弧状の誤差を減少させ、より正確な表面形状の測定を演算手段に行わせる。
【0026】
また、本発明に係る表面形状計測方法のプログラムは、複数の搬送ロール上を搬送される計測対象物の表面形状を計測させる際、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサにより計測された計測値に基づいて計測値を構成する周波数毎の成分を算出させ、算出した成分が含まれる周波数域に基づいて計測対象物に振動が発生しているかどうかを判断させる処理を演算手段に行わせる。
本発明においては、不揃いの搬送ロールと計測対象物との衝突により弾性変形が生じ、それによる振動が測定値に高周波成分として現れることを利用し、測定値に基づいて、振動が発生しているかどうかを判断させ、計測対象物に弾性変形が生じているかどうかを判断させる処理を行わせる。
【0027】
また、本発明に係る表面形状計測方法のプログラムは、振動が発生していると判断すると、その旨を教示させる処理を行わせるものである。
本発明においては、弾性変形等により振動が発生していれば、有効な表面形状計測が行えないことから、その旨を教示させる処理を行わせる。
【0028】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明の第1の実施の形態に係る表面形状計測装置の構成を表すブロック図である。図1において、10は距離センサ取り付け台100と同様の距離センサ取り付け台である。距離センサ取り付け台10には、距離センサ11〜15が固定されている。距離センサ11及び15は、距離センサ13を中心として、距離センサ13から等間隔の位置(以下、この間隔をLaとし、例えばLa=270mmとする)に固定されている。距離センサ12及び14についても同様に距離センサ13から等間隔の位置(以下、この間隔をLbとし、例えばLb=750mmとする)に固定されている。距離センサ11〜15としては例えばレーザ式の距離計を用いる。また、間隔Laの値が間隔Lbの80%以下となるように、また間隔Laと間隔Lbとが互いに素となるように設定する。
【0029】
計測対象物16、移動距離検出手段17、倣いロール19は、それぞれ上述した計測対象物104、移動距離検出手段105、倣いロール107と同様のものである。ここで、倣いロール19がなければ、測定対象物16に対し、距離センサ取り付け台10が蛇行するおそれがあり、距離センサ11〜15の測定レンジを外れることが考えられるため、これを防ぐために倣いロール19を取り付けて装置を計測対象物16に倣わせるものである。ここでは距離センサ11と12との間、距離センサ14と15との間に設ける。このように倣いロール19を設けることにより、少なくとも距離センサ11と15を測定する時点においては、物理的に不感帯の発生を減じることができる。
【0030】
演算回路18は、後述する処理の違いにおいて演算回路106とは異なる。この演算回路18は、例えばコンピュータに本実施の形態で説明する処理を行うために記載されたプログラムを実行させることにより実現する。この演算回路18では、移動距離検出手段17による移動距離の計測により、10mm移動したものと判断する度に、その時の距離センサ11〜15が示す計測値を判断する。そして、計測対象物16の表面上において全ての計測値を取り終えると、それらの計測値に基づいて表面形状を復元する。
【0031】
次に本実施の形態の演算回路18の処理動作を中心にさらに詳細に説明する。演算回路18は、移動距離検出手段17による測定に基づいて、倣いロール19に倣って距離センサ11〜15と計測対象物16との間で相対的に移動した距離が10mmになったものと判断すると、その時の距離センサ11〜15が示す計測値を判断する。場合によっては記憶装置(図示せず)に記憶しておく。
【0032】
距離センサ11〜15による計測が終了すると、演算回路18は表面形状に関する処理を行う。まず、次式(7)に基づいて差分値Δhを算出する。ここで、距離センサ11、12、13、14及び15による計測値をそれぞれh1、h2、h3、h4及びh5とする。
Δh=h3−(h1+h2+h4+h5)/4 …(7)
【0033】
図2は周波数とゲインGとの関係を表す図である。ただし、この図2においては、間隔La=540mm、間隔Lb=750mmとして算出したものを示している。計測対象物16の表面形状をAsin(2π×x/λ)で表される(xは移動距離)と仮定する。そして、差分値Δhを周波数領域に変換した場合に差分値Δhの真の形状に対するゲインGは次式(8)で表される。
G=1−{cos(2π×La/λ)+cos(2π×Lb/λ)}/2…(8)
【0034】
したがって、ゲインGを構成するcos(2π×La/λ)+cos(2π×Lb/λ)が2にならなければ(つまり、cos(2π×La/λ)とcos(2π×Lb/λ)とが同時に1にならなければ)ゲインGは0にならない。これを満たすためには間隔Laと間隔Lbとが互いに素となるように設定するのが望ましい。また、たとえ間隔Laと間隔Lbとが互いに素の関係にあったとしても、両者の値が近ければ、cos(2π×La/λ)とcos(2π×Lb/λ)とがそれぞれ同時に1に近くなるため、0ではないがゲインGも小さい値になる。そこで、さらに間隔Laの値が間隔Lbの80%以下となるように設定するのが望ましい。
【0035】
差分値Δhを周波数領域に変換し、演算を行う方法には、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)を用いて行うものとする。上述したように、FFTを用いて演算を行うにはデータ数が2のべき乗分必要である。したがって、不足分についてはダミー(疑似)データを付加した上で演算を行う。ここでは、差分値Δhのデータ数が1432あるとする。FFTを行うのに必要なデータ数は2048(=211)であることから、616のダミーデータ(0.030)を付加した上で演算処理を行う。
【0036】
従来はダミーデータとして単に0を付加していた。本実施の形態では、差分値がDC成分を有している場合に、全体の差分値に対してDC成分を0にするための重みを持たせた値をダミーデータとして付加した上で、その後の演算処理を行うようにする。もちろん、DC成分が0となるのであればDC成分におけるゲインGの補正を行わなくてよい(つまり、ダミーデータは0でよい)。
