JP4385616B2 - 有機シラン化合物を含んでなる絶縁膜用材料、その製造方法および半導体デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロジックULSIにおける多層配線技術において用いられる低誘電率層間絶縁膜材料に関するものである。殊にプラズマ重合用シラン化合物を含んでなる絶縁膜材料およびその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子産業の集積回路分野の製造技術において、高集積化かつ高速化の要求が高まっている。シリコンULSI、殊にロジックULSIにおいては、MOSFETの微細化による性能よりも、それらをつなぐ配線の性能が課題となっている。すなわち、多層配線化に伴う配線遅延の問題を解決する為に配線抵抗の低減と配線間および層間容量の低減が求められている。
【0003】
これらのことから、現在、集積回路の大部分に使用されているアルミニウム配線に変えて、より電気抵抗が低く、マイグレーション耐性のある銅配線の導入が必須となっており、スパッタリングまたは化学蒸着(以下、CVDと略記)法によるシード形成後、銅メッキを行うプロセスが実用化されつつある。
【0004】
低誘電率層間絶縁膜材料としては、さまざまな提案がある。従来技術としては、無機系では、二酸化珪素(SiO2)、窒化珪素、燐珪酸ガラス、有機系では、ポリイミドが用いられてきたが、最近では、より均一な層間絶縁膜を得る目的で予めテトラエトキシシランモノマーを加水分解、すなわち、重縮合させてSiO2を得、Spin on Glass(無機SOG)と呼ぶ塗布材として用いる提案や、有機アルコシキシランモノマーを重縮合させて得たポリシロキサンを有機SOGとして用いる提案がある。
【0005】
また、絶縁膜形成方法として絶縁膜ポリマー溶液をスピンコート法等で塗布、成膜を行う塗布型のものと主にプラズマCVD装置中でプラズマ重合させて成膜するCVD法の二つ方法がある。
【0006】
プラズマCVD法の提案としては、例えば、特許文献1において、トリメチルシランと酸素とからプラズマCVD法により酸化トリメチルシラン薄膜を形成する方法が、また、特許文献2では、メチル,エチル,n−プロピル等の直鎖状アルキル、ビニル、フェニル等のアルキニル及びアリール基を有するアルコキシシランからプラズマCVD法により酸化アルキルシラン薄膜を形成する方法が提案されている。これら従来のプラズマCVD法材料で形成された絶縁膜は、バリアメタル、配線材料である銅配線材料との密着性が良好な反面、膜の均一性が課題となったり、成膜速度、比誘電率が不十分な場合があった。
【0007】
一方、塗布型の提案としては、膜の均一性は良好であるものの、塗布、溶媒除去、熱処置の三工程が必要であり、CVD材料より経済的に不利であり、また、バリアメタル、配線材料である銅配線材料との密着性や、微細化している基板構造への塗布液の均一な塗布自体が課題となる場合が多い。
【0008】
また、塗布型材料においては、比誘電率が2.5以下、更には、2.0以下のUltra Low−k材を実現する為に多孔質材料とする方法が提案されている。有機系もしくは無機系材料のマトリックスに容易に熱分解する有機成分微粒子を分散させ、熱処理し多孔化する方法、珪素と酸素をガス中蒸発させて形成したSiO2超微粒子を蒸着させ、SiO2超微粒子薄膜を形成させる方法等がある。
【0009】
しかしながら、これら多孔質化の方法は、低誘電率化には有効であるものの、機械的強度が低下し、化学的機械的研磨(CMP)が困難となったり、水分を吸収による誘電率の上昇と配線腐食を引き起こす場合があった。
【0010】
従って、市場は、低誘電率、十分な機械的強度、バリアメタルとの密着性、銅拡散防止、耐プラズマアッシング性、耐吸湿性等の全て要求性能を満たすバランスの良い材料を、更に求めており、これらの要求性能をある程度バランスさせる方法として、有機シラン系材料において、シランに対する有機置換基の炭素比率を上昇させることによって、有機ポリマーと無機ポリマーの中間的特徴を有する材料が提案されている。
【0011】
例えば、特許文献3では、アダマンチル基を有するシリコン化合物を酸性水溶液共存下、ゾル−ゲル法により加水分解重縮合した塗布溶液を用い、多孔質化せずに比誘電率が2.4以下の層間絶縁膜を得る方法を提案している。
【0012】
しかしながら、この材料は、塗布型の材料であり、依然、上述したような塗布型による成膜方法の課題を抱えている。
【0013】
【特許文献1】
特開2002−110670号公報
【特許文献2】
特開平11−288931号公報
【特許文献3】
