JP2004018548A - 粉体塗料樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族ジカルボン酸成分と、アルコール成分としてトリメチロールエタンおよび/またはペンタエリスリトール60〜100モル%含有するアルコール成分とを反応させて得られる、ガラス転移点が50〜70℃、水酸基価150〜500mgKOH/g、酸価6mgKOH/g以下の実質的にゲル化していないポリエステル樹脂(A)と、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオールを主体としたアルコール成分とを反応させて得られる、水酸基価15〜50mgKOH/g、酸価が4mgKOH/g以下のポリエステル樹脂(B)とを、(A):(B)の配合比50:50〜5:95(重量比)で混合したポリエステル樹脂に、硬化剤としてウレトジオン結合含有ポリイソシアネート系硬化剤(C)を配合してなることを特徴とする。
【選択図】 なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉体塗料樹脂組成物に関する。更に詳しくは、硬化剤としてウレトジオン結合含有ポリイソシアネートを使用した保存安定性に優れ、耐候性に優れた艶消し塗膜(半艶消しを含む)を形成し得る粉体塗料樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境への関心が社会的に高まりつつある中、塗料の分野においても、環境問題への配慮が重要な課題の一つとなっている。その様な状況下において、粉体塗料は、塗料中の揮発成分が殆ど発生しないことから、大気を汚染しないなどの理由によって、年々その使用量が増える傾向にある。粉体塗料はスチール家具や電子レンジその他の屋内製品への利用がこれまでは主であったが、その使用量の増加に伴って用途範囲も拡大し、最近は道路資材などの屋外製品への適用が強く求められるようになっている。
【0003】
また、最近では屋外製品についても景観との調和から低光沢の外観が求められるようになっており、その要求に応じて、半艶消し(60゜鏡面光沢30〜70%程度)、あるいは艶消し(30%以下)塗料が使用される傾向にある。半艶消しあるいは艶消し塗料として、従来知られている手法としては、例えば、グリコール成分としてトリメチロールプロパンを主体として使用した高水酸基価ポリエステル樹脂に、低水酸基価ポリエステル樹脂を組み合わせた塗料用組成物が知られている(特公平5−79267号)。
しかし、トリメチロールプロパンを主体とした高水酸基価ポリエステル樹脂はガラス転移点(Tg)が低く貯蔵、輸送の際の保存安定性に問題がある。この保存安定性を改良する為に、ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物を使用した樹脂が提案されている(特公平6−5185号)。このビスフェノールSエチレンオキサイド付加物を使用した場合は、十分な耐候性を得ることができない欠点があった。更に安定的に艶消し塗膜を得る方法として、樹脂のゲルタイムと酸価の絶対値の差をコントロールすることが提案された(特公平7−760号)。しかし、酸価が高い領域では、ポリエステルのカルボン酸が水酸基とイソシアネートの反応の触媒として作用し、艶消しに必要な硬化初期の硬化挙動の差が十分に得られないため十分とは言えなかった。また、硬化剤はε−カプロラクタムでブロックされたイソシアネート系硬化剤が使用され焼付け時に揮発成分としてε−カプロラクタムが発生する虞があり、環境問題の意識の高まる中では、揮発物の発生がないウレトジオン結合含有ポリイソシアネート系硬化剤の使用が可能な艶消し塗料用樹脂組成物の要望が強まってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、保存安定性に優れ、安定して艶消し塗膜を形成し、屋外での使用が可能で、耐候性に優れた粉体塗料樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討の結果、芳香族ジカルボン酸成分と、特定のアルコール成分とからなるポリエステル樹脂と、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分を主体としたポリエステル樹脂とを、特定の配合比で混合したポリエステル樹脂に、硬化剤としてウレトジオン結合含有ポリイソシアネート系硬化剤を配合した樹脂組成物が、保存安定性に優れ、優れた艶消し塗膜が得られることを見出し本発明を為した。
【0006】
