JP2004002120A - 一酸化炭素除去装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】冷却コイル1bを埋設した触媒層1a中に、ガスの通流方向に距離を隔てて複数の温度計6A,6B,6C,6Dを配置して触媒層1aの温度を監視し、測定された温度の最大値が規定温度範囲に保持されるように、ブロア4で供給される選択酸化用空気の流量を制御装置8によって制御し、選択酸化反応の度合いを制御する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然ガス等の炭化水素ガスを水蒸気改質して水素を主成分とする燃料ガスを得る固体高分子形燃料電池用燃料改質システムに用いられる一酸化炭素除去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、燃料の有する化学エネルギーを機械エネルギーや熱エネルギーを経由することなく直接電気エネルギーに変換する装置であり、高いエネルギー変換効率が実現可能である。良く知られた燃料電池の形態では、電解質層を挟んで一対の電極を配置し、一方の電極(アノード側電極)に水素を含有する燃料ガスを供給し、もう一方の電極(カソード側電極)に酸素を含有する酸化剤ガスを供給して、両極間で生じる次式(1)〜(3)のごとき電気化学反応を利用して電気エネルギーが取り出される。
【0003】
【化1】
アノード側 ; H2 → 2H+ +2e− (1)
カソード側 ; (1/2)O2 +2H+ +2e− → H2O (2)
燃料電池全体; H2 + (1/2)O2 → H2O (3)
燃料電池発電装置は使用する電解質の種類により分類されるが、固体高分子形燃料電池、リン酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池等においては、その電解質の性質から、二酸化炭素を含んだ酸化剤ガスや炭酸ガスを使用することが可能である。したがって、これらの燃料電池では、通常、空気を酸化剤ガスとして用い、天然ガス等の炭化水素系の原燃料を水蒸気改質して生成された高濃度の水素を含むガスを燃料ガスとして用いている。このため、この種の燃料電池を備えた燃料電池発電装置には改質器および一酸化炭素変成器が備えられており、これらの改質器と一酸化炭素変成器により原燃料の燃料ガスへの改質が行われている。
【0004】
次式(4)は、改質器におけるメタンの改質反応を示したものである。
【0005】
【化2】
CH4+ H2O → CO+3H2 + 206.14[kJ/mol] (4)
式(4)に見られる通り、メタンの改質反応は吸熱反応であるので、燃料電池のアノード側電極からのオフガスを燃焼させて得られる燃焼熱によって粒状改質触媒を 600〜700℃に加熱して保持し、この粒状改質触媒中に、水蒸気を添加したメタンを導くことによって水素に富む改質ガスが生成される。改質器で得られたこの改質ガスには一酸化炭素が含まれているので、この一酸化炭素の含有量を低減させるために、改質ガスは改質器より一酸化炭素変成器へと送られる。
【0006】
次式(5)は、一酸化炭素変成器における一酸化炭素の変成反応を示したものである。
【0007】
【化3】
CO+ H2O → CO2 + H2 − 41.17[kJ/mol] (5)
式(5)に見られる通り、一酸化炭素の変成反応は発熱反応であるため、冷却して 160〜250℃に保持して行われ、改質ガス中の一酸化炭素の濃度が1%以下に低減される。
【0008】
リン酸形燃料電池の場合には、上記の一酸化炭素濃度の改質ガスを燃料電池に導入することにより発電を行うことができるが、固体高分子形燃料電池の場合には、その動作温度が 60〜80℃と低いため、改質ガス中に上記の濃度の一酸化炭素が存在すると、これが触媒毒となって性能が劣化するので、一酸化炭素濃度をさらに低下させるために改質ガスを一酸化炭素除去装置へと導いて選択酸化反応が行われる。
【0009】
次式(6)は、一酸化炭素除去装置における一酸化炭素の選択酸化反応を示したものである。
【0010】
【化4】
CO+ (1/2)O2 → CO2 − 257.2[kJ/mol] (6)
この一酸化炭素の選択酸化反応も発熱反応であり、触媒層を冷却し、そのピーク温度を 160〜230℃に保持して行われる。ピーク温度が上記の温度範囲よりも低い場合には、選択酸化反応が進行せず、一酸化炭素の濃度も低下しない。一方、ピーク温度が上記の温度範囲よりも高くなると、改質ガス中の炭酸ガスと水素が反応し、式(7)に示したごときメタネーションが起こって水素が消費され、また、発熱反応による過熱によって触媒が熱的にダメージを受ける。したがって、本選択酸化反応においては触媒層のピーク温度を 160〜230℃に保持する制御が重要である。
