JP2004011467A - 触媒改質器の組立方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機バインダーを含まない無機繊維のみからなる保持マットを用い、触媒−マット巻回体を良好な組み付け性で金属製ケース内に装着して触媒改質器を組み立てる。
【解決手段】ハニカム状セラミック触媒1と、触媒1の外周に巻回された保持マット2と、マット2の外周を取り巻き、マット2を触媒1の外周面に密着させている保持層4とを有する触媒−マット巻回体5を金属製ケース3内に装着して触媒改質器を組み立てるに当たり、ハニカム状セラミック触媒1に対し、保持マット2を圧縮しながら巻回し、触媒1の外周面に対してマット2を0.5kg/cm以上の均等な圧力で密着させておき、その後、金属製ケース3に装着する。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、外周面に保持マットを巻回したハニカム状セラミック触媒を金属ケース内に内装することにより、自動車排ガス用浄化装置に用いられる触媒コンバーターや、燃料電池用の水素改質器等の触媒改質器を組み立てる方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び先行技術】
従来、自動車等の内燃機関の排ガス中に含まれる有害物を除去するために、排ガスの流路の触媒ケーシング内にハニカム状セラミック触媒(以下、単に「触媒」と称す場合がある。)を収容した浄化装置が使用されている。例えば、自動車ではマフラーを触媒ケーシングとし、保持マットを介してマフラー内部に触媒を収容して浄化装置としている。
【0003】
このような浄化装置、即ち、触媒コンバーターは、貴金属などの触媒を坦持した触媒(ハニカム状セラミック触媒)と、この触媒を収容してマフラーに接続するための金属製ケースと、この金属製ケースに触媒を固定するための保持マットとの3つの部品で主に構成される。
【0004】
従来、触媒コンバーターの組立方法としては、予め半割した金属製ケース内に、保持マットを巻回した触媒(以下「触媒−マット巻回体」と称す場合がある。)を装着して半割ケース同士を溶接して一体化するクラムシェル方式と、触媒の外周よりもやや大きな金属製ケースに、触媒−マット巻回体を圧入するスタッフィング方式とがある。特に最近では、部品点数の削減、或いは組み立て工数の削減から、スタッフィング方式が主流になりつつある。
【0005】
スタッフィング方式による触媒コンバーターの組み立てには、触媒−マット巻回体を、該触媒−マット巻回体の外径よりも小さい内径を有する金属製ケースに圧入する方式(以下「圧入方式」と称す。)と、該触媒−マット巻回体の外径よりも大きな内径を有する金属製ケースに挿入した後、この金属製ケースの外径を絞り加工する方式とがあり、このうち、圧入方式は後加工が不要である点において、生産性に優れる。
【0006】
ところで、触媒コンバーターの使用温度は通常600℃以上であり、より高い触媒効率を得ようとした場合、より高い温度で使用する必要がある。このような高温下では、従来のセラミック繊維を主体とした保持マットでは、繊維の熱劣化が起こり保持能力が低下する恐れがある。そこで、より耐熱性に優れたアルミナ繊維からなる保持マットを用いる方法が注目されている(特開平7−286514号公報、特開平9−946号公報他)。その中でも、アルミナ繊維の積層シートであって、ニードルパンチングによりその繊維の一部を積層面に対して貫通方向に配向させてなるマットは、その強度、復元性、取り扱い性において特に優れている。
【0007】
しかしながら、このようなアルミナ繊維からなる耐熱性マットであっても、組み立てられた触媒コンバーターにおいて、保持マット及び触媒が金属製ケース内に均一に収容されていないと、良好な性能を発揮することはできない。特に、最近主流とされている圧入方式による組立方法では、嵩高い保持マットの圧入が困難であり、圧入できた場合であっても均一な圧入を行えないという問題がある。こうした問題の解決のため、樹脂フィルムによる真空パックで厚みを減少させたマットや、有機バインダーを含浸させて厚み方向に圧縮させて厚みを抑えたマットが提案されている。また、更にはその表面を保護フィルムなどの保護層で被覆して組み付け性(特に、圧入方式の場合は挿入性(以下、「圧入性」と称す場合がある。)を改善する提案がされている。
