JP2004018837A - グラフト重合体組成物およびその用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明にかかるグラフト重合体組成物は、ポリエーテル部分を含む主鎖に不飽和カルボン酸系単量体を必須成分として含むモノエチレン性不飽和単量体成分がグラフト重合されてなるグラフト重合体を2種以上含むグラフト重合体組成物であって、前記不飽和カルボン酸系単量体は、75〜100モル%の不飽和モノカルボン酸と0〜25モル%の不飽和ジカルボン酸(不飽和モノカルボン酸と不飽和ジカルボン酸の合計は100モル%)からなり、前記2種以上のグラフト重合体のうちの2種のグラフト重合体の間で、それぞれの主鎖の両末端に位置する構造単位を構成する炭素数を所定条件下で比較したとき3以上異なることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば洗剤用ビルダーや洗剤組成物として好適なグラフト重合体組成物およびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、例えば、アルコール等にアルキレンオキサイドを付加させたポリエーテル化合物に、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸系単量体をグラフト重合させて得られるグラフト重合体は、その親水性を利用して、洗剤ビルダーを始めとして種々の用途において汎用されている。
このようなグラフト重合体においては、前記ポリエーテル化合物を構成するアルコールの炭素数が多いと、導入されるカルボン酸量が限られ、ひいてはビルダー性能が不充分となる傾向があるため、洗剤ビルダーとして用いる場合には、炭素数が比較的少ないアルコール等にアルキレンオキサイドを付加させたポリエーテル化合物を用いて得られたグラフト重合体が好ましく用いられてきた。しかしながら、このような炭素数が比較的少ないアルコール等にアルキレンオキサイドを付加させたポリエーテル化合物を用いて得られたグラフト重合体を洗剤ビルダーとして用いた場合、油等の疎水性の汚れに対する洗浄力が十分でないという問題や、液体洗剤として用いる場合に相溶性が低いという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、まず、上記の問題を解決する手段として、グラフト重合体の主鎖の末端に位置する構造単位を構成する炭素数が一定以上異なる2種以上のグラフト重合体を混在させることを考え、この技術によれば、上記の問題が解決できることが判った。しかしながら、このようにして得られた重合体組成物は、その着色が大きく、このような着色のために、洗剤に配合すると洗剤組成物が着色するという問題があった。
したがって、本発明の課題は、良好なビルダー性能を有するとともに着色が極めて少ないグラフト重合体組成物およびその用途を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、グラフト重合体の主鎖の末端に位置する構造単位を構成する炭素数が一定以上異なる2種以上のグラフト重合体を混在させることに加えて、グラフト重合によって導入する不飽和カルボン酸系単量体中の不飽和ジカルボン酸の割合を特定の割合未満に減らすことにより、上記課題が解決できることを見出した。
つまり、末端に位置する構造単位を構成する炭素数の少ない主鎖を持つグラフト重合体(I)は、もともと高いキレート能やクレイ分散能を持っており、油等の疎水性の汚れに対する洗浄力が十分でないという問題や液体洗剤として用いる場合に相溶性が低いという問題については、末端に位置する構造単位を構成する炭素数の多い主鎖を持つグラフト重合体(II)により解消されて、その高いビルダー性能を十分に発揮する。他方、末端に位置する構造単位を構成する炭素数の多い主鎖を持つグラフト重合体(II)は、もともと、そのビルダー性能が高いとは言えないが、末端に位置する構造単位を構成する炭素数の少ない主鎖を持つグラフト重合体(I)と共存しても、グラフト重合体(I)の高いビルダー性能を希釈することがない。そのため、末端に位置する構造単位を構成する炭素数の少ない主鎖を持つグラフト重合体(I)と、末端に位置する構造単位を構成する炭素数の多い主鎖を持つグラフト重合体(II)とを共存させることとすれば、高いビルダー性能と、疎水性の汚れに対する高い洗浄性、液体洗剤として用いる場合の優れた相溶性をともに全て満足させることができるようになる。加えて、グラフト重合によって導入する不飽和カルボン酸系単量体中の不飽和ジカルボン酸の割合を特定の割合未満に減らすことにより、着色が極めて少ないグラフト重合体組成物とすることができる。
【0005】
すなわち、本発明にかかるグラフト重合体組成物は、ポリエーテル部分を含む主鎖に不飽和カルボン酸系単量体を必須成分として含むモノエチレン性不飽和単量体成分がグラフト重合されてなるグラフト重合体を2種以上含むグラフト重合体組成物であって、
前記不飽和カルボン酸系単量体は、75〜100モル%の不飽和モノカルボン酸と0〜25モル%の不飽和ジカルボン酸(不飽和モノカルボン酸と不飽和ジカルボン酸の合計は100モル%)からなり、
前記2種以上のグラフト重合体のうちの2種のグラフト重合体の間で、それぞれの主鎖の両末端に位置する構造単位を構成する炭素数を下記(i)および(ii)の条件下で比較したときに、末端の構造単位の炭素数が3以上異なる、
ことを特徴とする。
【0006】
(i)最も端に位置するエーテル結合部分から末端までを末端の構造単位とするとともに、それぞれの両末端の構造単位の間で炭素数に大小があるときは、大きい方の炭素数を末端の構造単位の炭素数とすること。
(ii)末端がアルキレンオキシド由来の構造単位である場合は、末端の構造単位の炭素数は0とすること。
ここで、上記の2種以上のグラフト重合体のうちの2種のグラフト重合体の間の構造関係を分かり易く説明すれば、前記2種以上のグラフト重合体のうちの2種のグラフト重合体の間で、下記(1)〜(3)で定義する「末端の構造単位の炭素数」が3以上異なることを意味する。
【0007】
(1) 最も端に位置するエーテル結合部分から末端までを末端の構造単位とすること。
(2) 2種のグラフト重合体それぞれの両末端の構造単位の間で炭素数に大小があるときは、大きい方の炭素数を「末端の構造単位の炭素数」とすること。
