JP2004018395A - 血圧降下剤、その製造方法及びプロポリス組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた血圧降下作用を示す血圧降下剤を提供する。さらに、ポリフェノール素材から血圧降下剤を収率良く製造する製造方法を提供する。加えて、不安定な血圧降下剤を安定に維持するプロポリス組成物を提供する。
【解決手段】血圧降下剤は、ポリフェノールから選択される少なくとも一種を有効成分とするものである。その製造方法としては、ポリフェノール含有素材を抽出用溶媒に混合し、抽出用溶媒に抽出された抽出物をシリガケル等の分離用担体又は樹脂に供し、メタノール及びクロロホルム等の分離用溶媒により溶出させ、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標として分取するものである。さらに、プロポリス組成物はポリフェノールから選択される少なくとも一種とプロポリス抽出物とを含有するものである。
【選択図】 なし
【解決手段】血圧降下剤は、ポリフェノールから選択される少なくとも一種を有効成分とするものである。その製造方法としては、ポリフェノール含有素材を抽出用溶媒に混合し、抽出用溶媒に抽出された抽出物をシリガケル等の分離用担体又は樹脂に供し、メタノール及びクロロホルム等の分離用溶媒により溶出させ、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標として分取するものである。さらに、プロポリス組成物はポリフェノールから選択される少なくとも一種とプロポリス抽出物とを含有するものである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、高血圧の発症及び進展の予防等を目的とする医薬品、健康食品等として血圧降下作用を有するフラボン類等のポリフェノールを有効成分とする血圧降下剤、その製造方法及びプロポリス組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
虚血性心疾患、脳血管障害等の成人病は生命に重大な脅威を与えている。それらの増悪因子には高血圧症があり、高血圧症の治療及び予防が大きな課題となっている。高血圧症の進展を予防及び発症を抑制する物質については、既に、医薬品として利用されている。例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)により生じるアンジオテンシンIIによる血圧の上昇を抑制する目的で、ACE阻害物質が抽出又は化学合成されている。また、特定保健用食品として血圧の高めの人に利用できる食品が開発されている。
【0003】
一方、プロポリスは蜂ヤニともいわれ、セイヨウミツバチの巣の巣壁を構成する樹脂状ないしは蝋状の物質であり、ポリフェノール等の多種多様な成分を含有している。このプロポリスはヨーロッパにおいては医薬品あるいは健康食品の素材として古くから用いられてきたが、近年日本においても健康食品や化粧品の素材として多くの製品に使用されるようになった。プロポリスの主要な生理活性としては抗酸化作用及び免疫賦活作用が知られており、健康食品の素材としての効能を裏付けている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フラボン類等のポリフェノールによる血圧降下作用に関する報告は存在する(Kromhout D. J. Nutr. Health Aging. 2001; 5(3), 144−149)ものの、有効成分として単離され、同定された例は少ない。これはフラボン類等のポリフェノールには100以上の種類があり、構造的にも類似していることが原因である。さらに、一部のポリフェノールは安定性が悪く、特に、溶液中では容易に分解されてしまうという欠点がある。これらの問題点により、フラボン類等のポリフェノールを血圧降下の目的に使用される例は少ない。事実、フラボン類等のポリフェノールが血圧降下作用を目的とした医薬品や特定保健用食品に使用されている例はない。
【0005】
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、優れた血圧降下作用を示す血圧降下剤を提供することにある。さらに、ポリフェノール含有素材から血圧降下剤を収率良く製造する血圧降下剤の製造方法を提供することにある。加えて、血圧降下剤を安定に維持することができるプロポリス組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の血圧降下剤は、下記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0007】
【化4】
Xは水素、アルコキシル基(炭素数が1〜3)、水酸基、カフェオイロキシ基又はp−クマロキシ基である。
【0008】
請求項2に記載の製造方法は、ポリフェノール含有素材を抽出用溶媒に混合し、抽出用溶媒に抽出された抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により溶出させ、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標として下記の式(1)で示される化合物を分取することを特徴とする請求項1に記載の血圧降下剤の製造方法である。
【0009】
【化5】
Xは水素、アルコキシル基(炭素数が1〜3)、水酸基、カフェオイロキシ基又はp−クマロキシ基である。
【0010】
請求項3に記載のプロポリス組成物は、下記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種とプロポリス抽出物とを含有するものである。
【0011】
【化6】
Xは水素、アルコキシル基(炭素数が1〜3)、水酸基、カフェオイロキシ基又はp−クマロキシ基である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
まず、本実施形態の血圧降下剤は下記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分とするものである。
【0013】
【化7】
Xは水素、アルコキシル基(炭素数が1〜3)、水酸基、カフェオイロキシ基又はp−クマロキシ基である。
【0014】
これらの化合物は、フラボンに属し、基本骨格は3,5,7−トリヒドロキシ−フラボン及び3,5,7−トリヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンであり、6位の位置に上記した種々の置換基が導入される。
【0015】
このうち、6位の置換基Xが水素の場合、ケンフェライド(3,5,7−トリヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボン)である。また、置換基Xがアルコキシル基の場合において、炭素数が1のとき、置換基Xはメトキシ基となり、ベチュレトール(3,5,7−トリヒドロキシ−6,3’−ジメトキシ−フラボン)である。さらに、置換基Xがアルコキシル基の場合において、炭素数が2及び3のとき、置換基Xはエトキシ基及びプロポキシ基となり、それぞれ、3,5,7−トリヒドロキシ−6−エトキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,7−トリヒドロキシ−6−プロポキシ−3’−メトキシ−フラボンである。血管平滑筋細胞内へのカルシウムの取り込みを抑制する点から、6位の置換基Xがメトキシ基であるベチュレトール及び水素であるケンフェライドが最も好ましい。
【0016】
置換基Xが水酸基の場合、3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンである。この3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンは、前記した置換基Xがアルコキシル基の化合物及び以下に記載する置換基Xがカフェオイロキシ基及びp−クマロキシ基である化合物にエステラーゼが作用して、置換基Xが脱エステル化されることにより、生成される。置換基Xが水酸基であることは、血圧降下作用に加えて抗酸化作用を有する点から好ましい。
【0017】
置換基Xがカフェオイロキシ基(3,4−ジヒドロキシ−シンナモイロキシ基)の場合、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボンである。置換基Xがp−クマロキシ基(p−ヒドロキシ−シンナモイロキシ基)である場合、3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボンである。カフェオイロキシ基及びp−クマロキシ基は、それぞれカフェ酸及びp−クマル酸に由来するものである。これらカフェ酸及びp−クマル酸は、それぞれポリフェノール含有素材に含まれる有機酸であり、植物において同一の生合成経路によって生成され、抗炎症作用を有する。さらに、フラボン類も類似の経路で合成されることから、カフェオイロキシ基又はp−クマロキシ基が種々のフラボン類とエステル結合すると考えられる。置換基Xがカフェオイロキシ基又はp−クマロキシ基であることは、血圧降下作用に加えて抗炎症作用を有する点から、より好ましい。さらに、構造的に安定である点から、カフェオイロキシ基及びp−クマロキシ基は、いずれもトランス体であることが好ましい。
【0018】
式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種は、血圧降下作用を示す。これらの化合物は単独又は共存していても良い。これらの化合物が共存した場合には、それぞれの抗酸化作用により、お互いを安定に保つために、相乗的な血圧降下作用が得られる。
【0019】
前記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分として用いることにより血圧降下剤が得られる。前記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種の含有量は、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましく、40〜60重量%がさらに好ましい。この含有量が10重量%を下回る場合、十分な血圧降下作用が得られない。この含有量が90重量%を上回る場合、安定性が保持されないおそれがある。
【0020】
