JP2004001240A - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、ブロンジングを発生させることなく、印字プリントの保存中の滲み耐性や耐水性を改良し、かつインク吸収性に優れたインクジェット記録用紙を提供することである。
【解決手段】非吸水性支持体上に、無機微粒子とバインダーを含有する多孔質層をインク受容層として有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が、水抽出率が異なる少なくとも2種の多価金属化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【選択図】 なし
【解決手段】非吸水性支持体上に、無機微粒子とバインダーを含有する多孔質層をインク受容層として有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が、水抽出率が異なる少なくとも2種の多価金属化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、写真画質のプリントを形成するインクジェット記録用紙に関し、詳しくは、ブロンジングを発生させることなく、水溶性染料を用いた印字プリントの保存時の滲み耐性や耐水性を改良したインクジェット記録用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録材料は、急速にその画質向上が図られ、写真画質に迫りつつある。特に、写真画質に匹敵する画質をインクジェット記録で達成するために、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)の面からもその改良が進んでおり、高平滑性の支持体上に微粒子と親水性ポリマーからなる微小な空隙層を設けた空隙型の記録用紙は、高い光沢を有し、鮮やかな発色を示し、インク吸収性及び乾燥性に優れていることから、最も写真画質に近いものの一つになりつつある。特に、非吸水性支持体を使用した場合は、吸水性支持体に見られるようなプリント後のコックリング、いわゆる「しわ」の発生がなく、高平滑な表面を維持できるため、より高品位なプリントを得ることができる。
【0003】
インクジェット記録は、一般に、水溶性染料インクを用いる場合と顔料インクを用いる場合とに大きく分けられる。顔料インクは、画像の耐久性が高いが、画像状に光沢が変化しやすく、その結果、写真画質に近いプリントを得にくく、一方、水溶性染料インクを用いると、画像の鮮明性が高く、かつ均一な表面光沢を有する写真画質に匹敵するカラープリントが得られる。
【0004】
しかしながら、この水溶性染料は親水性が高いため、滲みが発生したり耐水性が劣るという欠点を有している。すなわち、画像記録後に、高湿下で長期間保存したり、プリント面上に水滴が付着した場合、染料が滲みやすい。
【0005】
この問題を解決するため、一般には、カチオン性物質のような染料固着性物質を多孔質層中に添加しておくことが行われている。例えば、カチオン性ポリマーを用いてアニオン性の染料と結合させ、強固に不動化する方法が好ましく用いられている。このようなカチオン性ポリマーとしては、4級アンモニウム塩の重合物等があげられ、例えば、「インクジェットプリンター技術と材料」(株式会社シーエムシー発行 1998年7月)や特開平9−193532号の従来技術に記載されている。また、水溶性の多価金属イオンを予めインクジェット記録用紙中に添加しておき、インクジェット記録時に染料を凝集固着させて不動化させる方法も提案されている。
【0006】
しかしながら、カチオン性ポリマーや水溶性多価金属イオンの添加により、滲みや耐水性を高めれば、染料が凝集して表面で凝集しやすくなり、その結果として、画像表面が金属光沢状のブロンジング現象を起こしやすくなる。このブロンジング現象は、一般にプリントを高湿状態で保管した場合に起きやすくなる。
【0007】
ジルコニウム原子やアルミニウム原子を含有する化合物をインクジェット記録用紙に用いることは既に知られている。例えば、特開昭55−53591号、同55−150396号、同56−867789号、同58−89391号および同58−94491号には、水溶性染料と結合して難溶性塩を形成する水溶性多価金属塩を添加したインクジェット記録用紙が開示されている。また、特開昭60−67190号、同61−10484号、および同61−57379号には、カチオン性ポリマーと水溶性多価金属塩を添加したインクジェット記録用紙が開示されている。また、特開昭60−257286号には、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物を含有したインクジェット記録用紙が開示されている。また、特開平10−258567号には、親水性高分子と4A族元素含有水溶性化合物を併用する方法が、特開平10−309862号には親水性高分子と多価カルボン酸にジルコニル化合物を併用する方法が開示されている。さらに、ジルコニウム元素を含む化合物に関しては、特開平4−7189号に多孔性顔料と酸塩化ジルコニウム化合物を用いた方法が開示されている。同公報には、酸塩化ジルコニウム塩の添加により、比較的少量のバインダーで接着強度が得られ、画質向上が図れたと記載されている。また、特開平6−32046号には、ジルコニウム化合物をシリカと変性ポリビニルアルコールと組み合わせた方法が開示されている。さらに、欧州特許第754,560号には、水溶性バインダー、顔料、ジルコニウム化合物、カチオン性ポリマーを併用する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記のような水溶性多価金属塩を含有させる場合、充分な滲み耐性や耐水性を向上させる効果を得るまでに添加量を増すと、ブロンジングを引き起こしやすく、またはブロンジングを引き起こさないように添加量を減らすと滲み耐性が不十分になりやすい欠点があることが判明した。
【0009】
すなわち、多価金属化合物をインク吸収層に含有したインクジェット記録用紙では、その多価金属化合物の特性の違いによる使い分けが重要であることが判明し、早急な改良が必要とされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、その目的は、ブロンジングを発生させることなく、印字プリントの保存中の滲み耐性や耐水性を改良し、かつインク吸収性に優れたインクジェット記録用紙を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0012】
1.非吸水性支持体上に、無機微粒子とバインダーを含有する多孔質層をインク受容層として有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が、水抽出率が異なる少なくとも2種の多価金属化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0013】
2.水抽出率の最も高い多価金属化合物が、分子内にアルミニウム原子を有する化合物(但し、酸化アルミニウムを除く)であることを特徴とする前記1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0014】
3.水抽出率の最も低い多価金属化合物が、分子内にジルコニウム原子を有する化合物(但し酸化ジルコニウムを除く)であることを特徴とする前記1又は2項に記載のインクジェット記録用紙。
【0015】
4.非吸水性支持体上に、無機微粒子とバインダーを含有する多孔質層をインク受容層として有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が、少なくとも1種の分子内にアルミニウム原子を有する化合物(酸化アルミニウムを除く)と、少なくとも1種の分子内にジルコニウム原子を有する化合物(但し、酸化ジルコニルを除く)とを含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0016】
5.前記無機微粒子の一次平均粒径が、3〜100nmであることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0017】
6.前記無機微粒子が、シリカ微粒子またはアルミナ微粒子であることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0018】
