JP2004020285A - 溶銑の燐濃度測定方法及びその装置並びにそのプローブ - Google Patents
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Abstract
【構成】溶銑に浸漬された測定電極と、同じく溶銑に浸漬された標準電極と、温度測定手段と、起電力測定手段と、燐濃度演算手段とで構成される。この内、標準電極は、酸素イオン電導とn型電子電導の混合電導性を有するジルコニア系固体電解質を用い、このジルコニア系固体電解質の外表面に Al2O3 と AlPO4 との混合物を、外表面の一部が露出するように固着させて、混合物を構成するAl2O3 と AlPO4、溶銑、及び、ジルコニア系固体電解質の外表面から成る4相界面を形成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、溶銑の燐濃度測定方法及びその装置並びにそのプローブに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
わが国の鉄鋼業は、その原料を豪州産の鉄鉱石に依存しているが、この豪州産の鉄鉱石は、他の鉄鉱石に比べて燐濃度が高い欠点がある。このため、わが国の鉄鋼業では、精錬の過程での脱燐処理に多くのコストを費やしている。この脱燐処理を含む不純物除去処理は、当初、転炉を利用して行なわれていた。しかし、転炉を用いる方法では、脱燐処理を含む不純物除去処理に伴って、鉄1トン当たり150kgもの大量のスラグが副産物として発生する。
そこで、高炉から転炉への橋渡しの中間段階で、脱燐処理を含む不純物除去処理を行なう新しい方法が開発されている。この新しい方法では、溶銑中に含まれる不順物を除去するのに、不順物の種類に応じたフラックスを用い、スラグ−メタル間反応により不純物を除去している。そこで、脱燐処理としては、脱燐処理用のフラックスを用いるが、このフラックスは燐の濃度に対して最適な量を用いるのが、最も効率的である。そのためには、溶銑中の燐の濃度を把握することが必要であり、溶銑中の燐濃度測定方法として、溶銑からサンプルを採取して、このサンプルを化学分析する方法が採用されている。
【0003】
この化学分析では、サンプリング、研磨、及び、秤量等の過程を必要とするので、最短でも3分以上の時間を要するが、この分析結果を上記の脱燐処理に反映しようとすると、サンプル採取から結果が判明するまでの間に、溶銑の温度が1300℃以下に低下することもある。そのため、この化学分析を用いる方法では、溶銑の温度保持に膨大なエネルギーを要することから、実際には、この分析結果を待たずに、過剰な量のフラックスを用いて脱燐処理が行なわれ、この分析結果は、参考データとして用いるにとどめるケースが多く、コスト増大の要因となっている。
そこで、このような燐濃度の測定を迅速に行なう方法として、溶融金属一般を対象とした特許第2051711号公報に記載されているような方法が提案されている。この方法(以下、公知の方法と称する)は、次のような方法である。
【0004】
図8は、この公知の方法の原理を示した説明図である。図8において、測定装置21は、共に溶融金属29中に浸漬した測定電極23と標準電極22とで構成される、酸素濃淡電池の原理を用いたものである。この測定装置21の標準電極22は、内部電極22aに酸素分圧が既知の物質でなる基準物質22bが接するとともに、この基準物質22bに酸素イオン伝導性を有する固体電解質22cが接する構造を有している。そして、測定電極23と標準電極22との間には、両極間の酸素分圧差に比例した起電力を生じるようになっている。この標準電極22の固体電解質22cの外表面全体には、溶融金属中の測定対象とするCr, Mn, NiまたはSiの内、いずれかの不純物元素の酸化物の活量を一定の値とするための、測定対象不純物と同一元素の酸化物または測定対象と同一元素の酸化物を含む複合酸化物が被覆されている。そして、この被覆22dの近傍の溶融金属29中において、測定対象元素Mと測定対象元素の酸化物MOXとの間に、下記(1)式に示す平衡反応を生じさせ、両極間に生ずる起電力を測定するとともに、同時に溶融金属の温度を測定することにより、溶融金属29中の測定対象元素Mの活量aMを求めるものである。尚、図8において、24は溶融金属29の温度を測定する熱電対、25は溶融金属29を収容する容器、26は標準電極22の内部電極22aと測定電極23との間の起電力を測定する起電力測定器、そして、27は熱電対24の出力から溶融金属29の温度を求める温度測定器である。
M+(X/2)O2 = MOx ・・・・・・・ (1)
【0005】
上記の公知の方法を応用すれば、溶銑中の燐の活量を測定する方法として、測定対象不純物元素である燐の酸化物、または、燐の酸化物を含む複合酸化物を、標準電極の固体電解質の外表面に被覆させた装置を用いる方法を考案することは、容易である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の公知の方法には、以下に示すような大きな欠点がある。
第1の欠点は、「測定対象と同一元素の酸化物を含む複合酸化物では、不純物元素の酸化物の活量を一定の値とすることはできない」点である。
