JP2004020467A - 表面形状計測装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】計測対象物の真の表面形状を、より正確に測定できるような表面形状計測装置を得る。
【解決手段】計測対象物16との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物16の表面との距離に基づいた演算を行い、計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測装置であって、計測対象物16の表面との距離を測定するための距離センサ11〜15を、距離センサ13を中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの11、15と距離センサの12、14と組を移動方向に沿って、最も外側の距離センサの11、15の組の距離センサ間の距離が移動距離(計測対象物16の長さ)以下となるように複数配置したものである。
【選択図】 図1
【解決手段】計測対象物16との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物16の表面との距離に基づいた演算を行い、計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測装置であって、計測対象物16の表面との距離を測定するための距離センサ11〜15を、距離センサ13を中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの11、15と距離センサの12、14と組を移動方向に沿って、最も外側の距離センサの11、15の組の距離センサ間の距離が移動距離(計測対象物16の長さ)以下となるように複数配置したものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば、レール製造プロセスにおけるレール波形状計測、鋼板の圧延機における圧延ロール表面プロフィール計測等に用いられる表面形状計測装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図12は従来から表面形状の計測に用いられている装置を表す図である。この装置は、例えば特開昭64−61605号公報や鉄道技術研究報告No.1336等に開示されている方法(以下、この方法を3点法という)を用いて表面形状の計測を行うものである。ここでは例として、この装置を用いて鋼板の圧延ロールの長手方向の表面形状を計測する場合について説明する。ここで、表面形状を計測するとは、ある距離を基準として(例えば相対的な移動方向に対して前端となる部分)、その距離からの変動を計測し、その形状を復元することをいうものとする。ただ、計測対象物全体の幅、厚さ等をもって表面形状を表現してもよい。
【0003】
図12において、距離センサ取り付け台100には、3つの距離センサ101、102及び103が固定されている。この3つの距離センサ101、102及び103は、自身と計測対象物104との間の距離を計測し、演算回路106においてその距離(計測値)を判断する。距離センサ101及び103は、距離センサ102を中心として、距離センサ102から等間隔の位置に固定されている。
【0004】
計測時には計測対象物104と3つの距離センサ101、102及び103とを相対的に移動させる。この移動には、計測対象物104を搬送して移動する場合と、距離センサ101、102及び103を移動させる場合とがある。表面形状を正確に計測できるように装置(距離センサ取り付け台100)を計測対象物104に倣わせるのが倣いロール107である。
【0005】
計測対象物104と3つの距離センサ101、102及び103との相対的な移動距離を、例えばロータリエンコーダ等の移動距離検出手段105が計測し、演算回路106においてその距離を判断する。そして、3つの距離センサ101、102及び103が同時にそれぞれ計測した計測値と、移動距離とに基づいて、演算回路106が計測対象物104の表面形状を計測する。
【0006】
ここで、移動距離検出手段105により計測される移動距離は正確に計測されるものと考える。したがって、理想的には1つの距離センサと計測対象物104との間の距離と移動距離との関係がわかれば表面形状の計測を行える。ただ、距離センサ取り付け台100において、搬送又は移動に伴ってガタやヨーイングが生じる場合があり、距離センサ101、102及び103の計測によって判断した計測値には、距離方向の誤差や傾きによる誤差が含まれている場合がある。そのために3点法を用いるのである。
【0007】
3点法では、このような距離変動誤差や傾き誤差を相殺する目的で差分値を利用した方法(差分法)を用いている。図11の距離センサ101、102及び103において、距離変動誤差や傾き誤差がない理想的な計測値をそれぞれhR1、hR2、hR3とし、距離センサ取り付け台100の距離変動量をδ、傾き量をk、距離センサの間隔をLaとすると、距離センサ101、102及び103による計測値は、以下のような式(1)〜(3)で表される。
h1=hR1+δ−k×La …(1)
h2=hR2+δ …(2)
h3=hR3+δ+k×La …(3)
【0008】
ここで、以下のように差分値Δhを定義すると、次式(4)のように距離変動量δ、傾き量kに影響されず、誤差のない理想的な計測値hR1、hR2、hR3だけで表現できることがわかる。
【0009】
図13は周期(周波数)とゲインGとの関係を表す図である。図13は、距離センサの間隔Laを750mmとしたときのゲインGの状態を表している。ここで、ゲインGとは、ある移動距離における表面形状と差分値Δhとの比であるとする。計測対象物104の表面形状は一定の周期で変動しているとすると、差分値Δhは計測対象物104の表面形状の周期λ(周波数1/λ)によりゲインGが異なる。この場合、ゲインGは0≦G≦2の値を採る(理想的には周期にかかわらず1となるべきである)。このゲインGは距離センサ間隔Laによって異なるものである。
【0010】
以上を数式で表す。計測対象物104の表面形状がAsin(2π×x/λ)の合成で表される(xは移動距離)と仮定し、(4)式に代入すると、次式(5)のようになる。
【0011】
【0012】
したがって、差分値Δhの表面形状に対するゲインGは、次式(6)で表される。
G=(1−cos(2π×La/λ)) …(6)
【0013】
すなわち、ゲインGは表面形状の周期λによって変化し、さらに距離センサの間隔Laに依存することになる。そのため、差分値Δhは計測対象物104の表面形状だけに基づいて変化するものではなく、ゲインGによっても変化するので、計測対象物104の表面形状を正確に表現しているわけではない。そこで、ゲインGを一定値(=1)にするような補正値を差分値Δhに乗算すれば、その値は表面形状のみにより変化する値を表すものとなる。
【0014】
図14は3点法による表面形状の計測の流れを表す図である。図14(a)は実際の表面形状を表す。図14(b)は差分法による差分値Δhを表す。図14(c)は差分値周波数を表し各周波数における正弦波の成分を表す。図14(d)はゲイン補正値と周波数との関係を表す。また、図14(e)は3点法により計測した最終的な表面形状を表す。3点法では、演算回路106において、距離センサの間隔Laに基づいた周期λ(周波数1/λ)におけるゲインGをあらかじめ用意しておく。そして、差分値Δhを(5)式に基づいて周波数領域に変換し、周波数毎のゲインGの逆数の値を乗算した上で(実際には、そのうちの1つの周波数だけが表面形状を表すことになる)、さらに周波数逆変換を施して(A及びλを算出、推定することにより)正確な表面形状に復元する方法(周波数補正法)を提案している。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
図15は差分値Δhが0になるときの距離センサ取り付け台100と計測対象物104との位置関係を表す図である。図13で表されているように、3点法ではゲインGが0となってしまう周波数が存在する(例えば周波数1.3、2.7、3.9、…(1/m))。これは図15に示される場合のように距離センサの間隔Laと表面形状の周期λの整数倍とが一致し、差分値Δhが0になる場合である。差分値Δhが0になると、その逆数は無限大となるので補正を行うことができなくなる(ゲインGを1にする補正ができない)。また、ゲインGが0でなくとも、その値が小さければ計測倍率(補正の値となるゲインGの逆数の値)が大きくなってしまう。そのため、算出した差分値Δhの中に計測誤差が重畳する場合には誤差が拡大することとなり、補正の精度が劣化してしまう。
【0016】
また、図12のように、距離センサ取り付け台100に倣いロール107a及び107bを取り付け、計測対象物104に倣わせて計測を行う場合について考える。装置が計測対象物104に倣っていなければ正確な表面形状を計測することができず、その間は不感帯の領域となる。したがって、距離センサ101、103よりも外側に倣いロール107a、107bを取り付けていると、計測対象物104の前端部においては、3つの距離センサにより計測対象物104との間の距離計測が開始されても、その時点ではまだ計測対象物104は倣いロール107aに到達しておらず倣わせることができない。また、計測対象物104の後端部においては、3つの距離センサにより計測対象物104との間の距離計測が行われているにもかかわらず、計測対象物104は倣いロール107bから抜けることになり、倣わせることができない。そのため、不感帯の領域が広がることになる。