【0008】
しかし、有機バインダー等の有機成分を含む保持マットでは、触媒コンバーターの始動時にこれらの燃焼ガスが発生して作業環境が悪化することから、最近では、保持マット中の有機バインダーを極力低減すること、より好ましくは有機バインダーを含まない保持マットを用い、組み立て時にのみマット表面に保護層を使用することが行われるようになってきている。
【0009】
通常、保持マットは真空パック材や有機バインダーとして約10〜20重量%(マット基材の無機繊維を100重量%とした場合の含有割合)の有機分が含まれ、更に前述の保護層や後述する接着剤或いは両面テープで数重量%の有機分が加わる。従って、マット中の有機分を減らすことは、組み上がった触媒コンバーター自体の有機分を減らすために非常に有効である。
【0010】
しかしながら、有機バインダーを含まない保持マットは嵩高いばかりではなく、繊維同士の繋がりが弱いため、マットを直接触媒表面に固定することができないという問題がある。即ち、従来、触媒(一般的には円柱状)の周囲にマット(両端に嵌合部、即ち凹凸部を設けた平板状)を巻回する際に、触媒とマットを接着剤又は両面テープで固定した上で、更にその巻回したマットの周囲をフィルムやテープで固定するのが一般的であったが、有機バインダーを含まないマットでは表面が毛羽立って、接着剤やテープによる接着力が得られず(所謂「効かない状態」)、金属製ケースへの触媒−マット巻回体の装着時にマットが触媒からずれ易いという問題が生ずる。
【0011】
なお、ハニカム状セラミック触媒を金属製ケース内に保持マットを介して収容したものは、排ガス浄化装置の触媒コンバーターだけでなく、触媒を選定することで、炭化水素を水素に改質する燃料電池用接触型改質器にも適用されており、この改質器においても、同様に触媒−マット巻回体の組み合み付け性の改善が望まれている。
【0012】
従来、触媒−マット巻回体の組み付け性の改善のために、以下のように様々な技術が提案されているが、これらの方法によっても、有機バインダーを含まないマットを用いた場合の上述の問題を解決するには至っていない。
(1) 特許第3246215号公報:排ガス浄化装置を組み立てるに当たり、まずその表裏両面又は外周を合成樹脂製フィルムで被覆したシール材をセラミックモノリスの外周に巻き付け、次いで、このセラミックモノリスを排気ガス煙道内に挿入、固定する方法。この方法は、基本的に有効な方法であると考えられるが、該公報には巻回方法の詳細条件についての記載がなく、問題を完全に解決するには至っていない。
(2) 特開平9−228829号公報:触媒保持体の外周に無機繊維シートを巻き付け、これを気密性プラスチックフィルムの袋に入れ、且つ袋の内部を真空引きしてから金属パイプに挿入する方法。この方法では、気密性プラスチックフィルムに入れて減圧しており、操作性が悪く、挿入開始から完了までの全ての工程において、気密保持が難しい。また、大気圧以上圧縮力で厚み減少ができないなどの問題があり、実用的ではない。
(3) 特開平9−264126号公報:触媒が保持された触媒担体の外側を断熱材で覆った後、この触媒担体を筒状の金属シェルの内側に挿入するに当たり、該触媒担体の金属シェルに対する挿入先端部の外径を、有機質シートの巻き付け圧縮によって、金属シェルの内径よりも小さく保持し、その後触媒担体を金属シェル内に挿入する方法。この方法では、マットの挿入側先端部だけを金属シェル(金属ケース)内径よりも小さくなるように圧縮するため、圧縮されていないその他の部分のマットが、圧入抵抗となる可能性があり実用的ではない。
(4) 特開平09−317455号公報:予め嵌合部を設けた結晶質アルミナ繊維マットの外側を張力下で有機シートを用いて嵩密度が0.1g/cm以上となるように被覆固定した後、前記有機シートの端部を前記触媒保持体の端面側で固定し、次に、金属製パイプの端部に漏斗状の取り付け治具をセットした後圧入する方法。この方法では、マットの挿入側先端部を触媒に固定しているが、このような端部の部分的な接着は、燃焼時の燃え残りの滓が触媒の穴を塞ぐなどの弊害も考えられ、実用的ではない。
【0013】
