JP2004014601A - 環状コアの熱処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱処理時の同一環状コア内での温度ばらつきをなくして正確な温度制御を行うことにより、確実に磁気特性を向上することが可能な環状コアの熱処理方法を提供する。
【解決手段】アモルファス合金からなる環状コアの熱処理方法であって、環状コアに金属材料からなる伝熱部材を接触させて加熱する環状コアの熱処理方法である。伝熱部材は熱処理温度での熱伝導率が15(W/m・K)以上であることが好ましい。また、伝熱部材は断面が環状コアの内周部断面と略同寸法の柱状部材を具備し、該柱状部材を環状コアの内周部に装入することが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】アモルファス合金からなる環状コアの熱処理方法であって、環状コアに金属材料からなる伝熱部材を接触させて加熱する環状コアの熱処理方法である。伝熱部材は熱処理温度での熱伝導率が15(W/m・K)以上であることが好ましい。また、伝熱部材は断面が環状コアの内周部断面と略同寸法の柱状部材を具備し、該柱状部材を環状コアの内周部に装入することが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気機器等に用いられるアモルファス合金またはナノ結晶合金を用いる環状コアの熱処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、コイル・トランス等に用いる磁心として、高飽和磁束密度、高透磁率、低損失等の理由からアモルファス合金からなる環状コアが用いられている。これらに用いられるアモルファス合金としては、例えばCo基アモルファス合金やFe基アモルファス合金等が挙げられる。これらのアモルファス合金からなる環状コアでは、アモルファス合金を環状コアの形状に加工した後、所望の磁気特性を得るためにアモルファス合金の結晶化温度以下の温度で熱処理が行われることが多い。
【0003】
さらに、熱処理によりナノ結晶を発現可能なアモルファス合金も環状コアとして用いられている。ナノ結晶を発現可能な合金としては、例えばFe−Si−Bを基本成分とする合金にNb、Cu等を複合添加したFe基アモルファス合金等があり、これは特開平1−79342号公報等に開示されている。このようなナノ結晶を発現可能なアモルファス合金では、環状コアの形状に加工した後、結晶化温度以上での熱処理を行いアモルファスの少なくとも一部をナノ結晶化する。これにより高飽和磁束密度、高透磁率、低損失等の磁気特性に非常に優れた環状コアを得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようにアモルファス合金またはナノ結晶合金を用いる環状コアでは熱処理により磁気特性を向上することが出来るが、熱処理後の環状コアの磁気特性は、熱処理時の保持温度の管理のみならず、昇温または降温速度にも依存し、この熱処理の際にコアの温度管理が非常に重要となる。
これを踏まえて本発明者は大型の熱処理炉を用い、炉内温度を±5℃の範囲に厳密に管理しつつ量産レベルの環状コアの熱処理を行った。しかしながら、厳密な温度管理を行ったにも関わらず、同一バッチの環状コアにおいて磁気特性がばらつくという問題を生じた。
【0005】
この同一バッチの環状コアにおける磁気特性のばらつき原因を検討するため、熱処理炉内での個々の環状コアの表面温度についての詳細な調査を行った。その結果、熱処理後に優れた磁気特性となる環状コアでは、熱処理中の環状コアの表面温度が均一であるのに対し、磁気特性が劣る環状コアでは、個々の環状コアの表面温度が均一でないことが判明した。換言すると、個々の環状コアにおいて、環状コアの表面温度が測定個所により異なるものは、その後の磁気特性が劣ることが判明した。
【0006】
本発明の目的は、熱処理時の同一環状コア内での温度ばらつきをなくして正確な温度制御を行うことにより、確実に磁気特性を向上することが可能な環状コアの熱処理方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、同一環状コア表面の温度差を小さく保つことが可能な熱処理方法を検討した。その結果、熱伝導性に優れた部材を環状コアに接触させて配することにより、環状コア表面の伝熱特性が向上して環状コア表面の温度差が小さくなり、環状コアの磁気特性を向上できることを見出し本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、アモルファス合金からなる環状コアの熱処理方法であって、環状コアに金属材料からなる伝熱部材を実質的に接触させて加熱する環状コアの熱処理方法である。