【0017】
さらに、計測対象物104の長手方向形状を求めるために、距離センサ取り付け台100を固定して計測対象物104を搬送ロールに乗せて搬送する場合を考える。計測対象物104は搬送ロールにより単純支持された状態になるので、搬送ロールの間隔を密にし、かつ搬送ロールの高さを正確に管理しないと弾性変形が生じる可能性がある。特に計測対象物104の前後の端部(以下、前後端という)では弾性変形が顕著となる。弾性変形が生じた状態で形状を計測しても、計測対象物104の真の形状を計測したとは言えない。したがって、正確な計測を行うには弾性変形の発生を回避する手段を講じる必要がある。
【0018】
そこで、本発明では、計測対象物の真の表面形状を、より正確に計測できるような表面形状計測装置を得ることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
そのため、本発明に係る表面形状計測装置は、計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行い、計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測装置であって、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、2組以上移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が移動距離以下となるように複数配置したものである。
本発明においては、ある距離センサを中心として対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を2組以上(つまり、5以上の奇数個の距離センサ)配置する。その際、各距離センサを表面形状を計測する方向に沿って直列にしかも、最も外側の距離センサ間の距離が移動距離(表面形状を計測する部分の距離)以下になるようにし、少なくとも全ての距離センサが同時に計測対象物を計測できる部分が存在するように配置する。そして、例えば、全ての距離センサが同時に計測対象物を計測した差分値に基づいた演算を行い、より正確な表面形状を算出する。
【0020】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、ある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる2組以上直列に並べた点上に、計測対象物の表面との距離を計測するためにそれぞれ配置した複数の距離センサと、複数の距離センサが設置される取り付け台と、移動距離を計測するための距離検出手段と、距離検出手段により計測された移動距離と複数の距離センサにより計測された計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行い、計測対象物の表面形状を計測する演算手段とを備え、計測対象物に対し、複数の距離センサの配置方向に取り付け台を移動させて、移動距離及び計測対象物の表面との距離を計測するものである。
本発明においては、取り付け台のある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる2組以上直列に並べた点上に距離センサをそれぞれ配置する。さらに、計測対象物に対し取り付け台を移動させることにより距離検出手段が移動距離を検出する。その移動により複数の距離センサに計測された計測値と距離検出手段が検出した移動距離に基づいて演算手段が計測対象物の表面形状を算出する。
【0021】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、ある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる2組以上直列に並べた点上に、計測対象物の表面との距離を計測するためにそれぞれ配置した複数の距離センサと、複数の距離センサが設置される取り付け台と、計測対象物の端部からの距離を計測するための距離検出手段と、距離検出手段により計測された距離と複数の距離センサにより計測された計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行い、計測対象物の表面形状を計測する演算手段とを備え、計測対象物を移動させて、計測対象物の端部からの距離及び計測対象物の表面との距離を計測するものである。
本発明においては、取り付け台のある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる2組以上直列に並べた点上に距離センサをそれぞれ配置する。さらに、計測対象物を移動(搬送)させることにより距離検出手段が計測対象物端部からの距離をを検出する。その移動により複数の距離センサに計測された計測値と距離検出手段が検出した距離に基づいて演算手段が計測対象物の表面形状を算出する。
【0022】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、複数の距離センサの計測による距離に基づいて算出した差分値を周波数領域に変換し、周波数毎に定められた倍率で補正して、周波数毎に差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とする演算を行うものである。
本発明においては、複数の距離センサの計測による距離に基づいて算出した差分値を例えば、FFTにより周波数領域に変換し、表面形状を正弦波の合成波として表す。差分値を周波数領域に変換した際に現れる、距離センサ間の距離に依存する各周波数により異なる計測倍率をあらかじめ算出しておき、その計測倍率に基づいて補正した周波数毎に差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値として演算を行う。
【0023】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、計測精度のオーダに関して、ある距離センサとの距離が互いに素の関係になるような位置に各組の距離センサを配置するものである。
本発明においては、表面形状の演算の際に、距離センサ間の距離をできるだけ短くしつつ、しかも計測倍率が0となるまでの周波数域を拡げるために、互いに素の関係になるような位置に各組の距離センサを配置する。
【0024】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、2組の距離センサを配置する場合に、内側の組の距離センサとある距離センサとの距離が、外側の組の距離センサとある距離センサとの距離の80%以下となるように配置するものである。
本発明においては、距離センサ間の距離をできるだけ短くしつつ、しかもそれぞれの距離に依存する周期を異ならせて、計測倍率が小さい周波数の部分を少なくして補正の精度を高めるため、内側の組の距離センサとある距離センサとの距離が、外側の組の距離センサとある距離センサとの距離の80%以下となるように配置する。
【0025】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、ある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる1組以上直列に並べた点上に、計測対象物の表面との距離を計測するためにそれぞれ配置した複数の距離センサと、複数の距離センサを計測対象物に倣わせるために、最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に設けた倣いロールとを少なくとも備えるものである。
本発明においては、全ての距離センサでの計測が行われている間については、装置を計測対象物に倣わせるようにするため、倣いロールは最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に設ける。
【0026】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、計測対象物を搬送するための複数の搬送ロールの上側に設けられた表面形状計測装置において、搬送方向の前後6m以内の距離においては搬送ロールの間隔を1.5m以下とし、かつ直近に位置する搬送ロールについては、他の搬送ロールの位置よりも0mm以上1mm以下の範囲で高く設置した上で表面形状を計測するものである。
本発明においては、計測対象物を搬送ロールで搬送することで、装置との間で相対移動させ、表面形状を計測する際に、少なくとも表面形状を正確に計測するのに弾性変形を起こさせないようにするため、搬送方向の前後6m以内の距離においては搬送ロールの間隔を1.5m以下とし、かつ直近に位置する1本又は2本(例えば、2本の搬送ロール間の上側に装置が設けられている場合に2本の搬送ロールを対象とする)搬送ロールについては、他の搬送ロールの位置よりも0mm以上1mm以下の範囲で高く設置する。
【0027】
【発明の実施の形態】
実施形態1.