すなわち、本発明は、(1)芳香族ジカルボン酸成分と、アルコール成分としてトリメチロールエタン及び/またはペンタエリスリトール60〜100モル%を含有するアルコール成分とを反応させて得られる、ガラス転移温度が50〜70℃、水酸基価150〜500mgKOH/g、酸価6mgKOH/g以下の実質的にゲル化していないポリエステル樹脂(A)と、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオールを主体としたグリコール成分からなる水酸基価15〜50mgKOH/g、酸価4mgKOH/g以下のポリエステル樹脂(B)とを、(A)と(B)の配合比50:50〜5:95(重量比)で混合したポリエステル樹脂に、硬化剤としてウレトジオン結合含有ポリイソシアネート系硬化剤(C)を配合してなることを特徴とする艶消し粉体塗料樹脂組成物に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳しく説明する。
ポリエステル樹脂の硬化剤としてブロックイソシアネート系硬化剤を使用した場合には、高水酸基価ポリエステル樹脂と低水酸基価ポリエステル樹脂を任意の配合比で組み合わせることにより艶消し塗膜を得られる。これは、ブロックイソシアネート系硬化剤が有する1分子当たりの理論上の官能基数が2以上であることから反応性が高く、容易に2種類のポリエステル樹脂と硬化剤との反応速度差が得られ、また十分な架橋密度が得られ塗膜の機械的物性も満足するものが得られる。
【0008】
一方、硬化剤として使用されるウレトジオン結合含有ポリイソシアネートは、艶消し塗膜の微細な凹凸の形成に関係する反応開始直後の反応速度は高いが、1分子あたりの理論上の官能基数が2未満であるために得られる架橋密度が低く、満足する機械的物性を有する塗膜が得られ難い。これはウレトジオン結合含有ポリイソシアネート系硬化剤を使用した場合には、艶消し塗膜を得ようとすると機械的物性が不足し、機械的物性を得ようとすると艶消し塗膜が得られ難いことを意味する。
【0009】
艶消し塗膜の形成に必要な反応初期の硬化挙動に影響するイソシアネートと水酸基の反応触媒として作用するポリエステル樹脂の酸価を低くコントロールすることにより、その触媒効果を低減し、艶消し塗膜を得るのに必要な硬化挙動差を得ることができるが、一方、十分な機械的物性を有する塗膜を得るためには、ポリエステル樹脂を高水酸基価とすることが必要である。しかしながら、単純に得られる樹脂の水酸基価を高くすると低分子量となり、ガラス転移点(Tg)が低い樹脂となり、粉体塗料とした際に保存安定性に問題が生じる。
【0010】
本発明において、ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としてトリメチロールエタン及び/またはペンタエリスリトールを必須成分として使用して得られたポリエステル樹脂は、粉体塗料として実用上問題が生じないTgを保持し、高水酸基価のポリエステル樹脂である。
【0011】
すなわち、本発明において、ポリエステル樹脂(A)として、アルコール成分としてトリメチロールエタン及び/またはペンタエリスリトールを必須成分とし、該アルコール成分60〜100モル%を含有するアルコール成分と芳香族ジカルボン酸成分とを反応させて得られる、ガラス転移温度が50〜70℃、水酸基価150〜500mgKOH/g、酸価6mgKOH/g以下の実質的にゲル化していないポリエステル樹脂を使用し、低水酸基価で酸化が低いポリエステル樹脂(B)を組み合わせることによりウレトジオン結合含有ポリイソシアネート系硬化剤を使用して、十分な機械的強度を有する艶消し塗膜が得られるものである。
【0012】
これは、本発明におけるポリエステル樹脂(A)の有する反応性が十分に高く、艶消し塗膜を形成する反応初期の硬化挙動差を十分に得ることができ、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との配合比を広い範囲に採ることができ、機械的物性に優れた塗膜を得ることができるものである。
【0013】
本発明におけるポリエステル樹脂(A)は実質的にゲル化していないポリエステルであることが必要である。本明細書において“実質的にゲル化していないポリエステル”とは一般的な粉砕機により粉砕可能で有り、溶融時に流動性を有するものをいう。実質的にゲル化している場合は、塗料化は困難であり、また塗膜化したとき平滑な塗膜が得られない。
【0014】
このようなポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移点が50〜70℃、好ましくは55〜70℃であり、水酸基価が150〜500mgKOH/g、好ましくは210〜500mgKOH/gであり、酸価が6mgKOH/g以下、好ましくは5mgKOH/g以下のものである。
【0015】
