JP2004002274A - 化粧料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】嵩比重が5〜20mL/gである板状ポリマー粉体を含有することを特徴とする化粧料。特に、板状ポリマー粉体は、スチレン類、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類のポリマーから成り、そのポリマーを溶解した重合体溶液を常温で液体の液面上に展開し、脱溶剤して薄膜を形成させ、この薄膜を粉砕することにより得られたものである。板状ポリマー粉体の厚さは、0.1〜20μmである。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の嵩比重範囲の板状ポリマー粉体を含有することにより、化粧料中での凝集軽減により、分散性、崩壊性等に優れ、他の成分との混合性が良く、使用時のとれも良い化粧料に関し、更に詳細には、肌に塗布すると、柔らかな感触を有し、スライド性が高く、かつ肌への密着感があり、また経時での化粧膜の色沈みが少なく、透明感の持続する優れた化粧効果を有し、粉体化粧料、油性化粧料、乳化化粧料等とすることのできる化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、化粧料の体質粉体としては、タルク、マイカ、セリサイトなどの天然鉱物の粉体が用いられていた。このうちマイカやセリサイトなどの板状粉体はスライド性があり、化粧膜にツヤ感や透明感を付与できるものの、天然由来のため、合成マイカ等に比べると厚さが均一ではなく、比重が重いという問題があった。従って、化粧料中に配合した場合、分散性に劣り、凝集しやすく、肌上でのスライド性についても、合成マイカ等と比較するとやや劣るものであった。
【0003】
また、天然由来の板状粉体は夾雑物を含有することがあり、化粧料として肌に塗布した場合、肌から分泌される皮脂により経時的に化粧膜の色がくすみ、透明感が持続しないといった問題があった。さらに、天然由来の板状粉体は有機粉体と比較して、化粧料に配合した場合に塗布時の柔らかな感触や肌への密着感に欠けるという問題もあった。
【0004】
このため、従来から、合成樹脂原料を用いた板状粉体の開発が行われており、いくつかの方法が知られていた。例えば、高分子重合体や共重合体からなる合成樹脂を目的の大きさに切削したり、ガラスビーズなどにより圧縮したり、あるいは平板上で固化させるといった方法が知られていたが、いずれの方法も、薄くて均一な厚さの板状粉体を製造することは難しく、充分なスライド性を発揮する粉体を調製することはできなかった。
【0005】
上記問題を改善したものとして、不純物を減らした合成雲母や、合成樹脂の球状粉末を押圧や剪断により扁平にした有機系の板状粉体の開発もなされていた。しかし、これらの板状粉体も薄くて比重の小さい均一な厚さのものに加工することは非常に難しく、充分な強度を持ちつつも、ソフトな感触やスライド性があり、ずるつくことがなく、肌への密着感、透明感を有するものは得られていないという理由から、油性成分の少ない特定の剤型での展開に限定されがちで、油性化粧料、特に、棒状の油性化粧料には従来あまり適用されていなかった。同様、粉体の分散性に劣るため、粉体の凝集、沈降等が生じ、肌への密着感の点や、スライド性等の使用感の面での問題の他、外観も美しくなく、また、外観色とつけ色にギャップもあるという理由から、乳化化粧料にもあまり適用されていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、嵩高で均一な厚さの合成樹脂の板状粉体を化粧料に配合することにより、化粧料中での分散性に優れ、肌に塗布する際には柔らかな感触と高いスライド性を有し、肌への密着感、化粧膜の透明感に優れ、また経時での化粧膜の色ぐすみがなく、透明感の持続する化粧料を提供することをその課題とするものである。
【0007】
より具体的には、皿等に充填した粉体成分を主体とする製品では、上記粉体を配合することにより使用時のとれが良く、肌に塗布する際の感触の柔らかさ、スライド性に優れつつ、肌への密着感があり、透明感のある化粧膜が持続する製品を、固形油脂および/または油のゲル化剤を配合した油性化粧料においては、化粧料としての充分な強度を持ちつつも柔らかでしなやかな感触を有し、塗布時のスライド性や、肌への密着感が高く、均一で透明感のある化粧膜を形成し、にじみ防止効果にも優れ、化粧効果の持続する化粧料、特に、着色料を含有するメーキャップ化粧料においては、透明感のある美麗な外観を有し、外観色と付け色とのギャップも少ない油性化粧料を提供することを課題とするものである。
【0008】
また、油性成分と水性成分を界面活性剤等で乳化した乳化化粧料においては、上記粉体を配合することにより、化粧料中での分散性と乳化物の経時安定性に優れ、きしみ感やずるつきがなくスライド性及び肌への密着感が良好で、化粧膜の柔軟性がある乳化化粧料、特に、メーキャップ化粧料においては、粉体の沈降や凝集がなく均一で美麗な外観を呈し、外観と付け色のギャップもなく、経時での化粧膜の色沈みがなく均一で美しい化粧膜の持続性に優れた乳化化粧料を提供することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の嵩比重範囲の板状ポリマー粉体、特にポリマー溶液を、液体表面に展開して薄膜とし、これを乾燥、粉砕することにより調製された、比重が小さく均一な厚みを有する板状ポリマー粉体を化粧料中に含有させることにより、化粧料の分散安定性に優れ、使用時の取れも良く、従来の有機板状粉体では実現できなかった肌に均一に伸び広がる良好なスライド性や密着感と、天然由来のマイカ等にはない有機粉体特有の柔らかくしなやかな感触を与えることができ、しかも、経時的な化粧膜の色ぐすみの少なく、透明感が持続するという優れた化粧効果の付与が可能であることを見出した。
【0010】
特に油性化粧料とした場合は、化粧料としての充分な強度を持ち、柔らかでしなやかな感触、高いスライド性を有しつつ、肌への密着感や化粧膜の透明感が高く、同時ににじみ防止効果があり、また、外観と付け色のギャップが少なく、均一な化粧膜を形成する化粧効果に優れたものであることを、また、乳化化粧料とした場合は、分散性と乳化物の経時安定性に極めて優れ、きしみ感やずるつきがなくスライド性及び肌への密着感が良好で、化粧膜の柔軟性に優れ、さらに美麗な外観を有し、また、外観と付け色のギャップや経時での化粧膜の色沈みのない均一で美しい化粧膜の持続性に優れたものであることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、嵩比重が5〜20mL/gである板状ポリマー粉体を含有する化粧料を提供するものである。
【0012】
また本発明は、ポリマーを溶解した重合体溶液を常温で液体である液層の液面上に展開させ、脱溶剤して前記液層の上に薄膜を形成させ、この薄膜を粉砕することにより得られる上記板状ポリマー粉体を含有する化粧料を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の化粧料において使用される板状のポリマー粉体は、その嵩比重が5〜20mL/g、特に10〜17mL/gのものが好ましい。この嵩比重は、例えば、JISK−5101(静置法)により測定することができる。上記範囲内の嵩比重を有する板状のポリマー粉体(以下、「板状ポリマー粉体」とする)を利用すれば、化粧料中への分散性に優れ、凝集や沈降等不均一な部分のない美麗な外観を長期間持続でき、使用時のとれも良好な化粧料が得られる。この板状ポリマー粉体は、例えば、ポリマーを溶解した重合体溶液を常温で液体である液層の液面上に膜状に展開させて重合体溶液の薄膜を形成し、この薄膜を脱溶剤してポリマー薄膜とし、これを粉砕することにより得られる。
【0014】
本発明の化粧料に含有される板状ポリマー粉体の調製は、例えば、図1に示す工程図に従って実施することができる。すなわち、ポリマーを適当な溶剤に溶解させて重合体溶液とし、これを液体表面上に展開後、脱溶剤し、ポリマーの薄膜を形成させた後、この薄膜を採取、濾過、乾燥し、最後にこれを粉砕すればよい。
【0015】
