JP2004011731A - 小型ウォーム併用ギヤードモータ - Google Patents

小型ウォーム併用ギヤードモータ Download PDF

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【課題】入出力の軸間距離を一定に保ちつつ低コストで広範囲の減速比を構成することができる小型ウォーム併用ギヤードモータを提供すること。
【解決手段】小型ウォーム併用ギヤードモータ(ギヤードモータ)1には、第1変速段を構成するウォーム10及びハスバ歯車11と、第2〜第4変速段を構成する3組の歯車12〜17とが設けられている。よって、ウォーム10及びハスバ歯車11を標準部品としつつ3組の歯車12〜17の変速比を歯数で調整することにより、出力軸3の位置を一定に保ちつつギヤードモータ1の減速比を変更することができる。また、各歯車11〜17が支持板18,19に支持されているので、各歯車11〜17や支持板18,19等を収容するケースの形状は変更する必要がなく、ケースの型費を低減してギヤードモータ1を低コストで製造することができる。
【選択図】  図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、入出力の軸間距離を一定に保ちつつ低コストで広範囲の減速比を得ることができる小型ウォーム併用ギヤードモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、モータと歯車減速機とを組み合わせたギヤードモータが、電気機器に設けられるコンベヤや事務機などの紙送り装置の駆動源等に使用されている。このギヤードモータのうち、ウォームギヤを備えたものは、駆動音が小さく、また、一般の平歯車などにより歯車減速機を構成する場合に比較して少ない容積で大幅な減速比を得ることができるので、広く利用されている。
【0003】
ウォームギヤを有するギヤードモータを製造する場合、部品種類を削減するためにウォームのモジュールや条数は、一定に設定されている。このため、ギヤードモータの減速比は、ウォームに噛合されるウォームホイール(又はハスバ歯車)の歯数を変更して調節される。ウォームホイールの歯数の変更は、その外径を変更することにより行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、減速比の変更時にウォームホイールの外径が変更されると、モータに連結されるウォームの回転軸と、ウォームホイールの回転軸との軸間距離が変動してしまう。ギヤードモータを構成するウォームホイールは、一般にケースに軸支されており、減速比の変更に伴ってウォームとウォームホイールとの軸間距離が変更されると、ウォームホイールを支持するケースを減速比に応じた専用部品としなければならず、ケースの型費によってギヤードモータのコストが増大してしまうという問題点があった。また、電気機器などにおいては、部品を小型化させるために、ギヤードモータを含めた構成部品の配置スペースに余裕がない場合も多く、ギヤードモータが取着される相手部品との取付位置の見直しや周辺部品のレイアウトの変更が必要となって、減速比の変更に伴うコストが増大してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、入出力の軸間距離を一定に保ちつつ低コストで広範囲の減速比を構成することができる小型ウォーム併用ギヤードモータを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、請求項1記載の小型ウォーム併用ギヤードモータは、モータと、外周にねじ状の歯形が設けられ前記モータに連結されるウォームと、そのウォームを介して入力される前記モータの回転力を出力する出力軸と、前記ウォームの回転軸に段違いに交差すると共に前記出力軸に略平行な回転軸を有し、前記ウォームに噛合可能な歯形が外周に設けられた第1歯車と、その第1歯車に略平行な回転軸を有すると共に外周に歯形が設けられて前記第1歯車の回転力を所定の速比で出力軸に伝達する少なくとも1組以上の中間歯車と、その中間歯車と前記第1歯車とを支持する支持部材を前記出力軸と共に備えて構成される歯車ユニットと、その歯車ユニットを挿通可能な開口とその開口に連続して前記歯車ユニット及び前記ウォームを収容する収容空間とが形成された収容部材とを備えている。
【0007】
この請求項1記載の小型ウォーム併用ギヤードモータによれば、モータの回転力は、モータに連結されたウォームを介して、そのウォームに噛合可能な歯形が外周に設けられた第1歯車に伝達され、更に、中間歯車によって所定の速比に変換された後に出力軸から出力される。ここで、歯車ユニットは、中間歯車と第1歯車と出力軸とが支持部材に支持されてユニット化される。このユニット化された歯車ユニットは、収容部材の開口に挿通されて収容空間に配置される。
