JP2004006607A - 有機シラン化合物を含んでなる絶縁膜用材料、その製造方法および半導体デバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般式(1)で示される有機シラン化合物を含んでなる、化学気相成長法により形成させる絶縁膜用材料であり、この材料は、有機ハライドと金属リチウムとを反応させた、三級炭素原子とリチウムとが直結した有機リチウムと、ハロゲン化アルコキシシランまたはテトラアルコキシシランとを反応させることにより得ることができる。
(式中、R1,R2,R3は、炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。R1,R2,R3は、互いに結合し、環状構造を形成してよい。R4は、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を表わし、nは、1乃至3の整数を表わす。)
【選択図】 選択図なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロジックULSIにおける多層配線技術において用いられる低誘電率層間絶縁膜材料に関するものである。殊にプラズマ重合用シラン化合物を含んでなる絶縁膜材料、その製造方法及びその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子産業の集積回路分野の製造技術において、高集積化かつ高速化の要求が高まっている。シリコンULSI、殊にロジックULSIにおいては、MOSFETの微細化による性能よりも、それらをつなぐ配線の性能が課題となっている。すなわち、多層配線化に伴う配線遅延の問題を解決する為に配線抵抗の低減と配線間及び層間容量の低減が求められている。
【0003】
これらのことから、現在、集積回路の大部分に使用されているアルミニウム配線に変えて、より電気抵抗が低く、マイグレーション耐性のある銅配線の導入が必須となっており、スパッタリング又は化学蒸着(以下、CVDと略記)法によるシード形成後、銅メッキを行うプロセスが実用化されつつある。
【0004】
低誘電率層間絶縁膜材料としては、さまざまな提案がある。従来技術としては、無機系では、二酸化珪素(SiO2)、窒化珪素、燐珪酸ガラス、有機系では、ポリイミドが用いられてきたが、最近では、より均一な層間絶縁膜を得る目的で予めテトラエトキシシランモノマーを加水分解、すなわち、重縮合させてSiO2を得、Spin on Glass(無機SOG)と呼ぶ塗布材として用いる提案や、有機アルコシキシランモノマーを重縮合させて得たポリシロキサンを有機SOGとして用いる提案がある。
【0005】
また、絶縁膜形成方法として絶縁膜ポリマー溶液をスピンコート法等で塗布、成膜を行う塗布型のものと主にプラズマCVD装置中でプラズマ重合させて成膜するCVD法の二つの方法がある。
【0006】
成膜方法の特徴としては、プラズマCVD法においては、バリアメタル、配線材料である銅配線材料との密着性が良好な反面、膜の均一性が課題となる場合があり、塗布型のものでは、膜の均一性は良好であるものの、塗布、溶媒除去、熱処置の三工程が必要であり、CVD材料より経済的に不利であり、また、バリアメタル、配線材料である銅配線材料との密着性や、微細化している基板構造への塗布液の均一な塗布自体が課題となる場合が多い。
【0007】
塗布型材料においては、比誘電率が2.5以下、更には、2.0以下のUltra Low−k材を実現する為に多孔質材料とする方法が提案されている。有機系もしくは無機系材料のマトリックスに容易に熱分解する有機成分微粒子を分散させ、熱処理し多孔化する方法、珪素と酸素をガス中蒸発させて形成したSiO2超微粒子を蒸着させ、SiO2超微粒子薄膜を形成させる方法等がある。
【0008】
しかしながら、これら多孔質化の方法は、低誘電率化には有効であるものの、機械的強度が低下し、化学的機械的研磨(CMP)が困難となったり、水分を吸収による誘電率の上昇と配線腐食を引き起こす場合があった。
【0009】
従って、市場は、低誘電率、十分な機械的強度、バリアメタルとの密着性、銅拡散防止、耐プラズマアッシング性、耐吸湿性等の全て要求性能を満たすバランスの良い材料を、更に求めており、これらの要求性能をある程度バランスさせる方法として、有機シラン系材料において、シランに対する有機置換基の炭素比率を上昇させることによって、有機ポリマーと無機ポリマーの中間的特徴を有する材料が提案されている。
【0010】
例えば、特許文献1では、アダマンチル基を有するシリコン化合物を酸性水溶液共存下、ゾル−ゲル法により加水分解重縮合した塗布溶液を用い、多孔質化せずに比誘電率が2.4以下の層間絶縁膜を得る方法を提案している。
【0011】
