以下、本発明の構成を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
温度場の高温化と平坦化を実現する燃焼装置の実施例の一つを図1に示す。この実施例は、加熱装置36の炉内35に直接燃料を噴射する燃料ノズル31と高いエンタルピを持つ酸化剤を炉内35に直接噴射する手段38とを別々に設置し、炉内35の空間を利用して別々に供給された燃料と高いエンタルピを持つ酸化剤とを混合させ燃焼させるようにしたものである。ここで、高いエンタルピを持つ酸化剤として、予熱温度が800℃以上好ましくは1000℃以上の高温空気が燃焼に用いられれば、通常燃焼なら一般的に燃焼不安定化をもたらすような燃焼制御に対しても、反応速度の増大や可燃限界の大幅な拡大が燃焼の安定化に大きく寄与するために燃焼安定性が維持される。よって、これまでの通常燃焼であれば種々の困難が生じる極端な超希薄や超過濃な燃料濃度レベルでの非量論比燃焼制御を実現するための混合制御の操作が極めて容易となる。そこで、高いエンタルピを有する酸化剤と燃料とを別々に噴射し炉内で混合するようにしている。この時、噴射口38,38から高速で噴出される800℃以上、好ましくは1000℃以上の高温の燃焼用空気に誘引されてその周囲に比較的低速で噴射された燃料と炉内35の排ガスとが巻き込まれ、低酸素濃度下で緩慢燃焼を起こす。更に、燃焼反応中にも燃焼ガス及び未反応の燃焼用空気の速い流れに燃焼排ガスが大量に巻き込まれて燃焼反応が継続され、より緩慢燃焼を促進する。このとき、燃焼反応は、通常燃焼における可燃限界を越えた極端な超希薄あるいは超過濃な非量論比となるが、前述したように安定燃焼を起こす。高いエンタルピを持つ酸化剤としては、主に高温の例えば800℃以上に予熱された空気を指すが、これに特に限定されず、空気に酸素富化したものや所定量の酸素を含む空気以外のガスで約800℃以上に加熱されたものなどを含む。高いエンタルピを持つ酸化剤(以下、総称して燃焼用空気と呼ぶ)の供給と燃焼ガスの排出とを交互に行う手段38,38には流路切替手段37が設けられ、一方から燃焼用空気Aを供給する間に他方から燃焼ガスEを排出するように設けられている。この装置の特徴は、蓄熱体1を有する流路切替手段37の切り換え周期を非常に短くして熱再循環を行い、これにより熱回収の高効率化を図り、高いエンタルピを持つ酸化剤として予熱温度800℃あるいはそれ以上の高温空気が得られる点である。また、熱交換および熱流束分布平坦化のために拡散火炎を切替手段・ディスク3の回転にあわせて順次移動回転させる際、それを短い周期でしかも高いエンタルピを持つ酸化剤の噴出流速をステップ状に大幅に変化させながら、燃焼室円周方向ばかりでなく軸方向に対して高温領域の非定在制御の操作を実施することにより温度場の平坦化を実現している。即ち、この実施例の燃焼は、排熱回収熱交換器の温度効率を向上させるので、空気高温化と排熱損失低減化が同時に達成される。また、切り換え周期をより短くした場合、蓄熱体の必要蓄熱容量は少なくなるので、蓄熱体1はコンパクトなセラミックハニカムで構成されている。
図6に図1の燃焼制御方法を実現するバーナの一実施例を原理図で示す。このバーナは、高いエンタルピを持つ酸化剤として蓄熱体1による直接熱交換によって高温例えば約800℃以上に予熱された燃焼用空気Aと燃料Fとを別々に炉内35に噴射させてバーナ内ではなく炉内空間35を利用して混合し燃焼させるようにしたものである。より具体的には、燃料Fを炉内35に噴射する燃料ノズル31を蓄熱体1の中心に貫通させ、燃料噴流の周りから800℃以上の高温に予熱された燃焼用空気Aを酸化剤供給手段38から交互に噴射させるようにしている。ここで、燃焼用空気Aは蓄熱体1の燃焼ガスを排気した箇所に通して高温とされる。また、蓄熱体1を通して炉内35に噴射される燃焼用空気Aの量はほぼ全量であって、燃焼用空気Aの一部(通常数%程度)が常温のまま燃料ノズル31の冷却用空気として、燃料用ノズル31とその周りの蓄熱体1との隙間24から炉内35に噴射される場合もある。しかし、実質的にはほぼ全量となる燃焼用空気Aが蓄熱体1を経て高温にされてから炉内35に噴射されていると言える。
ここで、蓄熱体1を介して燃焼用空気Aの供給と燃焼排ガスEの排気とを図る流路切替手段37は、基本的には、周方向にN(N=n+1、ここで、nは2以上の正の偶数で常時流体が流れる室数である。)室に均等に区画され各室内を軸方向に流体が通過可能とした蓄熱体1と、燃焼用空気供給系に接続される給気室6aと燃焼ガス排気系に接続される排気室6bとを有する出入口手段6と、この出入口手段6と蓄熱体1との間に介在されて蓄熱体1と出入口手段6との間を遮断する一方、連続的あるいは間欠的に回転して出入口手段6の排気室6bと給気室6aとをN室に区画された蓄熱体1の室のいずれかに順次に連通させる切替手段3とから構成されている。