【0037】
図3はダミーデータとして0を付加した場合の復元形状等を表す図である。図3(a)は実際の表面形状を表す。図3(b)は復元形状を表す。図3(c)は復元誤差を表す。
【0038】
図4はダミーデータとして0.030を付加した場合の復元した表面形状と復元誤差を表す図である。図4(a)は復元形状を表す。図4(b)は復元誤差を表す。ここでダミーデータの値が0.030であるのは、算出された差分値のDC成分について、−0.0129という値が得られた場合に、これに対して、0.0129×1432/616=0.0299…という演算を行うことによって算出された値である。
【0039】
そして、(8)式に基づいて、その周期λ(周波数1/λ)におけるゲインGの逆数を差分値Δhに乗算することにより、ゲイン補正を行ってゲインGによる影響を除くようにする。したがって、算出される値は表面形状のみによる影響を受けることになる。ここで、ゲイン補正の計測倍率が大きくなると、ヨーイング等による誤差ではない、距離センサ11〜15による計測ノイズ(ランダム誤差)の影響も拡大する。そこで、ゲインGが0.2以下(逆数は5.0以上となる)の場合は補正を行わないようにする。
【0040】
ゲイン補正をした差分値に対して、再度FFTによる周波数逆変換を施し、その移動距離における計測対象物16の表面形状を復元する。これを、それぞれの移動距離での位置に対して行う。また、距離センサの計測ノイズを考慮し、場合によっては、例えば11点の移動平均を施した上で表面形状を判断する。
【0041】
図5はミズ糸(水糸)を利用してオフラインで計測した表面形状を表す図である。図6は本実施の形態の方法により復元した表面形状を表す図である。図6(a)は復元形状を表す。図6(b)は復元誤差を表す。
【0042】
以上のように第1の実施の形態によれば、円弧状の誤差を発生させるDC(直流)成分の影響を、FFTを行う際に、そのデータ数を2のべき乗にするために付するダミーデータの値を重み付けを行い、調整した値にすることにより、DC成分を起因とする復元誤差を減少させることができ、より正確な表面形状を計測することができる。
【0043】
実施の形態2.
上述の実施の形態では、全体のDC成分を0にするための重み付けを行い、補正を行った。ここで、差分値にDC成分が含まれる場合を考える。1つは計測対象物16の実際の表面形状にDC成分が含まれている場合である。もう1つは、例えばアライメントがずれることにより、算出した差分値にバイアスのDC成分が含まれる場合である。精度の高い表面形状の計測を行うためには、アライメントのずれによるDC成分だけを取り除くことが望ましい。しかし、現実には大変困難である。
【0044】
そこで、計測対象物がレール鋼等のように表面形状が極端な円弧状でないものについて、差分値に含まれるDC成分を0にする補正を行い、演算処理を行う。ここで、実際の表面形状にDC成分が含まれている場合には、そのDC成分が表面形状に反映されず誤差となってしまうが、計測により生じる誤差に比べると小さいので結果として誤差は小さくなる。
【0045】
図7は距離センサのアライメントが0.2mmずれた場合を表す図である。図7(a)は実際の表面形状を表す。図7(b)は復元形状を表す。図7(c)は復元誤差を表す。
【0046】
図8は差分値のDC成分を0にする補正を行って処理した場合を表す図である。図8(a)は復元形状を表す。図8(b)は復元誤差を表す。
【0047】
以上のように第2の実施の形態によれば、例えば、アライメントにより生ずるDC(直流)成分の影響を、差分値のDC成分を0にすることにより除去することで、DC成分を起因とする復元誤差を減少させることができる。これにより、実際の表面形状に含まれるDC成分も除去されることになるが、アライメントによる誤差に比べると小さいので、より正確な表面形状を計測することができる。
【0048】
実施の形態3.
図9は搬送ロールで搬送されるレール鋼の表面形状を本実施の形態の表面形状計測装置で計測する状態を表す図である。図9におけるレール鋼を本実施の形態における計測対象物16とする。一方、図9にあるように、本発明に係る計測装置を搬送ロールに合わせて取り付けている(設けている)。ここで、表面形状の計測を行う演算回路18A(図示せず)は、弾性変形によって生じる計測対象物16の振動を判断するという点で演算回路18とは異なる。
【0049】
全ての搬送ロールの高さは、理想的には高精度で管理することが望ましい。しかし、現実の操業においては、数10本にも及ぶ搬送ロールの高さを精密に管理することは時間と人手を費やすことから困難である。搬送ロールの高さが不揃いの場合には、低い位置に取り付けられた計測対象物16を支持することができず、結果的に計測対象物を支持する点数が減る。この場合、弾性変形が生じやすく、正確な表面形状を計測することができなくなる。
【0050】
ここで、搬送方向に対して後側の搬送ロールよりも高く取り付けられて段差が生じている搬送ロールと計測対象物16の前端が衝突する場合がある。この場合、衝突による大きな振動は計測対象物16全体に及ぶことになる。この衝突の振動による影響は距離センサ11〜15の測定による計測値にもあらわれ、計測値の結果も振動する。演算回路18Aは判断した計測値に基づいて振動が発生したかどうかを判断する。
【0051】
振動による波の成分は、計測対象物16の表面形状を構成する波に比べると高周波の成分を含むので、例えば高周波に着目したバンドパスフィルタを用いて検出された高周波を判断することができる。また、ウェーブレット変換(Wavelet transform )等のような時間−周波数解析を行って判断するようにしてもよい。
【0052】
そして、振動が発生したものと判断した場合には、例えば表面形状の計測が有効に行われなかった旨、搬送ロールが不揃いの旨等を示す警告をオペレータに教示等するようにしてもよい。
【0053】
以上のように第3の実施の形態によれば、搬送ロール等で搬送されている計測対象物を計測する際に、搬送ロールとの弾性衝突時に発生する振動により表面形状の計測結果に現れる高周波の成分に基づいて、弾性衝突を判断することにより、表面形状の計測が有効に行われなかったこと等を警告するようにしたので、より有効に表面形状の計測を行うことができ、また、搬送ロールの精度管理を行うことができる。
【0054】
実施の形態4.
