JP2004018567A - アクリルゴム及び架橋性アクリルゴム組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体単位(A)を0.1〜20重量%及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)を50〜99.9重量%含有してなるアクリルゴム。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なアクリルゴム及び該アクリルゴムを含有する架橋性アクリルゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリルゴムは、耐熱性、耐油性などに優れているため、自動車関連の分野等において、シール、ホース、防振材、チューブ、あるいはベルトなどのゴム部品の材料として広く用いられている。アクリルゴムは、これらの部品として使用できるように架橋させてゴム弾性を付与するが、そのために活性な架橋点を有する架橋性モノマーが通常1〜5重量%程度共重合されている。
【0003】
架橋性モノマーの選択は、それに組み合わせて使用する架橋剤とともに、架橋反応速度を決定し、貯蔵安定性、機械的特性、圧縮永久ひずみ、耐熱性等に影響を与える。一般的には、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルクロロアセテートなどの塩素系モノマーや、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ系モノマーが架橋性モノマーとして使用されている。
【0004】
架橋性モノマーとして、マレイン酸やフマル酸などのブテンジオン酸のモノエステルも検討されており(特開昭50−45031号公報)、その中でも、0.1〜10重量%のフマル酸モノ低級アルキルエステルを共重合したアクリルゴムに、芳香族ジアミン架橋剤及びグアニジン化合物架橋助剤を含有してなるアクリルゴム組成物の架橋物が、金属に対する低腐食性、耐油性等に優れることが報告されている。しかし、この組成物は、加工時にスコーチが起こりやすい場合があり、特に押出成形などにおいて成形初期段階のスコーチが問題となる場合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、架橋剤を配合して加工しても、加工の初期段階にスコーチが起こらず、得られた架橋物が耐熱性、圧縮永久ひずみ特性に優れるアクリルゴム、及びそれを含有する架橋性アクリルゴム組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究の結果、特定のブテンジオン酸モノエステル化合物を架橋性モノマーとして共重合して得られる新規なアクリルゴムが、例えば架橋剤を配合して押出成形などを行う際に、成形初期段階から架橋反応前まではスコーチが起こらず、架橋成形物は耐熱性や圧縮永久ひずみ特性に優れることを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば、
1.脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体単位(A)0.1〜20重量%及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)50〜99.9重量%から成るアクリルゴム、
2.ブテンジオン酸モノエステル単量体単位(A)がブテンジオン酸モノシクロアルキルエステル単量体単位である上記1記載のアクリルゴム、
3.(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)が、(メタ)アルキルアクリレート単量体単位30〜100重量%及び(メタ)アルコキシアルキルアクリレート単量体単位0〜70重量%からなる上記1又は2記載のアクリルゴム、
4.上記1乃至3記載のアクリルゴム及び架橋剤を含有してなる架橋性アクリルゴム組成物、
5.架橋剤が多価アミン架橋剤である上記4記載の架橋性アクリルゴム組成物、がそれぞれ提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のアクリルゴムは、脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体単位(A)(以降、単量体単位(A)と略記する場合がある)0.1〜20重量%及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)(以降、単量体単位(B)と略記する場合がある)50〜99.9重量%から成ることを特徴とする。該アクリルゴムは、脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び必要に応じて用いるこれらと共重合可能な単量体とを共重合して得られるゴムである。
【0009】
単量体単位(A)は、脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体(a)(以降、単量体(a)と略記する場合がある)を重合して得られる構造単位である。本発明に用いる単量体(a)は、ブテンジオン酸、すなわちフマル酸又はマレイン酸の一つのカルボキシル基と、脂環構造を有するアルコールとを反応させて得られるようなモノエステル構造を有する化合物である。脂環構造は、炭素数3〜20、好ましくは4〜10であり、飽和環でも不飽和環でもよく、単環でも多環でもよい。具体的には、モノシクロアルカン構造、モノシクロアルケン構造、ナフタレン環構造、ノルボルナン環構造、ノルボルネン環構造などが挙げられ、これらの組み合わせでもよい。脂環構造を有するアルコールとしては、シクロアルキルアルコール、シクロアルケニルアルコール及び主鎖の一部や側鎖に上記脂環構造を有するアルコールのいずれでもよいが、本発明においては、シクロアルキルアルコールやシクロアルケニルアルコールが好ましい。
【0010】