しかしながら、この材料は、塗布型の材料であり、依然、上述したような塗布型による成膜方法の課題を抱えている。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−302791号公報(特許請求の範囲)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規な低誘電率材料、殊にPECVD装置に適したアルキルシラン化合物を含んでなる、低誘電率絶縁膜用材料を提供すること、及びそれを用いた絶縁膜並びにこれらの絶縁膜を含んでなる半導体デバイスを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、三級炭素基がケイ素原子に直接結合した有機シラン化合物が、絶縁膜、殊に半導体デバイス用の低誘電率層間絶縁膜材料として好適であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0016】
【化5】
(式中、R1,R2,R3は、炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。R1,R2,R3は、互いに結合し、環状構造を形成してよい。R4は、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を表わし、nは、1乃至3の整数を表わす。)
で示される三級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物を含んでなる、化学気相成長法により形成される絶縁膜用材料を提供することにある。
【0017】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0018】
上記一般式(1)おいてR1,R2,R3は、炭素数1〜20の飽和又は、不飽和炭化水素基であり、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれの構造を有してよい。また、それらが互いに結合したものも本発明の範囲に含まれる。炭素数が20を超える場合は、対応する有機ハライド等原料の調達が困難となったり、調達できたとしても純度が低い場合がある。
【0019】
PECVD装置での安定的使用考慮した場合、有機シラン化合物の蒸気圧が低くなりすぎないとの点で炭素数1〜10の炭化水素基が特に好ましい。
【0020】
R1,R2,R3の炭化水素基の例としては、特に限定されるものではないが、炭素数1〜20、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基を挙げることができる。R1,R2,R3は、同一であっても異なっても良い。
【0021】
R1,R2,R3が互いに結合していない場合の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、tert.−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、トルイル基等を挙げることができる。
【0022】
R1,R2,R3が互いに結合した場合の例としては、1−アダマンチル基が代表例として挙げられる。なかんずく、R1,R2,R3の組合わせとしてR1,R2,R3共にメチルであるtert.−ブチル、R1,R2がメチル、R3がエチルであるtert.−アミル、R1,R2,R3が結合した1−アダマンチルが
三級炭化水素基として経済的に好ましい。
【0023】
R4は、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を表わし、炭化水素基としては、飽和または不飽和炭化水素基であり、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれの構造を有してよい。炭素数が10を超えた場合、生成した有機シランの蒸気圧が低くなり、PECVD装置での使用が困難となる場合があり、好ましくない場合がある。
【0024】
R4としては、炭素数1乃至4の炭化水素基であるメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert.−ブチルが原料調達上好ましい。
【0025】
nは、1乃至3の整数を表す。すなわち、n=1である炭化水素基置換トリアルコキシシラン類、n=2である炭化水素基ニ置換ジアルコキシシランおよびn=3である炭化水素基三置換アルコキシシランを表す。これらの混合物も本発明の範囲に含まれる。
【0026】
一般式(1)で表される有機シラン化合物の具体例としては、tert.−ブチルトリメトシキシラン、ジtert.−ブチルジメトシキシラン、tert.−アミルトリメトシキシラン、ジtert.−アミルジメトシキシラン、1−アダマンチルトリメトシキシラン、ジ(1−アダマンチル)ジメトシキシラン、tert.−ブチルトリエトキシシラン、ジtert.−ブチルジエトキシシラン、tert.−アミルトリエトキシシラン、ジtert.−アミルジエトキシシラン、1−アダマンチルトリエトキシシラン、ジ(1−アダマンチル)ジエトキシシラン、tert.−ブチルトリ−i−プロポキシシラン、ジtert.−ブチルジ−i−プロポキシシラン、tert.−アミルトリ−i−プロポキシシラン、ジtert.−アミルジ−i−プロポキシシラン、1−アダマンチルトリ−i−プロポキシシラン、ジ(1−アダマンチル)ジ−i−プロポキシシラン、1−トゥワイスチルトリメトシキシラン、ジ(1−トゥワイスチル)ジメトシキシラン、1−ジアマンチルトリメトシキシラン、ジ(1−ジアマンチル)ジメトシキシラン、1−トリプチシルトリメトシキシラン、ジ(1−トリプチシル)ジメトシキシラン等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(1)の有機シラン化合物の製造法は、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(2)