図1は本発明の第1の実施の形態に係る表面形状計測装置の構成を表すブロック図である。図1において、10は距離センサ取り付け台100と同様の距離センサ取り付け台である。距離センサ取り付け台10には、距離センサ11〜15が固定されている。距離センサ11及び15は、距離センサ13を中心として、距離センサ13から等間隔の位置(以下、この間隔をLaとし、例えばLa=270mmとする)に固定されている。距離センサ12及び14についても同様に距離センサ13から等間隔の位置(以下、この間隔をLbとし、例えばLb=750mmとする)に固定されている。距離センサ11〜15としては例えばレーザ式の距離計を用いる。また、間隔Laの値が間隔Lbの80%以下になるように、また、実験との都合上本実施の形態では行われていないが、間隔Laと間隔Lbとができるだけ互いに素の関係となるように設定する。
【0028】
ここで間隔Laと間隔Lbとは長さの単位を有するので、その単位の採り方によっては互いに素の関係とは言えない場合も生ずるが、必要とする計測精度に応じた単位において互いに素の関係と言えればよいものと考える。つまり、互いに素の関係であれば最小公倍数において割り切れる。これを本実施の形態に用いれば、間隔Laと間隔Lbの最小公倍数の周波数においてゲインGが0となる。ゲインGが0より大きい周波数域を最も長く維持できるのが互いに素の関係にある場合となる。
【0029】
計測対象物16、移動距離検出手段17、倣いロール19は、それぞれ上述した計測対象物104、移動距離検出手段105、倣いロール107と同様のものである。ここで、倣いロール19がなければ、計測対象物16に対し、距離センサ取り付け台10が蛇行するおそれがあり、距離センサ11〜15の計測レンジを外れることが考えられるため、これを防ぐために倣いロール19を取り付けて装置を計測対象物16に倣わせるものである。ここでは距離センサ11と12との間、距離センサ14と15との間に設ける。このように倣いロール19を設けることにより、前後端においても倣わせた上で、5つの距離センサによる距離計測を行うことができるので不感帯の領域を短くすることができる。また、距離センサ11、15の内側であり、装置を計測対象物16に倣わせることができれば、例えば距離センサ12と13との間、距離センサ13と14との間に設けることもできる。
【0030】
演算回路18は、後述する処理方法の違いにおいて、演算回路106とは異なる。この演算回路18は、例えばコンピュータに本実施の形態で説明する処理を行うために記載されたプログラムを実行させることにより実現する。この演算回路18では、移動距離検出手段17による移動距離の計測により、10mm移動したものと判断する度に、その時の距離センサ11〜15が示す計測値を判断する。そして、計測対象物16の表面上において全ての計測値を取り終えると、それらの計測値に基づいて表面形状を判断する。
【0031】
本実施の形態は、5つの距離センサ11〜15において同時に計測した計測値に基づいて差分値Δhを算出し、演算を行うようにしたものである。この際に、差分値Δhに基づいて算出されるゲインGの値ができるだけ0に近づかないように、間隔Laに依存する余弦波の周期と間隔Lbに依存する余弦波の周期とを異ならせるように間隔La及び間隔Lbの採り方を工夫する。そのため、間隔Laと間隔Lbとが互いに素となる関係にするようにする。また、各周期が近づかないように間隔Laが間隔Lbの80%以下の間隔になるようにする。また、倣いロール19を距離センサ11と12との間、距離センサ14と15との間に設けることにより、できるだけはやく差分値Δhが算出できるようにして不感帯の領域を短くする。
【0032】
次に本実施の形態の演算回路18の処理動作を中心にさらに詳細に説明する。演算回路18は、移動距離検出手段17による計測に基づいて、距離センサ11〜15と計測対象物16との間で相対的に移動した距離が10mmになったものと判断すると、その時の距離センサ11〜15が示す計測値を判断する。場合によっては記憶装置(図示せず)に記憶しておく。
【0033】
距離センサ11〜15による計測が終了すると、演算回路18は表面形状に関する処理を行う。まず、次式(7)に基づいて差分値Δhを算出する。ここで、距離センサ11、12、13、14及び15による計測値をそれぞれh1、h2、h3、h4及びh5とする。
Δh=h3−(h1+h2+h4+h5)/4 …(7)
【0034】
図2は第1の実施の形態における周波数とゲインGとの関係を表す図である。ただし、この図2においては、間隔La=540mm、間隔Lb=750mmとして算出したものを示している。計測対象物16の表面形状をAsin(2π×x/λ)で表される(xは移動距離)と仮定する。そして、差分値Δhを周波数領域に変換した場合に差分値Δhの真の形状に対するゲインGは次式(8)で表される。
G=1−{cos(2π×La/λ)+cos(2π×Lb/λ)}/2…(8)
【0035】
図3は3点法による周期(周波数)とゲインGとの関係を表す図である。図3は距離センサの間隔を540mmとしたときのゲインGの状態を表している。前述した図13と比べるとその周期が異なる。したがって、0となる位置も異なる。これを利用し、ゲインGを構成するcos(2π×La/λ)+cos(2π×Lb/λ)が2にならないような周期にすれば(つまり、cos(2π×La/λ)とcos(2π×Lb/λ)とが同時に1にならなければ)ゲインGは0にならない。これを満たすためには間隔Laと間隔Lbとが互いに素となるように設定するのが望ましい。また、たとえ間隔Laと間隔Lbとが互いに素の関係にあったとしても、両者の値が近ければ、cos(2π×La/λ)とcos(2π×Lb/λ)とがそれぞれ同時に1に近くなるため、0ではないがゲインGも小さい値になる。そこで、さらに間隔Laの値が間隔Lbの80%以下になるように設定するのが望ましい。しかも、距離センサを7、9…と増やしていく毎にゲインGが0になる部分が少なくなるので、その分、測定精度も高くなる。
【0036】
差分値Δhを周波数領域に変換し、演算を行う方法には、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)を用いて行うものとする。FFTについては参考文献が多数存在するので説明を省略する。ただ、算出方法についてはこれに限るものではなく、同様の結果を得られるものであればその方法は問わない。
【0037】
そして、(8)式に基づいて、その周期λ(周波数1/λ)におけるゲインGの逆数を差分値Δhに乗算することにより、ゲイン補正を行ってゲインGによる影響を除くようにする。したがって、算出される値は表面形状のみによる影響を受けることになる。ここで、ゲイン補正の計測倍率が大きくなると、ヨーイング等による誤差ではない、距離センサ11〜15による計測ノイズ(ランダム誤差)の影響も拡大する。そこで、ゲインGが0.2以下(逆数は5.0以上となる)の場合は補正を行わないようにする。
【0038】
ゲイン補正をした差分値に対して、再度FFTによる周波数逆変換を施し、その移動距離における計測対象物16の表面形状を判断する。これを、それぞれの移動距離に対して行う。また、距離センサ11〜15の計測ノイズを考慮し、場合によっては、例えば11点の移動平均を施した上で表面形状を判断する。
【0039】
図4はミズ糸(水糸)を利用してオフラインで計測した表面形状を表す図である。計測対象物として10mのレール鋼を用いている。図5は、差分法による5点の差分値Δhを表す図である。図6はゲイン補正して計測した最終的な表面形状を表す図である。図7は参考として3点法により計測した表面形状を表す図である。
【0040】
以上のように第1の実施の形態によれば、距離センサ11〜15による計測に基づいて、(7)式により差分値Δhを算出し、FFTにより周波数変換することにより(8)式で表されるゲインGをできるだけ0に近づかせないようにして、計測倍率を低くすることにより補正の精度を上げるようにしたので、計測対象物16の表面形状をより正確に計測することができる。その際、距離センサ11、15と距離センサ13との間隔Lbと距離センサ12、14と距離センサ13との間隔Laについては、計測精度の単位においてできるだけ互いに素となるような関係にすることにより、不感帯の領域を短くする等の理由から間隔La、間隔Lbを短くしつつも、ゲインGが0でない周波数帯域幅を拡げることができる。また、間隔La(狭い方)を間隔Lb(広い方)の80%以下にするように距離センサ11〜15を配置することにより、例えば、精度が悪くなる等の理由で補正できないゲインGが0.2以下の値となる周波数の領域を減らすことができ、補正を行える部分を拡げることができる。実験結果によれば、3点法による計測誤差は79μm(0.079mm)であったが、本実施の形態の装置を用いて表面形状を計測することにより20μm(0.020mm)となり、その精度が大幅に向上した。
【0041】
実施形態2.