【0011】
【化5】
CO2+ 4H2 → CH4 + 2H2O − 165.4[kJ/mol] (7)
このように、固体高分子形燃料電池の場合には、一酸化炭素変成器を経たガスを、さらに一酸化炭素除去装置へと導いて一酸化炭素濃度を 10 ppm以下に低減したのち、燃料電池のアノード側電極へと導入する方式が採られているが、上記のように、一酸化炭素除去装置では触媒層のピーク温度を適正温度範囲に保持して運転することが重要である。
【0012】
図3は、この種の一酸化炭素除去装置の従来の構成例を示す基本構成図である。本構成においては、図示しない一酸化炭素変成器から送られた改質ガスに、空気ブロワ4および流量計5によって流量調整された選択酸化用空気が混合され、改質ガス導入配管2を通して一酸化炭素除去装置1へ導入され、触媒層1aにおいて生じる一酸化炭素の選択酸化反応により改質ガス中の一酸化炭素の大半は二酸化炭素となる。一酸化炭素が除去された改質ガスは、改質ガス排出配管3を通して一酸化炭素除去装置1から排出される。なお、触媒層1aの内部には、触媒層1aを冷却するための冷却水を通流させる冷却コイル1bが埋設されており、触媒層1aの代表点の温度を検知する温度計6の検出信号に基づいて流量調節弁7により冷却水流量を調節し、触媒層1aのピーク温度を規定温度範囲に保持する方式が採られている。
【0013】
また、特開平8−133701号公報には、選択酸化触媒の温度を検出し、この温度が活性温度領域となるよう選択酸化用の酸化剤ガスの供給流量を調節して選択酸化反応を調整し、選択酸化触媒の温度を制御するものが開示されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記のごとく、固体高分子形燃料電池の改質ガス系に用いられる一酸化炭素除去装置においては、触媒層のピーク温度を規定温度範囲に保持して運転することが必要であり、触媒層の代表点の測定温度に基づいて、冷却水流量を調節して触媒層の冷却条件を調整したり、あるいは、選択酸化用空気の供給流量を調節して選択酸化反応の度合いを調整することによって、触媒層のピーク温度を規定温度範囲に保持する方式が採られている。
【0015】
しかしながら、一酸化炭素除去装置の触媒層の温度はガスの流れ方向に分布を持ち、かつ、触媒の性能は運転に伴って経時的に変化し、選択酸化反応が活発に起きる部位が時間とともに下流側へと移行するので、触媒層内部の温度分布も経時的に変化する。図4(b)は、図4(a)に示した触媒層内部のガスの流れ方向の温度分布の経時変化を示す特性図で、図中に実線で示した特性Aの分布は運転初期の温度分布、点線で示した特性Bは運転中期の温度分布、一点鎖線で示した特性Cは運転末期の温度分布である。すなわち、本図に見られるごとく触媒層内部の最高温度となる部位は運転の経過とともに下流側へと移行する。したがって、触媒層の代表点の測定温度に基づいて冷却水流量、あるいは選択酸化用空気の供給流量の調節を行って触媒層のピーク温度を規定温度範囲に保持する従来の方式においては、このように代表点で測定された温度と触媒層の実際のピーク温度との間に差を生じることによって、触媒層の一部の温度が選択酸化反応に適当な規定温度範囲を逸脱し、触媒が過熱されて熱的にダメージを受けたり、式(7)のごときメタネーションが起こって水素が消費される危険性がある。
【0016】
また、固体高分子形燃料電池は、反応温度が低いため、反応温度が高いリン酸形燃料電池のように電池本体の発熱によって改質用の水蒸気を発生させることができないので、改質系の機器の中で改質用水蒸気を発生させる必要がある。したがって、発熱反応の一酸化炭素除去反応の熱を有効利用して改質用の水蒸気を発生させることとし、この一酸化炭素除去装置の触媒層の冷却水を水蒸気改質用水として用いれば効率を向上させることができる。しかしながら、この水蒸気改質用水の流量は燃料電池の負荷率により一義的に決まる量であるので、一酸化炭素除去装置の触媒層の温度を制御するためにこの流量を増減させることはできない。したがって、触媒層の代表点の測定温度に基づいて、触媒層の冷却水の流量を調節して触媒層のピーク温度を規定温度範囲に保持する方式を採る場合には、別途外部より流量調整可能な冷却水を供給する必要があり、構成が複雑化するという難点がある。
【0017】