上述の第1の実施の形態では、距離センサ11〜15の5つ設けて、同時に計測し、その差分値Δhに基づいて算出した。本発明はこれに限定されるものではなく、例えば距離センサを5つ以上の奇数個設けて、計測を行うようにしてもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、高速フーリエ変換を行う場合に必要となる2のべき乗数のデータ数を補うダミーデータについて、全体に対して差分値を構成するDC(直流)成分が0になるような重み付けを行った値にすることで、直流成分による円弧状の誤差を減少させることができ、より正確な表面形状測定を行うことができる。
【0056】
また、本発明によれば、差分値に含まれている直流成分(周波数が0の部分)の影響を除去する補正を行ってから処理を行うようにしたので、例えば、アライメントにより生じた直流成分による円弧状の誤差を減少させることができ、より正確な表面形状測定を行うことができる。
【0057】
以上のように、倣いロールを最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に設けるようにしたので、距離センサと計測対象物との間の距離をできるだけ長い移動距離分正確に保つことができるので、計測対象物の全長にわたって表面形状を正確に計測することができる。
【0058】
また、本発明によれば、距離センサにより計測された計測値に基づいて計測値を構成する周波数毎の成分を算出し、その算出した成分に基づいて振動しているかどうかを判断するようにしたので、計測対象物に弾性変形が発生しているかどうかを有効に判断することができる。
【0059】
また、本発明によれば振動が発生していると判断するとその旨を教示するようにしたので、表面形状の計測を有効に行うことができ、また搬送ロールの精度管理を有効に行うことができる。
【0060】
また、本発明によれば、高速フーリエ変換を行う場合に必要となる2のべき乗数のデータ数を補うダミーデータについて、全体に対して差分値を構成するDC(直流)成分が0になるような重み付けを行った値にして、その後の処理を行わせることで、直流成分による円弧状の誤差を減少させることができ、より正確な表面形状測定を行わせることができる。
【0061】
また、本発明によれば、差分値に含まれている直流成分の影響を除去する補正を行わせてから、周波数毎に異なる倍率補正の処理を行うようにしたので、例えば、アライメントにより生じた直流成分による円弧状の誤差を減少させることができ、より正確な表面形状測定を行わせることができる。
【0062】
また、本発明によれば、演算手段に距離センサにより計測された計測値に基づいて計測値を構成する周波数毎の成分を算出させ、その算出した成分に基づいて振動しているかどうかを判断させるようにしたので、搬送ロールの精度管理を有効に行うことができる。
【0063】
また、本発明によれば、振動が発生していると判断すると、その旨を教示させる処理を行わせるようにしたので、計測対象物に発生する弾性変形を教示させて表面形状の計測を有効に行うことができ、また搬送ロールの精度管理を有効に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表面形状計測装置の構成を表すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態における周波数とゲインGとの関係を表す図である。
【図3】ダミーデータとして0を付加した場合の復元形状等を表す図である。
【図4】ダミーデータとして0.030を付加した場合の復元した表面形状と復元誤差を表す図である。
【図5】ミズ糸(水糸)を利用してオフラインで計測した表面形状を表す図である。
【図6】本実施の形態の方法により復元した表面形状を表す図である。
【図7】距離センサのアライメントが0.2mmずれた場合を表す図である。
【図8】差分値のDC成分を0にする補正を行って処理した場合を表す図である。
【図9】搬送ロールで搬送されるレール鋼の表面形状を本実施の形態の表面形状計測装置で計測する状態を表す図である。
【図10】従来から表面形状の計測に用いられている装置を表す図である。
【図11】周期(周波数)とゲインGとの関係を表す図である。
【図12】3点法による表面形状の計測の流れを表す図である。
【符号の説明】
10、100距離センサ取り付け台
11、12、13、14、15、101、102、103 距離センサ
16、104 計測対象物
17、105 移動距離検出手段
18、106 演算回路
19、107 倣いロール
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば、レール製造プロセスにおけるレール波形状測定、鋼板の圧延機における圧延ロール表面プロフィール測定等に用いられる表面形状測定方法等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図10は従来から表面形状の計測に用いられている装置を表す図である。この装置は、例えば特開昭64−61605号公報や鉄道技術研究報告No.1336等に開示されている方法(以下、この方法を3点法という)を用いて表面形状の計測を行うものである。ここでは例として、この装置を用いて鋼板の圧延ロールの長手方向の表面形状を計測する場合について説明する。ここで、表面形状を計測するとは、ある距離を基準として(例えば相対的な移動方向に対して前端となる部分)、その距離からの変動を計測し、その形状を復元することをいうものとする。ただ、計測対象物全体の幅、厚さ等をもって表面形状を表現してもよい。
【0003】
図10において、距離センサ取り付け台100には、3つの距離センサ101、102及び103が固定されている。この3つの距離センサ101、102及び103は、自身と計測対象物104との間の距離を計測し、演算回路106においてその距離(計測値)を判断する。距離センサ101及び103は、距離センサ102を中心として、距離センサ102から等間隔の位置に固定されている。
【0004】
測定時には測定対象物104と3つの距離センサ101、102及び103とを相対的に移動させる。この移動には、計測対象物104を搬送して移動する場合と、距離センサ101、102及び103を移動させる場合とがある。移動の際、移動距離を正確に測定するために計測対象物104上を倣わせるのが倣いロール107である。
【0005】
計測対象物104と3つの距離センサ101、102及び103との相対的な移動距離を、例えばロータリエンコーダ等の移動距離検出手段105が計測し、演算回路106においてその距離を判断する。そして、3つの距離センサ101、102及び103が同時にそれぞれ測定した計測値と、移動距離とに基づいて、演算回路106が計測対象物104の表面形状を計測する。
【0006】
ここで、移動距離検出手段105により計測される移動距離は正確に計測されるものと考える。したがって、理想的には1つの距離センサと計測対象物104との間の距離と移動距離との関係がわかれば表面形状の計測を行える。ただ、距離センサ取り付け台100において、搬送又は移動に伴ってガタやヨーイングが生じる場合があり、距離センサ101、102及び103の測定によって判断した計測値には、距離方向の誤差や傾きによる誤差が含まれている場合がある。そのために3点法を用いるのである。
【0007】
