JP2004002824A - 硬化性樹脂組成物及びそれを用いた積層体の製造方法 - Google Patents

硬化性樹脂組成物及びそれを用いた積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、ワックスなどの粘度降下剤を用いなくとも、常温で塗工可能であり、かつ硬化物の表面硬度が高く、硬化物が熱接着性を示す硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱接着性に優れた硬化性樹脂組成物は、成分(A)熱接着性重合体、成分(B)活性エネルギー線により重合可能なエチレン性不飽和化合物;及び成分(C)重合開始剤を含み、成分(A)の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(B)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)及び(2)
【数1】
0.1≦(Awt)/{(Awt)+(Bwt)}≦0.6    (1)
0.4≦(Bwt)/{(Awt)+(Bwt)}≦0.9    (2)
の関係を満足する。
【選択図】 無し

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びそれを用いた積層体の製造方法に関し、より詳しくは硬化後に優れた熱接着性を示す硬化性樹脂組成物、及びそれを用いた積層体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ラミネート材に用いられる接着層は、通常、熱可塑性樹脂をラミネート基材に塗工することにより形成されているが、塗工時には熱可塑性樹脂を溶融させて粘度を下げる必要がある。この場合、より容易に塗工できるようにするために、熱可塑性樹脂にワックス等の粘度降下剤を添加し、その溶融粘度を下げることが行われているが、形成された接着層の接着力が低下するという問題が生じる。
【0003】
このためワックス等の粘度降下剤を用いずとも溶融粘度が十分に低く、しかも得られる塗膜が良好な熱接着性を示す樹脂組成物として、熱硬化性樹脂に光硬化性モノマーを粘度降下剤として添加したホットメルト樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭52−129750号公報。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1で提案されたホットメルト樹脂組成物に用いられているベースポリマーは、PVAなどの極性の高い熱可塑性樹脂であるため、光硬化性モノマーであるアクリル系モノマーとの相溶性が低く、光硬化性モノマーをホットメルト樹脂組成物の固形分(硬化後に固形となる成分)中に30質量%以上となるように加えることができないという問題がある。このため、光硬化性モノマーを配合しているにもかかわらず、塗工時にはホットメルト樹脂組成物を溶融しなければならず、溶融時に単量体が蒸発したり、重合したりする危険性があった。
【0006】
また、耐擦傷性向上のために用いられるハードコート層を有するラミネート材を基材にラミネートする場合、特許文献1で提案されたホットメルト樹脂組成物は接着層の表面硬度が低く、ラミネート層の性能を低下させる懸念がある。
【0007】
本発明は、上記の従来の技術を解決するものであり、ワックスなどの粘度降下剤を用いなくとも、常温で塗工可能であり、かつ硬化物の表面硬度が高く、硬化物が熱接着性を示す硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点について鋭意検討した結果、硬化性樹脂組成物を、熱接着性重合体と活性エネルギー線で重合可能なエチレン性不飽和化合物と重合開始剤とから構成し、且つ熱接着性重合体とエチレン性不飽和化合物との配合割合を特定の範囲内とすることにより、硬化性樹脂組成物の硬化物が良好な熱接着性を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の成分(A)〜(C):
(A)熱接着性重合体
(B)活性エネルギー線により重合可能なエチレン性不飽和化合物;及び
(C)重合開始剤
を含み、成分(A)の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(B)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)及び(2)
【数3】
0.1≦(Awt)/{(Awt)+(Bwt)}≦0.6   (1)
0.4≦(Bwt)/{(Awt)+(Bwt)}≦0.9   (2)
の関係を満足する硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、基材上に硬化樹脂層が形成された積層体の製造方法であって、以下の工程(a)及び工程(b):
(a)基材上に、前述の本発明の硬化性樹脂組成物からなる塗膜を形成する工程;及び
(b)得られた硬化性樹脂組成物からなる塗膜に活性エネルギー線を照射することにより、硬化性樹脂組成物からなる塗膜に含まれる成分(B)のエチレン性不飽和化合物を重合させて熱接着性を有する硬化樹脂層を形成する工程
を含むことを特徴とする積層体の製造方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の硬化性樹脂組成物は、以下の成分(A)〜(C):
(A)熱接着性重合体;
(B)活性エネルギー線により重合可能なエチレン性不飽和化合物;及び
(C)重合開始剤
を含み、成分(A)の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(B)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)及び(2)
【0013】
【数4】
