JP2004014427A - アルカリ蓄電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】カドミウム負極の表面に充分な金属カドミウムを形成して、酸素ガス吸収性能が向上したアルカリ蓄電池を提供する。
【解決手段】本発明のアルカリ蓄電池は、カドミウム負極の表面に炭素粉末と金属カドミウム粉末の混合粉末からなる導電層が形成されている。このような導電層が形成されていると、カドミウム負極表面の導電性が向上するようになるので、カドミウム負極表面に予め形成された金属カドミウムに加えて、充電により新たな金属カドミウムが生成されるようになる。これにより、酸素ガスの吸収のための充分な金属カドミウムがカドミウム負極表面に形成されるようになって、酸素ガスの吸収速度が、酸素ガスの発生速度に充分に追いつくことが可能となり、電池内に酸素ガスが蓄積されるようなことがなくなる。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明のアルカリ蓄電池は、カドミウム負極の表面に炭素粉末と金属カドミウム粉末の混合粉末からなる導電層が形成されている。このような導電層が形成されていると、カドミウム負極表面の導電性が向上するようになるので、カドミウム負極表面に予め形成された金属カドミウムに加えて、充電により新たな金属カドミウムが生成されるようになる。これにより、酸素ガスの吸収のための充分な金属カドミウムがカドミウム負極表面に形成されるようになって、酸素ガスの吸収速度が、酸素ガスの発生速度に充分に追いつくことが可能となり、電池内に酸素ガスが蓄積されるようなことがなくなる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ蓄電池に係り、特に、電極基板にカドミウム活物質が充填されたカドミウム負極を備えたアルカリ蓄電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ニッケル−カドミウム蓄電池に用いられるカドミウム負極は、ニッケル粉末を焼結して形成したニッケル焼結基板に、酸化カドミウムあるいは水酸化カドミウムよりなるカドミウム活物質を充填して作製された焼結式カドミウム負極がよく用いられていた。ところが、近年になって、酸化カドミウムあるいは水酸化カドミウムよりなるカドミウム活物質と合成繊維、糊料等とを混練して調製した活物質ペーストをパンチングメタル等の導電性芯体(電極基板)に塗着して作製された非焼結式カドミウム負極がよく用いられるようになった。これは、非焼結式カドミウム負極の方が工程が比較的簡単で、製造コストも安いためである。
【0003】
一般に、ニッケル−カドミウム蓄電池では、負極容量を正極容量よりも大きくして、充電末期に正極で発生した酸素ガスを負極に吸収させる方式(1/2O2+Cd+H2O→Cd(OH)2)が採用されている。ところが、従来の非焼結式カドミウム負極では導電性に劣ることに起因して、導電性芯体より遠い負極表面には十分に充電電流が供給することができないために、負極表面近傍では金属カドミウムが十分に生成することができず、金属カドミウムが導電性芯体の近傍に集中して生成して、負極表面には金属カドミウムが生成しがたいという問題があった。したがって、過充電時に正極から発生した酸素ガスは負極の表面層を通過して負極内部に到達した段階で始めて吸収されることとなるため、酸素ガスの吸収が円滑になされず、電池内に蓄積されてガス圧の上昇を引き起こすという問題があった。
【0004】
そこで、表面に特定の比表面積を有する炭素粉末を含有した導電層を備えた非焼結式カドミウム負極が、特開平9−147845号公報にて提案されるようになった。この特開平9−147845号公報にて提案された非焼結式カドミウム負極においては、電極表面に形成された導電層を介して電極表層の活物質に対しても充電電流が供給されるので、電極表層においても金属カドミウムの生成が行われる。しかも、導電層中の炭素粉末が、酸素ガスに対して触媒的に作用するので、酸素ガスの水酸イオン化(1/2O2+H2O+2e→2OH−)が円滑に進行し、水酸イオンは酸素ガスに比べ導電層やカドミウム層を透過し易いので、電極表層の金属カドミウムと容易に反応(2OH−+Cd→Cd(OH)2+2e)するようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平9−147845号公報にて提案された技術においても全く問題がないわけではない。本発明者等が特開平9−147845号公報にて提案された技術を詳細に検討したところ、炭素粉末を含有した導電層を備えた非焼結式カドミウム負極においては、非焼結式カドミウム負極の活物質層の表面に生成される金属カドミウムの生成量が不十分であることが明らかになった。
【0006】
このため、このような非焼結式カドミウム負極を備えた電池に急速充電を行うと、非焼結式カドミウム負極での酸素ガスの吸収速度が、酸素ガスの発生速度に追いつかないため、電池内に酸素ガスが蓄積されるようになって、やがては安全弁が作動するようになるという問題を生じた。この場合、安全弁が作動すると、電解液が電池外に放出されるという事態が生じて、早期に電池寿命に至るという問題を生じた。
そこで、本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、カドミウム負極の活物質層の表面に充分な金属カドミウムを形成して、酸素ガス吸収性能が向上したアルカリ蓄電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のアルカリ蓄電池は、カドミウム負極の表面に炭素粉末と金属カドミウム粉末の混合粉末からなる導電層が形成されていることを特徴とする。このように、カドミウム負極の表面に炭素粉末と金属カドミウム粉末の混合粉末からなる導電層が形成されていると、炭素粉末を介して金属カドミウム粉末間の接触がなされるようになるので、カドミウム負極表面での導電性が向上するようになる。
【0008】