7.前記無機微粒子が、気相法シリカであることを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0019】
8.前記バインダーが、ポリビニルアルコールであることを特徴とする前記1〜7項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0020】
9.前記インク受容層が、架橋剤を含有することを特徴とする前記1〜8項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0021】
10.前記架橋剤が、ホウ酸であることを特徴とする前記9項に記載のインクジェット記録用紙。
【0022】
11.前記インク受容層が、第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有することを特徴とする前記1〜10項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0023】
12.前記第4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーが、側鎖に該第4級アンモニウム塩基を有することを特徴とする前記11項に記載のインクジェット記録用紙。
【0024】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討を行った結果、無機微粒子、バインダー及び水抽出率が異なる少なくとも2種の多価金属化合物を含有させることで、ブロンジングを引き起こすことなく、滲み耐性や耐水性を改良することができることを見いだし、本発明に至った次第である。
【0025】
以下、本発明の詳細について説明する。
はじめに、本発明に係る多価金属化合物について説明する。
【0026】
本発明では、インク受容層が、水抽出率が異なる少なくとも2種の多価金属化合物を含有することが特徴である。
【0027】
本発明でいう多価金属化合物の水抽出率は、下式に従って求めることができる。
【0028】
水抽出率(%)=(インク受容層からの水抽出分)/(インク受容層中の含有量)
上記式中のインク受容層からの水抽出分及びインク受容層中の含有量は、例えば、以下のようにして求められる。
【0029】
(インク受容層からの水抽出分の測定)
インクジェット記録用紙20cm2を切り取り、剃刀でインク受容層を剥離する。剥離したインク受容層を50mlの遠沈管に入れ、さらに超純水を20ml加えた後、2時間放置する。次に、遠心分離器(5000rpm、5分)を用いて、剥離したインク受容層の固形分と水相に分離する。水相を50mlメスフラスコに移し、遠沈管に20mlの超純水を加え、軽く攪拌後、遠心分離器(5000rpm、5分)を用いて、固形分と水相に分ける。水相を先の50mlメスフラスコに移し、超純水で50mlに仕上げる。このようにして得られた水相を、ICP発光分析装置(例えば、セイコー電子社製、SPS4000)を使用して、求められた多価金属化合物の定量値をインク受容層からの水抽出分とする。
【0030】
(インク受容層中の含有量)
上記操作で残ったインク受容層を遠沈管より取り出し、マイクロウェーブ式湿式分解装置(例えば、Microdigest6、プロラボ社製)を用いて分解する。分解に使用する酸は硫酸と硝酸の混酸を用いる。分解後50mlに調液し、0.45μmのフィルターで不溶成分の除去を行い、得られた分解液をICP発光分析装置(例えば、セイコー電子社製、SPS4000)を使用して分析を行う。このようにして求められた多価金属化合物の定量分と上記インク受容層からの多価金属化合物の抽出分の和がインク受容層中の多価金属化合物の含有量として求められる。
【0031】
上記のICP発光分析装置を用いた多価金属化合物の定量に関しては、検量線法を用いることができ、ICP発光分析装置の分析波長については、例えば、ジルコニウム原子を有する化合物の場合には分析波長339.198nm(出力1.3kW)、アルミニウム原子を有する化合物の場合には369.152nm(出力1.3kW)で求めることができる。
【0032】
また、検量線は、マイクロウェーブ式湿式分解装置を用いた分解に使用した混酸溶液に原子吸光分析用試薬(関東化学社製)を添加して用いることができる。
【0033】
水抽出性の高い多価金属化合物をインク受容層に添加すると、滲み耐性は向上するが、画像表面が画像様に金属光沢状のブロンジング現象を起こし易くなることが分かってきた。
【0034】
この機構は明らかではないが、水抽出性の高い多価金属化合物は、水溶性染料インクが印字された際に、インク中の水分により拡散し、染料が固着して不動化すると共に、多価金属化合物が染料を凝集・析出させる、または、染料が固着している多価金属化合物が凝集・析出するためにブロンジングが起こると本発明者は考えている。
【0035】
本発明は、画像保存の際の滲みを抑えるために用いる多価金属化合物に起因するブロンジングを抑えることを1つの目的として、水抽出性の異なる少なくとも2種の多価金属化合物を併用するものである。
【0036】
本発明の構成によって、滲み耐性を改良し、ブロンジングが抑えられることの機構は明確ではないが、水抽出性の低い多価金属化合物が共存することにより、水抽出性の高い多価金属化合物が結晶化するのを抑制するためであると本発明者は考えている。
【0037】
本発明において、水抽出性の異なる少なくとも2種の多価金属化合物を併用する時、水抽出性の最も高い多価金属化合物と、水抽出性の最も低い多価金属化合物の添加質量比は、1:99〜99:1であれば、本発明の効果を発揮することができる。
【0038】
次に、本発明に好ましく用いられるジルコニウム原子またはアルミニウム原子を有する化合物について説明する。
【0039】
本発明で用いることのできるジルコニウム原子またはアルミニウム原子を含有する化合物は、無機酸や有機酸の単塩および複塩、有機金属化合物、金属錯体などのいずれであっても良いが、インク吸収層に均一に添加できるものが好ましい。
【0040】
本発明で用いることのできる上記ジルコニウム原子を有する化合物の具体例としては、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニル等各種ジルコニル化合物、およびジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニウムなどの各種有機ジルコニウム化合物が挙げられる。これらのジルコニウム原子を含む化合物の中でも、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニルが好ましく、酢酸ジルコニル、酸塩化ジルコニウムがより好ましい。
【0041】
本発明で用いることのできる上記アルミニウム原子を有する化合物の具体例としては、塩基性塩化アルミニウム(ポリ塩化アルミニウム)、塩基性硫酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム等のポリマー構造を有する無機アルミニウム化合物、およびエチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0042】
本発明に係るアルミニウム原子を有する化合物(但し酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウムを除く)の中でも、ポリ塩化アルミニウム化合物、ポリ硫酸アルミニウム化合物、またはポリ硫酸ケイ酸アルミニウム化合物であることが、特に好ましい。
【0043】
ポリ塩化アルミニウム化合物は、一般式〔Al2(OH)nCl6−n〕m、〔Al(OH)3〕n・AlCl3で示されるものであり、例えば、〔Al6(OH)15〕3+、〔Al8(OH)20〕4+、〔Al13(OH)34〕5+などのような塩基性で、かつ高い陽電子を持った多核縮合イオン(高分子性)を有効成分として、安定に含んでいるポリ塩化アルミニウムである。
【0044】
ポリ塩化アルミニウム化合物の市販品としては、例えば、浅田化学(株)製のポリ水酸化アルミニウム(Paho)、多木化学(株)製のポリ塩化アルミニウム(PAC)、(株)理研グリーン製のピュラケムWTが挙げられる。
【0045】
また、ポリ硫酸アルミニウム化合物は、一般式〔Al2(OH)n(SO4)6−n/2〕m(ただし、0<n<6)で表されるものであり、市販品としては浅田化学(株)製の塩基性硫酸アルミニウム(AHS)が挙げられる。