0.1≦(Awt)/{(Awt)+(Bwt)}≦0.6   (1)
0.4≦(Bwt)/{(Awt)+(Bwt)}≦0.9   (2)
の関係を満足する必要があり、接着性および硬化樹脂層の力学的性質を向上させる観点から、以下の式
【0014】
【数5】
0.15≦(Awt)/{(Awt)+(Bwt)}≦0.3   (5)
0.7≦(Bwt)/{(Awt)+(Bwt)}≦0.85   (6)
の関係を満足する硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0015】
上述の式において、「(Awt)/{(Awt)+(Bwt)}」の数値が0.1未満であると、硬化性樹脂組成物を硬化した時の硬化層の接着力が不十分となり、一方、0.6を超えると相対的に成分(B)のエチレン性不飽和化合物の含有量が減少し、硬化樹脂層の力学的性質が低下する恐れがある。また、「(Bwt)/{(Awt)+(Bwt)}」の数値が0.4未満であると、(B)のエチレン性不飽和化合物の含有量が減少し、硬化樹脂層の力学的性質が低下する恐れがあり、一方、0.9を超えると、相対的に成分(A)の熱接着性重合体の量が少なくなり、硬化層の接着力が不十分となる。
【0016】
また、上記硬化性樹脂組成物は、熱接着性および硬度を良好なものにするという観点から、成分(A)及び成分(B)の架橋密度の平均をv(mol/リットル(L))としたときに、さらに下記式(3)
【0017】
【数6】
1≦v≦6              (3)
の関係を満足することが好ましく、該架橋密度の平均(v)の値が1〜4.5の間にあることがより好ましい。
【0018】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、メタクリル樹脂などからなる被転写材との密着性を向上させる観点から、成分(A)及び成分(B)の溶解度パラメータ(sp値)の平均値をδとしたときに下記式(4)
【0019】
【数7】
9.5≦δ≦11        (4)
の関係を満足することが好ましく、溶解度パラメータ(sp値)の平均値(δ)が、9.5〜10.5の範囲であることがより好ましい。
【0020】
上記硬化性樹脂組成物において使用する成分(A)の熱接着性重合体は、硬化性樹脂組成物の硬化物に熱接着性を付与するための成分である。このような熱接着性重合体としては、硬化樹脂層に熱接着性を付与できるものであれば特に制限されないが、熱接着性に優れ、後述する成分(B)のエチレン性不飽和化合物との相溶性に優れるという観点から、ガラス転移温度(複数のガラス転移温度を持つ場合は、少なくとも一つ)が60℃以上180℃以下である熱可塑性重合体であることが好ましく、80℃以上140℃以下である熱可塑性重合体であることがより好ましい。また、上記熱可塑性重合体は、成分(B)のエチレン不飽和化合物との相溶性を向上させる観点から、非水溶性の熱可塑性重合体であることがより好ましい。
【0021】
かかる成分(A)の熱接着性重合体の具体例としては、メタクリル酸メチル系重合体、スチレン系重合体、ポリアクリロニトリル、ポリビニルクロライド、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、これらの重合体を含むランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などが挙げられる。これらのうち、例えば、メタクリル樹脂板に接着する場合には、被接着物との親和性の点から、メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体であることが好ましい。
【0022】
また、硬化樹脂層を形成するための硬化性樹脂組成物を、「はじき」や「ピンホール」を発生させやすい低濡れ性表面を有する層上に塗工する場合には、成分(A)の熱接着性重合体としては、アイソタクチック(以下、「アイソタクチック」を「iso−」と表記することがある)含有量の多いメタクリル酸メチル系重合体とシンジオタクチック(以下、「シンジオタクチック」を「syn−」と表記することがある)含有量の多いメタクリル酸メチル系重合体の混合物など、未硬化でゲル状態を呈する重合体を用いることが好ましい。これらのうちで、該混合物としては、例えば、該iso−ポリメタクリル酸メチルのアイソタクチシティーが50%以上であり、該syn−ポリメタクリル酸メチルのシンジオタクチシティーが40%〜80%の範囲内であることが好ましく、前者のアイソタクチシティーが80%以上であり、後者のシンジオタクチシティーが50%〜70%の範囲内であることがより好ましく、前者のアイソタクチシティーが90%以上であり、後者のシンジオタクチシティーが50%〜70%の範囲内であることがさらに好ましい。また、例えば、iso−ポリメタクリル酸メチルとsyn−ポリメタクリル酸メチルの混合比率は、iso−ポリメタクリル酸メチルとsyn−ポリメタクリル酸メチルの合計質量を100質量%とした場合、高分子鎖同士の疑似架橋を起こりやすくするため、syn−ポリメタクリル酸メチルの質量比が30〜70質量%の範囲内であることが好ましく、60〜70質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0023】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物を構成する成分(B)の重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、該硬化性樹脂組成物からなる硬化層が熱接着性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、分子内に少なくとも2個のエチレン系二重結合を有する化合物を含有し、重合開始剤の存在下において活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光、電子線、エックス線等)の照射により重合可能な化合物を挙げることができる。必要に応じて、更に、触媒系化合物の存在下又は不存在下においてカチオン重合可能なビニルエーテル系、エポキシ系またはオキセタン系の化合物等を併用することができる。ここで、本明細書においては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と、アクリレート基又はメタクリレート基を(メタ)アクリレート基と、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸とそれぞれ略記することがある。
