JP2004002939A - 鉄基焼結合金製オイルポンプローター - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、必要に応じてMn:0.0025〜1.05%および/またはZn:0.001〜0.7%を含有し、さらに必要に応じてAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成を有し、かつその組織は原料粉末であるFe粉末が焼結されて生成した旧Fe粉末境界により区画されたFeを主成分としかつCuおよびOを含有する区画素地が集合して素地を形成し、この旧Fe粉末境界により区画された区画素地は、旧Fe粉末境界近傍におけるCuおよびOの濃度が区画素地中央部におけるCuおよびOの濃度よりも大きくなるように濃度分布している。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、寸法精度、強度および摺動性に優れた鉄基焼結合金製オイルポンプローターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、焼結技術が進歩し、各種機械部品も鉄基焼結合金で作られるようになり、寸法精度、強度および摺動性を必要とするオイルポンプローターについても鉄基焼結合金で大量に生産できるようになってきた。この鉄基焼結合金製オイルポンプローターは、Fe粉末、Cu粉末および黒鉛粉末からなる混合粉末にさらに酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガンなどの各種金属酸化物粉末を0.01〜0.20%添加した混合粉末をプレス成形し、焼結することにより製造する(例えば、特開平6−41609号公報参照)。
このようにして得られた鉄基焼結合金製オイルポンプローターは、原料粉末であるFe粉末が焼結されて生成した旧Fe粉末境界により区画されたFeを主成分としかつCuを含有する区画素地の集合体からなる素地中に、原料粉末として添加した金属酸化物粒子が主として気孔と旧Fe粉末境界に分散した組織を有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来のFe粉末、Cu粉末および黒鉛粉末からなる混合粉末にさらに酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガンなどの金属酸化物粉末を0.01〜0.20%添加した混合粉末をプレス成形し、焼結する方法で製造した鉄基焼結合金からなるオイルポンプローターは、寸法精度はある程度改善されるものの十分ではなく、さらに強度および摺動性に関しても未だ十分ではないところから、一段と優れた寸法精度、強度および摺動性に優れた鉄基焼結合金製オイルポンプローターが求められていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上述のような観点から、寸法精度、強度および摺動性に一層優れた鉄基焼結合金製オイルポンプローターを開発すべく研究を行った。その結果、
(a)Fe粉末、黒鉛粉末、Cu粉末および金属酸化物粉末を配合し、混合し、成形し、燒結することにより得られた鉄基焼結合金からなる従来のオイルポンプローターは、Fe粉末、黒鉛粉末およびCu粉末から成る混合粉末を焼結すると、焼結中にまずCu粉末が溶解してCu液相となり、このCu液相はFeに対して濡れ性が良いためにFe粉末境界に浸透し、Fe粉末同士の結合を分断させ、そのために焼結体の強度を低下させると共に焼結体を膨張させ、ひいては寸法精度の低下をもたらす、
(b)かかる焼結体の強度を低下させることなく寸法精度を向上させるためには、原料粉末として、Cu粉末に代えて、Fe:1〜10%、酸素:0.2〜1%を含むCu合金粉末を使用し、Fe粉末に黒鉛粉末および前記Fe:1〜10%、酸素:0.2〜1%を含むCu合金粉末を添加し、混合し、成形し、焼結すると、Cu合金液相とFe粉末の濡れ性が悪化し、Cu合金液相のFe粉末境界への浸透が抑制されるために焼結体の膨張が抑制されて寸法精度が向上し、さらにFe粉末同士の結合強度を低下させることがなく、また、酸素を金属酸化物粉末として添加するよりもCu合金粉末に固溶させた状態で添加するとところから、鉄基焼結合金組織の高Cu濃度部分に酸素が濃化した組織が生成され、かかる組織は従来の金属酸化物粒子が分散する組織に比べて摺動性が向上し、したがって、この方法で得られたCu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%を含有し残りがFeおよび不可避不純物からなる組成を有する鉄基焼結合金製オイルポンプローターは、寸法精度、強度および摺動性が共に一層優れる、
(c)さらに原料粉末として用いるCu合金粉末が、Fe:1〜10%、酸素:0.2〜1%の他にさらにMn:0.5〜15%を含むCu合金粉末であると、MnはCu合金粉末に含まれる酸素濃度を高めに維持することができ、焼結中に生じるCu合金液相の酸素濃度を高めて一層Fe粒子間へのCu合金液相の浸透を阻害し、Cu合金液相による焼結体の膨張が抑制されて焼結体の寸法精度がさらに向上し、鉄基焼結合金製オイルポンプローター組織のCu濃度の高い部分の酸素濃度を高めて摺動性を向上させる、
(d)さらに原料粉末として用いるCu合金粉末が、Fe:1〜10%、酸素:0.2〜1%の他にさらにZn:0.2〜10%を含むCu合金粉末であると、Znは、Cu合金粉末に含まれる酸素濃度を高めに維持することができるとともにCu液相よりも低温でFe中に拡散し、Fe中のZnはCu合金液相とFe粒との濡れ性を悪化させるために、Cu合金液相による焼結体の膨張が抑制されて焼結体の寸法精度がさらに向上し、Cu合金液相のFe粉末分断による強度低下を防止するとともに、摺動性を改善して耐焼付性を向上する、という研究結果が得られたのである。