上記板状ポリマー粉体の原料となるポリマーは、特に制約されるものではないが、溶剤に可溶な線状ポリマーを用いることが好ましい。また、ポリマーとして、その側鎖に特長ある官能基をもつポリマーを選択し、これらのポリマーを組み合わせることにより、ポリマー本来の持つ性質、例えば、疎水性、親水性、造膜性、柔軟性などで特長ある粉体の製造が可能である。このようなポリマーとしては、フッ素元素、珪素元素を含む官能基を側鎖としてもつポリマー、カルボキシル基、アミノ基、水酸基等の官能基を側鎖にもつポリマーが挙げられる。
【0016】
また、ポリマーとして、スチレン、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類からなる群より選ばれた単量体を重合した単独重合体又は前記単量体の少なくとも2種を共重合した共重合体を用いると、薄膜を製造し易く、また、嵩高で透明性に優れた粉体が得られ易いので好ましい。上記共重合体は、前述の官能基を側鎖に有してもよい。このメタクリル酸エステル類の好ましい例としては、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが挙げられる。また、アクリル酸エステル類の好ましい例としては、アクリル酸メチル、アククリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0017】
さらに、前記した単独重合体の例としては、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられ、また、共重合体の例としては、メタクリルスチレン(MS)、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステル類とを共重合した共重合体、メタクリル酸メチル、アクリル酸エステル類およびメタクリル酸を共重合した三元共重合体等が挙げられる。
【0018】
ポリマーとして、メタクリル酸メチル単位を50質量%(以下、単に「%」とする)以上含有するメタクリル樹脂を用いると、分散性に加え、透明性、展延性、付着性等に優れた粉体が得られ易いので好ましい。また、メタクリル酸メチル単位を75%〜99%含み、且つアクリル酸エステル類単位を1%〜25%含むメタクリル樹脂は、透明性に特に優れ、また有機溶剤に溶解し易いので、硬質なポリマーとして用いるに好ましい。しかもこのメタクリル樹脂の平均重合度が約600以上で1300以下であると、ポリマー濃度を高くしても重合体溶液の溶液粘度が低く、嵩高で厚さの薄い薄膜、ひいては嵩高で厚さの薄い板状ポリマー粉体が容易に得られるので好ましい。
【0019】
また、ポリマーとして、側鎖に水酸基をもつメタクリル樹脂、例えばメタクリル酸メチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの少なくとも2種の単量体を共重合させた共重合体を用いると、吸湿性、親水性に優れた板状ポリマー粉体が得られるので好ましい。
【0020】
一方、上記ポリマーを溶解する溶剤としては、(イ)常温(20℃)で液体であり、(ロ)ポリマーの良溶媒であり、(ハ)重合体溶液を展開させる液体の液面に浮上させるために重合体溶液の比重を小さくできること、即ちポリマーの比重を考慮しても液体より小さい比重を有し、(二)重合体溶液を液体の液面上に浮上展開させるため、液体との相溶性がほとんどないか極めて小さく、且つ(ホ)易揮発性という性質を有することが好ましい。
【0021】
また、溶剤として上記条件の他、水(20℃)に対する溶解度が50以下、好ましくは2〜30で、常圧で180℃以下、好ましくは50℃以上、120℃以下の沸点を有するという条件を満たすものを用いると、薄膜の製造が容易となるので好ましい。なお、本明細書で「水に対する溶解度」とは、水100g中に溶解する溶剤のグラム数をいう。
【0022】
このような条件を満足する溶剤としては、各種の有機溶剤が挙げられるが、その例としては、2〜8の炭素数を有する有機溶剤、好ましくは2〜8の炭素数を有するケトン類又はエステル類の溶剤が挙げられる。このうち、ケトン類の例としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等が挙げられる。また、エステル類の例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。また、有機溶剤として、前記のケトン類及び/又はエステル類の2種類以上を混合して、水との相溶性を調整した混合溶剤を用いることもできる。一方、アセトン、ジアセトン、アルコールは、メタクリル樹脂等の良溶媒であるが、重合体溶液を展開させるための溶媒として水を使用した場合、水への溶解度が無限大であり、重合体溶液中の溶媒が水に急速に溶け込むため、本発明の化粧料の成分である板状ポリマー粉体を製造するための重合体溶液の薄膜形成は困難となるので、その使用は好ましくない。
【0023】
上記の溶剤に溶解させるポリマー成分の量は、例えぱポリマー濃度が、重合体溶液全体に対して5%〜30%となるようポリマー成分を溶剤に溶解して調製することが好ましい。この重合体溶液は、約5〜50パスカルセコンド(Pa・S)(約50〜500センチポイズ)の溶液粘度(20℃)を有することが好ましい。なお、懸濁重合或いは乳化重合で製造されたビーズ(顆粒)形状または粉末形状のポリマーを用いると、ポリマーを有機溶剤に溶解し易いので好ましい。重合体溶液の調製方法は、常法を用いて溶剤にポリマーを溶解させればよい。
【0024】
上記のように調製された重合体溶液は、次に、液面上に展開させ、溶剤を揮散させることにより、ポリマーの薄膜を形成する。重合体溶液を液面上に展開する液体は、常温(20℃)で液体であるもの、即ち、常温で流動性を有するものから構成され、常温で自由表面を有する液体を用いることが好ましい。さらに、該液体は、重合体溶液よりも比重が大きく、好ましくは1以上の比重(20℃)を有し、かつ、ポリマーを溶解する有機溶剤よりもポリマーに対してより貧溶媒であって、ポリマーを溶解しない性質を有することが好ましい。
【0025】
このような液体としては、例えば、水、メタノール、エタノール等の炭素数1〜4のアルコール類や、アルコール類と水とを混合した水溶液が挙げられる。そして、取り扱い易さ、コスト及び薄膜の製造し易さ等の点から、水を70%以上、好ましくは90%以上含む液体を用いて構成することが好ましい。また、水溶性の無機塩類を水に溶解した無機塩類水溶液は、比重を1以上に調整し易いので、好ましい。この水溶性無機塩類の例としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等のナトリウム塩、塩化カリウム等のカリウム塩等が挙げられる。この水溶性無機塩類は、水100重量部に対して、約5〜50重量部の割合で用いることができる。
【0026】
また、重合体溶液を液面上に展開させるにあたっての上記液体の温度は、0℃から30℃の範囲であることが好ましく、特に10℃から25℃の範囲のものを用いれば、薄膜の形成性も良く、また作業性も良いので好ましい。一方、液体の温度が高い場合は、溶媒の揮発が促進されて、液体表面上の重合体溶液の粘度が上昇してしまうため重合体溶液の展開が不十分となり、薄膜の膜厚も厚くなり易いとともに、薄膜に皺を発生し易くなるので好ましくない。特に、液体の温度が40℃を超えると、溶媒の揮発が激しくなり、更に50℃を越えると、ポリマーが発泡状態となり易く薄膜状とするのが困難となり、ポリマーはポーラスな固まりとなり易いという問題がある。
【0027】
上記の液体は、作業性等の面から、一定容積を有する容器に入れ、液層を形成させて用いることが好ましい。該容器は、重合体溶液を注入可能なものであれば、その形状や大きさについては特に制限なく使用することができるが、液層中の液体表面に重合体溶液の薄膜を形成することとの関係から、上部に開口部を有するものが好ましい。
【0028】
重合体溶液は、上記した容器中の液層に注入され、液層の表面に薄膜を形成する。重合体が注入される液層は循環されることで流動状態となっていてもよいが、一般には、静止状態であることが好ましい。該液層に重合体溶液を注入する方法としては、(イ)重合体溶液を液層の表面に滴下する滴下方法、(ロ)重合体溶液を液層の表面に噴霧する噴霧方法、(ハ)重合体溶液を液層の液面上に或いは液面下に連続的に注入する連続注入方法が挙げられる。これらのうち、(イ)の滴下方法を用いれば、嵩高で厚さが均一であり、かつ薄い薄膜を容易に製造することができるので好ましい。
【0029】
