JP2004012857A - プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】中心部分の厚さが2mm未満であり、中心部分と周縁部分の厚みの比が1以下であるプラスチックレンズの表面に光硬化性コーティング剤を被覆し、光照射して光硬化性コーティング層を形成する方法において、光照射によるプラスチックレンズの熱変形を防止する。
【解決手段】中心部分の厚さが2mm未満であり、中心部分と周縁部分の厚みの比が1以下であるプラスチックレンズの表面に光硬化性コーティング剤を被覆した後、光照射してコート膜を形成するに当たり、光照射を断続的に行うなどして光照射時におけるプラスチックレンズの表面温度を100℃、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーティング層で被覆されたプラスチックレンズの製造方法に関する。より詳しくは、コーティング層を表面に有する眼鏡レンズ等のプラスチックレンズの簡便かつ確実な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトクロミズムとは、ある化合物に太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所におくと元の色に戻る可逆作用のことであり、様々な用途に応用されている。
【0003】
例えば、眼鏡レンズの分野においてもフォトクロミズムが応用されており、上記のような性質を有する各種フォトクロミック化合物を添加した重合性単量体を硬化させることにより、フォトクロミック性を有するプラスチックレンズが得られている。フォトクロミック化合物としてもこのような用途に好適に使用できるフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等が見出されている。
【0004】
フォトクロミック性を有するプラスチックレンズの製造方法としては、フォトクロミック性を有しないレンズの表面にフォトクロミック化合物を含浸させる方法(以下、含浸法という)、あるいはプラスチックレンズの表面にフォトクロミック性を有するプライマー層あるいはハードコーティング層を設ける方法(以下、コーティング法という)、あるいはモノマーにフォトクロミック化合物を溶解させそれを重合させることにより直接フォトクロミックレンズを得る方法(以下、練り混み法という)が提案されている。
【0005】
上記のコーティング法としては、例えば、WO98/37115号に、ウレタンオリゴマー中にフォトクロミック化合物を溶解させたコーティング剤をレンズ上に塗布した後、赤外線を用いて40分間140℃で熱硬化する手法が提案されている。
【0006】
また、米国特許第5914174号には、単官能、2官能および多官能の各ラジカル重合性単量体の混合物にフォトクロミック化合物を溶解したコーティング剤を調合し、それをガラスモールド内面にコーティングした後に光硬化し、その後、モールド内部へモノマーを注型し、熱硬化する手法が提案されている。
【0007】
さらに、WO00/36047号には、N―アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、触媒(好ましくは酸性触媒)及びフォトクロミック化合物を混合したコーティング剤をレンズ上に塗布した後、40分間140℃で熱硬化する手法が提案されている。
【0008】
さらに、WO01/02449号には、2種類以上の2官能(メタ)アクリルモノマーのみの組み合わせからなるモノマー組成物に、フォトクロミック化合物を溶解させたコーティング剤をレンズ上に塗布した後、500ワットのランプを用いて光硬化する手法が提案されている。その際のレンズ表面温度は145−200℃となっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらいずれの方法においても、プラスチックレンズ表面に塗布したコーティング剤を十分に硬化し、プラスチックレンズ自体が変形することなくコーティング層を有するプラスチックレンズを得るのは難しい。即ち、本発明者らがプラスチックレンズ表面に塗布した光硬化性コーティング剤を硬化させる方法について研究を行った結果、光硬化性コーティング剤で被覆したプラスチックレンズの凸面を上面に保持して強度の強い光を用いて光重合を行った場合、中心部分の厚さが薄いプラスチックレンズが変形するという問題があることを確認した。さらに変形の原因が硬化に用いる光源の熱であることを見出した。この現象は、プラスチックレンズの中心部分の厚さ(以下、中心厚とも言う)が2mm未満であり、中心部分の厚さと周縁部分の厚さ(以下、周縁厚とも言う)の比(中心厚/周縁厚)が1以下であるプラスチックレンズの場合に顕著であることが判明した。また、プラスチックレンズの凸面を下面にして保持した場合は、表面温度が110〜120℃程度に上昇しても変形は生じないことがわかったが、光硬化性コーティング剤で被覆した凸面を下面にして光照射することは光硬化性コーティング剤が重力によりレンズ中心部分に集まり、コーティング層の厚みにムラが生じるために採用することができない。
【0010】
このようなプラスチックレンズの熱変形を抑えるために、照射する光の強度を弱くし、もしくは低温の熱を用いた場合には、コーティング剤が十分に硬化せず、プラスチックレンズとフォトクロミック層との密着性が不十分になり、また表面硬度が低下するといった問題が生じることが分かった。さらに、長時間の硬化を行った場合には、生産性の低下が問題となる。
【0011】
また、米国特許第5914174号に記載された手法で、プラスチック表面にコーティング層を付与する方法では、操作が煩雑になり、生産性及び収率の低下が問題となる。
【0012】
以上のように、中心厚が2mm未満であり中心厚と周縁厚の比が1以下のプラスチックレンズにおいては、プラスチックレンズとコーティング層との密着性及び光学物性とを兼ね備えたものを、高い生産性で製造する方法は未だ見出されていない。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、中心厚が2mm未満であり、中心厚と周縁厚の比が1以下であるプラスチックレンズの表面に塗布した光硬化性コーティング剤を光硬化させる際に、プラスチックレンズの表面温度が100℃以下になるようにすることにより、プラスチックレンズを熱変形させることなく、プラスチックレンズ本来の光学物性を維持したままプラスチックレンズにコーティングを施すことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、中心部分の厚さが2mm未満であり、中心部分と周縁部分の厚みの比が1以下であるプラスチックレンズの表面に光硬化性コーティング剤を被覆した後、光照射してコート膜を形成するに当たり、光照射時におけるプラスチックレンズの表面温度を100℃以下とすることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法である。
【0015】
【発明の実施形態】