【0024】
上記成分(B)の重合可能なエチレン性不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、フェニルエポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−[2−(メタ)アクリロイルエチル]−1,2−シクロヘキサンジカルボイミド、N−[2−(メタ)アクリロイルエチル]−1,2−シクロヘキサンジカルボイミド−1−エン、N−[2−(メタ)アクリロイルエチル]−1,2−シクロヘキサンジカルボイミド−4−エン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の単官能性(メタ)アクリレート系モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニル系モノマー;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジエポキシジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールのエチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ビス(4−(メタ)アクリルチオフェニル)スルフィドなどの2官能性(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンのテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンのテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホルマール、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジンなどの3官能以上の多官能性モノマー;ウレタンアクリレート、エステルアクリレートなどのオリゴアクリレートが挙げられる。これらのうち2官能以上の多官能性モノマーが好ましく用いられる。また、これらのエチレン性不飽和化合物は単独または2種以上で用いることができる。
【0025】
また、必要に応じて、活性エネルギー線で重合可能なビニルエーテル系、エポキシ系またはオキセタン系の化合物等を、成分(B)のエチレン性不飽和化合物と共に使用してもよい。
【0026】
上記ビニルエーテル系化合物の具体例としては、エチレンオキサイド変性ビスフェノール−A−ジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノール−F−ジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性カテコールジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性レゾルシノールジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ハイドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性−1,3,5,ベンゼントリオールトリビニルエーテルなどが挙げられる。
【0027】
上記エポキシ系化合物の具体例としては、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、フェノールノボラックのグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
また、オキセタン化合物の具体例としては3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンなどが挙げられる。
【0029】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前述のように上記成分(A)及び成分(B)の架橋密度の平均をv(mol/L)としたときに、さらに下記式(3)
【0030】
【数8】
1≦v≦6               (3)
の関係を満足することが好ましいが、かかる架橋密度の平均(v)は、硬化物の表面硬度の指標でもあり、以下の方法により算出することができる。
【0031】
成分(A)の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(B)の配合量(質量部)を(Bwt)とし、更に成分(B)が活性エネルギー線により重合可能なn種類のエチレン性不飽和化合物からなる樹脂組成物において、fn(n=1、2、・・・n)を各成分(B)の1分子あたりの官能基数とし、Mwn(n=1、2、・・・n)を各成分(B)の分子量とし、Rn(n=1、2、・・・n)を成分(B)中の各成分(B)のモル比率(mol%)とし、Mwbを成分(B)の平均分子量とし、fbを成分(B)の平均官能基密度(mol/L)とし、vbを成分(B)の架橋密度(mol/L)とし、vを成分(A)及び成分(B)の架橋密度の平均(mol/L)とすると、架橋密度の平均(v)は、以下式で表すことができる。
【0032】
【数9】
(v)=(vb)×(Bwt)/(Awt+Bwt)
【0033】
但し、(vb)、fbおよびMwbは次の式で表される。