即ち、燐の酸化物は五酸化燐のみでありP2O5と表せる。一方、燐の酸化物を含む複合酸化物は無数にあるが、P2O5 以外の酸化物をBOYと表せば、燐の酸化物を含む複合酸化物はBOY・P2O5 と表せる。あるいはBP2O(Y+5)と表すこともできる。P2O5 の活量は温度によらず一定値の1である。ところが、BP2O(Y+5) の中のP2O5 の活量は1ではないし、また一定の値ともならない。これをギブスの相律を用いて簡単に説明する。
【0007】
凝縮系のギブスの相律は、圧力が一定の下では、以下で表される。即ち、
F=C+1−P ・・・・・・・・・・ (2)
である。ここで、Fは自由度、Cは独立成分の数、Pは相の数である。この相律をBP2O(Y+5) に対して適用すると、独立成分は、BOYとP2O5 の2つでC=2である。相の数は、BP2O(Y+5) のみであるから、P=1である。故に、自由度Fは、
F =2+1−1=2 ・・・・・・・ (3)
である。すなわち、BP2O(Y+5) 中のP2O5 の活量は温度を規定しただけでは一定値とはならない。
【0008】
第2の欠点は、燐の酸化物の性質に関するものである。すなわち、P2O5 の吸湿性は強く、常温ですら空気中の微量水分と反応して燐酸を生成する。したがって、ジルコニア固体電解質の表面に(1)式の反応を局部平衡させることは不可能である。つまり、「公知の方法」から容易に考案できる手法では、溶銑中の不純物である燐の活量を測定することはできない。
【0009】
そこで、この発明は上記の問題を解決するためになされたもので、P2O5 の吸湿性の影響を受けず、また、P2O5 の活量が一定値となる状態下での測定が実現可能な溶銑の燐濃度測定方法及びその装置並びにそのプローブを提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すでに述べたように、溶銑中の燐活量を測定する方法として、公知の方法を応用した容易に考案できる方法では、P2O5 またはBOY・P2O5 を固体電解質の外表面に被覆させることになるが、この方法が有するP2O5の欠点ならびにBOY・P2O5 の欠点については、すでに述べたとおりである。これに対し本発明では、BOY・P2O5 とBOYとの混合物を用い、かつ、一般にBOYと表した燐以外の元素の酸化物として、アルミニウムの酸化物であるAl2O3 を用いることによって、公知の方法が持つ欠点を克服できることを見出し、本発明を行なったものである。
【0011】
本発明の溶銑の燐濃度測定方法は、溶銑に浸漬された測定電極と、溶銑に浸漬され、酸素イオン電導とn型電子伝導の混合電導性を有するジルコニア系固体電解質を用いた標準電極とを用いる方法であり、標準電極と測定電極との間に、両者における酸素分圧差に応じた起電力を生じさせる。また、この標準電極のジルコニア系固体電解質の外表面には Al2O3 と AlPO4 との混合物を、ジルコニア系固体電解質の外表面の一部が露出するように固着させる。このような測定電極と標準電極とを用いて、標準電極内からジルコニア系固体電解質を介して溶銑へ、上記のn型電子伝導による酸素イオンの移動を惹起させるとともに、上記混合物を構成するAl2O3 と AlPO4 、溶銑、及び、ジルコニア系固体電解質の外表面から成る4相界面において、溶銑中の燐及び酸素と、混合物中の Al2O3 及び AlPO4 の4者間に生じる下記に示す反応を局部平衡させる。そして、溶銑の温度を測定するとともに、標準電極と測定電極との間の起電力を測定し、この起電力を、測定した上記温度における同種溶銑の起電力と燐濃度との関係が既知の相関データと照合して、溶銑の燐濃度を求めることを特徴としている。
Al2O3 (混合物中) + 2P(溶銑中) + (5/2)O2(溶銑中) = 2AlPO4 (混合物中)
【0012】
また、本発明の溶銑の燐濃度測定装置は、溶銑に浸漬された測定電極と、同じく溶銑に浸漬された標準電極と、温度測定手段と、起電力測定手段と、燐濃度演算手段とで構成される。
標準電極は、溶銑に浸漬され、酸素イオン電導とn型電子電導の混合電導性を有するジルコニア系固体電解質を用いており、この標準電極と測定電極との間に、両者における酸素分圧差に応じた起電力を生じさせるとともに、ジルコニア系固体電解質の外表面に Al2O3 と AlPO4 との混合物を、外表面の一部が露出するように固着させており、標準電極内からジルコニア系固体電解質を介して溶銑へ、上記のn型電子伝導による酸素イオンの移動を惹起させるとともに、上記混合物を構成する Al2O3 と AlPO4 、溶銑、及び、ジルコニア系固体電解質の外表面から成る4相界面において、溶銑中の燐及び酸素と、混合物中の Al2O3 及び AlPO4 の4者間に生じる下記に示す反応を局部平衡させる。温度測定手段は、溶銑の温度を測定し、起電力測定手段は、標準電極と測定電極との間の起電力を測定する。そして、燐濃度演算手段は、起電力測定手段により測定した起電力を、温度測定手段により測定した温度における同種溶銑の起電力と燐濃度との関係が既知の相関データと照合して、溶銑の燐濃度を求める。本発明の溶銑の燐濃度測定装置は、このような特徴を有している。
