JP3722857B2 - 燃焼加熱装置の燃焼制御方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、燃焼熱で加熱を行う熱装置に関する。更に詳述すると、本発明は、熱装置内の温度場の高温化と共に平坦化を実現する燃焼制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃焼を利用する加熱装置を高性能化するための主要課題の一つである省エネルギー化は、これまで主として熱回収技術を使った排熱損失の低減化により進められてきた。例えばボイラシステムの場合、現在そのほとんどは空気予熱器およびエコノマイザ等を用いた排熱回収により、すでに90〜95%という高い熱効率が達成され、熱回収技術もほぼ限界まで進められてきた。従ってこれ以上の効率向上は僅かである上に、必然的に装置の大型化や複雑化によるイニシャルコストの急増を避けられず、投資対効果の面からもその意義は薄れつつある様に見える。
【0003】
しかし、省エネルギー化を実現し得るより基本的な方法として、加熱装置内部の伝熱効率の改善がある。即ち、伝熱を従来よりも高効率に行わせるため、燃焼室内に形成される温度場を積極的に改善制御する技術の革新である。これが実現されれば、高い熱効率を維持しつつ、装置の小型化あるいは生産量の増加が期待でき、結果として省エネルギーと省資源とに貢献する加熱装置が実現することとなる。
【0004】
一般論として、加熱装置において、高効率伝熱を実現するためには、温度場の高温化の必要がある。
【0005】
そして、燃焼室内に形成される温度場を高温化するためには高いエンタルピを持つ酸化剤の利用、純酸素燃焼あるいは燃焼室断熱化向上などにより火炎温度を上昇させることが考えられる。実用的な手法としては図5に示すように、空気を予熱高温化する熱再循環による超過エンタルピー燃焼がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、超過エンタルピー燃焼は1971年にWeinbergが指摘したように、これまで超希薄混合気や低品位燃料の燃焼において火炎温度を通常燃焼のレベルまで上昇させるための手法とされてきており、高品位燃料の燃焼や適正空気比での燃焼には使われていなかった。しかも、火炎の上限温度には実用上多くの制約があり、過度の火炎高温化は高効率伝熱を実現するにはあまり現実的な意味を持たなかった。例えばボイラへの適用を考えると、過大な熱流束が伝熱管に定常的に与えられた場合、伝熱管の焼損などの危険性を常に伴うからである。
【0007】
しかし、高品位燃料と高いエンタルピを持つ酸化剤を用いた超過エンタルピー燃焼によって断熱火炎温度を通常よりさらに高温化した場合であっても、高い熱流束を定常的に被加熱物に与えるのではなく、熱流束を時間的空間的に変化させるような火炎制御が行われるのであれば被加熱物の過熱や焼損を抑制し得る可能性があると考えられる。つまり、もし炉内温度場を時間平均的に上限温度以下に制御することができれば伝熱の高効率化に有効な手段となる。
【0008】
このことは、高温の空気を用いた試験炉での燃焼試験で得られた熱流束分布測定結果(図3)からも明らかである。即ち、燃焼用空気温度が200℃の場合、熱流束分布は比較的平坦ではあるが、局部的な最大熱流束qmax は平均熱流束qave の約1.2倍で、炉の後部に存在する最小熱流束qmin は平均熱流束qave の約0.6倍となっている。一方、空気温度が1000℃の場合、熱流束の極大値は200℃のときの平均熱流束qave の約2.2倍に増加するが、熱流束分布の不均一度はさらに増大する。よって、温度場の高温化に加えて平坦化を実現させ炉内全体に均一な熱流束が与えられれば、単位伝熱面積当たりの収熱量を増加させるような伝熱改善が可能なことが明らかである。
【0009】