図2及び図3は、上記の滴下方法の例を示す図である。図2に示すように、重合体溶液4は液滴4aとして液層2の液面2aに滴下される。滴下された重合体溶液4は、液層2の液面2a上に浮上した状態で自由に四方八方に広がり、薄い膜を形成する。数分後、前記膜中の溶媒は揮発等により揮散し、図3に示すように、液層2の上に、ポリマーに富む薄膜3を形成する。この薄膜3の片面は、液面2aの自由表面が転写され、他方の表面は有機溶剤の揮発等により形成される平面であるので、薄膜3は表面光沢を有し、且つ透明なものとなり易い。この薄膜3は液層2から容易に分離でき、またべたつきを有さないので容易に採取が可能である。
【0030】
なお、上記方法においては、板状ポリマー粉体を得るための被製膜面として、金属板やプラスチック板ではなく液体の自由表面を利用しているので、板状ポリマー粉体を製造するための薄膜の製造が容易となり、かつ、薄膜の厚さを調整し易いものとなる。また、上記の滴下方法を用いれば、液体の液面上に、重合体溶液を滴下し、浮上展開させることにより、板状ポリマー粉体を得るための薄膜の上面及び下面を平滑面とすることが極めて容易となる。さらに、薄膜は液層から容易に分離できるので、薄膜の採取も容易となる。
【0031】
上記の手段で液体の表面に形成された薄膜は、採取されたあと、減圧濾過等の手段により、薄膜表面に存在する水等の液体を除去することが好ましい。また、必要であれば、薄膜をさらに乾燥することが好ましい。
【0032】
表面の水分を除去した薄膜を粉砕して板状ポリマー粉体とするには、各種粉砕方法を用いることができるが、約−30℃以下、好ましくは約−70℃以下の沸点を有する液化気体等の冷却剤により薄膜を冷却しながら破砕する冷凍粉砕法を用いることが好ましい。前記冷却剤の例としては、液化炭酸ガス、液体窒素が挙げられる。液化炭酸ガス、好ましくは液体窒素等の冷却剤を薄膜に直接接触させて薄膜を冷却して破砕する冷凍粉砕法によれば、粉砕時の剪断熱、摩擦熱等によっても薄膜は融着等を起こさない。従って、薄膜の厚さを損なうことなく薄膜を板状粉体化できるので好ましい。また、薄膜は、粉砕機により粉砕して板状ポリマー粉体としてもよい。前記粉砕機の例は、ボールミル、衝撃微粉砕機、ジェット粉砕機等が挙げられる。薄膜を粉砕して得られた板状ポリマー粉体は、必要があればさらに乾燥を行うことが好ましい。
【0033】
次に、上記方法で得られた板状ポリマー粉体の一例の外観を拡大した斜視図を図4に示す。この板状ポリマー粉体の表面6aは、液層2の液面の自由表面が転写されたものである。なお、この板状ポリマー粒子には狭義の「板状」の他、粉砕の仕方によって生じることのある、いわゆる「薄片状」、「鱗状」等の形状のポリマー粒子も含む。
【0034】
本発明で使用する板状ポリマー粉体において、一般に、図中tで示される厚さ(一個の板状ポリマー粉体のうちの最大厚さ)は、液層の液面に滴下する重合体溶液の量や粘度などによって容易に調整することができる。また、図中dで示される粒径(一個の板状ポリマー粉体のうちの最大粒径)も、得られたポリマーの粉砕の程度により容易に調整することができ、更にこれらの調整により、種々のアスペクト比(d/t)の板状ポリマー粉体を得ることができる。
【0035】
しかしながら、本発明の化粧料に配合する場合には、板状ポリマー粉体の厚さ(t)は0.1μm〜20μmが好ましく、より好ましくは約0.1μm〜5μm、特に好ましくは0.5μm〜2μmである。このような、0.1μm〜20μmの厚みの板状ポリマー粉体は、例えば、液面1m2当たり0.1g〜20gとなる量のポリマーを含む重合体溶液を液層の上に展開させて得た薄膜を粉砕して得ることができる。
【0036】
また、化粧料に配合する場合の板状ポリマー粉体の好ましい平均粒径は、1μm〜60μmであり、より好ましくは15μm〜35μmである。更に、板状ポリマー粒子総量の70%以上のアスペクト比は約4.5〜45であることが好ましい。
【0037】
化粧料中に配合する板状ポリマー粉体として上記した範囲のものを用いれば、嵩高であると共に薄く、透明性が良いものであるため、化粧料中での分散性が優れ、柔らかな感触でスライド性も良く、肌に密着し、経時での色ぐすみがなく塗布膜の透明感が持続し、化粧効果の高さにおいて良好なものを得ることができる。
【0038】
本発明の化粧料において使用される板状ポリマー粉体の含有量は、特に制限はないが、化粧料全体に対して0.5〜60%が好ましく、更に好ましくは3〜40%である。板状ポリマー粉体の含有量がこの範囲であれば、分散性が優れ、かつ肌に塗布する際の柔らかな感触、スライド性、肌への密着感、経時における化粧膜の色ぐすみのなさ、透明感の持続性等化粧効果の高さ等において特に良好な化粧料が得られるので好ましい。
【0039】
また、本発明に使用される板状ポリマー粉体は、フッ素化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、ロウ、油脂、炭化水素等を用いて表面処理を施し、処理粉体としたものを用いてもよい。板状ポリマー粉体に表面処理を施す表面処理方法は、常法により行うことができる。
【0040】
更に、本発明に使用される板状ポリマー粉体やこれを表面処理した粉体は、板状ポリマー粉体のポリマー成分が異なるものや、形状が異なるもの及びその表面処理方法が異なるもの等、異なる種類の粉体を2種以上併用してもよい。
【0041】
更にまた、本発明の化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、前記板状ポリマー粉体やその表面処理粉体以外に、通常、化粧料や医薬部外品の製剤に用いられる成分、例えば、粉体成分、油性成分、界面活性剤、水、アルコール類、水溶性高分子、被膜形成剤、樹脂、紫外線吸収剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、保湿剤、動物・微生物由来原料、植物抽出液、美白剤、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、抗炎症剤、活性酵素消去剤、角質溶解剤、酵素等の美容成分、防腐剤、香料等の各成分を、各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0042】
このうち、粉体成分は、化粧料の基剤成分や感触調整、着色成分等として配合され、球状、針状、板状、紡錘状等の形状や、多孔質、無孔質等の粒子構造、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径等により特に限定されず、無機粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等いずれのものでも使用できる。また、これらの粉体成分は、その表面をフッ素化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、ロウ、油脂、炭化水素等を用いて表面処理を施し、処理粉体としたものを用いてもよい。
【0043】
本発明の化粧料の調製方法は、特に限定されず、前記板状ポリマー粉体に、適当な化粧料成分、例えば、粉体成分や油性成分等を混合し、これを容器等に移して成型する方法等により行うことができる。具体的な工程についても特に制限はなく、常法を用いて行うことができる。
【0044】
次に、本発明化粧料の好ましい一態様である油性化粧料について説明する。
【0045】
油性化粧料を調製するに当たっての、板状ポリマー粉体の使用量は、特に制限はないが、0.5〜30%程度が好ましく、更に好ましくは1〜20%である。この範囲であれば、分散性も良好となり、化粧料として充分な強度を持ちつつも、柔らかでしなやかな感触と高いスライド性を有し、しかも肌への密着感、化粧膜の透明感が高く、同時ににじみ防止効果があり、また、外観と付け色のギャップが少なく、均一な化粧膜を形成する良好な油性化粧料が得られる。
【0046】
この油性化粧料に使用される板状ポリマー粉体は、上記の表面処理を施した、処理粉体としたものを用いてもよい。また、板状ポリマー粉体や、処理粉体としては、板状ポリマー粉体のポリマー成分が異なるものや、形状が異なるもの及びその表面処理方法が異なるもの等、異なる種類の粉体を二種類以上併用してもよい。
【0047】
この油性化粧料の調製は、前記板状ポリマー粉体等の他に、固形油脂、油ゲル化剤等の油性化粧料としてのベースを形成する成分と、必要に応じて液体油を配合することにより行われる。更に日焼け止め化粧料やメーキャップ化粧料等の化粧料とする場合は、更に粉体成分を配合する場合もある。
【0048】