図8は搬送ロールで搬送されるレール鋼の表面形状を本実施の形態の表面形状計測装置で計測する状態を表す図である。図8におけるレール鋼を本実施の形態における計測対象物16とする。一方、図8にあるように、本発明に係る計測装置をレール鋼を搬送するための搬送ロールに合わせて取り付けている。ここで、本実施の形態においては、計測装置の前後7mにわたって搬送ロールの間隔を1mとし、かつ、計測装置の直下に設けられた1本の搬送ロールに関しては、周囲の搬送ロールに比べて約0.3mm高い位置になるように固定している。これは、搬送ロールによる計測対象物の搬送に伴って搬送ロール間で起こり得る弾性変形(たわみ)の影響が及ぶのを防ぐためのものである。
【0042】
図9は計測装置から離れた位置で弾性変形を起こした場合を示す図である。弾性変形搬送ロールの間隔を密にすると防ぐことができる。また、図9のようにたとえ計測装置と離れた位置で弾性変形が起こったとしても計測対象物の計測部位にその影響が及ぶ可能性があることから、搬送ロールを密にする領域をある程度確保する必要がある。しかしながら、あまり長い領域にわたって搬送ロールを密にするのは経済的ではない。そこで、少なくとも計測装置近傍の6m以下の領域については、搬送ロールの設置間隔を1.5m以下の密の状態にするのが望ましい。
【0043】
図10は計測装置直下の搬送ロールが周囲より低い場合を示す図である。たとえ、搬送ロールの間隔を密にしても、搬送ロールの高さがそろっていなければ、結果的に計測対象物を支持する点数が減るので、搬送ロール間隔を粗にしたのと同じ状態になり、弾性変形が生じることになる。理想的には、全ての搬送ロールの高さを高精度で管理することが望ましい。しかし、現実の操業においては、数10本にも及ぶ搬送ロールの高さを精密に管理することは時間と人手を考えれば困難である。図10のように計測装置の直下の搬送ロールが周囲の搬送ロールに比べて低い場合、計測対象物の前後端は片持ち梁状態となり弾性変形が生じることになる。つまり、計測装置の直下の搬送ロールの高さが周囲の搬送ロールに比べて低くなると問題が発生する。そこで、特に計測対象物の前後端での弾性変形の発生を軽減するため、複数の搬送ロールのうち、距離センサ取り付け台10に近接する(直近の)1本又は2本の搬送ロールの高さをそれ以外の搬送ロールの高さよりも0〜1mmの範囲で高く設置し、管理するのが望ましい。
【0044】
図11は計測装置直下の搬送ロールを周囲より高くした場合を示す図である。図11のようにあらかじめ計測装置の直下の搬送ロールのみを高くして管理すれば、片持ち梁状態になることを未然に防げるため、弾性変形の発生を極力抑えることができる。
【0045】
以上から本実施の形態は計測装置の前後7mにわたって搬送ロールの間隔を1mとし、かつ、計測装置の直下に設けられた1本の搬送ロールに関しては、周囲の搬送ロールに比べて約0.3mm高い位置になるように固定している。
【0046】
以上のように第2の実施の形態によれば、少なくとも表面形状計測装置前後のそれぞれ6m以下の領域については、搬送ロールの設置間隔を1.5m以下の密の状態にするように設定し、また距離センサ取り付け台10に近接する1本又は2本の搬送ロールの高さをそれ以外の搬送ロールの高さよりも0〜1mmの範囲で高く設置するようにしたので、弾性変形を抑えることができ、表面形状計測に関して厳密に管理しなければならない搬送ロールの数は1又は2本程度でよくなり、メインテナンスに対する負担を大幅に軽減することができる。
【0047】
実施形態3.
上述の第1の実施の形態では、距離センサ11〜15の5つ設けて、同時に計測し、その差分値Δhに基づいて算出した。本発明はこれに限定されるものではなく、例えば距離センサを5つ以上の奇数個(2組以上の組)設けて、計測を行うようにしてもよい。
【0048】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ある距離センサを中心として対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を2組以上配置するようにし、全ての距離センサの計測値に基づいた演算を行って表面形状を計測するようにしたので、演算の際に算出した差分値を周波数領域に変換した際に現れる、周波数よって異なる計測倍率において、計測倍率が0となる領域を少なくし、より有効な補正を行った上で、より正確な表面形状の計測を行うことができる。
【0049】
また、本発明によれば、ある点を中心として対称にかつ同距離に位置するような2点を2組以上直列に並べた点上に距離センサを配置するようにし、計測対象物に対して距離センサが設置された取り付け台を移動させて全ての距離センサにより計測された計測値に基づいた演算を行って表面形状を計測するようにしたので、演算の際に算出した差分値を周波数領域に変換した際に現れる、周波数よって異なる計測倍率において、計測倍率が0となる領域を少なくし、より有効な補正を行った上で、より正確な表面形状の計測を行うことができる。
【0050】
また、本発明によれば、取り付け台のある点を中心として対称にかつ同距離に位置するような2点を2組以上直列に並べた点上に距離センサを配置するようにし、取り付け台(装置)に対して計測対象物を移動させて全ての距離センサにより計測された計測値に基づいた演算を行って表面形状を計測するようにしたので、演算の際に算出した差分値を周波数領域に変換した際に現れる、周波数よって異なる計測倍率において、計測倍率が0となる領域を少なくし、より有効な補正を行った上で、より正確な表面形状の計測を行うことができる。
【0051】
また、本発明によれば、複数の距離センサの計測による距離に基づいて差分値を算出し、その差分値に対して、例えば、FFTを利用して周波数領域に変換し、表面形状を正弦波の合成波として表した上で、計測倍率に基づいて補正して逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とした演算を行うようにしたので、高速に、しかもより正確に表面形状の計測の演算を行うことができる。
【0052】
また、本発明によれば、各組の距離関係を、互いに素となるような関係にしたので、例えば、FFTを利用した演算を行って表面形状を計測する場合に、距離センサ間の距離をできるだけ短くしつつ、しかも計測倍率が0となるまでの周波数域を拡げることができ、より正確な表面形状の計測の演算を行うことができる。
【0053】
また、本発明によれば、2組の距離センサを配置する場合に、内側の組の距離センサとある距離センサとの距離が、外側の組の距離センサとある距離センサとの距離の80%以下となるように配置するようにしたので、距離センサ間の距離をできるだけ短くしつつ、しかも計測倍率が小さい周波数の部分を少なくして補正の精度を高めるようにすることができ、より正確な表面形状の計測の演算を行うことができる。
【0054】
また、本発明によれば、最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に倣いロールを設けるようにしたので、全ての距離センサでの計測が行われている間については、装置を計測対象物に倣わせることができ、不感帯の領域を短くすることができる。
【0055】
また、本発明によれば、計測対象物を搬送することにより表面形状を計測する際に、搬送方向の前後6m以内の距離においては搬送ロールの間隔を1.5m以下とし、かつ直下に位置する搬送ロールについては、他の搬送ロールの位置よりも0mm以上1mm以下の範囲で高く設置するようにしたので、弾性変形による表面形状の計測への影響を抑えることができ、また表面形状計測に関して厳密に管理するのは直下の搬送ロールの(1又は2本程度)でよくなるので、メインテナンスに対する負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表面形状計測装置の構成を表すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態における周波数とゲインGとの関係を表す図である。
【図3】3点法による周期(周波数)とゲインGとの関係を表す図である。
【図4】ミズ糸(水糸)を利用してオフラインで計測した表面形状を表す図である。
【図5】差分法による5点の差分値Δhを表す図である。
【図6】ゲイン補正して計測した最終的な表面形状を表す図である。
【図7】3点法により計測した表面形状を表す図である。
【図8】搬送ロールで搬送されるレール鋼の表面形状を本実施の形態の表面形状計測装置で計測する状態を表す図である。
【図9】計測装置から離れた位置で弾性変形を起こした場合を示す図である。
【図10】計測装置直下の搬送ロールが周囲より低い場合を示す図である。
【図11】計測装置直下の搬送ロールを周囲より高くした場合を示す図である。
【図12】従来から表面形状の計測に用いられている装置を表す図である。
【図13】周期(周波数)とゲインGとの関係を表す図である。
【図14】3点法による表面形状の計測の流れを表す図である。
【図15】差分値Δhが0になるときの距離センサ取り付け台100と計測対象物104との位置関係を表す図である。
【符号の説明】
10、100距離センサ取り付け台
11、12、13、14、15、101、102、103 距離センサ
16、104 計測対象物
17、105 移動距離検出手段
18、106 演算回路
19、109 倣いロール