そこで、本発明は、焼損などの不具合の問題を招くことなく温度場の高温化を可能とし、かつNOxなどの発生を抑制して熱回収を高効率で行うことができる加熱装置の燃焼制御方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本発明者らが鋭意研究の結果、高いエンタルピを持つ酸化剤即ち800℃以上加熱された酸化剤を用いた燃焼により火炎発熱分布を炉内の特定の位置に定常的かつ定在的に存在することのないようにする新しい制御方法を見いだした。これによって、不均一分布を持つ高い熱流束を時間的および空間的に変化させれば、温度場の平坦化が実現された。即ち、本発明は、燃料を熱装置の炉内へ噴射する単一燃料ノズルと、前記単一燃料ノズルの周囲でかつ炉長方向にずらして800℃以上に加熱された酸化剤の前記炉内への供給と前記炉内からの燃焼ガスの排出とを交互に行う酸化剤供給手段とを配置し、燃料噴流の周囲から800℃以上に加熱された酸化剤を噴射すると共に燃焼ガスの排出を行う一方、前記酸化剤の噴射位置と前記燃焼ガスの排出位置とが炉内の手前側と奥側とに交互に切り替えられ、前記熱装置の炉内へ別々に噴射された800℃以上に加熱された酸化剤と燃料とを前記炉内空間を利用して混合し、非定在火炎を形成すると共に非量論比燃焼させることによって、温度場を平坦化させるようにしている。
【0011】
【作用】
したがって、高いエンタルピを持つ酸化剤と燃料とが炉内空間を利用して混合され燃焼するため、従来よりも高い温度場が形成される。しかも、火炎は一定位置に定まらない非定在火炎となり、ヒートフラックスパターンを移動させたり変化させる。このため、時間平均的に炉内温度場を上限温度以下に抑制する。
【0012】
また、高いエンタルピを持つ酸化剤として予熱温度が800℃以上の高温空気が用いられる場合、反応速度の増大や可燃限界の大幅な拡大が燃焼の安定化に大きく寄与すると期待される。それゆえこれまで広く用いられてきた通常燃焼であれば種々の困難が生じる可能性の高い極端なレベルでの非量論比燃焼(従来の非量論比燃焼制御法において用いられていた空気比0.7〜2をはるかに逸脱する例えば0.2〜10程度の空気比での燃焼)を実現するための混合制御が極めて容易となる。例えば、メタンの可燃領域を図4に示すが、混合気温度が20℃の場合、希薄限界は燃料濃度が約5.2%(当量比0.52)、1000℃の場合1.5%(当量比0.145)となる希薄限界の拡大は安定燃焼範囲の拡張を意味すると考えられ、よって熱流束分布を制御する方法に自由度の増大をもたらす。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の構成を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1に燃焼室軸方向に対してのみ高温領域の非定在制御の操作を実施することにより温度場を平坦化した場合の実施例を示す。この実施例は燃焼用空気の噴射位置を軸方向(燃焼用空気の噴射方向:火炎方向)にずらして配置し、燃焼用空気の噴射を炉内の手前側と奥側とに交互に切り替えて燃料と燃焼用空気とが炉内において混合され燃焼を起こす位置を移動させることを可能としたものである。即ち、軸方向に対して高温領域の非定在制御の操作が行われる。具体的には、炉36の手前側に燃料ノズル31とその周りに燃焼用空気を交互に噴射する一対の酸化剤供給手段53,53を配置し、この酸化剤供給手段53,53を合流ダクト54を介して四方弁56の一つのポートに連結するようにしている。そして、酸化剤供給手段53,53には蓄熱体52,52が装入されており、四方弁56から導入される燃焼用空気を蓄熱体52,52の熱で予熱してから炉内35へ噴射するように設けられている。また、四方弁56の他方のポートには炉36の奥側に連通する一対の酸化剤供給手段57,57が合流ダクト55を介して連結されている。また、この酸化剤供給手段57,57にも蓄熱体51,51が装入されている。尚、四方弁56の残る2つのポートには燃焼用空気供給系33と排ガス系34とが接続されている。したがって、四方弁56の切替によって炉の手間側の酸化剤供給手段53,53または奥側の酸化剤供給手段57,57のいずれか一方から燃焼用空気が約800℃あるいはそれ以上に予熱されて燃料ノズル31から噴射される燃料に向けて噴射される。この実施例の場合、炉の手前側と奥側とで交互に燃焼用空気が噴射されるため、炉の入口から噴射される燃料に対し燃焼用空気が手前側と奥側とで交互に混合され火炎が形成される。よって、火炎の高温領域が炉の手前側寄りと奥側寄りとの間を繰り返し移り変わる。また、炉内35に別々に噴射される高温の燃焼用空気と燃料との混合が、噴射量や噴射の時間的なずれ等及び大量の炉内排ガスの巻き込みによって非量論比に制御されることは、図1の実施例の場合と同様である。そして、この非量論比燃焼によっても温度場の平坦化が達成される。
【0015】