(3) 末端がアルキレンオキシド由来の構造単位である場合、「末端の構造単位の炭素数」は0とすること。
また、本発明にかかる洗剤用ビルダーは、本発明のグラフト重合体組成物を必須成分とする。
【0008】
また、本発明にかかる洗剤組成物は、本発明のグラフト重合体組成物を必須成分とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のグラフト重合体組成物は、ポリエーテル部分を含む主鎖に不飽和カルボン酸系単量体を必須成分として含むモノエチレン性不飽和単量体成分がグラフト重合されてなるグラフト重合体を2種以上含むものである。そして、2種以上のグラフト重合体のうちの2種のグラフト重合体の間で、それぞれの主鎖の両末端に位置する構造単位を構成する炭素数を、下記(i)および(ii)の条件下で比較したときに、3以上異なることが重要である。このように主鎖の末端に位置する構造単位を構成する炭素数が3以上異なる2種のグラフト重合体を含まない組成物では、油等の疎水性の汚れに対する洗浄力が不十分となったり、液体洗剤として用いる場合の相溶性が不十分となり、本発明の効果を発揮しえない。
【0010】
(i)最も端に位置するエーテル結合部分から末端までを末端の構造単位とするとともに、それぞれの両末端の構造単位の間で炭素数に大小があるときは、大きい方の炭素数を末端の構造単位の炭素数(本明細書では、単に「末端炭素数」と言うこともある)とすること。
(ii)末端がアルキレンオキシド由来の構造単位である場合は、末端の構造単位の炭素数は0とすること。
なお、本発明において、各グラフト重合体の末端炭素数の比較は、例えば、グラフト重合体を製造する際に用いる主鎖成分(ポリエーテル化合物)の末端の炭素数を比較することによって判断すればよい。
【0011】
本発明のグラフト重合体組成物においては、グラフト重合によって導入される前記不飽和カルボン酸系単量体が、75〜100モル%の不飽和モノカルボン酸と0〜25モル%の不飽和ジカルボン酸(不飽和モノカルボン酸と不飽和ジカルボン酸の合計は100モル%)からなることが重要である。
好ましくは、前記不飽和カルボン酸系単量体が、80〜100モル%の不飽和モノカルボン酸と0〜20モル%の不飽和ジカルボン酸(不飽和モノカルボン酸と不飽和ジカルボン酸の合計は100モル%)からなり、より好ましくは、前記不飽和カルボン酸系単量体が、85〜100モル%の不飽和モノカルボン酸と0〜15モル%の不飽和ジカルボン酸(不飽和モノカルボン酸と不飽和ジカルボン酸の合計は100モル%)からなり、さらに好ましくは、前記不飽和カルボン酸系単量体が、90〜100モル%の不飽和モノカルボン酸と0〜10モル%の不飽和ジカルボン酸(不飽和モノカルボン酸と不飽和ジカルボン酸の合計は100モル%)からなる。本発明のグラフト重合体組成物において、グラフト重合によって導入される前記不飽和カルボン酸系単量体が、75モル%未満の不飽和モノカルボン酸と25モル%より多い不飽和ジカルボン酸(不飽和モノカルボン酸と不飽和ジカルボン酸の合計は100モル%)からなる場合は、得られる重合体組成物の着色が大きくなるので、好ましくない。
【0012】
本発明のグラフト重合体組成物は、上記の構成を有することにより、着色が極めて少ないという特徴を有する。着色については、後述の実施例に記載の方法によって測定されたb値(グラフト重合体濃度を50重量%としたときのb値)を用いると、本発明のグラフト重合体組成物の有するb値は、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下、特に好ましくは10以下である。b値が25を超えると、着色の度合いが大きいために好ましくない。本発明においては、2種以上のグラフト重合体のそれぞれの主鎖の両末端を構成する構造単位のうち、炭素数の最も小さい構造単位の炭素数が5以下であることが好ましい。これにより、油等の疎水性の汚れに対する洗浄性や、液体洗剤として用いる場合の相溶性をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明において、2種以上の各グラフト重合体の比率は特に制限されないが、好ましくは、2種以上のグラフト重合体のそれぞれの主鎖の両末端を構成する構造単位のうち、炭素数の最も大きい構造単位を有するグラフト重合体が、グラフト重合体全体の10重量%以上を占めているのがよい。これにより、油等の疎水性の汚れに対する洗浄性や、液体洗剤として用いる場合の相溶性をさらに向上させることができる。また、末端炭素数の最も大きいグラフト重合体の片末端のアルキレンオキシドの付加モル数は3〜30モルであることが好ましく、4〜20モルであることがより好ましく、5〜10モルであることがさらに好ましい。さらに、末端炭素数の最も小さいグラフト重合体の片末端のアルキレンオキシドの付加モル数は3〜60モルであることが好ましく、5〜40モルであることがより好ましく、7〜20モルであることがさらに好ましい。
【0014】
本発明のグラフト重合体組成物は、酸価が2.0meq/g以上であることが好ましく、より好ましくは2.5meq/g以上、さらに好ましくは3.0meq/g以上である。酸価が2.0meq/g未満であると、分散性やキレート能について優れた性能を発揮できないことがあるために好ましくない。
本発明のグラフト重合体組成物の重量平均分子量は300〜500,000であることが好ましい。500,000を超えると、相溶性や分散性が低下する傾向があり、一方、300未満であると、キレート能が低下する傾向がある。
本発明のグラフト重合体組成物は、例えば、1つの製造方法(製造方法1)として、複数の主鎖原料を用いて、同時に2種以上のグラフト重合体を得る方法、具体的には、各ポリエーテル化合物の両末端に位置する構造単位を構成する炭素数を上記(i)および(ii)の条件下で比較したときに、3以上異なるような2種以上のポリエーテル化合物を混合物として得、次いで、該混合物に、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分として含むモノエチレン性不飽和単量体成分を加えて、前記2種以上のポリエーテル化合物に同時に前記モノエチレン性不飽和単量体成分をグラフト重合させることにより、得ることができる。また、別の製造方法(製造方法2)として、各グラフト重合体を別々に重合して得、後に混合する方法、具体的には、ポリエーテル化合物(a)に不飽和カルボン酸系単量体を必須成分として含むモノエチレン性不飽和単量体成分をグラフト重合させてグラフト重合体(A)を得、他方、前記ポリエーテル化合物(a)の両末端に位置する構造単位を構成する炭素数を上記(i)および(ii)の条件下で比較したときに3以上異なるようなポリエーテル化合物(a’)に不飽和カルボン酸系単量体を必須成分として含むモノエチレン性不飽和単量体成分をグラフト重合させてグラフト重合体(A’)を得、次いで、前記グラフト重合体(A)と前記グラフト重合体(A’)とを含む重合体成分を混合することにより、得ることができる。