特開2000−302791号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規な低誘電率材料、殊にPECVD装置に適したアルキルシラン化合物を含んでなる低誘電率絶縁膜用材料を提供すること、およびそれを用いた絶縁膜並びにこれらの絶縁膜を含んでなる半導体デバイスを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、三級炭素基がケイ素原子に直接結合した有機シラン化合物が、絶縁膜、殊に半導体デバイス用の低誘電率層間絶縁膜材料として好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0017】
【化2】
(式中、R1,R2は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R3,R4は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R1どうし、またはR2とR4は、互いに結合し、環状構造を形成してもよい。mとnは、それぞれ0または1を表す。)
で示される有機シラン化合物を含んでなる、化学気相成長法により形成される絶縁膜用材料を提供することにある。
【0018】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0019】
上記一般式(1)において、R1,R2は、炭素数1〜20の飽和または不飽和炭化水素基であり、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれの構造を有してよい。また、それらが互いに結合したものも本発明の範囲に含まれる。炭素数が20を超える場合は、対応する有機ハライド等原料の調達が困難となったり、調達できたとしても純度が低い場合がある。
【0020】
CVD装置での安定的使用を考慮した場合、炭素数1〜10の炭化水素基が特に好ましい。炭素数が10を超えた場合、生成した有機シランの蒸気圧が低くなり、PECVD装置での使用が困難となる場合があり、好ましくない場合がある。
【0021】
R1,R2の炭化水素基の例としては、特に限定されるものではないが、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基を挙げることができる。R1,R2は、同一であっても異なっても良い。
【0022】
R1どうしが結合していない場合の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、tert.−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、トルイル等を挙げることができる。
【0023】
R1どうしが互いに結合した場合の例としては、1−アダマンチルが代表例として挙げられる。
【0024】
R3,R4は、水素原子またはR1,R2と同様の炭化水素基を表す。R2とR4は、互いに結合し、環状構造を形成してもよく、上記のR1どうしが互いに結合した場合と同様の例を挙げることができる。
【0025】
mおよびnは、それぞれ0または1を表す。すなわち、m=1、n=0ならば炭化水素基二置換ジアルコキシシラン、m=0、n=0ならば炭化水素基三置換アルコキシシラン、m=0、n=1ならば炭化水素基六置換ジシロキサンを表す。これらの混合物も本発明の範囲に含まれる。
【0026】
一般式(1)で表される有機シラン化合物の具体例としては、
(A) ターシャリーブチルメチルジエトキシシラン、ターシャリーブチルメチルジメトキシシラン、ターシャリーブチルメチルジヒドロキシシラン、ターシャリーブチルエチルジエトキシシラン、ターシャリーブチルエチルジメトキシシラン、ターシャリーブチルエチルジヒドロキシシラン、ターシャリーブチルフェニルジエトキシシラン、ターシャリーブチルフェニルジメトキシシラン、ターシャリーブチルフェニルジヒドロキシシラン等、
(B) 1−アダマンチルメチルジエトキシシラン、1−アダマンチルメチルジメトキシシラン、1−アダマンチルメチルジヒドロキシシラン、1−アダマンチルエチルジエトキシシラン、1−アダマンチルエチルジメトキシシラン、1−アダマンチルエチルジヒドロキシシラン、1−アダマンチルフェニルジエトキシシラン、1−アダマンチルフェニルジメトキシシラン、1−アダマンチルフェニルジヒドロキシシラン等、
(C) ターシャリーブチルジメチルヒドロキシシラン、ターシャリーブチルジメチルメトキシシラン、ターシャリーブチルジメチルエトキシシラン、ターシャリーブチルジエチルヒドロキシシラン、ターシャリーブチルジエチルメトキシシラン、ターシャリーブチルジエチルエトキシシラン、ターシャリーブチルジファニルヒドロキシシラン、ターシャリーブチルジフェニルメトキシシラン、ターシャリーブチルジフェニルエトキシシラン等、