【0008】
請求項2記載の小型ウォーム併用ギヤードモータは、請求項1記載の小型ウォーム併用ギヤードモータにおいて、前記ウォームの進み角は、前記出力軸の回転に基づく前記ウォームの回転を阻止する角度に設定されている。
【0009】
請求項3記載の小型ウォーム併用ギヤードモータは、請求項1又は2記載の小型ウォーム併用ギヤードモータにおいて、前記支持部材は、前記第1歯車と前記中間歯車とが設けられる軸を前記出力軸の軸方向に沿った両端側から挟装する一対の板状に形成された一対のプレートを備え、その一対のプレートのうち少なくとも前記収容部材の開口側に設けられた一方のプレートを貫通して前記収容部材に螺着されるビス部とそのビス部の軸方向視においてそのビス部より外方に突出して前記一方のプレートに係合する係合部とを有する締結部材を備えている。
【0010】
請求項4記載の小型ウォーム併用ギヤードモータは、請求項1から3のいずれかに記載の小型ウォーム併用ギヤードモータにおいて、前記ウォームに回転体を介して回転自在に連結される軸受部材と、その軸受部材に対向して配設され前記ウォームの軸方向に沿った前記軸受部材の移動を規制する対向部とを備えている。
【0011】
請求項5記載の小型ウォーム併用ギヤードモータは、請求項1から4のいずれかに記載の小型ウォーム併用ギヤードモータにおいて、一枚板で形成され前記モータの回転軸を挿通する軸穴とその軸穴を中心に放射状に穿設された複数の固定穴とを有して前記収容部材に固定される間座を備え、その間座に設けられた複数の固定穴は、前記軸穴を中心とする周方向に沿って第1の角度を隔てて離間して配設された複数の第1固定穴と、その第1固定穴が配設される第1の角度とは異なる第2の角度を隔てて離間して配設された複数の第2固定穴とで形成されている。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は本発明の小型ウォーム併用ギヤードモータ(以下、ギヤードモータと略す)1の外観を示した正面図である。なお、図1においては、理解の容易のために、ウォーム10に噛合されるハスバ歯車11、並びに、複数の平歯車で形成される小歯車12,14,16及び大歯車13,15,17は、ピッチ円を2点鎖線で示している。また、図中のA〜Dで示す各点は、歯車11〜17の回転軸線を示す仮想線を軸視したものである。
【0013】
ギヤードモータ1は、モータ2から供給される回転トルクを増幅して出力軸3から出力する装置である。このギヤードモータ1は、ケース4を備えており、そのケース4の側面には、出力軸3を回転させる回転トルクを供給するモータ2が間座5を介してねじ止めで固定されている。なお、モータ2に突設されたモータ軸2aには、後述するウォーム10が設けられている。
【0014】
ケース4には、正面視円形の開口4aが穿設されており、その開口4aの奥側に凹状の収容空間4b(図2参照)が開口4aに連続して形成されている。収容空間4bには、複数の歯車11〜17や出力軸3などを備えて構成された歯車ユニット6(図2参照)が配設されており、開口4aの口元側(図1の紙面垂直方向手前側)に出力軸3を挿通する穴を有して開口4aと略同一の外形に形成された蓋7が開口4aに圧入されている。
【0015】
ケース4の開口4aの周りには、ギヤードモータ1を相手部品に取り付けるための3つのボルト孔4cが設けられている。このボルト孔4cは、出力軸3と同方向に延びており、出力軸3に対して垂直に形成された取付面が相手部品の取付面に対向して配置され、相手部品に螺設されたボルト穴に3つのボルトで取り付けられる。このボルト孔3cに対する出力軸3の相対位置は、製品の開発段階において減速比が変更された場合にも同一位置となることが好ましく、ギヤードモータ1においては、歯車ユニット6に設けられる複数の歯車11〜17の速比を変更することにより、ボルト孔3cに対する出力軸3の相対位置を一定位置に固定することができる。
【0016】
次に、図2及び図3を参照して、歯車ユニット6について説明する。図2は、図1のII−ABCD−II線で切断したギヤードモータ1を展開して示した断面図である。また、図3は、図1のIII−III線におけるギヤードモータ1の断面図である。なお、図3においては、図面の理解を容易にするために、断面より奥側に配置されるモータ2、ウォーム10及びハスバ歯車11等を省略して示している。
【0017】