【0015】
なお、上記製造方法1においては、「末端の構造単位の炭素数」が3以上異なるような2種以上のポリエーテル化合物に対して同時にモノエチレン性不飽和単量体成分をグラフト重合させたときに、各ポリエーテル化合物を主鎖とする2種以上のグラフト重合体が別々に得られるほか、「末端の構造単位の炭素数」が3以上異なるような2種以上のポリエーテル化合物同士が、モノエチレン性不飽和単量体成分のグラフト重合により形成されたグラフト鎖を介して結合した形のグラフト重合体が形成されることもある。すなわち、「末端の構造単位の炭素数」が3以上異なる少なくとも2つのポリエーテル化合物が1つの重合体においていずれも主鎖となり、かつ、これらの主鎖がグラフト鎖で架橋されたような構造の1つのグラフト重合体(主鎖複数グラフト重合体)が形成されることもあるのである。
【0016】
このようなことから、本発明にかかるグラフト重合体組成物においては、前述した少なくとも2つのグラフト重合体、すなわち、「末端の構造単位の炭素数」が3以上異なるグラフト重合体(主鎖単数グラフト重合体)が少なくとも2つ存在するほか、上述した「主鎖複数グラフト重合体(III)」も共存することがあるのである。
末端に位置する構造単位を構成する炭素数の少ない主鎖を持つグラフト重合体(I)に対して、末端に位置する構造単位を構成する炭素数の多い主鎖を持つグラフト重合体(II)を共存させると、グラフト重合体(I)における油等の疎水性の汚れに対する洗浄力が十分でないという問題や液体洗剤として用いる場合に相溶性が低いという問題を解消することが出来るが、グラフト重合体(I)の量が多くなると、再び、その問題が浮上してくる。このとき、「主鎖複数グラフト重合体(III)」が共存すると、グラフト重合体(I)の量を多くしても、これらの問題が生じにくくなる。
【0017】
上記製造方法1による場合、グラフト重合体(I)とグラフト重合体(II)の相互比率は重合反応時の生成比で定まるが、上記製造方法2によると、この相互比率を自由に調整することができる。
以下、前記製造方法1および製造方法2においてグラフト重合体を得る方法について述べる。
グラフト重合体の主鎖となるポリエーテル化合物は、例えば、被付加化合物にアルキレンオキシドを付加させて得ることができる。
前記被付加化合物としては、例えば、アルコール類、アミン類およびカルボン酸類からなる群より選ばれるものが挙げられ、前述のように、得られるポリエーテル化合物の両末端に位置する構造単位を構成する炭素数が一定の炭素数の差を有するように選択されるものであれば、その種類や分子量等については、特に制限はない。
【0018】
前記アルコール類としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールの炭素数1〜22の1級脂肪族アルコール;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、クミルフェノール、キシレノール、オクチルフェノール、tert−ブチルフェノール、ノニルフェノール、ナフトール等の芳香族アルコール;iso−プロピルアルコールやn−パラフィンを酸化して得られるアルコール等の炭素数3〜18の2級アルコール;tert−ブタノール等の3級アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、プロピレングリコール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類;ソルビトール等のポリオール類;等を挙げることができる。
【0019】
前記アミン類としては、具体的には、例えば、アニリン、ナフチルアミン等の芳香族アミン類;ドデシルアミン、ステアリルアミン等の炭素数3〜22のアルキルアミン類;エチレンジアミン等のアルキルジアミン類;等を挙げることができる。
前記カルボン酸類としては、具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸、コハク酸、フタル酸等を挙げることができる。
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1−ブテンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、グリシドール、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、α−オレフィンオキシドからなる群より選ばれる1種または2種以上を必須成分として含み、必要に応じてこれらと共重合可能な他のアルキレンオキシドをさらに含むものが挙げられる。特に、モノエチレン性不飽和単量体成分のグラフト化効率を考慮すると、アルキレンオキシドの必須成分として、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを用いることが好ましい。また、他のアルキレンオキシドとしては、例えば、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらアルキレンオキシドは前記被付加化合物に対して好ましくは100モル%以上、より好ましくは300モル%以上用いるのがよい。
【0020】
前記被付加化合物にアルキレンオキシドを付加させてポリエーテル化合物を得る際の重合の反応形式については、特に限定はなく、例えば、1)アルカリ金属の水酸化物、アルコラート等の強アルカリや、アルキルアミン等を塩基触媒として用いるアニオン重合、2)金属および半金属のハロゲン化物、鉱酸、酢酸等を触媒として用いるカチオン重合、3)アルミニウム、鉄、亜鉛等の金属のアルコキシド、アルカリ土類化合物、ルイス酸等を組み合わせたものを用いる配位重合、のうちのいずれでもよい。
