JP2004004652A - トナー製造装置、製造方法、トナー及びトナーの製造ライン - Google Patents

トナー製造装置、製造方法、トナー及びトナーの製造ライン Download PDF

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Abstract

【課題】遠心沈降装置でトナー粒子分散液を濃縮した時に、トナー粒子の極性基の配向を乱したり機械的な耐久性を低下させず、大量かつ連続にプリントを行った時に帯電性変動や劣化を発生しない安定したトナーを提供する。
【解決手段】水系媒体中で形成されたトナー粒子を含有するトナー粒子分散液に遠心力を付与し、遠心沈降装置の収容部に設けられた沈降板上にトナー粒子を沈降させてトナー粒子分散液の濃縮を行うトナーの製造装置及び製造方法。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に使用されるトナーの製造装置、及び製造方法に関する。詳しくは、トナー粒子表面に付着した不純物を効果的に除去するトナーの洗浄技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
水系媒体中での重合工程を経てトナー粒子を形成する重合トナーは、例えば、特許文献1に記載の様に、製造工程でトナー粒子の粒径や形状を制御できるので、小粒径で粒径分布がシャープであり、しかも、個々の粒子の形状が揃った粒子表面に角がない丸みを帯びたトナーが得られる。
【0003】
この様な大きさと形の揃ったトナーを用いて画像形成を行うと優れた細線再現性や高解像度が発現され、特に1200dpi(1インチあたりのドット数、1インチは2.54cm)という微小なドット画像を形成するデジタル方式の画像形成に最適である。
【0004】
重合トナーは、水系媒体中でトナー粒子を生成後、濾過装置等の固液分離装置に代表される分離手段により水系媒体よりトナー粒子を分離して得られる。トナー粒子を分散させていた水系媒体中には、界面活性剤やトナー粒子表面より脱離した遊離離型剤粒子、その分解物粒子等の不純物を含有されている。そのため、トナー粒子を水系媒体より分離する時は、トナー粒子表面にこれらの不純物が残存しない様によく洗浄することが必要である。
【0005】
トナー粒子表面からの不純物除去を目的として、特許文献2には、遠心分離により固体粒子と水系媒体とを分離しながら、濾液の導電率が特定値以下になるまで洗浄水を供給してトナー粒子を洗浄する技術が開示されている。また、特許文献3には、撹拌翼と濾過材とを備えた容器内で水系媒体を除去したトナー粒子に洗浄液を加えて撹拌した後、加圧下でトナー粒子を濾過して不純物の除去を行う技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2や特許文献3に開示された洗浄方法を経て得られたトナーは、画像形成装置に投入後現像器内で長期間攪拌を継続すると、帯電性が徐々に変動することが確認され、特に、10万枚以上の連続プリントを行う場合や低湿度環境下で連続的に画像形成を行う場合にこの傾向が顕著に表れ、帯電不良や部材へのトナー融着や汚染を発生させ、長期にわたり帯電性が変動しない安定したトナーを提供することが非常に困難なことを改めて認識した。また、最近では、ブック・オン・デマンドと呼ばれる、多頁にわたる文書を大量に出力し、綴じて冊子形態に製本する画像形成装置もあり、数10万枚或いは数100万枚を超える連続プリントはユーザの用途の中で決して珍しいことではなくなってきている。
【0007】
この様に、既存の遠心分離装置によるトナー粒子分散液の濃縮は、トナー粒子に遠心力の影響を与え易い環境で操作が行われるため、濃縮されたトナー粒子は遠心力の影響を強く受ける結果、機械強度が低下して画像形成時に破壊され易くなる等脆弱化したり、トナー粒子表面の極性基の配向性の均一性を崩して帯電性能が変動するといった現象を発生させるものと推測される。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−214629号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−292976号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2001−249940号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上の様な事情を鑑みて、本発明は、トナー粒子分散液を濃縮する際にトナー粒子表面における極性基の配向を乱したり、トナー粒子の機械的強度を劣化させることなく、帯電性変動と機械的強度に優れたトナーを製造することにより、数10万枚以上の連続プリントを行った時でも感光体フィルミングやクリーニング不良を発生させない安定したトナーを製造するトナー製造装置とその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、トナー粒子表面に遊離離型剤等の不純物が残存せず、数10万枚以上の連続プリントを行った時や低湿環境下で画像形成を行っても、カブリやトナー飛散を発生させない高画質画像が得られるとともに、感光体等へのトナー汚染を発生させないトナーを製造するトナー製造装置とその製造方法を提供することを第2の目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
発明者等は検討を重ねた末、トナー粒子に付着する不純物の比重が水の比重にとても近いことに着目した。そして、粒子形成を完了したトナー粒子を分散させた液(以下トナー粒子分散液という)を濃縮する際に使用される遠心分離装置において、トナー粒子の沈降距離を非常に短くしてもトナー粒子表面から不純物を十分に除去できることを見出した。
【0014】
そして、少なくとも1枚以上の沈降板を有しその沈降距離を非常に短くした遠心沈降装置により、トナー粒子分散液の濃縮を瞬時に行い、トナー粒子表面における極性基の安定配向を壊さずにトナー粒子に付着した不純物の除去を確実に行うことの可能なトナー製造装置を見出した。
【0015】
その結果、数10万枚にわたる連続プリントや低湿度環境下での画像形成でも、帯電性変動を発生させずに感光体フィルミングやクリーニング不良、あるいはトナー汚染による画像不良を発生させない安定した画像形成を実施することが可能なトナーを見出した。
【0016】
すなわち、本発明は、以下に記載のいずれか1項の構成により達成される。
〔1〕水系媒体中でトナー粒子を形成し、トナー粒子分散液の状態を経てトナーを製造するトナー製造装置であって、該トナー製造装置は、該トナー粒子分散液に含有されるトナー粒子を遠心沈降させて該トナー粒子分散液の濃縮を行う濃縮手段を有するもので、該濃縮手段は、前記トナー粒子分散液を収容する収容部を有し、該収容部内に少なくとも1枚以上の沈降板を有することを特徴とするトナー製造装置。
【0017】
〔2〕前記収容部は、開閉可能な接合部を有し、該接合部より濃縮されたトナー粒子分散液を排出する排出手段を有することを特徴とする前記〔1〕に記載のトナー製造装置。
【0018】
〔3〕前記沈降板は、前記収容部内で円錐状に配置されることを特徴とする前記〔1〕に記載のトナー製造装置。
【0019】
〔4〕前記沈降板は、前記収容部内で下方を開いた形状で円錐状に配置されることを特徴とする前記〔3〕に記載のトナー製造装置。
【0020】
〔5〕前記沈降板は、複数配置され、その配置間隔が、0.5mm以上1.0mm以下であることを特徴とする前記〔1〕、〔3〕、〔4〕のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
【0021】
〔6〕前記沈降板より形成される分離沈降面積が、前記濃縮手段の設置面積の10倍以上であることを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
【0022】
〔7〕水系媒体中でトナー粒子を形成し、トナー粒子分散液の状態を経てトナーを製造するトナーの製造方法であって、該製造方法は、少なくとも1枚以上の沈降板を有する遠心沈降装置を用いて、トナー粒子分散液に含有されるトナー粒子を遠心沈降させて該トナー粒子分散液を濃縮しながら、濃縮したトナー粒子分散液を該遠心沈降装置外に自動排出することを特徴とするトナーの製造方法。
【0023】
〔8〕前記トナー粒子分散液、または、前記濃縮したトナー粒子分散液のpHが、2〜6.5であることを特徴とする前記〔7〕に記載のトナーの製造方法。
【0024】
〔9〕前記トナー粒子分散液、または、前記濃縮したトナー粒子分散液のpHが、8〜12であることを特徴とする前記〔7〕に記載のトナーの製造方法。
【0025】
〔10〕前記濃縮したトナー粒子分散液を前記遠心沈降装置外に自動排出する時の自動排出時間が、該濃縮したトナー粒子分散液1リットルあたり1秒以下であることを特徴とする前記〔7〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【0026】
〔11〕前記自動排出された濃縮したトナー粒子分散液を水系媒体に希釈し、希釈したトナー粒子分散液を遠心沈降装置により再度濃縮し、濃縮したトナー粒子分散液の自動排出を繰り返すことを特徴とする前記〔7〕〜〔10〕のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【0027】
〔12〕前記遠心沈降装置で濃縮を行うトナー粒子分散液におけるトナー粒子濃度が、8〜40質量%であることを特徴とする前記〔7〕〜〔11〕のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【0028】
〔13〕水系媒体中でトナー粒子を形成して得られるトナーであり、前記〔7〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の製造方法で製造され、該トナー中に含有される遊離離型剤粒子の数がトナー粒子100個あたり3個以下であることを特徴とするトナー。
【0029】
〔14〕前記水系媒体中で形成されたトナー粒子が、海島構造を有することを特徴とする前記〔13〕に記載のトナー。
【0030】
〔15〕前記水系媒体中で形成されたトナー粒子の体積平均粒径の値が、3μm以上9μm以下であることを特徴とする前記〔13〕又は〔14〕に記載のトナー。
【0031】
〔16〕水系媒体中でトナー粒子を形成し、トナー粒子分散液の状態を経てトナーを製造するトナーの製造ラインであって、該製造ラインは、少なくとも1枚以上の沈降板を有する遠心沈降装置を用いて、該トナー粒子分散液に含有されるトナー粒子を遠心沈降させて該トナー粒子分散液を濃縮しながら、濃縮したトナー粒子分散液を該遠心沈降装置外に自動排出する工程を有することを特徴とするトナーの製造ライン。
【0032】
本発明に係るトナーの製造装置は、少なくとも以下の手段を有する。すなわち、水系媒体中で樹脂粒子の凝集を行って粒子形成を行う手段と、形成された粒子を含有してなるトナー粒子分散液を濃縮する濃縮手段と、濃縮したトナー粒子分散液より分離したトナー粒子を乾燥する乾燥手段とを有する。
【0033】
本発明に係る濃縮手段は、後述する様にディスク型遠心沈降装置が代表的であり、これは、2つの部材を重ね合わせて構成されるボウル(鉢)状の形状を有する収容部を有する。本発明では遠心沈降装置における収容部を本体とも呼ぶ。濃縮を行うトナー粒子分散液はこのボウル状の収容部内に収容される。収容部は高速回転可能なロータと直結し、ロータの回転によりトナー粒子分散液を濃縮する。本発明では収容部の内部を濃縮室とも呼び、濃縮室には前述のロータの回転軸の軸心を中心とする沈降板が円錐台状に配置される。また、収容部を構成する2つの部材の重ね合わせ部分は開閉可能な接合部を有する。
【0034】
本発明に係る沈降板は、遠心沈降装置の回転による遠心力の作用でトナー粒子分散液よりトナー粒子を沈降させて分離する板状の部材である。沈降板は、濃縮室内にロータの回転軸の軸芯を中心とする円錐(台)状に下方に開いた形状を有する。
【0035】
本発明に係る全沈降板面積は、上記濃縮室内に配置された全沈降板の面積の総和を示すものである。本発明では、全沈降板面積を分離沈降面積ともいう。
【0036】
本発明に係る遠心沈降装置は、水系媒体中で粒子形成を行って得られたトナー粒子濃度が8〜40質量%のトナー粒子分散液を遠心力の作用により、トナー粒子の分離沈降させてトナー粒子分散液の濃縮を行い、同時にトナー粒子表面に付着している不純物も除去するともに、濃縮したトナー粒子分散液をすぐに装置の外に排出することが可能である。
【0037】