本発明における、中心部分の厚さが2mm未満であり、中心部分と周縁部分の厚みの比が1以下であるプラスチックレンズとしては、汎用の眼鏡用プラスチックレンズにおける近眼矯正用の凹レンズがその主なものである。近眼矯正用の凹レンズは、マイナス度数が大きくなるにつれて中心部分と周縁部分の厚みの比が1以下で徐々に小さくなっていく。したがって、本発明は、マイナス度数が大きなプラスッチックレンズについて特に効果的である。
【0016】
本発明における光硬化性コーティング剤によって被覆されるプラスチックレンズの材質は特に限定されるものではなく、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂およびチオエポキシ系樹脂等、公知の樹脂をなんら制限なく使用できる。
【0017】
本発明における光硬化性コーティング剤は、表面硬度の向上、フォトクロミック性の付与、耐衝撃性の向上、ハードコート層または反射防止層などとの密着性の向上などの目的に応じて、組成を決定することができる。例えば、表面硬度の向上を目的とする場合、3個以上のラジカル重合性基を有するモノマーおよび/または有機−無機ハイブリッドモノマーなどを含む組成とすることが好ましく、また、フォトクロミック性の付与を目的とする場合は、高硬度モノマー(主に3個以上のラジカル重合性基を有するモノマー)と低硬度モノマー(主に2個のラジカル重合性基を有するモノマーで、重合基間の構造が長鎖の炭化水素鎖、ポリエチレンオキサイド鎖などのモノマー)などを組み合わせた組成とすることが好ましい。この場合、ラジカル重合性単量体を配合することが、硬化後の耐溶剤性や硬度、耐熱性等の硬化体特性の点から好ましい。
【0018】
光硬化性コーティング剤として、ラジカル重合性単量体を用いる場合、その種類は特に限定されず、公知の化合物をなんら制限なく使用できる。例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基等のラジカル重合性基を有すラジカル重合性単量体を用いることができる。これらのなかでも、入手のし易さ、硬化性の良さから(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性単量体が好ましい。
【0019】
このようなラジカル重合性単量体を具体的に例示すると、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ウレタンオリゴマーテトラアクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサメタクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、分子量2500〜3500の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB80等)、分子量6000〜8000の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB450等)、分子量45000〜55000の6官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB1830等)、分子量10000の4官能ポリエステルオリゴマー(第一工業製薬社、GX8488B等)、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,9−ノニレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、トリアルキレングリコールジアクリレート、テトラアルキレングリコールジアクリレート、ノニルアルキレングリコールジアクリレート、ノニルアルキレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、平均分子量776(分子量640〜910の範囲が主成分)の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量526(分子量435〜615の範囲が主成分)のポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量360(分子量260〜440の範囲が主成分)のポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量475(分子量400〜585の範囲が主成分)のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量1000(分子量890〜1160の範囲が主成分)のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量375(分子量280〜470の範囲が主成分)のポリプロピレングリコールメタアクリレート、平均分子量430(分子量340〜525の範囲が主成分)のポリプロピレングリコールメタアクリレート、平均分子量622(分子量520〜600の範囲が主成分)のポリプロピレングリコールメタアクリレート、平均分子量620(分子量490〜760の範囲が主成分)のメチルエーテルポリプロピレングリコールメタアクリレート、平均分子量566(分子量500〜680の範囲が主成分)のポリテトラメチレングリコールメタアクリレート、平均分子量2034(分子量1850〜2210の範囲が主成分)のオクチルフェニルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量610(分子量470〜745の範囲が主成分)のノニルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量640(分子量550〜730の範囲が主成分)のメチルエーテルポリエチレンチオグリコールメタクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、パーフルオロヘプチルエチレングリコールメタクリレート、平均分子量650(分子量560〜740の範囲が主成分)のポリテトラメチレングリコールジメタアクリレート、平均分子量1400(分子量1240〜1520の範囲が主成分)のポリテトラメチレングリコールジメタアクリレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド等の2官能(メタ)アクリレート;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシこはく酸ジアリル、ジアリルフマレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、アリルジグリコールカーボネート等の多価アリル化合物;1,2−ビス(メタクリロイルチオ)エタン、ビス(2−アクリロイルチオエチル)エーテル、1,4−ビス(メタクリロイルチオメチル)ベンゼン等の多価チオアクリル酸及び多価チオメタクリル酸エステル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸ビフェニル等のアクリル酸及びメタクリル酸エステル化合物;フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;メチルチオアクリレート、ベンジルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート等のチオアクリル酸及びチオメタクリル酸エステル化合物;スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレンダイマー、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルピロリドン等のビニル化合物;オレイルメタクリレート、ネロールメタクリレート、ゲラニオールメタクリレート、リナロールメタクリレート、ファルネソールメタクリレート等の分子中に不飽和結合を有する炭化水素鎖の炭素数が6〜25の(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0020】
上記ラジカル重合性単量体は、光硬化性コーティング剤の硬化後の耐溶剤性や硬度、耐熱性等の硬化体特性等を考慮して、2種類以上を適宜混合して用いることもできる。
【0021】
また、本発明において使用される光硬化性コーティング剤には、上記ラジカル重合性単量体とは別に、分子中に少なくとも一つのエポキシ基と少なくとも一つのラジカル重合性基を有するラジカル重合性単量体(以下、単にエポキシ系モノマーと称す場合がある)が配合されていることが好ましい。このようなエポキシ系モノマーを使用することにより、コーティング層とプラスチックレンズとの密着性を向上させることができる。
【0022】
上記のエポキシ系モノマーは、分子中に少なくとも一つのエポキシ基と少なくとも一つのラジカル重合性基を有する化合物であれば、公知の化合物をなんら制限なく使用できる。中でもラジカル重合性基として(メタ)アクリロイルオキシ基を有す化合物が好ましい。
【0023】
上記のエポキシ系モノマーを具体的に例示すると、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA−モノグリシジルエーテル−メタクリレート、4−グリシジルオキシメタクリレート、3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−グリシジルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、平均分子量540(分子量390〜660の範囲が主成分)のグリシジルオキシポリエチレングリコールメタアクリレート等が挙げられる。これらの中でもグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートおよび平均分子量540(分子量390〜660の範囲が主成分)のグリシジルオキシポリエチレングリコールメタアクリレートが特に好ましい。
【0024】
これらエポキシ系モノマーの配合割合は、全ラジカル重合性単量体中、0.01〜30重量%、特に0.1〜20重量%であるのが好適である。
【0025】
本発明において使用される光硬化性コーティング剤には上記ラジカル重合性単量体に加えて、アミン化合物が配合されることが好ましい。アミン化合物を配合することにより、当該光硬化性コーティング剤の硬化体よりなるコーティング層とプラスチックレンズとの密着性をさらに大きく向上させることができる。
【0026】
アミン化合物としてはアミノ基を有する化合物が何ら制限なく使用できる。好適に使用できるアミン化合物を具体的に例示すると、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン、ジアザビシクロオクタン等の非重合性低分子系アミン化合物、N,N―ジメチルアミノエチルメタアクリレート、N,N―ジエチルアミノエチルメタアクリレート等の重合性基を有するアミン化合物、n−(ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシフェニル−2−ピペリジノエトキシシラン、N,N−ジエチルアミノメチルトリメチルシラン、(N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン等のシリル基を有するアミン化合物が挙げられる。
【0027】
これらアミン化合物は単独もしくは数種混合して使用することができる。これらアミン化合物の配合量としては、光硬化性コーティング剤に配合される全ラジカル重合性単量体100重量部に対して0.01〜20重量部であることが高い密着性を得ることができるために好ましく、0.05〜10重量部であることがより好ましく、さらに0.1〜10重量部の範囲であることが最も好ましい。
【0028】
さらに、本発明において使用される光硬化性コーティング剤には、上記ラジカル重合性単量体とは別に、シラノール基または加水分解によりシラノール基を生じる基を有するラジカル重合性単量体(以下、シリルモノマーと称す場合がある)、あるいはイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(以下、イソシアネートモノマーと称す場合がある)のいずれかが配合されていることが好ましい。
【0029】
シリルモノマーとしては、シラノール基(≡Si−OH)又は加水分解によりシラノール基を生成する基と、ラジカル重合性基を有する化合物であれば、公知の化合物をなんら制限することなく使用できる。上記の加水分解によりシラノール基を生成する基を具体的に例示すると、アルコキシシリル基(≡Si−O−R;Rはアルキル基)、アリールオキシシリル基(≡Si−O−Ar;Arは置換されていても良いアリール基)、ハロゲン化シリル基(≡Si−X;Xはハロゲン原子)、シリルオキシシリル基(ジシロキサン結合;≡Si−O−Si≡)等が挙げられる。
【0030】
シラノール基の生成のしやすさ、合成や保存の容易さ、反応によりケイ素原子から脱離した基が硬化体の物性に与える影響の少なさ等から、これら加水分解によりシラノール基を生成する基のなかでもアルコキシシリル基又はシリルオキシシリル基が好ましく、炭素数1〜4のアルコキシル基を含むアルコキシシリル基がより好ましく、メトキシシリル基またはエトキシシリル基が最も好ましい。
【0031】
ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイルチオ基等の(メタ)アクリロイル基の誘導体基、ビニル基、アリル基、スチリル基等の公知のラジカル重合性基がなんら制限なく例示される。これらラジカル重合性基のなかでも、入手の容易さや重合性の良さから(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
【0032】