グラフト重合体の主鎖となる前記ポリエーテル化合物は、前記重合によって得られるポリエーテルから誘導された誘導体でもよい。このような誘導体としては、例えば、ポリエーテルの末端官能基を変換した末端基変換体や、ポリエーテルと、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、ハロゲン基等の基を複数有する架橋剤とを反応させて得られる架橋体等を挙げることができる。末端基変換体としては、上記ポリエーテルの少なくとも1つの末端の水酸基を、酢酸や無水酢酸等の炭素数2〜22の脂肪酸およびその酸無水物、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸でエステル化したものが好ましい。
【0021】
グラフト重合体の主鎖となる前記ポリエーテル化合物の数平均分子量は、100〜50,000であることが好ましい。数平均分子量が100未満であると、グラフト率が低下し、未反応のポリエーテル化合物が多くなる傾向があり、一方、50,000を超えると、粘度が高くなる傾向があり、重合時に取扱いにくくなるので、いずれも好ましくない。
グラフト重合体のグラフト成分となる前記モノエチレン性不飽和単量体成分は、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分として含むものであり、さらに必要に応じて、不飽和カルボン酸系単量体と共重合可能な他の不飽和単量体を含むものである。
【0022】
前記不飽和カルボン酸系単量体は、前述したように、75〜100モル%の不飽和モノカルボン酸と0〜25モル%の不飽和ジカルボン酸(不飽和モノカルボン酸と不飽和ジカルボン酸の合計は100モル%)からなる。
前記不飽和モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸等が挙げられ、前記不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等を挙げることができる。これらはそれぞれ1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記不飽和カルボン酸系単量体と共重合可能な他の不飽和単量体としては、不飽和カルボン酸系単量体以外の単量体であれば、特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18のアルコールとのエステル化により得られるアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;スチレン、スチレンスルホン酸等の芳香族ビニル系単量体類;マレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体類;(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体類;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシ−1−プロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−ブテンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール:ビニルピロリドン等のその他官能基含有単量体類;等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。
【0023】
モノエチレン性不飽和単量体成分中の前記不飽和カルボン酸系単量体の割合は、特に限定はないが、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、さらにより好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であるのがよい。
また、前記モノエチレン性不飽和単量体と前記ポリエーテル化合物との合計に対する前記不飽和カルボン酸系単量体の割合は、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましい。さらに、前記モノエチレン性不飽和単量体と前記ポリエーテル化合物との合計に対する前記ポリエーテル化合物の割合は、95重量%未満であることが好ましく、90重量%未満であることがより好ましい。
【0024】
前記ポリエーテル化合物に前記モノエチレン性不飽和単量体成分をグラフト重合させる際には、ポリエーテル化合物1重量部に対してモノエチレン性不飽和単量体成分を0.1〜2.5重量部用いることが好ましい。ポリエーテル化合物1重量部に対してモノエチレン性不飽和単量体成分が0.1重量部よりも少ないと、分散性やキレート能等の性能が不充分となる傾向があり、一方、2.5重量部よりも多いと、グラフト重合中の反応系の粘度が上昇し、ゲル化する恐れがある。
前記ポリエーテル化合物に前記モノエチレン性不飽和単量体成分をグラフト重合させる際には、重合開始剤として公知のラジカル開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、有機過酸化物を用いることが特に好ましい。
【0025】
前記有機過酸化物としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレエート、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)オクタン等のパーオキシケタール類;p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ヘキシルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2−(4−メチルシクロヘキシル)−プロパンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)p−ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)p−イソプロピルヘキシン等のジアルキルパーオキサイド類;イソブチリルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−アリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;α,α’−ビス(ネオデカノパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシビバレート、tert−ブチルパーオキシビバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジブチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシッド、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルシクロヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジブチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(tert−ブチルパーオキシ)イソフタレート、クミルパーオキシオクトエート、tert−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル類;tert−ブチルパーオキシアリルカーボネート、tert−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキサイド等のその他有機過酸化物類;等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。
【0026】
前記有機過酸化物の使用量は、特に限定はないが、モノエチレン性不飽和単量体成分に対して好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%である。0.1重量%未満であると、ポリエーテル化合物へのグラフト率が低下する傾向があり、一方、30重量%を超えると、有機過酸化物が高価であるため、経済上、好ましくない。有機過酸化物は、エチレン性不飽和単量体成分と同時に、かつ、予めポリエーテル化合物に混合することなく別々に、添加するのが好ましいが、予めポリエーテル化合物に添加しておくこともでき、モノエチレン性不飽和単量体成分に添加しておくこともできる。
【0027】
前記ポリエーテル化合物に前記モノエチレン性不飽和単量体成分をグラフト重合させる際には、前記有機過酸化物とともに、有機過酸化物の分解触媒や還元性化合物を併用してもよい。
前記有機過酸化物の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、イソラク酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステルおよびその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミンおよびその誘導体等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。
【0028】
前記還元性化合物としては、例えば、フェロセン等の有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属イオンを発生できる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。
【0029】
前記ポリエーテル化合物に前記モノエチレン性不飽和単量体成分をグラフト重合させるに際しては、実質的には無溶媒で重合を行っても良く、溶媒を使用して行なっても良い。溶媒を使用する場合、その使用量は反応系全体の20重量%以下とすることが好ましい。溶媒量が反応系全体の20重量%を超えると、モノエチレン性不飽和単量体成分のグラフト率が低下する傾向があるからである。反応系の粘度が高い場合は、少量の溶媒を用いて希釈する方が取扱上好ましい時もある。使用した溶媒は必要に応じ反応系から留去してもしてもよいが、本発明のグラフト重合体組成物を液体洗剤用ビルダーや液体洗剤組成物に使用する場合は、溶媒を除くのでなく、溶媒を含む液体状態のグラフト重合体組成物のままで使用するのが良い。
【0030】
前記溶媒としては、特に限定はないが、使用される単量体の溶媒への連鎖移動定数が可能なかぎり小さいものや、常圧下で反応に用いることができる沸点80℃以上のもの等が好ましい。このような溶媒としては、例えば、iso−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等のジエーテル類;酢酸、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルエーテルの酢酸エステル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルの酢酸エステル等の酢酸系化合物;等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。上記アルコール類およびジエーテル類中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。
【0031】
前記グラフト重合の際の温度は、特に限定されるものではないが、80℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは90〜160℃である。80℃未満の温度では、グラフト重合が進行しにくく、モノエチレン性不飽和単量体成分のグラフト率が低下する傾向がある。一方、160℃を超える温度では、ポリエーテル化合物および得られるグラフト重合体の熱分解が起こるおそれがある。
前記ポリエーテル化合物に前記不飽和カルボン酸系単量体を必須成分として含むモノエチレン性不飽和単量体成分をグラフト重合させる際には、前記ポリエーテル化合物は、その一部または全量を初期に仕込むことが好ましい。また、単量体成分のうち、前記不飽和ジカルボン酸は、その一部または全量を初期に仕込んでもよいが、その使用量の半分以上を前記ポリエーテル化合物とともに初期に仕込むことが好ましい。さらに前記不飽和モノカルボン酸単量体は全量を滴下することが好ましい。そして、残りの単量体と重合開始剤とを前記ポリエーテル化合物を80℃以上に加熱した後、別々に滴下することが好ましい。この方法により、得られるグラフト重合体の分子量を容易に調整できるようになる。