これにより、このようなカドミウム負極を備えたアルカリ蓄電池を充電すると、カドミウム負極表面に形成された導電層の金属カドミウムに加えて、新たに金属カドミウムが生成されるようになるので、酸素ガスの吸収のための充分な金属カドミウムがカドミウム負極表面の活物質層に形成されるようになる。この結果、このようなカドミウム負極を備えたアルカリ蓄電池を急速充電しても、カドミウム負極での酸素ガスの吸収速度が、酸素ガスの発生速度に充分に追いつくことが可能となるので、電池内に酸素ガスが蓄積されるようなことはなくなる。これにより、安全弁が作動して電解液が電池外に放出されるという事態も生じなくなって、電池寿命が向上する。
【0009】
ここで、金属カドミウムの粒径は炭素粉末の粒径に比較して充分に大きいため、金属カドミウム同士の接触だけでは導電性が向上しない。このため、導電層の導電性を向上させるためには、導電層中に金属カドミウムとともに炭素粉末を含有さる必要がある。そして、導電層中に含有される金属カドミウムの添加量が、カドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.08mg未満であると、酸素ガス吸収性能を充分に発揮することができないが明らかとなったので、金属カドミウムの添加量はカドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.08mg以上にするのが望ましい。
【0010】
また、導電層中の金属カドミウムの含有量が多いほど酸素ガス吸収性能は向上するが、導電層中の金属カドミウムの含有量がカドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.80mgを越えるようになると、導電層中に含有される結着剤で金属カドミウムを保持できなくなる。このため、導電層中の金属カドミウムの含有量はカドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.80mg以下にするのが望ましい。この場合、導電層中の炭素粉末が金属カドミウム間に存在して、導電層の導電性を向上させるためには、比表面積が大きい炭素粉末を選択して用いるのが望ましい。
【0011】
そして、比表面積が50m2/g以上の炭素粉末であると、金属カドミウム間に存在してこれらを良好な導電ネットワークを形成することができるので好ましい。このように比表面積が大きい炭素粉末としては、アセチレンブラックあるいはケッチェンブラックから選択して用いるようにするのが望ましい。また、導電層中に含有される結着剤としては耐アルカリ性に優れたポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)から選択して用いるのが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
ついで、本発明のアルカリ蓄電池の一実施の形態を以下に説明するが、本発明はこの実施の形態に何ら限定されるものでなく、本発明の目的を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
1.導電性スラリーの調製
(1)実施例1
平均粒径が5μmの金属カドミウム粉末1.0質量部と、炭素粉末としての比表面積が50m2/gのアセチレンブラック粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、実施例1の導電性スラリーαを調製した。
【0014】
(2)実施例2
同様に、平均粒径が5μmの金属カドミウム粉末5.0質量部と、炭素粉末としての比表面積が50m2/gのアセチレンブラック粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、実施例2の導電性スラリーβを調製した。
【0015】
(3)実施例3
同様に、平均粒径が5μmの金属カドミウム粉末10.0質量部と、炭素粉末としての比表面積が50m2/gのアセチレンブラック粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、実施例3の導電性スラリーγを調製した。
【0016】
(4)実施例4
同様に、平均粒径が5μmの金属カドミウム粉末12.5質量部と、炭素粉末としての比表面積が50m2/gのアセチレンブラック粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、実施例4の導電性スラリーδを調製した。
【0017】
(5)実施例5
同様に、平均粒径が5μmの金属カドミウム粉末0.5質量部と、炭素粉末としての比表面積が50m2/gのアセチレンブラック粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、実施例5の導電性スラリーεを調製した。
【0018】
(6)比較例1
平均粒径が5μmの金属カドミウム粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、比較例1の導電性スラリーχを調製した。
【0019】
(7)比較例2
炭素粉末としての比表面積が50m2/gのアセチレンブラック粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、比較例2の導電性スラリーψを調製した。
【0020】
(8)比較例3
平均粒径が5μmの金属ニッケル粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、比較例3の導電性スラリーωを調製した。
【0021】
2.カドミウム負極の作製
まず、酸化カドミウム粉末80質量部と、金属カドミウム粉末20質量部とを混合して混合活物質粉末とした。この後、得られた混合活物質粉末に、ナイロン繊維1質量部と、水和防止剤としてのリン酸水素ナトリウム1質量部と、結着剤としての5%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液20質量部(PVAの固形分は1質量部)とを添加・混合して、負極活物質ペーストを調製した。ついで、この負極活物質ペーストを厚さが0.08mmのパンチングメタルよりなる導電性芯体の両面に塗着し、乾燥させた後、所定の寸法に切断して導電層未形成のカドミウム負極を作製した。なお、負極活物質ペーストを導電性芯体に塗着するに際しては、乾燥後の活物質層片面の厚みが0.25mmになるように塗着した。
【0022】
