JP2004009689A - インクジェットプリンタ - Google Patents
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Abstract
【課題】必要な機構をなるべく複雑化・大型化させることなく、記録ヘッドを常時固定したままでもプラテン清潔保持動作及びノズルの予備吐出動作を行うことができ、それらの動作と画像記録動作との間のインターバルを短くすることができるインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】プラテンとして機能する部材のうち少なくとも被記録媒体3の裏面に接触する部材はシート部材6とし、シート部材6を移動させることによりシート部材6のノズル吐出口2に対向配置される部分を、これに連続するシート部材6の他の部分により置換えるプラテンシート移動機構11,8,10を採用することとした。
【選択図】 図1
【解決手段】プラテンとして機能する部材のうち少なくとも被記録媒体3の裏面に接触する部材はシート部材6とし、シート部材6を移動させることによりシート部材6のノズル吐出口2に対向配置される部分を、これに連続するシート部材6の他の部分により置換えるプラテンシート移動機構11,8,10を採用することとした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノズルからインクを被記録媒体へ吐出して画像の記録を行うインクジェットプリンタに関し、特に、ノズルの吐出口に対し被記録媒体のインクを受け止める位置を規制するプラテンの清潔性や、記録ヘッドの予備吐出による廃インクの回収処理に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタには、記録ヘッドに設けられたノズルからインク小滴を射出(吐出)し紙や樹脂フィルム等の被記録媒体上の所望の位置に着弾させて画像を記録するものがある。ノズルから吐出されるインク小滴を正確に被記録媒体上の所望の位置に着弾させるためには、ノズル吐出口と被記録媒体との間隔距離をある程度狭くし、かつ一定に保つことが好ましい。また、被記録媒体を不用意にノズル吐出口に触れさせないためにもノズル吐出口と被記録媒体との間隔を保持する必要がある。
そのために、被記録媒体を介して記録ヘッドの反対側にプラテンと呼ばれる位置規制手段を備え付け、被記録媒体の記録面と反対の面にプラテンを沿わせて被記録媒体を支持することが行われる。
一方、インクジェットプリンタにおいては、記録のための吐出以外に所定のタイミングでノズルに吐出動作をさせて、ノズル表面で粘度が上がってしまったインク、ノズル内の気泡やごみ、劣化したインク等を吐出させてノズルを良好な状態に維持・復帰する必要がある。これを予備吐出という。なお、空吐出ともいうが、インクが吐出されない場合のみを意味せず、インクが吐出される場合をも含む。
ところで、ラインヘッド式プリンタにおいては、被記録媒体の搬送方向と直交方向にノズルをライン状に記録領域幅に亘って並べ、このノズルを備えた記録ヘッドを移動させずに被記録媒体の搬送のみにより画像を形成する。このようにラインヘッド式プリンタの記録ヘッド(ラインヘッド)は、画像記録時一定の位置に固定される。画像記録の動作を行うために記録ヘッドを動かす必要が無いのがラインヘッド式プリンタの特徴の一つである。したがってラインヘッド式プリンタは、記録ヘッドを被記録媒体搬送領域上から回避させる移動機構を元来備えておらず、そのまま予備吐出すると、プラテン上の被記録媒体又は被記録媒体がプラテン上に無い場合はプラテンを汚してしまう。したがって、被記録媒体や機器内部を汚さずにインク廃液を回収する解決手段が必要となる。
【0003】
以上の技術的要請に関連した技術が以下の公報に記載されている。
特開平6−320754号公報には、プラテン兼搬送手段として吸着シリンダを用い、その吸着シリンダ上のインクをブレードで掻き取り、その吸着シリンダの周面に設けた開口部を介して、吸着シリンダ内部に設けられた容器又は吸収体シートへ回収するという技術が記載される。
また特開平11−291511号公報には、中空円筒状のプラテンに開口部を設け、プラテン内部に装備したキャッピング等のメンテナンス部材をその開口部から出し入れする技術が記載されている。さらに同公報には、平板状のプラテンに開口部を設け、プラテンの記録紙支持面と反対面側に装備したキャッピング等のメンテナンス部材をその開口部から出し入れする技術が記載されている。
また特開平5−177827号公報には、ラインヘッドを回動させてノズル吐出面をプラテンに対向する方向から回避させてメンテナンスを行う技術が記載されている。
また特開2000−127362号公報には、プラテン兼搬送手段をベルトとし、複数のラインヘッドのそれぞれに隣接してベルト拭き部材を上下動可能に設ける技術が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、以上の従来技術においては次のような問題がある。
特開平6−320754号公報のように吸着シリンダに開口部を設けると、開口部では被記録媒体を直接支持しないので被記録媒体の位置規制が不正確となるか、又は開口部以外の周面で被記録媒体を支持する場合には吸着シリンダを大型化せざるを得ない。また、プラテン兼搬送手段としての吸着シリンダ以外に廃インクを除去するためのブレードと廃インク受け用容器、又は吸収体シートとその巻き取り機構を要する。また同公報記載技術は、予備吐出によって生じる廃インクの回収まで意図していないが、仮に、吸着シリンダに向けて予備吐出し、それをブレードによって掻き取り回収させようとすると、吸着シリンダその他の部品の著しい汚染が懸念される。
特開平11−291511号公報記載の技術では、キャップをインク吐出面に装着した状態で予備吐出が可能であるが、そのために、プラテン以外にキャップ、廃インクチューブ、廃インクタンクを要する。また、プラテン自体を清潔に保つ手段は無い。さらに、画像記録動作から予備吐出動作へ移行するまでに、プラテンの開口部が記録位置下に配置されるようにプラテンを移動させなければならないため時間を要する。予備吐出動作から画像記録動作へ移行する際も同様に時間を要する。
特開平5−177827号公報記載の技術では、記録ヘッドを回動させるため、記録ヘッドを常時固定とする場合に対して記録ヘッドの位置制御という負担が増加するとともに、記録ヘッドの位置精度の低下が懸念される。さらに、画像記録動作から予備吐出動作へ移行する際及び予備吐出動作から画像記録動作へ移行する際に、記録ヘッドを回動させなければならないため時間を要する。
特開2000−127362号公報記載の技術では、プラテン以外に、ベルト拭き部材とそれを支持し上下動させる機構を要する。また、ラインヘッド間にベルト拭き部材を配置することによりラインヘッド同士の間隔が広がるため、ラインヘッドの狭ピッチ化の妨げになるとともに、装置の大型化が懸念される。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、必要な機構をなるべく複雑化・大型化させることなく、記録ヘッドを常時固定したままでもプラテン清潔保持動作及びノズルの予備吐出動作を行うことができ、それらの動作と画像記録動作との間のインターバルを短くすることができるインクジェットプリンタを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、例えば図1に示すように、
ノズルの吐出口2が設けられた記録ヘッド1a,1b,1c,1dと、被記録媒体搬送機構4a,4b,5a,5bと、前記吐出口に対向して配置されるプラテンとを備え、
前記被記録媒体搬送機構により搬送される被記録媒体の裏面に前記プラテンを接触させて前記被記録媒体の前記吐出口に対する位置を規制しつつ、前記被記録媒体の表面に前記ノズルからインクを吐出して画像の記録を行うインクジェットプリンタにおいて、
前記プラテンとして機能する部材のうち少なくとも前記裏面に接触する部材はシート部材6であり、
前記シート部材を移動させることにより前記シート部材の前記吐出口に対向配置される部分を、これに連続する前記シート部材の他の部分により置換えるプラテンシート移動機構11,8,10を備えることを特徴とするインクジェットプリンタである。
【0007】
したがって請求項1記載の発明によれば、シート部材の吐出口に対向配置される部分にインクが付着して汚れても、プラテンシート移動機構によってシート部材を移動させることによりシート部材の吐出口に対向配置される部分を、これに連続するシート部材の他の部分により置換えることにより、汚れの生じていない新規な(未使用の)シート面を吐出口に対向位置することができ、これによりプラテンを清潔に保つことができる。