本発明に係るトナー粒子分散液の濃縮とは、水系媒体中で形成されたトナー粒子を含有する分散液(通常、樹脂粒子を分散してなり粘度の低い液状を呈している。スラリーとも呼ばれるトナー粒子分散液のこと)より分散媒である水分を除去し、トナー粒子分散液中のトナー粒子濃度を増加させる操作をいい、本発明では、同時にトナー粒子表面に付着している不純物の除去も行っている。なお、本発明でいう濃縮したトナー粒子分散液とは、トナー粒子分散液より水分除去したトナー粒子濃度が増加した状態にあるトナー粒子分散液をいい、ウェットケーキと呼ばれる含水状態のトナー粒子集合物も含むものとする。
【0038】
本発明におけるトナー粒子分散液の濃縮方法は、例えばディスク型遠心沈降装置と呼ばれる装置を用いトナー粒子分散液中のトナー粒子を遠心沈降させてトナー粒子と水系媒体とを分離するとともに、濃縮したトナー粒子分散液をすぐに装置外に排出するものである。トナー粒子分散液を濃縮する遠心沈降装置としては、ディスク型遠心沈降装置が代表的である。ディスク型遠心沈降装置とは、図1に示す様にトナー粒子分散液を収容しトナー粒子分散液の濃縮を行う。収容部内には、濃縮時にトナー粒子分散液に遠心力を付与するロータの回転軸上にディスク状の複数の沈降板を短い間隔で配置してなり、この装置でトナー粒子分散液の濃縮を行うと本発明の課題を達成することを見出した。
【0039】
本発明では、トナー粒子分散液の濃縮に使用するディスク型遠心沈降装置が、従来技術ではバッチ処理でしか対応できなかった大量のトナー粒子分散液を連続で濃縮し、濃縮したトナー粒子分散液をすぐに装置外に排出することが可能である。すなわち、装置内に投入したトナー粒子分散液に5000〜15000Gの遠心力を付与して瞬時に濃縮を完了し、濃縮したトナー粒子分散液を装置外に連続的に自動排出する。
【0040】
この様に、本発明で使用されるディスク型遠心沈降装置は従来の遠心沈降装置と異なり、濃縮したトナー粒子分散液を長時間遠心力が作用する状態に置くことなく、すぐに装置外に排出するので、トナー粒子表面における帯電性の均一性をが乱されたり、トナー粒子の機械強度が低下する問題を解消している。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明に係る濃縮手段として、好ましく使用されるディスク型遠心沈降装置は、遠心力の作用でトナー粒子分散液中のトナー粒子を瞬時に沈降させてトナー粒子分散液の濃縮を行い、同時に濃縮したトナー粒子分散液を装置の外に速やかに自動排出する。
【0042】
本発明は、トナー粒子分散液中のトナー粒子と不純物との比重差に着目して見出したものであることは前述したとおりである。すなわち、本発明者は、粒子表面に残存する遊離離型剤等の不純物の比重が、水の比重とそれ程変わらないものであることに着目し、両者の比重差がないことからトナー粒子の沈降距離を大幅に短くしてもトナー粒子表面から不純物を確実に除去できると推測し、本発明に到った。
【0043】
図1は、本発明に係るトナーの製造工程の流れ(製造ライン)を示す模式図である。本発明では、トナー粒子分散液の濃縮を図1に示すディスク型遠心沈降装置を用いて行うもので、図1には該装置本体を軸方向より見た断面図を示す。本発明は、図1に示す様な工程、すなわち、水系媒体中での粒子形成工程、ディスク型遠心沈降装置による濃縮工程、酸またはアルカリによる処理工程、遠心分離装置による脱水工程、及び乾燥工程を有する。
【0044】
また、本発明では、これら各工程を実施する装置を順次配置してなる製造装置より構成される。本発明では、これらの各工程を実施する装置を順次配置してなる製造装置のことを製造ラインという。
【0045】
本発明に係るトナーは、先ず、水系媒体中での粒子形成工程でトナー粒子が形成される。形成されたトナー粒子は水系媒体中に分散してなりトナー粒子分散液の状態を呈している。続いて、ディスク型遠心沈降装置1を用いてトナー粒子分散液の濃縮を行う。
【0046】
ディスク型遠心沈降装置1で濃縮されたトナー粒子分散液は装置1外に排出され、収集部30で集められる。本発明では、収集部30に収集された濃縮したトナー粒子分散液を酸処理あるいはアルカリ処理することにより、得られたトナーがその帯電性を変動させにくくする傾向を有することが確認されている。具体的には、塩酸等の酸を用いて濃縮したトナー粒子分散液をpH2〜6.5の範囲にして酸処理を行う。あるいは、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリで濃縮したトナー粒子分散液をpH8〜12の範囲にアルカリ処理する方法が挙げられる。
【0047】
本発明では、濃縮したトナー粒子分散液に対しては酸処理を行うことでより帯電性変動のしにくいトナーが得られることが確認されている。
【0048】
酸またはアルカリ処理を行った濃縮したトナー粒子分散液は、最終的に脱水処理を行ってウェットケーキと呼ばれるより濃縮した状態にあるトナー粒子集合物(本発明ではウェットケーキとしたトナー粒子集合物も濃縮したトナー粒子分散液の範疇に入れる。)を生成する。ウェットケーキを生成するための脱水工程に用いる遠心分離装置としては、前述の濃縮に用いた遠心沈降装置を使用する他に、例えば特許文献2や特許文献3に開示される遠心分離装置を使用して脱水を行うものでもよい。
【0049】
ウェットケーキ状態のトナーは、乾燥工程を経て完成する。
次に、本発明に係るトナーの製造方法における濃縮工程で使用される遠心沈降装置について説明する。遠心沈降装置本体1は、その中央にロータ3を有し、このロータと締め付けリングにより軸方向に結合されて一体になっている。本体1は、2つのどんぶりを重ね合わせた様な上部部材2と下部部材4から構成され、その内部は後述する沈降板10を配置した濃縮室5を有している。また、上部部材2と下部部材4の接合部6より濃縮室5で濃縮されたトナー粒子分散液を装置外に自動排出する。
【0050】
本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置は、粒子の比重差が2%以上あれば固体粒子の分離が可能で、本発明に係るトナー粒子と不純物との比重差では、極めて短い沈降距離で粒子と不純物の除去が可能である。
【0051】
本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置は、図1に示す様に、装置中央のロータの周囲に円錐状の沈降板10を0.5〜1mm間隔で番傘を重ね合わせた様な形状で配置している。すなわち、本発明では、トナー粒子表面に付着している不純物の比重が水の比重とほぼ同等の値を有するので、沈降距離の極めて短くして沈降板を配置しても、トナー粒子表面から不純物を確実に除去して濃縮したトナー粒子分散液を得ることが可能である。なお、本発明に使用される遠心沈降装置は、トナー粒子と不純物との比重差が2%以上あれば不純物を確実に除去できる。また、濃縮を行うトナー粒子分散液の量等に応じて、沈降距離を変更することも可能である。
【0052】
本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置は、重力による自然沈降を遠心力により5000〜15000倍を超える力に変換、すなわち、5000〜15000Gの大きさを有する遠心力の作用により、トナー粒子表面から不純物を除去し、瞬時に濃縮したトナー粒子分散液が得られる。
【0053】
本発明で使用されるディスク型遠心沈降装置の処理性能は、1リットルのトナー粒子分散液の濃縮を1秒以下で完了させる性能を有する。また、本発明で使用されるディスク型遠心沈降装置では、不純物を除去した濃縮したトナー粒子分散液を接合部6より自動的に排出するので、トナー粒子分散液の濃縮を行いつつ、同時に濃縮したトナー粒子分散液を濃縮室5外に自動排出することが可能である。したがって、トナー粒子分散液の濃縮工程における生産性や作業効率を大幅に向上させている。
【0054】
さらに、本発明で用いられるディスク型遠心沈降装置では濃縮したトナー粒子分散液を直ぐに装置外に排出するので、濃縮したトナー粒子分散液を5000〜15000Gという大きな遠心力が作用する環境下に長時間置くことがなく、遠心力の影響による負荷をトナー粒子に与えない。その結果、トナー粒子表面における極性基の配向乱れの発生やトナー粒子の強度低下の問題がないので、帯電性能と機械的強度が優れたトナーを得ることが可能である。
【0055】
また、本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置の沈降板の間隔は0.5mm以上であるが、この様な短い間隔でもトナー粒子と水との比重差が約0.1程度でありながら、トナー粒子分散液の濃縮と不純物の除去が可能である。粒子の沈降距離となる沈降板の間隔は、好ましくは0.5mm〜10mmであり、より好ましくは0.75mm〜1mmであることが確認されている。
【0056】
本発明では、上記の様に短い距離でトナー粒子を沈降させることでトナー粒子分散液の濃縮と不純物除去が可能なので、濃縮時における濾過材の使用を不要にした。
【0057】
本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置は、前述の様に回転軸の周りに沈降板を円錐状に配置しているが、図1に示す様に薄い板状の沈降板10を円錐状に何枚も傾斜させた状態で重ねる様に下方に開いた形態で配置し、あたかも番傘を開いて積み重ねた様な形態とすることで、遠心沈降装置の設置面積に対して10倍以上の分離沈降面積を得ることが可能で、作業スペースの効率化と同時に大量、高速の分離を可能にする。なお、本発明では濃縮手段の設置面積に対して10倍以上の分離沈降面積が得られることを確認している。
【0058】
本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置によるトナー粒子分散液の濃縮では、濃縮を行うトナー粒子分散液中の固形分体積比率(以下トナー粒子濃度ともいう)が、2〜85%、好ましくは5〜60%、より好ましくは8〜40%である。また、粒子サイズは0.1μm以上あればよい。濃縮を行うトナー粒子分散液のトナー粒子濃度は、例えば、水系媒体中でのトナー粒子の形成を完了させた直後のトナー粒子分散液の濃度の他に、濃縮を行い遠心沈降装置の外に自動排出された濃縮したトナー粒子分散液を回収し、洗浄水に投入して得られるトナー粒子分散液の濃度も含まれる。
【0059】
なお、比較までに従来の遠心沈降装置やデカンタ方式では、粒子の固形分体積比率が5〜60%、粒子サイズは10μm以上が好ましかったので、重合法により得られるトナー粒子の様に10μm未満という小粒径のトナー粒子表面より不純物を除去することは非常に困難を伴うものであった。
【0060】
この様に、本発明では、上記性能を有するディスク型遠心沈降装置を使用して、従来困難だった水系媒体中で粒子形成して得られる体積平均粒径が3〜9μmのトナー粒子表面からの不純物除去を飛躍的に向上させた。
【0061】
本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置1では、トナー粒子分散液の濃縮を行う薄板よりなる沈降板を、0.5〜1mmの短い間隔で何枚も重ねて傾斜状態で配置し、水系媒体中で粒子形成を完了させたトナー粒子を含有する大量のトナー粒子分散液の濃縮と、トナー粒子表面から不純物を除去する操作を連続かつ迅速に行う。
【0062】
次に、本発明に好ましく使用されるディスク型遠心沈降装置によるトナー粒子分散液の濃縮について説明する。図2は、図1に示す装置本体中でのトナー粒子分散液中のトナー粒子と不純物を含有する分散媒(水系媒体)の移動を示す図である。図中の黒丸はトナー粒子Rを示し、図中の実線の矢印は濃縮前のトナー粒子分散液の流れを、白い矢印はトナー粒子の動きを、破線の矢印は濃縮した後のトナー粒子が除去された液の流れを示す。なお、図2では不純物粒子の図示は省略してある。
【0063】
本発明で好ましく使用されるディスク型遠心沈降装置内で5000〜15000Gの遠心力が作用すると、トナー粒子Rは沈降板10間の上部を遠心力方向に移動して濃縮室5の周縁に蓄積される。この時、トナー粒子表面に付着していた遊離離型剤をはじめとする不純物は、まるで炊飯時に米をといだ時に米の表面に付いていた糠や米粉が研ぎ落とされる様にトナー粒子表面から除去される。
【0064】
そしてトナー粒子Rが除去され不純物を含有する液は、沈降板10間の下部を通り装置中央に移動する。遊離離型剤等から構成される不純物は、その比重が分散液の比重と殆ど同じなので、分散液とともに装置中央に移動する。この様にして、トナー粒子分散液の濃縮とトナー粒子表面からの不純物の脱離が行われる。
【0065】
また、濃縮室5周縁に蓄積した濃縮したトナー粒子分散液は、図3(B)に示す様に装置本体1を構成する上部部材2と下部部材4の境界にある接合部6を数ミリ程度開口すると、瞬時に濃縮室5外に自動排出される。この様に、濃縮したトナー粒子分散液は装置本体の外部に自動的に排出されるので、濃縮したトナー粒子分散液を遠心沈降装置の外に排出するために従来技術の様に濾過材を使用する必要がない。