【0046】
ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム化合物の市販品としては、日本軽金属(株)製のPASSが挙げられる。
【0047】
上記ジルコニウム原子またはアルミニウム原子を含む化合物は、インク吸収層を形成する塗布液に添加してから塗布乾燥しても良いし、多孔質層を一旦塗布乾燥した後、インク吸収層にオーバーコート法により添加しても良い。
【0048】
上記ジルコニウム原子またはアルミニウム原子を含む化合物を、インク吸収層を形成する塗布液に添加する場合、水や有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に均一に溶解して添加すること、あるいはサンドミルなどの湿式粉砕法や乳化分散などの方法により微細な粒子に分散して添加することができる。インク吸収層が複数の層から構成される場合には、1層のみ添加してもよく、2層以上の層あるいは全ての層を形成する塗布液に添加することもできる。
【0049】
また、多孔質インク吸収層を一旦形成した後、オーバーコート方法により添加する場合には、均一な溶液に溶解して添加するのが好ましい。
【0050】
ジルコニウム原子またはアルミニウム原子を含む化合物は、インクジェット記録用紙1m2当たり、通常0.01〜5g、好ましくは0.05〜2g、特に好ましくは0.1〜1gの範囲で用いられる。
【0051】
上記化合物は2種以上を併用しても良く、この場合、ジルコニウム原子を含む化合物を2種以上を併用することも、アルミニウム原子を含む化合物を2種以上併用することもできる。
【0052】
(無機微粒子)
次に、本発明に用いられる無機微粒子について説明する。
【0053】
無機微粒子としては、従来のインクジェット記録用紙で公知の各種の固体微粒子を用いることができる。
【0054】
無機微粒子の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることが出来る。
【0055】
その様な無機微粒子は、一次粒子のままでバインダー中に均一に分散された状態で用いても、また、二次凝集粒子を形成してバインダー中に分散された状態で添加されても良いが、本発明では後者が好ましい。
【0056】
上記無機微粒子の形状は、本発明では特に制約を受けず、球状、棒状、針状、平板状、数珠状のいずれであっても良い。無機微粒子は、その一次平均粒径は3〜200nmのものが好ましい。平均粒径が200nmを越える微粒子を使用した場合には記録用紙の光沢性が低下したり、あるいは表面での光散乱による最高濃度の低下が生じたりして鮮明な画像が得にくくなる。平均粒径の下限は、特に限定されないが、粒子の製造上の観点から概ね3nm以上が好ましい。特に好ましい無機微粒子は、その一次平均粒径が3〜100nmである。
【0057】
上記無機微粒子の使用量は、記録用紙1m2当たり概ね3〜30g、好ましくは5〜25gである。
【0058】
本発明において、微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、多数個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0059】
本発明に係る無機微粒子としては、無機微粒子と少量の有機物(低分子化合物でも、高分子化合物でもよい)とからなる複合粒子でも、実質的には無機微粒子と見なす。この場合も乾燥被膜中に観察される最高次粒子の粒径をもってしてその無機微粒子の粒径とする。本発明において、無機微粒子と少量の有機物との複合粒子における有機物/無機微粒子の質量比は、概ね1/100〜1/4である。
【0060】
本発明に係る無機微粒子としては、低コストであることや高い反射濃度が得られる観点から低屈折率の微粒子であることが好ましく、シリカ、中でも気相法で合成されたシリカまたはコロイダルシリカがより好ましい。また、カチオン表面処理された気相法シリカ、カチオン表面処理されたコロイダルシリカ及びアルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等も用いることができる。
【0061】
(バインダー)
インク吸収層に用いられるバインダーとしては、疎水性バインダーまたは親水性バインダーが用いられるが、好ましくは親水性バインダーである。
【0062】
親水性バインダーとしては、例えば、ゼラチン(アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、アミノ基をフェニルイソシアネートや無水フタル酸等で封鎖した誘導体ゼラチンなど)、ポリビニルアルコール(平均重合度が300〜5000、ケン化度が80〜99.5%が好ましい)、ポリビニルピロリドン、ポリエチオレンオキシド、ヒドロキシルエチルセルロース、寒天、プルラン、デキストラン、アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、アルギン酸等が挙げられ、2種類以上を併用することもできる。これらの中、好ましい親水性ポリマーはポリビニルアルコールである。
【0063】
ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルを加水分解して得られ、本発明では平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1000〜5000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0064】
このポリビリルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0065】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することもできる。
【0066】
上記無機微粒子の使用量は、親水性バインダーに対して質量比で概ね1.5〜12倍であり、好ましくは2〜10倍、特に好ましくは3〜8倍である。
【0067】
(カチオン性ポリマー)
次に、本発明に係るカチオン性ポリマーについて説明する。
【0068】
本発明の記録用紙のインク吸収層に用いられるカチオン性ポリマーとして、特に制限はなく、インクジェット記録用紙で従来公知のカチオン性ポリマーが挙げられ、その中でも第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが好ましい。例えば、特開昭57−64591号に記載のグアニジル基を有するカチオン性ポリマー、特開昭59−20696号に記載のジメチルジアリルアンモニウムクロライド、特開昭59−33176号に記載のポリアミンスルホン類、特開昭63−115780号の(メタ)アクリル酸アルキル第4級アンモニウム塩または(メタ)アクリルアミドアルキル第4級アンモニウム塩型カチオン性ポリマー、特開昭64−9776号および同64−75281号に記載のジメチルアリルアンモニウムクロライドとアクリルアミドの共重合ポリマー、特開平3−133686号に記載の繰り返し単位中に第4級窒素原子を2個以上含有するカチオン性ポリマー、特開平4−288283号に記載の第4級アンモニウム塩基を有するポリビニルピロリドン、特開平6−92010号および同6−234268号に記載の2級アミンとエピハロヒドリンとの反応により得られるカチオン性ポリマー、国際特許公開99−64248号に記載のポリスチレン型カチオン性ポリマー、特開平11−348409号に記載の2種以上のカチオン性基を有する繰り返し単位からなるカチオン性ポリマーなどを挙げることができる。
【0069】
本発明で特に好ましいカチオン性ポリマーは、第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが好ましく、第4級アンモニウム塩基を側鎖に有するカチオン性ポリマーがより好ましく、特に好ましくは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するカチオン性ポリマーである。
【0070】
【化1】
【0071】
一般式(1)において、Rは水素原子またはアルキル基を表し、R1、R2、R3は各々アルキル基またはベンジル基を表し、Jは単なる結合手または2価の有機基を表す。X−はアニオン基を表す。
【0072】