【0028】
【化6】
(式中、R1〜R3は、前記に同じ。Xは、塩素原子、臭素原子、沃素原子表わす。)
で示される有機ハライドと、金属リチウム粒子とを反応させて製造した三級炭素原子とリチウム原子とが直結した有機リチウムと下記一般式(3)
【0029】
【化7】
(式中、R4は、前記に同じ。X’は、弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を表し、mは、0乃至3の整数を表わす。)
で示されるハロゲン化アルコキシシラン(m=1〜3)またはテトラアルコキシシラン(m=0)とを反応させることにより、一般式(1)で表される有機シラン化合物を製造することができる。 一般式(2)で表される有機ハライドの例としては、例えば、tert.−ブチルクロリド、tert.−ブチルブロミド、tert.−ブチルアイオダイド、tert.−アミルクロリド、tert.−アミルブロミド、tert.−アミルアイオダイド、1−アダマンチルクロリド、1−アダマンチルブロミド、1−アダマンチルアイオダイド、1−トゥワイスチルクロリド、1−トゥワイスチルブロミド、1−トゥワイスチルアイオダイド、1−ジアマンチルクロリド、1−ジアマンチルブロミド、1−ジアマンチルアイオダイド、1−トリプチシルクロリド、1−トリプチシルブロミド、1−トリプチシルアイオダイド等を挙げることができる。
【0030】
一般式(3)で表されるハロゲン化アルコキシシランまたはテトラアルコキシシランの例としては、例えば、クロロトリメトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、テトラメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、トリクロロエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、クロロトリ−i−プロポキシシラン、ジクロロジ−i−プロポキシシラン、トリクロロ−i−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert.−ブトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
本製造法を採用することにより、副生成物生成を抑制し、高収率に高純度の一般式(1)で示される有機シラン化合物が得られる。特に、有機マグネシウム等を用いた他の製造方法においては、工業的に製造し難い、三級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を2つ以上有する有機シラン化合物を製造することができる。
【0032】
上記一般式(2)で示される有機ハライドと金属リチウム粒子との反応条件は、特に限定されるものではないが、以下にその一例を示す。
【0033】
使用する金属リチウムとしては、リチウムワイヤー、リチウムリボン、リチウムショット等を用いることができるが、反応の効率面から、500μm以下の粒径を有するリチウム微粒子を用いることが好ましい。
【0034】
有機ハライドと金属リチウム粒子との反応に用いる溶媒としては、当該技術分野で使用されるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン、デセン−1等の不飽和炭化水素類、ジエチルエーテル、プロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類を使用することができる。
【0035】
有機ハライドと金属リチウム粒子との反応における反応温度については、生成する三級炭素原子とリチウムとが直結した有機リチウムが分解しない様な温度範囲で行うことが好ましい。通常、工業的に使用されている温度である−100〜200℃の範囲、好ましくは、−85〜150℃の範囲で行うことが好ましい。反応の圧力条件は、加圧下、常圧下、減圧下いずれであっても可能である。
【0036】
合成した三級炭素原子とリチウム原子とが直結した有機リチウムについては、製造の後、そのまま用いることができ、また、未反応の有機ハライド及び金属リチウム、反応副生成物であるリチウムハライドを除去した後、使用することもできる。
【0037】
三級炭素原子とリチウム原子とが直結した有機リチウムと上記一般式(3)のハロゲン化アルコキシシランまたはテトラアルコキシシランとの反応条件は、特に限定されるものではないが、以下にその一例を示す。
【0038】