蓄熱体1としては、特定の形状や材質に限定されるものではないが、1000℃前後の燃焼排ガスのような高温流体と20℃前後の燃焼用空気のような低温流体との熱交換には、例えばコージライトやムライト等のセラミックスを材料として押し出し成形によって製造されるハニカム形状のものの使用が好ましい。また、ハニカム形状の蓄熱体1は、セラミックス以外の素材例えば耐熱鋼等の金属で製作しても良い。尚、ハニカム形状とは、本来六角形のセル(穴)を意味しているが、本明細書では本来の六角形のみならず四角形や三角形のセルを無数にあけたものを含む。また、上述の如く一体成形せずに管などを束ねることによってハニカム形状の蓄熱体1を得るようにしても良い。本実施例の場合、蓄熱体1はその手前に配置された分配室2によって周方向に総数Z(a・N)の室に区画されている。例えば、図6に示す実施例の場合、仕切り8によって3室9a,9b,9cに区画された分配室2によって、蓄熱体1内が図8に示すように流体が流れない空室10と燃焼排ガスを流す室11と燃焼用空気を流す室12との3室に区画される。即ち、蓄熱体1そのものは、1つ1つが独立した流路を構成するセルの集合から成るハニカム形状を成していることから、分配室2によって仕切られた範囲が1つの区画された室を形成することとなる。分配室2を設ける場合、連通孔4,5を経て流入する流体を分散させて蓄熱体1の全域に均一に分流させることができる。また、蓄熱体1の形状も特に図示のハニカム形状に限定されず、図9の(A)及び(B)に示すように、平板形状や波板形状の蓄熱材料27を筒状のケーシング28内に放射状に配置したり、図9の(C)に示すように、パイプ形状の蓄熱材料27を軸方向に流体が通過するように筒状のケーシング28内に充填したものであっても良い。更には、本実施例では分配室2によって単一の蓄熱体1が実質的にZ室に区画されているが、これに特に限定されるものではなく、蓄熱体1そのものをa・N室に区画形成しても良い。例えば、図9の(D)に示すように隔壁29によって周方向にa・N室に区画形成され、軸方向に流体が通過可能とした筒状のケーシング28を用意し、これの各室に球状、短管、短棒、細片、ナゲット状、網状などの蓄熱材料27の塊りを充填することによって構成されたものでも良い。コージライトやムライトなどよりもはるかに高温で使用可能なSiN等の蓄熱材料27を使用する場合には、複雑なハニカム形状に成形することは容易ではないが、単純なパイプ形状や棒、ボールなどに成形することは容易である。そこで、図9の(C)や(D)に示すような蓄熱体構造の採用が好ましい。
ここで、蓄熱体1に区画される室の数は燃焼用空気を流す室(以下給気用の室という)12と燃焼排ガスを流す室(以下排気用の室という)11とを1組として最低1組に1つの空室(流体が流れない室)10を組み合わせたものであり、n=2のとき即ちN=n+1より3を最低室数とする。この場合、燃焼用空気は、蓄熱体1の一つの区画12に連通される場合と切替途中の空室10を含めた2つの区画に同時に連通される場合とがあり、一定の押し込み圧力で燃焼用空気を供給しているときに2段階の噴射速度が与えられることとなる。即ち、流路断面積が切替途中に2倍となるため流速が半減することとなる。このため、燃焼用空気が燃料と炉内35で混合され燃焼を起こす位置あるいは火炎の高温領域の位置が噴射方向において移動する、所謂非定在火炎を形成することとなる。勿論、一度に連通する室数を増やすことによって燃焼用空気の噴射速度をステップ状に何段階にも変化させるようにすることもできる。そして、排気用の室11と給気用の室12とを組にして、何組でも組み合わせ可能である。この場合、例えば2組の給気用の室を採用する場合、炉内35に形成される火炎が円周方向に2組となり、更にこれが円周方向に回転移動しながら火炎長さひいては火炎の高温領域を噴射軸方向に繰り返し移動させるため、より平坦化が可能となる。また、図示していないが、N個の室を1ユニットとして複数ユニットを形成することも可能である。即ち、室の総数Zは、Z=a・Nで表される(ここで、aはユニット数を示す0を除く正の整数)。この場合、各ユニットとユニットとの間に空室が位置するように各連通孔4,5の位置が設定されている。このようにして、N室を1ユニットとして総室数Zの複数ユニットの室を蓄熱体1に形成することも可能である。
出入口手段6は、例えば円筒状の仕切壁7によって、燃焼用空気供給系33と接続される給気室6aと排気系統34と接続される排気室6bとに区画されている。本実施例の場合、仕切壁7の内側に供給室6a、外側に排気室6bが形成されている。本実施例の場合、切替手段3は出入口手段6と分配室2の間で単独に切替手段3と共に回転するように設けられている。例えば、図7に示すように、出入口手段6は外筒部13aと切替手段3の支持環23の間に軸受部材15を介在させて切替手段3を回転自在に保持している。そして、出入口手段6と切替手段3の間には流体が漏洩しないようにシール部材16,17が設けられている。