この実施例は、加熱装置36の炉内35に直接燃料を噴射する燃料ノズル31と高いエンタルピを持つ酸化剤を炉内35に直接噴射する手段53,57とを別々に設置し、炉内35の空間を利用して別々に供給された燃料と高いエンタルピを持つ酸化剤とを混合させ燃焼させるようにしたものである。ここで、高いエンタルピを持つ酸化剤として、予熱温度が800℃以上好ましくは1000℃以上の高温空気が燃焼に用いられれば、通常燃焼なら一般的に燃焼不安定化をもたらすような燃焼制御に対しても、反応速度の増大や可燃限界の大幅な拡大が燃焼の安定化に大きく寄与するために燃焼安定性が維持される。よって、これまでの通常燃焼であれば種々の困難が生じる極端な超希薄や超過濃な燃料濃度レベルでの非量論比燃焼制御を実現するための混合制御の操作が極めて容易となる。そこで、高いエンタルピを有する酸化剤と燃料とを別々に噴射し炉内で混合するようにしている。この時、噴射口53,57から高速で噴出される800℃以上、好ましくは1000℃以上の高温の燃焼用空気に誘引されてその周囲に比較的低速で噴射された燃料と炉内35の排ガスとが巻き込まれ、低酸素濃度下で緩慢燃焼を起こす。更に、燃焼反応中にも燃焼ガス及び未反応の燃焼用空気の速い流れに燃焼排ガスが大量に巻き込まれて燃焼反応が継続され、より緩慢燃焼を促進する。このとき、燃焼反応は、通常燃焼における可燃限界を越えた極端な超希薄あるいは超過濃な非量論比となるが、前述したように安定燃焼を起こす。高いエンタルピを持つ酸化剤としては、主に高温の例えば800℃以上に予熱された空気を指すが、これに特に限定されず、空気に酸素富化したものや所定量の酸素を含む空気以外のガスで約800℃以上に加熱されたものなどを含む。高いエンタルピを持つ酸化剤(以下、総称して燃焼用空気と呼ぶ)の供給と燃焼ガスの排出とを交互に行う手段53,57には流路切替手段56が設けられ、一方から燃焼用空気Aを供給する間に他方から燃焼ガスEを排出するように設けられている。この装置の特徴は、蓄熱体1を有する流路切替手段56の切り換え周期を非常に短くして熱再循環を行い、これにより熱回収の高効率化を図り、高いエンタルピを持つ酸化剤として予熱温度800℃あるいはそれ以上の高温空気が得られる点である。また、熱交換および熱流束分布平坦化のために拡散火炎を短い周期でしかも高いエンタルピを持つ酸化剤の噴出流速をステップ状に大幅に変化させながら、軸方向に対して高温領域の非定在制御の操作を実施することにより温度場の平坦化を実現している。即ち、この実施例の燃焼は、排熱回収熱交換器の温度効率を向上させるので、空気高温化と排熱損失低減化が同時に達成される。また、切り換え周期をより短くした場合、蓄熱体の必要蓄熱容量は少なくなるので、蓄熱体1はコンパクトなセラミックハニカムで構成されている。
【0016】
尚、排気系34と給気系33とは図示していないが押し込みファンと誘引ファンに接続されている。また、立ち上げ用の点火バーナが必要に応じて設置されている。
【0017】
蓄熱体51,52としては、特定の形状や材質に限定されるものではないが、1000℃前後の燃焼排ガスのような高温流体と20℃前後の燃焼用空気のような低温流体との熱交換には、例えばコージライトやムライト等のセラミックスを材料として押し出し成形によって製造されるハニカム形状のものの使用が好ましい。また、ハニカム形状の蓄熱体51,52は、セラミックス以外の素材例えば耐熱鋼等の金属で製作しても良い。尚、ハニカム形状とは、本来六角形のセル(穴)を意味しているが、本明細書では本来の六角形のみならず四角形や三角形のセルを無数にあけたものを含む。また、上述の如く一体成形せずに管などを束ねることによってハニカム形状の蓄熱体51,52を得るようにしても良い。
【0018】
ほぼ全量の燃焼用空気に相当する高温燃焼用空気Aと燃料ノズル31から噴射される燃料Fとは別々に炉内35に噴射され、噴射直後に混じることなく炉内35に広がり、燃料ノズル31から離れた炉内35で混合される。また、高速で流れる燃焼用空気Aに炉内排ガスが大量に巻き込まれ、燃焼用空気流中の酸素濃度は低下する。このとき、燃焼用空気Aと燃料Fはその流速を急速に低下させかつ混合領域を広範囲に拡大していることから、本来は燃焼し難い条件である。しかし、燃焼用空気Aそのものが800℃以上例えば1000℃程度の高温であるため、このような条件でも容易に燃焼する。しかも、非量論比の条件で燃焼が生じかつ大量の炉内排ガスが巻き込まれているため、火炎温度の急激な上昇が抑制されたいわゆる緩慢燃焼を起こし、NOxの発生を抑える。この緩慢燃焼によって発生する燃焼ガスは前述した如く炉内35での熱利用の後、蓄熱体51,52の一部の領域を通過して炉外に排出される。ここで、蓄熱体1の切替は、例えば20秒〜90秒、好ましくは10秒程度の間隔で行うか、あるいは蓄熱体51,52を経由して排出される燃焼ガスが所定の温度例えば200℃程度となったときに行う。