油性化粧料の調製において使用される固形油脂は、油性化粧料の形状を維持したり、化粧料としての安定性を維持する目的で配合され、動物油、植物油、合成油等の起源等を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、ラノリン誘導体類等が用いられる。具体的には、ワセリン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モクロウ、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、ロジン酸ペンタエリスリットエステル等のエステル類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。本発明の油性化粧料における固形油脂の配合量は、0.1〜70%が好ましく、1〜50%がより好ましい。
【0049】
また、油性化粧料の調製において使用される油ゲル化剤は、安定化剤及び感触調整剤として配合され、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、部分架橋型オルガノポリシロキサン、有機変性ベントナイト、煙霧状無水ケイ酸等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。本発明の油性化粧料に前記油ゲル化剤を含有する場合の含有量は、概ね0.1〜10%が好ましい。
【0050】
更に油性化粧料の調製に使用される液体油は、感触調整、エモリエント感の付与、粉体の粉っぽさの低減等の目的で配合され、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、炭化水素類、油脂類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等の油剤が用いられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ホホバ油、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。本発明の油性化粧料における液体油の配合量は、1〜50%が好ましく、5〜40%がより好ましい。
【0051】
更に、油性化粧料を日焼け止め化粧料やメーキャップ化粧料等とする場合に、基剤成分や感触調整、着色成分等として粉体成分を配合することができる。配合されることのある粉体成分としては、球状、針状、板状、紡錘状等の形状、多孔質、無孔質等の粒子構造、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径等により特に限定されず、無機粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等いずれのものでも使用できる。この粉体成分としては、例えばタルク、カオリン、セリサイト、マイカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、無水ケイ酸等の体質粉体、酸化チタン、微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機白色顔料、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、グンジョウ、コンジョウ、カーボンブラック等の無機着色粉体、タール系色素、天然色素等の有機着色顔料、雲母チタン、酸化鉄雲母チタン、オキシ塩化ビスマス等の光沢付与剤、ナイロンパウダー、シリコーン樹脂パウダー、シルクパウダー、ポリスチレン、ポリエチレンパウダー、結晶セルロース、N−アシルリジン等の、感触調整剤としての有機粉体等が挙げられる。また、これら粉体はその表面をフッ素化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、ロウ、油脂、炭化水素等を用いて表面処理を施し、処理粉体としたものを用いてもよい。
【0052】
更にまた、本発明の油性化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、上記板状ポリマー粉体及びその表面処理粉体や基剤成分である油性成分あるいは上記粉体成分の他に、例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、水、多価アルコール類、水溶性高分子、保湿剤、皮膜形成剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、緩衝剤、香料等を各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0053】
本発明の油性化粧料としては、特にその形態に限定はなく、棒状、鉛筆状、皿流し込みタイプ等とすることができ、ファンデーション、口紅、リップペンシル、頬紅、アイシャドウ、アイブロウ、アイライナー、コンシーラーなどとすることができるが、特に棒状タイプや鉛筆状タイプ化粧料にした場合は、化粧料としての充分な強度を持ちつつも、柔らかでしなやかな感触の化粧料が得られ、板状ポリマー粉体を含有する効果が充分に発揮される。例えば、従来の油性化粧料にありがちな、強度のあるものは肌に対してハードな感触を与え、強度の低いものは、肌に対してソフトな感触を与えることができるが、ずるつきと呼ばれる現象が生じるという欠点を解消できる。
【0054】
また、本発明化粧料の別の態様としては、乳化化粧料を挙げることができる。
【0055】
この乳化化粧料において使用される板状ポリマー粉体の含有量は、特に制限はないが、化粧料全体に対して0.5〜60%が好ましく、更に好ましくは3〜40%である。板状ポリマー粉体の含有量がこの範囲であれば、板状ポリマー粉体の嵩高であるという物性により化粧料中への配合がし易く、分散性、経時安定性に非常に優れ、柔らかな感触でとまり際のずるつきやきしみ感がなく、良好なスライド性と密着感を有し、またメーキャップ化粧料においては、沈降や凝集のない美麗な外観を有し、外観と化粧膜の付け色のギャップや、経時における化粧膜の色ぐすみもなく、塗布膜の透明感が持続し、化粧効果の高い良好な乳化化粧料が得られるので好ましい。
【0056】
上記乳化化粧料に使用される板状ポリマー粉体は、油性化粧料の場合と同じく、表面処理を施した、処理粉体としたものを用いてもよく、また、板状ポリマー粉体のポリマー成分が異なるものや、形状が異なるものあるいはその表面処理方法が異なるもの等、異なる種類の粉体を二種類以上併用してもよい。
【0057】
この乳化化粧料の製造は、前記板状ポリマー粉体の他に、水、油剤および界面活性剤等の乳化化粧料としてのベースを形成する成分を配合し、更に必要に応じて、多価アルコール類や水溶性高分子、塩類等の水性成分や油ゲル化剤を配合することにより行われる。また、乳化化粧料を、日焼け止め化粧料やメーキャップ化粧料等とする場合には、粉体成分を配合することもできる。
【0058】
また、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、紫外線吸収剤、保湿剤、皮膜形成剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、緩衝剤、香料などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0059】
乳化化粧料の製造において用いられる水及び水性成分は、みずみずしさや清涼感の付与、感触調整、保湿、防腐等の目的で配合されるものであり、水としては、精製水、温泉水、深層水、ローズ水等の植物由来の水蒸気蒸留水等が挙げられる。また、水性成分としては、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール,ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、デンプン糖等の糖類、グアーガム、スクレロチウムガム、ジェランガム、ペクチン、寒天、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、乳酸ナトリウム等の塩類、アロエベラ、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。水及び水性成分の配合量は、求める乳化化粧料のタイプにもよるが、0.1〜99%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜90%である。