また、プラテン上に被記録媒体が配置されていない期間に記録ヘッドを固定したまま予備吐出を行うことができる。固定したまま行うから予備吐出はシート部材の吐出口に対向配置される部分に向けて行うこととなる。したがって、画像記録が終了し被記録媒体が吐出口前方から回避した時点から予備吐出を開示することができる。画像記録動作から予備吐出動作へ移行する際に準備動作を要しない分、画像記録動作終了時点から予備吐出動作開始時点までの時間が短くて済む。シート部材の吐出口に対向配置される部分は予備吐出時に吐出されたインクや、記録時に吐出され被記録媒体上に付着しなかったインクの一部を吸収して保持する。したがって、シート部材としてインクを吸収するものを用いることが必要であり、インク吸収性の良いものを用いることが好ましい。
また予備吐出が終了した時点で、上述のようにプラテンシート移動機構によってシート部材を移動させることによりシート部材の吐出口に対向配置される部分を、これに連続するシート部材の他の部分により置換えることにより、汚れの生じていない新規なシート面を吐出口に対向位置することができ、再びプラテンとして機能させても被記録媒体を汚すことが無い。新規なシート面を吐出口に対向配置させる移動を高速化すれば、予備吐出動作終了時点から画像記録動作開始時点までの時間も短くできる。
一方、被記録媒体の位置を規制するというプラテン本来の機能実現、プラテン清潔保持及び予備吐出インク回収処理のために必要となる機構は、シート部材、プラテンシート移動機構その他シート部材の一部を吐出口に対向配置して移動可能に支持するローラ等の部品により構成すれば良い。
以上の諸点により本発明によれば、必要な機構をなるべく複雑化・大型化させることなく、記録ヘッドを常時固定したままでもプラテン清潔保持動作及びノズルの予備吐出動作を行うことができ、それらの動作と画像記録動作との間のインターバルを短くすることができる。記録ヘッドは常時固定したままなので、記録ヘッドを動かすことに基づく位置制御負担や記録ヘッドの位置精度の低下という問題は抜本的に払拭される。
【0008】
請求項2記載の発明は、
前記プラテンシート移動機構による前記シート部材の移動方向と、前記各記録ヘッドにおける前記吐出口の並び方向とが平行でないことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタである。
【0009】
プラテンシート移動機構によるシート部材の移動方向と、各記録ヘッドにおける吐出口の並び方向とが平行であると、ある時点で複数の記録ヘッドのピッチ間領域に対向するシート面や、吐出口に対向するシート面に隣接していて吐出口に対向していないシート面を、プラテンシート移動機構によってシート部材を移動させても吐出口に対向配置することができず、シート部材に予備吐出によるインクが直接着弾しない部分が残り無駄が生じる。
しかし請求項2記載の発明によれば、プラテンシート移動機構によるシート部材の移動方向と、各記録ヘッドにおける吐出口の並び方向とが平行でないので、ある時点で複数の記録ヘッドのピッチ間領域に対向するシート面や、吐出口に対向するシート面に隣接するシート面を、プラテンシート移動機構によってシート部材を移動させることにより吐出口に対向配置することができ、予備吐出時にそのようにシート部材を順次移動させることによりシート部材を予備吐出時のインク回収手段として無駄無く使用することができるという利点がある。
【0010】
請求項3記載の発明は、
前記プラテンシート移動機構による前記シート部材の移動方向と、前記被記録媒体の搬送方向とが平行であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタである。
【0011】
したがって請求項3記載の発明によれば、プラテンシート移動機構によるシート部材の移動方向と、被記録媒体の搬送方向とが平行であるので、移動中のシート部材が被記録媒体に接触しても、被記録媒体の搬送に悪影響を与えないという利点がある。そのためにはさらに、シート部材の移動方向と被記録媒体の搬送方向とを平行で逆方向とするよりも同一方向とする方が良い。
【0012】
請求項4記載の発明は、例えば図1に示すように、
前記プラテンシート移動機構が前記シート部材を巻き取るプラテンシート巻取機構11を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0013】
したがって請求項4記載の発明によれば、プラテンシート巻取機構によりシート部材を迅速に移動することができる。
【0014】
請求項5記載の発明は、
前記プラテンシート移動機構は、前記ノズルの予備吐出動作の1回又は2回以上の所定回数毎に、前記シート部材を移動させることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0015】
したがって請求項5記載の発明によれば、ノズルの予備吐出動作の1回又は2回以上の所定回数毎に、前記シート部材を所定距離移動させるので、インクを吸収し過ぎて吸収力を失ったシート面をいつまでも使用したり、未だ吸収力を失っていないシート面を移動させてしまったりという不均一な使用を防止することができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、
前記プラテンシート移動機構による前記シート部材の移動の最小単位が前記ノズルから吐出された前記インクにより記録されるドット径であることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0017】
したがって請求項6記載の発明によれば、ドット径を最小単位としてシート部材を移動させるので、シート部材のほぼ全面をインク吸収面として有効に使用することができる。
【0018】
請求項7記載の発明は、
前記シート部材の総移動量が第一の規定量を超えた時点で、前記シート部材の交換を促す警告表示を開始し、
前記総移動量が第一の規定量より多い第二の規定量を超えた時点で、前記プラテンシート移動機構による前記シート部材の移動動作を禁止する制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0019】
したがって請求項7記載の発明によれば、ユーザは警告表示によりシート部材が無くなる前に交換の必要性を知ることができ、さらにシート部材が無くなった場合には、プラテンシート移動機構の無理又は無駄な動作を防ぐことができる。
【0020】
請求項8記載の発明は、例えば図1に示すように、
前記シート部材の移動量を検知するセンサ12を備えることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0021】
したがって請求項8記載の発明によれば、シート部材の移動量(送り量)を検知した上でシート部材の移動制御を行うことができる。センサが出力する信号に基づいてシート部材の総移動量を計測することもできる。
【0022】
請求項9記載の発明は、例えば図1に示すように、
前記記録ヘッドがラインヘッド1a,1b,1c,1dであることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0023】
ラインヘッドとは、一般に知られるように、吐出口が記録領域の幅に亘って並設され、固定されたままで記録を行う方式の記録ヘッドという。但し、必ずしも吐出口が一直線上に並設されることを要しない。また、複数のヘッドユニットにより構成される場合を含む。
したがって請求項9記載の発明によれば、通常、記録ヘッド固定式であるラインヘッド方式のプリンタに対し予備吐出の為に記録ヘッドの移動機構を採用する必要を生じさせることが無いという利点がある。
【0024】
請求項10記載の発明は、前記シート部材は吸収性シートであることを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0025】
吸収性シートとは、少なくとも吐出口に対向配置される片面側に、インクを取りこみ吸収する空隙が繊維質等により形成されたシートをいい、紙、フエルト、不織布等が該当する。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施の形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0027】
図1(a)は本発明の一実施形態のインクジェットプリンタを示す断面図である。かかる断面図は、記録領域を通過する記録媒体に垂直かつその搬送方向に平行な面で切った断面図である。
【0028】
図1(a)に示すように本実施形態のインクジェットプリンタは、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色に対応したラインヘッド1a,1b,1c,1dを有する。4つのラインヘッド1a,1b,1c,1dは、所定の取付位置に固定され等間隔に並列する。