伝熱部材は熱処理温度での熱伝導率が15(W/m・K)以上であることが好ましい。
【0009】
また伝熱部材は断面が環状コアの内周部断面と略同寸法の柱状部材を具備し、該柱状部材を環状コアの内周部に装入することが好ましい。
また、伝熱部材は板部材を具備し、該板部材を環状コアの軸に垂直な二つの面の少なくとも一方に接触させることが好ましい。
また、伝熱部材として板部材を用いる場合には、板部材は環状コアの外周寸法より大きいことを特徴とすることが好ましい。
さらに、加熱によりアモルファス合金をナノ結晶化等の結晶化させる場合に適用することが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
上述したように、本発明の重要な特徴は、環状コアに金属材料からなる伝熱部材を接触させて加熱する構成を採用したことにある。
一般に熱処理炉を用いて熱処理を行う場合、被熱処理体は熱処理炉の内面を構成する耐熱材であるセラミックや、煉瓦、または熱処理炉内に導入されているガスと接触している場合が多い。本発明ではこれらのセラミック等に替えて金属材料からなる伝熱部材を環状コアに接触させる。金属材料はセラミック等と比べて熱伝導性が高いため、接触部分での温度差を小さくして表面温度を均一に保つことが可能となる。
例えば、熱処理炉に用いられている発熱体に環状コアの一部分を近接した状態で環状コアが配置された場合であっても、本発明の金属材料からなる伝熱部材を接触させて配することで、環状コア表面での温度差を小さくすることが出来る。これは、熱伝導性の高い伝熱部材全体の温度が平均的に上昇し、伝熱部材が接触している部分の環状コアでは一部分のみが加熱されることを抑制できるからである。
【0011】
本発明においては温度差を確実に小さくする観点から、伝熱部材の熱処理温度での熱伝導率は15(W/m・K)以上であることが好ましい。また、伝熱部材として用いる金属材料は、熱処理温度においてコアを積層しても変形しない程度の材料強度、および耐食性が必要である。よって、これらの観点から伝熱部材にはSUS316等のオーステナイト系ステンレスを用いることが好ましい。
【0012】
本発明では、伝熱部材は断面が環状コアの内周部断面と略同寸法の柱状部材を具備し、該柱状部材を環状コアの内周部に装入することが好ましい。
断面が環状コアの内周部断面と略同寸法の柱状部材を用い、これを環状コアの内周部に接触させることで、環状コアの軸方向の温度差を低減することが可能となる。加えて、内周部で接触している為、熱処理中に生じうる環状形状の型崩れを抑制する効果もある。
【0013】
また、伝熱部材は板部材を具備し、該板部材を環状コアの軸に垂直な二つの面の少なくとも一方に接触させることが好ましい。
板部材を環状コアの軸に垂直な二つの面の少なくとも一方に接触させることにより、環状コアの軸に垂直な面での温度差を低減することができる。加えて熱処理中に生じうる環状コアの軸方向の型崩れを抑制する効果もある。この軸方向の型崩れ抑制の効果は、環状コアがアモルファス合金の薄帯を巻いて環状に形成した巻磁心である場合に特に有効である。
【0014】
上述の柱状部材と板部材とを併せて具備する伝熱部材を用いて熱処理することで、環状コアの縦・横両方向での表面温度差を低減することが可能となり、環状コア全体での温度差を低減することが可能となり特に好ましい。なお、板部材は環状コアの外周寸法より大きいことで上面全体または下面全体への熱伝導を向上することができるので好ましい。
【0015】
具体的には例えば図1(a)、(c)に一例を示す治具を適用することにより本発明の熱処理を行うことが出来る。
図1(c)に示す柱状部材1および板部材2からなる治具上に、図1(b)に一例を示す環状コア3を、環状コア3の内周部を柱状部材1に貫通させた状態で装入する。その上に、さらに図1(a)の板部材2を接触させる。このように環状コアを治具に装着した状態の一例を図2に示す。これにより環状コアの内周部、および環状コアの軸に垂直な二つの面が伝熱部材に接触させることができる。なお、この図1、2に示す実施形態は、本発明の最適な実施形態である。
【0016】
