JP2004016619A - 自動血液透析装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】血液を浄化する透析器、正回転可能な血液ポンプを有する動脈側血液回路と静脈側血液チャンバーを有する静脈側血液回路で構成させる血液循環系、透析液供給ラインと透析液排液ラインと血液透析装置の補液(逆濾過)または除水手段とで構成される給排液系、および前記血液ポンプの上流側と下流側を連結した流路を少なくとも備え、前記静脈側血液チャンバーの上部にオーバーフローライン、該オーバーフローライン上に開閉手段、前記血液チャンバーの下流側に開閉手段、および前記血液ポンプの上流側と下流側を連結した流路上に流路開閉手段手段を有することを特徴とする自動血液透析装置。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、今まで人手で行ってきた血液透析やそれに関わる準備・回収等の一連の操作をできるだけ自動化し、省力化が可能で、かつ血液ポンプの停止状態また正回転状態で脱血と返血および/またはプライミングが可能な血液透析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
血液透析装置は腎不全患者や薬物中毒患者の血液を浄化するための医療用機器である。血液透析療法の機構は、通常、血液透析器(ダイアライザー)、血液が循環する血液回路および透析液供給系の3つの部分から構成される。血管内と2カ所(シングルニードルの場合は穿刺針が1本になる)で直接接続した血液回路により体外循環を維持しつつ、血液を血液回路の中途に連結した血液透析器の中空糸内腔側のコンパートメントに流入させる。
【0003】
一方、血液透析器の中空糸外側のコンパートメントには、血液の流れと反対方向に透析液と称される電解質液を流入させる。血液透析器の両コンパートメントは透析膜と呼ばれる分離膜で隔てられ、血液と透析液が反対方向に流れる間に、分離膜の両側の濃度勾配に応じた物質の拡散移動が発生し、尿毒素や中毒物質の除去や不足物質の補充が行われる。一般に、上述の血液透析装置は体外循環の維持、透析液の安定供給、ならびに血液からの余剰な水分の除去を制御する装置等によって構成されている。
【0004】
従来の血液透析監視装置は、透析治療中の機器情報や患者情報の監視と安全管理という点では優れているが、治療前のプライミング(血液回路や血液透析器の流路を洗浄し清浄化しておく準備行程)、穿刺後の脱血(血液を体内から血液回路に引き出すことにより体外循環を開始する操作)、透析治療中の補液、終了時の返血(血液回路内の血液を体内に戻す体外循環の終了操作)、各行程間のスムースな移行等、血液透析に関わる全体的な作業における省力化の点では、まだ不十分である。
【0005】
特に、特定の行程や行程間の移行において自動化が遅れており、もっぱら労働集約的かつ医療従事者の熟練を必要とするのが実状であった。同時に来院する多人数の患者のプライミングや脱血、返血を短時間のうちに終了させるために、一時的に多大の人員投入を必要とする。一方で、このような人員配置は血液透析(血液循環)中は過剰であるため、労働内容の時間的不均一性と経済的非効率性の原因となっていた。
【0006】
また、従来の血液透析ではプライミング行程における血液回路ならびに血液透析器(ダイアライザー)の洗浄・充填に静脈投与製剤である生理食塩水を1L程度使用していた。1L程度の洗浄では流路が十分に洗浄されないことが指摘されており、また洗浄・充填に生理食塩水を多量に使用すると、コストが増大する。さらに血液透析治療中の血圧低下の際には、別に生理食塩水を必要とし、業務の煩雑化とコスト増の一因となっていた。近年、透析液の浄化技術は著しく進歩し、超純度に浄化した透析液を逆濾過補液(逆濾過)に応用しようとするシステムも確立されている。このようなシステムでは生理食塩水の代わりに清浄化透析液を逆濾過してリンス液ないし補液(逆濾過)として使用することができるが、透析液の滞留によって起こる2次汚染を起こさずに、プライミングおよび治療中の補液(逆濾過)目的の逆濾過透析液を簡易に確実に供給できる補液(逆濾過)回路系はこれまでに開示されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記のような従来技術の課題、すなわち、労働集約性が高く、熟練を要し、合理化が難しいとされてきた血液透析治療業務の合理化(自動化・単純化・省力化・迅速化・低コスト化)を可能とし、かつ治療の安全性を高めることを目的とし、従来の装置のように各行程の一部を自動化するものとは異なり、前述の血液透析医療において、治療の準備から治療終了までの大半の行程を自動化する血液透析装置を提供することにある。それによって、透析準備から治療終了までの一連の行程が安全、確実かつ迅速に遂行されるとともに、人件費および消耗品コストを大幅に削減することを目的とした自動血液透析装置を提案し、前記従来技術の課題を解決することができた(特願平11−138327号、特願平2001−385321号)。
しかしながら、これら発明においては返血と脱血行程、およびプライミング行程を血液ポンプの逆回転操作によって行っている。しかしながら、電気的機械・器具に関する欧州の医療用基準では、血液ポンプの逆回転操作を禁止しており、前記自動血液透析装置は、前記の欧州の医療用基準を満足するものではなかった。
本発明は、自動化度が高く、かつ前記の欧州の医療用基準を満足する、返血と脱血、透析行程およびプライミング操作を血液ポンプの停止状態あるいは正回転操作によって実施可能な自動血液透析装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は半透膜を介して血液と透析液とを接触させ血液を浄化する透析器、正回転可能な血液ポンプを有する患者から血液を導出して透析器に流入させる動脈側血液回路と静脈側血液チャンバーを有する透析器から流出した血液を患者に戻す静脈側血液回路で構成させる血液循環系、透析器に透析液を供給する透析液供給ライン(以下第1送液手段とも言う)と透析器から流出した透析液を排液する透析液排液ライン(以下第2送液手段とも言う)と血液透析装置の補液(逆濾過)または除水手段とで構成される給排液系(以下第3送液手段とも言う)、および前記動脈側の血液ポンプの上流側と下流側を連結した流路を少なくとも備え、前記静脈側血液チャンバーの上部に液を血液回路外にオーバーフローするためのオーバーフローライン、該オーバーフローライン上に開閉手段(以下、開閉手段1とも言う)、前記血液チャンバーの下流側に流路開閉手段(開閉手段2とも言う)、および前記血液ポンプの上流側と下流側を連結した流路上に流路開閉手段手段(開閉手段3ともいう)を有することを特徴とする自動血液透析装置の提供により、前記技術課題を解決できた。