(D) 1−アダマンチルジメチルヒドロキシシラン、1−アダマンチルジメチルメトキシシラン、1−アダマンチルジメチルエトキシシラン、1−アダマンチルジエチルヒドロキシシラン、1−アダマンチルジエチルメトキシシラン、1−アダマンチルジエチルエトキシシラン、1−アダマンチルジフェニルヒドロキシシラン、1−アダマンチルジフェニルメトキシシラン、1−アダマンチルジフェニルエトキシシラン等、
(E) 1,3−ジターシャリーブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジターシャリーブチル−1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,3−ジターシャリーブチル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン等、
(F) 1,3−ジ(1−アダマンチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジ(1−アダマンチル)−1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,3−ジ(1−アダマンチル)−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(1)の有機シランの製造法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記一般式(1)においてm=1かつn=0である下記一般式(2)の炭化水素基二置換ジアルコキシシラン
【0028】
【化3】
(式中、R1,R3,R4は、上記一般式(1)に同じ。)
またはm=0かつn=0である下記一般式(3)の炭化水素基三置換アルコキシシランは、
【0029】
【化4】
(式中、R1,R3,R4は、上記一般式(1)に同じ。)
下記一般式(4)の有機リチウム化合物または有機マグネシウム化合物と
【0030】
【化5】
(式中、R1は、上記一般式(1)に同じ。Mは、Li、MgCl、MgBr、MgIを表す。)
下記一般式(5)の炭化水素基置換ハロゲン化シランまたは炭化水素基置換アルコキシシランと
【0031】
【化6】
(式中、R1,R3,R4,mは、上記一般式(1)に同じ。Xは、弗素原子、塩素原子、臭素原子または沃素原子を表す。aは、0乃至3の整数、bは0乃至2の整数、cは、m=0の場合、0乃至2の整数、m=1の場合、0乃至4の整数であり、a+b+cは、0乃至4である。)
を反応させ、製造することができる。
【0032】
上記一般式(1)においてm=0かつn=1である下記一般式(6)の炭化水素基六置換ジシロキサンの製造方法については、特に限定されないが、
【0033】
【化7】
(式中、R1,R2,R3,R4は、上記一般式(1)に同じ。)
下記一般式(7)の炭化水素基置換ハロゲン化シランをアミン類、水酸化アルカリ金属等の塩基共存下、水と反応させ、炭化水素置換シラノールとした後、
【0034】
【化8】
(式中、R1,R3は、上記一般式(1)に同じ。Xは、弗素原子、塩素原子、臭素原子又は沃素原子を表す。)
アルカリ金属、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アルコキシド等のアルカリ金属化合物と反応させ、下記一般式(8)の炭化水素置換シラノールのアルカリ金属塩とし、
【0035】
【化9】
(式中、R1,R3は、上記一般式(1)に同じ。M’はアルカリ金属を表す。)
再び、下記一般式(9)の炭化水素基置換ハロゲン化シランと反応させることに
【0036】
【化10】
(式中、R2,R4は、上記一般式(1)に同じ。Xは、弗素原子、塩素原子、臭素原子又は、沃素原子を表す。)
より製造することができる。
【0037】
また、得られた上記一般式(2)の炭化水素基二置換ジアルコキシシランまたは上記一般式(3)の炭化水素基三置換アルコキシシランを、水および酸共存下、二量化することにより、製造する方法を用いることもできる。
【0038】
更に合成反応の後、生成物である炭化水素置換基アルコキシシラン中にケイ素に直結するハロゲン原子が残存する場合、下記一般式(10)
【0039】
【化11】
(式中、M’は、アルカリ金属、R4は、上記一般式(1)に同じ。)で示されるアルカリ金属アルコキシドを反応させ、アルコキシ化することができる。
【0040】
上記一般式(10)で表されるアルカリ金属アルコキシドの例としては、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウム−i−プロポキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−i−プロポキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−i−プロポキシド等を挙げることができる。