式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種は、茶葉並びにそれらの抽出物等の天然界、特に、植物界に存在しているポリフェノール含有素材から得られる。そのポリフェノール含有素材としては、プロポリス、赤ぶどう抽出物、赤ぶどう果皮抽出物、赤ぶどう葉、白ぶどう葉、赤ぶどう果実、白ぶどう果実、白ぶどう果皮、ぶどう種子、イチョウ葉、フランス西海岸松、大麦若葉、小麦若葉、稲若葉、大豆若葉、ブルーベリー果実、果皮、その種子、シソ葉、バラ葉、バラ花、ヤーコン、キクイモ、ムラサキイモ及びそれらの葉、キク科植物、又はエキナセア、レモンバーム、ウコン、グァバ、レモングラス、ラベンダー等のハーブ類、さらに、緑茶、紅茶、ウーロン茶等が挙げられる。
【0021】
次に、上記の血圧降下剤の製造方法について説明する。この製造方法は、ポリフェノール含有素材を抽出用溶媒に混合し、抽出用溶媒に抽出された抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により溶出させ、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標として分取するものである。
【0022】
まず、ポリフェノール含有素材としては、前記ポリフェノール含有素材が用いられる。プロポリスには大量のポリフェノールが含有されていることから、ポリフェノール含有素材としてプロポリスを使用することは好ましい。プロポリス原塊は、ヨーロッパ産、ブラジル等の南米産、中国及び日本を含むアジア産、北米産、アフリカ産、オーストラリア等のオセアニア産のいずれでも良い。これらのポリフェノール含有素材は、乾燥又は湿潤状態のいずれのものも用いられる。ポリフェノール含有素材は必要に応じて粉砕機、石臼、包丁、はさみ等の破砕装置又は手揉等により粉砕することにより、粉末又は破砕物とする。
【0023】
破砕物は、容器に入れられて抽出用溶媒と混合して混合液とされる。抽出用溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール等の親水性溶媒、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、クロロホルム等の親油性有機溶媒が単独又は混合されて用いられる。このうち、水、又は食用として利用できるエタノールが好ましい。前記ポリフェノール含有素材が湿潤状態にある場合には、内在する水分量を加味して抽出用溶媒の濃度及び量を調節する。
【0024】
抽出用溶媒の量としては、回収率及び製造コストの点から前記ポリフェノール含有素材の重量の1〜50倍量が好ましく、1〜20倍量がより好ましい。抽出温度としては、物質を安定に保つ点から1〜60℃が好ましい。また、使用する抽出用溶媒の種類により、抽出温度を調節する。水の場合、20〜60℃が好ましく、アルコールの場合、1〜40℃が好ましい。抽出時間としては、回収率の点から1〜72時間が好ましく、3〜48時間がより好ましい。光による分解を防ぐ目的で、前記の容器としては、褐色容器が好ましい。
【0025】
前記の混合液は固液分離により抽出物として得られる。この固液分離には、濾紙又は珪藻土を用いた自然濾過又は吸引濾過、あるいは、遠心分離機による遠心分離が用いられる。回収率を上げる点から濾過と遠心分離操作を組み合わせることは好ましい。製造コストを下げる目的で、得られた残渣をさらに抽出することが好ましい。さらに、回収率を上げる目的で、この操作を2〜5回繰り返すことがより好ましい。得られた抽出液を集めて減圧蒸留装置又は真空凍結乾燥器を用い、濃縮又は乾燥して抽出物の濃縮液又は粉末を得る。なお、ポリフェノール含有素材にプロポリスを選択し、抽出用溶媒にエタノールを選択した場合には、プロポリスのエタノール抽出物が得られる。
【0026】
前記の抽出物は分離用担体又は樹脂により分離され、分取されることにより血圧降下剤が得られる。この分離操作では分離用担体又は樹脂が用いられる。分離用担体又は樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0027】
例えば、逆相担体又は樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、逆相担体又は樹脂と物質との間で疎水結合が形成されるため、疎水性の高い物質の分離に利用される。イオン交換担体又は樹脂は、XAD−2又はXAD−4(ロームアンドハース社製)等のように、イオン性の物質の分離に適している。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。アフィニティ担体又は樹脂としては、抗原抗体反応等の特異的な結合を利用して分離を行なう。抗体をコーティングした場合には、抗原となる物質のみを分離するアフィニティ担体又は樹脂として利用される。分配性担体又は樹脂は、シリカゲル等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、その物質の単離に利用される。分子篩用担体又は樹脂は、セファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)等のように、物質の分子の大きさに依存して分離するものである。ダイアイオン(三菱化学(株)社製)等の吸着性担体又は樹脂は、物質の吸着性を利用して分離するものである。
【0028】
これらのうち、芳香族化合物の分離に適し、製造コストを低くすることができる点から、吸着性担体又は樹脂、分配性担体又は樹脂、分子篩用担体又は樹脂及びイオン交換担体又は樹脂が好ましい。さらに、ポリフェノール含有素材中には疎水性を示し、分配係数の差異が大きい物質が多い点から、逆相担体又は樹脂及び分配性担体又は樹脂はより好ましい。
【0029】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体又は樹脂が用いられる。医薬品製造又は食品製造に利用される担体又は樹脂は好ましい。これらの点から吸着性担体としてダイアイオン及びXAD−2又はXAD−4、分子篩用担体としてセファデクスLH−20、分配用担体としてシリカゲル(メルク社製)、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。このうち、DM1020T及びシリカゲルはさらに好ましい。
【0030】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体又は樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜50倍量が好ましく、3〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
【0031】
分離用溶媒としては、水、又は、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。セファデックスLH−20を用いる場合、溶媒の留去が行ない易い点から、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、物質と担体との間の分配係数の差異が生じやすい点から、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール又は酢酸及びこれらの混合液が好ましい。ダイアイオンを用いる場合、吸着性を変化させる点から、分離用溶媒にはメタノール、エタノール等の低級アルコール又は低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0032】
分取は、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標にする。分離された溶液に紫外線ランプを照射し、特有の蛍光を指標として分取する。さらに、紫外線ランプを分離用樹脂又は担体に照射し、蛍光を発する部分を分取する。例えば、ベチュレトール及びケンフェライドは、紫外部領域の励起光に対してそれぞれ緑黄色及び橙黄色の蛍光を発することから、分取の指標となる。
【0033】
以上の操作に、低速クロマトグラムシステム、精製用クロマトグラムシステム、膜分離クロマトグラムシステム等のシステム化された装置を用いることが好ましい。
【0034】
加えて、同一あるいは異なる分離用担体又は樹脂を用い、かつ、同一又は異なる分離用溶媒を用い、分離操作を繰返し行なうことが好ましい。この場合にも、紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取する手段が採用される。以上の操作により、目的とする血圧降下剤が液体として得られる。
【0035】
さらに、製剤化を容易にする目的で、得られた血圧降下剤を乾燥することが好ましい。乾燥には減圧蒸留装置、真空乾燥機等が用いられる。物質の安定性の点から乾燥の温度は、20〜50℃が好ましく、30〜40℃がより好ましい。また、真空乾燥機の温度は、20〜60℃が好ましく、25〜40℃がより好ましい。
【0036】
このようにして得られる式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分とする血圧降下剤が得られる。この血圧降下剤においては、常法に従って、医薬品、医薬部外品の分野で利用することができる。医薬品及び医薬部外品における経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤等がある。錠剤、カプセル剤は、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。医薬品における注射剤としては、液剤並びに使用時に溶媒とともに溶解される粉末剤及び凍結乾燥剤等がある。
【0037】
次に、前記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種とプロポリス抽出物とを含有するプロポリス組成物について説明する。前記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種は、構造的に安定性が十分ではない。酸化反応により、酸化されやすい傾向がある。一方、プロポリスはその強い抗酸化作用に基づき、種々の物質を安定に保つ性質がある。このようなプロポリスの特性を利用し、前記の式(1)で示される化合物を安定に維持することができる。用いるプロポリス抽出物としてはプロポリスのエタノール抽出物が好ましい。さらに、プロポリスの水抽出物、炭酸ガスで抽出されたプロポリス超臨界抽出物、有機溶媒で抽出されたプロポリス抽出物を用いる場合もある。なお、プロポリス抽出物の代わりに、抗酸化作用を示す赤ぶどう抽出物又は大麦若葉抽出物を用いる場合もある。