なお、本明細書で、血液回路の上流側或いは下流側とは、血液透析中における血液の流れる方向によって区別するものとする。
【0009】
本発明の血液透析装置は、前記本出願人が先に提出した発明(特願平11−138327号、特願平2001−385321号)が奏しえる効果である、前記血液透析の各行程を自動化できるだけでなく、各行程を連続して移動できるように制御することによって、血液透析開始前におけるプライミング行程を自動的に行い、かつ血液透析装置の動脈側血液回路と静脈側血液回路を連結後、血液透析開始時における患者から血液循環系への脱血行程、脱血行程から血液透析行程へ移行させる開始機構、血液透析行程、および血液透析終了時に血液循環系から患者への返血を行う返血行程の各行程または機構を自動的に連続して行うことが可能であるほぼ完全自動化できるという効果に加えて、さらに血液ポンプを逆回転させることなく、プライミング行程、脱血行程、透析行程および返血行程の全てを血液ポンプの回転停止または正回転の状態で行うことが可能となるので、血液ポンプの逆回転操作を禁止した欧州基準を満足した自動血液透析装置が提供される。
【0010】
すなわち、本発明の血液透析装置は、血液循環系に設けた血液ポンプ、前記第3つの開閉手段と、前記第3送液手段を連動制御することにより、その連動制御を各行程のみ限定せず、各行程間の移行機構を含めて作業フロー全体に適用したことによって、各行程の自動実施、および各行程間の自動移行がスムーズになり、特に多くの行程で連続実施が可能となり、したがって各行程の移行に伴う人的作業が軽減されるだけでなく、操作ミスも減少させることができただけでなく、プライミング行程、脱血行程、透析行程および返血行程の全てを血液ポンプの回転停止または正回転の状態で行うことが可能となった。
【0011】
本発明の血液透析装置は、透析液供給ラインに設けられた第1送液手段の上流側と下流側とをバイパスする第1バイパスライン、或いは透析液排液ラインに設けられた第2送液手段の上流側と下流側とをバイパスする第2バイパスラインの少なくとも1つに、正逆両方向に送液可能な第3送液手段を設けることにより、1つの送液手段で、血液循環系への除水および補液(逆濾過)の両方の目的に利用できる。即ち、透析液供給側に設けた第1バイパスラインに水流ポンプを設置し、第1送液手段(透析液送液ポンプ)と同方向に送液すると、透析器に流入する透析液は、透析器から流出する液量よりも多くなり、その結果、血液循環系への補液(逆濾過)が行われる。上記とは逆方向に送液すると、反対に透析器への流入液量は流出液量より少なくなり、その結果、血液循環系からの除水が行われる。
【0012】
上記の機構は、透析液排液側に設けた第2バイパスラインに水流ポンプを設置して、送液方向を切換えることによっても、同様に行うことができる。この場合は、第2送液手段(透析液排液ポンプ)と同方向に送液すると、透析器から流出する排液量は、透析器に流入する液量よりも多くなり、その結果、血液循環系からの除水が行われる。逆方向に送液すると、反対に透析器への流出液量は流入液量より少なくなり、その結果、血液循環系への補液(逆濾過)が行われる。第2バイパスラインにポンプを設置して、補液(逆濾過)或いは除水を行う実施態様は、透析液流量に制限のある個人用透析装置に適用するのが好ましい。個人用透析装置に適用する場合、第2バイパスラインのみにポンプを設置しても良いが、第1バイパスラインにもポンプを設置することによって、補液(逆濾過)または除水の送液能力を増加させることができる。
【0013】
前記の補液(逆濾過)或いは除水を行う実施態様では、除水または補液(逆濾過)のための特に複雑な構造は必要でない。透析液送液回路ならびにバイパスラインが単純であり、また両バイパスラインのいずれか1つに上記の第3送液手段を設けることによって、透析液の滞留が生じ難いという利点がある。つまり、血液透析の全行程で透析液送液系に設けた第3送液手段が、ほとんど絶え間無く作動するために上記バイパスラインに実質的な滞留が生じない。常時回路に流れが維持されることにより透析液の2次的な細菌増殖を抑え、エンドトキシン汚染を回避できる。さらに、第1バイパスラインに前記第3送液手段を設けることにより、バイパスライン内に透析液排液が流通せず、その結果バイパスラインの汚染、排液中の老廃物によるラインの目詰まり等の心配が無い。
【0014】
前記第3送液手段は、定量型の正逆回転可能な水流ポンプが望ましく、送液能力は血液循環系に設けた血液ポンプの送液量に関連して規定すべきであり、0〜500ml/minの送液流量(送液能力)を有するものが好ましい。
中空糸で逆濾過され、血液回路に流入する透析液の一部(約半分)が血液ポンプによって一方の血液回路に流れ、残りの透析液(半分)がもう一方の血液回路に流れることができるようにするために、第3送液手段の送液量を血液ポンプの送液量の1以上、好ましくは1〜2.5の範囲になるように調整されることが好ましい。また、逆濾過による自動プライミング、自動補液(逆濾過)、自動返血において、最適な逆濾過速度はTMP(Trans Membrance Pressure)あるいはダイアライザーの膜透過性によって決まるので、本発明の血液透析装置は、透析器の限外濾過性能によって、透析液の逆濾過速度を変更可能なものが好ましい。
すなわち、使用するダイアライザーの好適な限外濾過性能あるいは膜透過性より逆濾過速度の設定が高い場合、透析液圧が上昇し、液圧警報が発生することとなり、スムーズな逆濾過動作を行うことができないこととなる。従って、限外濾過率あるいは膜透過性が小さい場合には逆濾過速度を小さくする必要があり、逆に限外濾過率あるいは膜透過性が大きい場合には逆濾過速度を大きくすることが可能となるので、前記の各逆濾過工程ごとにダイアライザーの液圧に基づく逆濾過速度のフィードバック制御が可能なものが好ましい。
【0015】
前記動脈側血液回路および/または静脈側血液回路のうち、少なくともいずれか1つの血液回路に気泡検知手段を装着することが好ましい。この気泡検知手段を装着することによって、血液回路内に混入した気泡を迅速に検知し、施術者に報知して何らかの対処を促すことができる。