【0005】
この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、
(1)Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されている鉄基焼結合金製オイルポンプロ−ター、
(2)Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Mn:0.0025〜1.05%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されている鉄基焼結合金製オイルポンプローター、
(3)Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Zn:0.001〜0.7%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されている鉄基焼結合金製オイルポンプローター、
(4)Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Mn:0.0025〜1.05%およびZn:0.001〜0.7%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されている鉄基焼結合金製オイルポンプローター、に特徴を有するものである。
【0006】
前記(1)記載のCu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成を有する鉄基焼結合金製オイルポンプローターは、原料粉末としてFe粉末、黒鉛粉末、並びにFe:1〜10%、酸素:0.2〜1%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成のCu合金粉末を所定量配合し、さらに潤滑剤であるステアリン酸亜鉛粉末またはエチレスビスアマイドとともにダブルコーンミキサーで混合し、プレス成形して圧粉体を作製し、圧粉体を窒素を含む水素雰囲気中、温度:1090〜1300℃で焼結することにより製造することができる。
【0007】
前記(2)記載のCu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Mn:0.0025〜1.05%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成を有する鉄基焼結合金製オイルポンプローターは、原料粉末としてFe粉末、黒鉛粉末、並びにFe:1〜10%、酸素:0.2〜1%、Mn:0.5〜15%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成のCu合金粉末を所定量配合し、さらに潤滑剤であるステアリン酸亜鉛粉末またはエチレスビスアマイドとともにダブルコーンミキサーで混合し、プレス成形して圧粉体を作製し、圧粉体を窒素を含む水素雰囲気中、温度:1090〜1300℃で焼結することにより製造することができる。
【0008】
前記(3)記載のCu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Zn:0.001〜0.7%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金製オイルポンプローターは、原料粉末としてFe粉末、黒鉛粉末、並びにFe:1〜10%、酸素:0.2〜1%、Zn:0.2〜10%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成のCu合金粉末を所定量配合し、さらに潤滑剤であるステアリン酸亜鉛粉末またはエチレスビスアマイドとともにダブルコーンミキサーで混合し、プレス成形して圧粉体を作製し、圧粉体を窒素を含む水素雰囲気中、温度:1090〜1300℃で焼結することにより製造することができる。
【0009】
前記(4)記載のCu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Mn:0.0025〜1.05%およびZn:0.001〜0.7%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成を有する鉄基焼結合金製オイルポンプローターは、原料粉末としてFe粉末、黒鉛粉末、並びにFe:1〜10%、酸素:0.2〜1%、Zn:0.2〜10%およびMn:0.5〜15%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成のCu合金粉末を所定量配合し、さらに潤滑剤であるステアリン酸亜鉛粉末またはエチレスビスアマイドとともにダブルコーンミキサーで混合し、プレス成形して圧粉体を作製し、圧粉体を窒素を含む水素雰囲気中、温度:1090〜1300℃で焼結することにより製造することができる。
【0010】
さらに、AlおよびSi成分はCu合金粉末の酸素濃度を高める作用があるので、AlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.01〜2%を含有したCu合金粉末を原料粉末として使用し、このCu合金粉末をFe粉末および黒鉛粉末とともに配合し、混合し、成形し、焼結することにより寸法精度、強度および摺動性に優れた鉄基焼結合金製オイルポンプローターを製造することができるという研究結果も得られたのである。
【0011】
この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、
(5)Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されている鉄基焼結合金製オイルポンプローター、