歯車ユニット6は、図2に示すように、ケース4の収容空間4b内に対向して配設された一対のプレート18,19と、その一対のプレート18,19を所定距離離間した位置に連結支持する円筒状の支柱25(図3参照)とを備えている。一対のプレート18,19は、正面視においてはケース4の開口4aに対して外周に一定隙間が設けられるように略円盤状に形成されている。かかる一対のプレート18,19には、出力軸3が直交して回動可能に軸支されると共に、出力軸3と略平行に第1〜第3軸芯20〜22が軸支されている。また、収容空間4bの奥側に配設される一方のプレート18の上部には穴が設けられており、その穴がケース4から突設された突起4dに嵌合することにより、歯車ユニット6が収容空間4bの所定位置に配置される。なお、出力軸3及び第1〜第3軸芯20〜22は、各プレート18,19に圧入された円筒状の軸受23a〜23hに挿通して支持されており、各軸芯20〜22の回転時の抵抗が軽減されるようになっている。
【0018】
支柱25は、図3に示すように、2枚のプレート18,19の間に設けられた筒状の部材であり、その両端部にプレート18,19がそれぞれ圧入支持されている。この支柱25は、正面視において歯車ユニット6を固定する3本の固定ビス26と略同一位置に配置されており(図1参照)、プレート18,19の外縁部に沿って3箇所に略等間隔に離間して設けられている。この3箇所に設けられた支柱25によって、一対のプレート18,19が出力軸3の軸方向に沿った両端側(図3の左右両側)から第1〜第3軸芯20〜22を支持する所定位置に配置されて、歯車ユニット6が形成される。
【0019】
支柱25の内面側には、図3に示すように、歯車ユニット6をケース4に固定するための固定ビス26が挿通されている。この固定ビス26は、支柱25の内面側に配設された円柱状に形成され、その先端側(図3の左側)にねじ山が形成されたビス部26aと、ビス部26aの他端側(図3の右側)に形成されビス部26より大径に形成されてプレート19の外面側(図3の右側)に係合する頭部26bとを備えている。
【0020】
固定ビス26のビス部26aの先端がケース4に螺着されると、ケース4に対する固定ビス26の相対位置が定められる。その相対位置が定められた固定ビス26の頭部26bがプレート19の外面側に係合することにより、プレート19は、ケース4に対する相対位置が規制される。このため、ケース4の開口4a側へプレート19が移動することがなく、固定ビス26を使用して、一対のプレート18,19を離間させないように支持して歯車ユニット6を形成させると共に歯車ユニット6をケース4に収容した状態を維持させることができる。なお、固定ビス26は、必ずしも支柱25及びプレート18,19を貫通させる必要は無く、プレート19のみを貫通してケース体4に固定するものであっても良い。即ち、固定ビスは、プレート19が収容空間4bから開口4a側へ移動することを規制するものであれば良い。
【0021】
プレート18,19に支持される出力軸3は、図2に示すように、一端部が蓋7から外側へ突出した略円柱状の部材であり、プレート18,19に軸受23a,23bを介して軸支されている。また、収容空間4bに設けられた出力軸3の端部は、小径の部位を有する段付き状に形成され、小径の端部が円筒状の軸受23bに当接して収容空間4b奥側への移動が規制されている。また、この出力軸3の略中央部には、複数の歯が外周に設けられた外歯車で形成される大歯車17が固設されており、歯車ユニット6の最終の変速段を構成している。
【0022】
更に、出力軸3には、大歯車17の配置位置より収容空間4bの開口4a側(図2の右側)に筒状のスペーサ24aが挿通されており、このスペーサ24aが大歯車17と軸受23との間に介在して、開口4a側への大歯車17(出力軸3)の移動が規制される。
【0023】
第1〜第3軸芯20〜22には、ハスバ歯車11、小歯車12,14,16及び大歯車13,15,17が設けられており、各歯車11〜17がウォーム10と共に第1変速段から第4変速段までの4つの変速段を構成している。この第1〜第4変速段によってウォーム10から入力されるモータ2の回転トルクは増幅されて出力軸3から出力される。なお、第1〜第3軸芯20〜22は、各軸芯20〜22に固設された小歯車12,14,16の軸方向に沿った一端側、又は、両端側に配設された筒状のスペーサ24b〜24fによって軸方向の配置位置が定められている。また、第1実施例において、小歯車12,14,16は、圧入と加締めとをして第1〜第3軸芯に固設され、ずれなどが発生しないようになっている。
【0024】
ここで、第1〜第4変速段について具体的に説明する。第1変速段は、モータ軸2aの先端に設けられ、外周にねじ状の歯形が設けられたウォーム10と、ウォーム10の軸方向に段違いに直交する第1軸芯20に設けられてウォーム10に噛合可能な歯形が外周に設けられたハスバ歯車11とで構成されている。このウォーム10の進み角は、略6度に設定されており、ハスバ歯車11とウォーム10との歯面の摩擦抵抗により、ハスバ歯車11の回転からではウォーム10を回すことができない自動締まり(セルフロック)を生じるようになっている。
【0025】