【0034】
【数10】
(vb) = ((fb)−1)×2×1000/(Mwb)
fb = Σ{(fn)×Rn/100}
Mwb = Σ{(Mwn)×Rn/100}
【0035】
例えば、成分(A)としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)30質量部、成分(B)としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)56質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)14質量部からなる樹脂組成物の場合について、架橋密度の平均(v)を計算する場合、まず、下記表1の値を用いて、fbおよびMwbを算出する。
【0036】
【表1】
Figure 2004002824
【0037】
【数11】
fb = (3×82.6/100+4×17.3/100) = 3.2
Mwb = (296.3×82.6/100+352.3×17.3/100) = 305.7
【0038】
次に、得られたfb及びMwbの値から(vb)を求め、得られた(vb)から架橋密度の平均値(v)が求まる。
【0039】
【数12】
(vb) = (3.2−1)×2×1000/305.7 = 14.2
(v) = 14.4×70/(30+70) = 9.9
【0040】
更に、前述したように、成分(A)及び成分(B)の溶解度パラメータ(sp値)の平均値をδとしたときに、以下式(4)の関係を満足することがより好ましい。
【0041】
【数13】
9.5≦δ≦11.0         (4)
【0042】
ここで、溶解度パラメータ(sp値)の平均値(δ)は、基材との密着性を示す指標であり、以下に説明するように算出することができる。
【0043】
即ち、各成分(A)及び成分(B)の溶解度パラメータ(sp値)は、Fedorsにより提案されている算出方式を用いて算出することができる(実学高分子(向井淳二、金城徳幸著、講談社サイエンティフィク発行、1981年、P71−77;POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE, FEBRUARY, 1974, Vol.14,No.2)。例えば、成分(A)と成分(B)の合計がn(nは2以上の整数)種類の成分からなる樹脂組成物において、溶解度パラメータ(sp値)の平均値は次式から求めることができる。
【0044】
【数14】
δ=Σ(δn×Rn)
(式中、δは、成分(A)及び成分(B)の溶解度パラメータ(sp値)の平均値(cal/cm1/2であり、δnは各成分(A)及び成分(B)の溶解度パラメータ(sp値:(cal/cm1/2)であり、Rn(n=1、2、・・・n)は各成分(A)及び成分(B)の(成分(A)+成分(B))に対するモル比率(mol%)である。)
【0045】
ここで、δnは次の式で表される。
【0046】
【数15】
δn = (Σ(Δei))/Σ(Δvi))}1/2
(式中、Δeiは、各原子または原子団の蒸発エネルギー(cal/mol)であり、Δviは、各原子または原子団のモル体積(cm/mol)を意味する。)
【0047】
なお、ガラス転移温度(Tg)が25℃以上の化合物についてはモル体積(Δvi)に次の値を加算する。
【0048】
【数16】
n<3のとき +Δvi=4n
n≧3のとき +Δvi=2n
(式中、nは高分子の最小繰り返し単位中の主鎖骨格原子数である。)
【0049】
以下に、溶解度パラメータ(sp値)の平均値δの計算例を示す。
【0050】
各原子または原子団の蒸発エネルギー(Δei)及び各原子または原子団のモル体積(Δvi)は主として、実学高分子(向井淳二、金城徳幸著、講談社サイエンティフィク発行、1981年、P71−77)の値を参照した。
【0051】
例えば、成分(A)としてポリメタクリル酸メチル(PMMA、Mw10万)30質量部、成分(B)としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)56質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)14質量部からなる樹脂組成物で、成分(A)及び成分(B)の溶解度パラメータ(sp値)の平均値(δ)を算出する場合、まず、表2〜表4の基礎データから各成分のδ値(即ち、PMMA(δ1)、TMPTA(δ2)及びPETA(δ3))を算出する。
【0052】
【表2】
<PMMA(δ1)>
Figure 2004002824
【0053】
【数17】
δ1 = {(Σ(Δei))/(Σ(Δvi))}1/2 = (8550/104.1)1/2 = 9.1
【0054】
【表3】
<TMPTA(δ2)>
Figure 2004002824
【0055】
【数18】
δ2 = {(Σ(Δei))/(Σ(Δvi))}1/2 = (25275/259.0)1/2 = 9.9
【0056】
【表4】
<PETA(δ3)>
Figure 2004002824
【0057】
【数19】
δ3 = {(Σ(Δei))/(Σ(Δvi))}1/2 = (30510/284.8)1/2 = 10.4
【0058】
以上の各成分のδ値をまとめると表5のようになる。
【0059】
【表5】
Figure 2004002824
注:Mwは各成分の分子量(但し、重合体の場合は繰り返し単位の分子量)を表す。
【0060】
従って、表5に示した、成分(A)及び成分(B)の溶解度パラメータ(sp値)の平均値(δ)より次のように求めることができる。
【0061】
【数20】
δ = 9.1×0.567+9.9×0.358+10.4×0.075 = 9.5
【0062】
また、本発明の硬化性樹脂組成物を構成する成分(C)の重合開始剤としては、硬化手段である活性エネルギー線の種類(紫外線、可視光、電子線等)に応じて適宜選択することができる。また、光重合を行う場合には、光重合開始剤を使用し、その他に光増感剤、光促進剤などから選ばれる1種類以上の公知の光触媒化合物を併用することが望ましい。