【0038】
さらに、プロポリス抽出物の1容量部に対し、前記により分取された式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種の配合量が0.1〜99容量部であることが好ましく、3〜29容量部であることがより好ましく、6〜12容量部であることが最も好ましい。この配合量が0.1容量部を下回る場合、血圧降下作用を発揮するために、多量のプロポリス組成物を摂取する必要が生じ、また、製造コストが高くなる。この配合量が99容量部を上回る場合、プロポリス抽出物による安定化作用が導き出されず、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種は不安定となり、持続的な血圧降下作用が発揮されない。
【0039】
前記プロポリス組成物の製造においては、前記の割合で配合された両成分を好ましくは1〜30℃で0.1〜24時間、より好ましくは同温度で1〜6時間、攪拌し、混和する。この混和物に対し前記濃縮・乾燥操作を行なうことにより、血圧降下作用を示すプロポリス組成物が液体又は粉末として得られる。
【0040】
なお、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分として用いることにより、健康食品が得られる。この式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分とする健康食品は、常法に従って、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤等とする。錠剤、カプセル剤は、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。
【0041】
以上詳述した本実施形態によれば次のような効果が発揮される。
・ 本実施形態の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分とする血圧降下剤によれば、優れた血圧降下作用を発揮でき、高血圧症の発症を予防し、かつ高血圧症の進展を抑制することができる。
・ 本実施形態の血圧降下剤の製造方法によれば、ポリフェノール含有素材を抽出溶媒で一旦分離し、得られた抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標として分取を行なう。従って、収率良く血圧降下剤を得ることができる。
・ 本実施形態で示されるプロポリス組成物によれば、プロポリス抽出物が血圧降下剤を安定化することから、血圧降下作用を長く維持することができる。
・ 本実施形態によれば、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有し、優れた血圧降下作用を有する健康食品を提供することができる。
・ 本実施形態によれば、赤ぶどう抽出物又は大麦若葉抽出物をポリフェノール含有素材として式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分とする血圧降下剤を得ることができる。
【0042】
【実施例】
以下に、実施例、製造例及び試験例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
【0043】
まず、ポリフェノール含有素材としてプロポリスを利用した場合のプロポリスのエタノール抽出物に関する製造例を説明する。
(製造例1)
ブラジル産プロポリス原塊300gを粉砕機((株)石崎電機製作所製のこなどん)で粉砕した後、抽出用溶媒として100容量%エタノールの1.5リットルを加えて20℃で24時間攪拌抽出した。次に、前記プロポリス粉砕物を含む抽出液を濾紙(アドバンテック東洋(株)製のNo.2)で濾過して残渣を除去することによって、プロポリスのエタノール抽出液1.22kg(固形分8.3重量%)を得た。
【0044】
次に、プロポリスのエタノール抽出物より式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を製造するための製造方法について説明する。
(実施例1)
前記比較例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物をセファデックスLH−20を充填したカラムに供し、分離用溶媒として100容量%エタノールを用いて分離した。分離用溶媒を自然落下させ、紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取した。カラム容積の10倍量の100容量%エタノールで分離された画分を得、これを減圧濃縮装置に供し、39℃で濃縮した。
【0045】
この濃縮液をシリカゲルカラムに添加し、分離を行なった。分離用溶媒にはクロロホルムとメタノールの混合溶液(容量比で95:5)を用い、分離の流速は1.0ml/分であった。紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取した。分取された溶液を減圧濃縮装置に供し、濃縮した。真空乾燥機を用いて40℃で乾燥させた。これにより、ベチュレトール及びケンフェライドの抽出率は0.6及び0.8重量%であった。また、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンが得られ、それぞれの抽出率は0.3、0.2及び0.1重量%であった。
【0046】
以下に、ポリフェノール含有素材として赤ぶどう抽出物を原料とした製造例について説明する。
(製造例2)
赤ぶどう抽出物100gを粉砕機で粉砕した後、抽出用溶媒として100容量%エタノールの1リットルを加えて20℃で24時間攪拌抽出した。次に、前記赤ぶどう抽出物粉砕物を含む抽出液を濾紙で濾過して残渣を除去することによって、赤ぶどう抽出物の100%アルコール抽出液0.78kg(固形分6.7重量%)を得た。得られた赤ぶどう抽出物のエタノール抽出物をセファデックスLH−20を充填したカラムに供し、分離用溶媒として100容量%エタノールを溶出した。分離用溶媒を自然落下させ、紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取した。カラム容積の11倍量の100容量%エタノールで溶出された画分を得、これを減圧濃縮装置に供し、37℃で濃縮した。この濃縮液をシリカゲルカラムに添加し、溶出を行なった。
【0047】
分離用溶媒としてクロロホルムとメタノールの混合溶液(容量比で95:5)を用い、流速1.0ml/分で分離した。紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取した。分取された溶液を減圧濃縮装置に供し、濃縮した。真空乾燥機により、40℃で乾燥させた。これにより、ベチュレトール及びケンフェライドが得られ、それぞれの抽出率は0.4及び0.7重量%であった。また、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボン、3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンが得られ、それぞれの抽出率は0.2、0.2及び0.2重量%であった。
【0048】
以下に、ポリフェノール含有素材として大麦若葉を原料とした製造例について説明する。
(製造例3)
大麦若葉100gを粉砕機で粉砕した後、抽出用溶媒として100容量%エタノールの1リットルを加えて20℃で24時間攪拌抽出した。次に、前記大麦若葉粉砕物を含む抽出液を濾紙で濾過して残渣を除去することによって、大麦若葉の100%アルコール抽出液0.81kg(固形分6.2重量%)を得た。得られた大麦若葉のエタノール抽出物をセファデックスLH−20を充填したカラムに供し、分離用溶媒には100容量%エタノールを用いた。分離用溶媒を自然落下させ、紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取した。カラム容積の10倍量の100容量%エタノールで分離された画分を得、これを減圧濃縮装置に供し、39℃で濃縮した。この濃縮液をシリカゲルカラムに添加し、分離を行なった。
【0049】
分離用溶媒としてクロロホルムとメタノールの混合溶液(容量比で95:5)を用い、流速1.0ml/分であった。紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取した。分取された溶液を減圧濃縮装置に供し、濃縮した。真空乾燥機により、40℃で乾燥させた。これにより、ベチュレトール及びケンフェライドが得られ、それぞれの抽出率は0.5及び0.6重量%であった。また、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボン、3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンが得られ、それぞれの抽出率は0.3、0.3及び0.1重量%であった。
【0050】
(試験例1)
実施例1、製造例2及び製造例3で得られた物質を液体高速クロマトグラフ装置により、分析した。0.1重量%固形分相当量の試料をカプセルパックAG120((株)資生堂製、カプセルパックは登録商標)をカラムとした液体高速クロマトグラフ装置(島津製作所)に供した。分析用溶媒に20〜100容量%のアセトニトリルを含有するアセトニトリル水溶液を用いてグラジエント溶出させ、280nmの吸光度をモニターすることにより、分析した。この分析の結果、単一ピークを呈した。
【0051】
さらに、得られた物質の構造を核磁気共鳴測定装置(NMR、バリアン社製、300MHz)により、解析した。その結果、下記に示すケンフェライド(式(2))及びベチュレトール(式(3))と同定された。なお、ベチュレトールのケミカルシフト値は、3.769(3H,s,6−OMe)、3.847(3H,s,4’−OMe)、6.572(1H,s,H−8)、7.110(2H,d,J=9.1Hz,H−3’5 ’)及び8.14(2H,d,J=8.9,H−2’,6’)であった。
【0052】
また、ケンフェライドのケミカルシフト値は、3.845(3H,s,6−OMe)、6.199(1H,s,H−6)、6.456(1H,s,H−8)、7.116(2H,d,J=9.0Hz,H−3’5 ’)、8.141(2H,d,J=9.0,H−3’,5’)及び12.445(1H,s,OH)であった。