このウォーム10の進み角は、必ずしも6度とする必要はないが、セルフロックを行わせる場合には、略2度から略6度の範囲内で設定することが好ましい。一方、ウォーム10の進み角を大きくしてセルフロックを生じさせない設定としても良い。セルフロックを生じさせない設定とする場合には、ウォームの進み角を略6.5度以上とすることが好ましい。出力軸3を直接的に動作させることができるので、出力軸3を相手部品に組み付ける際の位置調整を容易にすることができると共に、ウォームの進み角の増大に伴って動力の伝達効率を上昇させることができる。
【0026】
また、ウォーム及びハスバ歯車は、ウォームの進み角を一定間隔をあけて設定した複数種類の組み合わせを標準部品として設定し、必要に応じて所望の進み角に近いウォーム及びハスバ歯車の組み合わせを選択して使用しても良い。例えば、ウォームの進み角を2度おきに設定し、4度、6度、8度の進み角に設定したウォーム及びハスバ歯車を標準部品としても良い。標準部品の設定により、部品種類の増加を抑制しつつ多種の要求仕様に適応したギヤードモータを低コストで製造することができる。
【0027】
なお、ウォーム10は、外周面が円柱状に形成された円筒ウォームであっても、鼓形に形成された鼓形ウォームであっても良い。また、ウォーム10に噛合される歯車として、ハスバ歯車11の代わりに周方向に沿って凹状の溝が形成されたウォームホイールを使用しても良い。
【0028】
第2変速段は、ハスバ歯車11と一体的に回転可能に第1軸芯20に固設された第1小歯車12と、第2軸芯21に固設されて第1小歯車12に噛合する第1大歯車13との組み合わせで構成されている。第3変速段は、第2変速段を構成する第1大歯車13と一体的に回転可能に第2軸芯21に固設された第2小歯車14と、第3軸芯22に固設されて第2小歯車14に噛合する第2大歯車15との組み合わせで構成されている。
【0029】
最終段である第4変速段は、第3変速段を構成する第2大歯車15と一体的に回転可能に第3軸芯22に固設された第3小歯車16と、出力軸3に固設されて第3小歯車16に噛合する第3大歯車17との組み合わせで構成されている。
【0030】
このように、ギヤードモータ1には、第1変速段を構成するウォーム10及びハスバ歯車11の他に、第2〜第4変速段を構成する3組の歯車12〜17が設けられている。よって、ウォーム10及びハスバ歯車11を標準部品としつつ3組の歯車12〜17の変速比を歯数で調整することにより、出力軸3の位置を一定に保ちつつギヤードモータ1の減速比を変更することができる。
【0031】
次に、図4を参照して、モータ2に連結されるウォーム10の支持構造について説明する。図4は、モータとウォームとの連結部を断面視して示した図である。なお、図4においては、図面の理解の容易のために、歯車ユニット6を省略して示している。
【0032】
モータ軸2aの先端部には、モータ軸2aに回転軸を一致させてウォーム10が連結固定されている。ウォーム10は、モータ2から離れた側の外周にねじ状の歯形が設けられている。また、モータ2に近い側の外周は、平滑に形成されており、その外側にころがり軸受31が設けられている。
【0033】
ころがり軸受31は、一般的な深溝玉軸受であり、環状に形成されてウォーム10の外面に固定された内輪31aと、その内輪31aの外周面に沿って回転自在に球状に形成された複数の回転体31bと、その回転体31bの外側に配設されて内輪31aに対して回転自在に連結される外輪31cとを備えている。このころがり軸受31は、外輪31cがケース4やモータ2の一部に当接した状態であっても、回転体31bが回転することにより内輪31aは、少ない抵抗で回転可能となる。
【0034】
ケース4におけるモータ2が固定された一側面には、段付きの円筒状に穿設されたモータ軸穴4eが設けられており、モータ軸穴4eの内側にウォーム10及びころがり軸受31が配設されている。モータ軸穴4eには、その段差部4fにころがり軸受31の外輪31cのみが、ウォーム10の軸方向に沿って対向するようになっている。即ち、モータ軸穴4eに設けられた段差部4fの高さは、ころがり軸受31の外輪31cに対向し、内輪31aには対向しない高さに形成されている。このため、ウォーム10がその軸方向に沿ってモータ2から離間する場合、段差部4fに外輪31cが当接してウォーム10の移動が規制される。
【0035】
また、ころがり軸受31よりモータ2側には、鋼で形成された環状のワッシャー32が、ころがり軸受31とモータ2との間に配設されている。このワッシャー32は、モータ軸穴4eの段差部4fの高さと略同一の幅を設けて形成されており、その段差部4fと同様にころがり軸受31の外輪31cのみが対向する。このため、ウォーム10が軸方向に沿ってモータ2側へ近づく場合には、ワッシャー32に外輪31cが当接してウォーム10の移動が規制される。
【0036】