3は紙、樹脂フィルム等の被記録媒体であり、図中矢印で示す搬送方向Sへ搬送される。各ラインヘッド1a,1b,1c,1dは多数のインク吐出用のノズルを備える。各ノズルには例えば圧電素子が付設される。画像信号に基づきインクを吐出すべきノズルに付設された圧電素子に電圧を印加することによりノズル先端部に充填されたインクに圧力を付与してインク小滴10を吐出する。各ラインヘッド1a,1b,1c,1dの下端にはノズルの吐出口2が配置される。吐出口2は被記録媒体3に平行で搬送方向Sに垂直な方向(図面に垂直な方向)にライン状に並設される。このライン状に並設される長さをライン長さと呼ぶこととして、このライン長さは被記録媒体3の幅、すなわち、ライン長さと同一方向の被記録媒体3の寸法と同等又はそれ以上とすることにより被記録媒体3上の記録可能範囲を十分に確保する。
【0029】
被記録媒体3の搬送は、ローラ対4a,4bと、拍車5aと、ローラ5bとを含む搬送機構により行われる。ローラ対4a,4bは記録領域(=吐出口2直下の被記録媒体通過領域)に対し被記録媒体供給側に配置され、拍車5aとローラ5bとは被記録媒体排出側に配置される。ローラ対4a,4bは被記録媒体3を挟持して回転することにより、記録領域へ被記録媒体3を送り込む。拍車5aとローラ5bとは対を成しており、同様に被記録媒体3を挟持して回転することにより、記録領域を通過した画像記録済みの被記録媒体3を排出方向へと送る。拍車5aは被記録媒体3の記録面側に配置され、記録面に接触する。拍車5aにはくさびが周設されている。くさびとすることでインク付着面への接触面積を減らし、十分に乾燥していないインクに極力触れないようにする。
【0030】
さらに本実施形態のインクジェットプリンタは、プラテンシート6と、未使用のプラテンシート6を回転自在に保持する軸7と、軸7から延出するプラテンシート6をガイドし、吐出口2に対向するように保持する上手側ガイドローラ8及び下手側ガイドローラ10と、上手側ガイドローラ8と下手側ガイドローラ10の間に配置されプラテンシート6を支持するプラテン板9と、使用済みプラテンシート6を巻き取るプラテンシート巻取装置11と、送り量検知センサ12とを備える。
プラテンシート6は紙、フエルト、不織布等の吸収性シートである。図1(b)に示すように、プラテンシート6は中空の円筒軸心21に巻回された状態のプラテンシートロール20として供給される交換可能な消耗品である。プラテンシートロール20を軸7に嵌め込み、プラテンシート6の延出端部を引き出して、その延出端部を上手側ガイドローラ8、プラテン板9及び下手側ガイドローラ10に掛け渡し、プラテンシート巻取装置11に取り付けることによりプラテンシート6が本プリンタにセッティングされる。プラテンシート6の幅は少なくとも吐出口2のライン長さをカバーする寸法とされる。プラテンシート巻取装置11によるプラテンシート6の移動方向と被記録媒体3の搬送方向とは同一方向である。
【0031】
プラテン板9は、プラテンシート6の吐出口2に対向配置される部分を支持してプラテンとしての支持力を高めるものである。プラテンシート6の張力のみにより被記録媒体3を支持しても良いが、以上のようにプラテンシート6の下面をプラテン板9で支持して、被記録媒体3を支持する支持力を高めても良い。
また、プラテンシート6の下面を支持してプラテンとしての支持力を高める部材としてローラを採用しても良い。これをプラテンローラと呼ぶ。プラテンローラ吐する場合は、プラテンローラの周面にプラテンシート6及び被記録媒体3が沿うことになる。そのため、複数のラインヘッドのノズルがそれぞれプラテンローラの周面に対して垂直に向くように側面視放射状にラインヘッドを配置することが必要となる。
【0032】
送り量検知センサ12は、プラテンシート6の送り量を検知するものである。送り量検知センサ12として、プラテンシート6に接触してプラテンシート6の動きに同期して回転し、その回転量からプラテンシート6の送り量を検知する機械的センサを用いることができる。
本プリンタの図示しない中央制御部は送り量検知センサ12が検知する送り量に基づき、プラテンシート巻取装置11の駆動を制御する。なお、送り量検知センサ12を設けずにプラテンシート巻取装置11を駆動制御しても良い。
【0033】
次に一連の動作に沿って説明する。
まず、記録動作時には、図1(a)に示すように被記録媒体3をラインヘッド1a,1b,1c,1dの直下の記録領域に供給する。被記録媒体3はプラテンシート6に沿って記録領域を進行し、吐出口2から被記録媒体3までの距離が一定に保たれる。被記録媒体3が記録領域に配置されると、画像信号に基づいて選択的に吐出口2からインクを吐出する。1ラインの記録が終わる毎に順次被記録媒体3を送り、順次ライン毎に画像を形成する。
【0034】
予備吐出動作時は、図2に示すように被記録媒体3が記録領域に配置されていない期間に行う。
予備吐出動作ではラインヘッド1a,1b,1c,1dに備えられる全ノズルに吐出動作させる。吐出された廃インクはプラテンシート6に着弾しプラテンシート6に吸収される。
【0035】
予備吐出は、1回の動作で複数回ずつのインク吐出を各ノズルより行う。一般には数回〜数百回、より好ましくは数十回の吐出動作を行う。これにより、ノズル表面でインク中の水分が低下し粘度が上がったインクや、インク室内に混入した気泡など、1回の吐出動作では除去しにくいノズル欠要因を排除することができる。この予備吐出の一連の動作が1回または2回以上の所定回数終わると、プラテンシート巻き取り装置11を微小角度、図2上で右回りに回動させてプラテンシート6を巻き取るとともに、記録領域上のプラテンシート6を1ドット分以上送る。この1ドット分以上とは、ノズルから吐出されたインクにより記録されるドットの径、つまり、本インクジェットプリンタの解像度が600dpi(dots per inch)の場合は42.3μm以上、1200dpiの場合は21.1μm以上である。
【0036】
以上のようにして予備吐出動作が終わると、プラテンシート巻取装置11を回転させてプラテンシート6を巻取り、インクが付着しているシート面を回収する。この回収のためのプラテンシート6の巻取り量(送り量)は、プラテン部分の長さ以上とする必要がある。ここでプラテン部分とは、プラテンシート6の被記録媒体に接触する部分をいう。プラテン部分の長さ以上とするのは、次に記録領域に供給されてくる被記録媒体にインクが付着しているシート面を接触させないようにするためである。
しかし、必ずしもプラテンシート6のインクが付着しているシート面を予備吐出動作が終わる毎に回収しなければならないわけではない。
何回の予備吐出動作に対し1回の回収を行うかは、プラテンシート6の単位面積あたりの吸収量並びに乾燥性を考慮し、最適値を選んで決定される。例えばプラテンシート6に、単位面積あたりの吸収量が多く速乾性のものを用いると、インクが付着しているシート面がプラテン部分に存在し、そこに被記録媒体が接触した場合でも既に乾いているので、被記録媒体がインクで汚れることはない。したがって、1回の予備吐出動作に対し1回の回収を行わなくても良い。ここで、1回の予備吐出動作とは、連続する2つの画像記録動作間に行われる予備吐出動作を指す。
また、プラテンシート6に単位面積あたりの吸収量が少ないものを用いると、次の画像記録までに乾燥しないので、次の画像記録までにプラテンシート6をプラテン部の長さ以上巻き取らなければならない。すなわち、1回の予備吐出動作に対し1回の回収を行う必要がある。そうしないと次の画像記録時の被記録媒体がインクで汚れるおそれがあるからである。
一般に単位面積あたりの吸収量が少ない吸収シートはその厚みが薄いことに起因する。厚みの薄い吸収シートをプラテンシート6として使用すれば、同じ直径でもプラテンロール20に巻かれるプラテンシート6の長さを長くすることができる。したがって、プラテンロール20の交換頻度が極端に多くならないようにプラテンシート6の厚みと長さを選択することが肝心となる。
以上のようにして、プラテンシート巻取装置11によってプラテンシート6を移動させてプラテンシート6の吐出口2に対向配置される部分を下手側に引き出し、これに連続するプラテンシート6の上手側に控える部分により置換える。これにより、汚れの生じていない新規なシート面を吐出口2に対向位置することができ、再びプラテンとして機能させても被記録媒体3を汚すことが無い。
【0037】
以上のように、プラテンシート6は、被記録媒体3の裏面(=記録面の反対面)に接触して被記録媒体3の吐出口2に対する位置を規制するプラテンとして機能するとともに、予備吐出時には廃インク受け部材として機能する。また、プラテンシート6が巻取り回収されることにより廃インクを回収することができるとともに、プラテン表面が清潔に保たれる。
プラテンシート6を使い切ったら廃棄し、新しいプラテンロール20をセッティングする。
【0038】
次に、図3を参照してプラテンシートの交換表示制御及びプラテンシート巻取機構の動作禁止制御につき説明する。