以上に述べた本発明は、熱処理によりナノ結晶を発現可能なアモルファス合金をナノ結晶化の為に熱処理する場合、すなわち加熱によりアモルファス合金を結晶化する場合には特に有効な方法である。
アモルファス合金の熱処理では温度管理が非常に重要であることは初めに述べた通りであるが、アモルファス合金をナノ結晶化する場合には温度管理がナノ結晶化を行わない場合と比べて一層困難となる。これはナノ結晶化を生じる際にアモルファス合金自体が発熱し、熱処理炉内部の温度以上にコア温度が上昇する場合があるためである。このような理由から、ナノ結晶化を行う場合には正確な温度制御を行う為の対策がより重要となる。
【0017】
本発明の熱処理方法によれば、既に述べた個々の環状コアにおける温度差を小さくすることに加え、環状コア表面での放熱特性も向上することができる。環状コア表面での放熱特性の向上により、アモルファス合金のナノ結晶化に起因する発熱による急激な温度上昇を抑え、所定の熱処理温度での熱処理が可能となる。この結果、熱処理後の環状コアの磁気特性を確実に向上し、ばらつきを低減することが出来る。
【0018】
【実施例】
熱処理によりナノ結晶組織を発現可能な原子%で1Cu−2.5Nb−13.5Si−7B、残部実質的にFeからなる組成で、厚さが19μmのアモルファス合金薄帯を環状に巻回し、外径140mm、内径102mm、高さ30mmの環状コアを作製した。次に熱処理炉を用いて、環状コアを570℃で1h、ナノ結晶化の熱処理に供した。熱処理炉の温度が570℃に達してから10min後に、図1(b)に示すA〜Dの4ヶ所における環状コアの表面温度を熱電対により測定し、温度のバラツキの評価を行った。
この際、環状コアはSUS316製の図1(a)、(c)に示す形状の治具を図2に示すように環状コアの軸に垂直な二つの面、および内周部に金属材料を接触させた状態で熱処理に供した。比較のため治具を用いずに熱処理を行った環状コアについても同様に表面温度のバラツキの評価を行った。熱処理後、これらの環状コアについて、Hm=8A/mでの直流磁気特性の比較を行った。
【0019】
表面温度の測定結果を表1に示す。本発明の熱処理方法を適用したNo.1では、570℃の炉内温度に対し、環状コア表面の温度の差を2℃以内に抑えられている。これに対して、従来の熱処理方法を適用したNo.2では、炉内温度に対して、環状コア表面の温度が最も高い部分で8℃高く、各部分での温度バラツキも大きいものであった。
【0020】
【表1】
【0021】
表2に熱処理後の環状コアの直流磁気特性、図3(a)にNo.1のB−Hカーブ、図3(b)にNo.2のB−Hカーブを示す。本発明を適用したNo.1では残留磁束密度、および保磁力において比較例と比べて優れた特性となった。また、図3(a)、(b)を比較するとNo.1はNo.2と比べてループの面積が小さく、本発明の熱処理方法によってコア損失の小さい環状コアが得られた。
【0022】
【表2】
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、熱処理時の同一環状コア内での温度ばらつきをなくして正確な温度制御を行うことにより、確実に磁気特性を向上することが可能となり、アモルファス合金またはナノ結晶合金を用いる環状コアの工業的な量産にとって欠くことのできない技術である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱処理方法に用いる治具及び本発明を適用する環状コアの一例を示す模式図である。
【図2】本発明の熱処理方法に用いる治具と環状コアとを組み合わせた状態の一例を示す模式図である。
【図3】熱処理後の環状コアのB−Hカーブである。
【符号の説明】
1.柱状部材、2.板部材、3.環状コア、A.外周部測定位置、B.内周部測定位置、C.コア上面測定位置、D.コア下面測定位置
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気機器等に用いられるアモルファス合金またはナノ結晶合金を用いる環状コアの熱処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、コイル・トランス等に用いる磁心として、高飽和磁束密度、高透磁率、低損失等の理由からアモルファス合金からなる環状コアが用いられている。これらに用いられるアモルファス合金としては、例えばCo基アモルファス合金やFe基アモルファス合金等が挙げられる。これらのアモルファス合金からなる環状コアでは、アモルファス合金を環状コアの形状に加工した後、所望の磁気特性を得るためにアモルファス合金の結晶化温度以下の温度で熱処理が行われることが多い。