【0053】
同様に、3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボン(式(4))、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボン(式(5))及び3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボン(式(6))が同定された。なお、カフェオイロキシ基及びp−クマロキシ基はいずれもトランス体であった。
【0054】
【化8】
【0055】
【化9】
【0056】
【化10】
【0057】
【化11】
【0058】
【化12】
(実施例2)
前記製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物をダイアイオンの500mlを充填したカラムに供し、分離用溶媒の100%エタノールを自然落下させた。カラム容積の15倍量で分離した画分を、さらに、シリカゲルカラム(150ml)に添加し、分離を行なった。分離用溶媒としてクロロホルム−メタノール混合溶液(容量比で65:35及び95:5)を用い、流速は1.0ml/分であった。蛍光を有する画分を分取し、真空蒸留後、蒸発乾固させた。これにより、ベチュレトール及びケンフェライドが得られ、それぞれの抽出率は0.5及び0.7重量%であった。また、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボン、3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンが得られ、それぞれの抽出率は0.1、0.2及び0.1重量%であった。
【0059】
(実施例3)
実施例1、製造例2又は製造例3で得られた式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種50mgに、製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物5mgを添加した。次いで、25℃で3時間、攪拌機を用いて混和し、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有するプロポリス組成物52mgを得た。
【0060】
(実施例4)
実施例1、製造例2又は製造例3で得られた式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種50mgに、製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物150mgを添加した。次いで、25℃で3時間、攪拌機を用いて混和し、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有するプロポリス組成物178mgを得た。
【0061】
(実施例5)
実施例1、製造例2又は製造例3で得られた式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種50mgに、製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物300mgを添加した。次いで、25℃で3時間、攪拌機を用いて混和し、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有するプロポリス組成物340mgを得た。
【0062】
(実施例6)
実施例1、製造例2又は製造例3で得られた式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種50mgに、製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物600mgを添加した。次いで、25℃で3時間、攪拌機を用いて混和し、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有するプロポリス組成物639mgを得た。
【0063】
(実施例7)
実施例1、製造例2又は製造例3で得られた式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種50mgに、製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物1450mgを添加した。次いで、25℃で3時間、攪拌機を用いて混和し、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有するプロポリス組成物1480mgを得た。
【0064】
(実施例8)
実施例1、製造例2又は製造例3で得られた式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種50mgに、製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物4950mgを添加した。次いで、25℃で3時間、攪拌機を用いて混和し、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有するプロポリス組成物4970mgを得た。
【0065】
以下に、自然発症高血圧ラット(SHR)を用いた血圧降下作用の実験について説明する。
(試験例2)
星野実験動物(株)より購入したSHRラット(14〜20週齢)を1週間の予備飼育後、異常の認められない動物を実験に供した。検体の投与量は10mg/kg/日とした。溶媒対照として、蒸留水を用いた。また、陽性対照物質として特定保健用食品として利用されているACE阻害作用を有したイワシペプチド由来のVYペプチド(シグマ社製)を用いた。投与は、経口用胃ゾンデを用いて28日間経口に、午前と午後の2回に分けて投与した。投与28日目の収縮期血圧について非観血的に血圧測定装置(ソフトロン社製、BP−80)を用い測定した。各検体当たり3匹の動物を用いた。結果は平均値と標準偏差で示し、溶媒対照に対する有意差検定をt検定により実施した。危険率5%未満を有意差あり(*印)と判定した。なお、このSHRラットはヒトにおける本態性高血圧症のモデルであり、医薬品開発及び食品開発に当たり、高血圧症の実験モデルとして汎用され、その実験成績は豊富である。
【0066】
【表1】
表1に示すように、ベチュレトール、ケンフェライド、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボン、3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンの収縮期血圧は降下した。さらに、実施例1〜8の収縮期血圧も降下した。血圧降下の程度は、VYペプチドに比し、強かった。ベチュレトール及びケンフェライドの併用によりそれぞれの単独以上の血圧の降下が認められ、相乗的な効果が確認された。陽性対照のVYペプチドでも、血圧降下が認められた。
【0067】
以下に、安定性に関する試験について説明する。
(試験例3)
ベチュレトール、ケンフェライド及び実施例1の安定性について調べた。すなわち、試料溶液を40℃で、1、3及び7日間保存し、ベチュレトール、ケンフェライド及び実施例1の成分量を液体高速クロマトグラフ装置により分析した。0.1重量%固形分相当量の試料をカプセルパックAG120をカラムとした液体高速クロマトグラフ装置に供した。分析用溶媒に20〜100容量%のアセトニトリルを含有するアセトニトリル水溶液を用いてグラジエント溶出させ、280nmの吸光度をモニターすることにより分析した。試料の溶解には、溶媒として蒸留水、エタノールを用いた。なお、安定化のために添加されたプロポリス中に含まれていたベチュレトール、ケンフェライド及び実施例1の成分量を予め測定し、その値を差し引いた値を実施例3〜8で得られたプロポリス組成物中の含量とした。なお、溶媒に溶解した時の含有量を100%として、それぞれの保存後の含有率(%)を求めた。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
表2、表3及び表4に示したように、ベチュレトール、ケンフェライド及び実施例1の成分は、蒸留水及びエタノールに溶解した場合、7日後に、それらの含有率は45%以下になった。これに対して実施例3〜8で得られたプロポリス組成物では、それぞれの含量は92%以上であった。プロポリスのエタノール組成物とすることにより、ベチュレトール、ケンフェライド及び実施例1の成分が安定であることが確認された。ベチュレトール、ケンフェライド及び実施例1の成分とプロポリスのエタノール抽出物の量の割合が適切である場合に、有効成分の安定性が維持され、血圧降下作用が発揮された。
【0071】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記記載の式(1)で示される化合物を化学的に合成することにより、製造しても良い。
・ 前記記載の式(1)で示される化合物にカルシウムキレート剤を添加しても良い。
・ 前記記載の式(1)で示される化合物にルチノサイドやネオヘスペリドサイド等の糖類を添加しても良い。
・ 前記記載の式(1)で示される化合物の製造方法においてポリフェノール含有素材を糖分解酵素により処理しても良い。このように処理することにより、収率が向上する。
【0072】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有し、血圧降下作用を有する健康食品。このように構成した場合には、優れた血圧降下作用を示す健康食品を提供することができる。
・ 前記式(1)で示される化合物は、式中のXが水素又はアルコキシル基(炭素数が1〜3)である請求項1に記載の血圧降下剤。このように構成した場合には、優れた血圧降下作用を示す血圧降下剤を得ることができる。
・ 前記式(1)で示される化合物は、式中のXが水素であるケンフェライド又はメトキシ基であるベチュレトールである請求項1に記載の血圧降下剤。このように構成した場合には、優れた血圧降下作用を示す血圧降下剤を得ることができる。
・ ポリフェノール含有素材は、赤ぶどう抽出物又は大麦若葉抽出物である請求項2記載の血圧降下剤の製造方法。このように構成した場合には、血圧降下剤を収率良く製造することができる。