【0032】
本発明において、各グラフト重合体の重量平均分子量は、300〜500,000の範囲であることが好ましい。500,000を超えると、相溶性や分散性が低下する傾向があり、一方、300未満であると、キレート能が低下する傾向がある。
本発明のグラフト重合体組成物は、そのまま水やアルコール等の溶剤に溶解して使用することができるが、塩基を添加して使用することもできる。塩基としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等の1価金属塩、カルシウム塩等の2価金属塩、アルミニウム塩等の3価金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩などを挙げることができる。その際には、溶剤としては水が好ましい。
【0033】
本発明の洗剤用ビルダーは、前述の本発明のグラフト重合体組成物を必須成分とするものである。具体的には、本発明の洗剤用ビルダーは、前述のグラフト重合体組成物のみからなっていてもよいし、他の公知の洗剤用ビルダーをも含んでいてもよい。
本発明の洗剤用ビルダーは、粉末洗剤用であっても液体洗剤用であっても優れた性能を有する。特に、液体洗剤用ビルダーとして用いると、本発明の効果がより十分に発揮できるので好ましい。
なお、上において、本発明にかかる洗剤用ビルダーがグラフト重合体組成物を必須成分とすると述べた趣旨は、当該洗剤用ビルダーが、グラフト重合体として、ポリエーテル部分を含む主鎖に不飽和カルボン酸系単量体を必須成分として含むモノエチレン性不飽和単量体成分がグラフト重合されてなるグラフト重合体を2種以上含み、前記不飽和カルボン酸系単量体は、75〜100モル%の不飽和モノカルボン酸と0〜25モル%の不飽和ジカルボン酸(不飽和モノカルボン酸と不飽和ジカルボン酸の合計は100モル%)からなり、前記2種以上のグラフト重合体のうちの2種のグラフト重合体の間で、それぞれの主鎖の両末端に位置する構造単位を構成する炭素数を前記(i)および(ii)の条件下で比較したときに、末端の構造単位の炭素数が3以上異なる、ことになっておれば良いことを意味し、したがって、洗剤用ビルダーの配合原料として、前記(i)および(ii)の条件下で比較したときに末端の構造単位の炭素数が3以上異なる関係にある2種以上のグラフト重合体が予め混在する形で用いられるに止まらず、上記関係にある2種類以上のグラフト重合体を別々に配合した結果として洗剤用ビルダー中に上記関係にある2種類以上のグラフト重合体が共存する状態になることも意味する。
【0034】
前記他の洗剤用ビルダーとしては、特に限定されないが、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ポウ硝、炭酸ナトリウム、ニトリロトリ酢酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウムやカリウム、ゼオライト、多糖類のカルボキシル誘導体、(メタ)アクリル酸(共)重合体塩、フマール酸(共)重合体塩等の水溶性重合体等が挙げられる。なお、これら他の洗剤ビルダーの配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定すればよい。
本発明の洗剤用ビルダーは、界面活性剤との相溶性に優れ、高濃縮の液体洗剤組成物とできることから、液体洗剤用として好適である。界面活性剤との相溶性に優れることにより、液体洗剤組成物としたときの透明性が良好となり、濁りが原因として起こる液体洗剤の分離の問題を防ぐことができる。しかも、相溶性が優れることによって、高濃縮の液体洗剤組成物とすることができ、液体洗剤の洗剤能力の向上にもつながる。
【0035】
本発明の洗剤用ビルダーは、本発明のグラフト重合体組成物を含んでなることにより、優れたクレイ分散性を発揮することができる。好ましくは、クレイ分散性(炭酸カルシウム50ppm)が0.3以上であり、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.9以上である。クレイ分散性(炭酸カルシウム50ppm)が0.3未満の場合は、洗剤用ビルダーとして用いた場合、特に、泥汚れに対する洗浄力アップの効果が小さくなるため好ましくない。
本発明の洗剤用ビルダーは、本発明のグラフト重合体組成物を含んでなることにより、洗剤組成物の着色が極めて少なくなる点で好ましい。
【0036】
本発明の洗剤組成物は、前述の本発明のグラフト重合体組成物を必須成分とするものである。
本発明の洗剤組成物は、粉末洗剤用であっても液体洗剤用であっても優れた性能を有する。特に、液体洗剤組成物として用いると、本発明の効果がより十分に発揮できるので好ましい。
なお、上において、本発明にかかる洗剤組成物がグラフト重合体組成物を必須成分とすると述べた趣旨は、当該洗剤組成物が、グラフト重合体として、ポリエーテル部分を含む主鎖に不飽和カルボン酸系単量体を必須成分として含むモノエチレン性不飽和単量体成分がグラフト重合されてなるグラフト重合体を2種以上含み、前記不飽和カルボン酸系単量体は、75〜100モル%の不飽和モノカルボン酸と0〜25モル%の不飽和ジカルボン酸(不飽和モノカルボン酸と不飽和ジカルボン酸の合計は100モル%)からなり、前記2種以上のグラフト重合体のうちの2種のグラフト重合体の間で、それぞれの主鎖の両末端に位置する構造単位を構成する炭素数を前記(i)および(ii)の条件下で比較したときに、末端の構造単位の炭素数が3以上異なる、ことになっておれば良いことを意味し、したがって、洗剤組成物の配合原料として、前記(i)および(ii)の条件下で比較したときに末端の構造単位の炭素数が3以上異なる関係にある2種以上のグラフト重合体が予め混在する形で用いられるに止まらず、上記関係にある2種類以上のグラフト重合体を別々に配合した結果として洗剤組成物中に上記関係にある2種類以上のグラフト重合体が共存する状態になることも意味する。
【0037】
本発明の洗剤組成物に含まれる本発明のグラフト重合体組成物の配合割合は、通常、0.1〜60重量%が好ましく、より好ましくは1〜30重量%である。本発明のグラフト重合体組成物の配合割合が0.1重量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる。一方、60重量%を超えると、経済性が低下する。