前記一般式(1)において、Rで表されるアルキル基としては、メチル基が好ましい。R1、R2、およびR3で表されるアルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基またはベンジル基である。Jで表される2価の有機基としては、好ましくは−CON(R′)−を表す。R′は水素原子またはアルキル基を表す。
【0073】
Xで表されるアニオン基は、例えば、ハロゲンイオン、酢酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0074】
好ましいカチオン性ポリマーは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるホモポリマーであってもよく、他の共重合可能な単量体との共重合であってもよい。共重合可能な繰り返し単位としては、前記一般式(1)以外のカチオン性単量体および、カチオン性基を有しない単量体を挙げることができる。
【0075】
カチオン性基を有する単量体としては、例えば、下記の繰り返し単位を挙げることができる。
【0076】
【化2】
【0077】
カチオン性基を有しない共重合可能な繰り返し単位としては、例えば、エチレン、スチレン、ブタジエン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート、アクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルメチルエーテル、塩化ビニル、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、アクリルニトリルなどを挙げることができる。
【0078】
本発明で好ましく用いられるカチオン性ポリマーが、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する場合、前記一般式(1)で表される繰り返し単位は、好ましくは20モル%以上、特に好ましくは40〜100モル%である。
【0079】
本発明に係る一般式(1)で表される繰り返し単位を有するカチオン性ポリマーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
【化3】
【0081】
【化4】
【0082】
【化5】
【0083】
上記カチオン性ポリマーの重量平均分子量は、概ね3000〜20万であり、好ましくは5000〜10万である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められたポリエチレングリコール換算の値で表す。
【0084】
本発明に係るカチオン性ポリマーの使用量は、記録用紙1m2当たり、概ね0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gである。
【0085】
(架橋剤)
親水性バインダーとしてポリビニルアルコールを使用する場合、空隙層中には皮膜の造膜性を改善し、また皮膜の耐水性や強度を高めるために、架橋剤を含有することが好ましい。
【0086】
そのような架橋剤としては、例えば、ホウ酸またはその塩、エポキシ系架橋剤(例えば、ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系架橋剤(例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系架橋剤(例えば、2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(例えば、1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミ明礬、イソシアネート系化合物等が挙げられ、その中でも、ホウ酸またはその塩が好ましい。
【0087】
ホウ酸またはその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことを示し、具体的にはオルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸およびそれらの塩が含まれる。
【0088】
ホウ酸またはその塩の使用量は、塗布液の無機微粒子や親水性バインダーの量により広範に変わり得るが、親水性バインダーに対して概ね1〜60質量%、好ましくは5〜40質量%である。
【0089】
ホウ酸またはその塩などの架橋剤は、本発明に用いられる多孔質層形成用の水溶性塗布液を塗布する際に、該塗布液中に添加してもよく、あるいは架橋剤を含まない多孔質層形成用の水溶性塗布液を塗布、乾燥した後、架橋剤を含有する溶液をオーバーコートするなどして供給することができる。
【0090】
本発明では、上記ホウ酸に加えて、前述の他の架橋剤を併用することもできる。
【0091】
架橋剤の使用量は、親水性バインダーの種類、架橋剤の種類、無機微粒子の種類や親水性バインダーに対する比率等により変化するが、例えば、親水性バインダーとしてポリビニルアルコールを用いる場合には、通常、ポリビニルアルコール1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜300mgである。
【0092】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層には上記以外の各種の添加剤を添加することができ、例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、アニオン、カチオンまたは非イオン性の各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0093】
(支持体)
次に、本発明のインクジェット記録用紙に用いられる支持体について説明する。
【0094】
本発明のインクジェット記録用紙の支持体は、非吸水性の支持体である。吸水性支持体を用いた場合、本発明に係る多価金属化合物が、インク吸収層を形成する際、またはその後の保存時に支持体中に拡散して本発明の効果を十分に発揮することができない。
【0095】
本発明に用いられる非吸水性支持体としては、プラスチック樹脂フィルム支持体、あるいは紙の両面をプラスチック樹脂フィルムで被覆した支持体が挙げられる。プラスチック樹脂フィルム支持体としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルムあるいはこれらの積層したフィルム支持体等が挙げられる。これらのプラスチック樹脂フィルムは、透明または半透明なものも使用できる。
【0096】
本発明においては、プリント時のコックリング(しわ)が発生しない非吸水性支持体が好ましく、特に好ましい支持体は、紙の両面をプラスチック樹脂で被覆した支持体であり、最も好ましいのは紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体である。
【0097】
以下、本発明で特に好ましい支持体である紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体について説明する。
【0098】
本発明に係る支持体で用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP及び/またはLDPの比率は10〜70%が好ましい。上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0099】
紙中には、例えば、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0100】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。
【0101】
紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に、70〜200gが好ましい。紙の厚さは50〜210μmが好ましい。
【0102】
紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P 8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0103】
紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。
【0104】
紙のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、pH5〜9であることが好ましい。