ここで、一般に、モータは、モータ軸の軸方向に沿った力が入力された場合に破損しやすく、その軸方向に沿った入力荷重を少なくすることが好ましい。しかし、ウォームギヤを使用したギヤードモータにおいては、ウォームからハスバ歯車などに伝達される回転力は、その方向が変換されて、ウォームの軸方向に沿ったものとなる。このウォームの軸方向に沿った力(推力)が直接的な反力としてウォームに加えられるので、ウォームギヤを有するギヤードモータに用いるモータへの要求性能が高められ、高価なモータを使用しなければならなかった。
【0037】
この問題に対処する方法として、ウォームの軸方向の移動を規制する部材を設けてモータへの入力荷重を軽減させることも考えられるが、モータから入力された回転トルクがロスしやすく、モータの回転に対する出力効率が低下してしまうという問題点があった。また、ウォームとハスバ歯車との噛合は接触力が高く、モータの軸に推力がかかるので、モータの出力効率を顕著に低下させると共に、モータの寿命が著しく短命になっていた。
【0038】
これに対し、ギヤードモータ1は、ウォーム10に連結されるころがり軸受31の外輪31cが段差部4e又はワッシャー32に当接することにより、ウォーム10に連結されるモータ軸2aに加えられる軸方向(スラスト方向)の力を軽減することができる。よって、低性能で安価なモータ2をギヤードモータ1に使用することができる。また、外輪31cは、ウォーム10に回転体31bを介して回転自在に連結されているので、段差部4e又はワッシャー32に外輪31cの移動が規制された状態におけるウォーム10の回転ロスを少なくして、モータ2の回転をより高効率で出力軸3に伝達することができる。
【0039】
なお、ころがり軸受31は、必ずしも深溝玉軸受で構成する必要は無く、回転軸に平行なスラスト荷重を受けても回転摩擦を生じさせないものであれば良い。例えば、円筒ころ軸受などのラジアル軸受であっても良く、又は、一般に用いられるスラスト軸受であっても良い。また、ワッシャー32は、必ずしも設ける必要はなく、間座5やモータ2の一部をころがり軸受31の外輪31cに対向させ、その外輪31cの移動を規制させるものであっても良い。
【0040】
次に、図4及び図5を参照してモータ2とケース4とを連結する間座5について説明する。図5は、図1の矢印V方向から見た間座5を示した図である。
【0041】
モータ2には、図4に示すように、モータ2の位置を固定するための取付穴が、モータ軸2を中心とした上下2箇所に設けられている。この取付穴にモータ2を固定するための固定ビス27が螺着されることにより、モータ2は間座5に固定される。
【0042】
間座5は、一枚の金属板で略矩形状に形成されており、多種のモータをケース4に固定するための部材である。この間座5には、図5に示すように、その外縁に沿った四隅に間座5をケース4に固定するための固定ビス28を挿通する固定穴5fが設けられると共に、その略中央部にモータ軸2を挿通する軸穴5aが設けられている。
【0043】
間座5の軸穴5aを中心とした上下2箇所には、図5に示すように、軸穴5aを中心に放射状に穿設された固定穴5b,5cが設けられている。この固定穴5b,5cは、モータ2と間座5とを固定するためのものである。モータ2に設けられる取付穴は、一般に、軸穴5aを中心に周方向に沿って所定の角度を隔てて略等間隔に配設されており、モータの容量に応じて軸穴5aからの距離が異なって形成されるものである。即ち、容量の大きなモータほど軸穴5aから離間した位置に取付穴が設けられ、容量の小さいモータは、軸穴5aに近い位置に取付穴が設けられるのである。本実施例の間座5には、固定穴5b,5cが軸穴5aを中心とした放射状に穿設されているので、容量の大小に関わらず多種のモータに間座5を適合させることができる。
【0044】
また、間座5には、その固定穴5bに対し、軸穴5aを中心とする周方向に沿って略120度の角度を隔てた2箇所に固定穴5d,5eが設けられている。つまり、軸穴5aの周りには、略180度の角度を隔てた2箇所に固定穴5b,5cが設けられると共に、略120度の角度を隔てた3箇所に固定穴5b,5d,5eが設けられるのである。メーカや種類に依っては、必ずしも略180度の角度を隔てた2箇所にモータ2の取付穴が配置されるものでなく、異なる角度で離間して配置されることもある。間座5には、モータ軸に対して略180度の角度を隔てた位置に取付穴を有するモータであっても、略120度の角度を隔てた位置に取付穴を有するモータであっても間座5を適合させることができる。
【0045】
このように、1の間座を多種のモータに適合させることができるので、減速比などの仕様に基づいて決定される複数種類のモータの取付穴に合わせてわざわざ固定穴を設ける必要がなく、少ない部品種類にして型費を低減することができる。なお、間座5に設けられる固定穴の配置間隔は、必ずしも120度と180度に限定されるものでなく、60度や90度などの別の角度に設定されても良い。
【0046】