(6)Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Mn:0.0025〜1.05%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されている鉄基焼結合金製オイルポンプローター、
(7)Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Zn:0.001〜0.7%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されている鉄基焼結合金製オイルポンプローター、
(8)Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Mn:0.0025〜1.05%およびZn:0.001〜0.7%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されている鉄基焼結合金製オイルポンプローター、に特徴を有するものである。
【0012】
前記(5)記載のCu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成を有する鉄基焼結合金製オイルポンプローターは、原料粉末としてFe粉末、黒鉛粉末、並びにFe:1〜10%、酸素:0.2〜1%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.01〜2%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成のCu合金粉末を所定量配合し、さらに潤滑剤であるステアリン酸亜鉛粉末またはエチレスビスアマイドとともにダブルコーンミキサーで混合し、プレス成形して圧粉体を作製し、圧粉体を窒素を含む水素雰囲気中、温度:1090〜1300℃で焼結することにより製造することができる。
【0013】
前記(6)記載のCu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Mn:0.0025〜1.05%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成を有する鉄基焼結合金製オイルポンプローターは、原料粉末としてFe粉末、黒鉛粉末、並びにFe:1〜10%、酸素:0.2〜1%、Mn:0.5〜15%のうちの1種または2種を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.01〜2%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成のCu合金粉末を所定量配合し、さらに潤滑剤であるステアリン酸亜鉛粉末またはエチレスビスアマイドとともにダブルコーンミキサーで混合し、プレス成形して圧粉体を作製し、圧粉体を窒素を含む水素雰囲気中、温度:1090〜1300℃で焼結することにより製造することができる。
【0014】
前記(7)記載のCu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Zn:0.001〜0.7%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成を有する鉄基焼結合金金製オイルポンプローターは、原料粉末としてFe粉末、黒鉛粉末、並びにFe:1〜10%、酸素:0.2〜1%、Zn:0.2〜10%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.01〜2%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成のCu合金粉末を所定量配合し、さらに潤滑剤であるステアリン酸亜鉛粉末またはエチレスビスアマイドとともにダブルコーンミキサーで混合し、プレス成形して圧粉体を作製し、圧粉体を窒素を含む水素雰囲気中、温度:1090〜1300℃で焼結することにより製造することができる。
【0015】
前記(8)記載のCu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Mn:0.0025〜1.05%およびZn:0.001〜0.7%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成を有する鉄基焼結合金金製オイルポンプローターは、原料粉末としてFe粉末、黒鉛粉末、並びにFe:1〜10%、酸素:0.2〜1%、Zn:0.2〜10%およびMn:0.5〜15%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.01〜2%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成のCu合金粉末を所定量配合し、さらに潤滑剤であるステアリン酸亜鉛粉末またはエチレスビスアマイドとともにダブルコーンミキサーで混合し、プレス成形して圧粉体を作製し、圧粉体を窒素を含む水素雰囲気中、温度:1090〜1300℃で焼結することにより製造することができる。
【0016】
前記(1)〜(8)記載の成分組成を有する鉄基焼結合金製オイルポンプローターを構成する鉄基焼結合金の組織は、
原料粉末であるFe粉末が焼結されて生成した旧Fe粉末境界により区画されたFeを主成分としかつCuおよびOを含有する区画素地が集合して素地を形成し、この区画素地は、旧Fe粉末境界近傍におけるCuおよびOの濃度が区画素地中央部におけるCuおよびOの濃度よりも大きくなるように濃度分布していることがEPMA(電子プローブX線微量分析)により確認されている。