出入口手段6の供給室6aと排気室6bとをそれぞれ対応する蓄熱体1の室・区画12,11にのみ連通させる切替手段3は、流路と直交する円板から成り、蓄熱体1のある1つの区画と供給室6aとを連通させる給気用連通孔5と、1つの区画と排気室6bとを連通させる排気用連通孔4とをa・n/2個ずつ有している。例えば、図1の場合にはnは2、aは1であるから、1個ずつの給気用連通孔5と排気用連通孔4とを有している。そして、この排気用連通孔4と給気用連通孔5とは、1同じ室・区画に給気用連通孔5と排気用連通孔4とが同時に存在し得ないこと、2空室10の次の室・区画に位置する最前列の連通孔から順次1つずつ前方の室・区画に移り変わること、3給気用連通孔及び排気用連通孔4の大きさは、半径方向に互いに重ならないようにn個を配置したときに1室に全てが同時に収まる大きさであること、の3条件を満たすことが必要である。即ち、排気室6bと蓄熱体1の排気用の室11とを連通させる排気用連通孔4と給気室6aと蓄熱体1の給気用の室12とを連通させる給気用連通孔5とを交互にn/2個ずつ配置し、かつ数式1で表される角度αの間隔をあけて排気用連通孔4と給気用連通孔5とが配置され、
更に給気用連通孔5及び排気用連通孔4の大きさが数式2の関係を
満足することが必要である。ここで、角度αは、α=360°/nに設定することが好ましい。このとき、各排気用連通孔4と給気用連通孔5とが等間隔に配置されるため、各連通孔の位置設計と穿孔作業が容易となる。
また、複数ユニットを設ける場合には、総数Zの室のうち常時流体が流れることのないa個の空室10を各ユニットの間に形成される。尚、場合によっては一部の燃焼ガスは蓄熱体1を通さずに炉外へ排出し、他の熱処理設備や対流熱交換器、エコノマイザー、加熱設備などに供給して熱源として利用するようにすることもある。また、円形以外の形状の連通孔であっても、前述の数式1,2の関係は成立する。β1 は切替手段3の回転中心Oから高温流体用連通孔4に外接する中心角であり、β2 は切替手段3の回転中心Oから低温流体用連通孔5に外接する中心角である。
この切替手段3は、本実施例の場合、出入口手段6と軸受手段15によって回転自在に支持されている。そして、駆動機構によって連続的あるいは間欠的に回転可能に設けられている。駆動機構は特に限定されるものではないが、例えば本実施例の場合、ディスク状の切替手段3の周縁にギア22を形成し、これと噛合するドライブギア20を有するモータ21を切替手段3の周りに配置しモータ駆動するように設けられている。勿論、これに限定されるものではなく、切替手段3の周縁に圧接される摩擦車によって回転駆動させるようにしても良い。尚、蓄熱体1と分配室2とを収容するケーシング13bと切替手段3との間、並びに切替手段3と分配室2との間にはシール材18および19が介在され、シールされている。
尚、排気系34と給気系33とは図示していないが押し込みファンと誘引ファンに接続されている。また、立ち上げ用の点火バーナ37が必要に応じて設置されている。
燃料ノズル31は、蓄熱体1を貫通して炉内35に直接露出ないし突出するように配置されている。燃料ノズル31と蓄熱体1との間には僅かな隙間24が設けられ、燃焼用空気の一部が冷却用流体として流されている。勿論、この冷却用の空気は場合によっては流さない。更に具体的には、この燃料ノズル31は、出入口手段6の中心、切替手段3の中心、分配室2の中心及び蓄熱体1の中心を貫通して噴射口(図示省略)が炉内35に突出するように設置され、ケーシング13aなどで支持されている。ここで、噴射口は図示していないが先端の中心に軸方向に開口している。
以上のように構成されたバーナは次のように燃焼する。
燃料中の空気と排気の切替動作を図6及び図8に基づいて詳しく説明すると次のようなものである。まず、出入口手段6の給気室6aに燃焼用空気Aが導入されると、この燃焼用空気Aは給気用連通孔5を経て分配室2の第2の室9bに流入し、更に該当する蓄熱体1の室・区画12に流入する。このとき、蓄熱体1の該当する区画・室は切替前に通過していた高温ガス・燃焼排ガスEの熱によって加熱されているため、通過する燃焼用空気Aは蓄熱体1の熱を奪って高温即ち当該蓄熱体1を加熱した燃焼ガスの温度近くの高温とされる。そして蓄熱体1の中央に配置された燃料ノズル31の周りから、炉内35へ直接1000℃程度の高温となった燃焼用空気Aを燃料Fの周りに噴射する。他方、出入口手段6の排気室6bに排気用連通孔4を介して連通された蓄熱体1の該当する区画11には、排気系34の誘引ファンの働きによって炉内35の燃焼排ガスFが導入される。そして、この蓄熱体1の区画11部分を加熱することによって温度が下がった燃焼排ガスは分配室2の第1の室9aに流入してから排気用連通孔4を経て排気室6bに排出される。