・ 式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有し、動脈硬化抑制作用を有する医薬品製剤。このように構成した場合には、動脈硬化抑制作用を示す医薬品製剤を提供することができる。
・ ポリフェノール含有素材は糖分解酵素で処理されたものである請求項2記載の血圧降下剤の製造方法。このように構成した場合には、血圧降下剤を収率良く製造することができる。
【0073】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の血圧降下剤によれば、優れた血圧降下作用を発揮することができる。
【0074】
請求項2に記載の請求項1に記載の血圧降下剤の製造方法によれば、ポリフェノール含有素材から血圧降下剤を収率良く製造することができる。
請求項3に記載のプロポリス組成物によれば、血圧降下剤を安定に維持することができる。
【発明の属する技術分野】
この発明は、高血圧の発症及び進展の予防等を目的とする医薬品、健康食品等として血圧降下作用を有するフラボン類等のポリフェノールを有効成分とする血圧降下剤、その製造方法及びプロポリス組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
虚血性心疾患、脳血管障害等の成人病は生命に重大な脅威を与えている。それらの増悪因子には高血圧症があり、高血圧症の治療及び予防が大きな課題となっている。高血圧症の進展を予防及び発症を抑制する物質については、既に、医薬品として利用されている。例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)により生じるアンジオテンシンIIによる血圧の上昇を抑制する目的で、ACE阻害物質が抽出又は化学合成されている。また、特定保健用食品として血圧の高めの人に利用できる食品が開発されている。
【0003】
一方、プロポリスは蜂ヤニともいわれ、セイヨウミツバチの巣の巣壁を構成する樹脂状ないしは蝋状の物質であり、ポリフェノール等の多種多様な成分を含有している。このプロポリスはヨーロッパにおいては医薬品あるいは健康食品の素材として古くから用いられてきたが、近年日本においても健康食品や化粧品の素材として多くの製品に使用されるようになった。プロポリスの主要な生理活性としては抗酸化作用及び免疫賦活作用が知られており、健康食品の素材としての効能を裏付けている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フラボン類等のポリフェノールによる血圧降下作用に関する報告は存在する(Kromhout D. J. Nutr. Health Aging. 2001; 5(3), 144−149)ものの、有効成分として単離され、同定された例は少ない。これはフラボン類等のポリフェノールには100以上の種類があり、構造的にも類似していることが原因である。さらに、一部のポリフェノールは安定性が悪く、特に、溶液中では容易に分解されてしまうという欠点がある。これらの問題点により、フラボン類等のポリフェノールを血圧降下の目的に使用される例は少ない。事実、フラボン類等のポリフェノールが血圧降下作用を目的とした医薬品や特定保健用食品に使用されている例はない。
【0005】
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、優れた血圧降下作用を示す血圧降下剤を提供することにある。さらに、ポリフェノール含有素材から血圧降下剤を収率良く製造する血圧降下剤の製造方法を提供することにある。加えて、血圧降下剤を安定に維持することができるプロポリス組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の血圧降下剤は、下記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0007】
【化4】
Xは水素、アルコキシル基(炭素数が1〜3)、水酸基、カフェオイロキシ基又はp−クマロキシ基である。
【0008】
請求項2に記載の製造方法は、ポリフェノール含有素材を抽出用溶媒に混合し、抽出用溶媒に抽出された抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により溶出させ、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標として下記の式(1)で示される化合物を分取することを特徴とする請求項1に記載の血圧降下剤の製造方法である。
【0009】
【化5】
Xは水素、アルコキシル基(炭素数が1〜3)、水酸基、カフェオイロキシ基又はp−クマロキシ基である。
【0010】
請求項3に記載のプロポリス組成物は、下記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種とプロポリス抽出物とを含有するものである。
【0011】
【化6】
Xは水素、アルコキシル基(炭素数が1〜3)、水酸基、カフェオイロキシ基又はp−クマロキシ基である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
まず、本実施形態の血圧降下剤は下記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分とするものである。
【0013】
【化7】
Xは水素、アルコキシル基(炭素数が1〜3)、水酸基、カフェオイロキシ基又はp−クマロキシ基である。
【0014】
これらの化合物は、フラボンに属し、基本骨格は3,5,7−トリヒドロキシ−フラボン及び3,5,7−トリヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンであり、6位の位置に上記した種々の置換基が導入される。
【0015】
このうち、6位の置換基Xが水素の場合、ケンフェライド(3,5,7−トリヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボン)である。また、置換基Xがアルコキシル基の場合において、炭素数が1のとき、置換基Xはメトキシ基となり、ベチュレトール(3,5,7−トリヒドロキシ−6,3’−ジメトキシ−フラボン)である。さらに、置換基Xがアルコキシル基の場合において、炭素数が2及び3のとき、置換基Xはエトキシ基及びプロポキシ基となり、それぞれ、3,5,7−トリヒドロキシ−6−エトキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,7−トリヒドロキシ−6−プロポキシ−3’−メトキシ−フラボンである。血管平滑筋細胞内へのカルシウムの取り込みを抑制する点から、6位の置換基Xがメトキシ基であるベチュレトール及び水素であるケンフェライドが最も好ましい。
【0016】
置換基Xが水酸基の場合、3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンである。この3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンは、前記した置換基Xがアルコキシル基の化合物及び以下に記載する置換基Xがカフェオイロキシ基及びp−クマロキシ基である化合物にエステラーゼが作用して、置換基Xが脱エステル化されることにより、生成される。置換基Xが水酸基であることは、血圧降下作用に加えて抗酸化作用を有する点から好ましい。
【0017】
置換基Xがカフェオイロキシ基(3,4−ジヒドロキシ−シンナモイロキシ基)の場合、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボンである。置換基Xがp−クマロキシ基(p−ヒドロキシ−シンナモイロキシ基)である場合、3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボンである。カフェオイロキシ基及びp−クマロキシ基は、それぞれカフェ酸及びp−クマル酸に由来するものである。これらカフェ酸及びp−クマル酸は、それぞれポリフェノール含有素材に含まれる有機酸であり、植物において同一の生合成経路によって生成され、抗炎症作用を有する。さらに、フラボン類も類似の経路で合成されることから、カフェオイロキシ基又はp−クマロキシ基が種々のフラボン類とエステル結合すると考えられる。置換基Xがカフェオイロキシ基又はp−クマロキシ基であることは、血圧降下作用に加えて抗炎症作用を有する点から、より好ましい。さらに、構造的に安定である点から、カフェオイロキシ基及びp−クマロキシ基は、いずれもトランス体であることが好ましい。
【0018】
式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種は、血圧降下作用を示す。これらの化合物は単独又は共存していても良い。これらの化合物が共存した場合には、それぞれの抗酸化作用により、お互いを安定に保つために、相乗的な血圧降下作用が得られる。
【0019】
前記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分として用いることにより血圧降下剤が得られる。前記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種の含有量は、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましく、40〜60重量%がさらに好ましい。この含有量が10重量%を下回る場合、十分な血圧降下作用が得られない。この含有量が90重量%を上回る場合、安定性が保持されないおそれがある。
【0020】
式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種は、茶葉並びにそれらの抽出物等の天然界、特に、植物界に存在しているポリフェノール含有素材から得られる。そのポリフェノール含有素材としては、プロポリス、赤ぶどう抽出物、赤ぶどう果皮抽出物、赤ぶどう葉、白ぶどう葉、赤ぶどう果実、白ぶどう果実、白ぶどう果皮、ぶどう種子、イチョウ葉、フランス西海岸松、大麦若葉、小麦若葉、稲若葉、大豆若葉、ブルーベリー果実、果皮、その種子、シソ葉、バラ葉、バラ花、ヤーコン、キクイモ、ムラサキイモ及びそれらの葉、キク科植物、又はエキナセア、レモンバーム、ウコン、グァバ、レモングラス、ラベンダー等のハーブ類、さらに、緑茶、紅茶、ウーロン茶等が挙げられる。
【0021】