【0063】
上記光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントフルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−オキサントン、カンファーキノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等が挙げられる。また、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する光重合開始剤も用いることができる。
【0064】
光重合開始剤の硬化性樹脂組成物中の含有量は、希釈剤を除いた固形分(硬化後に固形化する成分も含む)中に好ましくは0.1重量%以上10重量%以下、より好ましくは3重量%以上5重量%以下である。
【0065】
本発明において、光重合を促進させるために光重合開始剤と共に光増感剤を使用してもよい。光増感剤の具体例としては、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等を挙げることができる。
【0066】
また、本発明においては、光重合を促進させるために光重合開始剤と共に光促進剤を使用してもよい。光促進剤の具体例としては、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、安息香酸2−ジメチルアミノエチルなどを挙げることができる。
【0067】
また、熱接着性を有する硬化樹脂層を形成する際、硬化性樹脂組成物を薄膜で塗工するためには、硬化性樹脂組成物には希釈剤を加えることができる。その際、希釈剤の添加量は、目的とする硬化樹脂組成物からなる層の膜厚等に合わせて任意の量を加えることができる。
【0068】
かかる希釈剤としては、一般の樹脂塗料に用いられている希釈剤であれば特に制限はないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチルなどのエステル系化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジオキサン等のエーテル系化合物;トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族化合物;塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルムなどのハロゲン系炭化水素;メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノールなどのアルコール化合物、水などを挙げることができる。
【0069】
本発明の硬化性樹脂組成物には、さらに成分(D)として下記化学式(I)
【0070】
【化2】
SiX4−n             (I)
(式中、Rは水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)又はエポキシ基含有有機基(例えば、エポキシシクロヘキシル基、グリシジル基など)を表し、Rが2または3個存在する場合、それらは同種であっても異種であってもよい。Xはヒドロキシル基、アルコキシル基(例えばメトキシ基、エトキシ基など)、アルコキシアルコキシル基(例えば、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基など)又はハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)を表し、Xが2個または3個存在する場合、それらは互いに同種であっても異種であってもよい。nは1〜3の整数を表す)
【0071】
で示されるシラン化合物を含有させることができる。硬化性樹脂組成物に上記シラン化合物を含有させることにより、塗料との密着性が確保しにくく、表面張力の低い表面を有する離型性べースフィルム、シロキサン結合主体の層などの表面上に該硬化性樹脂組成物を塗布した場合でも、「はじき」や「ピンホール」等のない均一な層を形成することができ、硬化後においても均一な膜を形成し基材等との密着性をより強固に確保することができる。
【0072】
かかる上記化学式(I)で表されるシラン化合物の具体例としては、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−エポキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルジクロロシランなどが挙げられる。
【0073】
上記成分(D)のシラン化合物の硬化性樹脂組成物中の含有量は、膜の密着性をより強固にするため、硬化性樹脂組成物の固形分中10〜15質量%程度であることが好ましい。
【0074】
硬化樹脂層を形成するための硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、更に、無機フィラー、重合禁止剤、着色顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、分散剤、光拡散剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、非反応性ポリマー、近赤外線吸収材等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0075】
また、硬化性樹脂組成物は、以上説明した成分(A)〜(C)と、必要に応じて配合される成分(D)などの他の成分とを、常法に従って均一に混合することにより調製することができる。
【0076】
また、本発明の、基材上に硬化樹脂層が形成された積層体の製造方法は、以下の工程(a)及び工程(b):
(a)基材上に、前述の硬化性樹脂組成物からなる塗膜を形成する工程;及び