そして、上述のようにして調製された各導電性スラリーα〜ε、χ〜ωを用意した後、これらを得られた導電層未形成のカドミウム負極の表面に、乾燥後の厚みが0.01mmになるように塗布した後、乾燥させて導電層を形成して、カドミウム負極a〜e、x〜zをそれぞれ作製した。
なお、導電性スラリーαを塗布したものを実施例1のカドミウム負極aとしたが、このようにして得られたカドミウム負極aの導電層には、カドミウム負極aの単位表面積(1cm2)当たり、0.08mgの金属カドミウムと0.40mgの炭素と0.40mgのPVPが含有されていた。
【0023】
同様に、導電性スラリーβを塗布したものを実施例2のカドミウム負極bとしたが、このようにして得られたカドミウム負極bの導電層には、カドミウム負極bの単位表面積(1cm2)当たり、0.40mgの金属カドミウムと0.40mgの炭素と0.40mgのPVPが含有されていた。
同様に、導電性スラリーγを塗布したものを実施例3のカドミウム負極cとしたが、このようにして得られたカドミウム負極cの導電層には、カドミウム負極cの単位表面積(1cm2)当たり、0.80mgの金属カドミウムと0.40mgの炭素と0.40mgのPVPが含有されていた。
【0024】
同様に、導電性スラリーδを塗布したものを実施例4のカドミウム負極dとしたが、このようにして得られたカドミウム負極dの導電層には、カドミウム負極dの単位表面積(1cm2)当たり、1.00mgの金属カドミウムと0.40mgの炭素と0.40mgのPVPが含有されていた。
同様に、導電性スラリーεを塗布したものを実施例5のカドミウム負極eとしたが、このようにして得られたカドミウム負極eの導電層には、カドミウム負極dの単位表面積(1cm2)当たり、0.04mgの金属カドミウムと0.40mgの炭素と0.40mgのPVPが含有されていた。
【0025】
また、導電性スラリーχを塗布したものを比較例1のカドミウム負極xとしたが、このようにして得られたカドミウム負極xの導電層には、カドミウム負極xの単位表面積(1cm2)当たり、0.40mgの金属カドミウムと0.40mgのPVPが含有されていた。
また、導電性スラリーψを塗布したものを比較例2のカドミウム負極yとしたが、このようにして得られたカドミウム負極yの導電層には、カドミウム負極yの単位表面積(1cm2)当たり、0.40mgの炭素と0.40mgのPVPが含有されていた。
更に、導電性スラリーωを塗布したものを比較例3のカドミウム負極zとしたが、このようにして得られたカドミウム負極zの導電層には、カドミウム負極zの単位表面積(1cm2)当たり、0.40mgの金属ニッケルと0.40mgのPVPが含有されていた。
【0026】
3.カドミウム負極の水素ガス発生深度の測定
ついで、上述のようにして作製した各カドミウム負極a〜eおよびx〜zを用いて、これらをそれぞれ公知のニッケル正極に対向させて、これらを水酸化カリウム(KOH)からなる電解液(液温が0℃)中に浸漬した。ついで、これらの正・負極間に0.5ItmAの充電電流(1Itは負極板容量を1時間で充電する電流値)を供給し、水素ガスの発生が認められるまでの充電容量(mAh)を求めた。ついで、下記の(1)式に基づいて水素ガス発生深度を算出すると、下記の表1に示すような結果が得られた。
水素ガス発生深度(%)={水素ガスの発生が認められるまでの充電電気量(mAh)/カドミウム負極の実測の放電容量(mAh)}×100(%)・・・(1)
【0027】
【表1】
【0028】
ここで、水素ガスの発生は、充電電流が充電に使用されずに、水の電気分解に使用されたために生じるものである。このため、水素ガスの発生までの充電電気量が多いほど、即ち、水素ガス発生深度が大きいほど、水の電気分解に使用される充電電気量が減少して充電反応に使用される充電電気量が増加することとなる。したがって、水素ガス発生深度が大きいほど充電受け入れ性に優れていることを示している。
【0029】
そして、表1の結果から明らかなように、導電層中に結着剤(PVP)以外に、金属カドミウム粉末のみを添加したカドミウム負極x、炭素粉末のみを添加したカドミウム負極y、金属ニッケル粉末のみを添加したカドミウム負極zにおいては、水素ガス発生深度が低下していることが分かる。これは、導電層中に結着剤(PVP)以外に金属カドミウム粉末のみが添加されたカドミウム負極xにおいては、金属カドミウム粉末の粒径が大きいことに起因して接触抵抗が大きいために、充電により生成される金属カドミウム量が少なく、これにより水素ガス発生深度が低下したと考えられる。
【0030】
また、導電層中に結着剤(PVP)以外に炭素粉末のみが添加されたカドミウム負極yにおいては、予め導電層中に金属カドミウム量が存在しなく、かつ充電により生成される金属カドミウム量も少ないために水素ガス発生深度が低下したと考えられる。さらに、導電層中に結着剤(PVP)以外に金属ニッケル粉末のみが添加されたカドミウム負極zにおいては、金属ニッケルは水素ガス発生電位を低下させるように作用するために水素ガス発生深度が低下したと考えられる。
【0031】
これに対して、カドミウム負極に形成された導電層中に結着剤(PVP)以外に、金属カドミウム粉末と炭素粉末が添加されているカドミウム負極a〜dにおいては、水素ガス発生深度が大きいことが分かる。これは、粒径が大きい金属カドミウム粉末と粒径が小さい炭素粉末とが混在していると、金属カドミウム粉末同士が炭素粉末を介して充分に接触するようになるために導電性が向上する。そして、このようなカドミウム負極を充電すると、導電層中に予め添加された金属カドミウムに加えて、新たに金属カドミウムが生成されるようになるので、酸素ガスの吸収のための充分な金属カドミウムがカドミウム負極表面に形成されるようになったためと考えられる。
【0032】
4.ニッケル−カドミウム蓄電池の作製
ついで、上述のように作製した各カドミウム負極a〜eおよびx〜zを用いて、これらのカドミウム負極a〜eおよびx〜zと、公知のニッケル正極とをそれぞれポリオレフィン製のセパレータを介して対向するように渦巻状に卷回して電極群とし、これらの電極群をそれぞれ外装缶内に挿入した。この後、所定の濃度の水酸化カリウム水溶液(アルカリ電解液)を外装缶内にそれぞれ注液した後、外装缶の開口部を封口蓋で密閉して、公称容量が1000mAhのニッケル−カドミウム蓄電池A〜EおよびX〜Zをそれぞれ作製した。