Al2O3 (混合物中) + 2P(溶銑中) + (5/2)O2(溶銑中) = 2AlPO4 (混合物中)
【0013】
上記の溶銑の燐濃度測定装置において、ジルコニア系固体電解質の外表面に、混合物を固着させるに際し、この混合物中の AlPO4 の混合割合を5重量%以上、50重量%以下とし、固着の厚みを0.01mm以上、5mm以下とするとともに、上記外表面において、溶銑への浸漬対象部分の全表面に対して、混合物を固着させる部分を、30%以上、95%以下とするのが好ましい。
【0014】
また、上記の溶銑の燐濃度測定装置において、固着をドット形状に形成するとともに、ジルコニア系固体電解質の外表面に分散して配設し、このドット形状の直径、または、縦及び横の寸法を、0.1mm以上 10mm以下とするのが好ましい。
【0015】
また、上記の溶銑の燐濃度測定装置において、ジルコニア系固体電解質の電子輸率を0.01以上、0.15以下とするとともに、ジルコニア系固体電解質の外表面の厚さを、0.02mm以上、0.15mm以下とするのが好ましい。
【0016】
また、上記の溶銑の燐濃度測定装置において、標準電極における酸素分圧Pz (atm)が、ガス定数R(cal/K/mol)、及び、絶対温度T(K)を要素とする下記の条件を満たすようにするのが好ましい。
−90,000 cal/mol < R・T ln Pz < −40,000 cal/mol
【0017】
また、本発明の溶銑の燐濃度測定プローブは、溶銑に浸漬される測定電極と、同じく溶銑に浸漬される標準電極と、溶銑の温度を測定する温度センサとを同一のプローブに併設して構成されている。
標準電極は、酸素イオン電導とn型電子電導の混合電導性を有するジルコニア系固体電解質を用いており、この標準電極と測定電極との間に、両者における酸素分圧差に応じた起電力を生じさせるとともに、ジルコニア系固体電解質の外表面に Al2O3 と AlPO4 との混合物を、外表面の一部が露出するように固着させており、標準電極内からジルコニア系固体電解質を介して溶銑へ、上記のn型電子伝導による酸素イオンの移動を惹起させるとともに、上記混合物を構成する、Al2O3 と AlPO4 、溶銑、及び、ジルコニア系固体電解質の外表面から成る4相界面において、溶銑中の燐及び酸素と、混合物中の Al2O3 及び AlPO4 の4者間に生じる下記に示す反応を局部平衡させる。
この溶銑の燐濃度測定プローブは、これに併設されている温度センサを用いて溶銑の温度を測定するとともに、標準電極と測定電極との間の起電力を測定し、この起電力を、上記の温度センサを用いて測定した温度における同種溶銑の起電力と燐濃度との関係が既知の相関データと照合して、溶銑の燐濃度を求める燐濃度測定方法に用いられる。本発明の溶銑の燐濃度測定プローブは、このような特徴を有している。
Al2O3 (混合物中) + 2P(溶銑中) + (5/2)O2(溶銑中) = 2AlPO4 (混合物中)
【0018】
上記の溶銑の燐濃度測定プローブは、そのプローブを構成する標準電極の各要素の性状を、上記の溶銑の燐濃度測定装置と同様にするのが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例につき、図面に基づき詳しく説明する。すでに述べたように、本発明では、BOY・P2O5 とBOYとの混合物を用い、かつ、一般にBOYと表した燐以外の元素の酸化物として、アルミニウムの酸化物であるAl2O3 を用いることによって、前述の公知の方法が持つ欠点を克服できることを見出し、本発明を行なったものである。
即ち、本発明では、共に溶銑に浸漬した測定電極と標準電極とで構成される酸素濃淡電池の原理を用いる。ここで用いる標準電極は、内部電極に酸素分圧が既知の物質でなる基準物質が接するとともに、この基準物質に酸素イオン伝導性を有する固体電解質が接する構造を有している。この固体電解質にはジルコニア固体電解質を用いる。そして、測定電極と標準電極との間には、両極間の酸素分圧差に比例した起電力を生じるようになっている。この標準電極のジルコニア固体電解質の外表面に付着させる物質として、Al2O3 と、AlPO4 との混合物(以下、混合物と称する)を用いる。AlPO4 は(1/2)Al2O3・P2O5 と表記することもできる。
【0020】
この混合物に対してギブスの相律を適用すると、独立成分は、Al2O3とP2O5 の2つでC=2であり、相はAl2O3 相とAl2O3・P2O5 相であるからP=2である。故に自由度Fは、圧力が一定の下では、
F =2+1−2=1 ・・・・・・・ (4)
である。自由度が1であるから、温度を規定すれば、混合物中のP2O5 の活量は一定値となる。また、Al2O3、Al2O3・P2O5 ともに吸湿性を持つこともない。
【0021】
しかしながら、P2O5 またはBOY・P2O5 の代替としてBOY・P2O5 とBOYとの混合物を用いるだけでは、本発明を完成させるには至らない。これを以下に説明する。
【0022】
上記の混合物を溶銑中へ投入した際の局部平衡の反応式は、
Al2O3 (混合物中) + 2P(溶銑中) + (5/2)O2(溶銑中) = Al2O3・P2O5 (混合物中)・・・・・・・ (5)