図1はEPMAによるこの発明の鉄基焼結合金金製オイルポンプローターの区画素地におけるCuおよびOの濃度分布図である。点の密集している部分がCuおよびOの濃度が高いことを示す。図1によると、旧Fe粉末境界により区画されたFeを主成分としCuおよびOを含有する区画素地が集合して素地を形成し、旧Fe粉末境界近傍のCuおよびOの濃度が区画素地中央部のCuおよびOの濃度よりも大きくなるように分布していることがわかる。
したがって、Feを主成分としCuおよびOを含有する前記(1)〜(8)記載の成分組成を有する鉄基焼結合金からなるオイルポンプローターの組織は、従来のような旧Fe粉末境界に沿って金属酸化物粒子が分散している組織とは相違する。
【0017】
次ぎに、この発明の寸法精度、強度および摺動性に優れた鉄基焼結合金製オイルポンプローターを構成する鉄基焼結合金の成分組成を前述のごとく限定した理由を説明する。
Cu:
Cuは、Fe粉末の焼結性を向上させ、得られる焼結体の寸法精度を向上させる成分であるが、鉄基焼結合金に含まれるCu含有量が0.5%未満では所望の効果が得られず、一方、7%を超えて含有すると、強度が低下するので好ましくない。したがって、Cu含有量は0.5〜7%に定めた。
【0018】
C:
Cは、鉄基焼結合金の強度および摺動性を向上させる成分であるが、その含有量が0.1%未満では所望の効果が得られず、一方、0.98%を越えて含有させると、焼結して得られた鉄基焼結合金の摺動性および靭性が低下するようになるので好ましくない。したがって、C量を0.1〜0.98%に定めた。
【0019】
酸素:
素地中素地の周辺部の高Cu濃度部における酸素を濃化させた鉄基焼結合金は、寸法精度、強度および摺動性を共に一層向上させるが、その含有量が0.02%未満では高Cu濃度部における酸素を十分に濃化させることができず、一方、0.3%を越えて含有させると、焼結して得られた鉄基焼結合金の強度が低下するようになるので好ましくない。したがって、鉄基焼結合金中に含まれる酸素量を0.02〜0.3%に定めた。この場合、酸素は金属酸化物粒子として分散していると相手攻撃性が増すので高Cu濃度部に固溶していることが必要である。
【0020】
Mn:
MnはCu合金粉末に含まれる酸素濃度を高めに維持することができ、焼結中に生じるCu合金液相の酸素濃度を高めて一層Fe粒子間へのCu合金液相の浸透を阻害し、Cu合金液相による焼結体の膨張が抑制されて焼結体の寸法精度がさらに向上し、鉄基焼結合金組織のCu濃度の高い部分の酸素濃度を高めて摺動性を向上させる作用を有するが、その含有量が0.0025%未満では所望の効果が得られず、一方、1.05%を越えて含有すると鉄基焼結合金の靭性が低下するようになるので好ましくない。したがって、鉄基焼結合金に含まれるMn量はMn:0.0025〜1.05%に定めた。
【0021】
Zn:
Znは、Cu合金粉末に含まれる酸素濃度を高めに維持することができるとともにCu液相よりも低温でFe中に拡散し、Fe中のZnはCu合金液相とFe粒との濡れ性を悪化させるために、Cu合金液相による焼結体の膨張が抑制されて焼結体の寸法精度がさらに向上し、Cu合金液相のFe粉末分断による強度低下を防止するとともに、摺動性を改善して耐焼付性を向上する作用を有するが、鉄基焼結合金に含まれるZn含有量が0.001未満では所望の効果が得られず、一方、鉄基焼結合金に含まれるZn含有量が0.7%を越えると、靭性が低下するようになるので好ましくない。したがって、鉄基焼結合金に含まれるZnは0.001〜0.7%に定めた。
【0022】
Al,Si:
Al,SiはCu合金粉末の酸素濃度を高める効果があるために、必要に応じて添加するが、AlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001%未満含有しても所望の効果が得られず、一方、鉄基焼結合金に含まれるAl,Siの含有量が0.14%を越えるようになると、かえって強度が低下するので好ましくない。したがって、鉄基焼結合金に含まれるAl,Siの含有量は0.001〜0.14%に定めた。
【0023】
【発明の実施の形態】
原料粉末として、平均粒径:80μmのアトマイズFe粉末、平均粒径:15μmの黒鉛粉末、並びに表1に示される平均粒径および成分組成を有するCu合金粉末A〜R、Cu粉末およびMnO粉末を用意した。
【0024】
【表1】
【0025】
これら原料粉末を表2〜表3に示される配合組成となるように配合し、さらに金型成形時の潤滑剤であるステアリン酸亜鉛粉末を外掛けで0.8%に当たる量だけ添加して混合し、成形圧力:600MPaでプレス成形して縦:10mm、横:10mm、長さ:50mmの寸法を有する棒状圧粉成形体を作製し、得られた棒状圧粉成形体を温度:1140℃、20分保持の条件でエンドサーミクガス雰囲気焼結することにより表2〜表3に示される成分組成の本発明オイルポンプローターを構成する鉄基焼結合金からなる棒状試験片(以下、本発明棒状試験片という)1〜16、比較オイルポンプローターを構成する鉄基焼結合金からなる棒状試験片(以下、比較棒状試験片という)1〜6および従来オイルポンプローターを構成する鉄基焼結合金からなる棒状試験片(以下、従来棒状試験片という)を作製した。
【0026】
前記本発明棒状試験片1〜16、比較棒状試験片1〜6および従来棒状試験片についてEPMAにより素地におけるCuおよびOの濃度分布を観察し、その結果を表2〜表3に示した後、本発明棒状試験片1〜16、比較棒状試験片1〜6および従来棒状試験片の寸法測定を行い、圧粉成形体基準寸法の寸法変化率を求め、その結果を表4に示すことにより寸法精度を評価した。またシャルピー衝撃試験によりシャルピー衝撃値を求め、その結果を表4に示した。さらに本発明棒状試験片1〜16、比較棒状試験片1〜6および従来棒状試験片をそれぞれ機械加工して引張り試験片を作製し、この引張り試験片を用いて引張り強度を測定し、その結果を表4に示した。