【0033】
なお、カドミウム負極aを用いものを電池Aとし、カドミウム負極bを用いものを電池Bとし、カドミウム負極cを用いものを電池Cとし、カドミウム負極dを用いものを電池Dとし、カドミウム負極eを用いものを電池Eとした。また、カドミウム負極xを用いものを電池Xとし、カドミウム負極yを用いものを電池Yとし、カドミウム負極zを用いものを電池Zとした。
【0034】
ついで、上述のように作製した各ニッケル−カドミウム蓄電池A〜EおよびX〜Zをそれぞれ用いて、これらの各ニッケル−カドミウム蓄電池A〜EおよびX〜Zを常温(約25℃)下で1500mA(1.5ItmA)の充電電流で電池容量の200%(2000mAh)まで充電を行った。この後、充電末期の電池内部のガスの発生圧力を測定すると、下記の表2に示すような結果が得られた。なお、電池内部のガスの発生圧力の測定において、
【0035】
【表2】
【0036】
上記表2の結果から明らかなように、導電層中に結着剤(PVP)以外に、金属カドミウム粉末のみを添加したカドミウム負極xを備えた電池X、炭素粉末のみを添加したカドミウム負極yを備えた電池Y、金属ニッケル粉末のみを添加したカドミウム負極zを備えた電池Zにおいては、電池内部のガスの発生圧力(MPa)が大きくなっていることが分かる。これは、導電層中に結着剤(PVP)以外に金属カドミウム粉末のみが添加されたカドミウム負極xにおいては、充電により生成される金属カドミウム量が少ないために、水素ガス発生深度が低下して電池内部の発生圧力が増加したと考えられる。
【0037】
また、導電層中に結着剤(PVP)以外に炭素粉末のみが添加されたカドミウム負極yにおいては、予め導電層中に金属カドミウム量が存在しなく、かつ充電により生成される金属カドミウム量も少ないために水素ガス発生深度が低下して電池内部の発生圧力が増加したと考えられる。さらに、導電層中に結着剤(PVP)以外に金属ニッケル粉末のみが添加されたカドミウム負極zにおいては、金属ニッケルが水素ガス発生電位を低下させるように作用するために、水素ガス発生深度が低下して電池内部の発生圧力が増加したと考えられる。
【0038】
これに対して、カドミウム負極に形成された導電層中に結着剤(PVP)以外に、金属カドミウム粉末と炭素粉末(アセチレンブラック)が添加されているカドミウム負極a〜eを備えた電池A〜Eにおいては、電池内部の発生圧力が小さいことが分かる。これは、カドミウム負極a〜eにおいては、金属カドミウム粉末同士が炭素粉末を介して充分に接触するために導電性が向上するため、充電により、導電層に予め添加された金属カドミウムに加えて、新たに金属カドミウムが生成されるようになる。この結果、このようなカドミウム負極を備えたアルカリ蓄電池を急速充電しても、カドミウム負極での酸素ガスの吸収速度が、酸素ガスの発生速度に充分に追いつくことが可能となるので、電池内部の発生圧力が低下した考えられる。
【0039】
ここで、導電層の導電性を向上させるためには、導電層中に粒径が大きい金属カドミウムとともに粒径が小さい炭素粉末を含有させる必要がある。そして、表1及び表2に示されるように、カドミウム負極eのように、導電層中に含有される金属カドミウムの添加量が、カドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.08mg未満であると、酸素ガス吸収性能を充分に発揮することができなく、電池内部の発生圧力が高くなるので、金属カドミウムの添加量はカドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.08mg以上にするのが望ましいということができる。
【0040】
また、導電層中の金属カドミウムの含有量が多いほど酸素ガス吸収性能は向上するが、導電層中の金属カドミウムの含有量がカドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.80mgを越えるようになると、導電層中に含有される結着剤(PVP)で金属カドミウムを保持できなくなる。このため、導電層中の金属カドミウムの含有量はカドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.80mg以下にするのが望ましい。
【0041】
上述したように、本発明においては、カドミウム負極の表面に炭素粉末と金属カドミウム粉末の混合粉末からなる導電層が形成されているので、カドミウム負極表面の導電性が向上するようになる。これにより、カドミウム負極表面に予め形成された金属カドミウムに加えて、充電により新たに金属カドミウムが生成されるようになるので、酸素ガスの吸収のための充分な金属カドミウムがカドミウム負極表面に形成されるようになる。この結果、このようなカドミウム負極を備えたアルカリ蓄電池を急速充電しても、カドミウム負極での酸素ガスの吸収速度が、酸素ガスの発生速度に充分に追いつくことが可能となる。これにより、電池内に酸素ガスが蓄積されるようなこともなくなるので、安全弁が作動して電解液が電池外に放出されるという事態も生じなくなって、電池寿命が向上する。
【0042】
なお、上述した実施の形態においては、炭素粉末として比表面積が50m2/gのアセチレンブラックを用いる例について説明したが、炭素粉末としてはこれに限定されることなく、ケッチェンブラックあるいは他の炭素材料を用いることができるが、比表面積が50m2/g以上の炭素粉末であれば導電層の導電性が向上するので望ましい。
【0043】
また、上述した実施の形態においては、導電層の結着剤としてポリビニルピロリドン(PVP)を用いる例について説明したが、結着剤としてはこれに限定されることなく、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)などの耐アルカリ性に優れた結着剤から選択して用いるようにすればよい。
【発明の属する技術分野】