単量体(a)の具体例としては、フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチル、フマル酸モノシクロオクチル、フマル酸モノメチルシクロヘキシル、フマル酸モノ−3,5−ジメチルシクロヘキシル、フマル酸ジシクロペンタニル、フマル酸イソボニルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル単量体;フマル酸モノシクロペンテニル、フマル酸モノシクロヘキセニル、フマル酸モノシクロヘプテニル、フマル酸モノシクロオクテニル、フマル酸モノジシクロペンタジエニルなどのフマル酸モノシクロアルケニルエステル単量体;
マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチル、マレイン酸モノシクロオクチル、マレイン酸モノメチルシクロヘキシル、マレイン酸モノ−3,5−ジメチルシクロヘキシル、マレイン酸モノジシクロペンタニル、マレイン酸モノイソボニなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル単量体;マレイン酸モノシクロペンテニル、マレイン酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロヘプテニル、マレイン酸モノシクロオクテニル、マレイン酸ジシクロペンタジエニルなどのマレイン酸モノシクロアルケニルエステル単量体;などが挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシルフマレートやシクロヘキシルマレエートが好ましい。
【0011】
本発明のアクリルゴム中の、単量体単位(A)の含有量は、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%である。単量体単位(A)の量が少なすぎると架橋物の架橋密度が十分でなく良好な機械的特性が得られず、逆に多すぎると架橋物の伸びが低下したり圧縮応力ひずみが増大する場合がある。
【0012】
本発明のアクリルゴムのカルボキシル基含有量は、ゴム100グラム当たり、好ましくは5×10−4〜4×10−1当量、より好ましくは2×10−3〜2×10−1当量、特に好ましくは4×10−3〜1×10−1当量である。アクリルゴム中のカルボキシル基含有量が少なすぎると架橋が十分に進行しないため架橋物の形状維持ができない場合があり、逆に多すぎると架橋物が硬くなってゴム弾性を失う場合がある。
【0013】
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)(以降、単量体(b)と略記する場合がある)を重合して得られる構造単位である。単量体(b)としては、(メタ)アルキルアクリレート単量体及び(メタ)アルコキシアルキルアクリレート単量体が挙げられる。
【0014】
(メタ)アルキルアクリレート単量体としては、炭素数1〜8のアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも特に(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルが好ましい。
【0015】
(メタ)アルコキシアルキルアクリレート単量体としては、炭素数2〜8のアルコキシアルキルアルコールのアクリル酸エステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも特に、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルが好ましい。
【0016】
本発明のアクリルゴム中の、単量体単位(B)の含有量は、50〜99.9重量%、好ましくは60〜95重量%、より好ましくは80〜92重量%である。アクリルゴム中の単量体単位の含有量が少なすぎると、架橋物の耐熱性及び耐油性が低下する場合がある。
【0017】
さらに本発明のアクリルゴムは、単量体単位(B)が、(メタ)アクリル酸エステル単量体アルキルアクリレート単量体単位30〜100重量%及び(メタ)アクリル酸エステル単量体アルコキシアルキルアクリレート単量体単位0〜70重量%からなるものであるのが好ましい。
【0018】
本発明のアクリルゴムは、上記単量体(a)及び単量体(b)以外に、これらと共重合可能な単量体を共重合成分として含有していてもよい。共重合可能な単量体の具体例としては、単量体(a)以外のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、アクリルアミド系単量体、多官能性アクリル系単量体、その他のオレフィン系単量体などが挙げられる。これらの中でも、単量体(a)以外のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体が好ましい。
【0019】
単量体(a)以外のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノ−n−ブチルなどのブテンジオン酸モノ低級アルキルエステル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及びシトラコン酸などのカルボン酸単量体;などが挙げられる。これらの中でもブテンジオン酸モノ低級アルキルエステル単量体が好ましい。カルボキシル基は無水カルボン酸基であってもよく、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの無水カルボン酸単量体も用いることができる。
共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、クロロプレン、ピペリレンなどが挙げられる。非共役ジエン単量体としては、1,4−ペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ノルボルナジエンなどが挙げられる。芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどが例示される。アクリルアミド系単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。多官能性アクリル系単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。その他のオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0020】