次いで、切替手段3を図6の状態から反時計回転方向へ連続的にあるいは間欠的に回転させると、まず排気用連通孔4が左隣りの分配室の第3の室9cにかかり、第1の室9aと第3の室9cとが同時に排気室6bと連通する。したがって、炉内の燃焼排ガスEは蓄熱体1の第1の区画と第3の区画(図8に符号10で示された部分)とを通過してから分配室2の第1の室9aと第3の室9cとに流入してこれら両室9a,9cに排気用連通孔4を介して接続されている排気室6bに流出する。そして排気される。その後、排気用連通孔4が完全に第3の室9c(図8において符号10で示される空室であった部分)に切り替えられてから、第2の室9bに占位していた給気用連通孔5が第1の室9a(図8において符号11で示される室部分)に切り替えられ、第2の室9b(図8において符号12で示される室)で区画される領域が空室となる。換言すれば、今まで流体が流されていなかった空室10に燃焼排ガスEが流され、今まで燃焼排ガスEが流されていた室11に燃焼用空気Aが流され、更に燃焼用空気Aが流されていた室12には流体が流されない。依って、燃焼排ガスEの熱によって蓄熱体1が加熱され、加熱された蓄熱体1を通過する燃焼用空気Aが蓄熱体1の熱によって温められる。このとき、流体の流れの切替は、空室10を利用して2室に跨ったときにもそれぞれの室と連通させながら行うので、流体の流れが途絶えることがない。そして、燃焼排ガスEの次に燃焼用空気Aと順次流れを途切らすことなく切り替えられる。したがって燃焼用空気Aは、加熱された蓄熱体1を通って排ガス温度に近い高温例えば1000℃程度の熱風となって炉内35へ供給される。このとき、燃焼用空気は単一の室に連通されているときは流速を増し、切替時に空室と跨るときには流速を低減させる。したがって、燃料と混合される位置が噴射方向に変動し火炎の高温領域を炉内35で炉長方向に移動させることとなる。
ほぼ全量の燃焼用空気に相当する高温燃焼用空気Aと燃料ノズル31から噴射される燃料Fとは別々に炉内35に噴射され、噴射直後に混じることなく炉内35に広がり、燃料ノズル31から離れた炉内35で混合される。また、高速で流れる燃焼用空気Aに炉内排ガスが大量に巻き込まれ、燃焼用空気流中の酸素濃度は低下する。このとき、燃焼用空気Aと燃料Fはその流速を急速に低下させかつ混合領域を広範囲に拡大していることから、本来は燃焼し難い条件である。しかし、燃焼用空気Aそのものが800℃以上例えば1000℃程度の高温であるため、このような条件でも容易に燃焼する。しかも、非量論比の条件で燃焼が生じかつ大量の炉内排ガスが巻き込まれているため、火炎温度の急激な上昇が抑制されたいわゆる緩慢燃焼を起こし、NOxの発生を抑える。この緩慢燃焼によって発生する燃焼ガスは前述した如く炉内35での熱利用の後、蓄熱体1の一部の領域を通過して炉外に排出される。ここで、蓄熱体1の切替は、例えば20秒〜90秒、好ましくは10秒程度の間隔で行うか、あるいは蓄熱体1を経由して排出される燃焼ガスが所定の温度例えば200℃程度となったときに行う。
また、他の切替手段3としては、図10に示すように排気用連通孔4と給気用連通孔5とをN室に区画された蓄熱体1の各室のほぼ全域を占める大きさの孔とし、燃焼排ガスEを流す室と燃焼用空気Aを流す室との間に少なくとも1室以上の空室を区画できるような配置関係がとられたものである。即ち、蓄熱体1は、前述の実施例と同様に分配室2による区画あるいは蓄熱体そのものの区画によって、周方向にN(N=n+2、ここで、nは2以上の正の整数で常時流体が流れる室数である。)室に均等に区画され、各室内を軸方向に流体が通過可能とされている。ここで、蓄熱体1に区画される室の数は燃焼用空気を流す給気用の室12と燃焼排ガスを流す排気用の室11とを1組として最低1組に2つの空室(流体が流れない室)10,10を組み合わせたものであり、4室・区画を最低室数・区画数とする。排気用の室11と給気用の室12とは同数である必要はなく、場合によっては、排気用の室11の数よりも給気用の室12の数を多くしたり、あるいはその逆とすることも可能である。この場合、排気量と空気量との比率が異なる場合に、それぞれの比率ごとに利用する蓄熱体の伝熱面面積を変えることができ、適正な熱収支を保つことができるといった利点がある。また、複数の室・区画が1つの連通孔によって同時に流体が流れるようにしても良い。例えば、2つないし3つ、あるいはそれ以上の数の室・区画が同時に1つの連通孔に繋がるようにしても良い。この場合、切り替えに必要な空室の大きさが小さくなり、切替時間を短くすることができる。更に、N個の室を1ユニットとして複数ユニットを形成することも可能である。即ち、室の総数Zは、Z=a・Nで表される(ここで、aはユニット数を示す0を除く正の整数)。この場合、1つの空室10を介在させて1群の排気用の室11と給気用の室12とが交互に配置されるように各連通孔4,5の位置が設定される。
そして、切替手段3は、蓄熱体1の1つあるいは2つ以上の室・区画12,12-1,12-2,…,12-nと供給室6aとを連通させる給気用連通孔5と、1つあるいは2つ以上の室・区画11,11-1,11-2,…,11-nと排気室6bとを連通させる排気用連通孔4とをユニット数aだけ有している。例えば、図10の場合にはユニット数aは1であるから、1個ずつの給気用連通孔5と排気用連通孔4とを有している。そして、この排気用連通孔4と給気用連通孔5とは、その間に相互に少なくとも1室以上の空室10を区画できるような配置関係を満たすことが必要である。即ち、1ユニットの場合、給気用連通孔5と排気用連通孔4とが数式3
で表わされる角度Cの間隔をあけて配置されている。ここで、角度Cは、空室分の角度、即ち[360°/(n+2)]よりも僅かに大きく設定することが好ましい。この場合には、給気と排気の混合を完全に防いで尚かつ圧損を最小限に抑えることができる。また、複数ユニットを設ける場合には、排気用連通孔4と給気用連通孔5との間に数式4