【0105】
次に、この紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0106】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。
紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0107】
特に、塗布層側のポリオレフィン層は、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリオレフィンに対して概ね1〜20%、好ましくは2〜15%である。
【0108】
ポリオレフィン層中には、白地の調整を行うための耐熱性の高い着色顔料や蛍光増白剤を添加することができる。
【0109】
着色顔料としては、例えば、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。
【0110】
蛍光増白剤としては、例えば、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0111】
紙の表裏のポリエチレンの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、一般にはポリエチレン層の厚さはインク吸収層側で15〜50μm、バック層側で10〜40μmの範囲である。表裏のポリエチレンの比率はインク受容層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のポリエチレンの比率は、厚みで概ね3/1〜1/3である。
【0112】
更に、上記ポリエチレンで被覆紙支持体は、以下(1)〜(7)の特性を有していることが好ましい。
【0113】
(1)引っ張り強さ:JIS P 8113で規定される強度で縦方向が19.6〜294N、横方向が9.8〜196Nであることが好ましい。
【0114】
(2)引き裂き強度:JIS P 8116で規定される強度で縦方向が0.20〜2.94N、横方向が0.098〜2.45Nが好ましい。
【0115】
(3)圧縮弾性率:9.8kN/cm2が好ましい。
(4)不透明度:JIS P 8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい。
【0116】
(5)白さ:JIS Z 8727で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜96、a*=−3〜+5、b*=−7〜+2であることが好ましい。
【0117】
(6)クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である支持体が好ましい。
【0118】
(7)原紙中の水分は、中紙に対して4〜10%が好ましい。
(8)インク受容層を設ける光沢度(75度鏡面光沢度)は10〜90%が好ましい。
【0119】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層は、単一の層構成を有するインク吸収層であっても多層構成からなるインク吸収層であっても良いが、非吸水性支持体から最も離れたインク吸収層が、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するカチオン性ポリマーを少なくとも1種含有することが好ましい。
【0120】
(その他のインクジェット記録用紙の構成因子)
本発明のインクジェット記録用紙において、多孔質インク吸収層及び下引き層など必要に応じて適宜設けられる各種の層を支持体上に塗布する方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができる。好ましい方法は、各層を構成する塗布液を支持体上に塗設して乾燥して得られる。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての親水性バインダー層を1回の塗布で済ます同時塗布が好ましい。
【0121】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0122】
本発明のインクジェット記録用紙の記録面の膜面pHは、3.0〜7.5が好ましい。膜面pHが3.0以上であれば、インクジェットで記録した際に染料が析出して金属状に光沢が変化するいわゆるブロンジングを防止でき、また、膜面pHが7.5以下であれば、十分な滲み耐性を発揮することができる。
【0123】
本発明のインクジェット記録用紙の記録面の膜面pHの測定は、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.49に記載の方法に従って、蒸留水を用い、30秒後に測定する方法で求めることができる。
【0124】
本発明において、記録面の膜面pHは、記録面を形成する塗工液のpHを調整することにより所定の範囲にすることができる。また、記録面を形成した後、適当なpH調整剤をオーバーコートすることにより所定の範囲にすることもできる。pH調整剤としては適当な酸やアルカリの水溶液を用いることもでき、この場合、使用する酸やアルカリの種類、濃度は、調整するpHの幅によって適宜選択することができる。
【0125】
なお、本発明のインクジェット記録用紙は、特に水溶性染料インクを用いたインクジェット記録において特に効果が大きく好ましいが、顔料インクを用いたインクジェット記録でも使用することが出来る。
【0126】
本発明のインクジェット記録用紙を用いて画像記録する際には、水性インクを用いた記録方法が好ましく用いられる。
【0127】
上記水性インクとは、下記着色剤及び溶媒、その他の添加剤を有する記録液体である。着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が使用できる。
【0128】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0129】
その他の水性インクの添加剤としては、例えば、pH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤、等が挙げられる。
【0130】
水性インク液は、記録用紙に対する濡れ性を良好にするために、20℃において、通常、0.025〜0.06N/m、好ましくは0.03〜0.05N/mの範囲内の表面張力を有するのが好ましい。上記インクのpHは、好ましくは5〜10であり、特に好ましくは6〜9である。
【0131】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。尚、実施例中で「%」は特に断りのない限り質量%を示す。
【0132】
実施例1
《インクジェット記録用紙の作製》
(支持体1の作製)
含水率が6%、坪量が200g/m2の写真用原紙の裏面側に、押し出し塗布法により密度が0.92の低密度ポリエチレンを35μmの厚さで塗布した。次いで、表面側にアナターゼ型酸化チタンを5.5%含有する、密度が0.92の低密度ポリエチレンを40μmの厚さで押し出し塗布法で塗布して、両面をポリエチレンで被覆した支持体1を作製した。表側にコロナ放電を行いポリビニルアルコールからなる下引き層を0.03g/m2、裏面にもコロナ放電を行った後ラテックス層を0.12g/m2になるように塗布した。
【0133】
(シリカ分散液−1の調製)
一次粒子の平均粒径が約0.014μmの気相法シリカ(トクヤマ製:レオロシールQS−20)125kgを、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用い、硝酸でpHを3.0に調整した。620Lの純水中に室温で吸引分散した後、UvitexNFWliquid(チバスペシャリティーケミカル)1.5Lを撹拌分散しながら添加した後、全量を694Lに純水で仕上げた。この分散液を希釈して、無機微粒子の電子顕微鏡写真を撮影したところ、殆どの粒子が0.02μm以下のサイズであり、一次粒子まで分散されていることを確認した。
【0134】
(シリカ分散液−2の調製)
カチオン性ポリマー(HP−1)を1.63kg、エタノールを2.2L、n−プロパノールを1.5L含有する水溶液(pH=3.0)18Lに、上記シリカ分散液−1の69.4Lを攪拌しながら添加し、次いで、ホウ酸275gとホウ砂165gを含有する水溶液7.0Lを添加し、更に、消泡剤SN381(サンノプコ株式会社製)を1g添加した。この混合液を三和工業株式会社製高圧ホモジナイザーで分散し、全量を純水で97Lに仕上げてシリカ分散液−2を調製した。