以上説明したように、ギヤードモータ1には、第1変速段を構成するウォーム10及びハスバ歯車11の他に、第2〜第4変速段を構成する3組の歯車12〜17が設けたので、ウォーム10及びハスバ歯車11を標準部品としつつ3組の歯車12〜17の変速比を歯数で調整することにより、出力軸3の位置を一定に保ちつつギヤードモータ1の減速比を変更することができる。また、第2〜第4変速段の調整時に軸芯20〜22の位置変更が必要な場合であっても、円盤状のプレート18,19に穿設される軸受固定用の穴位置を変更すれば良く、ギヤードモータ1の構成部品のうち最も型費が高いケース4は同一形状のまま多種の減速比に対応させることができる。
【0047】
更に、ハスバ歯車11と第2〜第4変速段を構成する3組の歯車12〜17と、各歯車11〜17が固設された軸芯20〜22及び出力軸3を支持するプレート18,19等で形成される歯車ユニット6を挿通可能な開口4aがケース4に設けられているので、予め各部材の配置位置を調整して歯車ユニット6を形成した状態で、ケース4に収容することができる。よって、限られた作業スペースしかとれないケース4の収容空間4aに個別に軸芯20〜22や歯車11〜17などを設ける場合に比較して組み付け時の作業性を向上することができる。
【0048】
次に、図6を参照して、第2実施例の小型ウォーム併用ギヤードモータ(以下、ギヤードモータと略す)50について説明する。図6は、第2実施例におけるギヤードモータ50の展開断面図である。上述した第1実施例のギヤードモータ1は4つの変速段で構成されたのに対して、第2実施例のギヤードモータ50は、第2軸芯21に小歯車と大歯車を1つずつ追加して、5つの変速段で構成されたものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0049】
第2軸芯21には、第2変速段の一部を構成する大歯車13と第3減速段の一部を構成する小歯車14とが一体となって回転可能に支持されると共に、その第2軸芯21の軸方向に沿った収容空間4bの開口4a側(図6の右側)には、小歯車53が第2軸芯21に圧入と加締めとで固設されている。小歯車53は、出力軸3に設けられた大歯車54と共に第5変速段を構成するものであり、大歯車54は、軸受23aに隣り合わせて配置されている。また、小歯車53には、その収容空間4bの奥側(図6の左側)に向けて円筒状に突出して形成されており、その円筒状の部位に大歯車52が固設されている。大歯車52は、第3軸芯22と一体的に回転する小歯車51と共に第4変速段を構成する。更に、第1実施例のギヤードモータ1において第2軸芯21及び出力軸3に設けられていたスペーサ24a,24dは、歯車の配置位置の変更により削除されており、また、第3軸芯22に設けられていたスペーサ24dは、軸方向の長さがスペーサ24dより長く形成されたスペーサ55dに変更されている。
【0050】
このように、第2実施例のギヤードモータ50は、第1実施例のギヤードモータ1に対して出力軸3と平行に設けられる軸芯(第2軸芯21)に変速段を構成する歯車を追加したものであるので、入力軸を形成するウォーム10と出力軸3との軸間距離をギヤードモータ1と同一に形成しつつより高い減速比を構成することができる。なお、軸芯に設ける歯車の数は、必ずしも2つの大歯車及び小歯車までとする必要はなく、3以上の大歯車及び小歯車を1の軸芯に設けて更に高い減速比を構成するものであっても良い。
【0051】
次に、図7を参照して、第3実施例の小型ウォーム併用ギヤードモータ(以下、ギヤードモータと略す)60について説明する。図7は、第3実施例におけるギヤードモータ60の展開断面図である。上述した第1実施例のギヤードモータ1は4つの変速段で構成されたのに対して、第3実施例のギヤードモータ60は、第1軸芯20と出力軸3とにのみ歯車が設けられて、2つの変速段で構成されたものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0052】
プレート18,19には、第1軸芯20と出力軸3とが支持されており、ギヤードモータ1に設けられた第2軸芯21及び第3軸芯22は設けられず、それら軸芯21,22に設けられていた歯車も設けられていない。出力軸3に設けられた大歯車62には、第1軸芯20に固設された小歯車61が噛合し、その小歯車61にハスバ歯車11が固設されている。また、第1実施例のギヤードモータ1において出力軸3に設けられていたスペーサ24aは、歯車の配置位置の変更により、軸方向の長さがスペーサ24aより長く形成されたスペーサ64aに変更されている。
【0053】
モータ2の回転トルクがウォーム10に伝達されると、ウォーム10がハスバ歯車11を一定の減速比で回転させる。ハスバ歯車11の回転と一体的に小歯車61が回転し、その回転が小歯車61と大歯車62で構成される第2変速段の減速比に従って減速して出力軸3に伝達される。