次に、上記の血圧降下剤の製造方法について説明する。この製造方法は、ポリフェノール含有素材を抽出用溶媒に混合し、抽出用溶媒に抽出された抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により溶出させ、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標として分取するものである。
【0022】
まず、ポリフェノール含有素材としては、前記ポリフェノール含有素材が用いられる。プロポリスには大量のポリフェノールが含有されていることから、ポリフェノール含有素材としてプロポリスを使用することは好ましい。プロポリス原塊は、ヨーロッパ産、ブラジル等の南米産、中国及び日本を含むアジア産、北米産、アフリカ産、オーストラリア等のオセアニア産のいずれでも良い。これらのポリフェノール含有素材は、乾燥又は湿潤状態のいずれのものも用いられる。ポリフェノール含有素材は必要に応じて粉砕機、石臼、包丁、はさみ等の破砕装置又は手揉等により粉砕することにより、粉末又は破砕物とする。
【0023】
破砕物は、容器に入れられて抽出用溶媒と混合して混合液とされる。抽出用溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール等の親水性溶媒、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、クロロホルム等の親油性有機溶媒が単独又は混合されて用いられる。このうち、水、又は食用として利用できるエタノールが好ましい。前記ポリフェノール含有素材が湿潤状態にある場合には、内在する水分量を加味して抽出用溶媒の濃度及び量を調節する。
【0024】
抽出用溶媒の量としては、回収率及び製造コストの点から前記ポリフェノール含有素材の重量の1〜50倍量が好ましく、1〜20倍量がより好ましい。抽出温度としては、物質を安定に保つ点から1〜60℃が好ましい。また、使用する抽出用溶媒の種類により、抽出温度を調節する。水の場合、20〜60℃が好ましく、アルコールの場合、1〜40℃が好ましい。抽出時間としては、回収率の点から1〜72時間が好ましく、3〜48時間がより好ましい。光による分解を防ぐ目的で、前記の容器としては、褐色容器が好ましい。
【0025】
前記の混合液は固液分離により抽出物として得られる。この固液分離には、濾紙又は珪藻土を用いた自然濾過又は吸引濾過、あるいは、遠心分離機による遠心分離が用いられる。回収率を上げる点から濾過と遠心分離操作を組み合わせることは好ましい。製造コストを下げる目的で、得られた残渣をさらに抽出することが好ましい。さらに、回収率を上げる目的で、この操作を2〜5回繰り返すことがより好ましい。得られた抽出液を集めて減圧蒸留装置又は真空凍結乾燥器を用い、濃縮又は乾燥して抽出物の濃縮液又は粉末を得る。なお、ポリフェノール含有素材にプロポリスを選択し、抽出用溶媒にエタノールを選択した場合には、プロポリスのエタノール抽出物が得られる。
【0026】
前記の抽出物は分離用担体又は樹脂により分離され、分取されることにより血圧降下剤が得られる。この分離操作では分離用担体又は樹脂が用いられる。分離用担体又は樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0027】
例えば、逆相担体又は樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、逆相担体又は樹脂と物質との間で疎水結合が形成されるため、疎水性の高い物質の分離に利用される。イオン交換担体又は樹脂は、XAD−2又はXAD−4(ロームアンドハース社製)等のように、イオン性の物質の分離に適している。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。アフィニティ担体又は樹脂としては、抗原抗体反応等の特異的な結合を利用して分離を行なう。抗体をコーティングした場合には、抗原となる物質のみを分離するアフィニティ担体又は樹脂として利用される。分配性担体又は樹脂は、シリカゲル等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、その物質の単離に利用される。分子篩用担体又は樹脂は、セファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)等のように、物質の分子の大きさに依存して分離するものである。ダイアイオン(三菱化学(株)社製)等の吸着性担体又は樹脂は、物質の吸着性を利用して分離するものである。
【0028】
これらのうち、芳香族化合物の分離に適し、製造コストを低くすることができる点から、吸着性担体又は樹脂、分配性担体又は樹脂、分子篩用担体又は樹脂及びイオン交換担体又は樹脂が好ましい。さらに、ポリフェノール含有素材中には疎水性を示し、分配係数の差異が大きい物質が多い点から、逆相担体又は樹脂及び分配性担体又は樹脂はより好ましい。
【0029】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体又は樹脂が用いられる。医薬品製造又は食品製造に利用される担体又は樹脂は好ましい。これらの点から吸着性担体としてダイアイオン及びXAD−2又はXAD−4、分子篩用担体としてセファデクスLH−20、分配用担体としてシリカゲル(メルク社製)、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。このうち、DM1020T及びシリカゲルはさらに好ましい。
【0030】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体又は樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜50倍量が好ましく、3〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
【0031】
分離用溶媒としては、水、又は、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。セファデックスLH−20を用いる場合、溶媒の留去が行ない易い点から、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、物質と担体との間の分配係数の差異が生じやすい点から、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール又は酢酸及びこれらの混合液が好ましい。ダイアイオンを用いる場合、吸着性を変化させる点から、分離用溶媒にはメタノール、エタノール等の低級アルコール又は低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0032】
分取は、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標にする。分離された溶液に紫外線ランプを照射し、特有の蛍光を指標として分取する。さらに、紫外線ランプを分離用樹脂又は担体に照射し、蛍光を発する部分を分取する。例えば、ベチュレトール及びケンフェライドは、紫外部領域の励起光に対してそれぞれ緑黄色及び橙黄色の蛍光を発することから、分取の指標となる。
【0033】
以上の操作に、低速クロマトグラムシステム、精製用クロマトグラムシステム、膜分離クロマトグラムシステム等のシステム化された装置を用いることが好ましい。
【0034】
加えて、同一あるいは異なる分離用担体又は樹脂を用い、かつ、同一又は異なる分離用溶媒を用い、分離操作を繰返し行なうことが好ましい。この場合にも、紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取する手段が採用される。以上の操作により、目的とする血圧降下剤が液体として得られる。
【0035】
さらに、製剤化を容易にする目的で、得られた血圧降下剤を乾燥することが好ましい。乾燥には減圧蒸留装置、真空乾燥機等が用いられる。物質の安定性の点から乾燥の温度は、20〜50℃が好ましく、30〜40℃がより好ましい。また、真空乾燥機の温度は、20〜60℃が好ましく、25〜40℃がより好ましい。
【0036】
このようにして得られる式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分とする血圧降下剤が得られる。この血圧降下剤においては、常法に従って、医薬品、医薬部外品の分野で利用することができる。医薬品及び医薬部外品における経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤等がある。錠剤、カプセル剤は、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。医薬品における注射剤としては、液剤並びに使用時に溶媒とともに溶解される粉末剤及び凍結乾燥剤等がある。
【0037】
次に、前記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種とプロポリス抽出物とを含有するプロポリス組成物について説明する。前記の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種は、構造的に安定性が十分ではない。酸化反応により、酸化されやすい傾向がある。一方、プロポリスはその強い抗酸化作用に基づき、種々の物質を安定に保つ性質がある。このようなプロポリスの特性を利用し、前記の式(1)で示される化合物を安定に維持することができる。用いるプロポリス抽出物としてはプロポリスのエタノール抽出物が好ましい。さらに、プロポリスの水抽出物、炭酸ガスで抽出されたプロポリス超臨界抽出物、有機溶媒で抽出されたプロポリス抽出物を用いる場合もある。なお、プロポリス抽出物の代わりに、抗酸化作用を示す赤ぶどう抽出物又は大麦若葉抽出物を用いる場合もある。
【0038】
さらに、プロポリス抽出物の1容量部に対し、前記により分取された式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種の配合量が0.1〜99容量部であることが好ましく、3〜29容量部であることがより好ましく、6〜12容量部であることが最も好ましい。この配合量が0.1容量部を下回る場合、血圧降下作用を発揮するために、多量のプロポリス組成物を摂取する必要が生じ、また、製造コストが高くなる。この配合量が99容量部を上回る場合、プロポリス抽出物による安定化作用が導き出されず、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種は不安定となり、持続的な血圧降下作用が発揮されない。