と表される。(5)式から明らかなように、(5)式の反応に関与する相は以下の、
(i) 溶銑
(ii) 混合物中のAl2O3・P2O5
(iii) 混合物中のAl2O3
の3つである。しかもこの3つの相の間における局部平衡の平衡酸素分圧を測定するのは、ジルコニア固体電解質においてであるから、(i), (ii), (iii)の3つの相が、ジルコニア固体電解質の外表面に接触していなければならない。言い換えると、
(i) 溶銑
(ii) 混合物中のAl2O3・P2O5
(iii) 混合物中のAl2O3
の3つに、4番目の相である
(iv) ジルコニア固体電解質
を加えた4つの相の界面を作らねばならない。従って、当然、混合物をもってジルコニア固体電解質の外表面の全体に被覆することは不可である。さらに、4つの相の界面を適切に作成するためには、混合物中のAl2O3 とAl2O3・P2O5 との比率、あるいは、混合物の形状等にも留意しなければならない。
【0023】
以上の観点から、本発明者らは種々の試行錯誤の結果、(5)式の局部平衡の反応を目的通り平衡に達するようにするには、上記の混合物を、例えば、ドット形状に形成して、ジルコニア固体電解質の外表面に分散して配設、固着するとともに、この固着が、
(1)厚みは0.01mm以上、5mm以下、
(2)ドット形状の直径または縦横の寸法が、0.1mm以上 10mm以下、
(3)混合物中のAlPO4の混合割合を、5重量%以上、50重量%以下、
(4)ジルコニア固体電解質の外表面の内、混合物を固着させた表面が、全外
表面の30%以上、95%以下、
であるような幾何学的条件を満たす必要があることを見出した。但し、上記(4)において、ジルコニア固体電解質の全外表面は、標準電極が溶銑に浸漬される部分のジルコニア固体電解質の全外表面を対象とすればよく、溶銑に浸漬されない部分は対象とする必要がない。
【0024】
さらに、(5)式の反応を上記の4つの相の界面において局部平衡させるには、以上に述べた幾何学的条件に加えて、化学量論的条件も必要である。これを以下に説明する。
【0025】
一般に溶銑中に元来存在する燐と酸素の濃度は、それぞれ0.01〜0.20%程度、および0.00001〜0.0001%程度である。ところが、溶銑中の燐濃度が0.01〜0.20%である時、(5)式の平衡で規定される溶銑中の酸素の平衡濃度は0.001%以上となる。従って、(5)式の反応を平衡させるには、溶銑中の酸素濃度が元来の濃度すなわち0.00001〜0.0001%程度から、(5)式の平衡濃度すなわち0.001%以上まで上昇させなければならない。言い換えると、上記の3つの相とジルコニア固体電解質との界面へ、外部から酸素を供給しなければならない。さもなければ、この界面の酸素濃度は平衡濃度に達しないから、(5)式の反応は平衡に到達しない。ところが、この界面へ酸素を供給することは、従来は不可能と考えられてきた。
【0026】
これに対し、本発明では、ジルコニア固体電解質にイオンとn型電子との混合電導性を持たせることによってこの問題を解決した。以下この原理を簡単に説明する。
【0027】
図6は、イオン電導性のみを示すジルコニア固体電解質を用いた酸素濃淡電池の測定等価回路である。図中のRionはジルコニア固体電解質のイオン電導性に起因する濃淡電池の内部抵抗を示す。また電池Eはネルンスト式で規定される濃淡電池の起電力を示す。図中の点線内が、酸素濃淡電池の等価回路に相当する。濃淡電池の起電力を測定するには、入力抵抗が非常に大きい電圧測定器Vを用いるから、外部回路には、ほとんど電流が流れない。
【0028】
一方、図7は、イオン電導とn型電子電導の混合電導性を持ったジルコニア固体電解質を用いた酸素濃淡電池の測定等価回路である。点線内が、酸素濃淡電池の等価回路である。ここで、Reは、n型電子電導に起因する内部抵抗を示す。この場合も、入力抵抗が非常に大きい電圧測定器Vを用いる外部回路には、ほとんど電流が流れないが、内部回路には、図の矢印付き曲線で示すような内部電流が流れる。Reで表される抵抗内を流れる電流は、n型電子の移動によるものであり、Rionで示した抵抗内を流れる電流は酸素イオンの移動によるものである。すなわち、ジルコニア固体電解質がイオンとn型電子の混合電導性を示す場合には、ジルコニア固体電解質内を酸素イオンが移動する。
【0029】
このようにジルコニア固体電解質内を移動する酸素イオンの流れが、基準物質側から溶銑側(測定極側)へ向けて生じるようにすれば、4つの相と溶銑との界面における酸素濃度を、溶銑中の元来の酸素濃度である0.00001〜0.0001%から平衡酸素濃度である0.01%程度まで上昇させることができる。ただし、酸素イオンの移動量、移動速度を適切に制御しなければならない。
【0030】
以上のような考察の下で、本発明者らは、ジルコニア固体電解質の性状が、
(1)電子輸率を0.01以上 0.15以下、
(2)厚みを0.02mm以上、 0.15mm以下、
であるような条件を満たし、且つ、標準電極を構成している基準物質の酸素分圧Pz(atm) が、
−90,000 cal/mol < R・T ln Pz < −40,000 cal/mol