3点法では、このような距離変動誤差や傾き誤差を相殺する目的で差分値を利用した方法(差分法)を用いている。図11の距離センサ101、102及び103において、距離変動誤差や傾き誤差がない理想的な測定値をそれぞれhR1、hR2、hR3とし、距離センサ取り付け台100の距離変動量をδ、傾き量をk、距離センサの間隔をLaとすると、距離センサ101、102及び103による計測値は、以下のような式(1)〜(3)で表される。
h1=hR1+δ−k×La …(1)
h2=hR2+δ …(2)
h3=hR3+δ+k×La …(3)
【0008】
ここで、以下のように差分値Δhを定義すると、次式(4)のように距離変動量δ、傾き量kに影響されず、誤差のない理想的な測定値hR1、hR2、hR3だけで表現できることがわかる。
【0009】
図11は周期(周波数)とゲインGとの関係を表す図である。図11は、距離センサの間隔Laを750mmとしたときのゲインGの状態を表している。ここで、ゲインGとは、ある移動距離における表面形状と差分値Δhとの比であるとする。計測対象物104の表面形状は一定の周期で変動しているとすると、差分値Δhは計測対象物104の表面形状の周期λ(周波数1/λ)によりゲインGが異なる。この場合、ゲインGは0≦G≦2の値を採る(理想的には周期にかかわらず1となるべきである)。このゲインGは距離センサ間隔Laによって異なるものである。
【0010】
以上を数式で表す。計測対象物104の表面形状がAsin(2π×x/λ)で表される(xは移動距離)と仮定し、(4)式に代入すると、次式(5)のようになる。
【0011】
【0012】
したがって、差分値Δhの表面形状に対するゲインGは、次式(6)で表される。
G=(1−cos(2π×La/λ)) …(6)
【0013】
すなわち、ゲインGは表面形状の周期λによって変化し、さらに距離センサの間隔Laに依存することになる。そのため、差分値Δhは計測対象物104の表面形状だけに基づいて変化するものではなく、ゲインGによっても変化するので、計測対象物104の表面形状を正確に表現しているわけではない。そこで、ゲインGを一定値(=1)にするような補正値を差分値Δhに乗算すれば、その値は表面形状のみにより変化する値を表すものとなる。
【0014】
図12は3点法による表面形状の計測の流れを表す図である。図12(a)は実際の表面形状を表す。図12(b)は差分法による差分値Δhを表す。図12(c)は差分値周波数を表し各周波数における正弦波の成分を表す。図12(d)はゲイン補正値と周波数との関係を表す。また、図12(e)は3点法により計測した最終的な表面形状を表す。3点法では、演算回路106において、距離センサの間隔Laに基づいた周期λ(周波数1/λ)におけるゲインGをあらかじめ用意しておく。そして、差分値Δhを(5)式に基づいて周波数領域に変換し、周波数毎のゲインGの逆数の値を乗算した上で(実際には、そのうちの1つの周波数だけが表面形状を表すことになる)、さらに周波数逆変換を施して(A及びλを算出、推定することにより)正確な表面形状に復元する方法(周波数補正法)を提案している。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、DC(直流:周波数が0の部分)成分を表面形状に逆変換すると、この差分値ΔhのDC成分は復元した表面形状に円弧状にあらわれる。そのため、周波数補正法を単純に適用すると、円弧状の誤差が発生することになる。これは図12に示されるようにDC成分のゲインGが0であるからである。つまり、この部分の逆数は無限大となるために補正を行うことができず、差分値ΔhのDC成分はそのまま逆変換されるが、DC成分に含まれる誤差もそのまま逆変換されることになる。したがって、DC成分に含まれる誤差は円弧状で現れるのである。これは表面形状が円弧状の場合により顕著にあらわれる。さらに、この周波数補正法には、高速に演算を行うことができるFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)を用いた解析が望まれているが、FFTを用いるには2のべき乗分(512、1024、2048等)のデータ数を用意しておく必要がある。
【0016】
また、経年の使用等により距離センサ間のアライメント(alignment :整列)がずれを起こす場合がある。このずれを起こしたまま算出された差分値ΔhにはバイアスとなるDC成分が重畳する。そのため、上述したように円弧状の誤差が発生する。
【0017】
また、計測対象物104の長手方向形状を求めるために、距離センサ取り付け台100を固定して計測対象物104を搬送ロールに乗せて搬送する場合を考える。搬送ロールの高さが不揃いであれば、計測対象物104が搬送ロールから浮いてしまう箇所が発生する。そのため、計測対象物104を支持するロール点数が減り、支持間隔が広がってしまう。これにより計測対象物104が搬送ロールに衝突して振動が発生したり、弾性変形が生じたりして正確な形状計測が行われない可能性が生じる。
【0018】
そこで、本発明では、測定対象物の全ての部分において、復元誤差を少なくした表面形状を計測できるような表面形状計測方法等を得ることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
そのため、本発明に係る表面形状計測方法は、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、1組以上移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が移動距離以下となるように複数配置し、計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行って計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法において、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出する工程と、高速フーリエ変換を行って差分値について周波数領域に変換する工程と、周波数毎に定められた倍率で補正して、周波数毎に差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とする工程とを有し、高速フーリエ変換を行う際、差分値のデータ数を2のべき乗とするために付加するダミーデータを、周波数変換を行った際の直流成分が0となるような値にするものである。
本発明においては、中心となる距離センサとその距離センサと等距離にある1組以上の距離センサとに基づいて(つまり3つ以上の距離センサが存在する)、表面形状の計測を行う場合に、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出する。高速フーリエ変換を行う場合には、2のべき乗数のデータ数を必要とするが、実際の差分値のデータが足りない場合に付加するダミーデータについては、全体に対して差分値を構成するDC(直流)成分が0になるような重み付けを行った値にして、直流成分による円弧状の誤差を減少させ、より正確な表面形状測定を行う。
【0020】
また、本発明に係る表面形状計測方法は、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、1組以上移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が移動距離以下となるように複数配置し、計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行って計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法において、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出し、差分値を周波数領域に変換した際、周波数が0となる直流成分での値が0となるように差分値を補正する工程と、周波数毎に定められた倍率で補正して、周波数毎に差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とする工程とを有するものである。