使用できる反応溶媒は、上記の有機ハライドと金属リチウム粒子との反応の際に用いることができる溶媒と同様のものが使用できる。その反応温度については、使用する三級炭素原子とリチウムとが直結した有機リチウムが分解しない様な温度範囲で行うことが好ましい。通常、工業的に使用されている温度である−100〜200℃の範囲、好ましくは、−85〜150℃の範囲で行うことが好ましい。反応の圧力条件は、加圧下、常圧下、減圧下いずれであっても可能である。
【0039】
合成した一般式(1)で示される有機シラン化合物の精製法については、絶縁膜材料として使用するに有用な水分含有量を50ppm未満、ケイ素、炭素、酸素、水素以外の元素であって製造原料に由来する不純物量を10ppb未満とする為に、副生するリチウム塩、マグネシウム塩、アルカリ金属塩をガラスフィルター、焼結多孔体等を用いた濾過、常圧もしくは減圧蒸留又はシリカ、アルミナ、高分子ゲルを用いたカラム分離等の精製手段により除去すればよい。この際、必要に応じてこれらの手段を組合わせて使用してもよい。一般の有機合成技術で用いられるような、副生するリチウム塩、マグネシウム塩、アルカリ金属塩を水等により抽出する方法では、最終的に得られる一般式(1)で示される有機シラン化合物中の水分やケイ素、炭素、酸素、水素以外の元素不純物、殊に金属不純物残渣が高くなって、絶縁膜材料として不適当なものとなる場合がある。
【0040】
製造に際しては、当該有機金属化合物合成分野での方法に従う。すなわち、脱水及び脱酸素された窒素又はアルゴン雰囲気下で行い、使用する溶媒及び精製用のカラム充填剤等は、予め脱水操作を施しておくことが好ましい。また、金属残渣及びパーティクル等の不純物も除去しておくことが好ましい。
【0041】
本発明の一般式(1)で示される有機シラン化合物は、PECVD装置により、低誘電率絶縁材料として成膜するに好適な材料である。
【0042】
これらの材料をCVDで成膜後に、三級炭素原子とケイ素原子が切断される350℃以上の温度で熱処理し、切断した炭化水素分子を膜外に放出させることで分子サイズの空孔を膜中に意図的に形成させて多孔質化し、誘電率を低下させた低誘電率絶縁材料を得ることもできる。
【0043】
本発明の低誘電率絶縁膜材料は、多層配線を用いたULSIの製造に好適であり、この絶縁膜を設けてなる半導体デバイスも本発明の権利範囲に含まれるものである。
【0044】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0045】
実施例1
[三級炭素原子とリチウム原子とが直結した有機リチウムの製造]
窒素気流下、滴下濾斗を備えた200mlのシュレンク管反応器に平均粒子径150μmのLi粒子1.40g(0.200mol)と乾燥したペンタン100mlとを仕込み、30℃で攪拌しつつ、滴下濾斗より、1−ブロモアダマンタン21.5g(0.100mol)をn−ペンタン50mlに溶解させた溶液を内温が30℃に保たれるように滴下し、更にn−ペンタン還流条件下、14時間攪拌した。
【0046】
反応終了後、未反応の金属Li及び副生物のLiBrを濾過により除去して、1−アダマンチルリチウムのn−ペンタン溶液とした。
[三級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の製造]滴下濾斗を備えた200mlのシュレンク管反応器に乾燥したペンタン50mlとテトラメトキシシラン13.7g(0.090mol)を仕込み、上記で製造した1−アダマンチルリチウムのn−ペンタン溶液を滴下濾斗より、内温が0℃に保持されるように滴下した。滴下終了後、室温にて2時間攪拌した。反応終了後、n−ペンタンを留去し、カラムクロマトグラフィーにより、目的物である1−アダマンチルトリメトキシシランを分離精製した。結果は、収率82%であった。
【0047】
実施例2
実施例1において、テトラメトキシシランの使用量を13.7g(0.090mol)に変えて、6.85g(0.045mol)としたこと以外は、実施例1と同様に実験操作を行い、目的物であるジ(1−アダマンチル)ジメトキシシランを得た。結果は、収率71%であった。
【0048】
比較例1
[三級炭素原子とリチウム原子とが直結した有機マグネシウムの製造]
窒素雰囲気下、還流冷却器、滴下濾斗、攪拌装置を備えた1000mlのフラスコに、マグネシウムの21.4g(0.880mol)とジブチルエーテル125.0g(0.960mol)を仕込み、攪拌開始後、これに滴下濾斗より、1−ブロモアダマンタン172.1g(0.800mol)とエチルブロマイド4.36g(0.0400mol)をジブチルエーテル250.0g(1.92mol)で希釈した溶液を、ジブチルエーテル還流条件下に、2時間かけて滴下し、引き続き、同還流条件下で4時間攪拌し、1−アダマンチルマグネシウムブロミドのジブチルエーテル溶液を得た。
[三級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の製造]窒素雰囲気下、還流冷却器、攪拌装置を備えた備えた2000mlの反応器に乾燥したジブチルエーテル200mlとテトラメトキシシラン54.8g(0.360mol)を仕込み、上記で製造した1−アダマンチルマグネシウムブロミドのジブチルエーテル溶液をロータリーポンプにより、内温が0℃に保持されるように滴下した。滴下終了後、室温にて2時間攪拌した。