ところで、圧入方式により触媒−マット巻回体を金属製ケースに圧入する際には、内面に傾斜を持たせた漏斗状の圧入用治具を用いるのが一般的である。しかし、この圧入用治具の傾斜角が大きく、深さの浅いものは圧入距離が少なくサイクルタイムが短くでき量産に向いているが、圧入によって保持マットの導入部が急激に圧縮されるとその反動で反導入側が大きく反発してマットの巻回外径が拡大され触媒との密着性が悪化する。通常、保持マットは接着剤や両面テープで部分的に触媒に固定され圧入に供されるが、このような反発が生ずると接着が外れる原因となる。接着が外れたままの状態で圧入を行えば、余計にマットが大きくずれる原因となる。また、傾斜角の極めて小さな治具を用いれば、保持マットと触媒の密着性が徐々に増し、比較的良好な圧入を行えるが、圧入距離が長すぎる場合は量産に不向きであるという問題がある。また、移動距離が長くなると保持マットと治具との接触によって表面状態が悪化して傷として残り、マットの耐久性に問題が生ずる可能性が出てくる。
【0014】
本出願人は、このような従来の圧入用治具の問題点を解決し、触媒−マット巻回体を金属製ケースに圧入して触媒コンバーターを組み立てる際に、生産性を損なうことなく、触媒に巻回された保持マットを劣化ないし破損させることなく、また、保持マットのずれやはみ出しを防止して円滑に圧入することができる圧入用ガイド治具として、図2に示す如く、内孔10Sの内周面が導入部10a、保持部10b、及び圧入部10cで異なるテーパ角を有している圧入用ガイド治具10を提案した(特願2002−100142。以下「先願」という。)。この圧入用ガイド治具10によれば、比較的短い圧入距離で、従って生産性を損なうことなく、保持マット2を劣化ないし破損させることなく、また、保持マット2のずれやはみ出しを防止して、保持マット2を巻回したハニカム状セラミック触媒1を金属製ケース3に円滑に圧入することができる。なお、図2において、10Aは、金属製ケース3を内嵌させるための凹段部である。
【0015】
この先願の圧入治具10であれば、上記問題を解決することができるが、このような治具を用いたとしても、本発明の課題である、有機バインダーを含まないマットの場合、マットが毛羽立って、接着剤やテープが所謂「効かない状態」になってしまい、圧入時にマットが触媒から容易にずれてしまうという問題は相変わらず残される。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、有機バインダーを含まない無機繊維のみからなる保持マットを用いた場合であっても、触媒−マット巻回体を良好な組み付け性で金属製ケース内に装着することができる触媒改質器の組立方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の触媒改質器の組立方法は、ハニカム状セラミック触媒と、該ハニカム状セラミック触媒の外周面に巻回された保持マットと、該保持マットの外周を取り巻き、該保持マットを該ハニカム状セラミック触媒の外周面に密着させている保持層とを有してなる触媒−マット巻回体を金属製ケース内に装着する工程を有する触媒改質器の組立方法において、該ハニカム状セラミック触媒に対し、該保持マットを圧縮しながら巻回し、該ハニカム状セラミック触媒の外周面に対して該保持マットを0.5kg/cm以上の均等な圧力で密着させておき、その後、前記装着工程を行うことを特徴とする。
【0018】
本発明に従って、ハニカム状セラミック触媒に対し、保持マットを圧縮しながら巻回し、保持層によりハニカム状セラミック触媒の外周面に対して保持マットを0.5kg/cm以上の均等な圧力で密着させた状態で金属製ケースに装着することにより、有機バインダーを含まない保持マットであっても、保持マットを触媒とのずれを引き起こすことなく、金属製ケースに対して容易に装着することが可能となる。
【0019】
本発明において、保持マットは有機バインダーを含まない実質的に無機繊維のみから構成されるものが好ましく、特に、ニードルパンチされたアルミナ繊維マットが好ましい。このような保持マットは、ハニカム状セラミック触媒に対して、接着剤又は両面テープなどを用いて固定されていないことが好ましい。
【0020】
このような保持マットをハニカム状セラミック触媒に密着させるための保持層としては、樹脂フィルム、不織布、ネット、寒冷紗、糸、紐などを用いることができる。
【0021】