本発明においては、中心となる距離センサとその距離センサと等距離にある1組以上の距離センサとに基づいて、表面形状の計測を行う場合に、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出する。その際、差分値に含まれている直流成分(周波数が0の部分)の影響を除去する補正を差分値に対して行う。そして、周波数毎に定められた倍率で補正して、周波数毎に差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とすることにより、例えば、アライメントにより生じた直流成分による円弧状の誤差を減少させ、より正確な表面形状測定を行う。
【0021】
また、本発明に係る表面形状計測方法は、計測対象物に倣わせて相対移動させるための倣いロールを最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に設けるものである。
本発明においては、倣いロールを最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に設け、できるだけ長い移動距離分(時間)、距離センサと計測対象物との間の距離を正確に保ち、計測対象物の全長にわたって表面形状の計測を正確に行う。
【0022】
また、本発明に係る表面形状計測方法は、複数の搬送ロール上を搬送される計測対象物の表面形状を計測する際、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサにより計測された計測値に基づいて計測値を構成する周波数毎の成分を算出する工程と、算出した成分が含まれる周波数域に基づいて計測対象物に振動が発生しているかどうかを判断する工程とを有するものである。
本発明においては、不揃いの搬送ロールと計測対象物との衝突により弾性変形が生じ、それによる振動が測定値に高周波成分として現れることを利用し、測定値に基づいて、振動が発生しているかどうかを判断し、計測対象物に弾性変形が生じているかどうかを判断する。
【0023】
また、本発明に係る表面形状計測方法は、振動が発生していると判断すると、その旨を教示するものである。
本発明においては、弾性変形等により振動が発生していれば、有効な表面形状計測が行えないことから、その旨を教示することで、搬送ロールの精度管理について注意を喚起することができる。
【0024】
また、本発明に係る表面形状計測方法のプログラムは、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、1組以上移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が移動距離以下となるように複数配置し、計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物の表面との距離に基づいた演算を演算手段に行わせて計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法のプログラムにおいて、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出させ、高速フーリエ変換を行って差分値について周波数領域に変換させ、周波数毎に定められた倍率で補正させて、周波数毎に差分値を構成する成分を算出させた上で逆変換して算出させた値を、その移動距離における表面形状を表す値とさせる処理を演算手段に行わせ、高速フーリエ変換を行わせる際、差分値のデータ数を2のべき乗とするために付加させるダミーデータを、周波数変換を行った際の直流成分が0となるような値にするものである。
本発明においては、中心となる距離センサとその距離センサと等距離にある1組以上の距離センサとに基づいて(つまり3つ以上の距離センサが存在する)、表面形状の計測を行う場合に、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出させる処理を行わせる。高速フーリエ変換を行う場合には、2のべき乗数のデータ数を必要とするが、実際の差分値のデータが足りない場合に付加するダミーデータについては、全体に対して差分値を構成するDC(直流)成分が0になるような重み付けを行った値にして、直流成分による円弧状の誤差を減少させ、より正確な表面形状を測定できるような処理を演算手段に行わせる。
【0025】
また、本発明に係る表面形状計測方法のプログラムは、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、1組以上移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が移動距離以下となるように複数配置し、計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物の表面との距離に基づいた演算を演算手段に行わせて計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法のプログラムにおいて、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出させ、差分値を周波数領域に変換させた際に、周波数が0となる直流成分での値が0となるように差分値を補正させ、周波数毎に定められた倍率で補正させて、周波数毎に差分値を構成する成分を算出させた上で逆変換して算出させた値を、その移動距離における表面形状を表す値とする処理を演算手段に行わせる。
本発明においては、中心となる距離センサとその距離センサと等距離にある1組以上の距離センサとに基づいて、表面形状の計測を行う場合に、全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出させる。その際、差分値に含まれている直流成分(周波数が0の部分)の影響を除去する補正を差分値に対して行わせる。そして、周波数毎に定められた倍率で補正させて、周波数毎に差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出させた値を、その移動距離における表面形状を表す値とさせることにより、例えば、アライメントにより生じた直流成分による円弧状の誤差を減少させ、より正確な表面形状の測定を演算手段に行わせる。
【0026】
また、本発明に係る表面形状計測方法のプログラムは、複数の搬送ロール上を搬送される計測対象物の表面形状を計測させる際、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサにより計測された計測値に基づいて計測値を構成する周波数毎の成分を算出させ、算出した成分が含まれる周波数域に基づいて計測対象物に振動が発生しているかどうかを判断させる処理を演算手段に行わせる。
本発明においては、不揃いの搬送ロールと計測対象物との衝突により弾性変形が生じ、それによる振動が測定値に高周波成分として現れることを利用し、測定値に基づいて、振動が発生しているかどうかを判断させ、計測対象物に弾性変形が生じているかどうかを判断させる処理を行わせる。
【0027】