【0066】
本発明で好ましく使用されるディスク型遠心沈降装置では、水系媒体中で粒子形成したトナー粒子分散液を該装置で連続的に通液させながら、濃縮とトナー粒子表面からの不純物除去を同時に行い、更には、遠心力の作用で濃縮したトナー粒子分散液を濃縮室5の外に自動的に排出する操作を連続で行うことが可能である。なお、本発明で好ましく使用されるディスク型遠心沈降装置では、濃縮室5より自動排出された濃縮スラリーを装置本体1の外周部に図示していない貯留スペースに溜め、濾過材等を用いて回収することが生産効率上好ましい。
【0067】
本発明に好ましく使用されるディスク型遠心沈降装置本体1の接合部6の開閉は、装置本体1を構成する下部部材4の上下動により達成される。図3は装置本体1の接合部6の開閉を示す模式図であり、図3(A)は接合部6が閉じている無排出時を示し、(B)は接合部6が開放している自動排出時を示す。なお、図中の実線の矢印は濃縮前のトナー粒子分散液の流れを、白抜きの矢印はトナー粒子の動きを、破線の矢印は濃縮後のトナー粒子を含有していない液の流れを、更にハッチングの入った矢印は下部部材4の移動方向を示す。
【0068】
下部部材4の上下動は、図1の7に示す下部部材操作室(封鎖室ともいう)内に高圧水を充填し、図3(A)に示す様に下部部材4を上部部材2に強く押しつけた状態を形成して両者間に密着状態を形成することにより接合部6の閉鎖状態が形成される。また、下部部材操作室に充填した高圧水を排除すると、下部部材4を下方に下がり接合部6が開放する。開放時に下部部材4と上部部材2との間に数ミリ程度の隙間が形成され、ロータ3の回転による遠心力で濃縮室5の周面に蓄積している濃縮したトナー粒子分散液は瞬時に濃縮室5外に排出される。この様に、接合部6の開放している時にロータ3の回転による遠心力を利用することにより開放時間を非常に短くできる。
【0069】
接合部6の開閉の制御は、図示していないタイマートリガーやセルフトリガー等の感知装置からの信号を受けて、下部部材操作室7への高圧水供給と排出を制御することで達成される。接合部6の開閉制御を行う感知装置は、濃縮したトナー粒子分散液がコンスタントに生成する場合は、濃縮室5内における濃縮したトナー粒子分散液の蓄積速度がほぼ一定レベルなので、予め設定したタイム間隔で自動排出を行うタイマートリガーにより開閉制御することが好ましい。
【0070】
また、単位時間当たりに蓄積される濃縮したトナー粒子分散液の量にばらつきがある場合は、濃縮室5内の濃縮したトナー粒子分散液の蓄積速度が一定でないので、濃縮室5内における濃縮したトナー粒子分散液の蓄積量が所定の量に到達した時に接合部6を開放する様に制御するセルフトリガーによる開閉制御が好ましい。なお、本発明に使用される遠心沈降装置の自動排出制御手段は、上記以外の制御方法であってもよい。
【0071】
この様に本発明に好ましく使用されるディスク型遠心沈降装置の濃縮したトナー粒子分散液の自動排出手段である上部部材2と下部部材4の境界にある接合部6の開放により、不純物を除去してなる濃縮したトナー粒子分散液を高速に濃縮室5外に排出する。また、接合部6の開放間隙を数ミリとし、かつ短時間で閉鎖するので開閉に伴う衝撃を極力発生させない。また、開閉に使用する高圧水の量も極力抑えられているので、省エネ、省資源対策も考慮している。
【0072】
本発明に好ましく使用されるディスク型遠心沈降装置の接合部6の開閉頻度は、前述の様に排出時の衝撃が装置に負担を与えない程度のものであるので、特に限定されるものではないが、作業効率や生産効率の視点から1時間当たり60回程度までの自動排出を行うことは全く問題ない。
【0073】
本発明に好ましく使用される遠心沈降装置の1時間当たりの濃縮したトナー粒子分散液を回収性能は、例えば、排出されたトナー粒子分散液を貯留する固形分貯留スペースに設定容量の70%のトナー粒子分散液が貯留した時に回収を行う場合は、以下の式で示される。
【0074】
1時間当たりの濃縮したトナー粒子分散液の回収性能
=貯留スペース×0.7×60
また、本発明に好ましく使用されるディスク型遠心沈降装置では、トナー粒子分散液の濃縮を連続で行うことが可能なので、毎回接合部6より自動排出される濃縮したトナー粒子分散液の量が一定で、濃縮したトナー粒子分散液中のトナー粒子が一定品質であるトナー粒子分散液が得られる。
【0075】
また、本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置は5000〜15000Gの遠心力によりトナー粒子分散液の濃縮を瞬時に行い、濃縮したトナー粒子分散液を自動的に排出するが、接合部6の開放を頻繁に行うので濃縮室5内に濃縮したトナー粒子分散液を長時間滞留させない。従って、濃縮したトナー粒子分散液中のトナー粒子は遠心力の影響をあまり受けないので、トナー粒子表面では極性基の配向に乱れが生じないので、得られたトナーは帯電性分布が均一である。また遠心力による機械的な作用により劣化する可能性も低いので、機械的に安定した頑丈なトナー粒子が得られる。
【0076】
更に、濃縮したトナー粒子分散液は、濃縮室5内から装置外に確実に排出されるので、濃縮したトナー粒子分散液が濃縮室5内に残存しない。したがって、濃縮室5の内部を清掃したり、装置の定期点検時に濃縮室を分解作業することが簡単に行えるので、装置のメンテナンス性能を飛躍的に向上させている。
【0077】
次に、本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置の沈降手段である沈降板の分離沈降面積について説明する。
【0078】
本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置の性能は、以下の式で示す分離沈降面積Σにより示されるものであることが遠心沈降装置の専門家の間では知られている。ここで分離と記されているが、これは、トナー粒子分散液の濃縮時に形成されたトナー粒子が分散媒より遠心力で固液分離するので分離という用語を使用している。
【0079】
分離沈降面積Σ=2.34×10−3×n×N×cotα×(r −r
上記式中、
N:沈降板の数、n:回転数(rpm)、r:沈降板の外径
:沈降板の内径、α:沈降板の半頂角
を表す。
【0080】
図4は、分離沈降面積式における各構成の所在を示す模式図である。沈降板の半頂角とは沈降板の傾斜度合いを示すもので、図4から明らかな様に鉛直方向にたいする沈降板の傾斜角を表す。
【0081】
上式から明らかな様に、本発明に使用される遠心沈降装置は、形成粒子表面からの効果的な不純物除去を達成する上で遠心力だけではなく、沈降板の性能が重要な因子となっている。
【0082】
また、昨今の遠心沈降技術の進展は驚くべきものがあり、上式分離沈降面積Σの値が実際の遠心沈降性能よりずれのあることが判明し、以下式で表される遠心沈降能力指標KQの値が、実際の遠心沈降装置の性能を最もよく反映しているものであると遠心沈降装置関係の専門家の間では言われている。
【0083】
遠心分離機能力指標KQ
=280×(n/1000)1.5×N×cotα×(r 2.75−r 2.75
本発明で使用されるディスク型遠心沈降装置の回転数nは、回転数が100〜10,000rpm、より好ましくは500〜5000rpm、特に好ましくは2000〜4500rpmである。また、装置内に配置される沈降板の数N、沈降板の外径r、沈降板の内径rは装置の設置環境に応じて最大限の分離沈降面積を得る様に設定されるもので、これらの値を適宜設定することにより、前述の様に濃縮手段の設置面積に対して10倍以上の分離沈降面積を得ることも可能であるので、設置面積の小さな小型の濃縮手段でも、大量のトナー粒子分散液の濃縮を短時間で行うことが可能である。
【0084】
この様に、本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置は、円錐状の薄い板を前述の様な極めて短い沈降距離となるように重ね合わせて配置することにより、従来の遠心沈降装置では到底なし得なかった非常に大きな分離沈降面積を得ることを可能にした。その結果、極めて短時間に大量のトナー粒子分散液中のトナー粒子表面からの不純物除去を可能にし、同時にトナー粒子分散液の濃縮を可能にしている。
【0085】
また、トナー粒子分散液の濃縮を行う際に、濾過材を使用せずに濃縮したトナー粒子分散液を遠心沈降装置外に排出したり、洗浄水の使用量の軽減化や、装置をコンパクト化する等が可能なので、消費電力量の低減化や作業に伴う廃棄物の発生防止等の省エネや省資源対応したトナー製造が可能である。
【0086】
次に、図1を使用して本発明に好ましく使用されるディスク型遠心沈降装置について前述記載の説明を補足する。
【0087】
本発明に好ましく使用される遠心沈降装置の本体1を構成するロータ3は締付けリング30により、上部部材2と結合して一体構造を形成する。また、下部部材4はロータ3と一体形成していることが確認される。
【0088】
本体1を構成する上部部材2と下部部材4は、どんぶりを重ね合わせた様な形状を有し、開閉可能な接合部6を形成しているが、接合部における下部部材4の外径は接合部における上部部材2の外径よりも若干大きい方が、収容部である濃縮室5内の密閉性を確実に確保する上で好ましい。
【0089】
前述の様に、7は下部部材操作室で、接合部6の開閉を行うべく下部部材4の上下動を行うために高圧水が充填、排出される。下部部材操作室7は高圧水の送入口8と送出口9を備えている。
【0090】
濃縮室5内には、複数の円錐形状の分離ディスクからなる沈降板(ディスクスタックとも言う)ロータ3の回転軸を中心として配置されている。11はディストリビュータである。図1に示すように上部部材の上端には液体集積室12が配置され、トナー粒子を分離した不純物を含有する分散液を濃縮室5から通路13を経由してこの液体集積室12に向けて送液することが可能である。
【0091】
ロータ3の運転中、液体集積室12内に集められた液は半径方向内側の自由液面14を有する回転液体を形成する。
【0092】
液体集積室12を貫通して中央に延びて固定されている管は送入管15で、トナー粒子分散液を濃縮室5内に導入する管である。送入管15はディストリビュータ11の内部にある送入室16に開口している。送入管15の上方にある固定の送出管17は液体集積室12に集められた分散液中の比重の軽い液を分離するために配置されているものである。また、送出装置18が送入管15の周囲に液体集積室12内に配置され、そして送出管17に連結されている。送出装置18は固定されているが、また熱の送出構造では同様な送出装置をロータの回転速度よりも低い速度で回転するように配置することも可能である。
【0093】
送出装置18は液体集積室12内で半径方向外側に延びており、そして自由液面14の半径方向レベルの外側に位置する部分を有している。送出装置18には、少なくとも1つの送出路20が送入口とともに配置されており、この送入口はこの部分に位置していて、かつ液体集積室12からの出口を構成する。送出路20は送出管17の内側に連結されている。
【0094】
図2に示す様に、通路13は濃縮室5内の中央に配置されている。液体集積室12内には、回転軸の周囲にいくつかの壁要素が配置され、ロータ3の回転に至る運転中に液体集積室12内にある分離された液を連行し、半径方向外側に向かって出口の方にこれを導くために、これらの要素間に流路を形成する。この場合、壁要素の少なくとも一部は、自由液面が位置する半径方向のレベルと出口の半径方向外側のレベルとの間に半径方向に延びている。
【0095】
引き続き、図1を用いて本発明に使用される遠心沈降装置における濃縮工程を説明する。
【0096】
遠心沈降装置の始動時にロータ3は回転し、入口8より高圧水を下部部材操作室7に供給することによって、上部部材2と下部部材4との接合部は強く密着して濃縮室5は封鎖される。濃縮室5が封鎖されると、トナー粒子分散液が送入管15より送入室16を経由して濃縮室5内に供給される。濃縮室5内がトナー粒子分散液で満たされるまでに、ロータ3は運転回転数を得て、濃縮室5内の条件を安定化させる。供給されたトナー粒子分散液に遠心力を作用させて、トナー粒子分散液の濃縮とトナー粒子表面から不純物を除去する。
【0097】
トナー粒子分散液の濃縮とトナー粒子表面からの不純物除去は、主に円錐形の沈降板10間に構成される空間で行われる。トナー粒子分散液中で比重の大きいトナー粒子は半径方向外側に遠心力の作用で移動し、濃縮室5の半径方向の最外側の領域に集積する。
【0098】
また、トナー粒子分散液中で比重の軽い不純物と分散液は、濃縮室5の半径方向の最内側領域に流れる。
【0099】
一定時間経過後、下部部材4を下降させて周縁の接合部6を数ミリ開放すると、濃縮したトナー粒子分散液は遠心力の作用で濃縮室5の外に勢いよく放出される。また、トナー粒子がなくなり不純物を含有する液成分は、濃縮室5より通路13を通過して液体集積室12に集約し、ここで半径方向内側に向かう自由液面を有する回転液体を形成する。液体集積室12内の液は出口を通って、固定されている送出装置18内の送出路20を通過装置外に放出される。