また、本発明の血液透析装置は、血液チャンバー、特に静脈チャンバーの上部に連絡導管を介して連なる空気貯留チャンバーを設け、前記連絡導管に遮断手段を設けること、前記遮断手段と静脈チャンバーとの間の前記連絡導管に、静脈圧モニターラインに連絡する分岐部を有することが好ましく、さらには、静脈チャンバーの上部に連絡する静脈圧モニターラインが設けられることが好ましい。このような構成を採用することにより、血液透析処理が開始後、所定時間に患者静脈圧が所定の範囲で変動しない場合に、警報を発生させることが可能となる。
また、前記動脈側血液回路に可撓性のソフトセグメント、ヘパリン注入セグメントを有し、前記静脈側血液回路に圧監視ラインを設けることによって、脱血不良、血液凝固、血液回路の狭窄や閉塞等による異常を早期発見できる利点がある。
【0016】
本発明においては、透析液としては超純度の透析液を使用することが好ましく、さらに本発明の自動血液透析装置は、透析操作の実施の際に該超純度の透析液が安定的に供給されることが好ましい。例えば、通常の透析液製造装置から供給された透析液を、図1のような本発明に係わる自動血液透析装置(H)の入口部に設置された限外濾過フィルターを透過させることにより、溶存するエンドトキシンや細菌などの不純物を除去することにより、安定的に供給すことができる。また、通常の透析液製造装置から供給される透析液は、あらかじめ定められた水質基準に則って浄化(例えば九州HDF検討会誌 1:33−42、1995)しておくことが望ましい。
また、本発明の自動血液透析装置においては、超純度の透析液に限らず、生理食塩水も使用が可能である。
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
実施の形態1
本発明の自動血液透析装置の全体構成を図1に基づいて、具体的に説明する。
(1)血液透析用コンソール(M)
透析液流量調節装置であり、血液流量調節装置でもある〔以下、血液透析用コンソール(M)とも言う〕は、透析液送液機構として密閉系を有する一般的な性能を具備したものであり、血液透析器の逆濾過による血液循環系への除水または補液(逆濾過)を可能とする機能を有するものである。
本図に示すコンソール(M)は、透析液排液ラインL5に第3送液手段[以下、除水または補液(逆濾過)ポンプ(P4)ともいう]を設けて、血液透析器Dの血液循環系への除水または補液(逆濾過)を可能とする機能を有するものである。即ち、透析液排液ラインL5側の第2送液手段である透析液排液ポンプ(P3)の上流側と下流側との間に両者を連結する第2バイパスラインL6を設け、このバイパスL6に除水または補液(逆濾過)ポンプ(P4)を装着する。該除水または補液(逆濾過)ポンプ(P4)は正逆両方向に駆出方向の切替えが可能で流量を、例えば0〜500ml/min、好ましくは0〜300ml/min程度に制御できる水流ポンプである。
【0018】
また、図1においては、該除水または補液(逆濾過)ポンプを透析液排液ラインL5側の第2バイパスラインL6に設けたが、該除水または補液(逆濾過)ポンプは透析液給液ラインL4側に透析液送液ポンプ(P2)の上流側と下流側との間に両者を連結するバイパスラインを形成し、該バイパスラインに除水または補液(逆濾過)ポンプを設けてもよいし、前記両バイパスラインに除水または補液(逆濾過)ポンプを設けてもよい。
【0019】
(2)血液回路〔動脈側血液回路(L1)と静脈側血液回路(L2)〕
血液回路は図1のごとく、動脈側血液回路(L1)と静脈側血液回路(L2)の2パートから構成され、動脈側血液回路(L1)は、動脈側穿刺針との接続部(1)、および血液透析器Dとの接続部を有する。血液回路には、体外循環を維持するための血液ポンプ(P1)が設けられ、該ポンプは正回転が可能なものとする。
また、血液回路は気泡検知器(AD1)を有することが好ましい。気泡検知器(AD1)は、例えば静脈チャンバーの下流側に取り付け、返血時に空気が検知された場合には血液ポンプ(P1)を直ちに緊急停止させ、バルブ2(PV2)を閉じることにより、体内へ空気が誤注入されるのを防止する。静脈側血液回路(L2)は、血液透析器Dとの接続部、静脈チャンバー(C)、その上部に連絡するオーバーフローライン(L3)および静脈圧(血圧)監視ライン(S4)、静脈側穿刺針との接続部(2)から成る。
【0020】
(3)3つの流路開閉手段(PV1、PV2およびPV3)
本発明の血液透析装置は、自動プライミング行程、自動脱血行程、自動透析行程、自動返血行程、および血液透析装置の補液(逆濾過)または除水等の制御に係わる3つのバルブ(PV1、PV2およびPV3)を有する。PV1はオーバーフローライン(L3)、PV2は静脈チャンバー下流側、およびPV3は血液ポンプの上流側と下流側を連結した流路上にそれぞれ設けられる。
【0021】
(4)制御手段
本発明の血液透析装置の制御手段Gは、自動プライミング行程、自動脱血行程、自動透析行程、自動返血行程、自動補液(逆濾過)または除水等の制御に係わるものであり、自動血液ポンプ(P1)、除水または補液(逆濾過)ポンプ(P4)、および前記3つのバルブを連動制御が可能なものであり、各構成要素を連絡する伝達系gを有する。前記制御手段Gは、血液透析装置一般の各種モニター類や安全装置を内蔵した血液透析コンソールに設けるのが望ましい。
本発明の前記血液制御手段Gによって自動プライミング行程、自動脱血行程、自動透析行程、および自動返血行程の全てを前記自動血液ポンプ(P1)の停止または正回転状態で実施可能に制御できる。
【0022】
(5)空気貯留チャンバー
本発明の自動血液透析装置は、さらに空気貯留チャンバー(図示せず)を有していても良い。該空気貯留チャンバーは自動プライミング時には、遮断手段を開放して空気貯留チャンバー内を空気で充填しておく。脱血行程時、血液透析時には遮断機能を閉止して、上記チャンバー内を空気で充填したままとする。そして、返血開始時に遮断手段を開放して、空気貯留チャンバー内の空気を静脈チャンバーに送って、静脈チャンバーの液面レベルを下げることができる。
【0023】
実施の形態2
本発明の自動血液透析装置の機能を具体的に説明する。
(1)自動プライミング機能
本発明の自動血液透析装置の自動プライミング行程は、前記ように自動血液ポンプ(P1)、除水または補液(逆濾過)ポンプ(P4)、および前記3つのバルブ1〜3を連動制御することによって前記自動血液ポンプ(P1)の停止または正回転状態で実施可能であることを特徴とする。
【0024】
(2)自動プライミング行程における透析液圧フィードバックによるダイアライザーからの逆濾過圧制御機能