【0039】
前記プロポリス組成物の製造においては、前記の割合で配合された両成分を好ましくは1〜30℃で0.1〜24時間、より好ましくは同温度で1〜6時間、攪拌し、混和する。この混和物に対し前記濃縮・乾燥操作を行なうことにより、血圧降下作用を示すプロポリス組成物が液体又は粉末として得られる。
【0040】
なお、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分として用いることにより、健康食品が得られる。この式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分とする健康食品は、常法に従って、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤等とする。錠剤、カプセル剤は、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。
【0041】
以上詳述した本実施形態によれば次のような効果が発揮される。
・ 本実施形態の式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分とする血圧降下剤によれば、優れた血圧降下作用を発揮でき、高血圧症の発症を予防し、かつ高血圧症の進展を抑制することができる。
・ 本実施形態の血圧降下剤の製造方法によれば、ポリフェノール含有素材を抽出溶媒で一旦分離し、得られた抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標として分取を行なう。従って、収率良く血圧降下剤を得ることができる。
・ 本実施形態で示されるプロポリス組成物によれば、プロポリス抽出物が血圧降下剤を安定化することから、血圧降下作用を長く維持することができる。
・ 本実施形態によれば、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有し、優れた血圧降下作用を有する健康食品を提供することができる。
・ 本実施形態によれば、赤ぶどう抽出物又は大麦若葉抽出物をポリフェノール含有素材として式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を有効成分とする血圧降下剤を得ることができる。
【0042】
【実施例】
以下に、実施例、製造例及び試験例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
【0043】
まず、ポリフェノール含有素材としてプロポリスを利用した場合のプロポリスのエタノール抽出物に関する製造例を説明する。
(製造例1)
ブラジル産プロポリス原塊300gを粉砕機((株)石崎電機製作所製のこなどん)で粉砕した後、抽出用溶媒として100容量%エタノールの1.5リットルを加えて20℃で24時間攪拌抽出した。次に、前記プロポリス粉砕物を含む抽出液を濾紙(アドバンテック東洋(株)製のNo.2)で濾過して残渣を除去することによって、プロポリスのエタノール抽出液1.22kg(固形分8.3重量%)を得た。
【0044】
次に、プロポリスのエタノール抽出物より式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を製造するための製造方法について説明する。
(実施例1)
前記比較例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物をセファデックスLH−20を充填したカラムに供し、分離用溶媒として100容量%エタノールを用いて分離した。分離用溶媒を自然落下させ、紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取した。カラム容積の10倍量の100容量%エタノールで分離された画分を得、これを減圧濃縮装置に供し、39℃で濃縮した。
【0045】
この濃縮液をシリカゲルカラムに添加し、分離を行なった。分離用溶媒にはクロロホルムとメタノールの混合溶液(容量比で95:5)を用い、分離の流速は1.0ml/分であった。紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取した。分取された溶液を減圧濃縮装置に供し、濃縮した。真空乾燥機を用いて40℃で乾燥させた。これにより、ベチュレトール及びケンフェライドの抽出率は0.6及び0.8重量%であった。また、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンが得られ、それぞれの抽出率は0.3、0.2及び0.1重量%であった。
【0046】
以下に、ポリフェノール含有素材として赤ぶどう抽出物を原料とした製造例について説明する。
(製造例2)
赤ぶどう抽出物100gを粉砕機で粉砕した後、抽出用溶媒として100容量%エタノールの1リットルを加えて20℃で24時間攪拌抽出した。次に、前記赤ぶどう抽出物粉砕物を含む抽出液を濾紙で濾過して残渣を除去することによって、赤ぶどう抽出物の100%アルコール抽出液0.78kg(固形分6.7重量%)を得た。得られた赤ぶどう抽出物のエタノール抽出物をセファデックスLH−20を充填したカラムに供し、分離用溶媒として100容量%エタノールを溶出した。分離用溶媒を自然落下させ、紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取した。カラム容積の11倍量の100容量%エタノールで溶出された画分を得、これを減圧濃縮装置に供し、37℃で濃縮した。この濃縮液をシリカゲルカラムに添加し、溶出を行なった。
【0047】
分離用溶媒としてクロロホルムとメタノールの混合溶液(容量比で95:5)を用い、流速1.0ml/分で分離した。紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取した。分取された溶液を減圧濃縮装置に供し、濃縮した。真空乾燥機により、40℃で乾燥させた。これにより、ベチュレトール及びケンフェライドが得られ、それぞれの抽出率は0.4及び0.7重量%であった。また、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボン、3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンが得られ、それぞれの抽出率は0.2、0.2及び0.2重量%であった。
【0048】
以下に、ポリフェノール含有素材として大麦若葉を原料とした製造例について説明する。
(製造例3)
大麦若葉100gを粉砕機で粉砕した後、抽出用溶媒として100容量%エタノールの1リットルを加えて20℃で24時間攪拌抽出した。次に、前記大麦若葉粉砕物を含む抽出液を濾紙で濾過して残渣を除去することによって、大麦若葉の100%アルコール抽出液0.81kg(固形分6.2重量%)を得た。得られた大麦若葉のエタノール抽出物をセファデックスLH−20を充填したカラムに供し、分離用溶媒には100容量%エタノールを用いた。分離用溶媒を自然落下させ、紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取した。カラム容積の10倍量の100容量%エタノールで分離された画分を得、これを減圧濃縮装置に供し、39℃で濃縮した。この濃縮液をシリカゲルカラムに添加し、分離を行なった。
【0049】
分離用溶媒としてクロロホルムとメタノールの混合溶液(容量比で95:5)を用い、流速1.0ml/分であった。紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取した。分取された溶液を減圧濃縮装置に供し、濃縮した。真空乾燥機により、40℃で乾燥させた。これにより、ベチュレトール及びケンフェライドが得られ、それぞれの抽出率は0.5及び0.6重量%であった。また、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボン、3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンが得られ、それぞれの抽出率は0.3、0.3及び0.1重量%であった。
【0050】
(試験例1)
実施例1、製造例2及び製造例3で得られた物質を液体高速クロマトグラフ装置により、分析した。0.1重量%固形分相当量の試料をカプセルパックAG120((株)資生堂製、カプセルパックは登録商標)をカラムとした液体高速クロマトグラフ装置(島津製作所)に供した。分析用溶媒に20〜100容量%のアセトニトリルを含有するアセトニトリル水溶液を用いてグラジエント溶出させ、280nmの吸光度をモニターすることにより、分析した。この分析の結果、単一ピークを呈した。
【0051】
さらに、得られた物質の構造を核磁気共鳴測定装置(NMR、バリアン社製、300MHz)により、解析した。その結果、下記に示すケンフェライド(式(2))及びベチュレトール(式(3))と同定された。なお、ベチュレトールのケミカルシフト値は、3.769(3H,s,6−OMe)、3.847(3H,s,4’−OMe)、6.572(1H,s,H−8)、7.110(2H,d,J=9.1Hz,H−3’5 ’)及び8.14(2H,d,J=8.9,H−2’,6’)であった。
【0052】
また、ケンフェライドのケミカルシフト値は、3.845(3H,s,6−OMe)、6.199(1H,s,H−6)、6.456(1H,s,H−8)、7.116(2H,d,J=9.0Hz,H−3’5 ’)、8.141(2H,d,J=9.0,H−3’,5’)及び12.445(1H,s,OH)であった。
【0053】
同様に、3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボン(式(4))、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボン(式(5))及び3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボン(式(6))が同定された。なお、カフェオイロキシ基及びp−クマロキシ基はいずれもトランス体であった。
【0054】
【化8】
【0055】
【化9】
【0056】
【化10】
【0057】
【化11】
【0058】
【化12】
(実施例2)
