JP2004019678A - 動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プーリ2及びセンターハブ5の軸方向方一端側に配置したプレート7の外周側に錘部7aを設ける。これにより、錘部7aを含めたプレート7全体の慣性モーメントが大きくなり、錘部7aを含めたプレート7全体はトルク変動を吸収するフライホィールとして機能する。したがって、十分にトルク変動の吸収することができる。また、プレート7がプーリ2及びセンターハブ5の軸方向方一端側に位置しているので、プーリ2及びセンターハブ5の軸方向方一端側がプレート7により覆われた状態となる。したがって、プレート7がプーリ2(特に、ラジアル転がり軸受3)及びセンターハブ5を保護するカバーとして機能するので、プーリ2及びセンターハブ5を、例えば被水から保護することができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンや電動モータ等の駆動機器のトルクをポンプや圧縮機等の従動機器に伝達する動力伝達装置に関するものであり、車両用空調装置の圧縮機にエンジンの動力を伝達する動力伝達装置に適用して有効である。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
車両用空調装置用の連続可変容量型圧縮機においては、近年、気筒数が減少傾向にあり、これに呼応して、圧縮機自体のトルク変動が比較的大きくなってきている。このため、トルク変動に起因する圧縮機等の振動に伴う騒音対策を施す必要性が高まってきている。
【0003】
これに対して、発明者等は、ゴム等の弾性変形可能なダンパーを動力伝達装置内に組み込むことによりトルク変動の吸収を図った動力伝達装置を施策検討したが、車両によっては、より一層トルク変動を吸収する必要性が生じていた。
【0004】
なお、ダンパーの弾性係数を十分に小さくすれば、十分にトルク変動の吸収することが可能となるが、ダンパーの弾性係数を十分に小さくすると、ダンパーがトルク変動を吸収する際にダンパーが大きく変形せざるを得ないので、ダンパーの耐久性及び信頼性を確保することが難しい。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、従来の異なる新規な構成にて十分にトルク変動の吸収することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、駆動機器のトルクを従動機器に伝達する動力伝達装置であって、駆動機器により回転駆動される第1回転体(2)と、従動機器側に連結され、第1回転体(110)と同軸上に配置されて回転する第2回転体(5)と、第1回転体(2)から第2回転体(5)にトルクを伝達する弾性変形可能なトルク伝達部材(6)と、第1、2回転体(2、5)の軸方向一端側に配置され、第1回転体(2)又は第2回転体(5)と一体的に回転する略板状のプレート(7)とを有し、プレート(7)の外周側には錘部(7a)が設けられていることを特徴とする。
【0007】
これにより、錘部(7a)を含めたプレート(7)全体の慣性モーメントが大きくなり、錘部(7a)を含めたプレート(7)全体がトルク変動を吸収するフライホィールとして機能する。したがって、従来の異なる新規な構成にて十分にトルク変動の吸収することができる。
【0008】
また、プレート(7)が第1、2回転体(2、5)の軸方向方一端側に位置しているので、第1、2回転体(2、5)の軸方向方一端側がプレート(7)により覆われた状態となる。したがって、プレート(7)が第1、2回転体(2、5)を保護するカバーとして機能するので、第1、2回転体(2、5)を例えば被水から保護することができる。
【0009】
また、本発明に係る動力伝達装置を組み立てるに当たっては、第1、2回転体(2、5)を組み付けた後、トルク伝達部材(6)を装着し、その後、プレート(7)を第1回転体(2)又は第2回転体に組み付けることにより組み立てが完了するので、トルク伝達部材(6)等の部品を容易、かつ、迅速に組み付けることができ、組み立て工数の低減を図ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、第1回転体(2)には、軸方向に陥没した環状の溝部(2e)が設けられており、さらに、錘部(7a)は、溝部(2e)に嵌り込むように軸方向に突出していることを特徴とする。
【0011】
これにより、軸方向寸法が大きくなることを防止しながら、慣性モーメントを大きくすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、プレート(7)には、トルク伝達部材(6)に接触してトルク伝達部材(6)が軸方向に変位することを規制する押さえ部(7b)が設けられていることを特徴とする。
【0013】
これにより、例えばトルク伝達部材(6)が脱落する又は位置がずれるといった不具合を容易、かつ、簡便に防止することができる。
【0014】