ガラス転移点が50℃よりも低い場合は、保存性が得られず、70℃を超える場合には混練温度を上げる必要が生じるため、混練時に反応が進行する虞があり、塗料化の調整が困難となる。また水酸基価が150mgKOH/g未満では、硬化剤との反応性が低く良好な艶消し塗膜の形成が得られない。500mgKOH/gを超える場合には、Tgが低くなるので保存安定性に問題がある。また、酸価が6mgKOH/gよりも高い場合には良好な艶消し塗膜が得られない。
【0016】
本発明においてポリエステル樹脂(A)を構成する酸成分として使用される芳香族ジカルボン酸には、イソフタル酸および/またはテレフタル酸が好適に使用されるが、本発明のポリエステル樹脂(A)の特性を損なわない範囲で、無水フタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、水添ダイマー酸などを使用することができる。またポリエステル樹脂をゲル化させない範囲で無水トリメリット酸、トリメシン酸、無水ピロメリット酸などの3または4官能の酸成分を併用してもよい。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分は、トリメチロールエタンおよび/またはペンタエリスリトールを必須成分とし、トリメチロールエタンおよび/またはペンタエリスリトール60〜100モル%、好ましくは70〜100モル%含有するものである。トリメチロールエタンおよび/またはペンタエリスリトールの使用が60モル%よりも少ない場合は得られる樹脂のガラス転移点(Tg)が低くなるので保存安定性が悪くなる虞がある。
【0018】
本発明のポリエステル樹脂(A)の特性を損なわない範囲で、その他のアルコール成分を使用することもできる。そのようなアルコール成分としては、例えば、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルー1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物などを例示することができる。
【0019】
また、ポリエステル樹脂をゲル化させない範囲で、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3または4官能のアルコール成分を併用してもよい。
【0020】
本発明におけるポリエステル樹脂(B)を構成する酸成分にはイソフタル酸および/またはテレフタル酸が好適に用いられるが、本発明のポリエステル樹脂(B)の特性を損なわない範囲で、無水フタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、水添ダイマー酸などを使用することができる。また所望に応じて本発明のポリエステル樹脂(B)の特性を損なわない範囲で、無水トリメリット酸、トリメシン酸、無水ピロメリット酸などの3または4官能の酸成分を併用してもよい。
【0021】
本発明のポリエステル樹脂(B)を構成するアルコール成分は主にネオペンチルグリコールを主体とするが、本発明のポリエステル樹脂(B)の特性を損なわない範囲で、所望に応じて、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルー1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物などのジオールを使用することができる。また、本発明のポリエステル樹脂(B)の特性を損なわない範囲で、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3官能以上のアルコール成分を併用してもよい。
【0022】
本発明におけるポリエステル樹脂(B)は、ガラス転移点が50〜70℃、好ましくは55〜70℃であり、水酸基価は15〜50mgKOH/g、好ましくは20〜45mgKOH/gであり、酸価4mgKOH/g以下、好ましくは2mgKOH/g以下である。ガラス転移点が50℃未満では十分な保存安定性が得られず、70℃を超えると塗料化の混練操作に高温で長時間を要し、途中で反応が進行する虞があり好ましくない。また水酸基価が15mgKOH/g未満では、機械的強度において十分な塗膜が得られず、50mgKOH/gを超えると艶消し塗膜を得ることができない。また酸価が4mgKOH/gを超える場合には、艶消し塗膜の形成に必要な硬化初期の硬化速度に影響を与え艶消し塗膜が得られない。
【0023】
上述の水酸基価は、ピリジン溶媒中でポリエステル樹脂の水酸基を一定量の無水酢酸でアセチル化した後、未反応の無水酢酸を加水処理して、生成した酢酸を水酸化カリウムで逆滴定する方法によって求めた値である。
【0024】