このような本発明の方法は、触媒−マット巻回体を筒状の金属製ケース内に圧入する圧入方式による組み立てに好適である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の触媒改質器の組立方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
まず、図1を参照して本発明における保持マットの巻回方法について説明する。図1は、本発明に好適な保持マットの巻回方法の一例を示す模式的な断面図である。
【0024】
本発明においては、まず、金属製ケースに装着する触媒−マット巻回体として、ハニカム状セラミック触媒に対し、保持マットを圧縮しながら巻回し、ハニカム状セラミック触媒の外周面に対して保持マットを0.5kg/cm以上の均等な面圧力で密着させたものを作製する。
【0025】
従来において、保持マットは通常接着剤や両面テープで部分的に触媒に固定されて圧入に供されるが、前述の如く、保持マット中に有機バインダーが含まれていないと、マットが毛羽立って、接着剤やテープやが所謂「効かない状態」になってしまい、接着を実施しても実質的な意味を持たなくなってしまう。しかも、接着剤や両面テープは粘着剤として多量の有機分を含有しており、このようなものを用いることは、有機バインダーを含まない保持マットを用いることの効果を損なうことになる。
【0026】
保持マットを触媒に固定するための接着剤や両面テープを用いることなく、保持マットを触媒に密着させるために、本発明では、保持層を用いると共に、図1に示すような1対の締付ローラ6A,6Bとベルト7とを有する巻回装置を用い、保持マット2の外周面側に保持層4を配置し、ローラ6A,6Bとベルト7で保持マット2を圧縮しながら触媒1に巻回して密着させる。
【0027】
即ち、まず、図1(a)に示す如く、保持層4の上に保持マット2を積層し、この上にハニカム状セラミック触媒1を載置する。この保持層4は、保持マット2よりも長さWだけ長いものであり、保持層4の一端は長さW分だけ保持マット4から延出した重ね代4Aとなっており、更にその重ね合わせ面(図では上面)に接着剤がついていることが望ましい。
【0028】
次に、この状態で図1(b),(c)に示す如く、ローラ6A,6B間のベルト7に載せ、ベルト7に所定の張力を加えた状態でローラ6A,6Bを互いに接近させ、保持マット2と保持層4を触媒1に巻回する。
【0029】
その後、図1(d)に示す如く、ベルト7を引いて図の左方向に移動させ、保持層4の重ね代4Aを巻回体に接着し、触媒−マット巻回体を得る。
【0030】
保持層4としては、樹脂フィルム、不織布、ネット、寒冷紗、糸、紐などを用いることができ、これらは1種を単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。保持層4は、触媒1に対してマット2を必要な圧縮力で密着させるに十分な強度を有する必要があり、要求される強度に応じて適宜選択使用される。
【0031】
図1に示すような巻回方法であれば、ベルト7の張力を変えることによって、巻回されるマット2の密着性を容易に調整することができる。通常、ベルト7の張力は触媒1に巻回するマット2の投影面積に必要圧力を掛ければ(乗ずれば)求めることができる。即ち、直径100mmの触媒1に幅100mmのマット2を用いて巻回すればその投影面積は100cmである。従って、仮に0.5kg/cmの圧力でマット2を密着させようとすれば50kgf(=100cm×0.5kg/cm)の張力を掛けて巻回することになる。また、予め、実際のマットを圧縮した場合の厚みと必要圧縮圧力との関係を求めておき、巻回後の圧縮されたマット厚みから、密着するマットに加えられた面圧を推定することもできる。
【0032】
更に、こうして求めた張力をもとにして樹脂フィルムなどの保持層4の選択も行うことができる。即ち、保持層4はマット2の圧縮状態を維持するのに十分な強度を持ち、且つ、圧入方式の場合には、圧入時に圧入治具との滑り性の良いものから選択する必要があるため、予め求めた張力に耐え得る材質の保持層4を選定することが好ましい。本発明に従って、保持マットの外周全面を0.5kg/cm以上で均等に圧縮しながら締め付けてハニカム状セラミック触媒に巻回、密着させ、さらにその周囲を保持層で密着状態を維持し、その後圧入等により金属製ケースに装着することにより、有機バインダーを含まない保持マットを用いた場合でも、比較的容易に装着することが可能となる。なお、保持マットを触媒に巻回する方法は、何ら図1に示す方法に限定されず、本発明では、保持マットを圧縮しながら触媒の外周面に対して0.5kg/cm以上の均等な圧力で密着させることができる方法であれば、いずれの方法であっても良い。