【0100】
液体集積室12内にある液成分の連行は、ロータ3とともに回転している壁要素と液体集積室12の画定面によってなされる。
【0101】
送出装置18に最も近いところにある液は、送出装置18の出口面と接触することにより速度を低下させられる。液体集積室12内の液体の様々な部分はこの様にして、様々な回転速度を得ることになる。液と送出装置18の外側面との接触によって循環する液流が液体集積室12内に生じ、上述の様に液は送出装置18の外側面に沿って半径方向内側に流れ、回転方向から見て流路を形成する2つの壁要素のうちの後部の壁要素に沿って半径方向外側に流れる。
【0102】
この様にして、本発明に好ましく使用されるディスク型遠心沈降装置により、水系媒体中で形成されたトナー粒子を含有するトナー粒子分散液の濃縮を行い、同時にトナー粒子表面から不純物を除去する。さらに、濃縮したトナー粒子分散液を濾過材を使用せずに遠心沈降装置の外に排出することを可能にする。
【0103】
また、本発明は、濃縮したトナー粒子分散液を洗浄液に再度分散させてトナー粒子を良く洗浄した後、トナー粒子分散液の濃縮を繰り返して行うものでもよい。なお、本発明では濃縮したトナー粒子分散液中のトナー粒子を再分散させる洗浄水の総量が、最初に濃縮を行う際に投入したトナー粒子分散液の5〜10倍の範囲内で、良好な帯電性を有するトナーが得られることを確認した。上記範囲内の水量で洗浄して得たトナーが、300万枚を超える連続プリントを行っても、帯電性が変動しないことを確認した。
【0104】
次に、本発明に係る製造方法によって得られるトナー粒子について説明する。本発明の製造方法によれば、例えば図5に示す様に、粒子を構成する樹脂と、離型剤成分である結晶性物質及び着色剤の各成分が、お互いに混和せずに、それぞれが独立して相を形成する海島構造を有するトナー粒子を得ることも可能である。図5に示されるトナー粒子は、離型剤を構成する結晶性物質の島Aと着色剤成分の島Bが樹脂の連続相(海)に存在する構造のものである。なお、本発明で得られるトナー粒子の構造の確認手段としては、透過型電子顕微鏡で撮影された断面写真により、トナー粒子中に海の領域と島の領域とが輝度の異なる領域をもって示されることで確認される。
【0105】
次に本発明のトナーの粒径について説明する。本発明に係るトナーの粒径は、体積平均粒径で3〜9μmで、3.5〜8μmであることが好ましく、更に好ましくは3.5〜7.5μmである。この粒径は、トナー粒子の製造方法において、凝集剤(塩析剤)の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
【0106】
体積平均粒径が3〜9μmであることにより、転写効率を高めハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。トナーの粒度分布の算出、体積平均粒径の測定は、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー(いずれもコールター社製)、SLAD1100(島津製作所社製レーザ回折式粒径測定装置)等を用いて測定することができる。本発明においては、コールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機社製)、パーソナルコンピュータを接続し測定、算出したものである。
【0107】
次に本発明に係るトナーの製造方法について説明する。
本発明に係るトナーは、水系媒体中で樹脂粒子を凝集させてトナー粒子を形成する工程を経て得られる。すなわち、水系媒体中で重合性単量体を重合して、得られた重合物を凝集させてトナー粒子を得るものである。
【0108】
本発明に係るトナーの代表的な製造方法として、樹脂粒子を水系媒体中で塩析/融着させて調製する方法が挙げられる。ここで「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものを示す。この方法は、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号公報や特開平6−329947号公報、特開平9−15904号公報に示す方法を挙げられる。
【0109】
すなわち、樹脂粒子と着色剤などの構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および着色剤等より構成される微粒子を複数以上塩析、凝集、融着させる方法、特に水中にてこれらを乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明で私用されるトナー粒子を形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時にアルコールなど水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
【0110】
本発明に係るトナーの製造方法では、少なくとも重合性単量体に離型剤等の機能性物質を溶かした後、重合性単量体を重合せしめる工程を経て形成した複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させてトナー粒子を得る。本発明に係るトナーは、重合性単量体に離型剤等の機能性物質を溶かすものであるが、これは溶解させて溶かすものでも、溶融して溶かすものであってもよい。
【0111】
また、本発明に係るトナーの製造方法は、多段重合法によって得られる複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させるものが好ましい。以下、多段重合法について説明する。
【0112】
多段重合法とは、1つの樹脂粒子において異なる分子量分布を有する相を形成するために重合反応を多段階に分けて行うものであって、得られた樹脂粒子がその粒子の中心より表層に向かって分子量勾配を形成させる様に意図して行うものである。例えば、はじめに高分子量の樹脂粒子分散液を得た後、新たに重合性単量体と連鎖移動剤を加えることによって低分子量の表層を形成する方法が採られている。
【0113】
〈二段重合法〉
二段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)と低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0114】
この方法を具体的に説明すると、先ず、単量体溶液を水系媒体(例えば、界面活性剤水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第一段重合)することにより、高分子量の樹脂粒子の分散液を調製するものである。
【0115】
次いで、この樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第二段重合)を行うことにより、樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する方法である。ここで、中心部の核となる高分子量成分中に離型剤等の機能性物質を添加してもよい。
【0116】
〈三段重合法〉
三段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)、中間層及び低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0117】
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第一段重合)により得られた樹脂粒子の分散液を、水系媒体(例えば、界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、上記水系媒体中に単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)することにより、樹脂粒子(核粒子)の表面に樹脂からなる被覆層(中間層)を形成して、複合樹脂粒子(高分子量樹脂−中間分子量樹脂)の分散液を調製する。
【0118】
次いで、得られた複合樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、複合樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第三段重合)することにより、複合樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する。上記方法において、中間層中に離型剤等の機能性物質を含有させることで離型剤等の分散を微細かつ均一にすることが可能になり好ましい。
【0119】
本発明でいう水系媒体とは、水50〜100質量%と水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等を例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0120】
なお、離型剤等の機能性物質を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するために好適な重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、離型剤を単量体に溶解した単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、油滴内でラジカル重合させる方法(以下、本発明では「ミニエマルジョン法」という。)を挙げることができ、本発明の効果をより発揮することができ好ましい。なお、上記方法において、水溶性重合開始剤に代えて、あるいは水溶性重合開始剤と共に、油溶性重合開始剤を用いても良い。
【0121】
機械的に油滴を形成するミニエマルジョン法によれば、通常の乳化重合法とは異なり、油相に溶解させた離型剤等の機能性物質が脱離しにくく、樹脂粒子または被覆層内に十分な量の離型剤等の機能性物質を導入することが可能である。
【0122】
ここで、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、例えば、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10〜1000nmとされ、好ましくは50〜1000nm、更に好ましくは30〜300nmである。
【0123】
この重合工程で得られる複合樹脂粒子の粒子径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される質量平均粒径で10〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
【0124】
また、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は48〜74℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは52〜64℃である。
【0125】
また、樹脂粒子の軟化点は95〜140℃の範囲にあることが好ましい。
本発明に係るトナーは、樹脂および着色粒子の表面に、塩析/融着法によって樹脂粒子を融着させてなる樹脂層を形成させて得られるものであるが、このことについて以下に説明する。
【0126】
〔着色剤微粒子〕
本発明に係るトナーを得るために使用する着色剤微粒子は、界面活性剤を含有する水系媒体中で着色剤微粒子を微分散させるための分散装置を用いて形成されるものである。
【0127】
ここで着色剤微粒子を分散させる水系媒体中に含有される界面活性剤は臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度で溶解しているものであり、使用される界面活性剤は、前記重合工程で使用するものと同一のものを使用することができる。
【0128】
着色剤粒子の分散処理に使用する分散機は、特に限定されないが、好ましくは、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、ゲッツマンミル、ダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0129】
〔塩析/融着工程〕
この塩析/融着工程は、樹脂粒子と前記の様に分散して得られた着色剤粒子とを塩析/融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、不定形(非球形)のトナー粒子を得る工程である。
【0130】