【0135】
このシリカ分散液−2を希釈して透明な支持体上に塗布し、電子顕微鏡で観察した結果、平均粒径が約50nm(二次粒子)のサイズであった。
【0136】
【化6】
【0137】
(塗布液−1の調製)
次いで、上記のようにして得られたシリカ分散液−2を使用して、下記の塗布液を調製した。
【0138】
シリカ分散液−2の650mLを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0139】
1:ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA203)
の10%水溶液 6ml
2:ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)
の5%水溶液 260ml
3:ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)
の5%水溶液 95ml
4:界面活性剤(S−1)30%溶液 4ml
5:アニオン性蛍光増白剤(チバスペシャリティーケミカルズ製;UVITE
X NFW LIQUID9)の10%液 10ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。塗布液のpHは約4.5であった。
【0140】
【化7】
【0141】
(記録用紙101の作製)
前記作製した支持体1に、上記塗布液−1を湿潤膜厚が140μmになるように塗布し、約7℃に一度冷却した後に、20〜65℃の風を吹き付けて乾燥して、記録用紙101を作製した。
【0142】
(記録用紙102の作製)
上記記録用紙101に、硝酸ジルコニウムを固形分付量として0.5g/m2になるようにオーバーコートして、記録用紙102を作製した。
【0143】
(記録用紙103の作製)
上記記録用紙101に、酢酸ジルコニウムを固形分付量が0.5g/m2になるようにオーバーコートして、記録用紙103を作製した。
【0144】
(記録用紙104の作製)
上記記録用紙101に、ポリ塩化アルミニウム化合物(多木化学(株)製PAC250A、酸化アルミニウム(Al2O3)換算濃度=10%)を固形分付量が0.5g/m2になるようにオーバーコートして、記録用紙104を作製した。
【0145】
(記録用紙105の作製)
上記記録用紙101に、硝酸ジルコニウムを固形分付量が0.25g/m2、ポリ塩化アルミニウム化合物(多木化学(株)製PAC250A、酸化アルミニウム(Al2O3)換算濃度=10%)を固形分付量が0.25g/m2になるようにオーバーコートして、記録用紙105を作製した。
【0146】
(記録用紙106の作製)
上記記録用紙101に、酢酸ジルコニウムを固形分付量が0.25g/m2、ポリ塩化アルミニウム化合物(多木化学(株)製PAC250A、酸化アルミニウム(Al2O3)換算濃度=10%)を固形分付量が0.25g/m2になるようにオーバーコートして、記録用紙106を作製した。
【0147】
(記録用紙107、108の作製)
上記記録用紙106の作製において、酢酸ジルコニウムとポリ塩化アルミニウム化合物との添加量を、表1に記載のように変更した以外は同様にして、記録用紙107、108を作製した。
【0148】
(記録用紙109〜111の作製)
上記記録用紙106の作製において、塗布液−1で用いたカチオン性ポリマー(HP−1)を、表1に記載のカチオン性ポリマーに変更した以外は同様にして、記録用紙109〜111を作製した。
【0149】
《記録用紙の各特性評価》
(多価金属化合物の水抽出率の測定)
上記作製した各記録用紙について、下記の方法に従って多価金属化合物の水抽出率を測定した。
【0150】
〈インク受容層からの水抽出分〉
各記録用紙を20cm2切り取り、剃刀でインク受容層を剥離し、剥離したインク受容層を50mlの遠沈管に入れ、さらに超純水を20ml加えた後、1時間放置した。次に、遠心分離器(5000rpm、5分)を用いて、剥離したインク受容層の固形分と水相に分離した。分離した水相を、50mlメスフラスコに移し、遠沈管に20mlの超純水を加え、軽く攪拌後、遠心分離機(5000rpm、5分)を用いて、固形分と水相に分け、水相を先の50mlメスフラスコに移し、超純水で50mlに調液した。このようにして得られた水相を、ICP発光分析装置(セイコー電子社製、SPS4000)を使用して、求められた多価金属化合物の定量値をインク受容層からの水抽出分とした。
【0151】
〈インク受容層中の含有量〉
上記操作で残ったインク受容層を遠沈管より取り出し、硫酸と硝酸との混酸を使用し、マイクロウェーブ式湿式分解装置(Microdigest6、プロラボ社製)を用いて分解した。分解後、50mlに調液し、0.45μmのフィルターで不溶成分の除去を行い、得られた分解液をICP発光分析装置(セイコー電子社製、SPS4000)を使用し、求められた多価金属化合物の定量分と上記インク受容層からの多価金属化合物の水抽出分との和がインク受容層中の多価金属化合物の含有量として算出した。
【0152】
ICP発光分析装置を用いた定量に関しては、検量線法を用い、ICP発光分析装置の分析波長については、ジルコニウム原子を有する化合物の場合は分析波長339.198nm(出力1.3kW)、アルミニウム原子を有する化合物の場合は369.152nm(出力1.3kW)で求めた。
【0153】
また、検量線は、マイクロウェーブ式湿式分解装置を用いた分解に使用した混酸溶液に原子吸光分析用試薬(関東化学社製)を添加して用いた。
【0154】
以上により求めたインク受容層からの多価金属化合物の水抽出分とインク受容層中の多価金属化合物の含有量から、下式に従って水抽出率を求めた。
【0155】
水抽出率(%)=(インク受容層からの水抽出分)/(インク受容層中の含有量)
(滲み耐性の評価)
上記作製した各記録用紙を用いて、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM770Cで、マゼンタのベタプリントを背景として線幅が約0.3mmのブラックラインをプリントし、50℃、相対湿度85%で7日間保存した。次いで、保存前後での各線幅をマイクロデンシトメーターで測定(反射濃度が最大濃度の50%部分の幅を線幅とした)し、下式で表される滲み率を測定し、下記の基準に則り滲み耐性の評価を行った。なお、滲み率は、少ない程滲み耐性が良好であることを示す。
【0156】
滲み率=(画像保存後の線幅)/(画像保存前の線幅)
◎:滲み率が1〜1.20倍である
○:滲み率が1.21〜1.4倍である
△:滲み率が1.41〜1.6倍である
×:滲み率が1.61倍以上である
(ブロンジングの評価)
上記と同様のインクジェットプリンターで、各記録用紙に黒のベタ画像をプリントし、23℃、相対湿度80%で1週間保存した後、プリント画像の状態を目視で観察して、下記の基準に則りブロンジングを評価した。
【0157】
○:ブロンジングが、ほとんど認められない
△:一部でブロンジングが認められるが実用上問題ない
×:ブロンジングが激しく認められる。
【0158】
以上により得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
表1より明らかなように、本発明の水抽出率の異なる2種の多価金属化合物を使用したインクジェット記録用紙は滲み、ブロンジングともに良好な結果が得られることが分かる。
【0161】
また、本発明に係る一般式(1)で表されるカチオン性ポリマーを使用したインクジェット記録用紙は、ブロンジングを劣化させることなく、滲みを改良できることが分かる。
【0162】
実施例2
実施例1に記載の塗布液−1の調製において、塗布液を完成させる前に酢酸ジルコニウム、ポリ塩化アルミニウム化合物(多木化学(株)製PAC250A、酸化アルミニウム(Al2O3)換算濃度=10%)のそれぞれの固形分付量が、実施例1に記載の記録用紙106と等しくなるように添加し、記録用紙201を作製した。
【0163】
上記作製した記録用紙201について、実施例1と同様の方法で滲み耐性及びブロンジングを評価した結果、いずれの特性も良好な結果が得られ、本発明に係る多価金属化合物は、添加方法に依らず、効果が得られることが分かった。