【0054】
このように、ギヤードモータ60は、ギヤードモータ1に対して第2,第3軸芯21,22を削減して減速段を少なくしたので、入力軸を形成するウォーム10と出力軸3との軸間距離をギヤードモータ1と同一にしつつ低減速比を構成することができる。
【0055】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0056】
例えば、上記各実施例では、第1〜第3軸芯20〜22と、各軸芯20〜22にそれぞれ支持される各歯車11〜17と、各軸芯20〜22に挿通されるスペーサ24b〜24fとが別部品で構成されているが、必ずしも別部品で形成する必要は無く、一体で形成されるものであっても良い。例えば、スペーサと軸芯とを一体で形成した軸部材に歯車を固設しても良く。或いは、スペーサと軸芯と歯車とを一体的に形成しても良い。
【0057】
又、上記実施例では、各変速段を構成する小歯車12,14,16,51,53,61及び大歯車13,15,17,52,54,62を平歯車で形成したが、必ずしも各歯車を平歯車で形成する必要はなく、少なくとも一部の変速段を構成する各歯車をハスバ歯車で形成しても良く、全ての歯車をハスバ歯車で形成しても良い。ギヤードモータの駆動時に発生する音が小さくなり、音圧などの規制が設けられた部品に適したギヤードモータを提供することができる。
【0058】
【発明の効果】請求項1記載の小型ウォーム併用ギヤードモータによれば、中間歯車によってウォームに噛合される第1歯車の回転力が所定の速比で出力軸に伝達されるので、モジュールや条数が一定に設定されたウォームを使用する場合であっても、中間歯車の速比を調整することにより、出力軸の位置を一定に保ちつつ減速比を変更することができるという効果がある。また、第1歯車と中間歯車とが支持部材によって支持されるので、減速比の変更時に中間歯車及び第1歯車の回転軸を移動させても歯車ユニットを収容する収容部材の形状は変更する必要がなく、収容部材の型費を低減してギヤードモータを低コストで製造することができる。更に、第1歯車と中間歯車と出力軸とを備えて構成された歯車ユニットが挿通可能な開口が収容部材に設けられているので、予め各部材の配置位置を調整して歯車ユニットを形成した状態で、収容部材に収容することができる。よって、限られた作業スペースしかとれない収容部材の収容空間に個別に中間歯車や第1歯車を設ける場合に比較して組み付け時の作業性を向上することができるという効果がある。
【0059】
請求項2記載の小型ウォーム併用ギヤードモータによれば、請求項1記載の小型ウォーム併用ギヤードモータの奏する効果に加え、ウォームの進み角は、出力軸の回転に基づくウォームの回転を阻止する角度に設定されているので、モータの回転に依らずに出力軸が勝手に回転することを防止するセルフロック機構を形成することができる。
【0060】
請求項3記載の小型ウォーム併用ギヤードモータによれば、請求項1又は2に記載の小型ウォーム併用ギヤードモータの奏する効果に加え、収容部材の開口側に設けられた一方のプレートが締結部材の係合部に係合されて収容部材に収容されているので、締結部材によって、一方のプレートを支持して歯車ユニットを形成させると共に歯車ユニットを収容部材に収容した状態を維持させることができる。よって、歯車ユニットを形成させるための部材と歯車ユニットを収容部材に収容させておくための部材とを別々に設ける場合に比較して、部品点数を低減することができ、低コストでギヤードモータを製造することができるという効果がある。
【0061】
請求項4記載の小型ウォーム併用ギヤードモータによれば、請求項1から3のいずれかに記載の小型ウォーム併用ギヤードモータの奏する効果に加え、ウォームに連結される軸受部材がウォームの軸方向に沿って移動しようとしても、その軸受部材の移動は対向部に規制されるので、ウォームに連結されるモータの軸に加えられる軸方向(スラスト方向)の力を軽減することができ、取着可能なモータの幅を拡げることができるという効果がある。また、軸受部材は、ウォームに回転体を介して回転自在に連結されるので、軸受部材の移動が対向部に規制された状態におけるウォームの回転ロスを少なくして、モータの回転をより高効率で出力軸に伝達することができるという効果がある。
【0062】
請求項5記載の小型ウォーム併用ギヤードモータによれば、請求項1から4のいずれかに記載の小型ウォーム併用ギヤードモータの奏する効果に加え、間座は、軸穴を中心に放射状に穿設された複数の固定穴を有するので、モータ軸を中心とした径方向の取付穴位置が異なる複数のモータに対して間座の固定穴を適合させることができる。また、第1の角度を隔てて配設された複数の第1固定穴と、第2の角度を隔てて配設された複数の第2固定穴とが設けられているので、メーカや種類に応じて異なる角度で離間して配設された取付穴に間座を適合させることができる。このように、1の間座を複数種類のモータに適合させることができるので、回転数やトルクなどの仕様に基づいて決定される複数種類のモータの取付穴に合わせてわざわざ間座や収容部材に固定穴を設ける必要がなく、少ない部品種類にして型費を低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における小型ウォーム併用ギヤードモータの正面図である。