アクリルゴム中の上記の共重合可能な単量体の単位量は、本発明の目的を損なわない範囲であればよく、好ましくは0〜49.9重量%、より好ましくは0〜20重量%である。
【0021】
本発明のアクリルゴムは、脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体(a)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)及び必要に応じて用いられるこれらと共重合可能な上記単量体を含んでなる単量体混合物をラジカル重合することにより得ることができる。重合反応の形態としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法及び溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性等から、従来公知のアクリルゴムの製造法として一般的に用いられている常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。
【0022】
乳化重合法による重合の場合には、通常の方法を用いればよく、重合開始剤、重合停止剤、乳化剤等は一般的に用いられる従来公知のものを使用できる。
【0023】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.01〜1.0重量部であることが好ましい。
【0024】
また、過酸化物開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物1重量部に対して0.03〜10重量部であることが好ましい。
【0025】
重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムなどが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、全単量体100重量部に対して、0.1〜2重量部である。
【0026】
乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤などを挙げることができる。なかでも、アニオン性乳化剤が好適に用いられる。これらの乳化剤は単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.1〜10重量部である。
【0027】
水の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、80〜500重量部、好ましくは100〜300重量部である。
【0028】
乳化重合に際して、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0029】
分子量調整剤としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;テトラエチルチウラムスルフィド、ジベンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等のスルフィド類;α−メチルスチレン2量体;四塩化炭素等が挙げられる。
【0030】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合は通常0〜70℃、好ましくは5〜50℃の温度範囲で行なわれる。
【0031】
本発明のアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10〜80、より好ましくは20〜70、特に好ましくは30〜70である。ムーニー粘度が小さすぎると成形加工性や架橋物の機械的強度が劣る場合があり、大きすぎると成形加工性が劣る場合がある。本発明のアクリルゴムは、架橋剤を配合して架橋性アクリルゴム組成物とし、架橋反応により架橋物にして種々のゴム部品に使用することができる。
【0032】
本発明の架橋性アクリルゴム組成物は、上記アクリルゴムに架橋剤を含有してなるものである。本発明の架橋性アクリルゴム組成物に用いる架橋剤は、アクリルゴムの架橋剤として一般的に用いられている化合物であればいずれでもよいが、単量体単位(A)のカルボキシル基等と比較的容易に架橋構造を形成し得るものとしてアミン化合物が好ましく、特に多価アミン化合物が最も好ましい。
【0033】
このようなアミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などが挙げられ、グアニジン化合物のように非共役の窒素−炭素二重結合を有するものは含まれない。
脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチルなどが挙げられる。
【0034】
架橋剤の配合量は、アクリルゴム100重量部に対し、0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜7重量部、特に好ましくは0.3〜5重量部である。アミン架橋剤の配合量が少なすぎると架橋が十分に行われないため架橋物の形状維持が困難になり、多すぎると架橋物が硬くなりすぎ、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
【0035】
本発明の架橋性アクリルゴム組成物においては、さらに架橋促進剤を配合して上記架橋剤に組み合わせて用いてもよい。架橋促進剤も限定はないが、特に多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができる架橋促進剤としては、水中、25℃での塩基解離定数が10−12〜106であるものが好ましく、例えばグアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジンなどが挙げられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリn−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。多価第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7などが挙げられる。第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩あるいはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