(b)得られた硬化性樹脂組成物からなる塗膜に活性エネルギー線を照射することにより、硬化性樹脂組成物からなる塗膜に含まれる成分(B)のエチレン性不飽和化合物を重合させて熱接着性に優れた硬化樹脂層を形成する工程
を含むことを特徴とする。
【0077】
すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物は、基材上に少なくとも硬化樹脂層が積層された積層体を製造する際の硬化樹脂層の原料として好ましく使用することができ、また、このような積層体は、以下の工程(a)及び工程(b)を含む製造方法に従って製造することができる。
【0078】
工程(a)
まず基材上に本発明の硬化性樹脂組成物からなる膜を、含浸法、凸版印刷法、平板印刷法、凹版印刷などで用いられるロールを用いた塗工法、基材に噴霧するようなスプレー法、カーテンフローコートなどにより形成する。
【0079】
基材としては、板状またはフィルム状の、金属(鉄、アルミニウムなど)基板、ガラス基板を含むセラミック基板、アクリル樹脂、PET、ポリカーボネートなどのプラスチック基板、熱硬化性樹脂基板等を使用することができる。
【0080】
なお、硬化性樹脂組成物中に希釈剤(溶剤)が含まれている場合、希釈剤は工程(b)を実施する前に予め除去することが好ましい。この場合、通常は加熱により蒸発させる。その方法としては加熱炉、遠赤外炉または超遠赤外炉などを用いることができる。
【0081】
工程(b)
工程(a)で得られた硬化性樹脂組成物からなる膜に対し活性エネルギー線を照射することにより硬化させ、熱接着性に優れた硬化樹脂層を形成する。これにより、塗料に対し濡れ性が悪い基材を使用した場合であっても、基材上に均一で薄い(例えば、0.01μm以上10μm以下)硬化樹脂層が形成された積層体を得ることができる。
【0082】
活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、レーザー、電子線、エックス線などの広範囲のものを使用することができるが、これらの中でも紫外線を用いることが実用性の点から好ましい。具体的な紫外線発生源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0083】
なお、このようにして得られる積層体は2層構造に限られず、熱可塑性、熱硬化性、光硬化性の材料の層を予め設けていても良く、あるいは硬化樹脂層形成後に改めて設けても良い。
【0084】
本発明による硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層は、熱接着性重合体を用い、且つハードコート機能を有するため、その性能は通常鉛筆硬度がH以上であり、アセトン塗布の前後におけるヘイズ値の差(ΔH)が0.3〜40である。かかる硬化樹脂層の性能は、耐アセトン試験と鉛筆硬度測定により判別することができる。
【0085】
かかる性能を有する硬化樹脂層を有する積層体は、熱接着性を有し、且つ表面硬度が高いため、壁紙等に用いられるラミネート材などの物品に有利に適用することができる。
【0086】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0087】
なお、実施例等において特に断りのないかぎり、「部」は「質量部」を示す。また、実施例等における評価方法は、以下の方法で実施した。
【0088】
(接着力の測定方法)
得られたラミネート材を、樹脂板温度90℃、ロール温度160℃、板送り速度1m/minの条件下に樹脂板に熱接着し、JIS K−6854(1994年)に準じて180°剥離試験を行い、接着力を測定した。
【0089】
(鉛筆硬度の測定)
JIS K5600−5−4(1999年)に準じて、転写物の表面の鉛筆硬度を測定した。
【0090】
(被覆面積の測定)
ラミネート材を5cm×5cmにカットし、これを100マスになるように区切り、硬化樹脂層がフィルム上を、はじきやピンホールの発生が観察されない状態で完全に覆っているマス目の数を測定し、これを被覆面積として百分率(%)で求めた。
【0091】
また、実施例で用いる熱接着性重合体は、市販品以外は、次の方法により合成した。
【0092】
合成例1[iso‐PMMAの調整(Mw 5万 アイソタクチシチー 93%)]
300ml三つ口フラスコを窒素置換し、トルエン28ml、シクロヘキサン112ml、フェニルマグネシウムブロマイドエーテル溶液(0.77モル/リットル)7.4mlを加えた後、10℃に冷却した。
【0093】
次いで、メチルメタクリレート30mlを90分間かけて滴下し、6時間攪拌した後、メタノール0.5mlを加え反応を停止させた。次に、反応液をろ過後、残渣をメタノールで洗い、乾燥させiso−PMMAを得た。GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)は5万であり、NMR測定の結果アイソタクチシチィーは93%であった。
【0094】
実施例1〜7及び比較例1〜2
表6に示す配合(質量部)の組成物20質量部をトルエン50質量部とイソプロパノール30質量部とからなる希釈剤に溶解した光硬化性樹脂組成物を調製し、これを38μm厚の易接着処理したPETフィルム上にバーコータで20μmの厚さに塗布し、140℃で30秒乾燥後、UV照射(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm、ウシオ電機(株)製)を2回行って硬化させて硬化樹脂層(熱接着層)を形成し、ラミネート材を得た。
【0095】
得られたラミネート材を、前記の方法に従い、メタクリル樹脂板に熱接着して180°剥離試験を行い接着力を測定した。
【0096】