また、本発明に係る表面形状計測方法のプログラムは、振動が発生していると判断すると、その旨を教示させる処理を行わせるものである。
本発明においては、弾性変形等により振動が発生していれば、有効な表面形状計測が行えないことから、その旨を教示させる処理を行わせる。
【0028】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明の第1の実施の形態に係る表面形状計測装置の構成を表すブロック図である。図1において、10は距離センサ取り付け台100と同様の距離センサ取り付け台である。距離センサ取り付け台10には、距離センサ11〜15が固定されている。距離センサ11及び15は、距離センサ13を中心として、距離センサ13から等間隔の位置(以下、この間隔をLaとし、例えばLa=270mmとする)に固定されている。距離センサ12及び14についても同様に距離センサ13から等間隔の位置(以下、この間隔をLbとし、例えばLb=750mmとする)に固定されている。距離センサ11〜15としては例えばレーザ式の距離計を用いる。また、間隔Laの値が間隔Lbの80%以下となるように、また間隔Laと間隔Lbとが互いに素となるように設定する。
【0029】
計測対象物16、移動距離検出手段17、倣いロール19は、それぞれ上述した計測対象物104、移動距離検出手段105、倣いロール107と同様のものである。ここで、倣いロール19がなければ、測定対象物16に対し、距離センサ取り付け台10が蛇行するおそれがあり、距離センサ11〜15の測定レンジを外れることが考えられるため、これを防ぐために倣いロール19を取り付けて装置を計測対象物16に倣わせるものである。ここでは距離センサ11と12との間、距離センサ14と15との間に設ける。このように倣いロール19を設けることにより、少なくとも距離センサ11と15を測定する時点においては、物理的に不感帯の発生を減じることができる。
【0030】
演算回路18は、後述する処理の違いにおいて演算回路106とは異なる。この演算回路18は、例えばコンピュータに本実施の形態で説明する処理を行うために記載されたプログラムを実行させることにより実現する。この演算回路18では、移動距離検出手段17による移動距離の計測により、10mm移動したものと判断する度に、その時の距離センサ11〜15が示す計測値を判断する。そして、計測対象物16の表面上において全ての計測値を取り終えると、それらの計測値に基づいて表面形状を復元する。
【0031】
次に本実施の形態の演算回路18の処理動作を中心にさらに詳細に説明する。演算回路18は、移動距離検出手段17による測定に基づいて、倣いロール19に倣って距離センサ11〜15と計測対象物16との間で相対的に移動した距離が10mmになったものと判断すると、その時の距離センサ11〜15が示す計測値を判断する。場合によっては記憶装置(図示せず)に記憶しておく。
【0032】
距離センサ11〜15による計測が終了すると、演算回路18は表面形状に関する処理を行う。まず、次式(7)に基づいて差分値Δhを算出する。ここで、距離センサ11、12、13、14及び15による計測値をそれぞれh1、h2、h3、h4及びh5とする。
Δh=h3−(h1+h2+h4+h5)/4 …(7)
【0033】
図2は周波数とゲインGとの関係を表す図である。ただし、この図2においては、間隔La=540mm、間隔Lb=750mmとして算出したものを示している。計測対象物16の表面形状をAsin(2π×x/λ)で表される(xは移動距離)と仮定する。そして、差分値Δhを周波数領域に変換した場合に差分値Δhの真の形状に対するゲインGは次式(8)で表される。
G=1−{cos(2π×La/λ)+cos(2π×Lb/λ)}/2…(8)
【0034】
したがって、ゲインGを構成するcos(2π×La/λ)+cos(2π×Lb/λ)が2にならなければ(つまり、cos(2π×La/λ)とcos(2π×Lb/λ)とが同時に1にならなければ)ゲインGは0にならない。これを満たすためには間隔Laと間隔Lbとが互いに素となるように設定するのが望ましい。また、たとえ間隔Laと間隔Lbとが互いに素の関係にあったとしても、両者の値が近ければ、cos(2π×La/λ)とcos(2π×Lb/λ)とがそれぞれ同時に1に近くなるため、0ではないがゲインGも小さい値になる。そこで、さらに間隔Laの値が間隔Lbの80%以下となるように設定するのが望ましい。
【0035】
差分値Δhを周波数領域に変換し、演算を行う方法には、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)を用いて行うものとする。上述したように、FFTを用いて演算を行うにはデータ数が2のべき乗分必要である。したがって、不足分についてはダミー(疑似)データを付加した上で演算を行う。ここでは、差分値Δhのデータ数が1432あるとする。FFTを行うのに必要なデータ数は2048(=211)であることから、616のダミーデータ(0.030)を付加した上で演算処理を行う。
【0036】
従来はダミーデータとして単に0を付加していた。本実施の形態では、差分値がDC成分を有している場合に、全体の差分値に対してDC成分を0にするための重みを持たせた値をダミーデータとして付加した上で、その後の演算処理を行うようにする。もちろん、DC成分が0となるのであればDC成分におけるゲインGの補正を行わなくてよい(つまり、ダミーデータは0でよい)。
【0037】
図3はダミーデータとして0を付加した場合の復元形状等を表す図である。図3(a)は実際の表面形状を表す。図3(b)は復元形状を表す。図3(c)は復元誤差を表す。
【0038】
図4はダミーデータとして0.030を付加した場合の復元した表面形状と復元誤差を表す図である。図4(a)は復元形状を表す。図4(b)は復元誤差を表す。ここでダミーデータの値が0.030であるのは、算出された差分値のDC成分について、−0.0129という値が得られた場合に、これに対して、0.0129×1432/616=0.0299…という演算を行うことによって算出された値である。
【0039】
そして、(8)式に基づいて、その周期λ(周波数1/λ)におけるゲインGの逆数を差分値Δhに乗算することにより、ゲイン補正を行ってゲインGによる影響を除くようにする。したがって、算出される値は表面形状のみによる影響を受けることになる。ここで、ゲイン補正の計測倍率が大きくなると、ヨーイング等による誤差ではない、距離センサ11〜15による計測ノイズ(ランダム誤差)の影響も拡大する。そこで、ゲインGが0.2以下(逆数は5.0以上となる)の場合は補正を行わないようにする。
【0040】
ゲイン補正をした差分値に対して、再度FFTによる周波数逆変換を施し、その移動距離における計測対象物16の表面形状を復元する。これを、それぞれの移動距離での位置に対して行う。また、距離センサの計測ノイズを考慮し、場合によっては、例えば11点の移動平均を施した上で表面形状を判断する。
【0041】
図5はミズ糸(水糸)を利用してオフラインで計測した表面形状を表す図である。図6は本実施の形態の方法により復元した表面形状を表す図である。図6(a)は復元形状を表す。図6(b)は復元誤差を表す。
【0042】
以上のように第1の実施の形態によれば、円弧状の誤差を発生させるDC(直流)成分の影響を、FFTを行う際に、そのデータ数を2のべき乗にするために付するダミーデータの値を重み付けを行い、調整した値にすることにより、DC成分を起因とする復元誤差を減少させることができ、より正確な表面形状を計測することができる。
【0043】
実施の形態2.