本発明でいう塩析/融着とは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。塩析と融着とを同時に行わせるためには、樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において粒子(樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させる必要がある。
【0131】
この塩析/融着工程では、樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10〜1000nm程度の微粒子)を塩析/融着させてもよい。また、着色剤粒子は、表面改質されていてもよく、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができる。
【0132】
樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させるためには、樹脂粒子および着色剤粒子が分散している分散液中に、臨界凝集濃度以上の塩析剤(凝集剤)を添加するとともに、この分散液を樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上に加熱することが必要である。
【0133】
塩析/融着させるために好適な温度範囲としては、(Tg+10)〜(Tg+50℃)とされ、特に好ましくは(Tg+15)〜(Tg+40℃)とされる。また、融着を効果的に行なわせるために、水に無限溶解する有機溶媒を添加してもよい。
【0134】
また、本発明では樹脂粒子と着色剤を水系媒体中において塩析、凝集、融着させて着色粒子(本発明では、トナー粒子と呼ぶ)を得た後、前記トナー粒子を水系媒体から分離するときに、水系媒体中に存在している界面活性剤のクラフト点以上の温度で行うことが好ましく、更に好ましくは、クラフト点〜(クラフト点+20℃)の温度範囲で行うことである。
【0135】
上記のクラフト点とは、界面活性剤を含有した水溶液が白濁化しはじめる温度であり、クラフト点の測定は下記のように行われる。
【0136】
《クラフト点の測定》
塩析、凝集、融着する工程で用いる水系媒体すなわち界面活性剤溶液に、実際に使用する量の凝集剤を加えた溶液を調製し、この溶液を1℃で5日間貯蔵した。次いで、この溶液を攪拌しながら透明になるまで徐々に加熱した。溶液が透明になった温度をクラフト点として定義する。
【0137】
本発明に係るトナーは、上記に記載の金属元素(形態として、金属、金属イオン等が挙げられる)をトナー中に350ppm〜35000ppm含有することが好ましく、更に好ましくは500ppm〜30000ppmである。
【0138】
トナー中の金属イオン残存量の測定は、蛍光X線分析装置「システム3270型」〔理学電気工業(株)製〕を用いて、凝集剤として用いられる金属塩の金属種(例えば、塩化カルシウムに由来するカルシウム等)から発する蛍光X線強度を測定することによって求めることができる。具体的な測定法としては、凝集剤金属塩の含有割合が既知のトナーを複数用意し、各トナー5gをペレット化し、凝集剤金属塩の含有割合(質量ppm)と、当該金属塩の金属種からの蛍光X線強度(ピーク強度)との関係(検量線)を測定する。次いで、凝集剤金属塩の含有割合を測定すべきトナー(試料)を同様にペレット化し、凝集剤金属塩の金属種からの蛍光X線強度を測定し、含有割合すなわち「トナー中の金属イオン残存量」を求めることができる。
【0139】
本発明に係るトナーでは、塩を多く残存させるために界面活性剤の代わりに高分子分散剤を使用したり、あるいは界面活性剤と高分子分散剤を併用することで塩の残存量を制御することが好ましい。
【0140】
高分子分散剤としては、具体的にはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸が挙げられ、分子量は3000〜10000のものが好ましく用いられる。
【0141】
〔熟成工程〕
熟成工程は、塩析/融着工程に後続する工程であり、樹脂粒子の融着後も温度を樹脂のTg+15〜Tg+40℃に保ち、一定の強度で攪拌を継続する。
〔濃縮・洗浄工程〕
この濃縮・洗浄工程は、トナー粒子を含有するトナー粒子分散液からある程度の量の水系媒体を除去してトナー粒子分散液を濃縮してウェットケーキと呼ばれる濃縮したトナー粒子分散液を得るとともに、トナー粒子表面より遊離離型剤や遊離着色剤粒子等の不純物を除去する工程である。そして、濃縮したトナー粒子分散液を再度洗浄液に分散させてトナー粒子表面に残存する界面活性剤や塩析剤等の不純物を除去する工程である。
【0142】
本発明では、前述した遠心沈降装置を使用してトナー粒子分散液を濃縮し、生成したトナー粒子の帯電性を変動させたり、トナー粒子表面を劣化、破損させることなく、トナー粒子分散液の濃縮とトナー粒子表面からの不純物除去を可能にした。
【0143】
本発明は、一度濃縮したトナー粒子分散液を再度洗浄水に投入して希釈、洗浄し、トナー粒子分散液の濃縮を繰り返し行ってトナー粒子表面よりより確実に不純物除去を行うものでもよい。
【0144】
この様にして、トナー粒子分散液の濃縮と洗浄を繰り返し、トナー粒子比率が50%前後のウェットケーキ(ケーキ状の粒子集合物)と呼ばれる濃縮したトナー粒子分散液を得る。
【0145】
〔乾燥工程〕
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
【0146】
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0147】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0148】
次に、トナー製造工程で用いられる各構成因子について、詳細に説明する。
(重合性単量体)
本発明に用いられる樹脂(バインダー)を造るための重合性単量体としては、疎水性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋性単量体が用いられる。また、下記の様に構造中に酸性極性基を有する単量体又は塩基性極性基を有する単量体を少なくとも1種類含有するのが望ましい。
【0149】
(1)疎水性単量体
単量体成分を構成する疎水性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0150】
具体的には、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0151】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0152】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0153】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられ、ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0154】
又、モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0155】
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加しても良い。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0156】
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、(a)カルボキシル基(−COOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物、及び、(b)スルホン基(−SOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
【0157】
(a)のカルボキシル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、およびこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
【0158】
(b)のスルホン基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、スルホン化スチレン、及びそのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、及びこれらのNa塩等を挙げることができる。
【0159】
(4)塩基性極性基を有するモノマー
塩基性極性基を有するモノマーとしては、(a)アミン基或いは4級アンモニウム基を有する炭素原子数1〜12、好ましくは2〜8、特に好ましくは2の脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(b)(メタ)アクリル酸アミドあるいは、随意N上で炭素原子数1〜18のアルキル基でモノ又はジ置換された(メタ)アクリル酸アミド、(c)Nを環員として有する複素環基で置換されたビニール化合物及び(d)N,N−ジアリル−アルキルアミン或いはその四級アンモニウム塩を例示することができる。中でも、(a)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが塩基性極性基を有するモノマーとして好ましい。
【0160】
(a)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、上記4化合物の四級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0161】
(b)の(メタ)アクリル酸アミド或いはN上で随意モノ又はジアルキル置換された(メタ)アクリル酸アミドとしては、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等を挙げることができる。
【0162】
(c)のNを環員として有する複素環基で置換されたビニル化合物としては、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、ビニル−N−エチルピリジニウムクロリド等を挙げることができる。
【0163】
(d)のN,N−ジアリル−アルキルアミンの例としては、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0164】
(重合開始剤)
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は、水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(例えば、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。更に、上記ラジカル重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合せレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いることにより、重合活性を上昇させ、重合温度の低下が図れ、更に、重合時間の短縮が達成できる等好ましい面を有している。
【0165】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であれば、特に限定されるものではないが例えば50℃から90℃の範囲である。但し、過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)を組み合わせた常温開始の重合開始剤を用いることで、室温またはそれ以上の温度で重合することも可能である。
【0166】
(連鎖移動剤)
分子量を調整することを目的として、公知の連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのメルカプト基を有する化合物を挙げることができる。このうち、トナー加熱定着時の臭気を抑制する観点で、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、n−オクチルメルカプタンが特に好ましい。
【0167】
(界面活性剤)
前述の重合性単量体を使用して、特にミニエマルジョン重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行うことが好ましい。この際に使用することのできる界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適な化合物の例として挙げることができる。
【0168】
イオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0169】
本発明においては、下記一般式(1)、(2)の界面活性剤が特に好ましく用いられる。
【0170】
一般式(1) R(OROSO
一般式(2) R(ORSO