また、調製した光硬化性樹脂組成物を2mm厚のメタクリル樹脂板上にバーコータで20μmの厚さに塗布し、140℃で30秒乾燥後、UV照射(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm、ウシオ電機(株)製)を2回行って硬化させて積層板を得た後、表面硬度(鉛筆硬度)を測定した。
【0097】
なお、表6に示したそれぞれの重合体のガラス転移温度(Tg)はメトラー社製TA 4000によって測定した値である。
【0098】
【表6】
Figure 2004002824
【0099】
表6注:
*1:商品名 パラペットHR−L(株)クラレ製(シンジオタクチシチー60%)
*2:商品名 ポリスチレン(重合度3,000) 和光純薬工業(株)製
*3:商品名 クラミロンU 1780 (株)クラレ製
*4:商品名ビスコート#540、大阪有機化学工業(株)製
*5:商品名M315、東亜合成(株)製
*6:商品名M600A、共栄社化学(株)製
*7:商品名KBM5103(γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン) 信越化学工業(株)製
*8:商品名DPHA、日本化薬(株)製
*9:商品名イルガキュア184 日本チバガイギー(株)製
*10:PMMA(Mw5万 アイソタクチシチー93% 合成例1参照)
【0100】
表6の実施例1〜7の結果から、熱接着性重合体とエチレン性不飽和化合物と光重合開始剤とからなる硬化性樹脂組成物であって、本発明の要件を満足する場合には、良好な接着性を示すと共に、表面硬度も良好な塗膜が得られることがわかる。
【0101】
これに対し、比較例1および2の結果から、本発明の要件を満足しない場合には、良好な接着性を示さないことがわかる。
【0102】
実施例8
38μmの易接着処理を施したPETフィルム上に、メチルトリメトキシシラン(商品名KBM13、信越化学工業(株)製)14質量部、コロイダルシリカ(商品名 MEK−ST、日産化学工業(株)製)18質量部、酢酸0.2質量部、メチルエチルケトン68重量部からなる混合溶液をバーコータで20μmの厚さに塗布し、150℃で2分間乾燥させた。
【0103】
次いで、PMMA(商品名 パラペットHR−L(株)クラレ製)3質量部、ポリウレタン(商品名 クラミロンU 1780(株)クラレ製:Tg−41℃、120℃)2質量部、EP変性BPADA (商品名ビスコート#540、大阪有機化学工業(株)製)10質量部、DPEHAD(商品名DPHA、日本化薬(株)製)5質量部、光重合開始剤(商品名イルガキュア184 日本チバガイギー(株)製)0.6質量部、トルエン49.4質量部、イソプロパノール30質量部からなる光硬化性樹脂組成物を、上記で得られたPETフィルム塗布面上にバーコータで20μmの厚さに塗布し、140℃で30秒乾燥後、UV照射(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm、ウシオ電機(株)製)を2回行って硬化させて硬化樹脂からなる熱接着層を形成し、ラミネート材を得た。
【0104】
得られたラミネート材を5cm×5cmにカットし、100マスになるように区切り、光硬化性樹脂組成物の被覆面積を測定したところ100%であった。
【0105】
次に、得られたラミネート材に対し碁盤目テープ法(JIS K5400)によって接着強度を測定したところ10点満点中0点であった。
【0106】
また、得られたラミネート材をメタクリル樹脂板に熱接着(板温90℃、ロール温度160℃、板送り速度1m/min)し、180度剥離試験(JIS K6854)を行い熱接着性硬化樹脂層の接着力を測定したところ50mN/cmの接着強度が得られた。
【0107】
実施例9
38μmの易接着処理を施したPETフィルム上に、メチルトリメトキシシラン(商品名KBM13、信越化学工業(株)製)14質量部、コロイダルシリカ(商品名 MEK−ST、日産化学工業(株)製)18質量部、酢酸0.2質量部、メチルエチルケトン68重量部からなる混合溶液をバーコータで20μmの厚さに塗布し、150℃で2分間乾燥させた。
【0108】
次いで、PMMA(商品名 パラペットHR−L(株)クラレ製)3質量部、ポリウレタン (商品名 クラミロンU 1780(株)クラレ製)2質量部、EP変性BPADA (商品名ビスコート#540、大阪有機化学工業(株)製)9質量部、DPEHA (商品名DPHA、日本化薬(株)製)5質量部、光重合開始剤(商品名イルガキュア184 日本チバガイギー(株)製)0.6質量部、メチルトリメトキシシラン(商品名KBM13、信越化学工業(株)製)1質量部、トルエン49.4質量部、イソプロパノール30質量部からなる光硬化性樹脂組成物を、上記で得られたPETフィルム塗布面上にバーコータで20μmの厚さに塗布し、140℃で30秒乾燥後、UV照射(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm、ウシオ電機(株)製)を2回行って硬化させて硬化樹脂からなる熱接着層を形成し、ラミネート材を得た。
【0109】
得られたラミネート材の被覆面積を測定したところ100%であった。
【0110】
次に、得られたラミネート材に対し碁盤目テープ法(JIS K5400)によって接着強度を測定したところ10点満点中10点であった。
【0111】
また、得られたラミネート材をメタクリル樹脂板に熱接着(板温90℃、ロール温度160℃、板送り速度1m/min)し、180度剥離試験(JIS K6854)を行い熱接着性硬化樹脂層の接着力を測定したところ30mN/cmの接着強度が得られた。
【0112】
実施例10
38μmの易接着処理を施したPETフィルム上に、メチルトリメトキシシラン(商品名KBM13、信越化学工業(株)製)14質量部、コロイダルシリカ(商品名 MEK−ST、日産化学工業(株)製)18質量部、酢酸0.2質量部、メチルエチルケトン68重量部からなる混合溶液をバーコータで20μmの厚さに塗布し、150℃で2分間乾燥させた。
【0113】