またガラス転移点は、アルミナを基準とした示差走査熱量測定法(以下DSCと略記)によって測定した値である。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂(A)および(B)は、前記した所定の酸成分とアルコール成分を原料として、それ自体公知の製造方法によって製造することができる。反応に際して、所望に応じて反応初期に反応系内の流動性を保持するため少量の水を添加することによりスラリー化することができる。また反応方法としては、エステル交換反応または直接エステル化反応のいずれも適用可能であり、減圧法または常圧下で不活性ガスを流す方法によって縮重合を促進することができる。また、上記した各反応においては、公知の反応触媒、例えば、ジブチル錫オキサイド等を用いることができる。
【0026】
本発明において、上述のように製造されたポリエステル樹脂(A)および(B)を含有する粉体塗料の調製は、ポリエステル樹脂と反応して塗膜を形成する硬化剤としてイソシアネート系硬化剤であるウレトジオン結合含有ポリイソシアネート、および各種の塗料原料を配合した後、これを溶融混練、冷却し、ついで粉砕、分級することによって粉体塗料とされる。
【0027】
本発明に使用されるウレトジオン結合含有ポリイソシアネート系硬化剤は、ブロック剤を含まずにイソシアネート基同士を自己ブロックすることによって、一定の温度以下では活性を示さないようにしたノンブロックないしはセルフブロック・タイプの硬化剤である。
【0028】
このような硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメチルシクロヘキサンジイソシアネートの如き芳香族、脂肪族、脂環族のイソシアネート化合物、あるいはそのプレポリマーに含有されるイソシアネート基を、ウレトジオン環の形成によって自己ブロックしたものが代表的なものである。具体的には、イソシアネート基をウレトジオン環の形成によって自己ブロックしたイソホロンジイソシアネート系の硬化剤であるヒュルス社から市販されている「ベスタゴンBF1540」、「ベスタゴンBF1300」などを例示することができる。
【0029】
本発明において、硬化剤の配合割合は、ポリエステル樹脂の水酸基に対してイソシアネート系硬化剤のイソシアネート基が同量であること、すなわち1当量比であることが最も好ましいが、通常、0.8〜1.2の範囲の当量比で使用される。
【0030】
本発明の樹脂組成物において、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との配合比は重量比で50:50〜5:95、好ましくは40:60〜5:95である。ポリエステル樹脂(A)の割合が、5重量部よりも少ない場合は、十分な艶消し塗膜が得られず、一方、50重量部を超える場合は塗膜の平滑性が損なわれる虞がある。したがって、上記範囲の配合比でポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを配合することにより良好な艶消し塗膜を有し、表面が平滑な塗膜を得ることができる。
【0031】
本発明の粉体塗料樹脂組成物からなる粉体塗料には、塗料の配合に使用されるそれ自体公知の各種の塗料用配合材を使用することができる。そのような配合材としては、例えば、二酸化チタンなどの顔料またはその他の充填剤、ベンゾインなどのピンホール防止剤、ポリアクリレート系やシリコーン系のレベリング剤、硬化触媒等が使用される。これらを樹脂成分に配合して先に記述したように混合混練、冷却した後粉砕して粉体塗料とする。得られた粉体塗料は、公知慣用の静電塗装法によって金属被塗物に塗装された後、焼き付けして硬化塗膜を得る。
【0032】
【実施例】
次に、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例および比較例中の、樹脂の耐ブロッキング性、粉体塗料の耐ブロッキング性と塗膜性能については、下記の試験方法で評価を実施した。
【0033】
(1)「樹脂耐ブロッキング性」
フレーク状の樹脂20gをポリエチレン製の袋に入れ40℃の恒温槽中で7日問静置してから、静かに中身を取り出し、その状態を観察して次のように評価した。
○:樹脂に塊がないフレークである。
×:樹脂が融着して塊を作り、簡単には塊が壊れない。
【0034】
(2)「塗料耐ブロッキング性」
粉体塗料20gを直径25mm、高さ150mmの一端を閉じた塩ビ管に静かに充填し、上から約66gの塩ビ棒をゆっくり挿入して荷重(約13.5g/cm2 )をかけた後、それを垂直に立てて40℃の恒温槽中で7日問静置してから、静かに中身を取り出し、その状態を観察して次のように評価した。
○:粉体塗料に塊がなく、サラサラの粉状のままである。
×:粉体塗料が融着して塊を作り、簡単には塊が壊れない。
【0035】
(3)「平滑性」
塗膜の平滑性を目視により評価した。
【0036】
(4)「60度鏡面光沢度」
JlS K5400の鏡面光沢度に準じた。
【0037】
(5)「鉛筆硬度」
JlS K5400に準じて評価した。
【0038】