【0003】
さらに、熱処理によりナノ結晶を発現可能なアモルファス合金も環状コアとして用いられている。ナノ結晶を発現可能な合金としては、例えばFe−Si−Bを基本成分とする合金にNb、Cu等を複合添加したFe基アモルファス合金等があり、これは特開平1−79342号公報等に開示されている。このようなナノ結晶を発現可能なアモルファス合金では、環状コアの形状に加工した後、結晶化温度以上での熱処理を行いアモルファスの少なくとも一部をナノ結晶化する。これにより高飽和磁束密度、高透磁率、低損失等の磁気特性に非常に優れた環状コアを得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようにアモルファス合金またはナノ結晶合金を用いる環状コアでは熱処理により磁気特性を向上することが出来るが、熱処理後の環状コアの磁気特性は、熱処理時の保持温度の管理のみならず、昇温または降温速度にも依存し、この熱処理の際にコアの温度管理が非常に重要となる。
これを踏まえて本発明者は大型の熱処理炉を用い、炉内温度を±5℃の範囲に厳密に管理しつつ量産レベルの環状コアの熱処理を行った。しかしながら、厳密な温度管理を行ったにも関わらず、同一バッチの環状コアにおいて磁気特性がばらつくという問題を生じた。
【0005】
この同一バッチの環状コアにおける磁気特性のばらつき原因を検討するため、熱処理炉内での個々の環状コアの表面温度についての詳細な調査を行った。その結果、熱処理後に優れた磁気特性となる環状コアでは、熱処理中の環状コアの表面温度が均一であるのに対し、磁気特性が劣る環状コアでは、個々の環状コアの表面温度が均一でないことが判明した。換言すると、個々の環状コアにおいて、環状コアの表面温度が測定個所により異なるものは、その後の磁気特性が劣ることが判明した。
【0006】
本発明の目的は、熱処理時の同一環状コア内での温度ばらつきをなくして正確な温度制御を行うことにより、確実に磁気特性を向上することが可能な環状コアの熱処理方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、同一環状コア表面の温度差を小さく保つことが可能な熱処理方法を検討した。その結果、熱伝導性に優れた部材を環状コアに接触させて配することにより、環状コア表面の伝熱特性が向上して環状コア表面の温度差が小さくなり、環状コアの磁気特性を向上できることを見出し本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、アモルファス合金からなる環状コアの熱処理方法であって、環状コアに金属材料からなる伝熱部材を実質的に接触させて加熱する環状コアの熱処理方法である。
伝熱部材は熱処理温度での熱伝導率が15(W/m・K)以上であることが好ましい。
【0009】
また伝熱部材は断面が環状コアの内周部断面と略同寸法の柱状部材を具備し、該柱状部材を環状コアの内周部に装入することが好ましい。
また、伝熱部材は板部材を具備し、該板部材を環状コアの軸に垂直な二つの面の少なくとも一方に接触させることが好ましい。
また、伝熱部材として板部材を用いる場合には、板部材は環状コアの外周寸法より大きいことを特徴とすることが好ましい。
さらに、加熱によりアモルファス合金をナノ結晶化等の結晶化させる場合に適用することが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
上述したように、本発明の重要な特徴は、環状コアに金属材料からなる伝熱部材を接触させて加熱する構成を採用したことにある。
一般に熱処理炉を用いて熱処理を行う場合、被熱処理体は熱処理炉の内面を構成する耐熱材であるセラミックや、煉瓦、または熱処理炉内に導入されているガスと接触している場合が多い。本発明ではこれらのセラミック等に替えて金属材料からなる伝熱部材を環状コアに接触させる。金属材料はセラミック等と比べて熱伝導性が高いため、接触部分での温度差を小さくして表面温度を均一に保つことが可能となる。
例えば、熱処理炉に用いられている発熱体に環状コアの一部分を近接した状態で環状コアが配置された場合であっても、本発明の金属材料からなる伝熱部材を接触させて配することで、環状コア表面での温度差を小さくすることが出来る。これは、熱伝導性の高い伝熱部材全体の温度が平均的に上昇し、伝熱部材が接触している部分の環状コアでは一部分のみが加熱されることを抑制できるからである。