上記のシリルモノマーを具体的に例示すると、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、4−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、3−(3−アミノプロポキシ)−3,3−ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、ジエトキシビニルシラン、1,3−ジビニルテトラエトキシジシロキサン、ドコセニルトリエトキシシラン、O−(メタクリロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシエトキシトリメチルシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、1,3―ビス(メタクリロキシ)−2−トリメチルシロキシプロパン、テトラキス(2−メタクリロキシエトキシ)シラン、トリビニルエトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、O−(ビニロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、ビニロキシトリメチルシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルメチルメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシランビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等を挙げることができる。これらの中でも、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシランが特に好適に使用できる。
【0033】
また上記シリルモノマーに替えて、イソシアネートモノマーを配合しても、プラスチックレンズとの密着性をより高くすることが可能である。イソシアネートモノマーとしては、イソシアネート基(−NCO)と前記したラジカル重合性基を有する化合物であれば公知のものがなんら制限なく使用できる。
【0034】
好適に使用できるイソシアネートモノマーを具体的に例示すると、2−イソシアナトエトキシメタアクリレート、4−(2−イソシアナトイソプロピル)スチレンが挙げられる。
【0035】
本発明におけるシリルモノマー又はイソシアネートモノマーの配合量は特に制限されるものではないが、プラスチックレンズや更にはハードコート材料との密着性を特に良好なものとするために、該シリルモノマー又はイソシアネートモノマーの配合量は、本発明において使用される光硬化性コーティング剤に配合される全ラジカル重合性単量体中、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましい。また、ハードコートした際の、耐擦傷性を良好なものとするためには、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。より好ましい配合量は全ラジカル重合性単量体に対して0.5〜20重量%であり、最も好ましくは1〜10重量%である。
【0036】
また、これらシリルモノマー又はイソシアネートモノマーは単独あるいは数種混合して使用することができ、シリルモノマーとイソシアネートモノマーとを混合して使用することも可能である。
【0037】
本発明の製造方法にて使用される光硬化性コーティング剤には、該光硬化性コーティング剤を光で硬化させるために、光重合開始剤が配合される。
【0038】
光重合性開始剤を具体的に例示すれば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等を挙げることができる。
【0039】
これら光重合開始剤は、全ラジカル重合性単量体100重量部に対して0.001〜5重量部の範囲で用いるのが一般的である。
【0040】
また、本発明における製造方法において、光重合に熱重合を併用する場合には、光重合開始剤の他に熱重合開始剤を添加することも可能である。
【0041】
熱重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものが使用できるが、代表的なものを例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0042】
これら熱重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、ラジカル重合性単量体の種類や組成によって異なり、一概に限定できないが、一般には、全ラジカル重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。上記の熱重合開始剤は単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。
【0043】
本発明において使用される光硬化性コーティング剤には、得られる光学材料にフォトクロミック性を付与するために、必要に応じてフォトクロミック化合物を配合しても構わない。
【0044】
フォトクロミック化合物は、公知のフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することができる。例えば、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等のフォトクロミック化合物がよく知られており、本発明においては、これらのフォトクロミック化合物を特に制限なく使用することができる。
【0045】
上記のフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物およびクロメン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号明細書、WO96/14596号明細書などに記載されている化合物が好適に使用できる。
【0046】
また、優れたフォトクロミック性を有する化合物として、特開2001−114775号、特開2001−031670号、特開2001−011067号、特開2001−011066号、特開2000−347346号、特開2000−344762号、特開2000−344761号、特開2000−327676号、特開2000−327675号、特開2000−256347号、特開2000−229976号、特開2000−229975号、特開2000−229974号、特開2000−229973号、特開2000−229972号、特開2000−219687号、特開2000−219686号、特開2000−219685号、特開平11−322739号、特開平11−286484号、特開平11−279171号、特開平10−298176号、特開平09−218301号、特開平09−124645号、特開平08−295690号、特開平08−176139号、特開平08−157467号等に記載された化合物も好適に使用することができる。
【0047】