自動プライミング時の逆濾過速度は前記したようにTMP(Trans Membrance Pressure)あるいはダイアライザーの膜透過性によって決まるので膜透過性が低いダイアライザーに高い逆濾過圧をかけると、液圧異常となって警報を発する。このため、コンソールの液圧センサーを用いて測定したダイアライザーの液圧の測定値をもとに逆濾過速度をフィードバック制御することにより、適切な逆濾過速度を自動設定し、自動プライミング行程を行うことが好ましい。すなわち、膜透過性が低いダイアライザーの場合には、逆濾過速度を小さくして自動プライミング行程を行うことが好ましい。この自動プライミング行程が安定化した後に設定された逆濾過速度を最大値としてメモリしておき、自動補液(逆濾過)および自動返血行程における液圧フィードバック制御の逆濾過速度の最大値として使用する。なお、ドライタイプダイアライザーは膜表面にグリセリンなどが塗布されていることからプライミング初期の逆濾過速度は膜透過性による値よりも更に低下することとなる。
また、フィードバック制御以外に自動プライミング行程における液圧制御の設定値をあらかじめ設定しておき、液圧測定値がこの設定値に達するごとに設定逆濾過速度を一定割合或いは一定速度ずつ低下させていく制御方式も可能である。
【0025】
(3)自動プライミング時血液回路閉塞検出機能
自動プライミングにおいて、血液回路ラインの閉塞が生じた場合、正常なプライミングを行うことができなくなる。これに対する監視機能として、以下の機能の少なくとも1種類を装着したものが好ましい。
(a)自動プライミング工程において、自動的に気泡センサーを一定時間、好ましくは1〜3秒間有効として血液回路内がプライミング液に置換されているかどうかを確認し、空気が検出(気泡警報発生)された時点で血液回路閉塞と判断する機能。
(b)自動プライミング中の液圧警報により血液回路が閉塞されていることを検出する機能。
前記液圧警報は警報表示及び警報音の発生となる。但し、濾過速度の液圧制御との兼ね合いがあるため初回の液圧状態では警報発生とはならない。
【0026】
(4)自動プライミング時の陰圧解消逆濾過動作機能
透析液の循環状態(密閉系)のプライミングにおいては、ダイアライザーへの送液側の液温よりダイアライザーからの戻り液の液温の方が、若干温度が低く、これにより透析液の密度が変わることとなり、若干の引き気味(陰圧)傾向が生じることとなる。こうした陰圧傾向が生じた場合、特にプライミング工程リサキュレーション状態では、血液回路の吻合が甘い場合には空気を回路内に混入してしまうこととなる。自動プライミング時の陰圧解消逆濾過動作機能(B)は前記のような不具合を防止する為に、プライミングのプライミング液の血液回路循環状態においても定期的に少量の逆濾過を行うこと、例えば10分毎に10ml(逆濾過速度100ml/min)で逆濾過を行うことによって血液回路内を陽圧傾向に維持することが可能となる。
【0027】
(5)脱血開始時の静脈側クランプ作動遅延機能
プライミング行程終了後、自動脱血開始前にプライミングのための血液回路動静脈バイパス部を分離した場合、液ダレなどで血液回路先端部に気泡が混入する場合がある。この状態で脱血を開始すると、特に静脈側では気泡が患者側へ混入する危険性があるため、脱血を開始する前に静脈チャンバー下のクランプを閉止して除水方法での自動脱血を開始し、自動脱血後一定期間経過後、好ましくは1〜3秒後に静脈チャンバー下の前記クランプを開くことにより、血液回路内を陰圧にして患者側へ気泡が混入することを防止する。
【0028】
(6)脱血不良検出機能
脱血不良検出機能としては、以下の動脈側脱血不良検出機能および静脈側脱血不良検出機能がある。
(a)動脈側脱血不良検出機能
動脈側回路には血液ポンプが存在しているため純粋な動脈圧を検出することが出来ない。また、自動コンソールで動脈側回路に動脈チャンバーが存在すると透析中に少なからず該チャンバーに空気が溜まってしまい、この状態で自動返血を実施すると、前記チャンバーに空気が溜まった空気が最初に押出され患者へ入ってしまう等の問題が生じるので、動脈側からの脱血状態において、正常に脱血できない状態を検出する手段としては、従来は血液回路のピローを目視又はピローの虚脱をピローセンサーで検出、あるいは血液ポンプセグメントのシャクリなどにて判断していた。
これに対して、本発明の自動血液透析装置は、以下のような動脈側脱血不良検出機能を備えることにより、従来の目視やピローセンサーのような検出方法では数値的に状態を把握することはできないのに対して、本機能によれば動脈側脱血不良状態を検出できるだけでなく、数値的なデータとして制御可能となり、また、ピローがなくなることにより血液回路内面の段差が削減され、血栓の形成を抑制可能のような効果を奏することができる。
【0029】
脱血状態又は透析状態において、静脈回路の静脈チャンバーの下流側に設けた回路ラインの閉塞手段(例えばクランプ)により静脈側の回路ラインを一定時間、例えば1〜10秒間程度、好ましくは3〜5秒間程度閉塞し、該閉塞状態で血液ポンプはそのまま作動させ、また除水ポンプは停止した状態(除水ポンプを停止させるのは除水脱血の場合のみ)で静脈圧の変動を検出し、該検出結果に基づいて動脈側脱血不良を検出する。脱血が正常に行われている場合は静脈圧が上昇するが、脱血不良状態においては血液ポンプの回転数を上げても静脈圧が上昇しなくなるので、この静脈圧の変動により脱血不良を検出する。前記検出動作によって脱血不良が検出されない場合には前記回路ラインの閉塞手段(例えばクランプ)による回路ラインの閉塞を開放して通常の透析状態に戻る。また、前記検出動作によって脱血不良が検出された場合、警報停止のような操作を行う(脱血不良を機械側で対応することは不可能である)。なお、前記閉塞時間および脱血不良として判断する圧力上昇幅も内部設定により設定可能である。
【0030】
(b)静脈側脱血不良検出機能
除水脱血による脱血行程において、皮静脈など静脈からの脱血ができない状態においては、脱血動作を開始して透析液圧が過度の陰圧状態(過度の陰圧状態は透析液の排液側に圧力センサーを設けて計測し、過度の陰圧状態という圧力基準は内部設定で変更可能とする)になったとき、静脈側が脱血不良状態にあると判断するか、あるいは、血液ポンプを一旦停止し、除水速度を血液ポンプ速度分だけ低下させて静脈側脱血を継続する。この状態で静脈圧が下限値を下回るか又は液圧が設定下限値以下となった場合に静脈側の脱血不良と判断する。
前記静脈側脱血不良検出機能によって、静脈圧の過度の陰圧状態、および該静脈圧の過度の陰圧状態について具体的な陰圧値も合わせて計測することも可能であり、前記静脈側脱血不良検出を検出した時点で血液ポンプ速度を除水速度と同一速度、あるいは同一速度より10%程度以下の範囲内の早い速度で除水脱血を動脈側からの脱血のみで続ける。