なお、請求項4に記載の発明では、プレート(7)及び錘部(7a)は、金属にて一体形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本実施形態は、本発明に係る動力伝達装置を車両用空調装置の圧縮機にエンジン(駆動源)の動力を伝達する継ぎ手に適用したものであって、図1は本実施形態に係る動力伝達装置1の断面図であり、図2は図1の左側面(一部断面)図である。
【0017】
図1中、プーリ2はVベルト(図示せず。)を介して走行用エンジン(図示せず。)から駆動力を受けて回転する略円筒状に形成された金属又は硬質樹脂(本実施形態では、フェノール)製の第1回転体であり、このプーリ2の内周側にはプーリ2を回転可能に支持するラジアル転がり軸受3が装着される円筒状のプーリハブ2aが一体成形されている。因みに、ラジアル転がり軸受3の内輪は、圧縮機100のフロントハウジング101に圧入装着される。
【0018】
なお、本実施形態では、プーリ2として、複数列のV溝2bが設けられたポリードライブベルト対応型のプーリを採用しているとともに、プーリ2を樹脂製としているので、プーリハブ2aのうちラジアル転がり軸受3が装着される内周側には、金属製のスリーブ4がインサート成形にてプーリハブ2aに一体化されている。
【0019】
センターハブ5はプーリ2の内周側に位置してプーリ2と同軸上に配置されて回転する金属製の第2回転体であり、このセンターハブ5の外周側は図2示すように、複数箇所の凹凸を有すように星型又は歯車状に形成されている。
【0020】
ここで、センターハブ5は、従動機器である圧縮機100のシャフト102とスプライン結合する円筒状の円筒部5a、センターハブ5の外周側に配置されたダンパー6を介してプーリ2と噛み合う外周部5b、及び外周部5bと円筒部5aとを機械的に連結して外周部5bから円筒部5aにトルクを伝達するとともに、外周部5bから円筒部5aに伝達されるトルクが所定トルク以上となったときに破断するような強度に設定された複数本(本実施形態では、3本)のブリッジ部5cから構成されている。
【0021】
なお、本実施形態では、金属粉を焼結するすることにより円筒部5a、外周部5b及びブリッジ部5cを一体成形してセンターハブ5を形成している。
【0022】
ところで、センターハブ5の星形外周面5d(以下、ハブ外周面5dと呼ぶ。)とプーリ2の内周面2c(以下、プーリ内周面2cと呼ぶ。)とは、径方向、つまり回転軸と直交する方向に所定間隔を隔てて並んで互いに対向しているとともに、プーリ内周面2cは、ハブ外周面5dと反対側、つまり外径方向に向けて陥没するように湾曲した複数個の凹面部2dが回転軸周りに形成されて波打つような形状に構成され、一方、ハブ外周面5dは、プーリ内周面2cと反対側、つまり中心側に向けて陥没するように湾曲した複数個の凹面部5eが回転軸周りに形成されて星形状に構成されている。
【0023】
そして、互いに対向する凹部2d、5e間の空間(以下、この空間をダンパー収納部6aと呼ぶ。)には、プーリ内周面2c及びハブ外周面5dに接触してプーリ2からセンターハブ5にトルクを伝達する弾性変形可能な弾性材(本実施形態では、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合ゴム))からなるダンパー6が配設されており、このダンパー6が特許請求の範囲に記載されたトルク伝達部材に相当する。
【0024】
因みに、ダンパー6は、断面形状が楕円状に形成された柱状のもであり、ダンパー収納部6a内において、ダンパー6の軸方向と回転軸方向とが平行となるように配設されている。
【0025】
また、センターハブ5の外周部5bには、図1に示すように、円盤状のプレート7がボルト8にて固定されており、このプレート7の外周側には、リング状の錘部7aが設けられている。なお、プレート7及び錘部7aは、鉄系金属等の比較的に密度の大きい材料にて成型されている。
【0026】
このとき、錘部7aは、プーリ2に形成された溝部2eに嵌り込むように軸方向に突出している。溝部2eは、プーリ2の軸方向に陥没して環状に形成された凹部である。
【0027】
そして、プレート7のダンパー6側には、ダンパー6側に突出してダンパー6が、所定寸法以上、回転軸方向一端側(紙面左側)に変位することを規制する押さえ部7bが設けられており、この押さえ部7bは、全周に渡って環状に形成されている。
【0028】
次に、本実施形態に係る動力伝達装置1の概略作動を述べる。
【0029】
プーリ2にトルクが作用すると、プーリ2とセンターハブ5とが相対的に変位して、ダンパー収納部6aの体積が縮小変化するので、ダンパー収納部6a内に収納されているダンパー6は、圧縮変形しながらせん断変形する。
【0030】
このとき、ダンパー6の変形、すなわち圧縮変形及びせん断変形のうち回転方向成分の変形に伴って発生する反力によりプーリ2からセンターハブ5にトルクが伝達されるとともに、ダンパー6が変形することによりトルク変動が吸収され、いわゆるナイトハルト型の継ぎ手として機能する。
【0031】
一方、プーリ2からセンターハブ5に伝達されるトルクが所定値以上となると、ブリッジ部5cが破断するため、プーリ2からセンターハブ5へのトルク伝達が遮断される。つまり、インナーハブ132は、所定値以上のトルクが伝達されることを防止するトルクリミッタ機構として機能する。