【0039】
プラテンシート6の大部分が巻き取られ、それ以上巻き取れなくなった場合、すなわち、使い切った場合、予備吐出動作を行うことができない。なぜなら、予備吐出動作を行ってしまうと、プラテンシート6の吐出口2に対向する部分が汚れるが、この汚れた部分を更に下手に移動させることができず、画像記録を開始することができないからである。予備吐出を行わないままで画像記録を進めると良好な吐出を行うことができなくなる。したがって、プラテンシート6を交換する必要がある。そこで、プラテンシート6の交換を促す警告表示を行う。かかる警告表示の開始タイミングはプラテンシート6を使い切った時点でも良い。しかしその場合、プラテンシートロール20を用意して交換するのに要する時間により、画像記録を実行できないロスが生じ得る。したがって、プラテンシート6を使い切る前の残り少なくなった時点で警告表示を開始することが有効である。
【0040】
例えば、第一の規定量をプラテンシート6の有効長(使用できる長さ)の90%とする。本プリンタの中央制御部は、送り量検知センサ12の検知信号に基づきプラテンシート6の総移動量を計測し、プラテンシート6の総移動量が第一の規定量を超えた時点で、プラテンシート6の交換を促す警告表示を開始する。警告表示は液晶表示装置等の表示部15に、例えば「プラテンシートを交換してください」「プラテンシートがそろそろ無くなります」等の文章メッセージか、かかる文章の意味が意味付けられた所定のコード又は所定のマークにより表示される。同時に音表示により表示するようにしても良い。音表示は所定時間行うようにするのが良いが、表示部15に表示される視覚的表示は原則的にプラテンシートの交換が完了するまで表示するのが良い。本プリンタは警告表示を開始してもしばらくの間、予備吐出動作、画像記録動作等の動作を中止せず、要求される画像記録作業を行う。警告表示に気づいたユーザは、新しいプラテンシートロール20を用意する。続いてユーザは使用済みプラテンシート6を本プリンタから排除し新しいプラテンシートロール20を本プリンタにセッティングしてプラテンシート6を交換することができる。
【0041】
しかし、ここではプラテンシート6が交換されなかったとしよう。第二の規定量をプラテンシート6の有効長の99.5%とする。0.5%残すのは有効長の誤差を吸収するためである。
本プリンタの中央制御部は、送り量検知センサ12の検知信号に基づきプラテンシート6の総移動量を計測し、プラテンシート6の総移動量が第二の規定量を超えた時点で、プラテンシート巻取機構11によるプラテンシート6の移動動作を禁止する。
またこの時点で本プリンタの中央制御部は、予備吐出動作をも禁止する。
この時点の後において未処理の画像記録を続行してもよいが、画像劣化の危険性が高まるので、所定枚数の画像記録作業を実行後、画像記録動作をも禁止するように制御しても良い。
中央制御部は、予備吐出動作をも禁止した時点で同時に、警告表示を切り替える。例えば「プラテンシートが無くなりました。交換してください。」等の文章メッセージか、かかる文章の意味が意味付けられた所定のコード又は所定のマークにより表示される。同時に音表示により表示するようにしても良い。音表示は先ほどより強い警告音で、ユーザが本プリンタに対し所定の操作をするまで継続して鳴らすのが良いだろう。
さらに、画像記録動作をも禁止する場合は、それに応じた表示を行うことが良いことは言うまでもない。
【0042】
ユーザがプラテンシート6の交換を完了すると、本プリンタの中央制御部は、プラテンシート巻取機構11の動作の禁止、加えて、予備吐出動作が禁止状態である場合はその禁止、画像記録動作が禁止状態である場合はその禁止を解除するとともに、送り量検知センサ12の検知信号に基づき累積保持しているプラテンシート6の総移動量をリセットする。
【0043】
【発明の効果】
上述したように請求項1記載の発明によれば、必要な機構をなるべく複雑化・大型化させることなく、記録ヘッドを常時固定したままでもプラテン清潔保持動作及びノズルの予備吐出動作を行うことができ、それらの動作と画像記録動作との間のインターバルを短くすることができるという効果がある。また記録ヘッドは常時固定したままなので、記録ヘッドを動かすことに基づく位置制御負担や記録ヘッドの位置精度の低下という問題は抜本的に払拭されるという効果がある。
【0044】
上述したように請求項2記載の発明によれば、プラテンシート移動機構によるシート部材の移動方向と、各記録ヘッドにおける吐出口の並び方向とが平行でないので、ある時点で複数の記録ヘッドのピッチ間領域に対向するシート面や、吐出口に対向するシート面に隣接するシート面を、プラテンシート移動機構によってシート部材を移動させることにより吐出口に対向配置することができ、予備吐出時にそのようにシート部材を順次移動させることによりシート部材を予備吐出時のインク回収手段として無駄無く使用することができるという効果がある。
【0045】
上述したように請求項3記載の発明によれば、プラテンシート移動機構によるシート部材の移動方向と、被記録媒体の搬送方向とが平行であるので、移動中のシート部材が被記録媒体に接触しても、被記録媒体の搬送に悪影響を与えないという効果がある。
【0046】
上述したように請求項4記載の発明によれば、プラテンシート巻取機構によりシート部材を迅速に移動することができるという効果がある。
【0047】
上述したように請求項5記載の発明によれば、ノズルの予備吐出動作の1回又は2回以上の所定回数毎に、前記シート部材を所定距離移動させるので、インクを吸収し過ぎて吸収力を失ったシート面をいつまでも使用したり、未だ吸収力を失っていないシート面を移動させてしまったりという不均一な使用を防止することができるという効果がある。
【0048】
上述したように請求項6記載の発明によれば、ドット径を最小単位としてシート部材を移動させるので、シート部材のほぼ全面をインク吸収面として有効に使用することができるという効果がある。
【0049】
上述したように請求項7記載の発明によれば、ユーザは警告表示によりシート部材が無くなる前に交換の必要性を知ることができ、さらにシート部材が無くなった場合には、プラテンシート移動機構の無理又は無駄な動作を防ぐことができるという効果がある。
【0050】
上述したように請求項8記載の発明によれば、シート部材の移動量(送り量)を検知した上でシート部材の移動制御を行うことができるという効果がある。またセンサが出力する信号に基づいてシート部材の総移動量を計測することもできるという効果がある。
【0051】
上述したように請求項9記載の発明によれば、通常、記録ヘッド固定式であるラインヘッド方式のプリンタに対し予備吐出の為に記録ヘッドの移動機構を採用する必要を生じさせることが無いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の一実施形態のインクジェットプリンタを示す構成図であり、画像記録時を描写したものである。(b)は本発明の一実施形態のインクジェットプリンタに用いられるプラテンシートロールの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態のインクジェットプリンタを示す構成図であり、予備吐出時を描写したものである。
【図3】本発明の一実施形態のインクジェットプリンタを示す構成図であり、プラテンシートの使い切り直前状態を描写したものである。
【符号の説明】
1a,1b,1c,1d…ラインヘッド 2…吐出口 3…被記録媒体4a,4b…ローラ対 5a…拍車 5b…ローラ 6…プラテンシート 7…軸 8…上手側ガイドローラ 9…プラテン板 10…下手側ガイドローラ 11…プラテンシート巻取装置 12…送り量検知センサ 15…表示部 20…プラテンシートロール
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノズルからインクを被記録媒体へ吐出して画像の記録を行うインクジェットプリンタに関し、特に、ノズルの吐出口に対し被記録媒体のインクを受け止める位置を規制するプラテンの清潔性や、記録ヘッドの予備吐出による廃インクの回収処理に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタには、記録ヘッドに設けられたノズルからインク小滴を射出(吐出)し紙や樹脂フィルム等の被記録媒体上の所望の位置に着弾させて画像を記録するものがある。ノズルから吐出されるインク小滴を正確に被記録媒体上の所望の位置に着弾させるためには、ノズル吐出口と被記録媒体との間隔距離をある程度狭くし、かつ一定に保つことが好ましい。また、被記録媒体を不用意にノズル吐出口に触れさせないためにもノズル吐出口と被記録媒体との間隔を保持する必要がある。
そのために、被記録媒体を介して記録ヘッドの反対側にプラテンと呼ばれる位置規制手段を備え付け、被記録媒体の記録面と反対の面にプラテンを沿わせて被記録媒体を支持することが行われる。