の条件を満たす時、(5)式の反応が平衡に到達することを見出した。但し、上記の条件において、Rはガス定数(cal/K/mol)、Tは絶対温度(K)である。
【0031】
以上に述べた方法を採用すると、 (5)式の反応において、温度を規定すれば、Al2O3 とAl2O3・P2O5 でなる混合物中のP2O5 の活量は一定値となるから、酸素分圧と燐の活量、即ち、燐の濃度とは一定の対応関係を有し、酸素分圧が定まると燐の活量、即ち、燐の濃度も定まる関係がある。
【0032】
また、標準電極と測定電極で構成される酸素濃淡電池における起電力は、次の式で求められる。
E={(R・T)/ 4F}ln(Px / Py)・・(6)
ここで、Eは起電力(V)、Rはガス定数(cal/K/mol)、Tは絶対温度(K)、Fはファラディ定数(cal/mv/mol)、Pxは標準電極における酸素分圧(atm)、Pyは測定電極における酸素分圧(atm)である。
基準物質の酸素分圧Pxは、その値が既知であるものを使用するので、起電力Eを測定することにより、上記(6)式から非測定物資の酸素分圧Pyが求められる。この(6)式によれば、測定電極における酸素分圧Pyは、起電力Eと負の比例関係にあることが分かる。
【0033】
従って、酸素濃淡電池を用いて測定電極における酸素分圧として、上記(5)式で表される局部的な平衡状態下での酸素分圧を測定した場合の起電力は、この酸素分圧と負の比例関係にあるのみならず、燐の活量に対しても負の比例関係にある。第1実施例は、この負の比例関係を利用して、溶銑中の燐の活量、即ち、燐濃度を測定しようとするものである。
【0034】
図1は、第1実施例の溶銑の燐濃度測定装置の構成を示したものである。図1において、この溶銑の燐濃度測定装置1は、アルミナるつぼ5の内部の溶銑9に浸漬された、標準電極2、測定電極3、及び、熱電対4、と、起電力測定器6、温度測定器7、及び、データ処理部8、とで構成される。この内、共に溶銑9に浸漬された標準電極2と測定電極3とで、酸素濃淡電池が構成される。
図2は、標準電極2の構成を示した断面図である。この標準電極2は、主として、内部電極2a、基準物質2b、及び、ジルコニア固体電解質2cで構成される。ジルコニア固体電解質2cは直径が6mmの円筒状の容器で、ZrO2とMgOとで形成されており、上述下条件を満足することにより、酸素イオン伝導性のみならず、電子伝導性をも有する。このジルコニア固体電解質2cの内部の中心に、耐熱性のあるMoで形成された内部電極2aが設けられ、この内部電極2aの周りには、MoとMoO2との混合物が充填されて、基準物質2bを構成している。この基準物質2bはその酸素分圧が既知である。ジルコニア固体電解質2cの容器の外表面上には、燐酸化物であるP2O5と金属酸化物であるAl2O3 とでなる化合物であるAlPO4((1/2)Al2O3・P2O5)に、Al2O3 を混合した混合物を、半球状に形成するとともに、斑点状に固着している。この実施例では、これを副電極2dと称する。キャップ2eは、耐火セメントで形成され、基準物質2bを構成する混合物を、容器の形状をしたジルコニア固体電解質2cの内部に密封、保持している。この標準電極2を構成する各要素の性状は、上述した標準電極の構成要素の性状に全て適合させている。
また、測定電極3は、内部電極2aと同様、耐熱性のあるMoで形成されている。熱電対4と温度測定器7は、アルミナるつぼ5内の溶銑9の温度を測定するのに用いられ、起電力測定器6は、標準電極2と測定電極3との間に発生する起電力を測定するのに用いられる。そして、データ処理部8は、温度測定器7の測定した温度と、起電力測定器6の測定した起電力とを用いて、燐濃度を求めるのに用いられる。
【0035】
次に、上記で説明した構造で、ジルコニア固体電解質の全表面積に対する副電極の底面積の割合が、約70%の標準電極2を4本製作するとともに、図1の第1実施例の溶銑の燐濃度測定装置のデータ処理部8を除いた装置を用いて、温度が1673度K(1400℃)で、燐以外の成分は全く同じであり、燐の重量比濃度が異なる5種類の溶銑に対する、標準電極2と測定電極3との間に発生する起電力を測定した。図3は、この結果を示したグラフである。同図において、各測定値における上下の線は、4本の標準電極2の測定値の上限と下限を表し、丸印は中心値を表している。
図3から分かる通り、この標準電極を用いた装置によれば、起電力と溶銑の燐の濃度とは負の比例関係にあり、上述した理論と一致していることが分かる。
【0036】
図5は、上記の起電力の測定における、標準電極2の溶銑への浸漬開始から起電力が安定するまでの状況を示したグラフの一例である。図5から分かるように、標準電極2を溶銑へ浸漬後、20秒で起電力が安定することが分かる。
【0037】
上記の結果から、図1の装置において、上述した一定の条件に適合するように製作した標準電極2を用いることにより、測定される起電力は、溶銑の燐の濃度とは負の比例関係にあることが分かる。そこで、上述した条件に適合するように製作した標準電極2を用いた装置で、燐濃度が異なり、しかもその燐濃度が既知の溶銑を用いて、異なる温度毎の起電力を測定してデータ化しておくことにより、この同じ濃度センサを用いて、燐濃度が未知の溶銑の起電力と温度とを測定して、上記のデータと照合することで、この溶銑の燐濃度を求めることができる。図1において、データ処理部8は、そのメモリーに上記のデータを記憶しておき、起電力測定器6から得られる起電力と、温度測定器7から得られる温度とをもとに、メモリーに記憶しているデータと照合して燐濃度を求める機能を有している。