一般式(1)、(2)において、Rは炭素数6〜22のアルキル基またはアリールアルキル基を表すが、好ましくは炭素数8〜20のアルキル基またはアリールアルキル基であり、更に好ましくは炭素数9〜16のアルキル基またはアリールアルキル基である。
【0171】
で表される炭素数6〜22のアルキル基としては、例えば、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、Rで表されるアリールアルキル基としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、シンナミル基、スチリル基、トリチル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0172】
一般式(1)、(2)において、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を表すが、好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。Rで表される炭素数2〜6のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基等が挙げられる。
【0173】
一般式(1)、(2)において、nは1〜11の整数であるが、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜5であり、特に好ましくは2〜3である。
【0174】
一般式(1)、(2)において、Mで表される1価の金属元素としてはナトリウム、カリウム、リチウムが挙げられる。中でも、ナトリウムが好ましく用いられる。
【0175】
以下に、一般式(1)、(2)で表される界面活性剤の具体例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0176】
化合物(101):C1021(OCHCHOSONa
化合物(102):C1021(OCHCHOSONa
化合物(103):C1021(OCHCHSONa
化合物(104):C1021(OCHCHSONa
化合物(105):C17(OCHCH(CH))OSONa
化合物(106):C1837(OCHCHOSONa
(樹脂粒子、トナーの分子量分布)
本発明に係るトナーは、その分子量分布のピーク又は肩が、100,000〜1,000,000、及び1,000〜50,000に存在することが好ましく、更に分子量分布のピーク又は肩が、100,000〜1,000,000、25,000〜150,000及び1,000〜50,000に存在するものであることが好ましい。
【0177】
樹脂粒子の分子量は、100,000〜1,000,000の領域にピークもしくは肩を有する高分子量成分と、1,000から50,000未満の領域にピークもしくは肩を有する低分子量成分の両成分を少なくとも含有する樹脂が好ましく、更に好ましくは、15,000〜100,000の部分にピーク又は肩を有する中間分子量体の樹脂を使用することが好ましい。
【0178】
前述のトナーあるいは樹脂の分子量測定方法は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定がよい。すなわち、測定試料0.5〜5mg、より具体的には1mgに対してTHFを1.0ml加え、室温にてマグネチックスターラーなどを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。次いで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1.0mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard columnの組合せなどを挙げることができる。又、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)、あるいはUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
【0179】
(凝集剤)
本発明では、水系媒体中で調製した樹脂粒子の分散液から、樹脂粒子を塩析、凝集、融着する工程において、金属塩を凝集剤として好ましく用いることができるが、2価または3価の金属塩を凝集剤として用いることが更に好ましい。その理由は、1価の金属塩よりも2価、3価の金属塩の方が臨界凝集濃度(凝析値あるいは凝析点)が小さいため好ましい。
【0180】
本発明で用いられる凝集剤は、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩である1価の金属塩、例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩やマンガン、銅等の2価の金属塩、鉄やアルミニウム等の3価の金属塩等が挙げられる。
【0181】
これら金属塩の具体的な例を以下に示す。1価の金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、2価の金属塩としては、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、3価の金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化鉄等が挙げられる。これらは、目的に応じて適宜選択されるが臨界凝集濃度の小さい2価や3価の金属塩が好ましい。
【0182】
本発明で云う臨界凝集濃度とは、水性分散液中の分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加し、凝集が起こるときの凝集剤の添加濃度を示すものである。この臨界凝集濃度は、ラテックス自身及び分散剤により大きく変化する。例えば、岡村誠三他著 高分子化学17,601(1960)等に記述されており、これらの記載に従えば、その値を知ることが出来る。又、別の方法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ電位を測定し、ζ電位が変化し出す点の塩濃度を臨界凝集濃度とすることも可能である。
【0183】
本発明では、金属塩を用いて臨界凝集濃度以上の濃度になるように重合体微粒子分散液を処理する。この時、当然の事ながら、金属塩を直接加えるか、水溶液として加えるかは、その目的に応じて任意に選択される。水溶液として加える場合には、重合体粒子分散液の容量と金属塩水溶液の総容量に対し、添加した金属塩が重合体粒子の臨界凝集濃度以上になる必要がある。
【0184】
本発明では、金属塩の濃度は、臨界凝集濃度以上であれば良いが、臨界凝集濃度の1.5倍以上が好ましく、更に好ましくは2.0倍以上添加するとよい。
【0185】
(着色剤)
本発明に係るトナーは、上記の複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着して得られるものである。本発明に係るトナーを構成する着色剤(複合樹脂粒子との塩析/融着に供される着色剤粒子)としては、各種の無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0186】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0187】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0188】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0189】
有機顔料及び染料も従来公知のものを用いることができ、具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0190】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0191】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
【0192】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0193】
また、染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。
【0194】
これらの有機顔料及び染料は、所望に応じて、単独または複数を選択併用することが可能である。また、顔料の添加量は、重合体に対して2質量%〜20質量%であり、好ましくは3質量%〜15質量%である。
【0195】
本発明に係るトナーを構成する着色剤(着色剤粒子)は、表面改質されていてもよい。表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を好ましく用いることができる。
【0196】
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0197】
チタンカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクト」と称する商品名で市販されているTTS、9S、38S、41B、46B、55、138S、238S等、日本曹達社製の市販品A−1、B−1、TOT、TST、TAA、TAT、TLA、TOG、TBSTA、A−10、TBT、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA−400、TTS、TOA−30、TSDMA、TTAB、TTOP等が挙げられる。アルミニウムカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクトAL−M」等が挙げられる。
【0198】
これらの表面改質剤の添加量は、着色剤に対して0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%〜5質量%である。また、着色剤粒子の表面改質法としては、着色剤粒子の分散液中に表面改質剤を添加し、この系を加熱して反応させる方法が挙げられる。この様にして表面改質された着色剤粒子は、濾過により採取され、同一の溶媒による洗浄処理と濾過処理が繰り返された後、乾燥処理されて得られるものである。
【0199】
(離型剤)
本発明に使用されるトナーは、離型剤を含有した樹脂粒子を水系媒体中において融着させ、熟成工程により離型剤を適度に凝集させてなるトナーであることが好ましい。この様に樹脂粒子中に離型剤を含有させた樹脂粒子を着色剤粒子と水系媒体中で塩析/融着させることで、微細に離型剤が分散されたトナーを得ることができる。ここで、熟成工程とは、樹脂粒子の融着後も温度を離型剤の融点±20℃の範囲で攪拌を継続する工程をいうものである。
【0200】
本発明に係るトナーでは、離型剤として、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等が好ましく、特に好ましくは、下記式で表されるエステル系化合物である。
【0201】
−(OCO−R
式中、nは1〜4の整数で、好ましくは2〜4、更に好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。R、Rは、各々置換基を有しても良い炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜40、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5がよい。Rは、炭素数1〜40、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26がよい。
【0202】
次に代表的な化合物の例を以下に示す。
【0203】
【化1】
Figure 2004004652
【0204】
【化2】
Figure 2004004652
【0205】
また、本発明では離型剤として結晶性ポリエステルも用いることができるものであるが、結晶性ポリエステルとしては、脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸(酸無水物および酸塩化物を含む)とを反応させて得られるポリエステルが好ましい。
【0206】
結晶性ポリエステルを得るために使用されるジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等を挙げることができる。
【0207】
結晶性ポリエステルを得るために使用されるジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコ酸、イタコン酸、グルタコ酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、これらの酸無水物あるいは酸塩化物を挙げることができる。