で表される角度Cの間隔が設定されて、ユニット数分の排気用連通孔4と給気用連通孔5とが交互に配置される。
以上のように構成された切替手段3における流体の流れの切り替えは、排気用連通孔4と給気用連通孔5の双方が同時にそれぞれの前方の空室10,10に移り変わることによって行われる。そして、排気用連通孔4および給気用連通孔5が空室であった前方の室・区画内を完全に占位したとき、いままで排気用連通孔4および給気用連通孔5と連通していた室・区画はそれぞれ空室となる。例えば図10に示す1ユニット8室のケースを例に挙げて説明すると、回転方向の最後尾の室・区画11-3,12-3が空室となる。このとき、排気用連通孔4および給気用連通孔5は、今までの室・区画11-1,11-2,11-3および12-1,12-2,12-3と新たな室・区画10,10との4つの区画に同時に跨るが、複数の区画に同時に流体を供給しながら切り替えられると共に空室10を利用しているので、流体の流れが遮断されることがないことは勿論のこと、前方の排気用連通孔4は給気用連通孔5がさしかかった区画よりも1つ前の区画に占位するため、排出される燃焼排ガスと供給される燃焼用空気とが同じ区画内において混じり合うことがない。
次に、温度場高温化と平坦化を実現する燃焼装置の別の実施例を図2に示す。この実施例は、燃焼用空気を供給する手段48の蓄熱体41,42の上流側に複数、例えば一次と二次の二つに分岐した流路43,44を配置すると共に蓄熱体内も各流路に対応させて複数、例えば一次と二次の二つの区画41,42に独立させ、いずれか一方の流路43,44あるいは場合によっては双方の流路から燃焼用空気を供給するように設けられている。外側の流路の蓄熱体41の場合は、開口面積が大きくなるためその長さを短くし、内側の蓄熱体42の場合は、開口面積が小さくなるためその長さを長くしている。これによって、蓄熱体41,42に蓄えられる熱容量がいずれの蓄熱体を通過しても同等なるように設けられている。しかし、流路面積は蓄熱体41,42によって異なるため、同じ押し込み圧力で燃焼用空気が供給される場合、外側の蓄熱体41を通過して噴射される場合と内側の蓄熱体42を通過して炉内35へ噴射される場合とでは噴射速度が異なる。この場合にも高いエンタルピを持つ酸化剤(燃焼用空気)の噴出流速をステップ状に大幅に変化させて、炉内・燃焼室35の半径方向ばかりでなく軸方向に対して高温領域の非定在制御の操作を実施することを可能として温度場を平坦化している。即ち、燃焼用空気が通過する蓄熱体の断面積を変化させることによって噴射速度を変化させ、炉長方向(軸方向)において燃焼用空気と燃料との混合位置並びに火炎の高温領域の位置を変化させるようにすると共に径方向において交互に燃焼用空気を噴射させることによって火炎位置を炉内の半径方向においても変化させるようにしている。また、炉内35に別々に噴射される高温の燃焼用空気と燃料との混合が、噴射量や噴射の時間的なずれ等及び大量の炉内排ガスの巻き込みによって非量論比に制御されることは、図1の実施例の場合と同様である。そして、この非量論比燃焼によっても温度場の平坦化が達成される。尚、図中符号45,46は2つの流路43,44を合流させる集合ダクト、47は四方弁、49は2つの流路43,44を選択的に閉じるダンパである。
次に、図3に燃焼室軸方向に対してのみ高温領域の非定在制御の操作を実施することにより温度場を平坦化した場合の実施例を示す。この実施例は燃焼用空気の噴射位置を軸方向(燃焼用空気の噴射方向:火炎方向)にずらして配置し、燃焼用空気の噴射を炉内の手前側と奥側とに交互に切り替えて燃料と燃焼用空気とが炉内において混合され燃焼を起こす位置を移動させることを可能としたものである。即ち、軸方向に対して高温領域の非定在制御の操作が行われる。具体的には、炉36の手前側に燃料ノズル31とその周りに燃焼用空気を交互に噴射する一対の酸化剤供給手段53,53を配置し、この酸化剤供給手段53,53を合流ダクト54を介して四方弁56の一つのポートに連結するようにしている。そして、酸化剤供給手段53,53には蓄熱体52,52が装入されており、四方弁56から導入される燃焼用空気を蓄熱体52,52の熱で予熱してから炉内35へ噴射するように設けられている。また、四方弁56の他方のポートには炉36の奥側に連通する一対の酸化剤供給手段57,57が合流ダクト55を介して連結されている。また、この酸化剤供給手段57,57にも蓄熱体51,51が装入されている。尚、四方弁56の残る2つのポートには燃焼用空気供給系33と排ガス系34とが接続されている。したがって、四方弁56の切替によって炉の手間側の酸化剤供給手段53,53または奥側の酸化剤供給手段57,57のいずれか一方から燃焼用空気が約800℃あるいはそれ以上に予熱されて燃料ノズル31から噴射される燃料に向けて噴射される。この実施例の場合、炉の手前側と奥側とで交互に燃焼用空気が噴射されるため、炉の入口から噴射される燃料に対し燃焼用空気が手前側と奥側とで交互に混合され火炎が形成される。よって、火炎の高温領域が炉の手前側寄りと奥側寄りとの間を繰り返し移り変わる。また、炉内35に別々に噴射される高温の燃焼用空気と燃料との混合が、噴射量や噴射の時間的なずれ等及び大量の炉内排ガスの巻き込みによって非量論比に制御されることは、図1の実施例の場合と同様である。そして、この非量論比燃焼によっても温度場の平坦化が達成される。