(6)「耐衝撃性」
J1S K5400の耐衝撃性(デユポン式)試験に準じた。500gの錘を規定の高さから落として、塗膜の割れ・はがれを観察した。高さ50cmで塗膜に割れ・はがれのないものを合格とした。
【0039】
(7)「促進耐候性」
J1S K5400の促進耐候性(サンシャインカーボンアーク灯式)に準じた。400時間試験後の表面状態を観察し、試験前との色相(ΔE)、光沢の有無により、次のように判定した。
○: 試験前との間でほとんど変化が見られない。
×: 色相(ΔE)あるいは光沢変化が明らかに見られる。
【0040】
ポリエステル樹脂(A)の調製
【0041】
合成例1〜4
表1に示した化合物をそれぞれ表1に示した仕込み量で、撹拌翼を備えたステンレス製反応缶にグリコール原料を仕込み、グリコールに対して10重量%の水蒸気を添加し加熱溶解後、酸原料および酸成分に対して0.03重量%のジ−n−ブチル錫オキサイドを添加し、210℃に加熱し生成する縮合水を窒素ガス気流によって系外に除去しながら、エステル化反応を行なってポリエステル樹脂A−1、A−2、A−3およびA−4を調製した。得られたポリエステル樹脂の特性を表1に示した。
【0042】
合成例5
表1に示した化合物をそれぞれ表1に示した仕込み量で、撹拌翼を備えたステンレス製反応缶にグリコール原料を仕込み加熱溶解後、酸原料および酸成分に対して0.03重量%のジ−n−ブチル錫オキサイドを添加し、210℃に加熱し生成する縮合水を窒素ガス気流によって系外に除去しながら、エステル化反応を行なってポリエステル樹脂A−5を調製した。得られたポリエステル樹脂の特性を表1に示した。
【0043】
ポリエステル樹脂(B)の調製
【0044】
合成例6
表1に示した化合物をそれぞれ表1に示した仕込み量で、撹拌翼を備えたステンレス製反応缶にグリコール原料を仕込み加熱溶解後、酸原料および酸成分に対して0.03重量%のジ−n−ブチル錫オキサイドを添加し、240℃に加熱し生成する縮合水を窒素ガス気流によって系外に除去しながら、エステル化反応を行なってポリエステル樹脂B−1、B−2およびB−3を調製した。得られたポリエステル樹脂の特性を表1に示した。
【0045】
実施例1〜4および比較例1〜4
合成例で得られたポリエステル樹脂A−1〜A−4およびポリエステル樹脂B−1〜B−3を、表2に示す配合割合で使用し、硬化剤、二酸化チタン顔料、レベリング剤を配合し、FM20C/I型三井ヘンシェルミキサーでドライブレンドし、次いでPLK46型Bussコニーダーで110℃にて溶融混練を行い、冷却後、粉砕し、150メッシュの金網で分級して粉体塗料を調製した。
調製された粉体塗料を、静電粉体塗装機を用いてリン酸亜鉛処理鋼板上に塗装し、200℃で20分間焼き付けることによって膜厚50〜60μmの硬化塗膜を得た。塗膜性能を評価した結果を表2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】
本発明の粉体塗料樹脂組成物を構成するポリエステル樹脂成分の一つであるポリエステル樹脂(A)は、アルコール成分としてトリメチロールエタンおよび/またはペンタエリスリトールを必須成分として使用したことによりポリエステル樹脂のTgを高することができ、従来は保存安定性不良となるため使用できなかったような低分子量で高い水酸基価を有する樹脂を得ることができ、これにより十分な艶消し効果が得られる。またポリエステル樹脂(A)は1分子当たりの含有する水酸基量が多いことから、配合量も少量で目的とする艶消し塗膜を得ることができる。
したがって、本発明の粉体塗料樹脂組成物は、保存安定性に優れており、半艶消し塗膜から艶消し塗膜までの広い範囲に亘って良好な塗膜が得られ、実用上十分な耐候性があり、また、機械的強度、外観にバランスが取れた塗膜を提供することができるものである。
Claims (1)
- 芳香族ジカルボン酸成分と、アルコール成分としてトリメチロールエタンおよび/またはペンタエリスリトール60〜100モル%含有するアルコール成分とを反応させて得られる、ガラス転移点が50〜70℃、水酸基価150〜500mgKOH/g、酸価6mgKOH/g以下の実質的にゲル化していないポリエステル樹脂(A)と、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオールを主体としたグリコール成分からなる水酸基価15〜50mgKOH/g、酸価4mgKOH/g以下のポリエステル樹脂(B)とを、(A)と(B)の配合比50:50〜5:95(重量比)で混合したポリエステル樹脂に、硬化剤としてウレトジオン結合含有ポリイソシアネート系硬化剤(C)を配合してなることを特徴とする艶消し粉体塗料樹脂組成物。
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