これらフォトクロミック化合物の中でも、クロメン系フォトクロミック化合物は、フォトクロミック特性の耐久性が他のフォトクロミック化合物に比べ高く、さらに本発明によるフォトクロミック特性の発色濃度および退色速度の向上が他のフォトクロミック化合物に比べて大きいため特に好適に使用することができる。さらにこれらクロメン系フォトクロミック化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、本発明によるフォトクロミック特性の発色濃度および退色速度の向上が他のクロメン系フォトクロミック化合物に比べて特に大きいため好適に使用することができる。
【0048】
該クロメン系フォトクロミック化合物を具体的に例示すれば、下記構造のクロメン化合物が特に好ましい。
【0049】
【化1】
Figure 2004012857
【0050】
【化2】
Figure 2004012857
【0051】
【化3】
Figure 2004012857
【0052】
【化4】
Figure 2004012857
【0053】
【化5】
Figure 2004012857
【0054】
【化6】
Figure 2004012857
【0055】
これらフォトクロミック化合物は適切な発色色調を得るために、複数の種類のものを適宜混合して使用しても構わない。
【0056】
本発明において使用される光硬化性コーティング剤にフォトクロミック化合物を配合する際のその配合量は、該光硬化性コーティング剤に配合される全ラジカル重合性単量体100重量部に対して0.01〜20重量部であるのが好ましく、0.05〜15重量部であるのがより好ましく、0.1〜10重量部の範囲であるのが最も好ましい。
【0057】
フォトクロミック化合物の配合量を上記範囲とすることにより十分な発色濃度を得つつ、かつフォトクロミック化合物をラジカル重合性単量体に均一に溶解させることが容易となり、よって発色濃度も十分かつ均一なものとすることが容易となる。
【0058】
本発明において使用される光硬化性コーティング剤には、コーティング層の黄変防止や成形性の向上、さらにはフォトクロミック化合物を添加時のフォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上等のために、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加しても良い。
【0059】
例えば、界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できるが、ラジカル重合性単量体への溶解性からノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン系界面活性剤を具体的に挙げると、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができる。界面活性剤の使用に当たっては、2種以上を混合して使用しても良い。界面活性剤の添加量は、全ラジカル重合性単量体100重量部に対し、0.1〜20重量部の範囲が好ましい。
【0060】
また、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェーノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤は、2種以上を混合して使用しても良い。さらにこれらの非重合性化合物の使用に当たっては、界面活性剤と酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤を併用して使用しても良い。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤の添加量は、全重合性単量体100重量部に対しそれぞれ0.001〜20重量部の範囲が好ましい。
【0061】
本発明において、光硬化性コーティング剤によるプラスチックレンズのコーティング前に、密着性を向上させる目的でプラスチックレンズの前処理を行うことが好ましい。前処理としては、塩基性水溶液又は酸性水溶液による化学的処理、研磨剤を用いた研磨処理、大気圧プラズマ及び低圧プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、またはUVオゾン処理等を挙げることができるが、プラスチックレンズとコーティング層の密着性の観点から、プラズマ処理を用いるのが好適である。また、プラスチックレンズの前処理においては、異なる2種類以上の処理を併用しても構わない。
【0062】
プラズマ処理を行う場合、プラスチックレンズ表面をプラズマ処理した後、そのまま光硬化性コーティング剤で被覆してもよいが、プラズマ処理された表面をなんらかの溶剤(以下、洗浄溶剤)で洗浄することが、プラスチックレンズ表面とコーティング層との密着性をより確実とすることができるために好ましい。
【0063】
上記溶剤としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトニトリル、アセトン等の常温で水と任意の割合で混合する水溶性有機溶媒;1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ヘキサン、トルエン等のその他の有機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いても良いし、複数のものの混合溶剤でも良い。
【0064】
上記溶剤のなかでも、密着性向上効果が極めて再現性良く得られ、また排水処理等も極めて容易である点で、水を使用することが最も好ましい。
【0065】
本発明においては、上記光硬化性コーティング剤でプラスチックレンズ表面の少なくとも一つの面を被覆する。該被覆方法は特に限定されず公知の被覆(コーティング)方法がなんら制限なく適用できる。具体的には、コーティング剤をスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ディップ−スピンコーティング等の方法で塗布する方法が例示される。
【0066】
こうしてコーティング剤で表面被覆されたプラスチックレンズは、次いで光照射され、コーティング剤の光重合が行われる。光重合に使用される光源は、公知のものを何ら制限なく用いることができる。例えば、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、殺菌ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、タングステンランプ等の有電極ランプ、または無電極ランプ等を用いることができる。
【0067】
本発明の製造方法においては、光硬化性コーティング剤で被覆したプラスチックレンズの凸面の表面温度を光重合時に100℃以下にすることが好ましく、85℃以下にすることがより好ましく、さらには80℃以下にすることが最も好ましい。プラスチックレンズの表面温度が100℃を越えた場合は、プラスチックレンズが熱によりひずみ、光学歪の小さい良好なプラスチックを得ることができない。
【0068】