尚、以上の高温温度場の平坦化の実施例をまとめて図5に示す。この図によると、火炎の発生と炉長方向並びに炉円周方向における熱流束パターンの変化が示されている。
図4は燃焼熱で加熱を行う熱装置の燃焼を低公害化する燃焼制御方法の一例を示すものである。この燃焼制御方法は、高いエンタルピを有する酸化剤を用いて生じさせた燃焼を利用してNOxの還元および一酸化炭素の抑制を図ることを特徴とする。この実施例によると、燃焼用空気を炉内35の手前側と奥側とに分けて供給し、炉内35の空間を利用して燃焼用空気と燃料との混合、特に二段階混合を実施して低NOx化を実現したものである。この場合、炉36の手前側に設置された一対の酸化剤供給手段70,70と炉36の奥側に設置された一対の酸化剤供給手段71,71とをそれぞれ集合ダクト67,68で合流させて四方弁69の各ポートにそれぞれ連結し、一方の酸化剤供給手段70,71を燃焼用空気供給系33に接続するとき他方を排ガス系34へ選択的に接続するようにしている。そして、分岐される流路63,64にはそれぞれダンパ65,66が設けられ、燃焼用空気の一部例えば30%程度が燃料ノズル31の周辺から噴き出され、残り例えば70%程度が炉の奥において噴射される。この場合、全量の燃料と30%程度の燃焼用空気とが炉内35の空間を利用して混合され、燃料過剰状態の混合ガスを形成して燃焼する。このとき、燃焼用空気は約800℃以上の高いエンタルピを有する酸化剤であるため、このような極めて高い燃料リッチ状態であっても燃焼が可能となる。このとき、燃焼ガスは極端な空気不足のため完全燃焼はしないが、炉36の奥側において供給される残りの燃焼用空気によって完全燃焼を達成する。この非量論比燃焼によって温度場が平坦化される。また、低公害燃焼を行うために、高いエンタルピを有する酸化剤を用いて燃料ノズル31の近傍の一次燃焼領域に生じさせた燃料濃度の高いリッチ燃焼を高温還元剤として利用し、さらに高いエンタルピを有する酸化剤を用いて炉36の奥側の二次燃焼領域に生じさせた高温燃焼で発生する窒素酸化物生成を抑制すると同時に一酸化炭素発生領域に供給混合することによりその発生を抑制し完全燃焼を可能にするようにしている。ここで、燃焼ガス中に高いエンタルピを持つ酸化剤即ち蓄熱体61,61を経て800℃以上の高温となった燃焼用空気を噴射することによって高温燃焼ガス中に発生するNOxの還元あるいはCOの低減が図られる原理としては、例えば次のようなことが考えられる。高温の燃焼用空気の噴流は直進する燃焼ガス噴流に対し横風噴流となって合流する。このとき、燃焼ガス噴流中には横風噴流・高温燃焼用空気噴流によって互いに逆向きの渦領域となる一対の循環流が生じ、燃焼ガスの噴流内部に燃焼用空気噴流を取り込む。その後、2つの渦領域それぞれの内部に生じた大小複数の渦塊によって燃焼ガス噴流の高濃度域が複雑に断面内に拡散されると同時に噴流中央部に取り込まれた燃焼用空気噴流も分散されて拡散される。即ち、燃焼用空気噴流が燃焼ガス噴流の中に取り込まれた後、次第に噴流内部全体に広がり、高温の燃焼用空気と燃料リッチ燃焼ガスとが混合されて燃焼ガス噴流内で燃焼する。その間、燃焼ガス噴流に含まれるNOxが還元され、かつCOが酸化される。
更に、本発明の燃焼制御方法は、図13に示すようなラジアントチューブバーナシステムに適応する場合にも好ましい結果が得られる。このラジアントチューブバーナシステムは、ラジアントチューブ81の両端にバーナ82,83をそれぞれ配置し、かつ該バーナ82,83のエアースロート84に内装ないし連結させた蓄熱体85を通して酸化剤(例えば燃焼用空気)の供給と燃焼排ガスの排気とを交互に行うようにし、約800℃以上の高温に予熱された酸化剤たる燃焼用空気を用いて交互燃焼させるようにしたものである。尚、各バーナ82,83のエアースロート84は例えば四方弁等の流路切替手段86を介して燃焼用空気供給系88と排気系89とに選択的に接続され、一方のバーナ82(あるいは83)へ燃焼用空気が供給されると共に、他方のバーナ83(あるいは82)を経て燃焼排ガスが排出されるように設けられている。このため、蓄熱体85は、燃焼排ガスが通過するときにはその顕熱を回収して蓄熱し、燃焼用空気が通過するときには蓄えられた熱を放出して燃焼用空気を予熱する。尚、両バーナ82,83は三方弁87を介して選択的に接続される燃料供給系90から交互に燃料が供給されて交互に燃焼する。例えば、図13の(B)に示すように、バーナ82,83はバーナボディ91内に蓄熱体85を内装し、それよりも下流側即ち空気噴射方向にエアースロート84を構成するタイル92を設けて中央の噴射口84aから燃焼用空気を噴射し、その周りから燃料を空気とほぼ平行に噴射するようにしている。