一方、インクジェットプリンタにおいては、記録のための吐出以外に所定のタイミングでノズルに吐出動作をさせて、ノズル表面で粘度が上がってしまったインク、ノズル内の気泡やごみ、劣化したインク等を吐出させてノズルを良好な状態に維持・復帰する必要がある。これを予備吐出という。なお、空吐出ともいうが、インクが吐出されない場合のみを意味せず、インクが吐出される場合をも含む。
ところで、ラインヘッド式プリンタにおいては、被記録媒体の搬送方向と直交方向にノズルをライン状に記録領域幅に亘って並べ、このノズルを備えた記録ヘッドを移動させずに被記録媒体の搬送のみにより画像を形成する。このようにラインヘッド式プリンタの記録ヘッド(ラインヘッド)は、画像記録時一定の位置に固定される。画像記録の動作を行うために記録ヘッドを動かす必要が無いのがラインヘッド式プリンタの特徴の一つである。したがってラインヘッド式プリンタは、記録ヘッドを被記録媒体搬送領域上から回避させる移動機構を元来備えておらず、そのまま予備吐出すると、プラテン上の被記録媒体又は被記録媒体がプラテン上に無い場合はプラテンを汚してしまう。したがって、被記録媒体や機器内部を汚さずにインク廃液を回収する解決手段が必要となる。
【0003】
以上の技術的要請に関連した技術が以下の公報に記載されている。
特開平6−320754号公報には、プラテン兼搬送手段として吸着シリンダを用い、その吸着シリンダ上のインクをブレードで掻き取り、その吸着シリンダの周面に設けた開口部を介して、吸着シリンダ内部に設けられた容器又は吸収体シートへ回収するという技術が記載される。
また特開平11−291511号公報には、中空円筒状のプラテンに開口部を設け、プラテン内部に装備したキャッピング等のメンテナンス部材をその開口部から出し入れする技術が記載されている。さらに同公報には、平板状のプラテンに開口部を設け、プラテンの記録紙支持面と反対面側に装備したキャッピング等のメンテナンス部材をその開口部から出し入れする技術が記載されている。
また特開平5−177827号公報には、ラインヘッドを回動させてノズル吐出面をプラテンに対向する方向から回避させてメンテナンスを行う技術が記載されている。
また特開2000−127362号公報には、プラテン兼搬送手段をベルトとし、複数のラインヘッドのそれぞれに隣接してベルト拭き部材を上下動可能に設ける技術が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、以上の従来技術においては次のような問題がある。
特開平6−320754号公報のように吸着シリンダに開口部を設けると、開口部では被記録媒体を直接支持しないので被記録媒体の位置規制が不正確となるか、又は開口部以外の周面で被記録媒体を支持する場合には吸着シリンダを大型化せざるを得ない。また、プラテン兼搬送手段としての吸着シリンダ以外に廃インクを除去するためのブレードと廃インク受け用容器、又は吸収体シートとその巻き取り機構を要する。また同公報記載技術は、予備吐出によって生じる廃インクの回収まで意図していないが、仮に、吸着シリンダに向けて予備吐出し、それをブレードによって掻き取り回収させようとすると、吸着シリンダその他の部品の著しい汚染が懸念される。
特開平11−291511号公報記載の技術では、キャップをインク吐出面に装着した状態で予備吐出が可能であるが、そのために、プラテン以外にキャップ、廃インクチューブ、廃インクタンクを要する。また、プラテン自体を清潔に保つ手段は無い。さらに、画像記録動作から予備吐出動作へ移行するまでに、プラテンの開口部が記録位置下に配置されるようにプラテンを移動させなければならないため時間を要する。予備吐出動作から画像記録動作へ移行する際も同様に時間を要する。
特開平5−177827号公報記載の技術では、記録ヘッドを回動させるため、記録ヘッドを常時固定とする場合に対して記録ヘッドの位置制御という負担が増加するとともに、記録ヘッドの位置精度の低下が懸念される。さらに、画像記録動作から予備吐出動作へ移行する際及び予備吐出動作から画像記録動作へ移行する際に、記録ヘッドを回動させなければならないため時間を要する。
特開2000−127362号公報記載の技術では、プラテン以外に、ベルト拭き部材とそれを支持し上下動させる機構を要する。また、ラインヘッド間にベルト拭き部材を配置することによりラインヘッド同士の間隔が広がるため、ラインヘッドの狭ピッチ化の妨げになるとともに、装置の大型化が懸念される。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、必要な機構をなるべく複雑化・大型化させることなく、記録ヘッドを常時固定したままでもプラテン清潔保持動作及びノズルの予備吐出動作を行うことができ、それらの動作と画像記録動作との間のインターバルを短くすることができるインクジェットプリンタを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、例えば図1に示すように、
ノズルの吐出口2が設けられた記録ヘッド1a,1b,1c,1dと、被記録媒体搬送機構4a,4b,5a,5bと、前記吐出口に対向して配置されるプラテンとを備え、
前記被記録媒体搬送機構により搬送される被記録媒体の裏面に前記プラテンを接触させて前記被記録媒体の前記吐出口に対する位置を規制しつつ、前記被記録媒体の表面に前記ノズルからインクを吐出して画像の記録を行うインクジェットプリンタにおいて、
前記プラテンとして機能する部材のうち少なくとも前記裏面に接触する部材はシート部材6であり、
前記シート部材を移動させることにより前記シート部材の前記吐出口に対向配置される部分を、これに連続する前記シート部材の他の部分により置換えるプラテンシート移動機構11,8,10を備えることを特徴とするインクジェットプリンタである。
【0007】
したがって請求項1記載の発明によれば、シート部材の吐出口に対向配置される部分にインクが付着して汚れても、プラテンシート移動機構によってシート部材を移動させることによりシート部材の吐出口に対向配置される部分を、これに連続するシート部材の他の部分により置換えることにより、汚れの生じていない新規な(未使用の)シート面を吐出口に対向位置することができ、これによりプラテンを清潔に保つことができる。
また、プラテン上に被記録媒体が配置されていない期間に記録ヘッドを固定したまま予備吐出を行うことができる。固定したまま行うから予備吐出はシート部材の吐出口に対向配置される部分に向けて行うこととなる。したがって、画像記録が終了し被記録媒体が吐出口前方から回避した時点から予備吐出を開示することができる。画像記録動作から予備吐出動作へ移行する際に準備動作を要しない分、画像記録動作終了時点から予備吐出動作開始時点までの時間が短くて済む。シート部材の吐出口に対向配置される部分は予備吐出時に吐出されたインクや、記録時に吐出され被記録媒体上に付着しなかったインクの一部を吸収して保持する。したがって、シート部材としてインクを吸収するものを用いることが必要であり、インク吸収性の良いものを用いることが好ましい。
また予備吐出が終了した時点で、上述のようにプラテンシート移動機構によってシート部材を移動させることによりシート部材の吐出口に対向配置される部分を、これに連続するシート部材の他の部分により置換えることにより、汚れの生じていない新規なシート面を吐出口に対向位置することができ、再びプラテンとして機能させても被記録媒体を汚すことが無い。新規なシート面を吐出口に対向配置させる移動を高速化すれば、予備吐出動作終了時点から画像記録動作開始時点までの時間も短くできる。
一方、被記録媒体の位置を規制するというプラテン本来の機能実現、プラテン清潔保持及び予備吐出インク回収処理のために必要となる機構は、シート部材、プラテンシート移動機構その他シート部材の一部を吐出口に対向配置して移動可能に支持するローラ等の部品により構成すれば良い。
以上の諸点により本発明によれば、必要な機構をなるべく複雑化・大型化させることなく、記録ヘッドを常時固定したままでもプラテン清潔保持動作及びノズルの予備吐出動作を行うことができ、それらの動作と画像記録動作との間のインターバルを短くすることができる。記録ヘッドは常時固定したままなので、記録ヘッドを動かすことに基づく位置制御負担や記録ヘッドの位置精度の低下という問題は抜本的に払拭される。
【0008】
請求項2記載の発明は、
前記プラテンシート移動機構による前記シート部材の移動方向と、前記各記録ヘッドにおける前記吐出口の並び方向とが平行でないことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタである。
【0009】