【0041】
本製造法を採用することにより、副生成物の生成を抑制し、高収率に高純度の一般式(1)で示される有機シラン化合物が得られる。
【0042】
製造の際に用いる上記一般式(4)の有機リチウム化合物または有機マグネシウム化合物は、有機ハライドと、金属リチウム粒子または金属マグネシウムとを反応させて製造することができる。
【0043】
上記一般式(4)の有機リチウム化合物または有機マグネシウム化合物を合成する際の有機ハライドと、金属リチウム粒子または金属マグネシウムとの反応条件は、特に限定されるものではないが、以下にその一例を示す。
【0044】
使用する金属リチウムとしては、リチウムワイヤー、リチウムリボン、リチウムショット等を用いることができるが、反応の効率面から、500μm以下の粒径を有するリチウム微粒子を用いることが好ましい。
【0045】
使用する金属マグネシウムとしては、マグネシウムリボン、マグネシウム粒子、マグネシウムパウダー等を用いることができる。
【0046】
上記の反応に用いる溶媒としては、当該技術分野で使用されるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン、デセン−1等の不飽和炭化水素類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、tert.−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類を使用することができる。また、これらの混合溶媒も使用することができる。
【0047】
上記の反応における反応温度については、生成する有機リチウムまたは有機マグネシウムが分解しない様な温度範囲で行うことが好ましい。通常、工業的に使用されている温度である−100〜200℃の範囲、好ましくは、−85〜150℃の範囲で行うことが好ましい。反応の圧力条件は、加圧下、常圧下、減圧下いずれであっても可能である。
【0048】
合成した有機リチウムまたは有機マグネシウムは、調製の後、そのまま用いることができ、また、未反応の有機ハライドおよび金属リチウム、金属マグネシウム、反応副生成物であるリチウムハライド、マグネシウムハライドを除去した後、使用することもできる。
【0049】
有機リチウムまたは有機マグネシウムと、上記一般式(5)の炭化水素基置換ハロゲン化シランまたは炭化水素基置換アルコキシシランとの反応条件は、特に限定されるものではないが、以下にその一例を示す。
【0050】
使用できる反応溶媒は、上記の有機ハライドと金属リチウムまたは金属マグネシウムとの反応の際に用いることができる溶媒と同様のものが使用できる。その反応温度については、使用する有機リチウムまたは有機マグネシウムが分解しない様な温度範囲で行うことが好ましい。通常、工業的に使用されている温度である−100〜200℃の範囲、好ましくは−85〜150℃の範囲で行うことが好ましい。反応の圧力条件は、加圧下、常圧下、減圧下いずれであっても可能である。
【0051】
ケイ素に直結するハロゲン原子が残存する場合の上記一般式(10)で示されるアルカリ金属アルコキシドの反応条件は、特に限定されず、上記の有機リチウムまたは有機マグネシウムと、ハロゲン化アルコキシシランまたはテトラアルコキシシランとの反応条件と同様に行うことができる。
【0052】
生成した一般式(1)で示される有機シラン化合物の精製法については、絶縁膜材料として使用するに有用な水分含有量50ppm未満、ケイ素、炭素、酸素、水素以外の元素であって製造原料に由来する不純物量を10ppb未満とする為に、副生するリチウム塩、マグネシウム塩、アルカリ金属塩を、ガラスフィルター、焼結多孔体等を用いた濾過、常圧もしくは減圧蒸留またはシリカ、アルミナ、高分子ゲルを用いたカラム分離精製等の手段により除去すればよい。この際、必要に応じてこれらの手段を組み合せて使用してもよい。一般の有機合成技術で用いられるような、副生するリチウム塩、マグネシウム塩、アルカリ金属塩を水等により抽出する方法では、最終的に得られる一般式(1)で示される有機シラン化合物中の水分やケイ素、炭素、酸素、水素以外の元素不純物、殊に金属不純物残渣が高くなって、絶縁膜材料として不適当なものとなる場合がある。
【0053】
また、シラノール構造を含む副生成物が含まれる場合、シラノールの水酸基を水素化ナトリウムまたは水素化カリウム等で、ナトリウム塩またはカリウム塩として沈殿させた後、主生成物である炭化水素基置換アルコキシシランを蒸留により分離生成することができる。
【0054】
製造に際しては、当該有機金属化合物合成分野での方法に従う。すなわち、脱水および脱酸素された窒素またはアルゴン雰囲気下で行い、使用する溶媒および精製用のカラム充填剤等は、予め脱水操作を施しておくことが好ましい。また、金属残渣およびパーティクル等の不純物も除去しておくことが好ましい。