前記製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物をダイアイオンの500mlを充填したカラムに供し、分離用溶媒の100%エタノールを自然落下させた。カラム容積の15倍量で分離した画分を、さらに、シリカゲルカラム(150ml)に添加し、分離を行なった。分離用溶媒としてクロロホルム−メタノール混合溶液(容量比で65:35及び95:5)を用い、流速は1.0ml/分であった。蛍光を有する画分を分取し、真空蒸留後、蒸発乾固させた。これにより、ベチュレトール及びケンフェライドが得られ、それぞれの抽出率は0.5及び0.7重量%であった。また、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボン、3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンが得られ、それぞれの抽出率は0.1、0.2及び0.1重量%であった。
【0059】
(実施例3)
実施例1、製造例2又は製造例3で得られた式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種50mgに、製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物5mgを添加した。次いで、25℃で3時間、攪拌機を用いて混和し、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有するプロポリス組成物52mgを得た。
【0060】
(実施例4)
実施例1、製造例2又は製造例3で得られた式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種50mgに、製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物150mgを添加した。次いで、25℃で3時間、攪拌機を用いて混和し、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有するプロポリス組成物178mgを得た。
【0061】
(実施例5)
実施例1、製造例2又は製造例3で得られた式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種50mgに、製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物300mgを添加した。次いで、25℃で3時間、攪拌機を用いて混和し、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有するプロポリス組成物340mgを得た。
【0062】
(実施例6)
実施例1、製造例2又は製造例3で得られた式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種50mgに、製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物600mgを添加した。次いで、25℃で3時間、攪拌機を用いて混和し、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有するプロポリス組成物639mgを得た。
【0063】
(実施例7)
実施例1、製造例2又は製造例3で得られた式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種50mgに、製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物1450mgを添加した。次いで、25℃で3時間、攪拌機を用いて混和し、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有するプロポリス組成物1480mgを得た。
【0064】
(実施例8)
実施例1、製造例2又は製造例3で得られた式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種50mgに、製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物4950mgを添加した。次いで、25℃で3時間、攪拌機を用いて混和し、式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有するプロポリス組成物4970mgを得た。
【0065】
以下に、自然発症高血圧ラット(SHR)を用いた血圧降下作用の実験について説明する。
(試験例2)
星野実験動物(株)より購入したSHRラット(14〜20週齢)を1週間の予備飼育後、異常の認められない動物を実験に供した。検体の投与量は10mg/kg/日とした。溶媒対照として、蒸留水を用いた。また、陽性対照物質として特定保健用食品として利用されているACE阻害作用を有したイワシペプチド由来のVYペプチド(シグマ社製)を用いた。投与は、経口用胃ゾンデを用いて28日間経口に、午前と午後の2回に分けて投与した。投与28日目の収縮期血圧について非観血的に血圧測定装置(ソフトロン社製、BP−80)を用い測定した。各検体当たり3匹の動物を用いた。結果は平均値と標準偏差で示し、溶媒対照に対する有意差検定をt検定により実施した。危険率5%未満を有意差あり(*印)と判定した。なお、このSHRラットはヒトにおける本態性高血圧症のモデルであり、医薬品開発及び食品開発に当たり、高血圧症の実験モデルとして汎用され、その実験成績は豊富である。
【0066】
【表1】
表1に示すように、ベチュレトール、ケンフェライド、3,5,7−トリヒドロキシ−6−カフェオイロキシ−3’−メトキシ−フラボン、3,5,7−トリヒドロキシ−6−p−クマロキシ−3’−メトキシ−フラボン及び3,5,6,7−テトラヒドロキシ−3’−メトキシ−フラボンの収縮期血圧は降下した。さらに、実施例1〜8の収縮期血圧も降下した。血圧降下の程度は、VYペプチドに比し、強かった。ベチュレトール及びケンフェライドの併用によりそれぞれの単独以上の血圧の降下が認められ、相乗的な効果が確認された。陽性対照のVYペプチドでも、血圧降下が認められた。
【0067】
以下に、安定性に関する試験について説明する。
(試験例3)
ベチュレトール、ケンフェライド及び実施例1の安定性について調べた。すなわち、試料溶液を40℃で、1、3及び7日間保存し、ベチュレトール、ケンフェライド及び実施例1の成分量を液体高速クロマトグラフ装置により分析した。0.1重量%固形分相当量の試料をカプセルパックAG120をカラムとした液体高速クロマトグラフ装置に供した。分析用溶媒に20〜100容量%のアセトニトリルを含有するアセトニトリル水溶液を用いてグラジエント溶出させ、280nmの吸光度をモニターすることにより分析した。試料の溶解には、溶媒として蒸留水、エタノールを用いた。なお、安定化のために添加されたプロポリス中に含まれていたベチュレトール、ケンフェライド及び実施例1の成分量を予め測定し、その値を差し引いた値を実施例3〜8で得られたプロポリス組成物中の含量とした。なお、溶媒に溶解した時の含有量を100%として、それぞれの保存後の含有率(%)を求めた。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
表2、表3及び表4に示したように、ベチュレトール、ケンフェライド及び実施例1の成分は、蒸留水及びエタノールに溶解した場合、7日後に、それらの含有率は45%以下になった。これに対して実施例3〜8で得られたプロポリス組成物では、それぞれの含量は92%以上であった。プロポリスのエタノール組成物とすることにより、ベチュレトール、ケンフェライド及び実施例1の成分が安定であることが確認された。ベチュレトール、ケンフェライド及び実施例1の成分とプロポリスのエタノール抽出物の量の割合が適切である場合に、有効成分の安定性が維持され、血圧降下作用が発揮された。
【0071】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記記載の式(1)で示される化合物を化学的に合成することにより、製造しても良い。
・ 前記記載の式(1)で示される化合物にカルシウムキレート剤を添加しても良い。
・ 前記記載の式(1)で示される化合物にルチノサイドやネオヘスペリドサイド等の糖類を添加しても良い。
・ 前記記載の式(1)で示される化合物の製造方法においてポリフェノール含有素材を糖分解酵素により処理しても良い。このように処理することにより、収率が向上する。
【0072】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有し、血圧降下作用を有する健康食品。このように構成した場合には、優れた血圧降下作用を示す健康食品を提供することができる。
・ 前記式(1)で示される化合物は、式中のXが水素又はアルコキシル基(炭素数が1〜3)である請求項1に記載の血圧降下剤。このように構成した場合には、優れた血圧降下作用を示す血圧降下剤を得ることができる。
・ 前記式(1)で示される化合物は、式中のXが水素であるケンフェライド又はメトキシ基であるベチュレトールである請求項1に記載の血圧降下剤。このように構成した場合には、優れた血圧降下作用を示す血圧降下剤を得ることができる。
・ ポリフェノール含有素材は、赤ぶどう抽出物又は大麦若葉抽出物である請求項2記載の血圧降下剤の製造方法。このように構成した場合には、血圧降下剤を収率良く製造することができる。
・ 式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含有し、動脈硬化抑制作用を有する医薬品製剤。このように構成した場合には、動脈硬化抑制作用を示す医薬品製剤を提供することができる。
・ ポリフェノール含有素材は糖分解酵素で処理されたものである請求項2記載の血圧降下剤の製造方法。このように構成した場合には、血圧降下剤を収率良く製造することができる。
【0073】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の血圧降下剤によれば、優れた血圧降下作用を発揮することができる。
【0074】
請求項2に記載の請求項1に記載の血圧降下剤の製造方法によれば、ポリフェノール含有素材から血圧降下剤を収率良く製造することができる。
請求項3に記載のプロポリス組成物によれば、血圧降下剤を安定に維持することができる。
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