本発明の製造方法においては、光重合時のプラスチックレンズの表面温度を100℃以下に維持する具体的な方法としては、プラスチックレンズに照射するレンズ表面の光強度及び照射時間を制御する方法を挙げることができ、この際には必要に応じてプラスチックレンズを直接冷却する方法、光重合装置中の雰囲気を冷却する方法、光源にコールドリフレクター等を用いる方法、さらには赤外線を吸収もしくは反射するフィルターなどの光学フィルター等を光源とプラスチックレンズとの間に用いる方法等を併用することもできる。
本発明の製造方法におけるプラスチックレンズ表面の光強度としては、5〜300mW/cmの範囲が好適であるが、短時間で高重合率を達成し、且つレンズ表面の温度上昇をできるだけ抑制するためには、20〜200mW/cmの範囲がより好適である。
【0069】
また本発明の製造方法における光照射時間に関しては、光強度との組み合わせによって適宜選択すれば良く、全照射時間は、5〜3600秒の範囲が好適であるが、高重合率及び生産性等の観点から、20〜1800秒の範囲がより好適である。
【0070】
本発明において、光強度と照射時間を制御することにより光重合時のプラスチックレンズの表面温度を100℃以下に制御する方法として、以下の方法を採用することが好ましい。
【0071】
1)強強度の光照射を断続的に行う方法
2)強強度の光を照射した後、段階的に光の強度を弱くし、最終的に弱強度の光を照射する方法
3)強強度の光から弱強度の光に、徐々に光強度を減少させる方法
4)弱強度の光を長時間照射する方法
上記1)、2)及び3)の方法における強強度の光照射とは、70〜300mW/cmの光照射を意味し、上記2)、3)及び4)の方法における弱強度の光照射とは、70mW/cm未満の光照射を意味する。
【0072】
上記1)の方法は、強強度の光をレンズの表面温度が100℃以下になるように5〜120秒照射した後、一旦、光照射を10〜1800秒間停止させ、この操作を繰り返す方法である。この方法では、光照射を停止させている間に、プラスチックレンズを冷却することが好ましく、その時のレンズ表面温度は、40℃以下にすることが好ましい。ここでのプラスチックレンズの冷却は、光照射を停止し、熱を該プラスチックレンズに伝えないことが重要であり、冷却の方法は特に限定されない。簡単な方法としては、単純に自然放冷する手法を挙げることができる。
【0073】
上記2)の方法は、強強度の光を10〜240秒照射した後、段階的に光の強度を弱くしていき、弱強度の光を30〜1800秒照射する方法である。よって、ここで述べる強強度の光の照射は、合計の照射時間が10〜240秒の間であれば、多段階的に光を照射しても構わない。同様に弱強度の光の照射に関しても、合計の照射時間が30〜1800秒の間であれば、多段階的に光を照射しても構わない。光の強度を切り替える回数は、強強度から弱強度へ切り替える1回を含む1回以上であれば良い。
【0074】
上記3)の方法は、強強度の光から弱強度の光まで、合計の光照射時間が20〜3600秒になるように、徐々に光強度を減少させていく方法である。この方法は、光源の強度または光源とプラスチックレンズ間の距離を調整することにより達成できる。
【0075】
上記4)の方法は、弱強度の光を30〜3600秒間連続して、照射する方法である。
また、本発明における光重合時のプラスチックレンズの表面温度を100℃以下に制御する方法として、上記の1)〜4)の方法に、次に述べるA)〜D)の方法を併用することもできる。下記A)〜D)の方法は2種類以上を同時に採用しても構わない。
A)プラスチックレンズを直接冷却する方法
プラスチックレンズ表面に照射される光を遮らずにプラスチックレンズを冷却するために、該プラスチックレンズの裏面、さらには側面に冷水を循環させたチューブなどを接触させて、該プラスチックレンズを冷却する方法などが挙げられる。
B)光重合装置中の雰囲気を冷却する方法
光重合装置内に冷却したガスを導入する方法、または光重合装置を水冷などによって冷却することで、光重合装置内のガスを冷却する方法などが挙げられる。この冷却方法においては、公知のガスを何ら制限なく用いることができるが、光重合時には光硬化性コーティング剤を重合阻害がなく十分に硬化させるために、できるだけ酸素が低濃度の状況下で光照射を行うことが好ましい。酸素濃度の好適な範囲を示せば、好ましくは10000ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下である。冷却中のプラスチックレンズ周辺の雰囲気は、酸素を含まないガスで満たしてやることが好適である。このようなガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられるが、製造コストの観点から窒素が最も好ましい。
C)光源にコールドリフレクター等を用いる方法
この方法においては、光源の上部にコールドリフレクターを採用することによって赤外線が減少した光をプラスチックレンズに照射することができる。
D)赤外線を吸収もしくは反射する物質を光源とプラスチックレンズとの間に用いる方法
この方法においては、各種の赤外線を吸収することのできるフィルターや赤外線を反射することのできるフィルターなどの光学フィルター、または水や硫酸銅水溶液などの熱線吸収できる液体などを光源とプラスチックレンズとの間に介在させることで、該プラスチックレンズ表面の温度上昇を抑制することができる。
【0076】
また、本発明において、光照射によりプラスチックレンズ上に塗布した光硬化性コーティング剤を硬化させる場合、該プラスチックレンズを前述の理由により、窒素雰囲気下に設置した後に光照射を開始することが好ましい。
【0077】
本発明の製造方法により得られるコーティング層を有するプラスチックレンズは、そのまま光学材料として使用することが可能であるが、より好ましくは更にコーティング層をハードコート材で被覆することが好ましい。ハードコート材で被覆することにより、プラスチックレンズの耐擦傷性を向上させることができる。
【0078】
ハードコート材としては公知のものがなんら制限なく使用でき、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム等の酸化物のゾルを主成分とするハードコート剤や、有機高分子体を主成分とするハードコート剤が使用できる。
【0079】
さらに、本発明のプラスチックレンズを光硬化性コーティング剤にて被覆、硬化させた表面に、あるいは光硬化性コーティング剤を被覆、硬化、更にハードコート材で被覆した表面に、SiO、TiO、ZrO等の金属酸化物から成る薄膜の蒸着や有機高分子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理等の加工及び2次処理を施すことも可能である。
【0080】
【実施例】
以下、実施例および比較例を掲げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
以下に使用した化合物の略号と名称を示す。
(1)ラジカル重合性単量体
・シリルモノマー
TMSiMA:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
・その他のラジカル重合性単量体
TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート
EB6A:ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート(ダイセル・ユーシービー社:EB1830)
GMA:グリシジルメタアクリレート
BPE:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン
9GA:平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート
U6A:ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート(新中村化学社:U−6HA)
MePEGMA:平均分子量1000のメチルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート
BPEオリゴマー:平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン
(2)アミン化合物
NMDEA:N−メチルジエタノールアミン
DMEMA:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
(3)フォトクロミック化合物
クロメン1
【0082】
【化7】
Figure 2004012857
【0083】
クロメン2
【0084】
【化8】
Figure 2004012857
【0085】
クロメン3
【0086】
【化9】
Figure 2004012857
【0087】
クロメン4
【0088】
【化10】
Figure 2004012857
【0089】
クロメン5
【0090】
【化11】
Figure 2004012857
【0091】
クロメン6
【0092】
【化12】
Figure 2004012857
【0093】
(4)重合開始剤
CGI1800:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドの3対1の比の混合物
(5)安定剤
LS765:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート
(6)光硬化性コーティング剤
光硬化性コーティング剤A
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート50重量部、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート30重量部、グリシジルメタクリレート10重量部からなる重合性単量体100重量部に、N−メチルジエタノールアミンを5重量部、LS765を5重量部、重合開始剤としてCGI1800を0.1重量部添加し十分に混合し、光硬化性コーティング剤Aを得た。
【0094】
光硬化性コーティング剤B〜L
コーティング組成物Aと同様の方法で、表1に示す成分を混合して光硬化性コーティング剤B〜Lを得た。
【0095】
【表1】
Figure 2004012857
【0096】
(7)プラスチックレンズ
CR39(アリル樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.50)
MR(チオウレタン系樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.60)
TE(チオエポキシ系樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.71)
PC(ポリカーボネート樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.59)
SPL(メタクリル系樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.54)
実施例1
中心厚1mm、周縁厚7mmのチオウレタン系樹脂プラスチックレンズ(MR)の凸面全体に、大気圧プラズマ照射器(株式会社キーエンス製ST−7000)を用いて、90秒間の大気圧プラズマ処理を行い、30℃の温水約2mlで凸面を洗浄した後、光硬化性コーティング剤Aを、MIKASA製スピンコーター1H−DX2を用いて、回転数60r.p.mで40秒→500r.p.mで2秒→1000r.p.mで5秒の条件でスピンコートした。光硬化性コーティング剤で被覆された凸面を上面にしてレンズを保持し、窒素ガス雰囲気中で照射強度が100mW/cm程度のコールドリフレクターを装備したメタルハライドランプを用いて20秒間照射し、次いで照射強度が30mW/cm程度の光を120秒照射し、光硬化性コーティング組成物を硬化させた。このレンズの光照射直後の表面温度は、80℃であった。その後、レンズの凸面を下面にして保持し、さらに120℃で3時間加熱した。
【0097】
得られたコーティング層を有するプラスチックレンズを試料とし、蛍光灯の反射光によりプラスチックレンズの熱変形の有無を確認し、コーティング層とプラスチックレンズとの密着性及びコーティング層の厚さを以下の方法で測定し、その結果を表2に示した。
【0098】
(1)レンズの熱変形:光重合後に、平行に並んだ2本の屋内蛍光灯の反射光を用いて、プラスチックレンズの変形を目視で確認した。評価基準としては、プラスチックレンズの凸面もしくは凹面に屋内蛍光灯を映し、重合前の2本の蛍光灯間の距離を1とした時に、重合後の蛍光灯間の距離が0.98以上1.02未満の範囲で蛍光灯が2本平行に並んでいるもの(熱変形していないもの)を◎、重合後の蛍光灯間の距離が0.95以上0.98未満又は1.02以上1.05未満であり2本の蛍光灯の中央部が重合前に比べてほとんど歪んでいないもの(重合前後でほとんど熱変形していないもの)を○、重合後の蛍光灯間の距離が0.90以上0.95未満又は1.05以上1.10未満であり2本の蛍光灯の中央部がわずかに歪んでいるもの(わずかに熱変形しているもの)を△、重合後の蛍光灯間の距離が0.90未満又は1.10以上でありひどく歪んでいるもの(熱変形しているもの)を×とし、4段階評価とした。
【0099】
(2)レンズとコーティング層との密着性:光硬化性コーティング剤で被覆されたプラスチックレンズのコーティング層側の表面に、先端が鋭利なカッターナイフで1mm×1mmのマス目を100個つけた。続いて、市販のセロハンテープを貼り付けて、次いでそのセロハンテープを素早く剥がした時のコーティング層の剥がれ状態を目視により確認した。評価(評価後の残存マス目/評価前のマス目で示す。)は、100/100を◎、100/100未満95/100以上を○、95/100未満80/100以上を△、80/100未満50/100以上を▲、50/100未満を×とする5段階評価とした。
【0100】
(3)フォトクロミック層の膜厚:フィルメトリクス社製薄膜測定装置を用いて測定を行った。
【0101】
【表2】
Figure 2004012857
【0102】
実施例2〜8