【0049】
ガスクロマトグラフィーにより生成物を確認したところ、目的のジ(1−アダマンチル)ジメトキシシランの生成は、確認されなかった。更にジブチルエーテル還流下に2時間攪拌したがジ(1−アダマンチル)ジメトキシシランの生成は、確認されなかった。
【0050】
実施例3
[三級炭素原子とリチウム原子とが直結した有機リチウムの製造]
アルゴン気流下、還流冷却器、滴下濾斗を備えた200mlのシュレンク管反応器に平均粒子径75μmのLi粒子1.39g(0.200mol)と乾燥したペンタン50mlを仕込み、30℃で攪拌しつつ、滴下濾斗より、1−クロロアダマンタン3.41g(0.020mol)をn−ペンタン50mlに溶解させた溶液を内温が30℃に保たれるように滴下した。更にn−ペンタン還流条件下、8時間攪拌した後、原料の1−クロロアダマンタンが検出されないことを確認し、1−アダマンチルリチウムのn−ペンタン溶液とした。
[三級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の製造]アルゴン雰囲気下、還流冷却器と滴下濾斗を備えた200mlのシュレンク管反応器に乾燥したn−ペンタン50mlとテトラエトキシシラン3.33g(0.016mol)を仕込み、上記で製造した1−アダマンチルリチウムのn−ペンタン溶液を滴下濾斗より、室温で滴下した。滴下終了後、n−ペンタン還流条件下に5時間攪拌した。反応終了後、n−ペンタンを留去し、カラムクロマトグラフィーにより、目的物である1−アダマンチルトリエトキシシランを分離精製した。結果は、収率72%であった。
【0051】
実施例4
実施例3において、テトラエトキシシランに変えて、テトラメトキシシラン2.44g(0.016mol)としたこと以外は、実施例3と同様に実験操作を行い、目的物である1−アダマンチルトリメトキシシランを得た。結果は、収率78%であった。
【0052】
比較例2
[三級炭素原子とマグネシウム原子とが直結した有機マグネシウムの製造]
窒素雰囲気下、還流冷却器、滴下濾斗、攪拌装置を備えた200mlのシュレンク管にマグネシウム2.92g(0.120mol)とジブチルエーテル30mlを仕込み、これに滴下濾斗より、1−ブロモアダマンタン21.5g(0.100mol)とエチルブロマイド1.09g(0.0100mol)をジブチルエーテル40mlで溶解した溶液を、80℃、1時間の条件で滴下し、更に120℃で2時間攪拌し、1−アダマンチルマグネシウムブロミドのジブチルエーテル溶液を得た。
[三級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の製造]上記の200mlシュレンク管中の1−アダマンチルマグネシウムブロミドのジブチルエーテル溶液にテトラエトキシシラン16.7g(0.080mol)を乾燥ジブチルエーテル20mlに溶解した溶液を滴下濾斗より、45℃10分間の条件で滴下した。滴下終了後、120℃で6時間,攪拌した。
【0053】
ガスクロマトグラフ−質量分析装置(GC−MS)により、反応液を分析したが、1−アダマンチルトリエトキシシラン及びジ(1−アダマンチル)ジエトキシシランの生成は、全く確認されなかった。
【0054】
実施例5
[三級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の製造]窒素雰囲気下、還流冷却器、滴下濾斗、攪拌装置を備えた500mlの四つ口フラスコ反応器にテトラエトキシシラン50.0g(0.240mol)とn−ペンタン250mlを仕込み、0℃に冷却した。滴下濾斗より、23.7wt%ターシャリーブチルリチウムのn−ペンタン溶液78.0g(0.289mol)を1時間で滴下し、更に2時間攪拌した。
【0055】
ガスクロマトグラフ内部標準法によるターシャリーブチルトリエトキシシランの収率は、93.0%であった。
【0056】
反応液からリチウムエトキシドを濾別除去し、濾液からn−ペンタンを留去した後、減圧蒸留し、ターシャリーブチルトリエトキシシランを単離した。収量は、39.6gであり、単離収率は、74.8%であった。
【0057】
単離したターシャリーブチルトリエトキシシランを1H−NMR、13C−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであり、高純度の目的物であることが示された。
【0058】
1H−NMR(CDCl3);1.025ppm(s,9H)、1.285ppm(t,9H)、3.915ppm(q,6H)
13C−NMR(CDCl3);17.583ppm、18.426ppm、26.391ppm、58.785ppm
GC−MS;Mw=220、C10H24O3Si
また、得られたターシャリーブチルトリエトキシシラン100g中の水分及びリチウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MS(高周波プラズマ発光−質量分析器、横河アナリティカルシステムズ社製、商品名「HP4500」)により測定した結果は、H2О=17ppm、Li<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0059】