【0164】
【発明の効果】
本発明により、ブロンジングを発生させることなく、印字プリントの保存中の滲み耐性や耐水性を改良し、かつインク吸収性に優れたインクジェット記録用紙を提供することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、写真画質のプリントを形成するインクジェット記録用紙に関し、詳しくは、ブロンジングを発生させることなく、水溶性染料を用いた印字プリントの保存時の滲み耐性や耐水性を改良したインクジェット記録用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録材料は、急速にその画質向上が図られ、写真画質に迫りつつある。特に、写真画質に匹敵する画質をインクジェット記録で達成するために、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)の面からもその改良が進んでおり、高平滑性の支持体上に微粒子と親水性ポリマーからなる微小な空隙層を設けた空隙型の記録用紙は、高い光沢を有し、鮮やかな発色を示し、インク吸収性及び乾燥性に優れていることから、最も写真画質に近いものの一つになりつつある。特に、非吸水性支持体を使用した場合は、吸水性支持体に見られるようなプリント後のコックリング、いわゆる「しわ」の発生がなく、高平滑な表面を維持できるため、より高品位なプリントを得ることができる。
【0003】
インクジェット記録は、一般に、水溶性染料インクを用いる場合と顔料インクを用いる場合とに大きく分けられる。顔料インクは、画像の耐久性が高いが、画像状に光沢が変化しやすく、その結果、写真画質に近いプリントを得にくく、一方、水溶性染料インクを用いると、画像の鮮明性が高く、かつ均一な表面光沢を有する写真画質に匹敵するカラープリントが得られる。
【0004】
しかしながら、この水溶性染料は親水性が高いため、滲みが発生したり耐水性が劣るという欠点を有している。すなわち、画像記録後に、高湿下で長期間保存したり、プリント面上に水滴が付着した場合、染料が滲みやすい。
【0005】
この問題を解決するため、一般には、カチオン性物質のような染料固着性物質を多孔質層中に添加しておくことが行われている。例えば、カチオン性ポリマーを用いてアニオン性の染料と結合させ、強固に不動化する方法が好ましく用いられている。このようなカチオン性ポリマーとしては、4級アンモニウム塩の重合物等があげられ、例えば、「インクジェットプリンター技術と材料」(株式会社シーエムシー発行 1998年7月)や特開平9−193532号の従来技術に記載されている。また、水溶性の多価金属イオンを予めインクジェット記録用紙中に添加しておき、インクジェット記録時に染料を凝集固着させて不動化させる方法も提案されている。
【0006】
しかしながら、カチオン性ポリマーや水溶性多価金属イオンの添加により、滲みや耐水性を高めれば、染料が凝集して表面で凝集しやすくなり、その結果として、画像表面が金属光沢状のブロンジング現象を起こしやすくなる。このブロンジング現象は、一般にプリントを高湿状態で保管した場合に起きやすくなる。
【0007】
ジルコニウム原子やアルミニウム原子を含有する化合物をインクジェット記録用紙に用いることは既に知られている。例えば、特開昭55−53591号、同55−150396号、同56−867789号、同58−89391号および同58−94491号には、水溶性染料と結合して難溶性塩を形成する水溶性多価金属塩を添加したインクジェット記録用紙が開示されている。また、特開昭60−67190号、同61−10484号、および同61−57379号には、カチオン性ポリマーと水溶性多価金属塩を添加したインクジェット記録用紙が開示されている。また、特開昭60−257286号には、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物を含有したインクジェット記録用紙が開示されている。また、特開平10−258567号には、親水性高分子と4A族元素含有水溶性化合物を併用する方法が、特開平10−309862号には親水性高分子と多価カルボン酸にジルコニル化合物を併用する方法が開示されている。さらに、ジルコニウム元素を含む化合物に関しては、特開平4−7189号に多孔性顔料と酸塩化ジルコニウム化合物を用いた方法が開示されている。同公報には、酸塩化ジルコニウム塩の添加により、比較的少量のバインダーで接着強度が得られ、画質向上が図れたと記載されている。また、特開平6−32046号には、ジルコニウム化合物をシリカと変性ポリビニルアルコールと組み合わせた方法が開示されている。さらに、欧州特許第754,560号には、水溶性バインダー、顔料、ジルコニウム化合物、カチオン性ポリマーを併用する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記のような水溶性多価金属塩を含有させる場合、充分な滲み耐性や耐水性を向上させる効果を得るまでに添加量を増すと、ブロンジングを引き起こしやすく、またはブロンジングを引き起こさないように添加量を減らすと滲み耐性が不十分になりやすい欠点があることが判明した。
【0009】
すなわち、多価金属化合物をインク吸収層に含有したインクジェット記録用紙では、その多価金属化合物の特性の違いによる使い分けが重要であることが判明し、早急な改良が必要とされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、その目的は、ブロンジングを発生させることなく、印字プリントの保存中の滲み耐性や耐水性を改良し、かつインク吸収性に優れたインクジェット記録用紙を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0012】
1.非吸水性支持体上に、無機微粒子とバインダーを含有する多孔質層をインク受容層として有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が、水抽出率が異なる少なくとも2種の多価金属化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0013】
2.水抽出率の最も高い多価金属化合物が、分子内にアルミニウム原子を有する化合物(但し、酸化アルミニウムを除く)であることを特徴とする前記1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0014】
3.水抽出率の最も低い多価金属化合物が、分子内にジルコニウム原子を有する化合物(但し酸化ジルコニウムを除く)であることを特徴とする前記1又は2項に記載のインクジェット記録用紙。
【0015】
4.非吸水性支持体上に、無機微粒子とバインダーを含有する多孔質層をインク受容層として有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が、少なくとも1種の分子内にアルミニウム原子を有する化合物(酸化アルミニウムを除く)と、少なくとも1種の分子内にジルコニウム原子を有する化合物(但し、酸化ジルコニルを除く)とを含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0016】
5.前記無機微粒子の一次平均粒径が、3〜100nmであることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0017】
6.前記無機微粒子が、シリカ微粒子またはアルミナ微粒子であることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0018】
7.前記無機微粒子が、気相法シリカであることを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0019】
8.前記バインダーが、ポリビニルアルコールであることを特徴とする前記1〜7項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0020】
9.前記インク受容層が、架橋剤を含有することを特徴とする前記1〜8項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0021】
10.前記架橋剤が、ホウ酸であることを特徴とする前記9項に記載のインクジェット記録用紙。
【0022】