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば、レール製造プロセスにおけるレール波形状計測、鋼板の圧延機における圧延ロール表面プロフィール計測等に用いられる表面形状計測装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図12は従来から表面形状の計測に用いられている装置を表す図である。この装置は、例えば特開昭64−61605号公報や鉄道技術研究報告No.1336等に開示されている方法(以下、この方法を3点法という)を用いて表面形状の計測を行うものである。ここでは例として、この装置を用いて鋼板の圧延ロールの長手方向の表面形状を計測する場合について説明する。ここで、表面形状を計測するとは、ある距離を基準として(例えば相対的な移動方向に対して前端となる部分)、その距離からの変動を計測し、その形状を復元することをいうものとする。ただ、計測対象物全体の幅、厚さ等をもって表面形状を表現してもよい。
【0003】
図12において、距離センサ取り付け台100には、3つの距離センサ101、102及び103が固定されている。この3つの距離センサ101、102及び103は、自身と計測対象物104との間の距離を計測し、演算回路106においてその距離(計測値)を判断する。距離センサ101及び103は、距離センサ102を中心として、距離センサ102から等間隔の位置に固定されている。
【0004】
計測時には計測対象物104と3つの距離センサ101、102及び103とを相対的に移動させる。この移動には、計測対象物104を搬送して移動する場合と、距離センサ101、102及び103を移動させる場合とがある。表面形状を正確に計測できるように装置(距離センサ取り付け台100)を計測対象物104に倣わせるのが倣いロール107である。
【0005】
計測対象物104と3つの距離センサ101、102及び103との相対的な移動距離を、例えばロータリエンコーダ等の移動距離検出手段105が計測し、演算回路106においてその距離を判断する。そして、3つの距離センサ101、102及び103が同時にそれぞれ計測した計測値と、移動距離とに基づいて、演算回路106が計測対象物104の表面形状を計測する。
【0006】
ここで、移動距離検出手段105により計測される移動距離は正確に計測されるものと考える。したがって、理想的には1つの距離センサと計測対象物104との間の距離と移動距離との関係がわかれば表面形状の計測を行える。ただ、距離センサ取り付け台100において、搬送又は移動に伴ってガタやヨーイングが生じる場合があり、距離センサ101、102及び103の計測によって判断した計測値には、距離方向の誤差や傾きによる誤差が含まれている場合がある。そのために3点法を用いるのである。
【0007】
3点法では、このような距離変動誤差や傾き誤差を相殺する目的で差分値を利用した方法(差分法)を用いている。図11の距離センサ101、102及び103において、距離変動誤差や傾き誤差がない理想的な計測値をそれぞれhR1、hR2、hR3とし、距離センサ取り付け台100の距離変動量をδ、傾き量をk、距離センサの間隔をLaとすると、距離センサ101、102及び103による計測値は、以下のような式(1)〜(3)で表される。
h1=hR1+δ−k×La …(1)
h2=hR2+δ …(2)
h3=hR3+δ+k×La …(3)
【0008】
ここで、以下のように差分値Δhを定義すると、次式(4)のように距離変動量δ、傾き量kに影響されず、誤差のない理想的な計測値hR1、hR2、hR3だけで表現できることがわかる。
【0009】
図13は周期(周波数)とゲインGとの関係を表す図である。図13は、距離センサの間隔Laを750mmとしたときのゲインGの状態を表している。ここで、ゲインGとは、ある移動距離における表面形状と差分値Δhとの比であるとする。計測対象物104の表面形状は一定の周期で変動しているとすると、差分値Δhは計測対象物104の表面形状の周期λ(周波数1/λ)によりゲインGが異なる。この場合、ゲインGは0≦G≦2の値を採る(理想的には周期にかかわらず1となるべきである)。このゲインGは距離センサ間隔Laによって異なるものである。
【0010】
以上を数式で表す。計測対象物104の表面形状がAsin(2π×x/λ)の合成で表される(xは移動距離)と仮定し、(4)式に代入すると、次式(5)のようになる。
【0011】
【0012】
したがって、差分値Δhの表面形状に対するゲインGは、次式(6)で表される。
G=(1−cos(2π×La/λ)) …(6)
【0013】
すなわち、ゲインGは表面形状の周期λによって変化し、さらに距離センサの間隔Laに依存することになる。そのため、差分値Δhは計測対象物104の表面形状だけに基づいて変化するものではなく、ゲインGによっても変化するので、計測対象物104の表面形状を正確に表現しているわけではない。そこで、ゲインGを一定値(=1)にするような補正値を差分値Δhに乗算すれば、その値は表面形状のみにより変化する値を表すものとなる。
【0014】
図14は3点法による表面形状の計測の流れを表す図である。図14(a)は実際の表面形状を表す。図14(b)は差分法による差分値Δhを表す。図14(c)は差分値周波数を表し各周波数における正弦波の成分を表す。図14(d)はゲイン補正値と周波数との関係を表す。また、図14(e)は3点法により計測した最終的な表面形状を表す。3点法では、演算回路106において、距離センサの間隔Laに基づいた周期λ(周波数1/λ)におけるゲインGをあらかじめ用意しておく。そして、差分値Δhを(5)式に基づいて周波数領域に変換し、周波数毎のゲインGの逆数の値を乗算した上で(実際には、そのうちの1つの周波数だけが表面形状を表すことになる)、さらに周波数逆変換を施して(A及びλを算出、推定することにより)正確な表面形状に復元する方法(周波数補正法)を提案している。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
図15は差分値Δhが0になるときの距離センサ取り付け台100と計測対象物104との位置関係を表す図である。図13で表されているように、3点法ではゲインGが0となってしまう周波数が存在する(例えば周波数1.3、2.7、3.9、…(1/m))。これは図15に示される場合のように距離センサの間隔Laと表面形状の周期λの整数倍とが一致し、差分値Δhが0になる場合である。差分値Δhが0になると、その逆数は無限大となるので補正を行うことができなくなる(ゲインGを1にする補正ができない)。また、ゲインGが0でなくとも、その値が小さければ計測倍率(補正の値となるゲインGの逆数の値)が大きくなってしまう。そのため、算出した差分値Δhの中に計測誤差が重畳する場合には誤差が拡大することとなり、補正の精度が劣化してしまう。
【0016】
また、図12のように、距離センサ取り付け台100に倣いロール107a及び107bを取り付け、計測対象物104に倣わせて計測を行う場合について考える。装置が計測対象物104に倣っていなければ正確な表面形状を計測することができず、その間は不感帯の領域となる。したがって、距離センサ101、103よりも外側に倣いロール107a、107bを取り付けていると、計測対象物104の前端部においては、3つの距離センサにより計測対象物104との間の距離計測が開始されても、その時点ではまだ計測対象物104は倣いロール107aに到達しておらず倣わせることができない。また、計測対象物104の後端部においては、3つの距離センサにより計測対象物104との間の距離計測が行われているにもかかわらず、計測対象物104は倣いロール107bから抜けることになり、倣わせることができない。そのため、不感帯の領域が広がることになる。
【0017】
さらに、計測対象物104の長手方向形状を求めるために、距離センサ取り付け台100を固定して計測対象物104を搬送ロールに乗せて搬送する場合を考える。計測対象物104は搬送ロールにより単純支持された状態になるので、搬送ロールの間隔を密にし、かつ搬送ロールの高さを正確に管理しないと弾性変形が生じる可能性がある。特に計測対象物104の前後の端部(以下、前後端という)では弾性変形が顕著となる。弾性変形が生じた状態で形状を計測しても、計測対象物104の真の形状を計測したとは言えない。したがって、正確な計測を行うには弾性変形の発生を回避する手段を講じる必要がある。
【0018】
そこで、本発明では、計測対象物の真の表面形状を、より正確に計測できるような表面形状計測装置を得ることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
そのため、本発明に係る表面形状計測装置は、計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行い、計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測装置であって、計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、2組以上移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が移動距離以下となるように複数配置したものである。
本発明においては、ある距離センサを中心として対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を2組以上(つまり、5以上の奇数個の距離センサ)配置する。その際、各距離センサを表面形状を計測する方向に沿って直列にしかも、最も外側の距離センサ間の距離が移動距離(表面形状を計測する部分の距離)以下になるようにし、少なくとも全ての距離センサが同時に計測対象物を計測できる部分が存在するように配置する。そして、例えば、全ての距離センサが同時に計測対象物を計測した差分値に基づいた演算を行い、より正確な表面形状を算出する。