比較例3
[三級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の製造]窒素雰囲気下、還流冷却器、滴下濾斗、攪拌装置を備えた500mlの四つ口フラスコ反応器にテトラエトキシシラン11.8g(0.0567mol)とテトラヒドロフラン50mlを仕込み、0℃に冷却した。滴下濾斗より、1.70mol/Lのターシャリーブチルマグネシウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液40ml(0.0680mol)を1時間で滴下し、更に2時間攪拌した。反応液の一部を採取し、ガスクロマト分析を行ったが、ターシャリーブチルトリエトキシシランの生成は確認できなかった。
【0060】
更に室温にて3時間攪拌し、反応を行ったがターシャリーブチルトリエトキシシランの生成は確認できなかった。
【0061】
更にテトラヒドロフラン還流条件下で3時間攪拌し、反応を行った。ガスクロマトグラフ内部標準法によるターシャリーブチルトリエトキシシランの収率は、1.4%であり、ターシャリーブチルマグネシウムクロリドとテトラエトキシシランの反応では、効率的に目的物を合成できないことが解った。
【0062】
実施例6
[三級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の製造]実施例5において、テトラエトキシシランに変えて、テトラメトキシシラン36.6g(0.240mol)としたこと以外は、実施例5と同様に実験操作を行い、目的物であるターシャリーブチルトリメトキシシランを得た。結果は、ガスクロマトグラフ内部標準法によるターシャリーブチルトリメトキシシランの収率が91.1%、減圧蒸留による単離収率が70.0%であった。
【0063】
単離したターシャリーブチルトリメトキシシランを1H−NMR、13C−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであり、高純度の目的物であることが示された。
【0064】
1H−NMR(CDCl3);1.043ppm(s,9H)、3.683ppm(s,9H)
13C−NMR(CDCl3);17.876ppm、26.410ppm、51.277ppm
GC−MS;Mw=178、C7H18O3Si
また、得られたターシャリーブチルトリメトキシシラン中の水分及びリチウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MSにより測定した結果は、H2О=14ppm、Li<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0065】
実施例7
実施例3において、カラムクロマトグラフィーに変えて、減圧蒸留により、目的物である1−アダマンチルトリエトキシシランを分離精製したこと以外は、実施例3と同様に実験操作を行い、目的物である1−アダマンチルトリエトキシシランを得た。結果は、収率74.0%であった。
【0066】
単離した1−アダマンチルトリエトキシシランを1H−NMR、13C−NM
R、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであり、高純度の目的物である
ことが示された。
【0067】
1H−NMR(CDCl3);1.290ppm(t,9H)、1.836ppm及び1.886ppm(2ピーク,15H)、3.890ppm(q,6H)13C−NMR(CDCl3);18.499ppm,22.656ppm,27.453ppm,36.975ppm,37.616ppm,58.785ppm
GC−MS;Mw=298、C16H30O3Si
また、得られた1−アダマンチルトリエトキシシラン中の水分及びリチウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MSにより測定した結果は、H2О=10ppm、Li<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0068】
実施例8
[ターシャリーブチルトリメトキシシランのプラズマ重合成膜]
薄膜の作製には、図1に示すような高周波誘導結合型リモート式プラズマCVD装置(PECVD装置)を使用した。本装置の主たる構成は、石英ガラス製プラズマ源1、成膜チャンバー2、気化器3、真空排気装置4、シリコン基板5、高周波電源6およびマッチングネットワーク7からなり、成膜チャンバー2には、図2に示すような高感度赤外反射吸収分光装置(IRRAS)が備えてある。このIRRASは、赤外光8を偏光板9で偏光した後、シリコン基板5上に堆積する重合膜に対して80度の入射角にて照射し、重合膜からの反射光を水銀・カドミウム・テルル半導体赤外センサーで検出して、重合膜の成膜状態を確認するためのものである。この装置を用いて、実施例6で製造したターシャリーブチルトリメトキシシランのプラズマ重合成膜を以下のように実施した。