プラテンシート移動機構によるシート部材の移動方向と、各記録ヘッドにおける吐出口の並び方向とが平行であると、ある時点で複数の記録ヘッドのピッチ間領域に対向するシート面や、吐出口に対向するシート面に隣接していて吐出口に対向していないシート面を、プラテンシート移動機構によってシート部材を移動させても吐出口に対向配置することができず、シート部材に予備吐出によるインクが直接着弾しない部分が残り無駄が生じる。
しかし請求項2記載の発明によれば、プラテンシート移動機構によるシート部材の移動方向と、各記録ヘッドにおける吐出口の並び方向とが平行でないので、ある時点で複数の記録ヘッドのピッチ間領域に対向するシート面や、吐出口に対向するシート面に隣接するシート面を、プラテンシート移動機構によってシート部材を移動させることにより吐出口に対向配置することができ、予備吐出時にそのようにシート部材を順次移動させることによりシート部材を予備吐出時のインク回収手段として無駄無く使用することができるという利点がある。
【0010】
請求項3記載の発明は、
前記プラテンシート移動機構による前記シート部材の移動方向と、前記被記録媒体の搬送方向とが平行であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタである。
【0011】
したがって請求項3記載の発明によれば、プラテンシート移動機構によるシート部材の移動方向と、被記録媒体の搬送方向とが平行であるので、移動中のシート部材が被記録媒体に接触しても、被記録媒体の搬送に悪影響を与えないという利点がある。そのためにはさらに、シート部材の移動方向と被記録媒体の搬送方向とを平行で逆方向とするよりも同一方向とする方が良い。
【0012】
請求項4記載の発明は、例えば図1に示すように、
前記プラテンシート移動機構が前記シート部材を巻き取るプラテンシート巻取機構11を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0013】
したがって請求項4記載の発明によれば、プラテンシート巻取機構によりシート部材を迅速に移動することができる。
【0014】
請求項5記載の発明は、
前記プラテンシート移動機構は、前記ノズルの予備吐出動作の1回又は2回以上の所定回数毎に、前記シート部材を移動させることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0015】
したがって請求項5記載の発明によれば、ノズルの予備吐出動作の1回又は2回以上の所定回数毎に、前記シート部材を所定距離移動させるので、インクを吸収し過ぎて吸収力を失ったシート面をいつまでも使用したり、未だ吸収力を失っていないシート面を移動させてしまったりという不均一な使用を防止することができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、
前記プラテンシート移動機構による前記シート部材の移動の最小単位が前記ノズルから吐出された前記インクにより記録されるドット径であることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0017】
したがって請求項6記載の発明によれば、ドット径を最小単位としてシート部材を移動させるので、シート部材のほぼ全面をインク吸収面として有効に使用することができる。
【0018】
請求項7記載の発明は、
前記シート部材の総移動量が第一の規定量を超えた時点で、前記シート部材の交換を促す警告表示を開始し、
前記総移動量が第一の規定量より多い第二の規定量を超えた時点で、前記プラテンシート移動機構による前記シート部材の移動動作を禁止する制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0019】
したがって請求項7記載の発明によれば、ユーザは警告表示によりシート部材が無くなる前に交換の必要性を知ることができ、さらにシート部材が無くなった場合には、プラテンシート移動機構の無理又は無駄な動作を防ぐことができる。
【0020】
請求項8記載の発明は、例えば図1に示すように、
前記シート部材の移動量を検知するセンサ12を備えることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0021】
したがって請求項8記載の発明によれば、シート部材の移動量(送り量)を検知した上でシート部材の移動制御を行うことができる。センサが出力する信号に基づいてシート部材の総移動量を計測することもできる。
【0022】
請求項9記載の発明は、例えば図1に示すように、
前記記録ヘッドがラインヘッド1a,1b,1c,1dであることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0023】
ラインヘッドとは、一般に知られるように、吐出口が記録領域の幅に亘って並設され、固定されたままで記録を行う方式の記録ヘッドという。但し、必ずしも吐出口が一直線上に並設されることを要しない。また、複数のヘッドユニットにより構成される場合を含む。
したがって請求項9記載の発明によれば、通常、記録ヘッド固定式であるラインヘッド方式のプリンタに対し予備吐出の為に記録ヘッドの移動機構を採用する必要を生じさせることが無いという利点がある。
【0024】
請求項10記載の発明は、前記シート部材は吸収性シートであることを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタである。
【0025】
吸収性シートとは、少なくとも吐出口に対向配置される片面側に、インクを取りこみ吸収する空隙が繊維質等により形成されたシートをいい、紙、フエルト、不織布等が該当する。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施の形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0027】
図1(a)は本発明の一実施形態のインクジェットプリンタを示す断面図である。かかる断面図は、記録領域を通過する記録媒体に垂直かつその搬送方向に平行な面で切った断面図である。
【0028】
図1(a)に示すように本実施形態のインクジェットプリンタは、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色に対応したラインヘッド1a,1b,1c,1dを有する。4つのラインヘッド1a,1b,1c,1dは、所定の取付位置に固定され等間隔に並列する。
3は紙、樹脂フィルム等の被記録媒体であり、図中矢印で示す搬送方向Sへ搬送される。各ラインヘッド1a,1b,1c,1dは多数のインク吐出用のノズルを備える。各ノズルには例えば圧電素子が付設される。画像信号に基づきインクを吐出すべきノズルに付設された圧電素子に電圧を印加することによりノズル先端部に充填されたインクに圧力を付与してインク小滴10を吐出する。各ラインヘッド1a,1b,1c,1dの下端にはノズルの吐出口2が配置される。吐出口2は被記録媒体3に平行で搬送方向Sに垂直な方向(図面に垂直な方向)にライン状に並設される。このライン状に並設される長さをライン長さと呼ぶこととして、このライン長さは被記録媒体3の幅、すなわち、ライン長さと同一方向の被記録媒体3の寸法と同等又はそれ以上とすることにより被記録媒体3上の記録可能範囲を十分に確保する。
【0029】
被記録媒体3の搬送は、ローラ対4a,4bと、拍車5aと、ローラ5bとを含む搬送機構により行われる。ローラ対4a,4bは記録領域(=吐出口2直下の被記録媒体通過領域)に対し被記録媒体供給側に配置され、拍車5aとローラ5bとは被記録媒体排出側に配置される。ローラ対4a,4bは被記録媒体3を挟持して回転することにより、記録領域へ被記録媒体3を送り込む。拍車5aとローラ5bとは対を成しており、同様に被記録媒体3を挟持して回転することにより、記録領域を通過した画像記録済みの被記録媒体3を排出方向へと送る。拍車5aは被記録媒体3の記録面側に配置され、記録面に接触する。拍車5aにはくさびが周設されている。くさびとすることでインク付着面への接触面積を減らし、十分に乾燥していないインクに極力触れないようにする。
【0030】
さらに本実施形態のインクジェットプリンタは、プラテンシート6と、未使用のプラテンシート6を回転自在に保持する軸7と、軸7から延出するプラテンシート6をガイドし、吐出口2に対向するように保持する上手側ガイドローラ8及び下手側ガイドローラ10と、上手側ガイドローラ8と下手側ガイドローラ10の間に配置されプラテンシート6を支持するプラテン板9と、使用済みプラテンシート6を巻き取るプラテンシート巻取装置11と、送り量検知センサ12とを備える。