本発明の洗剤組成物は、通常、前述の本発明のグラフト重合体組成物のほかに、洗剤用の界面活性剤をも含有する。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0038】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等を挙げることができる。
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。
【0039】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、第4アンモニウム塩等を挙げることができる。
両性界面活性剤の具体例としては、カルボキシル型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができる。
前記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物中、10〜60重量%が好ましく、より好ましくは15〜50重量%である。界面活性剤の配合割合が10重量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなり、一方、60重量%を超えると、経済性が低下する。
【0040】
本発明の洗剤組成物には、さらに、洗剤に慣用されている種々の添加剤を加えることができる。具体的には、例えば、汚染物質の再沈着を防止するためのカルボキシメチルセルロースナトリウム、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等のよごれ抑制剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、酵素、染料、溶媒、ゼオライト等が挙げられる。なお、これら添加剤の配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定すればよい。
本発明の洗剤組成物は、液体洗剤組成物として用いる場合、グラフト重合体組成物と界面活性剤との相溶性に優れるので、透明性が良好となり、濁りが原因として起こる液体洗剤の分離の問題を防ぐことができる。しかも、相溶性が優れることによって、高濃縮として使用することができるので、液体洗剤の洗剤能力の向上にもつながる。
【0041】
本発明の洗剤組成物は、本発明のグラフト重合体組成物を含んでなることにより、着色が極めて少なくなる点で好ましい。
相溶性が優れていることを示す尺度の一つとしては、濁度計を用いて測定した濁度(Turbidity、カオリン濁度)が有用であり、本発明の洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合の25℃における濁度値は、好ましくは200mg/l以下、より好ましくは100mg/l以下、さらに好ましくは50mg/l以下である。
【0042】
【実施例】
以下に実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<酸価>
得られたグラフト重合体(組成物)の酸価は、0.1N−NaOH水溶液を用いた滴定によって算出した。
<色相(b値)の測定方法>
重合体(または重合体水溶液)を純水で希釈または濃縮し、重合体濃度が50重量%になるように調整した。日本電色工業社性測色色差計ND−1001DPを用い、調整した水溶液の透過測定を行うことにより、Lab値の値を測定した。b値は正の数の方向で、大きいほど水溶液の黄色が濃くなる。
【0043】
<カルシウムイオン捕捉能>
検量線用カルシウムイオン標準液として、塩化カルシウム二水和物を用いて、0.01mol/L、0.001mol/L、0.0001mol/Lの水溶液を各50g 調製し、4.8%NaOH水溶液でpH9〜11の範囲に調整し、さらに4mol/Lの塩化カリウム水溶液(以下、4M−KCl水溶液と略す)を1ml添加し、マグネチックスターラーを用いて十分に攪拌し、検量線用サンプル液を作製した。また、試験用カルシウムイオン標準液として、塩化カルシウム二水和物を用いて、0.001mol/Lの水溶液を調製した。
【0044】
次いで、100mlビーカーに試験サンプル(重合体もしくは重合体組成物)を固形分換算で10mg秤量し、試験用カルシウムイオン標準液50gを添加し、マグネチックスターラーを用いて十分に攪拌した。さらに、4.8%NaOH水溶液でpH9〜11の範囲に調整し、さらに4M−KCl水溶液を1ml添加し、マグネチックスターラーを用いて十分に攪拌し、試験用サンプル液を作製した。
作製した検量線用サンプル液、試験用サンプル液を、滴定装置(平沼産業(株)製「COMTITE−550」)を用いて、カルシウムイオン電極(オリオン社製「93−20」)、比較電極(オリオン社製「90−01」)によりカルシウムイオン量の測定を行なった。そして、検量線用サンプル液および試験用サンプル液の測定値より、サンプルが捕捉したカルシウムイオン量を計算により求め、重合体(もしくは重合体組成物)固形分1gあたりのカルシウムイオン捕捉量を炭酸カルシウム換算のmg数で表し、この値によりカルシウムイオン捕捉能を評価した。
【0045】
<クレイ分散能>
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、NaOH2.4gに、純水を加えて600gにし、バッファー(1)を調製した。このバッファー(1)60gに塩化カルシウム二水和物0.0817gを加え、さらに純水を加えて1000gにし、バッファー(2)を調製した。次いで、試験サンプル(重合体もしくは重合体組成物)の0.1重量%水溶液( 固形分重量換算) 4gに、バッファー(2)を36g 加え、攪拌し分散液とした。
試験管(マルエム社製、リム付き試験管、目安入り30ml:直径18mm×高さ180mm)に、クレー(社団法人日本粉体工業技術協会製、JIS試験用粉体1、11種(Lot.No.P0011001))0.3gを入れた後、分散液30gを加え、密封した。そして、該試験管を振り、クレーを均一に分散させた。その後、試験管を直射日光の当たらないところに20時間静置し、20時間後、分散液の上澄みを5cc取り、UV分光器(島津製作所製、UV−1200;1cmセル、波長380nm)で吸光度(A)を測定した。別に、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒(株)製「DL−40S」重量平均分子量7,000)についても同様にして吸光度(B)を測定し、下記式により分散能値を算出した。