光硬化性コーティング剤として、表1に示すコーティング剤を用い、また表2に示されるレンズ形状(中心厚/周縁厚)及び光照射方法を用いたこと以外は実施例1と同様にして試料を作成、評価した。評価結果を表2に示した。
【0103】
実施例9〜21
光硬化性コーティング剤として、表1に示されるコーティング剤を用い、また表3に示したレンズ形状(中心厚/周縁厚)及び光照射方法を用いる以外は実施例1と同様にして試料を作成した。
【0104】
得られたコーティング層を有するプラスチックレンズを試料とし、最大吸収波長、発色濃度、退色速度及び耐久性を以下の方法で測定した。また、プラスチックレンズの熱変形、コーティング層とプラスチックレンズとの密着性並びにコーティング層の厚さについては、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表3に示した。
【0105】
(1)最大吸収波長(λmax):得られたフォトクロミック化合物を含むコーティング層を有するプラスチックレンズに、浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100をエアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃、重合体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm,245nm=24μW/cmで120秒間照射して発色させ、このときの最大吸収波長を(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた。なお、最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
【0106】
(2)発色濃度:120秒間光照射した後の、最大吸収波長における吸光度{ε(120)}と、光照射していない状態の硬化体の上記波長における吸光度{ε(0)}との差{ε(120)−ε(0)}を求めこれを発色濃度とした。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0107】
(3)退色速度:120秒間光照射した後、光の照射を止め、硬化体の最大吸収波長における吸光度が前記{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間{t1/2(min)}を測定した。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0108】
(4)耐久性:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られたフォトクロミック化合物を含むコーティング層を有するレンズをスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により200時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A)および試験後の発色濃度(A200)を測定し、{(A200/A)×100}の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
【0109】
【表3】
Figure 2004012857
【0110】
実施例22〜25
実施例9において、チオウレタン系樹脂プラスチックレンズであるMRに代えて、アリル樹脂プラスチックレンズ(CR39)、チオエポキシ系樹脂プラスチックレンズ(TE)、ポリカーボネート樹脂プラスチックレンズ(PC)、又はメタクリル系樹脂プラスチックレンズ(SPL)を用いた以外は実施例9と同様にしてコーティング層を有するプラスチックレンズを製造し、その性能を評価した。結果を表4に示した。基材樹脂の種類によらず、いずれも良好な結果を示すことが判った。
【0111】
【表4】
Figure 2004012857
【0112】
比較例1〜5
光硬化性コーティング剤として、表1に示したコーティング剤を用い、また表5に示したレンズ形状(中心厚/周縁厚)及び光照射方法を用いたこと以外は実施例1と同様にして試料を作成した。
【0113】
得られたコーティング層を有するプラスチックレンズを試料とし、最大吸収波長、発色濃度、退色速度及び耐久性については、実施例9〜21と同様な方法で測定した。また、プラスチックレンズの熱変形、コーティング層とプラスチックレンズとの密着性並びにコーティング層の厚さについては、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表5に示した。
【0114】
【表5】
Figure 2004012857
【0115】
上記表2〜4から明らかなように、中心部分の厚さが2mm未満であり、中心部分と周縁部分の厚みの比が1以下であるプラスチックレンズであっても、光硬化性コーティング剤を光硬化させる際の光照射の強度と時間を調整することで、プラスチックレンズを熱変形させることなく、コーティング層を付与できることが理解できる。特に、プラスチックレンズの表面温度が80℃以下の場合であれば、プラスチックレンズを全く熱変形させることなくコーティング層を付与可能である。それに対し、表5の比較例1〜3の結果から分かるように、比較的強度が強い光の一度のみの照射で、コーティング剤を硬化させた場合、プラスチックレンズが熱変形することが理解できる。但し、比較例4及び5に示すように、中心部分の厚さが2mm以上のプラスチックレンズを用いれば、比較的強度が強い光の一度のみの照射でも、プラスチックレンズが熱変形しないことが分かる。
【0116】
【発明の効果】
プラスチックレンズ表面に光硬化性コーティング剤を塗布した後、光照射する際にプラスチックレンズの表面温度が100℃以下になるように、レンズ表面における光強度と光照射時間を制御することにより、プラスチックレンズを熱で変形させることなくコーティング層を付与することができる。
【0117】
即ち、本発明のプラスチックレンズの製造方法は、コーティング層を付与する前後で、プラスチックレンズが熱変形することなく光学物性を維持し、またコーティング層とプラスチックレンズとの密着性に優れたコーティング層を有するプラスチックレンズを提供する製造方法として極めて有用である。

Claims (3)

  1. 中心部分の厚さが2mm未満であり、中心部分と周縁部分の厚みの比が1以下であるプラスチックレンズの表面に光硬化性コーティング剤を被覆した後、光照射してコート膜を形成するに当たり、光照射時におけるプラスチックレンズの表面温度を100℃以下とすることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
  2. 光照射を断続的に行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 光照射の初期に強度の強い光を照射し、徐々にまたは段階的に光の強度を弱くする請求項1又は2記載の製造方法。
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