【0038】
上記の第1実施例の溶銑の燐濃度測定装置によれば、温度が一定の条件の下では、AlPO4((1/2)Al2O3・P2O5)と、Al2O3 とを混合した混合物で、ジルコニア固体電解質の外表面上に個着されている混合物に含まれるP2O5 の活量が一定値となる。また、Al2O3、Al2O3・P2O5 ともに吸湿性を持つこともない。また、燐濃度の測定における起電力の測定を数十秒で行なうことができるので、溶銑の燐濃度の測定を迅速に行なうことができる。
【0039】
上記の第1実施例の溶銑の燐濃度測定装置では、標準電極2、測定電極3、及び、熱電対4は、相互に独立しているが、この標準電極2、測定電極3、及び、熱電対4に代えて、これらを同一のプローブに併設して、一体化して形成した溶銑の燐濃度測定プローブを用いるようにしてもよい。次に、第2実施例として、このような溶銑の燐濃度測定プローブについて説明する。
【0040】
図5は、第2実施例の溶銑の燐濃度測定プローブの断面説明図である。このプローブ11は、標準電極12、測定電極13、熱電対14、コネクタ15、カバー16、及び、耐熱紙筒17で構成される。この内、標準電極12、測定電極13、及び、熱電対14は、上記の第1実施例の溶銑の燐濃度測定装置に用いられているものと全く同じであり、上述したこれらに関する説明は、そのまま全て当てはまる。コネクタ15は、標準電極12、測定電極13、及び、熱電対14の発する信号を、外部に伝えるためのコネクタであり、起電力測定器や温度測定器、データ処理部へ接続される信号線のコネクタが、このコネクタ15に接続される。カバー16は、標準電極12、測定電極13、及び、熱電対14を保護するためのものであり、このプローブ11が、溶銑に浸漬されると溶融して、標準電極12、測定電極13、及び、熱電対14は、溶銑中に露出するようになっている。耐熱紙筒17は、標準電極12、測定電極13、及び、熱電対14を装着しており、プローブ11が溶銑に浸漬中、これらを保持するようになっている。
【0041】
上記の第2実施例の溶銑の燐濃度測定プローブは、上記の第1実施例の溶銑の燐濃度測定装置と全く同じ測定原理を用いているので、この第2実施例の溶銑の燐濃度測定プローブを用いることにより、上記の第1実施例の溶銑の燐濃度測定装置による測定と同様の効果を得ることができる。
【0042】
上記の第1実施例の溶銑の燐濃度測定装置、及び、第2実施例の溶銑の燐濃度測定プローブでは、副電極を形成する金属酸化物としてAl2O3 を用いているが、Al2O3 に代えてMgOを用いてもよい。
また、副電極を半球状に形成して、ジルコニア固体電解質の外表面上に斑点状に設けているが、このような形状や設置の方法には限られない。例えば、円筒形上のジルコニア固体電解質の外表面上に、厚みを一定とした螺旋状や帯状等の形状の副電極を設ける等の方法が考えられる。この場合、副電極の形成方法としては、ジルコニア固体電解質の外表面上にプラズマ溶射した後、または、溶融した混合物中にジルコニア固体電解質を浸漬して混合物の層を形成した後、或は、プリント法等を用いて印刷により形成した後、混合物の層を一部を削り取ったり剥離したりして形成する等が考えられる。
また、基準物質を構成する物質として、モリブデンと酸化モリブデンとの混合物を用いているが、これには限られず、クロムと酸化クロムとの混合物、ニッケルと酸化ニッケルとの混合物、鉄と酸化鉄との混合物、または、空気のいずれを用いてもよい。
【0043】
上記の第1実施例、及び、第2実施例では、溶銑の燐濃度を測定の対象としているが、これには限られず、溶鋼等、溶融した鉄一般の燐濃度を測定の対象とすることができるのはもちろんである。また、鉄以外の、他の溶融金属の燐濃度についても測定の対象とすることができる。
【0044】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、AlPO4((1/2)Al2O3・P2O5)と、Al2O3 とを混合した混合物で、標準電極のジルコニア固体電解質の外表面上に個着されている混合物に含まれるP2O5 の活量が、温度が一定の条件の下では一定値となる。また、Al2O3、Al2O3・P2O5 ともに吸湿性を持つこともない。従って、P2O5 の吸湿性の影響を受けず、また、P2O5 の活量が一定値となる状態下での測定が実現可能な溶銑の燐濃度測定方法及びその装置並びにそのプローブを提供することができる。
また、燐濃度の測定における起電力の測定を数十秒で行なうことができるので、溶銑の燐濃度の測定を迅速に行なうことが可能な、溶銑の燐濃度測定方法及びその装置並びにそのプローブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の溶銑の燐濃度測定装置の構成を示した図である。