【0020】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、ある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる2組以上直列に並べた点上に、計測対象物の表面との距離を計測するためにそれぞれ配置した複数の距離センサと、複数の距離センサが設置される取り付け台と、移動距離を計測するための距離検出手段と、距離検出手段により計測された移動距離と複数の距離センサにより計測された計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行い、計測対象物の表面形状を計測する演算手段とを備え、計測対象物に対し、複数の距離センサの配置方向に取り付け台を移動させて、移動距離及び計測対象物の表面との距離を計測するものである。
本発明においては、取り付け台のある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる2組以上直列に並べた点上に距離センサをそれぞれ配置する。さらに、計測対象物に対し取り付け台を移動させることにより距離検出手段が移動距離を検出する。その移動により複数の距離センサに計測された計測値と距離検出手段が検出した移動距離に基づいて演算手段が計測対象物の表面形状を算出する。
【0021】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、ある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる2組以上直列に並べた点上に、計測対象物の表面との距離を計測するためにそれぞれ配置した複数の距離センサと、複数の距離センサが設置される取り付け台と、計測対象物の端部からの距離を計測するための距離検出手段と、距離検出手段により計測された距離と複数の距離センサにより計測された計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行い、計測対象物の表面形状を計測する演算手段とを備え、計測対象物を移動させて、計測対象物の端部からの距離及び計測対象物の表面との距離を計測するものである。
本発明においては、取り付け台のある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる2組以上直列に並べた点上に距離センサをそれぞれ配置する。さらに、計測対象物を移動(搬送)させることにより距離検出手段が計測対象物端部からの距離をを検出する。その移動により複数の距離センサに計測された計測値と距離検出手段が検出した距離に基づいて演算手段が計測対象物の表面形状を算出する。
【0022】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、複数の距離センサの計測による距離に基づいて算出した差分値を周波数領域に変換し、周波数毎に定められた倍率で補正して、周波数毎に差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とする演算を行うものである。
本発明においては、複数の距離センサの計測による距離に基づいて算出した差分値を例えば、FFTにより周波数領域に変換し、表面形状を正弦波の合成波として表す。差分値を周波数領域に変換した際に現れる、距離センサ間の距離に依存する各周波数により異なる計測倍率をあらかじめ算出しておき、その計測倍率に基づいて補正した周波数毎に差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値として演算を行う。
【0023】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、計測精度のオーダに関して、ある距離センサとの距離が互いに素の関係になるような位置に各組の距離センサを配置するものである。
本発明においては、表面形状の演算の際に、距離センサ間の距離をできるだけ短くしつつ、しかも計測倍率が0となるまでの周波数域を拡げるために、互いに素の関係になるような位置に各組の距離センサを配置する。
【0024】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、2組の距離センサを配置する場合に、内側の組の距離センサとある距離センサとの距離が、外側の組の距離センサとある距離センサとの距離の80%以下となるように配置するものである。
本発明においては、距離センサ間の距離をできるだけ短くしつつ、しかもそれぞれの距離に依存する周期を異ならせて、計測倍率が小さい周波数の部分を少なくして補正の精度を高めるため、内側の組の距離センサとある距離センサとの距離が、外側の組の距離センサとある距離センサとの距離の80%以下となるように配置する。
【0025】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、ある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる1組以上直列に並べた点上に、計測対象物の表面との距離を計測するためにそれぞれ配置した複数の距離センサと、複数の距離センサを計測対象物に倣わせるために、最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に設けた倣いロールとを少なくとも備えるものである。
本発明においては、全ての距離センサでの計測が行われている間については、装置を計測対象物に倣わせるようにするため、倣いロールは最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に設ける。
【0026】
また、本発明に係る表面形状計測装置は、計測対象物を搬送するための複数の搬送ロールの上側に設けられた表面形状計測装置において、搬送方向の前後6m以内の距離においては搬送ロールの間隔を1.5m以下とし、かつ直近に位置する搬送ロールについては、他の搬送ロールの位置よりも0mm以上1mm以下の範囲で高く設置した上で表面形状を計測するものである。
本発明においては、計測対象物を搬送ロールで搬送することで、装置との間で相対移動させ、表面形状を計測する際に、少なくとも表面形状を正確に計測するのに弾性変形を起こさせないようにするため、搬送方向の前後6m以内の距離においては搬送ロールの間隔を1.5m以下とし、かつ直近に位置する1本又は2本(例えば、2本の搬送ロール間の上側に装置が設けられている場合に2本の搬送ロールを対象とする)搬送ロールについては、他の搬送ロールの位置よりも0mm以上1mm以下の範囲で高く設置する。
【0027】
【発明の実施の形態】
実施形態1.
図1は本発明の第1の実施の形態に係る表面形状計測装置の構成を表すブロック図である。図1において、10は距離センサ取り付け台100と同様の距離センサ取り付け台である。距離センサ取り付け台10には、距離センサ11〜15が固定されている。距離センサ11及び15は、距離センサ13を中心として、距離センサ13から等間隔の位置(以下、この間隔をLaとし、例えばLa=270mmとする)に固定されている。距離センサ12及び14についても同様に距離センサ13から等間隔の位置(以下、この間隔をLbとし、例えばLb=750mmとする)に固定されている。距離センサ11〜15としては例えばレーザ式の距離計を用いる。また、間隔Laの値が間隔Lbの80%以下になるように、また、実験との都合上本実施の形態では行われていないが、間隔Laと間隔Lbとができるだけ互いに素の関係となるように設定する。
【0028】
ここで間隔Laと間隔Lbとは長さの単位を有するので、その単位の採り方によっては互いに素の関係とは言えない場合も生ずるが、必要とする計測精度に応じた単位において互いに素の関係と言えればよいものと考える。つまり、互いに素の関係であれば最小公倍数において割り切れる。これを本実施の形態に用いれば、間隔Laと間隔Lbの最小公倍数の周波数においてゲインGが0となる。ゲインGが0より大きい周波数域を最も長く維持できるのが互いに素の関係にある場合となる。
【0029】
計測対象物16、移動距離検出手段17、倣いロール19は、それぞれ上述した計測対象物104、移動距離検出手段105、倣いロール107と同様のものである。ここで、倣いロール19がなければ、計測対象物16に対し、距離センサ取り付け台10が蛇行するおそれがあり、距離センサ11〜15の計測レンジを外れることが考えられるため、これを防ぐために倣いロール19を取り付けて装置を計測対象物16に倣わせるものである。ここでは距離センサ11と12との間、距離センサ14と15との間に設ける。このように倣いロール19を設けることにより、前後端においても倣わせた上で、5つの距離センサによる距離計測を行うことができるので不感帯の領域を短くすることができる。また、距離センサ11、15の内側であり、装置を計測対象物16に倣わせることができれば、例えば距離センサ12と13との間、距離センサ13と14との間に設けることもできる。
【0030】
演算回路18は、後述する処理方法の違いにおいて、演算回路106とは異なる。この演算回路18は、例えばコンピュータに本実施の形態で説明する処理を行うために記載されたプログラムを実行させることにより実現する。この演算回路18では、移動距離検出手段17による移動距離の計測により、10mm移動したものと判断する度に、その時の距離センサ11〜15が示す計測値を判断する。そして、計測対象物16の表面上において全ての計測値を取り終えると、それらの計測値に基づいて表面形状を判断する。