プラテンシート6は紙、フエルト、不織布等の吸収性シートである。図1(b)に示すように、プラテンシート6は中空の円筒軸心21に巻回された状態のプラテンシートロール20として供給される交換可能な消耗品である。プラテンシートロール20を軸7に嵌め込み、プラテンシート6の延出端部を引き出して、その延出端部を上手側ガイドローラ8、プラテン板9及び下手側ガイドローラ10に掛け渡し、プラテンシート巻取装置11に取り付けることによりプラテンシート6が本プリンタにセッティングされる。プラテンシート6の幅は少なくとも吐出口2のライン長さをカバーする寸法とされる。プラテンシート巻取装置11によるプラテンシート6の移動方向と被記録媒体3の搬送方向とは同一方向である。
【0031】
プラテン板9は、プラテンシート6の吐出口2に対向配置される部分を支持してプラテンとしての支持力を高めるものである。プラテンシート6の張力のみにより被記録媒体3を支持しても良いが、以上のようにプラテンシート6の下面をプラテン板9で支持して、被記録媒体3を支持する支持力を高めても良い。
また、プラテンシート6の下面を支持してプラテンとしての支持力を高める部材としてローラを採用しても良い。これをプラテンローラと呼ぶ。プラテンローラ吐する場合は、プラテンローラの周面にプラテンシート6及び被記録媒体3が沿うことになる。そのため、複数のラインヘッドのノズルがそれぞれプラテンローラの周面に対して垂直に向くように側面視放射状にラインヘッドを配置することが必要となる。
【0032】
送り量検知センサ12は、プラテンシート6の送り量を検知するものである。送り量検知センサ12として、プラテンシート6に接触してプラテンシート6の動きに同期して回転し、その回転量からプラテンシート6の送り量を検知する機械的センサを用いることができる。
本プリンタの図示しない中央制御部は送り量検知センサ12が検知する送り量に基づき、プラテンシート巻取装置11の駆動を制御する。なお、送り量検知センサ12を設けずにプラテンシート巻取装置11を駆動制御しても良い。
【0033】
次に一連の動作に沿って説明する。
まず、記録動作時には、図1(a)に示すように被記録媒体3をラインヘッド1a,1b,1c,1dの直下の記録領域に供給する。被記録媒体3はプラテンシート6に沿って記録領域を進行し、吐出口2から被記録媒体3までの距離が一定に保たれる。被記録媒体3が記録領域に配置されると、画像信号に基づいて選択的に吐出口2からインクを吐出する。1ラインの記録が終わる毎に順次被記録媒体3を送り、順次ライン毎に画像を形成する。
【0034】
予備吐出動作時は、図2に示すように被記録媒体3が記録領域に配置されていない期間に行う。
予備吐出動作ではラインヘッド1a,1b,1c,1dに備えられる全ノズルに吐出動作させる。吐出された廃インクはプラテンシート6に着弾しプラテンシート6に吸収される。
【0035】
予備吐出は、1回の動作で複数回ずつのインク吐出を各ノズルより行う。一般には数回〜数百回、より好ましくは数十回の吐出動作を行う。これにより、ノズル表面でインク中の水分が低下し粘度が上がったインクや、インク室内に混入した気泡など、1回の吐出動作では除去しにくいノズル欠要因を排除することができる。この予備吐出の一連の動作が1回または2回以上の所定回数終わると、プラテンシート巻き取り装置11を微小角度、図2上で右回りに回動させてプラテンシート6を巻き取るとともに、記録領域上のプラテンシート6を1ドット分以上送る。この1ドット分以上とは、ノズルから吐出されたインクにより記録されるドットの径、つまり、本インクジェットプリンタの解像度が600dpi(dots per inch)の場合は42.3μm以上、1200dpiの場合は21.1μm以上である。
【0036】
以上のようにして予備吐出動作が終わると、プラテンシート巻取装置11を回転させてプラテンシート6を巻取り、インクが付着しているシート面を回収する。この回収のためのプラテンシート6の巻取り量(送り量)は、プラテン部分の長さ以上とする必要がある。ここでプラテン部分とは、プラテンシート6の被記録媒体に接触する部分をいう。プラテン部分の長さ以上とするのは、次に記録領域に供給されてくる被記録媒体にインクが付着しているシート面を接触させないようにするためである。
しかし、必ずしもプラテンシート6のインクが付着しているシート面を予備吐出動作が終わる毎に回収しなければならないわけではない。
何回の予備吐出動作に対し1回の回収を行うかは、プラテンシート6の単位面積あたりの吸収量並びに乾燥性を考慮し、最適値を選んで決定される。例えばプラテンシート6に、単位面積あたりの吸収量が多く速乾性のものを用いると、インクが付着しているシート面がプラテン部分に存在し、そこに被記録媒体が接触した場合でも既に乾いているので、被記録媒体がインクで汚れることはない。したがって、1回の予備吐出動作に対し1回の回収を行わなくても良い。ここで、1回の予備吐出動作とは、連続する2つの画像記録動作間に行われる予備吐出動作を指す。
また、プラテンシート6に単位面積あたりの吸収量が少ないものを用いると、次の画像記録までに乾燥しないので、次の画像記録までにプラテンシート6をプラテン部の長さ以上巻き取らなければならない。すなわち、1回の予備吐出動作に対し1回の回収を行う必要がある。そうしないと次の画像記録時の被記録媒体がインクで汚れるおそれがあるからである。
一般に単位面積あたりの吸収量が少ない吸収シートはその厚みが薄いことに起因する。厚みの薄い吸収シートをプラテンシート6として使用すれば、同じ直径でもプラテンロール20に巻かれるプラテンシート6の長さを長くすることができる。したがって、プラテンロール20の交換頻度が極端に多くならないようにプラテンシート6の厚みと長さを選択することが肝心となる。
以上のようにして、プラテンシート巻取装置11によってプラテンシート6を移動させてプラテンシート6の吐出口2に対向配置される部分を下手側に引き出し、これに連続するプラテンシート6の上手側に控える部分により置換える。これにより、汚れの生じていない新規なシート面を吐出口2に対向位置することができ、再びプラテンとして機能させても被記録媒体3を汚すことが無い。
【0037】
以上のように、プラテンシート6は、被記録媒体3の裏面(=記録面の反対面)に接触して被記録媒体3の吐出口2に対する位置を規制するプラテンとして機能するとともに、予備吐出時には廃インク受け部材として機能する。また、プラテンシート6が巻取り回収されることにより廃インクを回収することができるとともに、プラテン表面が清潔に保たれる。
プラテンシート6を使い切ったら廃棄し、新しいプラテンロール20をセッティングする。
【0038】
次に、図3を参照してプラテンシートの交換表示制御及びプラテンシート巻取機構の動作禁止制御につき説明する。
【0039】
プラテンシート6の大部分が巻き取られ、それ以上巻き取れなくなった場合、すなわち、使い切った場合、予備吐出動作を行うことができない。なぜなら、予備吐出動作を行ってしまうと、プラテンシート6の吐出口2に対向する部分が汚れるが、この汚れた部分を更に下手に移動させることができず、画像記録を開始することができないからである。予備吐出を行わないままで画像記録を進めると良好な吐出を行うことができなくなる。したがって、プラテンシート6を交換する必要がある。そこで、プラテンシート6の交換を促す警告表示を行う。かかる警告表示の開始タイミングはプラテンシート6を使い切った時点でも良い。しかしその場合、プラテンシートロール20を用意して交換するのに要する時間により、画像記録を実行できないロスが生じ得る。したがって、プラテンシート6を使い切る前の残り少なくなった時点で警告表示を開始することが有効である。
【0040】
例えば、第一の規定量をプラテンシート6の有効長(使用できる長さ)の90%とする。本プリンタの中央制御部は、送り量検知センサ12の検知信号に基づきプラテンシート6の総移動量を計測し、プラテンシート6の総移動量が第一の規定量を超えた時点で、プラテンシート6の交換を促す警告表示を開始する。警告表示は液晶表示装置等の表示部15に、例えば「プラテンシートを交換してください」「プラテンシートがそろそろ無くなります」等の文章メッセージか、かかる文章の意味が意味付けられた所定のコード又は所定のマークにより表示される。同時に音表示により表示するようにしても良い。音表示は所定時間行うようにするのが良いが、表示部15に表示される視覚的表示は原則的にプラテンシートの交換が完了するまで表示するのが良い。本プリンタは警告表示を開始してもしばらくの間、予備吐出動作、画像記録動作等の動作を中止せず、要求される画像記録作業を行う。警告表示に気づいたユーザは、新しいプラテンシートロール20を用意する。続いてユーザは使用済みプラテンシート6を本プリンタから排除し新しいプラテンシートロール20を本プリンタにセッティングしてプラテンシート6を交換することができる。
【0041】
しかし、ここではプラテンシート6が交換されなかったとしよう。第二の規定量をプラテンシート6の有効長の99.5%とする。0.5%残すのは有効長の誤差を吸収するためである。