次いで、メタクリル樹脂(商品名 パラペットHR−L(株)クラレ製)5質量部、EP変性BPADA (商品名ビスコート#540、大阪有機化学工業(株)製)4質量部、トリアジントリアクリレート (商品名M315、東亜合成(株)製)2質量部、EP変性フェノキシアクリレート(商品名M600A、共栄社化学(株)製)4質量部、APTMS(商品名KBM5103 信越化学工業(株)製)4質量部、光重合開始剤(商品名イルガキュア184 日本チバガイギー(株)製)0.6質量部、メチルトリメトキシシラン(商品名 KBM13、信越化学工業(株)製)1量部、トルエン49.4質量部、イソプロパノール30質量部からなる光硬化性樹脂組成物を、上記で得られたPETフィルム塗布面上にバーコータで20μmの厚さに塗布し、140℃で30秒乾燥後、UV照射(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm、ウシオ電機(株)製)を2回行って硬化させて硬化樹脂からなる熱接着層を形成し、ラミネート材を得た。
【0114】
得られたラミネート材の被覆面積を測定したところ100%であった。
【0115】
次に、得られたラミネート材に対し碁盤目テープ法(JIS K5400)によって接着強度を測定したところ10点満点中10点であった。
【0116】
また、得られたラミネート材をメタクリル樹脂板に熱接着(板温90℃、ロール温度160℃、板送り速度1m/min)し、180度剥離試験(JIS K6854)を行い熱接着性硬化樹脂層の接着力を測定したところ50mN/cmの接着強度が得られた。
【0117】
なお、得られたラミネート材の硬化性樹脂層上にJIS K 5600−6−1に記載の方法により、アセトンを100μmの膜厚で塗布後乾燥するまで常温で放置した。アセトン塗布の前後におけるヘイズ値の差(ΔH)を測定したところ20.3であり、鉛筆硬度は2Hであった。
【0118】
【発明の効果】
本発明の硬化性樹脂組成物によれば、高い表面硬度と良好な熱接着性が得られるので、壁紙等に用いられるラミネート材等の物品に有利に適用することができる。

Claims (9)

  1. 以下の成分(A)〜(C):
    (A)熱接着性重合体;
    (B)活性エネルギー線により重合可能なエチレン性不飽和化合物;及び
    (C)重合開始剤
    を含み、成分(A)の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(B)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)及び(2)
    Figure 2004002824
    の関係を満足する硬化性樹脂組成物。
  2. 硬化性樹脂組成物が、成分(A)及び成分(B)の架橋密度の平均をv(mol/L)としたときに、さらに式(3)
    Figure 2004002824
    の関係を満足する請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 成分(A)の熱接着性重合体が、ガラス転移温度が60℃以上180℃以下の熱可塑性重合体である請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
  4. 熱可塑性重合体が、メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体である請求項3記載の硬化性樹脂組成物。
  5. メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体が、アイソタクチシチーが50%以上であるメタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体とシンジオタクチシチーが40〜80%であるメタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体からなる混合物である請求項4記載の硬化性樹脂組成物。
  6. 更に成分(D):
    (D)下記化学式(I)で表されるシラン化合物
    Figure 2004002824
    (式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、炭素−炭素二重結合含有有機基またはエポキシ基含有有機基を表し、Rが2または3個存在する場合、それらは互いに同種であっても異種であってもよい。Xはヒドロキシル基、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基又はハロゲン原子を表し、Xが2または3個存在する場合、それらは互いに同種であっても異種であってもよい。nは1〜3の整数を表す。)
    を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
  7. 基材上に硬化樹脂層が形成された積層体の製造方法であって、以下の工程(a)及び工程(b):
    (a)基材上に、請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物からなる塗膜を形成する工程;及び
    (b)得られた硬化性樹脂組成物からなる塗膜に活性エネルギー線を照射することにより、硬化性樹脂組成物からなる塗膜に含まれる成分(B)のエチレン性不飽和化合物を重合させて熱接着性を有する硬化樹脂層を形成する工程
    を含むことを特徴とする積層体の製造方法。
  8. 請求項7記載の製造方法によって、基材上に少なくとも1つの硬化樹脂層が形成された積層体。
  9. 硬化樹脂層にアセトンを塗布した際、塗布前のヘイズ値と塗布後のヘイズ値との差が0.3〜40であり、且つ硬化樹脂層の鉛筆硬度がH以上である請求項8記載の積層体。
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