本発明はニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ蓄電池に係り、特に、電極基板にカドミウム活物質が充填されたカドミウム負極を備えたアルカリ蓄電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ニッケル−カドミウム蓄電池に用いられるカドミウム負極は、ニッケル粉末を焼結して形成したニッケル焼結基板に、酸化カドミウムあるいは水酸化カドミウムよりなるカドミウム活物質を充填して作製された焼結式カドミウム負極がよく用いられていた。ところが、近年になって、酸化カドミウムあるいは水酸化カドミウムよりなるカドミウム活物質と合成繊維、糊料等とを混練して調製した活物質ペーストをパンチングメタル等の導電性芯体(電極基板)に塗着して作製された非焼結式カドミウム負極がよく用いられるようになった。これは、非焼結式カドミウム負極の方が工程が比較的簡単で、製造コストも安いためである。
【0003】
一般に、ニッケル−カドミウム蓄電池では、負極容量を正極容量よりも大きくして、充電末期に正極で発生した酸素ガスを負極に吸収させる方式(1/2O2+Cd+H2O→Cd(OH)2)が採用されている。ところが、従来の非焼結式カドミウム負極では導電性に劣ることに起因して、導電性芯体より遠い負極表面には十分に充電電流が供給することができないために、負極表面近傍では金属カドミウムが十分に生成することができず、金属カドミウムが導電性芯体の近傍に集中して生成して、負極表面には金属カドミウムが生成しがたいという問題があった。したがって、過充電時に正極から発生した酸素ガスは負極の表面層を通過して負極内部に到達した段階で始めて吸収されることとなるため、酸素ガスの吸収が円滑になされず、電池内に蓄積されてガス圧の上昇を引き起こすという問題があった。
【0004】
そこで、表面に特定の比表面積を有する炭素粉末を含有した導電層を備えた非焼結式カドミウム負極が、特開平9−147845号公報にて提案されるようになった。この特開平9−147845号公報にて提案された非焼結式カドミウム負極においては、電極表面に形成された導電層を介して電極表層の活物質に対しても充電電流が供給されるので、電極表層においても金属カドミウムの生成が行われる。しかも、導電層中の炭素粉末が、酸素ガスに対して触媒的に作用するので、酸素ガスの水酸イオン化(1/2O2+H2O+2e→2OH−)が円滑に進行し、水酸イオンは酸素ガスに比べ導電層やカドミウム層を透過し易いので、電極表層の金属カドミウムと容易に反応(2OH−+Cd→Cd(OH)2+2e)するようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平9−147845号公報にて提案された技術においても全く問題がないわけではない。本発明者等が特開平9−147845号公報にて提案された技術を詳細に検討したところ、炭素粉末を含有した導電層を備えた非焼結式カドミウム負極においては、非焼結式カドミウム負極の活物質層の表面に生成される金属カドミウムの生成量が不十分であることが明らかになった。
【0006】
このため、このような非焼結式カドミウム負極を備えた電池に急速充電を行うと、非焼結式カドミウム負極での酸素ガスの吸収速度が、酸素ガスの発生速度に追いつかないため、電池内に酸素ガスが蓄積されるようになって、やがては安全弁が作動するようになるという問題を生じた。この場合、安全弁が作動すると、電解液が電池外に放出されるという事態が生じて、早期に電池寿命に至るという問題を生じた。
そこで、本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、カドミウム負極の活物質層の表面に充分な金属カドミウムを形成して、酸素ガス吸収性能が向上したアルカリ蓄電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のアルカリ蓄電池は、カドミウム負極の表面に炭素粉末と金属カドミウム粉末の混合粉末からなる導電層が形成されていることを特徴とする。このように、カドミウム負極の表面に炭素粉末と金属カドミウム粉末の混合粉末からなる導電層が形成されていると、炭素粉末を介して金属カドミウム粉末間の接触がなされるようになるので、カドミウム負極表面での導電性が向上するようになる。
【0008】
これにより、このようなカドミウム負極を備えたアルカリ蓄電池を充電すると、カドミウム負極表面に形成された導電層の金属カドミウムに加えて、新たに金属カドミウムが生成されるようになるので、酸素ガスの吸収のための充分な金属カドミウムがカドミウム負極表面の活物質層に形成されるようになる。この結果、このようなカドミウム負極を備えたアルカリ蓄電池を急速充電しても、カドミウム負極での酸素ガスの吸収速度が、酸素ガスの発生速度に充分に追いつくことが可能となるので、電池内に酸素ガスが蓄積されるようなことはなくなる。これにより、安全弁が作動して電解液が電池外に放出されるという事態も生じなくなって、電池寿命が向上する。
【0009】
ここで、金属カドミウムの粒径は炭素粉末の粒径に比較して充分に大きいため、金属カドミウム同士の接触だけでは導電性が向上しない。このため、導電層の導電性を向上させるためには、導電層中に金属カドミウムとともに炭素粉末を含有さる必要がある。そして、導電層中に含有される金属カドミウムの添加量が、カドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.08mg未満であると、酸素ガス吸収性能を充分に発揮することができないが明らかとなったので、金属カドミウムの添加量はカドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.08mg以上にするのが望ましい。
【0010】
また、導電層中の金属カドミウムの含有量が多いほど酸素ガス吸収性能は向上するが、導電層中の金属カドミウムの含有量がカドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.80mgを越えるようになると、導電層中に含有される結着剤で金属カドミウムを保持できなくなる。このため、導電層中の金属カドミウムの含有量はカドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.80mg以下にするのが望ましい。この場合、導電層中の炭素粉末が金属カドミウム間に存在して、導電層の導電性を向上させるためには、比表面積が大きい炭素粉末を選択して用いるのが望ましい。