【図2】図1のII−ABCD−II線における小型ウォーム併用ギヤードモータの展開断面図である。
【図3】図1のIII−III線における小型ウォーム併用ギヤードモータの断面図である。
【図4】モータとウォームとの連結部を断面視して示した図である。
【図5】図1の矢印V方向から見た間座を示した図である。
【図6】第2実施例における小型ウォーム併用ギヤードモータの展開断面図である。
【図7】第3実施例における小型ウォーム併用ギヤードモータの展開断面図である。
【符号の説明】
1,50,60   小型ウォーム併用ギヤードモータ
2         モータ
3         出力軸
4         ケース(収容部材)
4a        開口
4b        収容空間
4e        段差部(対向部の一部)
5         間座
5a        軸穴
5b〜5e     固定穴(第1固定穴、第2固定穴)
6         歯車ユニット
10        ウォーム
11        ハスバ歯車(第1歯車)
12,14,16,51,53,61  小歯車(中間歯車の一部)
13,15,17,52,54,62  大歯車(中間歯車の一部)
18        プレート(支持部材の一部)
25        支柱(支持部材の一部)
26        固定ビス(締結部材)
26a       ビス部
26b       頭部(係合部)
31b       回転体
31c       外輪(軸受部材)
32        ワッシャー(対向部の一部)

Claims (5)

  1. モータと、外周にねじ状の歯形が設けられ前記モータに連結されるウォームと、そのウォームを介して入力される前記モータの回転力を出力する出力軸とを備えた小型ウォーム併用ギヤードモータにおいて、
    前記ウォームの回転軸に段違いに交差すると共に前記出力軸に略平行な回転軸を有し、前記ウォームに噛合可能な歯形が外周に設けられた第1歯車と、
    その第1歯車に略平行な回転軸を有すると共に外周に歯形が設けられて前記第1歯車の回転力を所定の速比で出力軸に伝達する少なくとも1組以上の中間歯車と、
    その中間歯車と前記第1歯車とを支持する支持部材を前記出力軸と共に備えて構成される歯車ユニットと、
    その歯車ユニットを挿通可能な開口とその開口に連続して前記歯車ユニット及び前記ウォームを収容する収容空間とが形成された収容部材とを備えていることを特徴とする小型ウォーム併用ギヤードモータ。
  2. 前記ウォームの進み角は、前記出力軸の回転に基づく前記ウォームの回転を阻止する角度に設定されていることを特徴とする請求項1記載の小型ウォーム併用ギヤードモータ。
  3. 前記支持部材は、前記第1歯車と前記中間歯車とが設けられる軸を前記出力軸の軸方向に沿った両端側から挟装する一対の板状に形成された一対のプレートを備え、
    その一対のプレートのうち少なくとも前記収容部材の開口側に設けられた一方のプレートを貫通して前記収容部材に螺着されるビス部とそのビス部の軸方向視においてそのビス部より外方に突出して前記一方のプレートに係合する係合部とを有する締結部材を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の小型ウォーム併用ギヤードモータ。
  4. 前記ウォームに回転体を介して回転自在に連結される軸受部材と、
    その軸受部材に対向して配設され前記ウォームの軸方向に沿った前記軸受部材の移動を規制する対向部とを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の小型ウォーム併用ギヤードモータ。
  5. 一枚板で形成され前記モータの回転軸を挿通する軸穴とその軸穴を中心に放射状に穿設された複数の固定穴とを有して前記収容部材に固定される間座を備え、
    その間座に設けられた複数の固定穴は、前記軸穴を中心とする周方向に沿って第1の角度を隔てて離間して配設された複数の第1固定穴と、その第1固定穴が配設される第1の角度とは異なる第2の角度を隔てて離間して配設された複数の第2固定穴とで形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の小型ウォーム併用ギヤードモータ。
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