【0208】
特に好ましい結晶性ポリエステルとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとコハク酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを反応して得られるポリエステルを挙げることができ、これらのうち、1,4−シクロヘキサンジメタノールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステルが最も好ましい。
【0209】
上記化合物の添加量は、トナー全体に対し1質量%〜30質量%、好ましくは2質量%〜20質量%、更に好ましくは3質量%〜15質量%である。
【0210】
(現像剤)
本発明に係るトナーは、二成分現像剤として用いられる。すなわち、トナーとキャリアとを混合した二成分現像剤である。この場合、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15μm〜100μm、より好ましくは25μm〜80μmのものがよい。
【0211】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0212】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0213】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を説明するため、実施例として具体的な態様を示して説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
樹脂粒子の製造
〔樹脂粒子(1HML)〕
(1)核粒子の調製(第一段重合):
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコにアニオン系界面活性剤
化合物(101) C1021(OCHCHOSONa
7.08gをイオン交換水3010gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に昇温させた。
【0214】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)9.2gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン70.1g、n−ブチルアクリレート19.9g、メタクリル酸10.9gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合(第一段重合)を行い、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の分散液)を調製した。これを「樹脂粒子(1H)」とする。
(2)中間層の形成(第二段重合);
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン105.6g、n−ブチルアクリレート30.0g、メタクリル酸6.2g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル5.6gからなる単量体混合液に、結晶性物質として、前記の19)で表される化合物(以下、「例示化合物(19)」という。)98.0gを添加し、90℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0215】
一方、アニオン系界面活性剤(化合物(101))1.6gをイオン交換水2700mlに溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、核粒子の分散液である前記樹脂粒子(1H)を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、前記例示化合物(19)の単量体溶液を8時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0216】
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(KPS)5.1gをイオン交換水240mlに溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750mlとを添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行い、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の表面が中間分子量樹脂により被覆された構造の複合樹脂粒子の分散液)を得た。これを「樹脂粒子(1HM)」とする。
【0217】
前記樹脂粒子(1HM)を乾燥し、走査型電子顕微鏡で観察したところ、ラテックスに取り囲まれなかった例示化合物(19)を主成分とする粒子(400〜1000nm)が観察された。
(3)外層の形成(第三段重合):
上記の様にして得られた樹脂粒子(1HM)に、重合開始剤(KPS)7.4gをイオン交換水200mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン300g、n−ブチルアクリレート95g、メタクリル酸15.3g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル10.4gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却し樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有し、前記中間層に例示化合物(19)が含有されている複合樹脂粒子)の分散液を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(1HML)」とする。
【0218】
この樹脂粒子(1HML)を構成する複合樹脂粒子は、138,000、80,000および13,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の質量平均粒径は122nmであった。
〔樹脂粒子(2HML)〕
界面活性剤(101)に代えて、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gを使用したこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(2HML)」とする。
【0219】
この樹脂粒子(2HML)を構成する複合樹脂粒子は、138,000、80,000および12,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の質量平均粒径は122nmであった。
〔樹脂粒子(3HML)〕
界面活性剤(101)に代えて、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gを使用したこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(3HML)」とする。
【0220】
この樹脂粒子(3HML)を構成する複合樹脂粒子は、138,000、80,000および12,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の質量平均粒径は110nmであった。
濃縮したトナー粒子分散液(ウェットケーキ)の調製
アニオン系界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)59.0gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解し、この溶液を攪拌しながら、カーボンブラック420.0g徐々に添加し、次いで「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液を調製した。
【0221】
樹脂粒子(1HML)420.7g(固形分換算)と、イオン交換水900gと、着色剤分散液166gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8に調整した。
【0222】
次いで、表1の組み合わせで塩析剤をイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。
【0223】
【表1】
Figure 2004004652
【0224】
3分間放置した後に昇温を開始し、この系を30分間かけて90℃まで昇温し、粒子の成長を開始した。「コールターカウンター マルチサイザー」にて成長した粒子の粒径を測定し、体積平均粒径が3μmになった時点で、塩析停止剤をおなじく表1の組み合わせでイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を添加し粒子成長を停止させた。更に熟成処理として液温度98℃にて2時間にわたり加熱攪拌することにより、粒子の融着を継続させた。
【0225】
その後、30℃まで冷却し、攪拌を停止して、体積平均粒径が4.5μmの粒子状の固形物を20質量%含有するトナー粒子分散液を得た。
【0226】
実施例1(トナー1の製造)
▲1▼トナー粒子の濃縮工程
上記トナー粒子分散液を図1に示す沈降板間隔0.5mm、装置設置面積に対する全沈降板の面積が500倍のディスク型遠心沈降装置に投入し、回転数を3000rpmに設定、作動させて、トナー粒子分散液を濃縮した。なお、この時の遠心力は11000Gであった。濃縮して得られたトナー粒子分散液は、固形分含有率が50%のウェットケーキと呼ばれる状態にあるもので、濃縮したトナー粒子分散液を823g得た。得られた濃縮したトナー粒子分散液をウェットケーキ1とする。なお、この時の濃縮を行った際の所要時間はトナー粒子分散液1リットルあたり0.4秒であった。
▲2▼ウェットケーキ1の再分散及び再濃縮工程
ウェットケーキ1を洗浄媒体であるイオン交換水10000mlに投入し、同時に塩酸を含有する水溶液を添加してpHを2.0に調整し、攪拌翼を用いて30分間分散させてトナー粒子分散液を生成した。得られたトナー粒子分散液の電気伝導度を東亜電波工業(株)社製の「CM−14P」を電気伝導度計で測定を行い、トナー粒子分散液の電気伝導度の値が15μS/cm以下になるまで、上記ディスク型遠心沈降装置によるトナー粒子分散液の濃縮と再分散を繰り返した。
▲3▼最終調製工程
最終的に電気伝導度の値が、15μS/cm以下になった時のウェットケーキ1よりトナー粒子を取り出し、透過型電子顕微鏡にてトナー粒子100個についてその表面における不純物付着状況を確認した。確認の結果、粒子100個中に不純物付着した粒子は1個であることが確認された。
▲4▼乾燥工程
その後、バットに移したウェットケーキ1をオーブン型乾燥機に入れて、40℃の温風で水分量が0.63%になるまで乾燥した。
▲5▼外添工程
乾燥した着色粒子を疎水性シリカ1質量%と混合することにより、トナーを得た。得られたトナーをトナー1とする。
【0227】
実施例2〜5(トナー2〜5の製造)
上記ディスク型遠心沈降装置の沈降面積間隔を1.0mm、装置設置面積に対する全沈降板の面積を200倍とした以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子分散液の濃縮と再分散を繰り返しトナー2を得た。なお、この時のトナー粒子分散液1リットルあたりの処理時間は0.8秒であった。
【0228】
同様に、沈降板面積間隔を0.25mm、装置設置面積に対する全沈降板の面積を1000倍として得られたものをトナー3、2.0mm、100倍で得られたものをトナー4、10mm、10倍に設定して得られたものをトナー5とした。トナー3、4、5のトナー粒子分散液1リットルあたりの平均処理時間は、それぞれ0.2秒、1.5秒、3.5秒だった。各トナー100個中の不純物粒子の数を表2に示す。
【0229】
実施例6、7(トナー6、7の製造)
上記実施例1における粒子の体積平均粒径が3μm後の熟成を行わなかった他は実施例1と同様にしてトナー6を得た。また、熟成処理を継続して液温度98℃で加熱撹拌を延長して粒子の融着を継続させた他は実施例1と同様にしてトナー7を得た。各トナー100個中の不純物粒子の数を表2に示す。
【0230】
実施例8〜13(トナー8〜13の製造)
上記実施例1におけるトナー粒子のウェットケーキ1を洗浄媒体に投入する時の洗浄液のpHを4.5とした他は実施例1と同様の手順でトナー8を得た。また、洗浄液のpHを6.5としてトナー9を得た。
【0231】
更に、水酸化ナトリウムを添加してpHを8、10、12、14とした洗浄液を使用して得られたトナーを10、11、12、13とした。得られた各トナーにおける粒子100個当たりの不純物付着量を表2に示す。
【0232】