【0060】
また、乳化化粧料の製造において油剤は、エモリエント感の付与、感触調整、粉体の粉っぽさの低減等の目的で用いられるものであり、通常化粧料に用いられるものであれば、動物油、植物油、合成油等の起源や、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状等に特に制限はなく、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等の油剤が用いられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、ホホバ油、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリスリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類等が挙げられる。これら油剤は、その一種又は二種以上用いることができる。
【0061】
油性成分の配合量は、乳化安定性、使用感の観点より、1〜90%が好ましく、5〜80%がより好ましい。
【0062】
更に、乳化化粧料において界面活性剤は、乳化助剤や分散剤等として用いられるものである。界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。具体的には、陰イオン性界面活性剤として、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、等の脂肪酸とナトリウム、カリウム、トリエタノールアミン等のアルカリ物質により形成される脂肪酸石鹸類、アシルグルタミン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレン付加アルキルリン酸塩等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、レシチン、リン脂質等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物等が挙げられる。これら界面活性剤は、その一種又は二種以上用いることができる。
【0063】
本発明の乳化化粧料における界面活性剤の配合量は、界面活性剤の種類、油剤の量及び質により変動するが、概ね0.01〜20%が好ましい。
【0064】
一方、油ゲル化剤は安定化剤及び感触調整剤として用いられるものであり、具体的には、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、部分架橋型オルガノポリシロキサン、有機変性ベントナイト、煙霧状無水ケイ酸等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。本発明の乳化化粧料に前記油ゲル化剤を含有する場合の配合量は、概ね0.1〜10%が好ましい。
【0065】
また、乳化化粧料を日焼け止め化粧料やメーキャップ化粧料等とする場合には、粉体成分を配合する場合がある。この粉体成分としては、球状、針状、板状、紡錘状等の形状、多孔質、無孔質等の粒子構造、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径等により特に限定されず、無機粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等いずれのものでも使用でき、感触調整、着色成分等として配合される。例えばタルク、カオリン、セリサイト、マイカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、無水ケイ酸等の体質粉体、酸化チタン、微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機白色顔料、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、グンジョウ、コンジョウ、カーボンブラック等の無機着色粉体、タール系色素、天然色素等の有機着色顔料、雲母チタン、酸化鉄雲母チタン、オキシ塩化ビスマス等の光沢付与剤、ナイロンパウダー、シリコーン樹脂パウダー、シルクパウダー、ポリスチレン、ポリエチレンパウダー、結晶セルロース、N−アシルリジン等の感触調整剤としての有機粉体等が挙げられる。また、これら粉体はその表面をフッ素化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、ロウ、油脂、炭化水素等を用いて表面処理を施し、処理粉体としたものを用いてもよい。これら粉体成分は、一種又は二種以上適宜用いることができ、その配合量は0.1〜50%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜40%が好ましい。
【0066】
更に、日焼け止め化粧料やメーキャップ化粧料等とした乳化化粧料には、紫外線吸収剤を、その吸収作用に悪影響を与えることなく、配合することができる。
【0067】
本発明の乳化化粧料は、水中油型乳化化粧料、油中水型乳化化粧料およびO/W/O型化粧料等の多相乳化化粧料等、特に限定はなく、種々の形態とすることができ、ファンデーション、下地化粧料、アイシャドウ、アイブロウ、アイライナー、口紅、日焼け止め化粧料、乳液、クリームなどとすることができる。
【0068】
【実施例】
次に実施例及び参考例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0069】
参考例 1
板状ポリマー粉体の製造(1):
単量体としてメタクリル酸メチル93部およびアクリル酸エチル7部を含有する重合性液に触媒を加えた後、水に分散させ、重合を開始させた。重合終了後、脱水、乾燥させてメタクリル酸メチルアクリル酸エチル共重合体を得た。この共重合体15部を酢酸エチル85部に溶解させ、重合体溶液を調製した。
【0070】
水を静止状態とした液層を形成し、この液層の表面に重合体溶液を液面1m2当たり20gの割合で滴下し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、分離採取し、水洗浄後、脱水乾燥することにより脱溶剤した。
【0071】
この脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより板状ポリマー粉体(参考品1)を得た。得られた粉体の平均粒径は20μm、平均厚みは2μm、嵩比重は13.53mL/gであった。
【0072】
参考例 2
板状ポリマー粉体の製造(2):
単量体としてスチレンを含有する重合性液に触媒を加えた後水に分散させ、重合を開始させた。重合終了後、脱水、乾燥させてスチレン単独重合体を得た。この単独重合体15部をメチルエチルケトン85部に溶解させ、重合体溶液を調製した。
【0073】
水を静止状態とした液層を形成し、この液層の表面に重合体溶液を液面1m2当たり10gの割合で滴下し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、分離採取し、水洗浄後、脱水乾燥することにより脱溶剤した。
【0074】
この脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより板状ポリマー粉体(参考品2)を得た。得られた粉体の平均粒径は30μm、平均厚みは3μm、嵩比重は9.42mL/gであった。
【0075】
参考例 3
板状ポリマー粉体の製造(3):
単量体としてメタクリル酸メチルを含有する重合性液に触媒を加えた後水に分散させ、重合を開始させた。重合終了後、脱水、乾燥させてメタクリル酸メチル単独重合体を得た。この単独重合体20部を酢酸エチル80部に溶解させ、重合体溶液を調製した。
【0076】
水を静止状態とした液層を形成し、この液層の表面に重合体溶液を液面1m2当たり10gの割合で滴下し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、分離採取し、水洗浄後、脱水乾燥することにより脱溶剤した。
【0077】
脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して粉砕することにより板状ポリマー粉体(参考品3)を得た。得られた粉体の平均粒径は30μm、平均厚みは5μm、嵩比重は6.01mL/gであった。
【0078】
参考例4
板状ポリマー粉体の製造(4):