【0011】
本発明においては温度差を確実に小さくする観点から、伝熱部材の熱処理温度での熱伝導率は15(W/m・K)以上であることが好ましい。また、伝熱部材として用いる金属材料は、熱処理温度においてコアを積層しても変形しない程度の材料強度、および耐食性が必要である。よって、これらの観点から伝熱部材にはSUS316等のオーステナイト系ステンレスを用いることが好ましい。
【0012】
本発明では、伝熱部材は断面が環状コアの内周部断面と略同寸法の柱状部材を具備し、該柱状部材を環状コアの内周部に装入することが好ましい。
断面が環状コアの内周部断面と略同寸法の柱状部材を用い、これを環状コアの内周部に接触させることで、環状コアの軸方向の温度差を低減することが可能となる。加えて、内周部で接触している為、熱処理中に生じうる環状形状の型崩れを抑制する効果もある。
【0013】
また、伝熱部材は板部材を具備し、該板部材を環状コアの軸に垂直な二つの面の少なくとも一方に接触させることが好ましい。
板部材を環状コアの軸に垂直な二つの面の少なくとも一方に接触させることにより、環状コアの軸に垂直な面での温度差を低減することができる。加えて熱処理中に生じうる環状コアの軸方向の型崩れを抑制する効果もある。この軸方向の型崩れ抑制の効果は、環状コアがアモルファス合金の薄帯を巻いて環状に形成した巻磁心である場合に特に有効である。
【0014】
上述の柱状部材と板部材とを併せて具備する伝熱部材を用いて熱処理することで、環状コアの縦・横両方向での表面温度差を低減することが可能となり、環状コア全体での温度差を低減することが可能となり特に好ましい。なお、板部材は環状コアの外周寸法より大きいことで上面全体または下面全体への熱伝導を向上することができるので好ましい。
【0015】
具体的には例えば図1(a)、(c)に一例を示す治具を適用することにより本発明の熱処理を行うことが出来る。
図1(c)に示す柱状部材1および板部材2からなる治具上に、図1(b)に一例を示す環状コア3を、環状コア3の内周部を柱状部材1に貫通させた状態で装入する。その上に、さらに図1(a)の板部材2を接触させる。このように環状コアを治具に装着した状態の一例を図2に示す。これにより環状コアの内周部、および環状コアの軸に垂直な二つの面が伝熱部材に接触させることができる。なお、この図1、2に示す実施形態は、本発明の最適な実施形態である。
【0016】
以上に述べた本発明は、熱処理によりナノ結晶を発現可能なアモルファス合金をナノ結晶化の為に熱処理する場合、すなわち加熱によりアモルファス合金を結晶化する場合には特に有効な方法である。
アモルファス合金の熱処理では温度管理が非常に重要であることは初めに述べた通りであるが、アモルファス合金をナノ結晶化する場合には温度管理がナノ結晶化を行わない場合と比べて一層困難となる。これはナノ結晶化を生じる際にアモルファス合金自体が発熱し、熱処理炉内部の温度以上にコア温度が上昇する場合があるためである。このような理由から、ナノ結晶化を行う場合には正確な温度制御を行う為の対策がより重要となる。
【0017】
本発明の熱処理方法によれば、既に述べた個々の環状コアにおける温度差を小さくすることに加え、環状コア表面での放熱特性も向上することができる。環状コア表面での放熱特性の向上により、アモルファス合金のナノ結晶化に起因する発熱による急激な温度上昇を抑え、所定の熱処理温度での熱処理が可能となる。この結果、熱処理後の環状コアの磁気特性を確実に向上し、ばらつきを低減することが出来る。
【0018】
【実施例】
熱処理によりナノ結晶組織を発現可能な原子%で1Cu−2.5Nb−13.5Si−7B、残部実質的にFeからなる組成で、厚さが19μmのアモルファス合金薄帯を環状に巻回し、外径140mm、内径102mm、高さ30mmの環状コアを作製した。次に熱処理炉を用いて、環状コアを570℃で1h、ナノ結晶化の熱処理に供した。熱処理炉の温度が570℃に達してから10min後に、図1(b)に示すA〜Dの4ヶ所における環状コアの表面温度を熱電対により測定し、温度のバラツキの評価を行った。