【図2】第1実施例の溶銑の燐濃度測定装置に用いる標準電極の断面図である。
【図3】第1実施例の溶銑の燐濃度測定装置を用いた測定結果を表したグラフである。
【図4】第1実施例の溶銑の燐濃度測定装置の起電力の測定における標準電極の溶銑への浸漬開始から起電力が安定するまでの状況を示したグラフの一例である。
【図5】第2実施例の溶銑の燐濃度測定プローブの断面説明図である。
【図6】イオン電導性のみを示すジルコニア固体電解質を用いた酸素濃淡電池の測定等価回路を示した図である。
【図7】イオン電導とn型電子電導の混合電導性を持ったジルコニア固体電解質を用いた酸素濃淡電池の測定等価回路を示した図である。
【図8】従来例の溶銑の燐濃度測定装置の構成を示した図である。
【符号の説明】
1 溶銑の燐濃度測定装置 2 標準電極
2a 内部電極 2b 基準物質
2c ジルコニア固体電解質
2d 副電極 2e キャップ
3 測定電極 4 熱電対
5 アルミナるつぼ 6 起電力測定器
7 温度測定器 8 データ処理部
9 溶銑 11 溶銑の燐濃度測定プローブ
12 標準電極 13 測定電極
14 熱電対 15 コネクタ
16 カバー 17 耐熱紙筒
21 測定装置 22 標準電極
22a 内部電極 22b 基準物質
22c 固体電解質 22d 被覆
23 測定電極 24 熱電対
25 容器 26 起電力測定器
27 温度測定器 29 溶融金属
Claims (11)
- 溶銑に浸漬された測定電極と、
前記溶銑に浸漬され、酸素イオン電導とn型電子伝導の混合電導性を有するジルコニア系固体電解質を用いた標準電極であって、この標準電極と前記測定電極との間に、両者における酸素分圧差に応じた起電力を生じさせるとともに、前記ジルコニア系固体電解質の外表面に Al2O3 と AlPO4 との混合物を、前記外表面の一部が露出するように固着させた前記標準電極と、を用いて、
前記標準電極内から、前記ジルコニア系固体電解質を介して前記溶銑へ、前記n型電子伝導による酸素イオンの移動を惹起させるとともに、
前記混合物を構成するAl2O3 と AlPO4 、前記溶銑、及び、前記ジルコニア系固体電解質の前記外表面から成る4相界面において、前記溶銑中の燐及び酸素と、前記混合物中の Al2O3 及び AlPO4 の4者間に生じる下記に示す反応を局部平衡させ、
前記溶銑の温度を測定するとともに、前記標準電極と前記測定電極との間の起電力を測定し、
前記起電力を、前記温度における同種溶銑の起電力と燐濃度との関係が既知の相関データと照合して、前記溶銑の燐濃度を求めてなることを特徴とする溶銑の燐濃度測定方法。
Al2O3 (混合物中) + 2P(溶銑中) + (5/2)O2(溶銑中) = 2AlPO4 (混合物中) - 溶銑に浸漬された測定電極と、
前記溶銑に浸漬され、酸素イオン電導とn型電子電導の混合電導性を有するジルコニア系固体電解質を用いた標準電極であって、この標準電極と前記測定電極との間に、両者における酸素分圧差に応じた起電力を生じさせるとともに、前記ジルコニア系固体電解質の外表面に Al2O3 と AlPO4 との混合物を、前記外表面の一部が露出するように固着させており、前記標準電極内から前記ジルコニア系固体電解質を介して前記溶銑へ、前記n型電子伝導による酸素イオンの移動を惹起させるとともに、前記混合物を構成するAl2O3 と AlPO4 、前記溶銑、及び、前記ジルコニア系固体電解質の前記外表面から成る4相界面において、前記溶銑中の燐及び酸素と、前記混合物中の Al2O3 及び AlPO4 の4者間に生じる下記に示す反応を局部平衡させてなる前記標準電極と、
前記溶銑の温度を測定する温度測定手段と、
前記標準電極と前記測定電極との間の起電力を測定する起電力測定手段と、
前記起電力測定手段により測定した前記起電力を、前記温度測定手段により測定した前記温度における同種溶銑の起電力と燐濃度との関係が既知の相関データと照合して、前記溶銑の燐濃度を求める燐濃度演算手段と、でなることを特徴とする溶銑の燐濃度測定装置。
Al2O3 (混合物中) + 2P(溶銑中) + (5/2)O2(溶銑中) = 2AlPO4 (混合物中) - 前記ジルコニア系固体電解質の前記外表面に、前記混合物を固着させるに際し、
この混合物中の AlPO4 の混合割合を5重量%以上、50重量%以下とし、
固着の厚みを0.01mm以上、5mm以下とするとともに、
前記外表面において、前記溶銑への浸漬対象部分の全表面に対して、前記混合物を固着させる部分を、30%以上、95%以下としてなる請求項2記載の溶銑の燐濃度測定装置。 - 前記固着をドット形状に形成するとともに、前記ジルコニア系固体電解質の前記外表面に分散して配設し、このドット形状の直径、または、縦及び横の寸法を、0.1mm以上、10mm以下としてなる請求項3記載の溶銑の燐濃度測定装置。
- 前記ジルコニア系固体電解質の電子輸率を0.01以上、0.15以下とするとともに、前記ジルコニア系固体電解質の前記外表面の厚さを、0.02mm以上、0.15mm以下としてなる請求項2から4のいずれか1項に記載の溶銑の燐濃度測定装置。