【0031】
本実施の形態は、5つの距離センサ11〜15において同時に計測した計測値に基づいて差分値Δhを算出し、演算を行うようにしたものである。この際に、差分値Δhに基づいて算出されるゲインGの値ができるだけ0に近づかないように、間隔Laに依存する余弦波の周期と間隔Lbに依存する余弦波の周期とを異ならせるように間隔La及び間隔Lbの採り方を工夫する。そのため、間隔Laと間隔Lbとが互いに素となる関係にするようにする。また、各周期が近づかないように間隔Laが間隔Lbの80%以下の間隔になるようにする。また、倣いロール19を距離センサ11と12との間、距離センサ14と15との間に設けることにより、できるだけはやく差分値Δhが算出できるようにして不感帯の領域を短くする。
【0032】
次に本実施の形態の演算回路18の処理動作を中心にさらに詳細に説明する。演算回路18は、移動距離検出手段17による計測に基づいて、距離センサ11〜15と計測対象物16との間で相対的に移動した距離が10mmになったものと判断すると、その時の距離センサ11〜15が示す計測値を判断する。場合によっては記憶装置(図示せず)に記憶しておく。
【0033】
距離センサ11〜15による計測が終了すると、演算回路18は表面形状に関する処理を行う。まず、次式(7)に基づいて差分値Δhを算出する。ここで、距離センサ11、12、13、14及び15による計測値をそれぞれh1、h2、h3、h4及びh5とする。
Δh=h3−(h1+h2+h4+h5)/4 …(7)
【0034】
図2は第1の実施の形態における周波数とゲインGとの関係を表す図である。ただし、この図2においては、間隔La=540mm、間隔Lb=750mmとして算出したものを示している。計測対象物16の表面形状をAsin(2π×x/λ)で表される(xは移動距離)と仮定する。そして、差分値Δhを周波数領域に変換した場合に差分値Δhの真の形状に対するゲインGは次式(8)で表される。
G=1−{cos(2π×La/λ)+cos(2π×Lb/λ)}/2…(8)
【0035】
図3は3点法による周期(周波数)とゲインGとの関係を表す図である。図3は距離センサの間隔を540mmとしたときのゲインGの状態を表している。前述した図13と比べるとその周期が異なる。したがって、0となる位置も異なる。これを利用し、ゲインGを構成するcos(2π×La/λ)+cos(2π×Lb/λ)が2にならないような周期にすれば(つまり、cos(2π×La/λ)とcos(2π×Lb/λ)とが同時に1にならなければ)ゲインGは0にならない。これを満たすためには間隔Laと間隔Lbとが互いに素となるように設定するのが望ましい。また、たとえ間隔Laと間隔Lbとが互いに素の関係にあったとしても、両者の値が近ければ、cos(2π×La/λ)とcos(2π×Lb/λ)とがそれぞれ同時に1に近くなるため、0ではないがゲインGも小さい値になる。そこで、さらに間隔Laの値が間隔Lbの80%以下になるように設定するのが望ましい。しかも、距離センサを7、9…と増やしていく毎にゲインGが0になる部分が少なくなるので、その分、測定精度も高くなる。
【0036】
差分値Δhを周波数領域に変換し、演算を行う方法には、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)を用いて行うものとする。FFTについては参考文献が多数存在するので説明を省略する。ただ、算出方法についてはこれに限るものではなく、同様の結果を得られるものであればその方法は問わない。
【0037】
そして、(8)式に基づいて、その周期λ(周波数1/λ)におけるゲインGの逆数を差分値Δhに乗算することにより、ゲイン補正を行ってゲインGによる影響を除くようにする。したがって、算出される値は表面形状のみによる影響を受けることになる。ここで、ゲイン補正の計測倍率が大きくなると、ヨーイング等による誤差ではない、距離センサ11〜15による計測ノイズ(ランダム誤差)の影響も拡大する。そこで、ゲインGが0.2以下(逆数は5.0以上となる)の場合は補正を行わないようにする。
【0038】
ゲイン補正をした差分値に対して、再度FFTによる周波数逆変換を施し、その移動距離における計測対象物16の表面形状を判断する。これを、それぞれの移動距離に対して行う。また、距離センサ11〜15の計測ノイズを考慮し、場合によっては、例えば11点の移動平均を施した上で表面形状を判断する。
【0039】
図4はミズ糸(水糸)を利用してオフラインで計測した表面形状を表す図である。計測対象物として10mのレール鋼を用いている。図5は、差分法による5点の差分値Δhを表す図である。図6はゲイン補正して計測した最終的な表面形状を表す図である。図7は参考として3点法により計測した表面形状を表す図である。
【0040】
以上のように第1の実施の形態によれば、距離センサ11〜15による計測に基づいて、(7)式により差分値Δhを算出し、FFTにより周波数変換することにより(8)式で表されるゲインGをできるだけ0に近づかせないようにして、計測倍率を低くすることにより補正の精度を上げるようにしたので、計測対象物16の表面形状をより正確に計測することができる。その際、距離センサ11、15と距離センサ13との間隔Lbと距離センサ12、14と距離センサ13との間隔Laについては、計測精度の単位においてできるだけ互いに素となるような関係にすることにより、不感帯の領域を短くする等の理由から間隔La、間隔Lbを短くしつつも、ゲインGが0でない周波数帯域幅を拡げることができる。また、間隔La(狭い方)を間隔Lb(広い方)の80%以下にするように距離センサ11〜15を配置することにより、例えば、精度が悪くなる等の理由で補正できないゲインGが0.2以下の値となる周波数の領域を減らすことができ、補正を行える部分を拡げることができる。実験結果によれば、3点法による計測誤差は79μm(0.079mm)であったが、本実施の形態の装置を用いて表面形状を計測することにより20μm(0.020mm)となり、その精度が大幅に向上した。
【0041】
実施形態2.
図8は搬送ロールで搬送されるレール鋼の表面形状を本実施の形態の表面形状計測装置で計測する状態を表す図である。図8におけるレール鋼を本実施の形態における計測対象物16とする。一方、図8にあるように、本発明に係る計測装置をレール鋼を搬送するための搬送ロールに合わせて取り付けている。ここで、本実施の形態においては、計測装置の前後7mにわたって搬送ロールの間隔を1mとし、かつ、計測装置の直下に設けられた1本の搬送ロールに関しては、周囲の搬送ロールに比べて約0.3mm高い位置になるように固定している。これは、搬送ロールによる計測対象物の搬送に伴って搬送ロール間で起こり得る弾性変形(たわみ)の影響が及ぶのを防ぐためのものである。
【0042】
図9は計測装置から離れた位置で弾性変形を起こした場合を示す図である。弾性変形搬送ロールの間隔を密にすると防ぐことができる。また、図9のようにたとえ計測装置と離れた位置で弾性変形が起こったとしても計測対象物の計測部位にその影響が及ぶ可能性があることから、搬送ロールを密にする領域をある程度確保する必要がある。しかしながら、あまり長い領域にわたって搬送ロールを密にするのは経済的ではない。そこで、少なくとも計測装置近傍の6m以下の領域については、搬送ロールの設置間隔を1.5m以下の密の状態にするのが望ましい。
【0043】
図10は計測装置直下の搬送ロールが周囲より低い場合を示す図である。たとえ、搬送ロールの間隔を密にしても、搬送ロールの高さがそろっていなければ、結果的に計測対象物を支持する点数が減るので、搬送ロール間隔を粗にしたのと同じ状態になり、弾性変形が生じることになる。理想的には、全ての搬送ロールの高さを高精度で管理することが望ましい。しかし、現実の操業においては、数10本にも及ぶ搬送ロールの高さを精密に管理することは時間と人手を考えれば困難である。図10のように計測装置の直下の搬送ロールが周囲の搬送ロールに比べて低い場合、計測対象物の前後端は片持ち梁状態となり弾性変形が生じることになる。つまり、計測装置の直下の搬送ロールの高さが周囲の搬送ロールに比べて低くなると問題が発生する。そこで、特に計測対象物の前後端での弾性変形の発生を軽減するため、複数の搬送ロールのうち、距離センサ取り付け台10に近接する(直近の)1本又は2本の搬送ロールの高さをそれ以外の搬送ロールの高さよりも0〜1mmの範囲で高く設置し、管理するのが望ましい。
【0044】
図11は計測装置直下の搬送ロールを周囲より高くした場合を示す図である。図11のようにあらかじめ計測装置の直下の搬送ロールのみを高くして管理すれば、片持ち梁状態になることを未然に防げるため、弾性変形の発生を極力抑えることができる。
【0045】
以上から本実施の形態は計測装置の前後7mにわたって搬送ロールの間隔を1mとし、かつ、計測装置の直下に設けられた1本の搬送ロールに関しては、周囲の搬送ロールに比べて約0.3mm高い位置になるように固定している。
【0046】
以上のように第2の実施の形態によれば、少なくとも表面形状計測装置前後のそれぞれ6m以下の領域については、搬送ロールの設置間隔を1.5m以下の密の状態にするように設定し、また距離センサ取り付け台10に近接する1本又は2本の搬送ロールの高さをそれ以外の搬送ロールの高さよりも0〜1mmの範囲で高く設置するようにしたので、弾性変形を抑えることができ、表面形状計測に関して厳密に管理しなければならない搬送ロールの数は1又は2本程度でよくなり、メインテナンスに対する負担を大幅に軽減することができる。
【0047】
実施形態3.