【0046】
分散能値=吸光度(A)/吸光度(B)
[実施例1]
攪拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた300mlセパラブルフラスコに炭素数12のアルキルアルコールにエチレンオキサイドを7モル付加させたポリエチレングリコール(以下、「LC−7」と称す)64g、メタノールにエチレンオキサイドを10モル付加したポリエチレングリコール(以下、「PM−10」と称す)64gを仕込み、約1時間窒素置換後、攪拌しながら130℃まで昇温した。
【0047】
130℃になった時点で100%アクリル酸溶液54.86gを160分かけて、ジ−tert−ブチル−パーオキサイド(以下「PBD」と称す)4.39gを120分かけて、それぞれ滴下した。滴下後、同温度(130±3℃)で90分熟成し、重合を完結させた。酸価は3.98meq/qであった。また、得られた重合体を50%水溶液としたときのb値は2であった。なお得られた重合体組成物に含まれる2種のグラフト重合体のそれぞれの主鎖の末端炭素数は12と1であり、その差は11であった。
得られたグラフト重合体組成物について、カルシウムイオン捕捉能およびクレイ分散能の評価も行なった。
【0048】
結果を表1に示した。
[実施例2]
攪拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた300mlセパラブルフラスコに「LC−7」105g、「PM−10」45g、無水マレイン酸8.25gおよび純水1.51gを仕込み、約1時間窒素置換後、攪拌しながら130℃まで昇温した。
130℃になった時点で100%アクリル酸溶液54.53gを150分かけて、tert−ブチル−パーオキシイソプロピルモノカーボネート(「PBI」)1.93gを150分かけて、それぞれ滴下した。滴下後、同温度(130±3℃)で90分熟成し、重合を完結させた。酸価は4.18meq/qであった。また、得られた重合体を50%水溶液としたときのb値は5であった。なお得られた重合体組成物に含まれる2種のグラフト重合体のそれぞれの主鎖の末端炭素数は12と1であり、その差は11であった。
【0049】
得られたグラフト重合体組成物について、カルシウムイオン捕捉能およびクレイ分散能の評価も行なった。
結果を表1に示した。
[比較例1]
攪拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた300mlセパラブルフラスコに「LC−7」102.4g、「PM−10」25.6g、無水マレイン酸18.93g、純水0.70g、およびiso−プロピルアルコール9.50gを仕込み、約1時間窒素置換後、攪拌しながら130℃まで昇温した。
【0050】
130℃になった時点で100%アクリル酸溶液32.45gを160分かけて、「PBD」4.39gを120分かけて、それぞれ滴下した。滴下後、同温度(130±3℃)で90分熟成し、重合を完結させた。酸価は4.42meq/qであった。また、得られた重合体を50%水溶液としたときのb値は27.5であった。なお得られた重合体組成物に含まれる2種のグラフト重合体のそれぞれの主鎖の末端炭素数は12と1であり、その差は11であった。
得られたグラフト重合体組成物について、カルシウムイオン捕捉能およびクレイ分散能の評価も行なった。
【0051】
結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示した結果から、本発明にかかるグラフト重合体組成物は、良好なビルダー性能を有するとともに着色が極めて少ないグラフト重合体組成物であることが判る。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、高いビルダー性能と、疎水性の汚れに対する高い洗浄性、液体洗剤として用いる場合の優れた相溶性をともに全て満足するとともに、着色が極めて少ないグラフト重合体組成物を提供することができる。
Claims (8)
- ポリエーテル部分を含む主鎖に不飽和カルボン酸系単量体を必須成分として含むモノエチレン性不飽和単量体成分がグラフト重合されてなるグラフト重合体を2種以上含むグラフト重合体組成物であって、
前記不飽和カルボン酸系単量体は、75〜100モル%の不飽和モノカルボン酸と0〜25モル%の不飽和ジカルボン酸(不飽和モノカルボン酸と不飽和ジカルボン酸の合計は100モル%)からなり、
前記2種以上のグラフト重合体のうちの2種のグラフト重合体の間で、それぞれの主鎖の両末端に位置する構造単位を構成する炭素数を下記(i)および(ii)の条件下で比較したときに、末端の構造単位の炭素数が3以上異なる、
ことを特徴とする、グラフト重合体組成物。
(i)最も端に位置するエーテル結合部分から末端までを末端の構造単位とするとともに、それぞれの両末端の構造単位の間で炭素数に大小があるときは、大きい方の炭素数を末端の構造単位の炭素数とすること。
(ii)末端がアルキレンオキシド由来の構造単位である場合は、末端の構造単位の炭素数は0とすること。 - 前記2種以上のグラフト重合体のそれぞれの主鎖の両末端を構成する構造単位のうち、炭素数の最も小さい構造単位の炭素数が5以下である、請求項1に記載のグラフト重合体組成物。
- 酸価が2.0meq/g以上である、請求項1または2に記載のグラフト重合体組成物。
- 前記2種以上のグラフト重合体のそれぞれの主鎖の両末端を構成する構造単位の比較において炭素数の最も大きい構造単位を有するグラフト重合体が、グラフト重合体全体の30重量%以上を占めている、請求項1から3までのいずれかに記載のグラフト重合体組成物。
- 請求項1から4までのいずれかに記載のグラフト重合体組成物を必須成分とする、洗剤用ビルダー。
- 液体洗剤用である、請求項5に記載の洗剤用ビルダー。
- 請求項1から4までのいずれかに記載のグラフト重合体組成物を必須成分とする、洗剤組成物。
- 液体洗剤用である、請求項7に記載の洗剤組成物。
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