【0011】
そして、比表面積が50m2/g以上の炭素粉末であると、金属カドミウム間に存在してこれらを良好な導電ネットワークを形成することができるので好ましい。このように比表面積が大きい炭素粉末としては、アセチレンブラックあるいはケッチェンブラックから選択して用いるようにするのが望ましい。また、導電層中に含有される結着剤としては耐アルカリ性に優れたポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)から選択して用いるのが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
ついで、本発明のアルカリ蓄電池の一実施の形態を以下に説明するが、本発明はこの実施の形態に何ら限定されるものでなく、本発明の目的を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
1.導電性スラリーの調製
(1)実施例1
平均粒径が5μmの金属カドミウム粉末1.0質量部と、炭素粉末としての比表面積が50m2/gのアセチレンブラック粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、実施例1の導電性スラリーαを調製した。
【0014】
(2)実施例2
同様に、平均粒径が5μmの金属カドミウム粉末5.0質量部と、炭素粉末としての比表面積が50m2/gのアセチレンブラック粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、実施例2の導電性スラリーβを調製した。
【0015】
(3)実施例3
同様に、平均粒径が5μmの金属カドミウム粉末10.0質量部と、炭素粉末としての比表面積が50m2/gのアセチレンブラック粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、実施例3の導電性スラリーγを調製した。
【0016】
(4)実施例4
同様に、平均粒径が5μmの金属カドミウム粉末12.5質量部と、炭素粉末としての比表面積が50m2/gのアセチレンブラック粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、実施例4の導電性スラリーδを調製した。
【0017】
(5)実施例5
同様に、平均粒径が5μmの金属カドミウム粉末0.5質量部と、炭素粉末としての比表面積が50m2/gのアセチレンブラック粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、実施例5の導電性スラリーεを調製した。
【0018】
(6)比較例1
平均粒径が5μmの金属カドミウム粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、比較例1の導電性スラリーχを調製した。
【0019】
(7)比較例2
炭素粉末としての比表面積が50m2/gのアセチレンブラック粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、比較例2の導電性スラリーψを調製した。
【0020】
(8)比較例3
平均粒径が5μmの金属ニッケル粉末5質量部と、結着剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)5質量部とを添加・混合して、比較例3の導電性スラリーωを調製した。
【0021】
2.カドミウム負極の作製
まず、酸化カドミウム粉末80質量部と、金属カドミウム粉末20質量部とを混合して混合活物質粉末とした。この後、得られた混合活物質粉末に、ナイロン繊維1質量部と、水和防止剤としてのリン酸水素ナトリウム1質量部と、結着剤としての5%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液20質量部(PVAの固形分は1質量部)とを添加・混合して、負極活物質ペーストを調製した。ついで、この負極活物質ペーストを厚さが0.08mmのパンチングメタルよりなる導電性芯体の両面に塗着し、乾燥させた後、所定の寸法に切断して導電層未形成のカドミウム負極を作製した。なお、負極活物質ペーストを導電性芯体に塗着するに際しては、乾燥後の活物質層片面の厚みが0.25mmになるように塗着した。
【0022】
そして、上述のようにして調製された各導電性スラリーα〜ε、χ〜ωを用意した後、これらを得られた導電層未形成のカドミウム負極の表面に、乾燥後の厚みが0.01mmになるように塗布した後、乾燥させて導電層を形成して、カドミウム負極a〜e、x〜zをそれぞれ作製した。
なお、導電性スラリーαを塗布したものを実施例1のカドミウム負極aとしたが、このようにして得られたカドミウム負極aの導電層には、カドミウム負極aの単位表面積(1cm2)当たり、0.08mgの金属カドミウムと0.40mgの炭素と0.40mgのPVPが含有されていた。
【0023】
同様に、導電性スラリーβを塗布したものを実施例2のカドミウム負極bとしたが、このようにして得られたカドミウム負極bの導電層には、カドミウム負極bの単位表面積(1cm2)当たり、0.40mgの金属カドミウムと0.40mgの炭素と0.40mgのPVPが含有されていた。
同様に、導電性スラリーγを塗布したものを実施例3のカドミウム負極cとしたが、このようにして得られたカドミウム負極cの導電層には、カドミウム負極cの単位表面積(1cm2)当たり、0.80mgの金属カドミウムと0.40mgの炭素と0.40mgのPVPが含有されていた。
【0024】
同様に、導電性スラリーδを塗布したものを実施例4のカドミウム負極dとしたが、このようにして得られたカドミウム負極dの導電層には、カドミウム負極dの単位表面積(1cm2)当たり、1.00mgの金属カドミウムと0.40mgの炭素と0.40mgのPVPが含有されていた。
同様に、導電性スラリーεを塗布したものを実施例5のカドミウム負極eとしたが、このようにして得られたカドミウム負極eの導電層には、カドミウム負極dの単位表面積(1cm2)当たり、0.04mgの金属カドミウムと0.40mgの炭素と0.40mgのPVPが含有されていた。