【0055】
本発明の一般式(1)で示される有機シラン化合物は、PECVD装置により、低誘電率絶縁材料として成膜するに好適な材料である。
【0056】
これらの材料をCVDで成膜後に、炭素原子とケイ素原子が切断される350℃以上の温度で熱処理することで多孔質化した低誘電率絶縁材料を得ることもできる。
【0057】
本発明の低誘電率材料は、多層配線を用いたULSIの製造に好適であり、これを用いた半導体デバイスも本発明の範疇に含有されるものである。
【0058】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0059】
実施例1
[ターシャーリーブチルジメチルクロロシランの合成]
窒素雰囲気下、還流冷却器、滴下濾斗、攪拌装置を備えた3Lの四つ口フラスコ反応器にジメチルジクロロシラン258.2g(2.00mol)とn−ペンタン600mlを仕込み、0℃に冷却した。滴下濾斗より、23.7wt%ターシャリーブチルリチウムのn−ペンタン溶液539.6g(2.00mol)を1時間で滴下し、更に2時間攪拌した。
【0060】
反応後、副生した塩化リチウムを濾別除去し、濾液からn−ペンタンを留去した後、蒸留により、精製物であるターシャリーブチルジメチルクロロシランを単離した。収量は、235.1gであり、単離収率は、78.0%であった。
[ターシャリーブチルジメチルエトキシシランの合成]
窒素気流下、攪拌装置を備えた2Lのセパラブルフラスコ反応器にターシャリーブチルジメチルクロロシラン156.9g(1.04mol)と純度96%のナトリウムエトキシド82.3g(1.16mol)とn−ヘキサン1.6Lとを仕込み、n−ヘキサン還流条件下、22時間反応させた。
【0061】
固体残渣をガラスフィルターにより、濾別し、反応混合物溶液を得た。ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、目的物であるターシャリーブチルジメチルエトキシシランの収率は、66.8%であり、副生成物であるターシャリーブチルジメチルヒドロキシシランの収率は、33.2%であった。
[副生成物の除去およびターシャリーブチルジメチルエトキシシランの精製]
窒素気流下、攪拌装置を備えた2Lのセパラブルフラスコ反応器に上記で得た反応混合物を仕込み、水素化ナトリウム16.6g(0.691mol)を加え、室温で1時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、副生成物であるターシャリーブチルジメチルヒドロキシシランは、検出限界以下であった。
【0062】
反応終了後、固体残渣をガラスフィルターにより、濾別し、反応混合物溶液を得た。反応混合物溶液より、n−ヘキサンを留去し、常圧蒸留により、目的物であるターシャリーブチルジメチルエトキシシランを単離した。
【0063】
収量は、91.5g(0.572mol)であり、収率55.0%に相当した。
【0064】
単離したターシャリーブチルジメチルエトキシシランを1H−NMR、13C−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであった。
【0065】
1H−NMR;0.079ppm(s,6H)、1.01ppm(s,9H)、1.13ppm(t,3H)、3.56ppm(q,2H)
13C−NMR;18.23ppm、18.66ppm、25.92ppm、58.51ppm
GC−MS;Mw=160、C8H20OSi
また、得られたターシャリーブチルジメチルエトキシシラン100g中の水分量並びにナトリウムおよびリチウム含有量を、カールフィッシャー水分計およびICP−MS(高周波プラズマ発光−質量分析器、横河アナリティカルシステムズ社製、商品名「HP4500」)により測定した結果は、H2О=10ppm、Na<10ppb、Li<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0066】
比較例1
実施例1のターシャリーブチルジメチルクロロシランとナトリウムエトキシドとの反応後、ナトリウムクロライドおよび未反応ナトリウムエトキシドを濾別除去せず、水を加えて溶解分液抽出除去し、更に副生成物であるターシャリーブチルジメチルヒドロキシシランを水素化ナトリウムとの反応により除去しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてターシャリーブチルジメチルエトキシシランを調製した。
【0067】
得られたターシャリーブチルジメチルエトキシシラン中の水分およびナトリウム含有量を、カールフィッシャー水分計およびICP−MSにより測定したところ、H2О=210ppm、Na=98ppmであり、絶縁膜材料としては、不適当なものであった。