【0036】
架橋促進剤の使用量は、アクリルゴム100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜15重量部、特に好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物の表面ヘの架橋促進剤のブルームが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強さが著しく低下したり、熱負荷後の伸び変化または引張強さ変化が大きすぎたりする場合がある。
【0037】
本発明の架橋性ゴム組成物には、特にモノアミン化合物を配合することにより、架橋前のロール加工やバンバリー加工において、組成物が金属に粘着しにくくなり加工性が改善される。
このようなモノアミン化合物としては、芳香族モノアミン化合物及び脂肪族モノアミン化合物が挙げられる。これらはそれぞれ、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、第三級アミン化合物のいずれでもよい。本発明においては、これらのモノアミン化合物を、単独で用いることも2種以上組み合わせて用いることもできるが、単独で用いる場合には、モノ一級アミン化合物が好ましく、2種以上を組み合わせて用いる場合には、脂肪族モノ二級アミン化合物と脂肪族モノ三級アミン化合物とを組み合わせて用いるのが好ましい。
【0038】
アクリルゴム100重量部に対する上記モノアミン化合物の配合量は、合計0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。特に、モノ一級アミンを単独で使用する場合には、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜5重量部であり、脂肪族モノ二級アミンと脂肪族モノ三級アミンを組み合わせて用いる場合には、合計量が好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜7重量部である。モノアミン化合物の配合量が少なすぎるとアクリルゴム組成物の金属への粘着が大きくなって加工性に劣り、多すぎると架橋物表面にモノアミン化合物がブルーミングしたり、架橋物の強度が著しく低下したり、圧縮永久ひずみが大きくなったりする場合がある。
【0039】
本発明の架橋性のアクリルゴム組成物には、必要に応じて、補強材、充填剤、老化防止剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤などの添加剤を含有してもよい。
【0040】
また、アクリルゴム組成物には、必要に応じて、アクリルゴム以外のゴム、エラストマー、樹脂などをさらに配合してもよい。例えば、天然ゴム、アクリルゴム(A)以外のアクリルゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどのゴム;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリシロキサン系エラストマーなどのエラストマー;ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂;などを配合することができる。
【0041】
本発明の架橋性アクリルゴム組成物の調製にあたっては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法が採用できる。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分として、例えば架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。
【0042】
架橋性アクリルゴム組成物の成形方法は、特に限定されない。圧縮成形、射出成形、トランスファー成形あるいは押出成形など、いずれの方法を用いることも可能である。また、架橋方法は、架橋物の形状などに応じて選択すればよく、成形と架橋を同時に行う方法、成形後に架橋を行う方法のいずれでもよい。
【0043】
本発明の架橋性アクリルゴム組成物は、加熱することにより架橋物とすることができる。加熱温度は、好ましくは130〜220℃以上、より好ましくは140℃〜200℃であり、架橋時間は好ましくは30秒〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1〜48時間行う。加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
【0044】
本発明の架橋性アクリルゴム組成物は、加工時のスコーチ安定性に優れ、かつ架橋後の耐熱性及び圧縮永久ひずみ特性に優れる。したがって、該アクリルゴム組成物を架橋してなる架橋物は、これらの特性を活かして、シール、ホース、防振材、チューブ、ベルト、ブーツなどのゴム部品の材料として広い範囲で好適に使用できる。
【0045】
【実施例】
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。これらの例中の〔部〕及び〔%〕は、特に断わりのない限り重量基準である。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
(1)ムーニー粘度
JIS K6300に従って、100℃で測定した。
【0047】
(2)スコーチ安定性
ムーニースコーチ時間(t5)を、JIS K6300に従って125℃で測定した。ムーニースコーチ時間t5の値が大きいほど、スコーチ安定性に優れる。
【0048】
(3)耐熱性