本発明は、上記のごとき従来技術の現状を考慮してなされたもので、その目的は、触媒層の温度が的確に検知されて規定の温度範囲に保持され、過熱部位の発生やメタネーションを起こすことなく安定して一酸化炭素の除去処理が行われる一酸化炭素除去装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明においては、
炭化水素ガスを水蒸気改質して得た改質ガスを触媒層に導入し、空気供給手段より空気を供給して改質ガス中の一酸化炭素を選択酸化反応により二酸化炭素に変える一酸化炭素除去装置において、
(1)触媒層温度を監視する温度計を、触媒層のガス通流方向に距離を隔てて複数個配置することとする。
【0019】
(2)さらに、上記の(1)において、触媒層温度を監視する複数個の上記の温度計の出力を入力し、これらの複数個の測定温度の最大値が規定の温度範囲に保持されるよう空気供給手段へ空気供給量の制御信号を出力する制御装置を備えることとする。
上記の(1)のごとく、触媒層のガス通流方向に距離を隔てて配置した複数個の温度計により触媒層温度を監視すれば、触媒性能が経時的に変化して温度分布が変化する事態となっても触媒層の最高温度をより的確に把握することができる。したがって、このように触媒層の温度を監視すれば、触媒層の部分的な過熱による汚損やメタネーションの発生を防止することができる。
【0020】
また、上記の(2)のごとき制御装置を備えて、空気供給手段の空気供給量を制御して一酸化炭素除去反応を制御して温度を調整することとすれば、図3に示した従来例のように冷却水の流量を増減させる必要がないので、冷却水系に制御系を設ける必要がなく、またこの冷却水を水蒸気改質用水として用いることができるので、熱の有効利用が実現され、効率が向上する。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一酸化炭素除去装置の実施例を示す基本構成図である。なお、本図において、図3に示した従来例の構成要素と同一機能を有する構成要素には同一符号が付されており、重複する説明は省略することとする。
本実施例の構成の第1の特徴は、一酸化炭素除去装置1の触媒層1aに、ガス通流方向に距離を隔てて、4個の温度計6A、6B、6C、6Dが配置され、この複数の温度計によって触媒層の温度が監視されていることにある。また、第2の特徴は、これら4個の温度計6A、6B、6C、6Dの出力を入力し、これらの測定温度のうちの最大値が規定の温度範囲に保持されるように、空気ブロワ4および流量計5からなる空気供給手段へ空気供給量の制御信号を出力する制御装置8が備えられていることにある。
【0022】
図2は、制御装置8における空気供給量の制御方法を示す特性図である。図において、横軸は、触媒層の代表温度、すなわち4個の温度計により測定された温度の最大値から規定の設定温度を差し引いた値であり、縦軸は空気ブロワ4により供給される選択酸化用空気量の規準値からの変位量である。触媒層の代表温度が規定の設定温度を越えた場合には、選択酸化用空気量を規準値より下げて選択酸化反応を抑制し、触媒層の代表温度が規定の設定温度を下回った場合には、選択酸化用空気量を規準値より上げて選択酸化反応を促進させることによって、温度を設定温度に保持する制御が行われる。
【0023】
したがって、本構成では、運転の進行に伴って経時的に温度分布の変化が生じても4個の温度計6A、6B、6C、6Dによって最高温度がより的確に検知され、制御装置8によって最大値が規定の温度範囲に保持されるよう空気供給量が制御されることとなるので、触媒層の過熱やメタネーションの発生が防止され、安定した運転が可能となる。また、触媒層1aに埋設された冷却コイル1bに通流する冷却水の流量を調節する必要がないので、従来例のごとき流量調節弁7は不要であり、冷却コイル1bより排出されたこの冷却水を水蒸気改質用水として用いることができるので、熱が有効利用され、効率が向上する。
【0024】
なお、本構成においては、上述の図2のごとく、触媒層の代表温度と設定値との差により選択酸化用空気量を調節しているが、触媒層の代表温度と設定値との差により空気ブロワの出力を調節することとしてもよい。また、本構成においては、触媒層1aに4個の温度計6A、6B、6C、6Dを配置しているが、設置すべき温度計の個数は4個に限るものではなく、少なくとも2個以上とすればよい。
【0025】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、