【0033】
なお、保持マットは、触媒に対して0.5kg/cm以上で均等に密着されていれば良いが、この圧力が過度に高いと、マットを構成する繊維が圧潰されて反発力が失われて保持性能が低下するため、この圧力は2kg/cm以下であることが好ましい。
【0034】
前述の如く、保持マットとしては、従来、非晶質アルミナシリカ系繊維に熱膨張性鉱石(一般的にはバーミキュライト)を混ぜて抄造したものが一般的であったが、最近になって触媒効率のアップの観点から触媒位置をよりエンジンに近い部分に移動して高温化したり、触媒担体(主にコーディエライトよりなるハニカム構造)の薄肉化が進んでいる。しかしながら、従来の熱膨張性保持マットでは材料自体の耐熱性が低く、さらに加熱初期に起きる膨張材の「膨圧」によって薄肉の触媒担体を破壊することがあるなどの不具合が発生している。こうした市場要求の変化から、より耐熱性が高く低温から高温まで安定した弾力を有する結晶質のアルミナシリカ系繊維(アルミナ繊維で総称する場合が多い)を用いた保持マットが主流になってきている。
【0035】
アルミナ繊維は繊維径が3〜5μm、長さ数ミリから数百mm程度の短繊維で構成され、バルク状(繊維の塊)或いはブランケット状で市場に供給される。
【0036】
マットには、種々のバインダーを用いて所謂紙漉方法(一般に抄造法ともいう)で製造されるものや、ニードルパンチングによりその繊維の一部を積層面に対して縦方向に配向させたブランケットに有機バインダーを含浸したものが一般的である。有機バインダーは繊維を保護する他、保持マットの厚みを均一に保つなど使用時の取り扱い性を向上させる役割を果たすが、時には圧入の際、治具との滑りを阻害して良好な圧入ができない原因となることが多い。また、有機バインダーは触媒コンバーター組み立て時には必要であるが、その後無用なものであり、前述の如く、最近は触媒コンバーター始動時の作業環境の悪化から有機分の燃焼ガスを嫌う動きがある。このため、マット中の有機バインダーを極力減らして、組み立て時にマット表面に保持層を使用することが好ましい。
【0037】
一般的には、保持マットとしては、アルミナ繊維量1000〜2000g/m、嵩密度0.1〜0.2g/cm、繊維に対する有機バインダー樹脂量3〜30重量%、厚み5〜10mm程度のものが使用されるが、本発明においては、このような有機バインダーを含まず、アルミナ繊維量1000〜2000g/m、嵩密度0.08〜0.2g/cm、厚み5〜12.5mm程度のもの、好ましくはニードルパンチされたアルミナ繊維マットを用いるのが好適である。
【0038】
なお、本発明において、触媒及び金属製ケースについては特に制限はなく、触媒改質器の製造に従来より一般的に使用されているものを用いることができる。
【0039】
本発明において、触媒−マット巻回体を金属製ケースに装着して触媒改質器を組み立てる際の装着方法自体にも特に制限はなく、前述のクラムシェル方式、スタッフィング方式のいずれでも良いが、特に、本発明は、圧入方式で触媒−マット巻回体を金属製ケースに装着する場合に効果的である。
【0040】
即ち、前述の如く、マット2は通常、嵩密度が0.1〜0.2g/cmで厚みが5〜10mmである。また、ギャップ(触媒−マット巻回体5を金属製ケース3に圧入した状態における金属製ケース3内周面と触媒−マット巻回体5の触媒1の外周面との距離:後述の図3(c)のG)は通常3〜4mmであるから、圧入の際に保持マットの厚みを1/2〜1/3の厚みに圧縮しながら圧入することになる。またギャップ充填密度(以下「GBD」という)の標準は通常0.3〜0.4g/cmで、この密度まで圧縮する時に必要な圧力(以下「圧縮面圧」という)は一般的な保持マットでは2〜5kg/cmである。ところが、触媒−マット巻回体の内寸公差および触媒の外寸公差にさらにマットの繊維重量公差を考慮すれば、GBDが最も高い場合は0.5g/cm以上にも達する場合がある。そこでは保持マットの初期厚みの1/4、圧縮面圧は8kg/cmにもなる。こうした条件において、安定した圧入を行えないと、保持マットが触媒の周囲に均一に介在しないため触媒保持が安定せず、さらに部分的に排ガスによってマットが飛散する(風食)などの問題に繋がるため、このような高い圧縮条件においても良好な圧入を行う必要がある。