本プリンタの中央制御部は、送り量検知センサ12の検知信号に基づきプラテンシート6の総移動量を計測し、プラテンシート6の総移動量が第二の規定量を超えた時点で、プラテンシート巻取機構11によるプラテンシート6の移動動作を禁止する。
またこの時点で本プリンタの中央制御部は、予備吐出動作をも禁止する。
この時点の後において未処理の画像記録を続行してもよいが、画像劣化の危険性が高まるので、所定枚数の画像記録作業を実行後、画像記録動作をも禁止するように制御しても良い。
中央制御部は、予備吐出動作をも禁止した時点で同時に、警告表示を切り替える。例えば「プラテンシートが無くなりました。交換してください。」等の文章メッセージか、かかる文章の意味が意味付けられた所定のコード又は所定のマークにより表示される。同時に音表示により表示するようにしても良い。音表示は先ほどより強い警告音で、ユーザが本プリンタに対し所定の操作をするまで継続して鳴らすのが良いだろう。
さらに、画像記録動作をも禁止する場合は、それに応じた表示を行うことが良いことは言うまでもない。
【0042】
ユーザがプラテンシート6の交換を完了すると、本プリンタの中央制御部は、プラテンシート巻取機構11の動作の禁止、加えて、予備吐出動作が禁止状態である場合はその禁止、画像記録動作が禁止状態である場合はその禁止を解除するとともに、送り量検知センサ12の検知信号に基づき累積保持しているプラテンシート6の総移動量をリセットする。
【0043】
【発明の効果】
上述したように請求項1記載の発明によれば、必要な機構をなるべく複雑化・大型化させることなく、記録ヘッドを常時固定したままでもプラテン清潔保持動作及びノズルの予備吐出動作を行うことができ、それらの動作と画像記録動作との間のインターバルを短くすることができるという効果がある。また記録ヘッドは常時固定したままなので、記録ヘッドを動かすことに基づく位置制御負担や記録ヘッドの位置精度の低下という問題は抜本的に払拭されるという効果がある。
【0044】
上述したように請求項2記載の発明によれば、プラテンシート移動機構によるシート部材の移動方向と、各記録ヘッドにおける吐出口の並び方向とが平行でないので、ある時点で複数の記録ヘッドのピッチ間領域に対向するシート面や、吐出口に対向するシート面に隣接するシート面を、プラテンシート移動機構によってシート部材を移動させることにより吐出口に対向配置することができ、予備吐出時にそのようにシート部材を順次移動させることによりシート部材を予備吐出時のインク回収手段として無駄無く使用することができるという効果がある。
【0045】
上述したように請求項3記載の発明によれば、プラテンシート移動機構によるシート部材の移動方向と、被記録媒体の搬送方向とが平行であるので、移動中のシート部材が被記録媒体に接触しても、被記録媒体の搬送に悪影響を与えないという効果がある。
【0046】
上述したように請求項4記載の発明によれば、プラテンシート巻取機構によりシート部材を迅速に移動することができるという効果がある。
【0047】
上述したように請求項5記載の発明によれば、ノズルの予備吐出動作の1回又は2回以上の所定回数毎に、前記シート部材を所定距離移動させるので、インクを吸収し過ぎて吸収力を失ったシート面をいつまでも使用したり、未だ吸収力を失っていないシート面を移動させてしまったりという不均一な使用を防止することができるという効果がある。
【0048】
上述したように請求項6記載の発明によれば、ドット径を最小単位としてシート部材を移動させるので、シート部材のほぼ全面をインク吸収面として有効に使用することができるという効果がある。
【0049】
上述したように請求項7記載の発明によれば、ユーザは警告表示によりシート部材が無くなる前に交換の必要性を知ることができ、さらにシート部材が無くなった場合には、プラテンシート移動機構の無理又は無駄な動作を防ぐことができるという効果がある。
【0050】
上述したように請求項8記載の発明によれば、シート部材の移動量(送り量)を検知した上でシート部材の移動制御を行うことができるという効果がある。またセンサが出力する信号に基づいてシート部材の総移動量を計測することもできるという効果がある。
【0051】
上述したように請求項9記載の発明によれば、通常、記録ヘッド固定式であるラインヘッド方式のプリンタに対し予備吐出の為に記録ヘッドの移動機構を採用する必要を生じさせることが無いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の一実施形態のインクジェットプリンタを示す構成図であり、画像記録時を描写したものである。(b)は本発明の一実施形態のインクジェットプリンタに用いられるプラテンシートロールの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態のインクジェットプリンタを示す構成図であり、予備吐出時を描写したものである。
【図3】本発明の一実施形態のインクジェットプリンタを示す構成図であり、プラテンシートの使い切り直前状態を描写したものである。
【符号の説明】
1a,1b,1c,1d…ラインヘッド 2…吐出口 3…被記録媒体4a,4b…ローラ対 5a…拍車 5b…ローラ 6…プラテンシート 7…軸 8…上手側ガイドローラ 9…プラテン板 10…下手側ガイドローラ 11…プラテンシート巻取装置 12…送り量検知センサ 15…表示部 20…プラテンシートロール
Claims (10)
- ノズルの吐出口が設けられた記録ヘッドと、被記録媒体搬送機構と、前記吐出口に対向して配置されるプラテンとを備え、
前記被記録媒体搬送機構により搬送される被記録媒体の裏面に前記プラテンを接触させて前記被記録媒体の前記吐出口に対する位置を規制しつつ、前記被記録媒体の表面に前記ノズルからインクを吐出して画像の記録を行うインクジェットプリンタにおいて、
前記プラテンとして機能する部材のうち少なくとも前記裏面に接触する部材はシート部材であり、
前記シート部材を移動させることにより前記シート部材の前記吐出口に対向配置される部分を、これに連続する前記シート部材の他の部分により置換えるプラテンシート移動機構を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。 - 前記プラテンシート移動機構による前記シート部材の移動方向と、前記各記録ヘッドにおける前記吐出口の並び方向とが平行でないことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
- 前記プラテンシート移動機構による前記シート部材の移動方向と、前記被記録媒体の搬送方向とが平行であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
- 前記プラテンシート移動機構が前記シート部材を巻き取るプラテンシート巻取機構を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタ。
- 前記プラテンシート移動機構は、前記ノズルの予備吐出動作の1回又は2回以上の所定回数毎に、前記シート部材を移動させることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタ。
- 前記プラテンシート移動機構による前記シート部材の移動の最小単位が前記ノズルから吐出された前記インクにより記録されるドット径であることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタ。
- 前記シート部材の総移動量が第一の規定量を超えた時点で、前記シート部材の交換を促す警告表示を開始し、
前記総移動量が第一の規定量より多い第二の規定量を超えた時点で、前記プラテンシート移動機構による前記シート部材の移動動作を禁止する制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタ。 - 前記シート部材の移動量を検知するセンサを備えることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタ。
- 前記記録ヘッドがラインヘッドであることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタ。
- 前記シート部材は吸収性シートであることを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか一に記載のインクジェットプリンタ。
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2002
- 2002-06-11 JP JP2002169971A patent/JP2004009689A/ja active Pending
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