(1)炭化水素ガスを水蒸気改質して得た改質ガスを触媒層に導入し、空気供給手段より空気を供給して改質ガス中の一酸化炭素を選択酸化反応により二酸化炭素に変える一酸化炭素除去装置において、触媒層温度を監視する温度計を、触媒層のガス通流方向に距離を隔てて複数個配置することとしたので、運転の継続に伴って触媒層内の温度分布が変化しても、ピーク温度が的確に把握されることとなり、過熱部位の発生やメタネーションを起こすことなく安定して一酸化炭素の除去処理が行われる一酸化炭素除去装置を得ることが可能となった。
【0026】
(2)またさらに、触媒層温度を監視する複数個の上記の温度計の出力を入力し、これらの複数個の測定温度の最大値が規定の温度範囲に保持されるよう空気供給手段へ空気供給量の制御信号を出力する制御装置を備えることとすれば、選択酸化反応が自動的に制御されて触媒層温度が調節されるので、過熱部位の発生やメタネーションを起こすことなく安定して一酸化炭素の除去処理が行われる一酸化炭素除去装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一酸化炭素除去装置の実施例の構成を示す基本構成図
【図2】図1の実施例の制御装置における空気供給量の制御方法を示す特性図
【図3】一酸化炭素除去装置の従来の構成例を示す基本構成図
【図4】一酸化炭素除去装置の触媒層内部の温度分布の経時変化を模式的に示す特性図で、(b)は(a)に示した触媒層の内部のガスの流れ方向の温度分布図
【符号の説明】
1 一酸化炭素除去装置
1a 触媒層
1b 冷却コイル
2 改質ガス導入配管
3 改質ガス排出配管
4 ブロワ
5 流量計
6A,6B,6C,6D 温度計
8 制御装置
Claims (2)
- 炭化水素ガスを水蒸気改質して得た改質ガスを触媒層に導入し、空気供給手段より空気を供給して改質ガス中の一酸化炭素を選択酸化反応により二酸化炭素に変える一酸化炭素除去装置において、触媒層温度を監視する温度計を、前記触媒層のガス通流方向に距離を隔てて複数個配置したことを特徴とする一酸化炭素除去装置。
- 請求項1に記載の一酸化炭素除去装置において、触媒層温度を監視する複数個の前記の温度計の出力を入力し、これらの複数個の測定温度の最大値が規定の温度範囲に保持されるよう前記の空気供給手段へ空気供給量の制御信号を出力する制御装置を備えたことを特徴とする一酸化炭素除去装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002161010A JP2004002120A (ja) | 2002-06-03 | 2002-06-03 | 一酸化炭素除去装置 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2004002120A true JP2004002120A (ja) | 2004-01-08 |
Family
ID=30430200
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JP2002161010A Withdrawn JP2004002120A (ja) | 2002-06-03 | 2002-06-03 | 一酸化炭素除去装置 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2004002120A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007308318A (ja) * | 2006-05-17 | 2007-11-29 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | 改質装置及びその運転方法 |
JP2008074688A (ja) * | 2006-09-25 | 2008-04-03 | Aisin Seiki Co Ltd | 改質装置 |
JP2010262747A (ja) * | 2009-04-30 | 2010-11-18 | Eneos Celltech Co Ltd | 燃料電池用改質装置 |
JP2012059412A (ja) * | 2010-09-06 | 2012-03-22 | Eneos Celltech Co Ltd | 燃料電池システム |
-
2002
- 2002-06-03 JP JP2002161010A patent/JP2004002120A/ja not_active Withdrawn
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