上述の第1の実施の形態では、距離センサ11〜15の5つ設けて、同時に計測し、その差分値Δhに基づいて算出した。本発明はこれに限定されるものではなく、例えば距離センサを5つ以上の奇数個(2組以上の組)設けて、計測を行うようにしてもよい。
【0048】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ある距離センサを中心として対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を2組以上配置するようにし、全ての距離センサの計測値に基づいた演算を行って表面形状を計測するようにしたので、演算の際に算出した差分値を周波数領域に変換した際に現れる、周波数よって異なる計測倍率において、計測倍率が0となる領域を少なくし、より有効な補正を行った上で、より正確な表面形状の計測を行うことができる。
【0049】
また、本発明によれば、ある点を中心として対称にかつ同距離に位置するような2点を2組以上直列に並べた点上に距離センサを配置するようにし、計測対象物に対して距離センサが設置された取り付け台を移動させて全ての距離センサにより計測された計測値に基づいた演算を行って表面形状を計測するようにしたので、演算の際に算出した差分値を周波数領域に変換した際に現れる、周波数よって異なる計測倍率において、計測倍率が0となる領域を少なくし、より有効な補正を行った上で、より正確な表面形状の計測を行うことができる。
【0050】
また、本発明によれば、取り付け台のある点を中心として対称にかつ同距離に位置するような2点を2組以上直列に並べた点上に距離センサを配置するようにし、取り付け台(装置)に対して計測対象物を移動させて全ての距離センサにより計測された計測値に基づいた演算を行って表面形状を計測するようにしたので、演算の際に算出した差分値を周波数領域に変換した際に現れる、周波数よって異なる計測倍率において、計測倍率が0となる領域を少なくし、より有効な補正を行った上で、より正確な表面形状の計測を行うことができる。
【0051】
また、本発明によれば、複数の距離センサの計測による距離に基づいて差分値を算出し、その差分値に対して、例えば、FFTを利用して周波数領域に変換し、表面形状を正弦波の合成波として表した上で、計測倍率に基づいて補正して逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とした演算を行うようにしたので、高速に、しかもより正確に表面形状の計測の演算を行うことができる。
【0052】
また、本発明によれば、各組の距離関係を、互いに素となるような関係にしたので、例えば、FFTを利用した演算を行って表面形状を計測する場合に、距離センサ間の距離をできるだけ短くしつつ、しかも計測倍率が0となるまでの周波数域を拡げることができ、より正確な表面形状の計測の演算を行うことができる。
【0053】
また、本発明によれば、2組の距離センサを配置する場合に、内側の組の距離センサとある距離センサとの距離が、外側の組の距離センサとある距離センサとの距離の80%以下となるように配置するようにしたので、距離センサ間の距離をできるだけ短くしつつ、しかも計測倍率が小さい周波数の部分を少なくして補正の精度を高めるようにすることができ、より正確な表面形状の計測の演算を行うことができる。
【0054】
また、本発明によれば、最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に倣いロールを設けるようにしたので、全ての距離センサでの計測が行われている間については、装置を計測対象物に倣わせることができ、不感帯の領域を短くすることができる。
【0055】
また、本発明によれば、計測対象物を搬送することにより表面形状を計測する際に、搬送方向の前後6m以内の距離においては搬送ロールの間隔を1.5m以下とし、かつ直下に位置する搬送ロールについては、他の搬送ロールの位置よりも0mm以上1mm以下の範囲で高く設置するようにしたので、弾性変形による表面形状の計測への影響を抑えることができ、また表面形状計測に関して厳密に管理するのは直下の搬送ロールの(1又は2本程度)でよくなるので、メインテナンスに対する負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表面形状計測装置の構成を表すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態における周波数とゲインGとの関係を表す図である。
【図3】3点法による周期(周波数)とゲインGとの関係を表す図である。
【図4】ミズ糸(水糸)を利用してオフラインで計測した表面形状を表す図である。
【図5】差分法による5点の差分値Δhを表す図である。
【図6】ゲイン補正して計測した最終的な表面形状を表す図である。
【図7】3点法により計測した表面形状を表す図である。
【図8】搬送ロールで搬送されるレール鋼の表面形状を本実施の形態の表面形状計測装置で計測する状態を表す図である。
【図9】計測装置から離れた位置で弾性変形を起こした場合を示す図である。
【図10】計測装置直下の搬送ロールが周囲より低い場合を示す図である。
【図11】計測装置直下の搬送ロールを周囲より高くした場合を示す図である。
【図12】従来から表面形状の計測に用いられている装置を表す図である。
【図13】周期(周波数)とゲインGとの関係を表す図である。
【図14】3点法による表面形状の計測の流れを表す図である。
【図15】差分値Δhが0になるときの距離センサ取り付け台100と計測対象物104との位置関係を表す図である。
【符号の説明】
10、100距離センサ取り付け台
11、12、13、14、15、101、102、103 距離センサ
16、104 計測対象物
17、105 移動距離検出手段
18、106 演算回路
19、109 倣いロール
Claims (8)
- 計測対象物との間で相対的に移動させた移動距離と前記計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行い、前記計測対象物の表面形状を計測する表面形状計測装置であって、
前記計測対象物の表面との距離を計測するための距離センサを、ある距離センサを中心として、対称にかつ同距離に位置するように配置した距離センサの組を、2組以上前記移動方向に沿って、最も外側の組の距離センサ間の距離が前記移動距離以下となるように複数配置したことを特徴とする表面形状計測装置。 - ある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる2組以上直列に並べた前記点上に、計測対象物の表面との距離を計測するためにそれぞれ配置した複数の距離センサと、
該複数の距離センサが設置される取り付け台と、
移動距離を計測するための距離検出手段と、
該距離検出手段により計測された前記移動距離と前記複数の距離センサにより計測された前記計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行い、前記計測対象物の表面形状を計測する演算手段とを備え、
前記計測対象物に対し、前記複数の距離センサの配置方向に前記取り付け台を移動させて、前記移動距離及び前記計測対象物の表面との距離を計測することを特徴とする表面形状計測装置。 - ある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる2組以上直列に並べた前記点上に、計測対象物の表面との距離を計測するためにそれぞれ配置した複数の距離センサと、
該複数の距離センサが設置される取り付け台と、
前記計測対象物の端部からの距離を計測するための距離検出手段と、
該距離検出手段により計測された前記距離と前記複数の距離センサにより計測された前記計測対象物の表面との距離に基づいた演算を行い、前記計測対象物の表面形状を計測する演算手段とを備え、
前記計測対象物を移動させて、前記計測対象物の端部からの距離及び前記計測対象物の表面との距離を計測することを特徴とする表面形状計測装置。 - 前記複数の距離センサの計測による距離に基づいて算出した差分値を周波数領域に変換し、
周波数毎に定められた倍率で補正して、前記周波数毎に前記差分値を構成する成分を算出した上で逆変換して算出した値を、その移動距離における表面形状を表す値とする前記演算を行うことを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載の表面形状計測装置。 - 計測精度のオーダに関して、前記ある距離センサとの距離が互いに素の関係になるような位置に前記各組の距離センサを配置することを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載の表面形状計測装置。
- 前記2組の距離センサを配置する場合に、
内側の組の距離センサと前記ある距離センサとの距離が、外側の組の距離センサと前記ある距離センサとの距離の80%以下となるように配置することを特徴とする請求項5記載の表面形状計測装置。 - ある点を中心として対称にかつ同距離に位置する2点を組にし、最も外側の組間の距離が計測対称物の長さ以下となる1組以上直列に並べた前記点上に、計測対象物の表面との距離を計測するためにそれぞれ配置した複数の距離センサと、
該複数の距離センサを前記計測対象物に倣わせるために、前記最も外側の組の距離センサよりも内側の位置に設けた倣いロールと
を少なくとも備えることを特徴とする表面形状計測装置。 - 前記計測対象物を搬送するための複数の搬送ロールの上側に設けられた表面形状計測装置において、
前記搬送方向の前後6m以内の距離においては前記搬送ロールの間隔を1.5m以下とし、かつ直近に位置する前記搬送ロールについては、他の前記搬送ロールの位置よりも0mm以上1mm以下の範囲で高く設置した上で表面形状を計測することを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の表面形状計測装置。
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2002
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