【0041】
しかも、前述の如く、触媒−マット巻回体の圧入に当たり、改良された先願の圧入用ガイド治具を用いても、有機バインダーを含まない保持マットを用いた触媒−マット巻回体を良好な状態で圧入を行うことは困難であった。
【0042】
従って、本発明は、このように有機バインダーを含まない保持マットを用いた触媒−マット巻回体の装着が特に困難な圧入方式に対して有効である。
【0043】
また、この圧入方式による触媒−マット巻回体の装着に際しては、図2に示す先願の圧入用ガイド治具10を用いることが好ましい。
【0044】
このような圧入用ガイド治具10を用いることにより、図3(a)〜(c)に示す如く、触媒−マット巻回体5を圧入用ガイド治具10の導入部10aから保持部10b、圧入部10cを経て、円滑に金属製ケース3に圧入することが可能となる。
【0045】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0046】
以下の実施例及び比較例では、触媒−マット巻回体の作製に当たり、保持マットの幅(図2のM)を圧入時のマットの延びを考慮して、触媒の長さより10mm短くし(即ち、図2のm=10mm)、圧入方向で触媒端面に揃えて巻回した状態で金属製ケースに圧入し、圧入後のマットの端面が触媒の端面よりはみ出しているか否かで、圧入性の善し悪しを判断することとした。圧入性が悪くマットが良好に圧入されない場合は、このはみ出し量が多くなる。
【0047】
実施例1
図2に示す先願の圧入用ガイド治具10を用いて、触媒コンバーターの組み立てを行った。
【0048】
この圧入用ガイド治具10は、下記仕様の略円筒形のもの(内孔の水平断面の形状は円形)である。
[圧入用ガイド治具10仕様]
導入部10a:入口端の内径D=121mm
境界部の内径D=112mm
長さL=10mm
テーパ角θ=24.2°
保持部10b:上側境界部の内径D=112mm
下側境界部の内径D=108.5mm
長さL=115mm
テーパ角θ=0.9°
圧入部10c:境界部の内径D:108.5mm
出口端の内径D:106.5mm
長さL=25mm
テーパ角θ=2.3°
【0049】
保持マットとしては、有機バインダーを含まない、ニードルパンチされた保持マット用アルミナ繊維マット(三菱化学産資(株)製:商品名「マフテック・ブランケットMLS−2」)を準備した。この保持マットの単位面積当たりの繊維量は1320g/m、嵩密度0.13g/cm、樹脂量は0重量%、厚みは10.2mm、幅114mm、長さは338mmであり、この保持マットを厚み8.3mm、6.8mm及び5.8mmに圧縮するために必要な面圧はそれぞれ0.2kg/cm、0.4kg/cm及び0.6kg/cmである。また、厚み2.6mm、即ちGBDで0.5g/cmまで圧縮したときに8kg/cmの圧縮面圧を必要とするものであった。この保持マットを、長さ124mm、外径(図2のd)101.5mmのハニカム状セラミック触媒に、圧入方向で触媒端面に揃え、更に、保持層として市販のカートンテープ(ニットー電工(株)製:商品名「ホールディングテープNo.3800A」:基材厚み0.038mm)を用いて全面を被覆し、図1に示す方法で圧縮しながら巻回した。
【0050】
得られた触媒−マット巻回体の外径(図2のd)はおおよそ113mmであったであったことから、この時点での保持マット厚みは5.8mm(=(113−101.5)/2)であり、保持マットは約0.6kg/cmで触媒に密着固定されていると推定された。
【0051】
図3に示す如く、上記圧入用ガイド治具10を金属製ケース3の上部に固定し、この触媒−マット巻回体5を圧入した。用いた金属製ケース3は、内径(図2のD)106.7mmφの円筒形のもの(内孔の水平断面の形状は円形)であり、圧入後のギャップGは、2.6mm(=(106.7−101.5)÷2)で、GBDは0.508g/cmにもなるが、圧入した保持マットのずれやはみ出しはなく、良好な圧入を行うことができた。