比較例1(比較用トナー1)
実施例1において、▲1▼〜▲3▼の工程を省いた以外は同様にして比較用トナー1を得た。得られたトナー100個中の不純物粒子の数を表2に示す。
【0233】
比較例2(比較用トナー2)
実施例1において、遠心沈降装置に代わって、得られたトナー粒子分散液を不織布製の濾布がセットされた遠心分離機の槽内に入れ、加速度が700Gの条件で遠心分離機を作動してトナー粒子分散液の濃縮を行う工程を経て比較用トナー2を得た。得られたトナー100個中の不純物粒子の数を表2に示す。
【0234】
比較例3(比較用トナー3)
実施例1において、遠心沈降装置に代わり、特開2001−194826号公報に記載のデカンタ型遠心分離機を使用して、トナー粒子分散液の濃縮を行う工程を経て比較用トナー3を得た。得られたトナー100個中の不純物粒子の数を表2に示す。
【0235】
上記トナーの性能を表2に示す。なお、表2中において、トナー粒子の体積平均粒径はコールターカウンターTA−IIにより測定したものであり、粒子100個あたりの不純物含有量は透過型電子顕微鏡写真により評価した。
【0236】
【表2】
Figure 2004004652
【0237】
表2の結果より明らかな様に、本発明に係る製造方法によって得られたトナー粒子表面には不純物が除去されていることが確認された。
【0238】
実写評価
画像形成装置としては市販のデジタル複写機Sitios7165(コニカ社製)を用いた。上記デジタル複写機は、以下の条件に設定し評価を行った。
【0239】
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器、初期帯電電位を−750V
露光条件
露光部電位を−50Vにする露光量に設定した
現像条件
DCバイアスを−550Vに設定した
転写条件
コロナ帯電方式。
【0240】
また、定着装置としては、芯金として鉄を使用し、表面を厚さ25μmのPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で被覆された表面粗さRaが0.8μmの加熱ローラーを使用し、加圧ローラーとして鉄の芯金を使用し、HTVシリコーンゴムの上に厚み120μmのPFAチューブを被覆した表面粗さRaが0.8μmの加圧ローラーを用いた。なお、ニップ幅は3.8mmであり、線速は420mm/secである。
【0241】
なお、定着装置のクリーニング機構及びシリコンオイル供給機構は装着していない。定着の温度は加熱ローラーの表面温度で制御し、165℃の設定温度とした。
【0242】
現像剤としては体積平均粒径60μmのシリコーンコートキャリアを用い、トナー質量濃度が6%となるようにそれぞれのトナーと混合し用いた。
【0243】
複写条件は、高温高湿環境(30℃、83%RH)にて連続100万枚のプリント行い、連続100万枚プリント後のコピー画像について、以下の項目についての評価を行った。なお、コピー画像は、A4サイズ黒化面積率5%の文字原稿を使用し、A4の転写紙に等倍で印字した。
(1)帯電量の経時変化
現像剤をセットして1枚目の画像を出したときの帯電量をQa、100万枚の画像を出したときの帯電量をQbとし、Qb/Qaが
◎:0.9以上1.1未満
○:0.8以上0.9未満、又は1.1以上1.2未満
△:0.7以上0.8未満、又は1.2以上1.3未満
×:0.7未満又は1.3以上
(2)感光体フィルミング
前述の連続100万枚コピー後の感光体表面を目視にて観察するとともに、フィルミングによるハーフトーンのむらの有無を判定した。
【0244】
◎:ムラのない均一な画像が得られ、フィルミング発生は見られない
○:スジ状の薄いムラが存在するが、実用上問題なし、又感光体表面上のフィルミング発生は認められない
△:スジ状の薄いムラが存在し、感光体表面に若干のフィルミング発生が確認されるが実用上問題なし
×:スジ状のはっきりしたムラが数本以上存在し、感光体表面にはっきりしたフィルミングが認められ、実用上問題あり。
(3)カブリ
連続100万コピー後のコピー画像画像部白地部分における未使用転写シートに対する相対濃度を、マクベス濃度計を用いて測定した。
【0245】
◎:相対濃度0〜0.002未満
○:相対濃度0.002以上0.003未満
△:相対濃度0.003以上0.005未満
×:相対濃度0.005以上。
(3)クリーニング不良
クリーニング部からのトナーすり抜けによる白地部分を汚染開始したコピー枚数で評価した。
(4)網点再現性
20mm×20mmの10%網点画像部についてのマクベス反射濃度計「RD−918」により、1枚目と100万枚目のドットの再現性を評価した。濃度変化が0.10未満であれば画質変化は少なく問題なしと評価した。
(5)ライン幅
2ドットラインの画像信号に対応するライン画像のライン幅を印字評価システム「RT2000」(ヤーマン(株)製)により再生再現性を評価した。評価は1枚目及び100万枚目のライン画像のライン幅とライン幅の変動について評価した。
【0246】
◎:1枚目と100万枚目のライン幅がいずれも200μm以下で、ライン幅の変化が0〜5μm未満
○:1枚目と100万枚目のライン幅はいずれも200μm以下で、ライン幅変化が5μm以上10μm未満
△:1枚目のライン幅は200ミクロンを若干オーバーするが、100万枚目のライン幅は200μm以下で、ライン幅変化は10μm未満
×:1枚目と100万枚目のライン幅はいずれも200μmを超え、かつライン幅の変化が10μmを超えるもの
(6)文字つぶれ
100万枚コピー後に、3ポイントと5ポイントの文字画像を形成し、下記の判断基準でルーペを使用して評価した。
【0247】
◎:3ポイント、5ポイントとも明瞭で、容易に判読可能
○:3ポイントは一部判読不能な文字が発生するがルーペで判読可能、5ポイントは明瞭で容易に判読可能
×:3ポイントは殆どの文字がルーペでも判読不可、5ポイントも一部あるいは全部が目視による判読不能な状態。
(7)階調性変動
スタート時と100万枚コピー後に、反射濃度値0.3のハーフトーン画像を形成し、その濃度変動を評価した。
【0248】
◎:初期と100万枚コピー後の濃度変動が、0.3±0.05以内
○:初期と100万枚コピー後の濃度変動が、0.3±0.1以内
×:初期と100万枚コピー後の濃度変動が0.3±0.1を超える。
【0249】
以上の結果を表3に示す。
【0250】
【表3】
Figure 2004004652
【0251】
上記評価結果より明らかな様に、本発明に係る製造方法により作製されたトナーである実施例1〜13では、高温高湿下での100万枚に及ぶ連続コピー実施後でも帯電性変動のない非常に安定したトナーが得られ、上記環境下における画像形成でも感光体フィルミングやクリーニング不良の発生が見られなかった。さらに、100万枚の連続コピーを行ってもカブリ発生がなく、網点再現性やライン幅、文字つぶれのない細線再現性が優れ、ハーフトーン画質の良好な画像が得られた。
【0252】
本発明に係る製造方法で得られたトナーは、デジタル画像形成装置に要求される細線再現性やハーフトーン画像再現性といった画質性能を100万枚の連続コピー後も再現可能であることが確認された。
【0253】
なお、本発明では、本実施例実施後、更に500万枚及び1000万枚の連続コピーを行い、上記評価を行ったところ、いずれも良好な結果が得られることが見出された。
【0254】
【発明の効果】
本発明に係る遠心沈降装置によるトナー粒子分散液の濃縮を経て得られたトナー粒子では、トナー粒子表面に不純物の残存が全く見られないことが確認され、トナー粒子表面に不純物を残存することなく、しかも、100万枚を超える連続プリントを長期にわたり行ってもトナー粒子表面における帯電性が変動することなく、かつ、機械的に安定した強度を有するトナーが得られることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトナーの製造工程の流れ(製造ライン)を示す模式図である。
【図2】本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置内におけるトナー粒子分散液中のトナー粒子と不純物を含有する分散媒の移動を示す図である。
【図3】本発明で使用されるディスク型遠心沈降装置の接合部の開閉による濃縮したトナー粒子分散液の自動排出を示す図である。
【図4】分離沈降面積式における各構成の所在を示す模式図である。
【図5】本発明で製造されるトナー粒子の粒子構造の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 遠心沈降装置本体
2 上部部材
3 ロータ
4 下部部材
5 濃縮室
6 接合部
7 下部部材操作室
10 沈降板
12 液体集積室
15 送入管
17 送出管
30 収集部
R トナー粒子

Claims (16)

  1. 水系媒体中でトナー粒子を形成し、トナー粒子分散液の状態を経てトナーを製造するトナー製造装置であって、
    該トナー製造装置は、該トナー粒子分散液に含有されるトナー粒子を遠心沈降させて該トナー粒子分散液の濃縮を行う濃縮手段を有するもので、
    該濃縮手段は、該トナー粒子分散液を収容する収容部を有し、該収容部内に少なくとも1枚以上の沈降板を有することを特徴とするトナー製造装置。
  2. 前記収容部は、開閉可能な接合部を有し、該接合部より濃縮されたトナー粒子分散液を排出する排出手段を有することを特徴とする請求項1に記載のトナー製造装置。
  3. 前記沈降板は、前記収容部内で円錐状に配置されることを特徴とする請求項1に記載のトナー製造装置。
  4. 前記沈降板は、前記収容部内で下方を開いた形状で円錐状に配置されることを特徴とする請求項3に記載のトナー製造装置。
  5. 前記沈降板は、複数配置され、その配置間隔が、0.5mm以上1.0mm以下であることを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
  6. 前記沈降板より形成される分離沈降面積が、前記濃縮手段の設置面積の10倍以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
  7. 水系媒体中でトナー粒子を形成し、トナー粒子分散液の状態を経てトナーを製造するトナーの製造方法であって、
    該製造方法は、少なくとも1枚以上の沈降板を有する遠心沈降装置を用いて、該トナー粒子分散液に含有されるトナー粒子を遠心沈降させて該トナー粒子分散液を濃縮しながら、濃縮したトナー粒子分散液を該遠心沈降装置外に自動排出することを特徴とするトナーの製造方法。
  8. 前記トナー粒子分散液、または、前記濃縮したトナー粒子分散液のpHが、2〜6.5であることを特徴とする請求項7に記載のトナーの製造方法。
  9. 前記トナー粒子分散液、または、前記濃縮したトナー粒子分散液のpHが、8〜12であることを特徴とする請求項7に記載のトナーの製造方法。
  10. 前記濃縮したトナー粒子分散液を前記遠心沈降装置外に自動排出する時の自動排出時間が、該濃縮したトナー粒子分散液1リットルあたり1秒以下であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
  11. 前記自動排出された濃縮したトナー粒子分散液を水系媒体に希釈し、希釈したトナー粒子分散液を遠心沈降装置により再度濃縮し、濃縮したトナー粒子分散液の自動排出を繰り返すことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
  12. 前記遠心沈降装置で濃縮を行うトナー粒子分散液におけるトナー粒子濃度が、8〜40質量%であることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
  13. 水系媒体中でトナー粒子を形成して得られるトナーであり、請求項7〜12のいずれか1項に記載の製造方法で製造され、該トナー中に含有される遊離離型剤粒子の数がトナー粒子100個あたり3個以下であることを特徴とするトナー。
  14. 前記水系媒体中で形成されたトナー粒子が、海島構造を有することを特徴とする請求項13に記載のトナー。
  15. 前記水系媒体中で形成されたトナー粒子の体積平均粒径の値が、3μm以上9μm以下であることを特徴とする請求項13又は14に記載のトナー。
  16. 水系媒体中でトナー粒子を形成し、トナー粒子分散液の状態を経てトナーを製造するトナーの製造ラインであって、
    該製造ラインは、少なくとも1枚以上の沈降板を有する遠心沈降装置を用いて、該トナー粒子分散液に含有されるトナー粒子を遠心沈降させて該トナー粒子分散液を濃縮しながら、濃縮したトナー粒子分散液を該遠心沈降装置外に自動排出する工程を有することを特徴とするトナーの製造ライン。
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