【0019】
尚、上述の実施例は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施例では高温の燃焼用空気と燃料との混合制御による非量論比燃焼と交互燃焼による非定在火炎の形成とを同時に行う実施例について主に説明したが、場合によっては非定在火炎形成と非量論比燃焼とを別々に実施しても良く、この場合にも温度場の平坦化は達成される。
【0020】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明の燃焼加熱装置の燃焼制御方法は、800℃以上加熱された酸化剤と単一燃料ノズルから供給される燃料とを熱装置の炉内へ別々に噴射し炉内空間を利用して混合し燃焼させる一方、酸化剤の炉内への噴射位置及び炉内からの排ガスの排出位置とを炉内の手前側と奥側とに交互に切り替えることによって、燃焼を起こす位置を移動させることを可能としたものである。即ち、軸方向に対して高温領域の非定在制御の操作が行われる。そして、炉内に別々に噴射される高温の燃焼用空気と燃料との混合が、噴射量や噴射の時間的なずれ等及び大量の炉内排ガスの巻き込みによって非量 論比に制御され、この非量論比燃焼によっても温度場の平坦化が達成される。
【0021】
しかも、火炎の位置の移動あるいは火炎の高温領域の位置が炉の半径方向あるいは円周方向若しくは炉長方向のいずれか、あるいは全てにおいて移動することによって、火炎は一定位置に定まらない非定在火炎となり、ヒートフラックスパターンを移動させたり変化させる。このため、時間平均的に炉内温度場を上限温度以下に抑制する。例えば、火炎の周期的な混合変化を想定した場合、混合パターンが変化する毎に熱流束分布は図2のように非対称な分布も交互に変化を生じると考えられる。この際、熱流束の分布は、炉のほぼ中央を横切る面を中心として炉長方向に面対称となることが望ましい。なぜならそれら二つのパターンでつくられる熱流束分布の平均値(太い実線で示される)は図2示すように、定在火炎(一定の場所に形成される火炎)の場合に形成される1000℃の空気による熱流束の極大値よりも低いレベルで平坦化するからである。これを空気温度200℃の熱流束と比較した場合、実に約1.7倍の平均熱流束を炉内全体に均一に与えるようになり、伝熱効率が飛躍的に改善されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法を実施する加熱装置の一例を示す概略図である。
【図2】 本発明方法によって形成されるヒートフラックスパターンを示すグラフである。
【図3】 従来の燃焼法による200℃の燃焼用空気を用いる場合と1000℃の燃焼用空気を用いる場合とのヒートフラックスパターンを示すグラフである。
【図4】 メタンガスの可燃範囲と温度との関係を示すグラフである。
【図5】 温度場の高温化を実現する超過エンタルピー燃焼法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
51,52 蓄熱体
31 燃料ノズル
56 流路切替手段
53,57 酸化剤供給手段
Claims (1)
- 燃料を熱装置の炉内へ噴射する単一燃料ノズルと、前記単一燃料ノズルの周囲でかつ炉長方向にずらして800℃以上に加熱された酸化剤の前記炉内への供給と前記炉内からの燃焼ガスの排出とを交互に行う酸化剤供給手段とを配置し、燃料噴流の周囲から800℃以上に加熱された酸化剤を噴射すると共に燃焼ガスの排出を行う一方、前記酸化剤の噴射位置と前記燃焼ガスの排出位置とが炉内の手前側と奥側とに交互に切り替えられ、前記熱装置の炉内へ別々に噴射された800℃以上に加熱された酸化剤と燃料とを前記炉内空間を利用して混合し、非定在火炎を形成すると共に非量論比燃焼させ、温度場を平坦化させることを特徴とする燃焼加熱装置の燃焼制御方法。
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