燃料を噴射する燃料噴射ノズルは、大径の燃料ノズル93と小径の燃料ノズル94とから構成され、タイル92の中央に形成されるエアースロート84から離した位置に開口するようにタイル92内に埋設されている。燃料ノズル93,94はエアースロート84内を通過する800℃以上の高温の燃焼用空気及び燃焼排ガスから耐火・断熱材から成るタイル92によって保護され、コーキング及び焼損を起こさないように設けられている。このバーナ構造の場合、中央の空気噴射口84aから高速で噴射される高温の燃焼用空気の流れによって燃料ノズル93,94から噴射される燃料を誘引して巻き込み、同時にラジアントチューブ81内の燃焼ガスを強力に巻き込んで緩慢燃焼を起こす。また、図13の(C)に示すように、エアースロート84の噴射口84aをラジアントチューブ81の内周壁に沿って燃焼用空気を噴射するように形成する一方、燃料の主流が空気噴流から離れて噴射するように設けて、燃料の主流と空気噴流とが混合する前にできるだけ大量の燃焼排ガスを巻き込むようにしても良い。
ここで、高いエンタルピを持つ酸化剤として、予熱温度が800℃以上好ましくは1000℃以上の高温空気が燃焼に用いられれば、通常燃焼なら一般的に燃焼不安定化をもたらすような燃焼制御に対しても、反応速度の増大や可燃限界の大幅な拡大が燃焼の安定化に大きく寄与するために燃焼安定性が維持される。よって、これまでの通常燃焼であれば種々の困難が生じる極端な超希薄や超過濃な燃料濃度レベルでの非量論比燃焼制御を実現するための混合制御の操作が極めて容易となる。
例えば、メタンの可燃領域を例に挙げると、混合気温度が20℃の場合、希薄限界は燃料濃度が約5.2%(当量比0.52)であったものが、1000℃の場合には1.5%(当量比0.145)にもなる。同様に過濃限界側も希薄限界とともに拡大するので、このことは安定燃焼範囲の拡張を意味する。よって、火炎温度分布を混合によって制御する方法において、これまでの制限に比較して大幅な自由度の増大がもたらされる。このことから、図13の(B)あるいは(C)に示すような構造のラジアントチューブバーナにおいても、非量論比燃焼を起こし、それが安定して継続されるため、温度場が平坦化される。
即ち、図13の(B)に示す構造のラジアントチューブバーナの場合、中央のエアースロート84の噴射口84aから高速で噴出される800℃以上、好ましくは1000℃以上の高温の燃焼用空気に誘引されてその周囲に比較的低速で噴射された燃料とラジアントチューブ81内の排ガスとが巻き込まれ、低酸素濃度下で緩慢燃焼を起こす。更に、燃焼反応中にも燃焼ガス及び未反応の燃焼用空気の速い流れに燃焼排ガスが大量に巻き込まれて燃焼反応が継続され、より緩慢燃焼を促進する。このとき、燃焼反応は、通常燃焼における可燃限界を越えた極端な超希薄あるいは超過濃な非量論比となるが、前述したように安定燃焼を起こす。
また、図13の(C)に示す構造のラジアントチューブバーナにおいても、ラジアントチューブ81の内周壁に沿って噴射される燃焼用空気に小径の燃料ノズル94から噴射された燃料と燃焼排ガスとが誘引されて巻き込まれ、超空気過剰状態で燃焼し、更に下流側で大量の燃焼排ガスと大径の燃料ノズル94から噴射された燃料とを巻き込んで、低酸素濃度下で緩慢燃焼を起こす。燃焼反応は燃料と燃焼排ガスとを巻き込みながら継続され、より緩慢燃焼を促進させる。
また、高品位燃料と高いエンタルピを持つ酸化剤を用いた超過エンタルピ−燃焼により断熱火炎温度を通常よりさらに高温化した場合、高い熱流束を定常的に被加熱物に与えるのではなく、例えば図5に示されるように、あるいは図1〜図4、図13、図16に具体的に示されるように、交互燃焼で非定在火炎を形成することによって熱流束を時間的あるいは空間的に変化させるような火炎制御を行えば、被加熱物のオーバーヒートや焼損を抑制することが可能と考えられる。したがって、炉内温度場を時間平均的に平坦化制御することができれば伝熱の高効率化に加えて伝熱放射管表面の温度偏差を低減し熱応力是正にも有効な手段となる。
斯くして、ラジアントチューブ熱装置の伝熱を高効率化するために、図13に示すように、高いエンタルピを有する酸化剤を用いて生じせしめた非量論比的燃焼と交互燃焼を単独に、あるいはそれらを組み合わせて利用することによって、ラジアントチューブの管壁温度偏差を30℃〜50℃以下にすることを実現できた。
また、従来の通常燃焼では、ラジアントチューブの表面負荷qとアウトプット効率αが炉内温度Tに対して定まっていたため、必要加熱量Qが決まるとその管径dは管長さ1として数式5から算出されていた。
数5
q×(π/4)×d2×1=Q/α atT
ラジアントチューブ表面の温度偏差を低減する燃焼制御方法、即ち、高いエンタルピを有する酸化剤を用いて生じせしめた非量論比的燃焼と交互燃焼を単独にあるいは組み合わせて利用する本発明の燃焼制御方法によれば、表面負荷qとアウトプット効率αを従来より大幅に増加することができる。
これまで、ラジアントチューブバーナシステムのラジアントチューブ直径としては、最小でも3B(ラジアントチューブの呼び径)以上が使われていた。これは、表面負荷qとアウトプット効率αが低かったためで、それ以下の直径で加熱を行うには多数のチューブを必要とし煩雑化するためであった。