【0031】
(7)透析時の静脈圧モニターラインの閉塞検出機能
透析開始後、静脈圧モニターラインが閉止したままだと、静脈圧が測定できず、警報機能が作用しない。そのため、本発明の血液透析装置に、静脈圧モニターラインの閉塞を検出する機能を付与するのも好ましい。静脈圧モニターラインの閉塞を検出する機能の構成として、透析中は、血液ポンプによる脈動があるため、静脈圧測定値は必ず変動するにもかかわらず、透析開始後の所定時間、例えば30〜60秒間程度内に、静脈圧測定値が所定の範囲で変動しない場合には、静脈圧モニターラインの閉塞が生じているとして警報を発生するようにしても良い。
【0032】
(8)急速補液(逆濾過)機能
自動補液(逆濾過)機能における急速補液(逆濾過)は、患者の血圧低下などに対応する為の緊急的な対処手段である。この場合、患者の循環血液量を増加させることとが目的であることから、血液ポンプの正回転または停止時において、透析液の送排液系に設けた第3送液手段によってダイアライザーに透析液を供給することによって静脈側からのみの注入も行うことができる。
【0033】
(9)静脈チャンバー中に残存する血液面レベルの低下機能
返血行程において、逆濾過による透析液量をなるべく減少させるために、返血時の静脈チャンバーに残る血液量、即ち液面レベルをなるべく下げる必要がある。そのため、以下の構成をとるのが望ましい。即ち、静脈チャンバーの上部に連絡導管を介して連なる空気貯留チャンバー3を設け、前記連絡導管に遮断手段4を設ける。また、図8に示すように、前記遮断手段と静脈チャンバーとの間の前記連絡導管に、静脈圧モニターラインに連絡する分岐部5を有するようにしても良い。
【0034】
(10)補液(逆濾過)行程および返血行程における液圧フィードバック制御機能
自動補液(逆濾過)および自動返血行程において液圧フィードバック制御で設定される逆濾過速度は、プライミング時とは異なり、透析工程が進んでいくと老廃物等でダイアライザーの膜がファウリング、血液凝固等により有効膜面積が現象していくこととなり、プライミング時より更に設定可能な逆濾過速度が低下することも考えられる。したがって、自動補液(逆濾過)および自動返血行程においても、自動プライミング行程における液圧フィードバック制御の場合と同様に、自動補液(逆濾過)および自動返血行程におけるダイアライザーの液圧の測定値をもとに、逆濾過速度をフィードバック制御することにより、適切な逆濾過速度を自動設定が可能なものとする。ただし、逆濾過速度の最大値は前記自動プライミング行程で設定されたものが採用される。また、フィードバック制御以外に自動補液(逆濾過)および自動返血行程における液圧制御の設定値をあらかじめ設定しておき、液圧測定値がこの設定値に達するごとに設定逆濾過速度を一定割合或いは一定速度ずつ低下させていく制御方式も可能である。
【0035】
前記逆濾過による自動プライミング、自動補液(逆濾過)、自動返血の逆濾過速度の液圧フィードバック制御において、前記逆濾過速度をフィードバック制御する制御方法(定圧制御)に加えて、速度制御あるいは定圧制御→速度制御への切替えの制御方法を採用しても良く、さらに前記定圧制御、速度制御、定圧制御→速度制御を適当に選択して、これら選択した制御方法を切替えて制御しても良い。前記定圧制御とは液圧を一定に保つようにして行うフィードバック制御であり、また、前記定圧制御→速度制御とはフィードバック制御の流量の最大値を設定しておき、それを超える場合は設定した流量の最大値にて速度制御を行う制御方法である。
【0036】
返血時回路内圧異常検出機能
返血時回路内圧異常検出機能は、返血行程において返血を開始後、圧計測手段により透析液ラインの透析液圧と静脈回路の静脈圧を計測し、静脈回路の静脈圧が安定状態から上昇傾向になった場合、または警報絶対値を超えた場合に静脈側回路の閉塞が生じたと判断し、回路内圧異常を判断することができる。これに対して、動脈側の閉塞は前述のような理由で動脈圧モニターがないため、返血を開始後、透析液圧及び静脈圧の監視を開始し、透析液圧及び静脈圧が安定した状態からの各圧力の上昇傾向から動脈側の閉塞を検出する。また、前記返血時回路内圧異常検出機能において、返血初期の安定状態もなく即閉塞する場合もあるが、この場合には静脈圧あるいは透析液圧及び静脈圧の変化量Δ又は、圧力絶対値で異常判断する。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
実施例1
自動プライミング行程
(1)自動プライミング行程1
血液回路の動脈ラインL1と静脈ラインL2を接続してループを形成する。血液透析器Dに透析液ラインL4、L5を接続する。コンソールMは準備モード(装置や回路内のエアーを抜き、透析液による液置換を行うモード)で動作を開始する。準備完了後、バルブ1(PV1)を開放、バルブ2と3(PV2とPV3)を閉止して、血液ポンプP1は停止したままとする。除水または補液(逆濾過)ポンプP4を内部設定にて、200ml/minで逆回転させて、血液透析器Dを介し血液回路内に透析液を送液する。それによって、血液透析器Dと静脈チャンバーCの流路にある液をオーバーフローラインL3から排出しながら、上記部分を洗浄する[図2]。また、透析液ラインL4、L5のポンプP2とポンプP3は、給液量と排液量が同期するように回転するものである。
【0038】
(2)自動プライミング行程2
バルブ1(PV1)、バルブ2(PV2)およびバルブ3(PV2)を開放、除水または補液(逆濾過)ポンプP4を内部設定にて、200ml/minで逆回転させ、血液回路内に透析液を移動させる〔補液(逆濾過)あるいは逆濾過〕。
血液ポンプP1をポンプP4と同じ200ml/minで正回転させ、それによって血液回路内に補液(逆濾過)された透析液の半分量を血液透析器より上流側に、また透析液の半分量を血液透析器より下流側に循環させ、オーバーフローラインL3から液を排出しながら、血液回路全体を洗浄する[図3]。
【0039】
(3)自動プライミング行程3
(2)自動プライミング行程2に引き続いて、自動プライミング行程3を行った。すなわち、自動プライミング行程2におけるバルブ1(PV1)、バルブ2(PV2)およびバルブ3(PV3)を開放した状態から、バルブ1と3(PV1とPV3)を閉止し、除水ポンプを停止し、かつ血液ポンプを350ml/min(内部設定)で正回転させ、血液回路内全体を循環洗浄する[図4]。