この際、環状コアはSUS316製の図1(a)、(c)に示す形状の治具を図2に示すように環状コアの軸に垂直な二つの面、および内周部に金属材料を接触させた状態で熱処理に供した。比較のため治具を用いずに熱処理を行った環状コアについても同様に表面温度のバラツキの評価を行った。熱処理後、これらの環状コアについて、Hm=8A/mでの直流磁気特性の比較を行った。
【0019】
表面温度の測定結果を表1に示す。本発明の熱処理方法を適用したNo.1では、570℃の炉内温度に対し、環状コア表面の温度の差を2℃以内に抑えられている。これに対して、従来の熱処理方法を適用したNo.2では、炉内温度に対して、環状コア表面の温度が最も高い部分で8℃高く、各部分での温度バラツキも大きいものであった。
【0020】
【表1】
【0021】
表2に熱処理後の環状コアの直流磁気特性、図3(a)にNo.1のB−Hカーブ、図3(b)にNo.2のB−Hカーブを示す。本発明を適用したNo.1では残留磁束密度、および保磁力において比較例と比べて優れた特性となった。また、図3(a)、(b)を比較するとNo.1はNo.2と比べてループの面積が小さく、本発明の熱処理方法によってコア損失の小さい環状コアが得られた。
【0022】
【表2】
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、熱処理時の同一環状コア内での温度ばらつきをなくして正確な温度制御を行うことにより、確実に磁気特性を向上することが可能となり、アモルファス合金またはナノ結晶合金を用いる環状コアの工業的な量産にとって欠くことのできない技術である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱処理方法に用いる治具及び本発明を適用する環状コアの一例を示す模式図である。
【図2】本発明の熱処理方法に用いる治具と環状コアとを組み合わせた状態の一例を示す模式図である。
【図3】熱処理後の環状コアのB−Hカーブである。
【符号の説明】
1.柱状部材、2.板部材、3.環状コア、A.外周部測定位置、B.内周部測定位置、C.コア上面測定位置、D.コア下面測定位置
Claims (6)
- アモルファス合金からなる環状コアの熱処理方法であって、環状コアに金属材料からなる伝熱部材を実質的に接触させて加熱することを特徴とする環状コアの熱処理方法。
- 伝熱部材は熱処理温度での熱伝導率が15(W/m・K)以上であることを特徴とする請求項1に記載の環状コアの製造方法。
- 伝熱部材は断面が環状コアの内周部断面と略同寸法の柱状部材を具備し、該柱状部材を環状コアの内周部に装入することを特徴とする請求項1または2に記載の環状コアの熱処理方法。
- 伝熱部材は板部材を具備し、該板部材を環状コアの軸に垂直な二つの面の少なくとも一方に接触させることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の環状コアの熱処理方法。
- 板部材は環状コアの外周寸法より大きいことを特徴とする請求項4に記載の環状コアの熱処理方法。
- 加熱によりアモルファス合金を結晶化することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の環状コアの熱処理方法。
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---|---|---|---|
JP2002162620A JP2004014601A (ja) | 2002-06-04 | 2002-06-04 | 環状コアの熱処理方法 |
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JP2002162620A JP2004014601A (ja) | 2002-06-04 | 2002-06-04 | 環状コアの熱処理方法 |
Publications (1)
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Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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2002
- 2002-06-04 JP JP2002162620A patent/JP2004014601A/ja active Pending
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