【0025】
また、導電性スラリーχを塗布したものを比較例1のカドミウム負極xとしたが、このようにして得られたカドミウム負極xの導電層には、カドミウム負極xの単位表面積(1cm2)当たり、0.40mgの金属カドミウムと0.40mgのPVPが含有されていた。
また、導電性スラリーψを塗布したものを比較例2のカドミウム負極yとしたが、このようにして得られたカドミウム負極yの導電層には、カドミウム負極yの単位表面積(1cm2)当たり、0.40mgの炭素と0.40mgのPVPが含有されていた。
更に、導電性スラリーωを塗布したものを比較例3のカドミウム負極zとしたが、このようにして得られたカドミウム負極zの導電層には、カドミウム負極zの単位表面積(1cm2)当たり、0.40mgの金属ニッケルと0.40mgのPVPが含有されていた。
【0026】
3.カドミウム負極の水素ガス発生深度の測定
ついで、上述のようにして作製した各カドミウム負極a〜eおよびx〜zを用いて、これらをそれぞれ公知のニッケル正極に対向させて、これらを水酸化カリウム(KOH)からなる電解液(液温が0℃)中に浸漬した。ついで、これらの正・負極間に0.5ItmAの充電電流(1Itは負極板容量を1時間で充電する電流値)を供給し、水素ガスの発生が認められるまでの充電容量(mAh)を求めた。ついで、下記の(1)式に基づいて水素ガス発生深度を算出すると、下記の表1に示すような結果が得られた。
水素ガス発生深度(%)={水素ガスの発生が認められるまでの充電電気量(mAh)/カドミウム負極の実測の放電容量(mAh)}×100(%)・・・(1)
【0027】
【表1】
【0028】
ここで、水素ガスの発生は、充電電流が充電に使用されずに、水の電気分解に使用されたために生じるものである。このため、水素ガスの発生までの充電電気量が多いほど、即ち、水素ガス発生深度が大きいほど、水の電気分解に使用される充電電気量が減少して充電反応に使用される充電電気量が増加することとなる。したがって、水素ガス発生深度が大きいほど充電受け入れ性に優れていることを示している。
【0029】
そして、表1の結果から明らかなように、導電層中に結着剤(PVP)以外に、金属カドミウム粉末のみを添加したカドミウム負極x、炭素粉末のみを添加したカドミウム負極y、金属ニッケル粉末のみを添加したカドミウム負極zにおいては、水素ガス発生深度が低下していることが分かる。これは、導電層中に結着剤(PVP)以外に金属カドミウム粉末のみが添加されたカドミウム負極xにおいては、金属カドミウム粉末の粒径が大きいことに起因して接触抵抗が大きいために、充電により生成される金属カドミウム量が少なく、これにより水素ガス発生深度が低下したと考えられる。
【0030】
また、導電層中に結着剤(PVP)以外に炭素粉末のみが添加されたカドミウム負極yにおいては、予め導電層中に金属カドミウム量が存在しなく、かつ充電により生成される金属カドミウム量も少ないために水素ガス発生深度が低下したと考えられる。さらに、導電層中に結着剤(PVP)以外に金属ニッケル粉末のみが添加されたカドミウム負極zにおいては、金属ニッケルは水素ガス発生電位を低下させるように作用するために水素ガス発生深度が低下したと考えられる。
【0031】
これに対して、カドミウム負極に形成された導電層中に結着剤(PVP)以外に、金属カドミウム粉末と炭素粉末が添加されているカドミウム負極a〜dにおいては、水素ガス発生深度が大きいことが分かる。これは、粒径が大きい金属カドミウム粉末と粒径が小さい炭素粉末とが混在していると、金属カドミウム粉末同士が炭素粉末を介して充分に接触するようになるために導電性が向上する。そして、このようなカドミウム負極を充電すると、導電層中に予め添加された金属カドミウムに加えて、新たに金属カドミウムが生成されるようになるので、酸素ガスの吸収のための充分な金属カドミウムがカドミウム負極表面に形成されるようになったためと考えられる。
【0032】
4.ニッケル−カドミウム蓄電池の作製
ついで、上述のように作製した各カドミウム負極a〜eおよびx〜zを用いて、これらのカドミウム負極a〜eおよびx〜zと、公知のニッケル正極とをそれぞれポリオレフィン製のセパレータを介して対向するように渦巻状に卷回して電極群とし、これらの電極群をそれぞれ外装缶内に挿入した。この後、所定の濃度の水酸化カリウム水溶液(アルカリ電解液)を外装缶内にそれぞれ注液した後、外装缶の開口部を封口蓋で密閉して、公称容量が1000mAhのニッケル−カドミウム蓄電池A〜EおよびX〜Zをそれぞれ作製した。
【0033】
なお、カドミウム負極aを用いものを電池Aとし、カドミウム負極bを用いものを電池Bとし、カドミウム負極cを用いものを電池Cとし、カドミウム負極dを用いものを電池Dとし、カドミウム負極eを用いものを電池Eとした。また、カドミウム負極xを用いものを電池Xとし、カドミウム負極yを用いものを電池Yとし、カドミウム負極zを用いものを電池Zとした。
【0034】
ついで、上述のように作製した各ニッケル−カドミウム蓄電池A〜EおよびX〜Zをそれぞれ用いて、これらの各ニッケル−カドミウム蓄電池A〜EおよびX〜Zを常温(約25℃)下で1500mA(1.5ItmA)の充電電流で電池容量の200%(2000mAh)まで充電を行った。この後、充電末期の電池内部のガスの発生圧力を測定すると、下記の表2に示すような結果が得られた。なお、電池内部のガスの発生圧力の測定において、
【0035】
【表2】
【0036】
上記表2の結果から明らかなように、導電層中に結着剤(PVP)以外に、金属カドミウム粉末のみを添加したカドミウム負極xを備えた電池X、炭素粉末のみを添加したカドミウム負極yを備えた電池Y、金属ニッケル粉末のみを添加したカドミウム負極zを備えた電池Zにおいては、電池内部のガスの発生圧力(MPa)が大きくなっていることが分かる。これは、導電層中に結着剤(PVP)以外に金属カドミウム粉末のみが添加されたカドミウム負極xにおいては、充電により生成される金属カドミウム量が少ないために、水素ガス発生深度が低下して電池内部の発生圧力が増加したと考えられる。
【0037】