なお、前記血液回路全体を透析液が循環中に30〜60秒後間隔毎に1〜3秒間気泡センサーを有効として血液回路内がプライミング液に置換されているかどうかを確認し、空気が検出(気泡警報発生)された時点で血液回路閉塞と判断した。また、透析液が循環中に例えば10分間隔毎に10ml(100ml/min)逆濾過を行うことにより、血液回路内の陰圧解消を図った。
なお、前記自動プライミング行程1と2は、前記自動プライミング行程2を最初に行い、次に自動プライミング行程1を行っても良い。
設定時関経過後に血液ポンプを停止してプライミング行程を完了する。
自動プライミングが完了した後、血液回路の先端部1、2を脱離して、各先端部を患者の動・静脈に接続する。この際、静脈側血液回路は先端部を脱離した際に、回路内の液が洩れてしまうので、バルブ2(PV2)を閉じて、液洩れを防止する。
【0040】
実施例2
自動脱血行程
(1)動脈側と静脈側からの脱血(除水脱血)
血液回路の動・静脈接続部1、2付近を鉗子等で遮断しておき、両接続部1,2を脱離し、接続部に存在するエアーを除去して患者に穿刺された穿刺針(AVF等)に接続する。回路を遮断していた鉗子を外し、自動脱血スイッチを押して、
自動脱血モードに移行する。また、患者側へ気泡が混入することを防止するため、脱血を開始する前に静脈チャンバー下のクランプPV2を閉止して除水方法での自動脱血を開始し、1〜3秒後に静脈チャンバー下の前記クランプを開くことにより、自動脱血モードに移行することも出来る。
バルブ1(PV1)およびバルブ3(PV3)を閉止し、バルブ2(PV2)を開放して除水または補液(逆濾過)ポンプP4を100ml/min(内部設定)にして正回転させる。また、血液ポンプP1を50ml/min(内部設定)にて正回転させる。血液回路内の充填液(透析液)が血液透析器より除水され、血液回路内の充填液(透析液)が血液に置換されるまでの時間を予め設定(例えば、1分間)しておき、設定時間が経過した時点で脱血完了となる。脱血完了と同時に自動、又は手動にて通常の血液透析モードに移行する[図5]。
本脱血行程の場合、血液ポンプP1の50ml/min(内部設定)の回転により50ml/minの血液が動脈から脱血され、また、静脈からは除水または補液(逆濾過)ポンプP4と血液ポンプP1の回転量の差による血液量(100ml/min−50ml/min)、すなわち、50ml/minの血液が静脈から脱血される。
【0041】
(2)オーバーフロー排出による動脈側からの脱血
前記(1)の高除水脱血と同様に、血液回路の動・静脈接続部1、2付近を鉗子等で遮断しておき、両接続部1,2を脱離し、接続部に存在するエアーを除去して患者に穿刺された穿刺針(AVF等)に接続する。回路を遮断していた鉗子を外し、自動脱血スイッチを押して、自動脱血モードに移行するという操作を行う。バルブ1(PV1)を開放し、バルブ2と3(PV2とPV3)を閉止して、除水または補液(逆濾過)ポンプP4は停止させたまま、血液ポンプP1を100ml/min(内部設定)にて正回転させる。以降はまた、高除水脱血と同じであり、血液回路内の充填液(透析液)が血液に置換されるまで、脱血行程を持続させる[図6]。
【0042】
前記脱血行程において、静脈回路L2の静脈チャンバーCの下流側に設けたクランプPV2により静脈回路L2を1〜3秒間程度閉塞し、該閉塞状態で血液ポンプはそのまま作動させ、また除水ポンプは停止した状態で静脈圧の変動を検出した。脱血が正常に行われている場合は血液ポンプの作動に伴って静脈圧が上昇するが、脱血不良状態においては血液ポンプの回転数を上げても静脈圧が上昇しなくなるので、この静脈圧の変動により脱血不良を検出する。
また、脱血行程における静脈側脱血不良の検出は、静脈圧監視ラインS4によって監視し、皮静脈など静脈からの脱血ができない状態においては、透析液圧が過度の陰圧状態になったとき、静脈側が脱血不良状態にあると判断して、動脈側からのみの除水脱血動作に自動移行するように制御する
【0043】
実施例3
自動透析行程
透析行程においては、バルブ1と3(PV1とPV3)は閉止、バルブ2(PV2)は開放、血液ポンプP1および除水または補液(逆濾過)ポンプP4は設定された流量で正回転にて駆動される。バルブ2(PV2)は気泡検出器AD1に連動し、血液回路内の気泡検出と同時に閉止され、血液ポンプP1も停止する[図7]。また、前記透析行程は、静脈圧モニターラインにより、透析開始後30〜60秒間程度内に、静脈圧測定値が所定の範囲で変動しない場合には、静脈圧モニターラインの閉塞が生じているとして警報を発生するようにした。
【0044】
実施例4
自動返血行程
(1)静脈側からの返血
除水完了および/または目標の透析時間経過後、または動脈側からの返血の終了後にこの自動返血モードに移行する。バルブ1(PV1)とバルブ3(PV3)を閉止し、バルブ2(PV2)を開放して、除水または補液(逆濾過)ポンプP4を200ml/min(内部設定)で逆回転して補液(逆濾過)し、血液ポンプP1は停止状態である。上記操作によって、血液透析装置および該血液透析装置から下流側の回路内の血液が静脈から返血される。設定時間経過後、または血液回路内の残存血液が透析液(洗浄液)で置換された時に、除水または補液(逆濾過)ポンプP4は停止し、自動返血行程が完了する[図8]。
【0045】
(2)動脈側からの返血
除水完了および/または目標の透析時間経過後、または静脈側からの返血の終了後に自動返血モードに移行する。バルブ1(PV1)とバルブ2(PV2)を閉止し、バルブ3(PV3)を開放して、除水または補液(逆濾過)ポンプP4を200ml/min(内部設定)で逆回転して補液(逆濾過)し、血液ポンプP1はそのポンプ回路に残っている血液を患者に戻すため200ml/min以下(内部設定)で正回転させる。上記操作によって、血液透析装置および該血液透析装置から下流側の回路内の血液が動脈から返血される。設定時間経過後、または血液回路内の残存血液が透析液(洗浄液)で置換された時に、除水または補液(逆濾過)ポンプP4は停止し、自動返血行程が完了する[図9]。
前記自動返血行程は、自動プライミング行程における液圧フィードバック制御の場合と同様に、自動返血行程におけるダイアライザーの液圧の測定値をもとに、逆濾過速度をフィードバック制御することにより、適切な逆濾過速度を自動設定して行った。また、前記自動返血行程は、圧計測手段により透析液ラインの透析液圧と静脈回路の静脈圧を計測し、静脈回路の静脈圧が安定状態から上昇傾向になった場合に静脈側回路の閉塞が生じたと判断し、また透析液圧と静脈回路の静脈圧の双方が安定状態から上昇傾向になった場合に動脈側回路の閉塞が生じたと判断する返血時回路内圧異常検出機能により、返血時回路内圧異常の有無を監視しながら行った。