上述の実施の形態では、全体のDC成分を0にするための重み付けを行い、補正を行った。ここで、差分値にDC成分が含まれる場合を考える。1つは計測対象物16の実際の表面形状にDC成分が含まれている場合である。もう1つは、例えばアライメントがずれることにより、算出した差分値にバイアスのDC成分が含まれる場合である。精度の高い表面形状の計測を行うためには、アライメントのずれによるDC成分だけを取り除くことが望ましい。しかし、現実には大変困難である。
【0044】
そこで、計測対象物がレール鋼等のように表面形状が極端な円弧状でないものについて、差分値に含まれるDC成分を0にする補正を行い、演算処理を行う。ここで、実際の表面形状にDC成分が含まれている場合には、そのDC成分が表面形状に反映されず誤差となってしまうが、計測により生じる誤差に比べると小さいので結果として誤差は小さくなる。
【0045】
図7は距離センサのアライメントが0.2mmずれた場合を表す図である。図7(a)は実際の表面形状を表す。図7(b)は復元形状を表す。図7(c)は復元誤差を表す。
【0046】
図8は差分値のDC成分を0にする補正を行って処理した場合を表す図である。図8(a)は復元形状を表す。図8(b)は復元誤差を表す。
【0047】
以上のように第2の実施の形態によれば、例えば、アライメントにより生ずるDC(直流)成分の影響を、差分値のDC成分を0にすることにより除去することで、DC成分を起因とする復元誤差を減少させることができる。これにより、実際の表面形状に含まれるDC成分も除去されることになるが、アライメントによる誤差に比べると小さいので、より正確な表面形状を計測することができる。
【0048】
実施の形態3.
図9は搬送ロールで搬送されるレール鋼の表面形状を本実施の形態の表面形状計測装置で計測する状態を表す図である。図9におけるレール鋼を本実施の形態における計測対象物16とする。一方、図9にあるように、本発明に係る計測装置を搬送ロールに合わせて取り付けている(設けている)。ここで、表面形状の計測を行う演算回路18A(図示せず)は、弾性変形によって生じる計測対象物16の振動を判断するという点で演算回路18とは異なる。
【0049】
全ての搬送ロールの高さは、理想的には高精度で管理することが望ましい。しかし、現実の操業においては、数10本にも及ぶ搬送ロールの高さを精密に管理することは時間と人手を費やすことから困難である。搬送ロールの高さが不揃いの場合には、低い位置に取り付けられた計測対象物16を支持することができず、結果的に計測対象物を支持する点数が減る。この場合、弾性変形が生じやすく、正確な表面形状を計測することができなくなる。
【0050】
ここで、搬送方向に対して後側の搬送ロールよりも高く取り付けられて段差が生じている搬送ロールと計測対象物16の前端が衝突する場合がある。この場合、衝突による大きな振動は計測対象物16全体に及ぶことになる。この衝突の振動による影響は距離センサ11〜15の測定による計測値にもあらわれ、計測値の結果も振動する。演算回路18Aは判断した計測値に基づいて振動が発生したかどうかを判断する。
【0051】
振動による波の成分は、計測対象物16の表面形状を構成する波に比べると高周波の成分を含むので、例えば高周波に着目したバンドパスフィルタを用いて検出された高周波を判断することができる。また、ウェーブレット変換(Wavelet transform )等のような時間−周波数解析を行って判断するようにしてもよい。
【0052】
そして、振動が発生したものと判断した場合には、例えば表面形状の計測が有効に行われなかった旨、搬送ロールが不揃いの旨等を示す警告をオペレータに教示等するようにしてもよい。
【0053】
以上のように第3の実施の形態によれば、搬送ロール等で搬送されている計測対象物を計測する際に、搬送ロールとの弾性衝突時に発生する振動により表面形状の計測結果に現れる高周波の成分に基づいて、弾性衝突を判断することにより、表面形状の計測が有効に行われなかったこと等を警告するようにしたので、より有効に表面形状の計測を行うことができ、また、搬送ロールの精度管理を行うことができる。
【0054】
実施の形態4.
上述の第1の実施の形態では、距離センサ11〜15の5つ設けて、同時に計測し、その差分値Δhに基づいて算出した。本発明はこれに限定されるものではなく、例えば距離センサを5つ以上の奇数個設けて、計測を行うようにしてもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、高速フーリエ変換を行う場合に必要となる2のべき乗数のデータ数を補うダミーデータについて、全体に対して差分値を構成するDC(直流)成分が0になるような重み付けを行った値にすることで、直流成分による円弧状の誤差を減少させることができ、より正確な表面形状測定を行うことができる。
【0056】
また、本発明によれば、差分値に含まれている直流成分(周波数が0の部分)の影響を除去する補正を行ってから処理を行うようにしたので、例えば、アライメントにより生じた直流成分による円弧状の誤差を減少させることができ、より正確な表面形状測定を行うことができる。
【0057】
以上のように、倣いロールを最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に設けるようにしたので、距離センサと計測対象物との間の距離をできるだけ長い移動距離分正確に保つことができるので、計測対象物の全長にわたって表面形状を正確に計測することができる。
【0058】
また、本発明によれば、距離センサにより計測された計測値に基づいて計測値を構成する周波数毎の成分を算出し、その算出した成分に基づいて振動しているかどうかを判断するようにしたので、計測対象物に弾性変形が発生しているかどうかを有効に判断することができる。
【0059】
また、本発明によれば振動が発生していると判断するとその旨を教示するようにしたので、表面形状の計測を有効に行うことができ、また搬送ロールの精度管理を有効に行うことができる。
【0060】
また、本発明によれば、高速フーリエ変換を行う場合に必要となる2のべき乗数のデータ数を補うダミーデータについて、全体に対して差分値を構成するDC(直流)成分が0になるような重み付けを行った値にして、その後の処理を行わせることで、直流成分による円弧状の誤差を減少させることができ、より正確な表面形状測定を行わせることができる。
【0061】
また、本発明によれば、差分値に含まれている直流成分の影響を除去する補正を行わせてから、周波数毎に異なる倍率補正の処理を行うようにしたので、例えば、アライメントにより生じた直流成分による円弧状の誤差を減少させることができ、より正確な表面形状測定を行わせることができる。
【0062】
また、本発明によれば、演算手段に距離センサにより計測された計測値に基づいて計測値を構成する周波数毎の成分を算出させ、その算出した成分に基づいて振動しているかどうかを判断させるようにしたので、搬送ロールの精度管理を有効に行うことができる。
【0063】
また、本発明によれば、振動が発生していると判断すると、その旨を教示させる処理を行わせるようにしたので、計測対象物に発生する弾性変形を教示させて表面形状の計測を有効に行うことができ、また搬送ロールの精度管理を有効に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表面形状計測装置の構成を表すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態における周波数とゲインGとの関係を表す図である。
【図3】ダミーデータとして0を付加した場合の復元形状等を表す図である。
【図4】ダミーデータとして0.030を付加した場合の復元した表面形状と復元誤差を表す図である。
【図5】ミズ糸(水糸)を利用してオフラインで計測した表面形状を表す図である。
【図6】本実施の形態の方法により復元した表面形状を表す図である。
【図7】距離センサのアライメントが0.2mmずれた場合を表す図である。
【図8】差分値のDC成分を0にする補正を行って処理した場合を表す図である。
【図9】搬送ロールで搬送されるレール鋼の表面形状を本実施の形態の表面形状計測装置で計測する状態を表す図である。