【0068】
実施例2
[1,3−ジターシャリーブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの合成]
窒素気流下、攪拌装置を備えた2Lのセパラブルフラスコ反応器にターシャリーブチルジメチルクロロシラン301.5g(2.00mol)をn−ヘキサン1.00Lの溶解させ、これに水酸化カリウム56.1g(1.00mol)を純水600mlに溶解させた水溶液を加えて、n−ヘキサン還流下、3時間反応させた。ガスクロマトグラフィーによるターシャリーブチルジメチルシラノールへの転換率は、100%であった。
【0069】
得られたターシャリーブチルジメチルシラノールのn−ヘキサン溶液にターシャーリーブトキシカリウム222.2g(1.98mol)を加え、n−ヘキサン還流下、3時間反応させた後、更にターシャリーブチルジメチルクロロシラン295.4g(1.96mol)を加え、n−ヘキサン還流下、8時間反応させた。
【0070】
反応終了後、固体残渣をガラスフィルターにより、濾別し、反応混合物溶液を得た。ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、目的物である1,3−ジターシャリーブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの収率は、90.0%であった。
【0071】
反応混合物溶液より、n−ヘキサンを留去し、減圧蒸留により、目的物である1,3−ジターシャリーブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを単離した。
【0072】
単離収量は、377.8g(1.53mol)であり、単離収率76.7%に相当した。
【0073】
単離した1,3−ジターシャリーブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを1H−NMR、13C−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであった。
【0074】
1H−NMR;δ0.102ppm(s,12H,4Me)
δ0.952ppm(s,18H,2tBu)
13C−NMR;δ18.2ppm,δ25.8ppm
GC−MS;Mw=246、C12H30OSi2
また、得られた1,3−ジターシャリーブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン100g中の水分量並びにカリウムおよびリチウム含有量を、カールフィッシャー水分計およびICP−MS(高周波プラズマ発光−質量分析器、横河アナリティカルシステムズ社製、商品名「HP4500」)により測定した結果は、H2О=10ppm、K<10ppb、Li<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の顕著な効果が奏される。即ち、本発明の第一の効果としては、本発明の構造を有する有機シラン化合物を用いることで、半導体デバイス層間絶縁膜中の低誘電率材料として、低誘電率且つ高機械的強度の材料を提供できることにあり、第二の効果としては、PECVD法層間絶縁膜材料として有用な三級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物を高純度に効率よく製造できることにある。
Claims (5)
- 下記一般式(1)
で示される有機シラン化合物を含んでなり、上記一般式(1)の有機シラン化合物が、ターシャリーブチルジアルキルアルコキシシランまたは1,3−ジターシャーリーブチル−1,1,3,3−テトラアルキルジシロキサンであり、ケイ素、炭素、酸素、水素以外の元素であって、上記一般式(1)の有機シラン化合物であるターシャリーブチルジアルキルアルコキシシランまたは1,3−ジターシャーリーブチル−1,1,3,3−テトラアルキルジシロキサンの製造原料に由来する不純物量が10ppb未満であり、かつ含水量が50ppm未満であることを特徴とする、化学気相成長法により形成される絶縁膜用材料。 - 化学気相成長法が、プラズマ励起化学気相成長法(PECVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)である請求項1に記載の絶縁膜用材料。
- 請求項1または2に記載の有機シラン化合物を用い、PECVD装置により成膜した絶縁膜。
- 請求項3の絶縁膜を、炭素原子とケイ素原子との結合が切断される以上の温度で熱処理し、多孔質化した絶縁膜。
- 請求項3または4に記載の絶縁膜を用いた半導体デバイス。
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