【0046】
【発明の効果】
(1)本発明に係わる血液透析監視装置および専用の血液回路によると、プライミング行程が自動化されること、脱血行程において操作が簡易になり、プライミング液の患者体内への流入が防止でき、さらに脱血−血液透析開始−回収−終了までの一連の治療行程がプログラムにより自動化される。そのため、医療従事者がベッドサイドに拘束される時間が大幅に短縮され、血液透析治療に係わる医療業務の顕著な効率化と省力化に寄与する。
また、プライミング行程、脱血行程、透析行程および返血行程の全ての工程を血液ポンプの停止状態また正回転状態で行うことができる。
【0047】
(2)透析終了時に動・静脈穿刺針の抜去操作も容易になり、血液汚染の頻度も減少させることができる。一連の作業が極めて単純化されることから、従来のように透析業務従事者の熟練も必要としない。また、プライミングでは十分量の逆濾過透析液を洗浄に使用することから、通常の生理食塩水1Lを使用した洗浄よりも十分な洗浄が行われ、体外循環回路の清浄度が高まる。さらに、治療中の血圧低下発生の際にも、補液(逆濾過)を迅速かつ簡便に実施できる。プライミングや補液(逆濾過)に生理食塩水を使用しないことも経済的メリットとなる。以上のように、本発明は血液透析治療の効率化、省力化、安全性向上、コスト削減に多大の効果をもたらすものと期待される。
【0048】
(3)本発明に係わる一実施態様の血液透析装置では、除水と透析液の逆濾過補液に係わるポンプを兼用としたため、プライミング・脱血・血液透析治療・血液回収のいずれにおいても除水または補液(逆濾過)ポンプ(P4)は正逆いずれかの方向に稼働しているため、除水または補液(逆濾過)用バイパスラインの流路に実質的に停滞がなく、従って回路内に細菌が増殖する危険がない。
【0049】
(4)本発明の血液自動透析装置は、自動プライミング時血液回路閉塞検出機能、自動プライミング時陰圧解消逆濾過機能、脱血開始時静脈側クランプ作動遅延機能、動脈側脱血不良検出機能、急速補液(逆濾過)機能、自動プライミング行程、補液(逆濾過)行程あるいは返血行程における透析液圧フィードバックによるダイアライザーからの逆濾過圧制御機能、静脈側脱血不良検出機能、透析時静脈圧モニターラインの閉塞検出機能、返血時回路内圧異常検出機能、および静脈チャンバー中に残存する血液の液面レベルの低下機能よりなる群から選ばれた少なくとも一つの機能を有することにより、安全性向上の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動血液透析装置の全体構造を示す概略図である。
【図2】本発明の自動血液透析装置のプライミング行程1を示す概略図である。
【図3】本発明の自動血液透析装置のプライミング行程2を示す概略図である。
【図4】本発明の自動血液透析装置のプライミング行程3を示す概略図である。
【図5】本発明の自動血液透析装置の自動脱血(高除水脱血)行程を示す概略図である。
【図6】本発明の自動血液透析装置の自動脱血(オーバーフロー排出脱血)行程を示す概略図である。
【図7】本発明の自動血液透析装置の血液透析行程を示す概略図である。
【図8】本発明の自動血液透析装置の静脈側からの返血行程を示す概略図である。
【図9】本発明の自動血液透析装置の動脈側からの返血行程を示す概略図である。
【符号の説明】
H.自動血液透析装置
G.制御手段
g.伝達系
AD1.気泡検知器1
C.静脈チャンバー
D.血液透析器(ダイアライザー)
L1.動脈側血液回路
L2.静脈側血液回路
L3.オーバーフローライン
L4.透析液送液ライン
L5.透析液排液ライン
L6.除水または補液(逆濾過)用バイパスライン(第2バイパスライン)
M. 透析液流量調節装置
P1.血液ポンプ
P2.透析液送液ポンプ(第1送液手段)
P3.透析液排液ポンプ(第2送液手段)
P4.除水または補液(逆濾過)ポンプ(第3送液手段)
PV1.バルブ1(開閉手段)
PV2.バルブ2(開閉手段)
PV3.バルブ3(開閉手段)
S4.静脈圧監視ライン
1.動脈側穿刺針と動脈側血液回路(L1)の接続部
2.静脈側血液回路(L2)と静脈側穿刺針の接続点
3.空気貯留チャンバー
4.遮断手段(クランプ)
5.静脈圧モニター分岐部
Claims (18)
- 半透膜を介して血液と透析液とを接触させ血液を浄化する透析器、血液ポンプを有する患者から血液を導出して透析器に流入させる動脈側血液回路と静脈側血液チャンバーを有する透析器から流出した血液を患者に戻す静脈側血液回路で構成させる血液循環系、透析器に透析液を供給する透析液供給ライン(以下第1送液手段とも言う)と透析器から流出した透析液を排液する透析液排液ライン(以下第2送液手段とも言う)と血液透析装置の補液(逆濾過)または除水手段とで構成される給排液系(以下、第3送液手段とも言う)、および前記動脈側の血液ポンプの上流側と下流側を連結した流路を少なくとも備え、前記静脈側血液チャンバーの上部に液を血液回路外にオーバーフローするためのオーバーフローライン、該オーバーフローライン上に流路開閉手段(以下、開閉手段1とも言う)、前記血液チャンバーの下流側に流路開閉手段(開閉手段2とも言う)、および前記血液ポンプの上流側と下流側を連結した流路上に流路開閉手段手段(開閉手段3ともいう)を有することを特徴とする自動血液透析装置。
- 前記開閉手段1〜3の開閉操作、前記第3送液手段による補液(逆濾過)または除水操作、および血液ポンプの回転操作を少なくとも制御することが可能な制御手段を備え、プライミング行程、脱血行程、透析行程、および返血行程を血液ポンプの回転停止または正回転状態で行うことが可能なものであることを特徴とする請求項1に記載の自動血液透析装置。
- プライミング行程が、下記(1)〜(3)の行程である請求項1または2に記載の自動血液透析装置。
(1)前記開閉手段1の開放、前記開閉手段2と3を閉止、前記第3送液手段による補液(逆濾過)、および血液ポンプの回転停止を行うように制御することによって血液ポンプの停止状態で血液透析装置側から静脈側血液チャンバーまでの流路をプライミングし、前記オーバーフローラインからプライミング液を装置外に排出する行程。
(2)前記開閉手段1〜3の全てを開放、前記第3送液手段による補液(逆濾過)、および血液ポンプの正回転を行うように制御することによって血液ポンプの正回転状態で血液回路の流路をプライミングし、前記オーバーフローラインからプライミング液を装置外に排出する行程。