単量体としてメタクリル酸メチル25部およびスチレン75部を含有する重合性液に触媒を加えた後水に分散させ、重合を開始させた。重合終了後、脱水、乾燥させてメタクリル酸メチルスチレン共重合体を得た。この共重合体15部を酢酸エチル85部に溶解させ、重合体溶液を調製した。
【0079】
水を静止状態とした液層を形成し、この液層の表面に重合体溶液を液面1m2当たり10gの割合で滴下し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、分離採取し、水洗浄後、脱水乾燥することにより脱溶剤した。
【0080】
脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して粉砕することにより板状ポリマー粉体(参考品4)を得た。得られた粉体の平均粒径は50μm、平均厚みは4μm、嵩比重は7.05mL/gであった。
【0081】
参考例 5
板状ポリマー粉体の製造(5):
単量体としてメタクリル酸メチル98部およびアクリル酸エチル2部の重合性液に触媒を加えた後水に分散させ、重合を開始させた。重合終了後、脱水、乾燥させてメタクリル酸メチルアクリル酸エチル共重合体を得た。この共重合体10部を酢酸エチル90部に溶解させ、重合体溶液を調製した。
【0082】
水を静止状態とした液層を形成し、この液層の表面に重合体溶液を液面1m2当たり10gの割合で滴下し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、分離採取し、水洗浄後、脱水乾燥することにより脱溶剤した。
【0083】
脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して粉砕することにより板状ポリマー粉体(参考品5)を得た。得られた粉体の平均粒径は20μm、平均厚みは1μm、嵩比重は17mL/gであった。
【0084】
参考例 6
板状ポリマー粉体の製造(6):
単量体としてメタクリル酸メチル95部およびメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル5部の重合性液に触媒を加えた後、水に分散させ、重合を開始させた。重合終了後、脱水、乾燥させてメタクリル酸メチルメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体を得た。この共重合体10部を酢酸エチル45部及びメチルエチルケトン45部の溶媒に溶解させ、重合体溶液を調製した。
【0085】
水を静止状態とした液層を形成し、この液層の表面に重合体溶液を液面1m2当たり10gの割合で滴下し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、分離採取し、水洗浄後、脱水乾燥することにより脱溶剤した。
【0086】
脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入し粉砕することにより板状ポリマー粉体(参考品6)を得た。得られた粉体の平均粒径は15μm、平均厚みは1μm、嵩比重は16.08mL/gであった。
【0087】
参考例 7
板状ポリマー粉体の製造(7):
単量体としてメタクリル酸メチル93部およびアクリル酸エチル7部を含有する重合性液に触媒を加えた後、水に分散させて重合を開始させた。重合終了後、脱水、乾燥させて得たメタクリル酸メチルアクリル酸エチル共重合体15部を、酢酸エチル85部に溶解させ重合体溶液を調製した。
【0088】
この重合体溶液を、静止した水の液層表面に液面1m2当たり10gの割合で滴下し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、分離採取し、水洗浄後、脱水乾燥することにより、脱溶剤した。
【0089】
この脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入し粉砕することにより、板状ポリマー粉末(参考品7)を得た。得られた粉体の平均粒径は20μm、平均厚みは2μm、嵩比重は14.03mL/gであった。
【0090】
参考例 8
板状ポリマー粉体の製造(8):
単量体としてポリスチレンを含有する重合性液に触媒を加えた後、水に分散させて重合を開始させた。重合終了後、脱水、乾燥させて得たポリスチレン単独重合体15部を、メチルエチルケトン85部に溶解させ重合体溶液を調製した。
【0091】
この重合体溶液を、静止した水の液層表面に液面1m2当たり10gの割合で滴下し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、分離採取し、水洗浄後、脱水乾燥することにより、脱溶剤した。
【0092】
この脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入し粉砕することにより、板状ポリマー粉末(参考品8)を得た。得られた粉体の平均粒径は30μm、平均厚みは1μm、嵩比重は17.60mL/gであった。
【0093】
参考例 9
板状ポリマー粉体の製造(9):
単量体としてメタクリル酸メチルの重合性液に触媒を加えた後、水に分散させて重合を開始させた。重合終了後、脱水、乾燥させて得たポリメタクリル酸メチル単独重合体15部を、酢酸エチル85部に溶解させ重合体溶液を調製した。
【0094】
この重合体溶液を、静止した水の液層表面に液面1m2当たり10gの割合で滴下し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、分離採取し、水洗浄後、脱水乾燥することにより、脱溶剤した。
【0095】
この脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入し粉砕することにより、板状ポリマー粉末(参考品9)を得た。得られた粉体の平均粒径は30μm、平均厚みは1μm、嵩比重は10.50mL/gであった。
【0096】
実施例 1
ファンデーションの製造:
表1に示す処方及び下記の製造方法で、本発明品1〜3及び比較品1〜4のファンデーションを製造した。
【0097】
(処 方)
【表1】
【0098】
(製造方法)
A.成分(1)〜(12)を均一に混合する。
B.成分(13)〜(15)を加熱混合して「A」に加え、均一に混合 し、粉砕する。
C.「B」を容器に充填しプレスして、ファンデーションを得た。
【0099】
(評価方法)
上記処方及び製法で得られた本発明品1〜3及び比較品1〜4のファンデーションに対して、(イ)崩壊効果によるとれの良さ、(ロ)タッチの柔らかさ、(ハ)スライド感の高さ、(ニ)肌への密着感、(ホ)経時での化粧膜の色ぐすみのなさ及び(ヘ)化粧膜の透明感の持続性の6項目について、各サンプルに対して専門パネル20名による使用テストを行った。評価は、各パネルが下記「使用感絶対評価」を用いてサンプルを7段階に評価し評点を付け、パネル全員の評点から平均値を算出し、下記「4段階判定基準」により判定した。結果を表2に示す。
【0100】
(使用感絶対評価)
評 点 : 評 価
6 : 非常に良い
5 : 良い
4 : やや良い
3 : 普通
2 : やや悪い
1 : 悪い
0 : 非常に悪い
【0101】
(4段階判定基準)
評点の平均値 評 価
平均値が5点を超える : 非常に良い(◎)
平均値が3点を超えて5点以下 : 良好(○)
平均値が2点を超えて3点以下 : やや不良(△)
2点未満 : 不良(×)
【0102】
(結 果)
【表2】
【0103】
表2の結果から、板状ポリマー粉体を配合した本発明品1〜3のファンデーションは、使用時のとれの良さ、タッチの柔らかさ、スライド感の高さ、肌への密着感、経時での化粧膜の色ぐすみのなさ、化粧膜の透明感の持続性の各項目において、優れた効果を発現するファンデーションであることが明らかとなった。
【0104】
一方、有機粉体を全く配合しなかった比較品1は、とれの良さ、タッチの柔らかさ、スライド感、肌への密着感、経時での化粧膜の色ぐすみのなさ、化粧膜の透明感の持続性のすべての項目において満足のいくものが得られなかった。また、本発明品で用いる板状ポリマー粉体の代わりに有機球状粉体を配合した比較品2は、とれの良さは若干向上したものの、肌への密着感、経時での化粧膜の色ぐすみのなさ、化粧膜の透明感の持続性の項目において満足のいくものが得られなかった。更に、本発明で用いる板状ポリマー粉体とは異なる他の板状の有機粉体を配合した比較品3は、比較品2と同様、とれの良さは若干向上したものの肌への密着感、化粧膜の透明感の持続性において満足のいくものが得られなかった。更にまた、別の板状(扁平状)の有機粉体を配合した比較品4も、とれの良さは満足ゆくものの、肌への密着感は満足のいくものが得られなかった。以上より、板状ポリマー粉体を配合しない比較品1〜4のファンデーションは、いずれも本発明品1〜3のファンデーションと比較して、評価結果が劣るものであった。