また、導電層中に結着剤(PVP)以外に炭素粉末のみが添加されたカドミウム負極yにおいては、予め導電層中に金属カドミウム量が存在しなく、かつ充電により生成される金属カドミウム量も少ないために水素ガス発生深度が低下して電池内部の発生圧力が増加したと考えられる。さらに、導電層中に結着剤(PVP)以外に金属ニッケル粉末のみが添加されたカドミウム負極zにおいては、金属ニッケルが水素ガス発生電位を低下させるように作用するために、水素ガス発生深度が低下して電池内部の発生圧力が増加したと考えられる。
【0038】
これに対して、カドミウム負極に形成された導電層中に結着剤(PVP)以外に、金属カドミウム粉末と炭素粉末(アセチレンブラック)が添加されているカドミウム負極a〜eを備えた電池A〜Eにおいては、電池内部の発生圧力が小さいことが分かる。これは、カドミウム負極a〜eにおいては、金属カドミウム粉末同士が炭素粉末を介して充分に接触するために導電性が向上するため、充電により、導電層に予め添加された金属カドミウムに加えて、新たに金属カドミウムが生成されるようになる。この結果、このようなカドミウム負極を備えたアルカリ蓄電池を急速充電しても、カドミウム負極での酸素ガスの吸収速度が、酸素ガスの発生速度に充分に追いつくことが可能となるので、電池内部の発生圧力が低下した考えられる。
【0039】
ここで、導電層の導電性を向上させるためには、導電層中に粒径が大きい金属カドミウムとともに粒径が小さい炭素粉末を含有させる必要がある。そして、表1及び表2に示されるように、カドミウム負極eのように、導電層中に含有される金属カドミウムの添加量が、カドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.08mg未満であると、酸素ガス吸収性能を充分に発揮することができなく、電池内部の発生圧力が高くなるので、金属カドミウムの添加量はカドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.08mg以上にするのが望ましいということができる。
【0040】
また、導電層中の金属カドミウムの含有量が多いほど酸素ガス吸収性能は向上するが、導電層中の金属カドミウムの含有量がカドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.80mgを越えるようになると、導電層中に含有される結着剤(PVP)で金属カドミウムを保持できなくなる。このため、導電層中の金属カドミウムの含有量はカドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.80mg以下にするのが望ましい。
【0041】
上述したように、本発明においては、カドミウム負極の表面に炭素粉末と金属カドミウム粉末の混合粉末からなる導電層が形成されているので、カドミウム負極表面の導電性が向上するようになる。これにより、カドミウム負極表面に予め形成された金属カドミウムに加えて、充電により新たに金属カドミウムが生成されるようになるので、酸素ガスの吸収のための充分な金属カドミウムがカドミウム負極表面に形成されるようになる。この結果、このようなカドミウム負極を備えたアルカリ蓄電池を急速充電しても、カドミウム負極での酸素ガスの吸収速度が、酸素ガスの発生速度に充分に追いつくことが可能となる。これにより、電池内に酸素ガスが蓄積されるようなこともなくなるので、安全弁が作動して電解液が電池外に放出されるという事態も生じなくなって、電池寿命が向上する。
【0042】
なお、上述した実施の形態においては、炭素粉末として比表面積が50m2/gのアセチレンブラックを用いる例について説明したが、炭素粉末としてはこれに限定されることなく、ケッチェンブラックあるいは他の炭素材料を用いることができるが、比表面積が50m2/g以上の炭素粉末であれば導電層の導電性が向上するので望ましい。
【0043】
また、上述した実施の形態においては、導電層の結着剤としてポリビニルピロリドン(PVP)を用いる例について説明したが、結着剤としてはこれに限定されることなく、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)などの耐アルカリ性に優れた結着剤から選択して用いるようにすればよい。
Claims (5)
- 電極基板にカドミウム活物質が充填されたカドミウム負極を備えたアルカリ蓄電池であって、
前記カドミウム負極の表面に炭素粉末と金属カドミウム粉末の混合粉末からなる導電層が形成されていることを特徴とするアルカリ蓄電池。 - 前記導電層の前記金属カドミウム粉末は前記カドミウム負極の単位表面積(1cm2)当たり0.08mg〜0.80mgの添加量となるように添加されていることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池。
- 前記導電層の前記炭素粉末は比表面積が50m2/g以上の炭素粉末であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルカリ蓄電池。
- 前記炭素粉末はアセチレンブラックあるいはケッチェンブラックであることを特徴とする請求項3に記載のアルカリ蓄電池。
- 前記導電層にポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)のいずれかから選択される結着剤を備えるようにしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のアルカリ蓄電池。
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Cited By (1)
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WO2009116688A1 (ja) | 2008-03-19 | 2009-09-24 | 住友化学株式会社 | 電極およびそれを有する電池 |
-
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- 2002-06-11 JP JP2002169632A patent/JP2004014427A/ja not_active Withdrawn
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