(3)前記開閉手段1と3の閉止、開閉手段2の開放、前記第3送液手段による補液(逆濾過)、および血液ポンプの正回転を行うように制御することによって血液ポンプの正回転状態で血液回路の流路内を循環状態でプライミングする行程。 - 前記開閉手段1と3の閉止、開閉手段2の開放、前記第3送液手段による血液透析装置の徐水、および血液ポンプの正回転を行うように制御することによって血液ポンプの正回転状態で動脈側および静脈側から脱血を行うことが可能なものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の記載の自動血液透析装置。
- 前記開閉手段2と3の閉止、開閉手段1の開放、前記第3送液手段の停止、および血液ポンプの正回転を行うように制御することによって動脈側からの脱血が可能なものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の記載の自動血液透析装置。
- 前記開閉手段2の開放、開閉手段1と3の閉止、前記第3送液手段による血液透析装置の補液(逆濾過)、および血液ポンプの正回転を行うように制御することによって血液透析が可能なものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の記載の自動血液透析装置。
- 前記開閉手段2の開放、開閉手段1と3の閉止、前記第3送液手段による血液透析装置の補液(逆濾過)操作、および血液ポンプの停止を行うように制御することによって血液ポンプの回転停止状態で静脈側からの返血が可能なものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の記載の自動血液透析装置。
- 前記開閉手段1と2の閉止、開閉手段3の開放、前記第3送液手段による血液透析装置の補液(逆濾過)操作、および血液ポンプの正回転を行うように制御することによって血液ポンプの正回転状態で動脈側から返血を行うことが可能なものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の自動血液透析装置。
- 自動プライミング時血液回路閉塞検出機能、自動プライミング時陰圧解消逆濾過機能、脱血開始時静脈側クランプ作動遅延機能、動脈側脱血不良検出機能、急速補液(逆濾過)機能、自動プライミング行程、補液(逆濾過)行程あるいは返血行程における透析液圧フィードバックによるダイアライザーからの逆濾過圧制御機能、静脈側脱血不良検出機能、透析時静脈圧モニターラインの閉塞検出機能、返血時回路内圧異常検出機能、および静脈チャンバー中に残存する血液の液面レベルの低下機能よりなる群から選ばれた少なくとも一つの機能を有するものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の自動血液透析装置。
- 自動プライミング行程、補液(逆濾過)行程あるいは返血行程における透析液圧フィードバックによるダイアライザーからの逆濾過圧制御機能が、第3送液手段の透析液の送液によって透析器を介して前記透析液給排液ラインから前記血液回路に透析液を逆濾過する逆濾過速度を、前記透析器の限外濾過性能によって変更するものであることを特徴とする請求項9に記載の血液透析装置。
- 自動プライミング時血液回路閉塞検出機能が、
(1)自動プライミング工程において、自動的に気泡センサーを一定時間有効として血液回路内がプライミング液に置換されているかどうかを確認し、空気が検出(気泡警報発生)された時点で血液回路閉塞と判断する機能、あるいは
(2)自動プライミング中の液圧警報により血液回路閉塞と判断する機能であることを特徴とする請求項9または10に記載の血液透析装置。 - 自動プライミング時陰圧解消逆濾過機能が、自動プライミング中のプライミング液の血液回路循環状態において定期的に少量の逆濾過を行うことによって血液回路内が陰圧傾向になることを防止する機能であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の自動血液透析装置。
- 脱血開始時静脈側クランプ作動遅延機能が、プライミング行程終了後、自動脱血開始前に静脈チャンバー下の静脈側ラインを閉止して血液回路先端部に気泡が混入することを防止して除水脱血を開始し、脱血後の一定期間後に前記静脈側ラインを開くことにより、血液回路内を陰圧にして患者側へ気泡が混入することを防止する機能であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の自動血液透析装置。
- 脱血不良検出機能の動脈側脱血不良検出機能が、脱血又は透析行程において、静脈回路の静脈チャンバーの下流側に設けた回路ラインの閉塞手段により回路ラインを一定時間閉塞し、該閉塞状態で血液ポンプを作動させて静脈圧の変動を検出し、該検出結果に基づいて動脈側脱血不良を検出することが可能な機能であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の自動血液透析装置。
- 脱血不良検出機能の静脈側脱血不良検出機能が、脱血行程において、脱血動作を開始して透析液圧が過度の陰圧状態になったとき、静脈側が脱血不良状態にあると判断して、動脈側からのみの除水脱血動作に自動移行するように制御する機能であることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の自動血液透析装置。
- 透析時静脈圧モニターラインの閉塞検出機能が、静脈圧モニターラインにより血液透析処理時の静脈圧を監視し、所定時間に静脈圧が所定の範囲で変動しない場合には警報を発する機能であることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の自動血液透析装置。
- 返血時回路内圧異常検出機能は、返血行程において返血を開始後、圧計測手段により透析液ラインの透析液圧と静脈回路の静脈圧を計測し、静脈回路の静脈圧が安定状態から上昇傾向になった場合、または警報絶対値を超えた場合に静脈側回路の閉塞が生じたと判断する機能であることを特徴とする請求項9〜16のいずれかに記載の自動血液透析装置。
- 血液透析開始時における患者から血液循環系への脱血行程、脱血行程から血液透析行程へ移行させる開始機構、血液透析行程、および血液透析終了時に血液循環系から患者への返血を行う返血行程の各行程または機構を自動的に連続して行うことが可能である請求項1〜17のいずれかに記載の血液透析装置。
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