【図10】従来から表面形状の計測に用いられている装置を表す図である。
【図11】周期(周波数)とゲインGとの関係を表す図である。
【図12】3点法による表面形状の計測の流れを表す図である。
【符号の説明】
10、100距離センサ取り付け台
11、12、13、14、15、101、102、103 距離センサ
16、104 計測対象物
17、105 移動距離検出手段
18、106 演算回路
19、107 倣いロール
Claims (9)
- 計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、1組以上前記移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が前記移動距離以下となるように複数配置し、前記計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と前記計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行って前記計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法において、
前記全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出する工程と、
高速フーリエ変換を行って前記差分値について周波数領域に変換する工程と、
周波数毎に定められた倍率で補正して、前記周波数毎に前記差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とする工程とを有し、
前記高速フーリエ変換を行う際、前記差分値のデータ数を2のべき乗とするために付加するダミーデータを、前記周波数変換を行った際の直流成分が0となるような値にすることを特徴とする表面形状計測方法。 - 計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、1組以上前記移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が前記移動距離以下となるように複数配置し、前記計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と前記計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行って前記計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法において、
前記全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出し、該差分値を周波数領域に変換した際、周波数が0となる直流成分での値が0となるように前記差分値を補正する工程と、
周波数毎に定められた倍率で補正して、前記周波数毎に前記差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とする工程と
を有することを特徴とする表面形状計測方法。 - 前記計測対象物に倣わせて相対移動させるための倣いロールを前記最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に設けることを特徴とする請求項1又は2記載の表面形状計測装置。
- 複数の搬送ロール上を搬送される計測対象物の表面形状を計測する際、
前記計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサにより計測された計測値に基づいて前記計測値を構成する周波数毎の成分を算出する工程と、
算出した前記成分が含まれる周波数域に基づいて前記計測対象物に振動が発生しているかどうかを判断する工程と
を有することを特徴とする表面形状計測方法。 - 前記振動が発生していると判断すると、その旨を教示することを特徴とする請求項3記載の表面形状計測方法。
- 計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、1組以上前記移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が前記移動距離以下となるように複数配置し、前記計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と前記計測対象物の表面との距離に基づいた演算を演算手段に行わせて前記計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法のプログラムにおいて、
前記全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出させ、
高速フーリエ変換を行って前記差分値について周波数領域に変換させ、
周波数毎に定められた倍率で補正させて、前記周波数毎に前記差分値を構成する成分を算出させた上で逆変換して算出させた値を、その移動距離における表面形状を表す値とさせる処理を前記演算手段に行わせ、
前記高速フーリエ変換を行わせる際、前記差分値のデータ数を2のべき乗とするために付加させるダミーデータを、前記周波数変換を行った際の直流成分が0となるような値にすることを特徴とする表面形状計測方法のプログラム。 - 計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、1組以上前記移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が前記移動距離以下となるように複数配置し、前記計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と前記計測対象物の表面との距離に基づいた演算を演算手段に行わせて前記計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測方法のプログラムにおいて、
前記全ての距離センサにおいて同時計測された距離に基づいて差分値を算出させ、該差分値を周波数領域に変換させた際に、周波数が0となる直流成分での値が0となるように前記差分値を補正させ、
周波数毎に定められた倍率で補正させて、前記周波数毎に前記差分値を構成する成分を算出させた上で逆変換して算出させた値を、その移動距離における表面形状を表す値とする
処理を前記演算手段に行わせることを特徴とする表面形状計測方法のプログラム。 - 複数の搬送ロール上を搬送される計測対象物の表面形状を計測させる際、
前記計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサにより計測された計測値に基づいて前記計測値を構成する周波数毎の成分を算出させ、
算出した前記成分が含まれる周波数域に基づいて前記計測対象物に振動が発生しているかどうかを判断させる
処理を演算手段に行わせることを特徴とする表面形状計測方法のプログラム。 - 前記振動が発生していると判断すると、その旨を教示させる処理を行わせることを特徴とする請求項7記載の表面形状計測方法のプログラム。
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JP2007127604A (ja) * | 2005-11-07 | 2007-05-24 | Railway Technical Res Inst | 車両走行路実形状の算出方法およびその車両走行路の補修量算出方法 |
JP2007315897A (ja) * | 2006-05-25 | 2007-12-06 | Mitsutoyo Corp | 測定装置、表面性状測定方法、及び表面性状測定プログラム |
JP2010029896A (ja) * | 2008-07-28 | 2010-02-12 | Ihi Corp | 圧延装置及び圧延装置の制御方法 |
JP2010210380A (ja) * | 2009-03-10 | 2010-09-24 | Mitsutoyo Corp | 形状測定機および倣いプローブ装置 |
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