【0105】
実施例 2
粉末状白粉:
下記の処方及び製造方法を用いて、粉末状白粉を製造した。
【0106】
【0107】
(製造方法)
A.成分(8)及び(9)を混合する。
B.「A」と成分(1)〜(7)を混合し、粉砕した後、容器に充填し て粉末状白粉を得た。
【0108】
実施例2で得られた粉末状白粉は、化粧バルク中での凝集のなさ、タッチの柔らかさおよびスライド感が優れ、経時的な化粧膜の色ぐすみがなく、化粧膜の透明感の持続性に優れた粉末状白粉であった。
【0109】
実施例 3
頬 紅:
下記の処方及び製造方法を用いて、頬紅を製造した。
【0110】
【0111】
(製造方法)
A.成分(1)〜(10)を均一に混合する。
B.成分(11)〜(12)を加熱混合して「A」に加え、均一に混合し、粉砕する。
C.「B」を皿に充填して、頬紅を得た。
【0112】
実施例3で得られた頬紅は、とれの良さ、タッチの柔らかさ、スライド感および肌への密着感が優れ、経時的な化粧膜の色ぐすみがなく、化粧膜の透明感の持続性に優れた頬紅であった。
【0113】
実施例 4
アイシャドウ:
下記の処方及び製造方法を用いて、アイシャドウを製造した。
【0114】
【0115】
(製造方法)
A.成分(1)〜(10)を均一に混合する。
B.成分(11)〜(12)を加熱混合して「A」に加えて、均一に混合 し、粉砕する。
C.「B」を皿に充填して、アイシャドウを得た。
【0116】
実施例4で得られたアイシャドウは、とれの良さ、タッチの柔らかさ、スライド感および肌への密着感が優れ、経時的な化粧膜の色ぐすみがなく、化粧膜の透明感の持続性に優れたアイシャドウであった。
【0117】
実施例 5
アイブロウ:
下記の処方及び製造方法を用いて、アイブロウを製造した。
【0118】
【0119】
(製造方法)
A.成分(1)〜(6)を均一に混合する。
B.成分(7)〜(10)を加熱混合して「A」に加え、均一に混合して、粉砕する。
C.「B」を皿に充填し、プレスしてアイブロウを得た。
【0120】
実施例5で得たアイブロウは、とれの良さ、タッチの柔らかさ、スライド感および肌への密着感に優れ、経時的な化粧膜の色ぐすみがなく、化粧膜の透明感の持続性に優れたアイブロウであった。
【0121】
実施例 6
アイライナー:
下記の処方及び製造方法を用いてアイライナーを製造した。
【0122】
【0123】
(製造方法)
A.成分(1)〜(9)を均一に混合する。
B.成分(10)〜(14)を加熱混合して「A」に加え、均一に混合し、粉砕する。
C.「B」を皿に充填しプレスして、アイライナーを得た。
【0124】
実施例6で得られたアイライナーは、とれの良さ、タッチの柔らかさ、スライド感および肌への密着感に優れ、経時的な化粧膜の色ぐすみがなく、化粧膜の透明感の持続性に優れたアイライナーであった。
【0125】
実施例 7
スティック状油性ファンデーション:
表3に示す処方および下記の製造方法で、本発明品4〜7及び比較品5〜8のスティック状油性ファンデーションを製造した。
【0126】
(処 方)
【表3】
【0127】
(製造方法)
A.成分(1)〜(8)を均一に加熱混合する。
B.Aに成分(9)〜(16)を加え、均一に混合する。
C.Bを再溶解後、容器に充填してスティック状油性ファンデーションを得る。
【0128】
(評価方法)
上記処方及び製法で得られた本発明品4〜7及び比較品5〜8のスティック状油性ファンデーションについて、(イ)折れ強度の高さ、(ロ)使用時の肌への密着性、(ハ)化粧膜の透明性の高さ、(ニ)化粧膜のにじみの無さ、(ホ)感触の柔らかさ、(ヘ)スライド性の高さ、(ト)分散性向上による外観と付け色のギャップのなさおよび(チ)化粧膜の均一性について評価を行った。
【0129】
折れ強度(項目(イ))は、棒状に成型したスティック状油性ファンデーション試料(断面:0.8cmφ)を台座にブリッジ状に保持し、これを折る際に要した荷重をレオメーター(不動工業社製)により測定した荷重値(g)により比較した。また、(ロ)〜(チ)の項目は、各試料を専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価にて7段階に評価し評点を付け、各試料ごとにパネル全員の評点から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。その結果は表4に示す。
【0130】
(使用感絶対評価)
評 点 : 評 価
6 : 非常に良い
5 : 良い
4 : やや良い
3 : 普通
2 : やや悪い
1 : 悪い
0 : 非常に悪い
【0131】
(4段階判定基準)
評点の平均値 評 価
平均値が5点を超える : 非常に良い(◎)
平均値が3点を超えて5点以下 : 良好(○)
平均値が2点を超えて3点以下 : やや不良(△)
2点未満 : 不良(×)
【0132】
(結 果)
【表4】
【0133】
この結果から明らかなように、板状ポリマー粉体を配合した本発明の発明品4〜7のスティック状油性ファンデーションは、化粧料としての充分な折れ強度を有しつつ、肌への密着性、化粧膜の透明性、にじみ防止効果、タッチの柔らかさ、スライド性、分散性向上による外観と付け色のギャップのなさ、化粧膜の均一さの項目において優れた効果を奏するものであった。一方、板状ポリマー粉体の代わりに天然マイカを配合した比較例5では、肌への密着感、化粧膜の透明性、タッチの柔らかさ、外観とつけ色のギャップの項目において満足いくものが得られず、また、本発明で用いる板状ポリマー粉体とは異なる他の有機板状粉体やさらに有機球状粉体を同時に配合した比較品6や8では、肌への密着感、化粧膜の均一性の項目において満足のいくものが得られらなかった。一方、板状粉体を配合しなかった比較品7では、にじみ防止効果、タッチの柔らかさ、スライド性、化粧膜の均一性の項目において満足いくものが得られなかった。
【0134】
実施例 8
スティック状口紅:
下記の処方及び製造方法を用いてスティック状口紅を製造した。
【0135】
【0136】
(製造方法)
A.成分(1)〜(6)を加熱混合する。
B.Aと(7)〜(12)を均一に混合する。
C.Bを再度加熱溶解し、容器に充填して、スティック状口紅を得た。
【0137】
得られたスティック状口紅は、肌への密着感が高く、透明感を有しながら同時ににじみ防止効果があり、化粧料としての充分な強度を持ち、柔らかでしなやかな感触、高いスライド性を有しつつ、外観と付け色のギャップが少なく、均一な化粧膜を形成する化粧効果の点において優れたものであった。
【0138】
実施例 9
ペンシル状アイシャドウ:
下記の処方及び製造方法を用いてペンシル状アイシャドウを製造した。
【0139】
【0140】
(製造方法)
A.成分(1)〜(6)を均一に加熱混合する。
B.Aに成分(7)〜(13)を加え、均一に混合する。
C.Bを再度加熱溶解し、木軸に充填して、ペンシル状アイシャドウを得た。
【0141】
得られたペンシル状アイシャドウは、肌への密着感が高く、透明感を有しながら同時ににじみ防止効果があり、化粧料としての充分な強度を持ち、柔らかでしなやかな感触、高いスライド性を有しつつ、外観と付け色のギャップが少なく、均一な化粧膜を形成する化粧効果において優れたものであった。
【0142】
実施例 10
クリーム状油中水型ファンデーション:
表5に示す処方および下記の製造方法で、本発明品8〜12及び比較品9〜13のクリーム状油中水型ファンデーションを製造した。
【0143】
(処 方)
【表5】
【0144】
(製造方法)
A.成分(1)〜(11)を均一に加熱混合する。
B.Aに成分(12)〜(21)を加え、均一に混合する。
C.成分(22)〜(23)を均一に混合してBに添加して乳化し、クリーム状ファンデーションを得る。
【0145】
(評価方法)
上記処方及び製法で得られた本発明品8〜12及び比較品9〜16のクリーム状油中水型ファンデーションについて、(イ)粉体の分散性、(ロ)化粧膜の柔軟性、(ハ)スライド性、(ニ)肌への密着性、(ホ)外観と付け色のギャップのなさ、(ヘ)化粧膜の色沈みの各項目について評価をおこなった。