【0027】
さらに、本発明棒状試験片1〜16、比較棒状試験片1〜6および従来棒状試験片をそれぞれ機械加工して得られた縦:5mm、横:3mm、長さ:40mmの寸法を有する摩耗試験片と、外径:45mm、内径:27mmを有するSS330(一般構造用圧延鋼)製リングを用意した。この摩耗試験片を回転数:1500rpm、回転速度:3.5m/秒で回転しているリングに押し付け、押し付け荷重を増加させ、焼き付きが発生した荷重を測定し、その結果を表4に示した。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
表2〜表4に示される結果から、本発明棒状試験片1〜16と従来棒状試験片を比較すると、本発明棒状試験片1〜16は従来棒状試験片と比べて寸法変化率が小さいところから寸法精度が優れ、シャルピー衝撃値および引張り強度が高く、さらにリングの摩耗量が少ないところから摺動性に優れていることが分かる。しかし、この発明の範囲から外れている成分組成を有する比較棒状試験片1〜6は、寸法精度、シャルピー衝撃値、引張り強度、摩耗量のうちの少なくともいずれかが劣ることが分かる。したがって、本発明棒状試験片1〜16と同じ成分組成を有する鉄基焼結合金で構成されたオイルポンプローターは従来の鉄基焼結合金で構成されたオイルポンプローターに比べて寸法精度、強度および摺動性に一層優れていることがわかる。
【0032】
【発明の効果】
上述のように、この発明の鉄基焼結合金製オイルポンプローターは、寸法精度、強度および摺動性に一層優れており、機械産業の発展に大いに貢献し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】EPMAによる鉄基焼結合金素地中のCuおよびOの濃度分布を示す濃度分布図である。
Claims (9)
- 質量%で(以下、%は質量%を示す)Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されていることを特徴とする鉄基焼結合金製オイルポンプロ−ター。
- Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Mn:0.0025〜1.05%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されていることを特徴とする鉄基焼結合金製オイルポンプローター。
- Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Zn:0.001〜0.7%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されていることを特徴とする鉄基焼結合金製オイルポンプローター。
- Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Mn:0.0025〜1.05%およびZn:0.001〜0.7%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されていることを特徴とする鉄基焼結合金製オイルポンプローター。
- Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されていることを特徴とする鉄基焼結合金製オイルポンプローター。
- Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Mn:0.0025〜1.05%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されていることを特徴とする鉄基焼結合金製オイルポンプローター。
- Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Zn:0.001〜0.7%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されていることを特徴とする鉄基焼結合金製オイルポンプローター。
- Cu:0.5〜7%、C:0.1〜0.98%、酸素:0.02〜0.3%、Mn:0.0025〜1.05%およびZn:0.001〜0.7%を含有し、さらにAlおよびSiのうちの1種または2種を合計で0.001〜0.14%を含有し、残りがFeおよび不可避不純物からなる組成の鉄基焼結合金で構成されていることを特徴とする鉄基焼結合金製オイルポンプローター。
- 前記請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載のオイルポンプローターを構成する鉄基焼結合金は、
原料粉末であるFe粉末が焼結されて生成した旧Fe粉末境界により区画されたFeを主成分としかつCuおよびOを含有する区画素地が集合して素地を形成し、
この旧Fe粉末境界により区画された区画素地は、旧Fe粉末境界近傍におけるCuおよびOの濃度が区画素地中央部におけるCuおよびOの濃度よりも大きくなるように濃度分布している組織を有することを特徴とする鉄基焼結合金製オイルポンプローター。
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WO2004063409A1 (ja) * | 2003-01-08 | 2004-07-29 | Mitsubishi Materials Corporation | 鉄基焼結合金、鉄基焼結合金部材、それらの製造方法、およびオイルポンプローター |
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2002
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