しかし、高い表面負荷qとアウトプット効率αであれば、図14に示すように、3Bのラジアントチューブ即ち外径75mm以下のチューブを使用することも可能となる。尚、小径の管で燃焼量を増加すれば供給流体流速が高速になり、至る所が燃焼速度よりも速く流れるので、通常燃焼では不安定になり失火するが、高いエンタルピを有する酸化剤つまり800℃以上の高温に予熱された燃焼用空気を用いた燃焼では極めて安定性が高い燃焼が保持される。また、燃焼用空気そのものも、高温に予熱されることで膨張するため高流速となる。
更に、本発明の燃焼制御方法は、図15に示すようなラジアントチューブで実施する場合にも好適な結果を得る。このラジアントチューブ100は、直管の中央を仕切壁102で仕切って右室103Rと左室103Lとに区画し、ダブルエンド型のラジアントチューブとしたものである。このラジアントチューブ100の隣り合う端部には、例えば図1において示すような流路切替手段37と各室103R,103Lに臨む燃料ノズルとを設置し、交互に燃料を右室103Rと左室103Lに噴射して燃焼させるようにしても良い。この場合のチューブ形状は円形や楕円形に限られずその他の形状を採用しても良いが、より好ましくは図示の如き楕円形状とすることである。この形状のラジアントチューブ100の場合、中仕切壁102によって分けられているチューブ100の右半分の室103Rと左半分の室103Lとで交互に火炎が形成され、先端の折り返し通路104部分で反対側に抜けて排出されるため、ラジアントチューブ100の表面温度が大きく異ならず均一化され、しかも表面負荷を上げることができる。従来の一般的なシングルエンド型のラジアントチューブは、先端部分でのみ内管と外管とが連通する同軸二重管形式で、内管の内側で燃焼して発生した燃焼ガスが外管と内管の間のスペースを通って戻ってくる構造とされている。このため、外管に必要な表面負荷を与えるためには内管は熱的に限界に近い状況で使用されることになる。実際には、U字管式等に比してその表面負荷は低い傾向にあった。しかし、図15のラジアントチューブ構造の場合、燃焼反応を起こす部分も燃焼ガスが戻る部分も表面に双方とも露出しているため、ラジアントチューブ表面の温度偏差を低減することができ、表面負荷とアウトプット効率が改善される。即ち、高いエンタルピを有する酸化剤(約800℃以上に予熱された高温の燃焼用空気)を用いた非量論比的燃焼と交互燃焼の組み合わせによって仕切壁102によって仕切られたラジアントチューブの左右で非定在火炎が形成されるためヒートフラックス分布がラジアントチューブの左右において均一に形成されるため、熱的環境が緩和される。
更に、図16にラジアントチューブバーナシステムの他の実施例を示す。この実施例は、複数本の直管から成るラジアントチューブ110,…,110を炉内116に設置し、各チューブ110の両端に例えば図13の(B)あるいは(C)に示すのと同様の構造のバーナ111,112をそれぞれ設置している。そして、例えば2本のチューブ110,110の両端に設置されたバーナ111,112のエアースロートを各々連結してから四方弁113,113の一つのポートにそれぞれ接続する一方、別の2本のチューブ110,110の両端に設置されたバーナ111,111,112,112のエアースロートを各々連結してから四方弁113,113の他のポートにそれぞれ接続し、2本のチューブ110,110を組として、一方の組のバーナ111,111,112,112を燃焼用空気供給系114,114に接続する一方、他方の組のバーナ111,111,112,112を排気系115,115に接続する。このようにして、直管のラジアントチューブ110,110の一端から他端に向けて流れる燃焼ガスを他端側のバーナ112,112あるいは111,111を通過させて排気し、蓄熱体を加熱するようにしている。この実施例の場合、各ラジアントチューブ110内でも交互に燃焼による非定在火炎によってヒートフラックスパターンが変化して温度場が平坦化されると共に従来より高温度場が形成される。また、炉内全域においても、空間的に熱流束が変化することによってヒートフラックスパターンが変化して、温度場が平坦化されかつ従来より高い温度場となる。加えて、非量論比燃焼によって、局所的な高温場が抑止され、温度場が平坦化される。依って、ラジアントチューブの温度偏差を小さくして、炉内温度を上げることができる。
尚、上述の実施例は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施例では主に燃焼用空気の噴射位置等を切り替える場合について説明したが、これに特に限定されるものではなく、燃料の噴射位置を変えるようにしても良い。また、高温の燃焼用空気と燃料との混合制御による非量論比燃焼と交互燃焼による非定在火炎の形成とを同時に行う実施例について主に説明したが、場合によっては非定在火炎形成と非量論比燃焼とを別々に実施しても良く、この場合にも温度場の平坦化は達成される。