【0052】
比較例1
保持マットの巻回に当たり、図1のような巻回装置を用いず、人手により、可能な限りきつく触媒に巻回したこと以外は同様にして触媒−マット巻回体を作製した。この触媒−マット巻回体の外径はおおよそ118mmであったことから、この時点でのマット厚みは8.3mm(=(118−101.5)/2)であり、保持マットは約0.2kg/cmで触媒に固定されていると推定された。
【0053】
この触媒−マット巻回体を実施例1と同様にして金属製ケースに圧入しようとしたが、保持マットが触媒からずれて治具自体にも入らなかった。
【0054】
比較例2
実施例1と同様にしてハニカム状セラミック触媒に保持マットを巻回したが、実施例1の場合よりも緩く巻回して触媒−マット巻回体を作製した。この触媒−マット巻回体の外径はおおよそ115mmであったことから、この時点でのマット厚みは6.8mm(=(115−101.5)/2)で、保持マットは約0.4kg/cmで触媒に固定されていると推定された。
【0055】
この触媒−マット巻回体を実施例1と同様にして金属製ケースに圧入したところ、圧入を行うことはできたが、約30mmの保持マットのずれが生じた。
【0056】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の触媒改質器の組立方法によれば、有機バインダーを含まない保持マットであっても、保持マットと触媒とのずれを引き起こすことなく、金属製ケースに対して容易に装着することが可能となる。本発明によれば、有機バインダーを含まない保持マットを用いた触媒改質器の組み立てが可能となり、作業環境の維持に好適な触媒改質器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に好適な保持マットの巻回方法の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】先願の圧入用ガイド治具と触媒−マット巻回体及び金属製ケースを示す断面図である。
【図3】実施例における組立方法を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ハニカム状セラミック触媒
2 保持マット
3 金属製ケース
4 保持層
5 触媒−マット巻回体
6A,6B ローラ
7 ベルト

Claims (6)

  1. ハニカム状セラミック触媒と、
    該ハニカム状セラミック触媒の外周面に巻回された保持マットと、
    該保持マットの外周を取り巻き、該保持マットを該ハニカム状セラミック触媒の外周面に密着させている保持層と
    を有してなる触媒−マット巻回体を金属製ケース内に装着する工程を有する触媒改質器の組立方法において、
    該ハニカム状セラミック触媒に対し、該保持マットを圧縮しながら巻回し、該ハニカム状セラミック触媒の外周面に対して該保持マットを0.5kg/cm以上の均等な圧力で密着させておき、その後、前記装着工程を行うことを特徴とする触媒改質器の組立方法。
  2. 請求項1において、該保持マットが有機バインダーを含まない実質的に無機繊維のみから構成される保持マットであることを特徴とする触媒改質器の組立方法。
  3. 請求項2において、該保持マットはニードルパンチされたアルミナ繊維マットであることを特徴とする触媒改質器の組立方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、該触媒−マット巻回体は、筒状の金属製ケース内に圧入することにより装着されることを特徴とする触媒改質器の組立方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、該触媒−マット巻回体の保持マットは、ハニカム状セラミック触媒に対して接着剤又は両面テープなどを用いて固定されていないことを特徴とする触媒改質器の組立方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において、該保持層が、樹脂フィルム、不織布、ネット、寒冷紗、糸、及び紐の1種又は2種以上であることを特徴とする触媒改質器の組立方法。
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