架橋性アクリルゴム組成物を170℃、20分間のプレスによって成形、架橋し、15cm×15cm×2mmの試験片を作製し、さらに後架橋のために170℃に4時間放置して作成したシートを所定の形状に打ち抜いた試験片を用いて以下の測定を行う。
先ず、常態物性として、JIS K6251の引張試験に従って破断伸び(伸び)を、JIS K6253の硬さ試験に従って硬さをそれぞれ測定する。次いで、JIS K6257に従い、175℃の環境下で168時間の空気加熱老化を行い、再度伸び及び硬度を測定し、引張伸び変化量及び硬さ変化量を測定する。これらの変化量が0に近いほど耐熱性に優れる。
【0049】
(3)圧縮永久ひずみ
架橋性アクリルゴム組成物を170℃、20分間のプレスによって成形、架橋し、直径29mm、厚さ12.5mmの円筒型試験片を作製し、さらに後架橋のために170℃に4時間放置した。
JIS K 6262に従い、上記試験片を25%圧縮させた後、175℃の環境下で70時間放置した後、圧縮を解放し圧縮永久ひずみ率を測定した。
【0050】
さらに、機械的特性として上記引張試験法により破断強度(引張強度)も測定した。
【0051】
実施例1
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム3部およびアクリル酸エチル58部、アクリル酸n−ブチル40部、フマル酸モノシクロヘキシル2部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換をくり返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.002部およびクメンハイドロパーオキシド0.005部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムAを得た。
【0052】
上記反応で得られたアクリルゴムA(アクリル酸エチル単位含有量58%、アクリル酸n−ブチル単位含有量40%、フマル酸モノシクロヘキシル単位含有量2%、ムーニー粘度45(ML1+4、100℃))100部、カーボンブラック(ASTM D1765による分類;N550)60部、ステアリン酸(カーボンブラックの分散剤、軟化剤)2部および4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(老化防止剤)2部を50℃にてバンバリーで混練し、その後、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト(脂肪族ジアミン架橋剤)0.5部、ジ−o−トリルグアニジン(架橋促進剤)2部を加えて、40℃にてオープンロールで混練して、架橋性アクリルゴム組成物を調製した。
【0053】
この架橋性アクリルゴム組成物を用いて、ムーニースコーチ時間を測定した。さらにこの架橋性アクリルゴム組成物を、上記記載の条件によりプレス、架橋、後架橋して作成した試験片を用いて、架橋物の引張強度、伸び、硬さ、耐熱性、圧縮永久ひずみを評価した。結果を表1に示す。
【0054】
実施例2
ヘキサメチレンジアミンカーバメイト0.5部に代えて、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(芳香族ジアミン)1.3部を用いた以外は実施例1と同様に架橋性アクリルゴム組成物を製造し、実施例1同様に各物性を評価した。結果を表1に示す。
【0055】
比較例1
フマル酸モノシクロヘキシルをフマル酸モノn−ブチルに変更した以外は、実施例1のアクリルゴムAの製造と同様の操作でアクリルゴムBを得た。
【0056】
上記反応で得られたアクリルゴムB(アクリル酸エチル単位含有量58%、アクリル酸n−ブチル単位含有量40%、モノノルマルブチルフマレート単位含有量2%、ムーニー粘度45(ML1+4、100℃))を用いた以外は、実施例1と同様にアクリルゴム組成物を製造し、実施例1同様に各物性を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1から明らかなように、脂環構造を有するブテンジオン酸単量体単位を含有しないアクリルゴム(比較例1)は、架橋性アクリルゴム組成物とした場合に、初期のムーニースコーチ時間(t5)が5分以下と短く、加工安定性に劣っている。
【0059】
これらに対し、本発明のアクリルゴムは、初期のムーニースコーチ時間が5分以上であり(実施例1)、さらに、架橋剤として芳香族ジアミンを用いるとその効果がより顕著になる(実施例2)。また、得られた架橋物の圧縮永久ひすみは十分に小さく、耐熱性にも優れるものである。
【0060】
【発明の効果】
本発明のアクリルゴム及び架橋性アクリルゴム組成物は、加工時、特に初期段階からスコーチが起こらないため加工安定性に優れる。また、この架橋性アクリルゴム組成物を用いることにより、耐熱性及び圧縮永久ひずみ特性にも十分に優れる架橋物を得ることができる。したがって、これらの特性を活かして、成形後に架橋して使用するシール、ホース、防振材、チューブ、ベルト、ブーツなどのゴム部品の材料として広い範囲で好適に使用できる。
Claims (5)
- 脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル単量体単位(A)0.1〜20重量%及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)50〜99.9重量%から成るアクリルゴム。
- ブテンジオン酸モノエステル単量体単位(A)がブテンジオン酸モノシクロアルキルエステル単量体単位である請求項1記載のアクリルゴム。
- (メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)が、(メタ)アルキルアクリレート単量体単位30〜100重量%及び(メタ)アルコキシアルキルアクリレート単量体単位0〜70重量%から成る請求項1又は2記載のアクリルゴム。
- 請求項1乃至3記載のアクリルゴム及び架橋剤を含有してなる架橋性アクリルゴム組成物。
- 架橋剤が多価アミン架橋剤である請求項4記載の架橋性アクリルゴム組成物。
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