【0032】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0033】
本実施形態では、プレート7の外周側に錘部7aが設けられているので、錘部7aを含めたプレート7全体の慣性モーメントが大きくなり、錘部7aを含めたプレート7全体はトルク変動を吸収するフライホィールとして機能する。したがって、十分にトルク変動の吸収することができる。
【0034】
なお、図3(a)は本実施形態に係る動力伝達装置1のトルク変動を示す試験結果であり、図3(b)は錘部7aが無い動力伝達装置のトルク変動を示す試験結果であり、この試験結果から明らかなように、十分にトルク変動の吸収することができることが解る。
【0035】
また、プレート7がプーリ2及びセンターハブ5の軸方向方一端側に位置しているので、プーリ2及びセンターハブ5の軸方向方一端側がプレート7により覆われた状態となる。したがって、プレート7がプーリ2(特に、ラジアル転がり軸受3)及びセンターハブ5を保護するカバーとして機能するので、プーリ2及びセンターハブ5を、例えば被水から保護することができる。
【0036】
また、錘部7aは、プーリ2に形成された溝部2eに嵌り込むように軸方向に突出しているので、軸方向寸法が大きくなることを防止しながら、慣性モーメントを大きくすることができる。
【0037】
また、押さえ部7bによってダンパー6が押さえられているので、例えばダンパー6が脱落するといった不具合を容易、かつ、簡便に防止することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る動力伝達装置1を組み立てるに当たっては、プーリ2及びセンターハブ5を圧縮機100に組み付けた後、ダンパー6をダンパー収納部6aに挿入し、その後、プレート7をセンターハブ5に組み付けることにより組み立てが完了するので、ダンパー6等の部品を容易、かつ、迅速に組み付けることができ、組み立て工数の低減を図ることができる。
【0039】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、プレート7をセンターハブ5に組み付けたが、プーリ2に組み付けてもよい。
【0040】
また、上述の実施形態では、プレート7をセンターハブ5の外周部5bに組み付けたが、プレート7をセンターハブ5の円筒部5aに組み付けてもよい。なお、プレート7をセンターハブ5の円筒部5aに組み付ければ、トルクリミッタ機構に不必要な慣性力が作用することを抑制できる。
【0041】
また、ダンパー6の具体的材質も前述のゴム(EPDM)に限らず、エラストマ等のその他の弾性樹脂材料にて構成してもよい。
【0042】
また、上述の実施形態では、本発明によるトルク伝達装置を車両用空調装置に適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々な技術分野のトルク伝達装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る動力伝達装置(継ぎ手)の断面図である。
【図2】図1の左側面図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態に係る動力伝達装置のトルク変動を示すグラフであり、(b)は錘部が無い動力伝達装置のトルク変動を示すグラフである。
【符号の説明】
1…動力伝達装置、2…プーリ、5…センターハブ、6…ダンパー、
7…プレート、7a…錘部。
Claims (4)
- 駆動機器のトルクを従動機器に伝達する動力伝達装置であって、
前記駆動機器により回転駆動される第1回転体(2)と、
前記従動機器側に連結され、前記第1回転体(110)と同軸上に配置されて回転する第2回転体(5)と、
前記第1回転体(2)から前記第2回転体(5)にトルクを伝達する弾性変形可能なトルク伝達部材(6)と、
前記第1、2回転体(2、5)の軸方向一端側に配置され、前記第1回転体(2)又は前記第2回転体(5)と一体的に回転する略板状のプレート(7)とを有し、
前記プレート(7)の外周側には錘部(7a)が設けられていることを特徴とする動力伝達装置。 - 前記第1回転体(2)には、軸方向に陥没した環状の溝部(2e)が設けられており、
さらに、前記錘部(7a)は、前記溝部(2e)に嵌り込むように軸方向に突出していることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。 - 前記プレート(7)には、前記トルク伝達部材(6)に接触して前記トルク伝達部材(6)が軸方向に変位することを規制する押さえ部(7b)が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の動力伝達装置。
- 前記プレート(7)及び前記錘部(7a)は、金属にて一体形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに動力伝達装置。
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