【0069】
成膜チャンバー2を10−4Pa以下まで真空排気した後、酸素ガスを5sccm導入し、チャンバー内の圧力が10Paになるよう、オリフィスバルブにより排気速度を調節した。その後、酸素ガスを排気し、原料となるターシャリーブチルトリメトキシシランガスを内圧が10Paとなるまで気化器3を通じて成膜チャンバー2に導入した。内圧が安定した後、プラズマ源1に75Wの高周波を印加し、プラズマを発生させ、成膜チャンバー2内に設置したシリコン基板5上に薄膜を堆積させた。この間、ターシャリーブチルトリメトキシシランガスの流量は、5sccmに保たれ、12分間の成膜を実施した。
【0070】
成膜中のIRRASでの観測により、ターシャーリーブチル基がケイ素原子に直結した構造を有する酸化ケイ素の重合体が堆積されていることを確認した。
【0071】
得られたシリコン基板上のプラズマ重合薄膜を電子顕微鏡(SEM)、X線電子分光装置(XPS)、赤外吸収分光装置(IR)により分析した結果を以下に示す。
・膜圧(SEM);120nm
・膜組成(XPS);C=37atom%、O=49atom%、Si=14atom%
・C/Si=2.64
・赤外吸収(IR);ケイ素原子に直結したターシャリーブチル基(2956cm−1、1479cm−1、727cm−1)、ケイ素原子に直結したメチル基(2853cm−1、1273cm−1、798cm−1)
比較例4
[メチルトリメトキシシランのプラズマ重合成膜]
実施例8においてターシャリーブチルトリメトキシシランに変えて、メチルトリメトキシシランを用い、重合成膜時間を20分間としたこと以外は、実施例8と同様にしてシリコン基板上にプラズマ重合薄膜を形成し、その分析結果を以下に示す。
・IRRAS;メチル基がケイ素原子に直結した構造を有する酸化ケイ素の重合体の堆積を確認。
・膜圧(SEM);22nm
・膜組成(XPS);C=37atom%、O=43atom%、Si=20atom%
・C/Si=1.85
・赤外吸収(IR);ケイ素原子に直結したメチル基(2853cm−1、1273cm−1、798cm−1)、ケイ素原子に直結した水素(2300cm−1付近プロードピーク)、ケイ素原子に直結したヒドロキシ基(3300cm−1付近プロードピーク)
実施例8に比し、成膜速度が遅く、炭素取り込み量も少なく、絶縁膜として不適なケイ素に直結したヒドロキシ基および水素を有するポリマー薄膜ポリマー薄膜であることが確認された。
【0072】
以上の如く、ターシャリーブチルトリメトキシシランのみのプラズマ重合により、絶縁膜として有用なケイ素原子に直結したターシャリーブチル基とメチル基を共に有する高炭素含有量の酸化ケイ素ポリマー薄膜が従来よりも高成膜速度で得られることが明らかとなった。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の顕著な効果が奏される。
【0074】
本発明の第一の効果としては、本発明の三級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物を用いることで、半導体デバイス層間絶縁膜中の低誘電率材料として、低誘電率且つ高機械的強度の材料を提供できることにある。
【0075】
第二の効果としては、本発明の三級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物をPECVDでの層間絶縁膜形成に適用することにより、従来法では、困難であった多孔質材料の提供が可能となることにある。
【図面の簡単な説明】
【図1】PECVD装置の構成の概略を示す図である。
【図2】IRRASの構成の概略を示す図である。
【符号の説明】
1 石英ガラス製プラズマ源
2 成膜チャンバー
3 気化器
4 真空排気装置
5 シリコン基板
6 高周波電源
7 マッチングネットワーク
8 赤外光
9 偏光板
10 水銀・カドミウム・テルル半導体赤外センサー
Claims (8)
- 一般式(1)の三級炭素基がターシャリーブチル、ターシャリーアミル、1−アダマンチルである請求項1に記載の絶縁膜用材料。
- ケイ素、炭素、酸素、水素以外の元素であって製造原料に由来する不純物量が10ppb未満であり、かつ含水量が50ppm未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の絶縁膜用材料。
- 化学気相成長法が、プラズマ励起化学気相成長法(PECVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の絶縁膜用材料。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の有機シラン化合物を用い、PECVD装置により、成膜した絶縁膜。
- 請求項6の絶縁膜を、三級炭素原子とケイ素原子との結合が切断される以上の温度で熱処理し、多孔質化した絶縁膜。
- 請求項6または請求項7に記載の絶縁膜を用いた半導体デバイス。
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