【0146】
粉体の分散性(項目(イ))は、各クリーム状ファンデーションについてアプリケーターを用い、ガラス板に厚さ25μmの薄膜を引き、この時の粉体の分散性(凝集)を観察し、下記判定基準より判定した。
【0147】
【0148】
また、(ロ)から(ホ)の各項目については、各クリーム状ファンデーションを、化粧品専門パネル20名に使用してもらい、以下の評価基準により評点を付すことにより、また、項目(へ)については、ファンデーション塗布後、5時間後の状態を目視にて評価して評点を付け、各試料ごとにパネル全員の評点から、その平均値を算出し、下記判定基準により判定した。その結果は表6に示す。
【0149】
(使用感絶対評価)
評 点 : 評 価
5 : 非常に良好
4 : 良好
3 : 普通
2 : やや不良
1 : 不良
【0150】
(判定基準)
全パネルの評点の平均点 : 判 定
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満 : ○
2.0以上〜3.5未満 : △
2.0未満 : ×
【0151】
(結 果)
【表6】
【0152】
この結果から明らかなように、板状ポリマー粉体を配合した本発明品8〜12のクリーム状ファンデーションは、「粉体の分散性」、「化粧膜の柔軟性」、「スライド性」、「肌への密着性」、「外観色と付け色のギャップのなさ」、「化粧膜の色沈み」の項目において優れた効果を発現することができた。さらに、油中水型乳化化粧料に特有の止まり際のずるつき感の無く肌への馴染みが良好なものが得られた。一方、本発明で用いる板状ポリマー粉体の代わりに従来の有機板状粉体や有機球状粉体を配合した比較品9〜12では、「化粧膜の柔軟性」、「スライド性」の項目において充分な効果を発揮することができなかった。板状ポリマー粉体の代わりに天然鉱物であるタルクやマイカを配合した比較品13ではすべての項目において満足いくものが得られなかった。
【0153】
実施例 11
水中油型リキッドファンデーション:
下記の処方及び製造方法を用いて水中油型リキッドファンデーションを製造した。
【0154】
【0155】
(製造方法)
A.成分(1)〜(5)を加熱混合する。
B.Aに(6)〜(9)を加えて均一に混合する。
C.(10)〜(14)に(15)を加えて中和して、Bに添加して乳化し、水中油型リキッドファンデーションを得た。
【0156】
実施例11で得られた水中油型リキッドファンデーションは、乳化化粧料中での粉体の分散性に優れ美しい外観で、塗布時の止まり際のきしみ感がなく、スライド性及び肌への密着感に優れ、化粧膜の柔軟性に富み、また、外観と付け色のギャップがなく、経時での化粧膜の色沈みもない優れたものであった。さらに、経時安定性に非常に優れたものであった。
【0157】
実施例 12
サンカット(登録商標)ローション:
下記の処方及び製造方法を用いてサンカット(登録商標)ローションを製造した。
【0158】
【0159】
(製造方法)
A.成分(1)〜(6)を70℃にて均一に加熱混合する。
B.Aに成分(7)〜(10)を分散混合する。
C.成分(11)〜(16)を均一に混合し、70℃で保つ。
D.CにBを混合して乳化する。室温まで冷却してサンカット(登録商標)ローションを得た。
【0160】
実施例12で得られたサンカット(登録商標)ローションは、乳化化粧料中での粉体の分散性と乳化物の経時安定性に優れ、化粧膜の柔軟性を向上し、スライド性及び肌への密着感が高く、塗布時の止まり際のきしみのない点において優れたものであった。
【0161】
【発明の効果】
本発明の化粧料は、特定の製造方法で調製した均一な厚さの板状ポリマー粉体を含有することにより、凝集低減による化粧料中での分散性に優れ、塗布時に柔らかな感触を有し、スライド性が高く、かつ肌への密着感があり、また経時での化粧膜の色沈みが少なく、透明感の持続する優れた化粧効果を有するものである。
【0162】
従って、本発明の化粧料は、ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、アイブロウ、アイライナーなどの各種化粧料に使用できるものである。
【0163】
例えば、油性化粧料である本発明化粧料は、肌への密着感が高く、透明感を有しながら同時ににじみ防止効果があり、化粧料としての充分な強度を持ち、柔らかでしなやかな感触、高いスライド性を有しつつ、分散性向上による外観と付け色のギャップが少なく、均一な化粧膜を形成するものであり、非常に優れた化粧効果が得られる。
【0164】
また、乳化化粧料である本発明化粧料は、組成中での分散性と乳化物の経時安定性に優れ、使用に当たっては、化粧膜の柔軟性に優れ、スライド性及び肌への密着感が高いものである。そして、特に油中水型乳化化粧料は、塗布時の止まり際のずるつきがなく、優れた化粧塗膜のなじみ感を有するものであり、また、水中油型乳化化粧料は、塗布時の止まり際のきしみ感が軽減され、更にメーキャップ化粧料においては沈降や凝集がなく均一で美麗な外観を呈し、また外観色と化粧膜の色とのギャップや、塗膜の経時での色くすみがなく、透明感の持続するものであり、化粧効果が非常に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧料に含有される板状ポリマー粉体の製造方法の例を示す工程図である。
【図2】板状ポリマー粉体の製造方法の中で、液層の表面に、重合体溶液の液滴を滴下させた状態を示す図である。
【図3】板状ポリマー粉体の製造方法の中で、液層の表面に重合体溶液の薄膜を形成した状態を示す図である。
【図4】板状ポリマー粉体の例を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
1…… 製膜容器
2…… 液層
2a … 液面
3…… 薄膜
4…… 重合体溶液
4a … 液滴
5…… 滴下容器
6…… 板状ポリマー粉体
6a … 板状ポリマー粉体の表面
d…… 粒径
t…… 厚さ
以 上
Claims (12)
- 嵩比重が5〜20mL/gである板状ポリマー粉体を含有することを特徴とする化粧料。
- 板状ポリマー粉体が、ポリマーを溶解した重合体溶液を常温で液体である液層の液面上に展開させ、脱溶剤して前記液層の上に薄膜を形成させ、この薄膜を粉砕することにより得られるものである請求項第1項記載の化粧料。
- 板状ポリマー粉体を形成するポリマーが、スチレン類、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類からなる群より選ばれた単量体を重合した単独重合体又は前記単量体の少なくとも2種以上を共重合した共重合体である請求項第1項または第2項記載の化粧料。
- メタクリル酸エステル類がメタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルからなる群より選ばれたものである請求項第3項記載の化粧料。
- アクリル酸エステル類がアクリル酸メチル、アククリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシルからなる群より選ばれたものである請求項第3項記載の化粧料。
- 単独重合体が、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルからなる群より選ばれたものである請求項第3項記載の化粧料。
- 共重合体が、メタクリルスチレン(MS)またはメタクリル酸メチルとアクリル酸エステル類とを共重合した共重合体並びにメタクリル酸メチル、アクリル酸エステル類およびメタクリル酸を共重合した三元共重合体からなる群より選ばれたものである請求項第3項記載の化粧料。
- 板状ポリマー粉体の厚さが0.1μm〜20μmである請求項第1項ないし第7項のいずれかの項記載の化粧料。
- 板状ポリマー粉体の含有量が、化粧料全体に対して0.5〜60質量%である請求項第1項ないし第8項のいずれかの項記載の化粧料。
- 油性化粧料である請求項第1項ないし第9項記載の化粧料。
- 乳化化粧料である請求項第1項ないし第9項記載の化粧料。
- 化粧料がファンデーション、頬紅、アイシャドウ、アイブロウ、アイライナーからなる群より選ばれるものである請求項第1項ないし第12項のいずれかの項記載の化粧料。
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