- 前記標準電極における、酸素分圧Pz (atm) が、ガス定数R(cal/K/mol)、及び、絶対温度T(K)を要素とする下記の条件を満たしてなる請求項2から5のいずれか1項に記載の溶銑の燐濃度測定装置。
−90,000 cal/mol < R・T ln Pz < −40,000 cal/mol - 溶銑に浸漬される測定電極と、
前記溶銑に浸漬され、酸素イオン電導とn型電子電導の混合電導性を有するジルコニア系固体電解質を用いた標準電極であって、この標準電極と前記測定電極との間に、両者における酸素分圧差に応じた起電力を生じさせるとともに、前記ジルコニア系固体電解質の外表面に Al2O3 と AlPO4 との混合物を、前記外表面の一部が露出するように固着させており、前記標準電極内から前記ジルコニア系固体電解質を介して前記溶銑へ、前記n型電子伝導による酸素イオンの移動を惹起させるとともに、前記混合物を構成するAl2O3 と AlPO4 、前記溶銑、及び、前記ジルコニア系固体電解質の前記外表面から成る4相界面において、前記溶銑中の燐及び酸素と、前記混合物中の Al2O3 及び AlPO4 の4者間に生じる下記に示す反応を局部平衡させてなる前記標準電極と、
前記溶銑の温度を測定する温度センサと、を同一のプローブに併設してなり、
前記温度センサを用いて前記溶銑の温度を測定するとともに、前記標準電極と前記測定電極との間の起電力を測定し、前記起電力を、前記温度における同種溶銑の起電力と燐濃度との関係が既知の相関データと照合して、前記溶銑の燐濃度を求めてなる燐濃度測定方法に用いられることを特徴とする溶銑の燐濃度測定プローブ。
Al2O3 (混合物中) + 2P(溶銑中) + (5/2)O2(溶銑中) = 2AlPO4 (混合物中) - 前記ジルコニア系固体電解質の前記外表面に、前記混合物を固着させるに際し、
この混合物中の AlPO4 の混合割合を5重量%以上、50重量%以下とし、
固着の厚みを0.01mm以上、5mm以下とするとともに、
前記外表面において、前記溶銑への浸漬対象部分の全表面に対して、前記混合物を固着させる部分を、30%以上、95%以下としてなる請求項7記載の溶銑の燐濃度測定プローブ。 - 前記固着をドット形状に形成するとともに、前記ジルコニア系固体電解質の前記外表面に分散して配設し、このドット形状の直径、または、縦及び横の寸法を、0.1mm以上、10mm以下としてなる請求項8記載の溶銑の燐濃度測定プローブ。
- 前記ジルコニア系固体電解質の電子輸率を0.01以上、0.15以下とするとともに、前記ジルコニア系固体電解質の前記外表面の厚さを、0.02mm以上、0.15mm以下としてなる請求項7から9のいずれか1項に記載の溶銑の燐濃度測定プローブ。
- 前記標準電極における、酸素分圧Pz (atm)が、ガス定数R(cal/K/mol)、及び、絶対温度T(K)を要素とする下記の条件を満たしてなる請求項7から10のいずれか1項に記載の溶銑の燐濃度測定プローブ。
−90,000 cal/mol < R・T ln Pz < −40,000 cal/mol
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JP2002173244A JP2004020285A (ja) | 2002-06-13 | 2002-06-13 | 溶銑の燐濃度測定方法及びその装置並びにそのプローブ |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2004077040A1 (ja) * | 2003-02-28 | 2004-09-10 | Toyo Engineering And Research Center Co., Ltd. | センサ外表面の薄膜層形成方法及びこれを用いて製作されたセンサ |
JP2009068856A (ja) * | 2007-09-10 | 2009-04-02 | Heraeus Electro Nite Japan Ltd | 炭素活量測定用プローブ |
CN103196974A (zh) * | 2012-01-10 | 2013-07-10 | 东北大学 | 一种定磷传感器的制造方法 |
-
2002
- 2002-06-13 JP JP2002173244A patent/JP2004020285A/ja active Pending
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WO2004077040A1 (ja) * | 2003-02-28 | 2004-09-10 | Toyo Engineering And Research Center Co., Ltd. | センサ外表面の薄膜層形成方法及びこれを用いて製作されたセンサ |
JP2009068856A (ja) * | 2007-09-10 | 2009-04-02 | Heraeus Electro Nite Japan Ltd | 炭素活量測定用プローブ |
CN103196974A (zh) * | 2012-01-10 | 2013-07-10 | 东北大学 | 一种定磷传感器的制造方法 |
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