11.前記インク受容層が、第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有することを特徴とする前記1〜10項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0023】
12.前記第4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーが、側鎖に該第4級アンモニウム塩基を有することを特徴とする前記11項に記載のインクジェット記録用紙。
【0024】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討を行った結果、無機微粒子、バインダー及び水抽出率が異なる少なくとも2種の多価金属化合物を含有させることで、ブロンジングを引き起こすことなく、滲み耐性や耐水性を改良することができることを見いだし、本発明に至った次第である。
【0025】
以下、本発明の詳細について説明する。
はじめに、本発明に係る多価金属化合物について説明する。
【0026】
本発明では、インク受容層が、水抽出率が異なる少なくとも2種の多価金属化合物を含有することが特徴である。
【0027】
本発明でいう多価金属化合物の水抽出率は、下式に従って求めることができる。
【0028】
水抽出率(%)=(インク受容層からの水抽出分)/(インク受容層中の含有量)
上記式中のインク受容層からの水抽出分及びインク受容層中の含有量は、例えば、以下のようにして求められる。
【0029】
(インク受容層からの水抽出分の測定)
インクジェット記録用紙20cm2を切り取り、剃刀でインク受容層を剥離する。剥離したインク受容層を50mlの遠沈管に入れ、さらに超純水を20ml加えた後、2時間放置する。次に、遠心分離器(5000rpm、5分)を用いて、剥離したインク受容層の固形分と水相に分離する。水相を50mlメスフラスコに移し、遠沈管に20mlの超純水を加え、軽く攪拌後、遠心分離器(5000rpm、5分)を用いて、固形分と水相に分ける。水相を先の50mlメスフラスコに移し、超純水で50mlに仕上げる。このようにして得られた水相を、ICP発光分析装置(例えば、セイコー電子社製、SPS4000)を使用して、求められた多価金属化合物の定量値をインク受容層からの水抽出分とする。
【0030】
(インク受容層中の含有量)
上記操作で残ったインク受容層を遠沈管より取り出し、マイクロウェーブ式湿式分解装置(例えば、Microdigest6、プロラボ社製)を用いて分解する。分解に使用する酸は硫酸と硝酸の混酸を用いる。分解後50mlに調液し、0.45μmのフィルターで不溶成分の除去を行い、得られた分解液をICP発光分析装置(例えば、セイコー電子社製、SPS4000)を使用して分析を行う。このようにして求められた多価金属化合物の定量分と上記インク受容層からの多価金属化合物の抽出分の和がインク受容層中の多価金属化合物の含有量として求められる。
【0031】
上記のICP発光分析装置を用いた多価金属化合物の定量に関しては、検量線法を用いることができ、ICP発光分析装置の分析波長については、例えば、ジルコニウム原子を有する化合物の場合には分析波長339.198nm(出力1.3kW)、アルミニウム原子を有する化合物の場合には369.152nm(出力1.3kW)で求めることができる。
【0032】
また、検量線は、マイクロウェーブ式湿式分解装置を用いた分解に使用した混酸溶液に原子吸光分析用試薬(関東化学社製)を添加して用いることができる。
【0033】
水抽出性の高い多価金属化合物をインク受容層に添加すると、滲み耐性は向上するが、画像表面が画像様に金属光沢状のブロンジング現象を起こし易くなることが分かってきた。
【0034】
この機構は明らかではないが、水抽出性の高い多価金属化合物は、水溶性染料インクが印字された際に、インク中の水分により拡散し、染料が固着して不動化すると共に、多価金属化合物が染料を凝集・析出させる、または、染料が固着している多価金属化合物が凝集・析出するためにブロンジングが起こると本発明者は考えている。
【0035】
本発明は、画像保存の際の滲みを抑えるために用いる多価金属化合物に起因するブロンジングを抑えることを1つの目的として、水抽出性の異なる少なくとも2種の多価金属化合物を併用するものである。
【0036】
本発明の構成によって、滲み耐性を改良し、ブロンジングが抑えられることの機構は明確ではないが、水抽出性の低い多価金属化合物が共存することにより、水抽出性の高い多価金属化合物が結晶化するのを抑制するためであると本発明者は考えている。
【0037】
本発明において、水抽出性の異なる少なくとも2種の多価金属化合物を併用する時、水抽出性の最も高い多価金属化合物と、水抽出性の最も低い多価金属化合物の添加質量比は、1:99〜99:1であれば、本発明の効果を発揮することができる。
【0038】
次に、本発明に好ましく用いられるジルコニウム原子またはアルミニウム原子を有する化合物について説明する。
【0039】
本発明で用いることのできるジルコニウム原子またはアルミニウム原子を含有する化合物は、無機酸や有機酸の単塩および複塩、有機金属化合物、金属錯体などのいずれであっても良いが、インク吸収層に均一に添加できるものが好ましい。
【0040】
本発明で用いることのできる上記ジルコニウム原子を有する化合物の具体例としては、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニル等各種ジルコニル化合物、およびジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニウムなどの各種有機ジルコニウム化合物が挙げられる。これらのジルコニウム原子を含む化合物の中でも、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニルが好ましく、酢酸ジルコニル、酸塩化ジルコニウムがより好ましい。
【0041】
本発明で用いることのできる上記アルミニウム原子を有する化合物の具体例としては、塩基性塩化アルミニウム(ポリ塩化アルミニウム)、塩基性硫酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム等のポリマー構造を有する無機アルミニウム化合物、およびエチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0042】
本発明に係るアルミニウム原子を有する化合物(但し酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウムを除く)の中でも、ポリ塩化アルミニウム化合物、ポリ硫酸アルミニウム化合物、またはポリ硫酸ケイ酸アルミニウム化合物であることが、特に好ましい。
【0043】
ポリ塩化アルミニウム化合物は、一般式〔Al2(OH)nCl6−n〕m、〔Al(OH)3〕n・AlCl3で示されるものであり、例えば、〔Al6(OH)15〕3+、〔Al8(OH)20〕4+、〔Al13(OH)34〕5+などのような塩基性で、かつ高い陽電子を持った多核縮合イオン(高分子性)を有効成分として、安定に含んでいるポリ塩化アルミニウムである。
【0044】
ポリ塩化アルミニウム化合物の市販品としては、例えば、浅田化学(株)製のポリ水酸化アルミニウム(Paho)、多木化学(株)製のポリ塩化アルミニウム(PAC)、(株)理研グリーン製のピュラケムWTが挙げられる。
【0045】
また、ポリ硫酸アルミニウム化合物は、一般式〔Al2(OH)n(SO4)6−n/2〕m(ただし、0<n<6)で表されるものであり、市販品としては浅田化学(株)製の塩基性硫酸アルミニウム(AHS)が挙げられる。
【0046】
ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム化合物の市販品としては、日本軽金属(株)製のPASSが挙げられる。
【0047】
上記ジルコニウム原子またはアルミニウム原子を含む化合物は、インク吸収層を形成する塗布液に添加してから塗布乾燥しても良いし、多孔質層を一旦塗布乾燥した後、インク吸収層にオーバーコート法により添加しても良い。
【0048】
上記ジルコニウム原子またはアルミニウム原子を含む化合物を、インク吸収層を形成する塗布液に添加する場合、水や有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に均一に溶解して添加すること、あるいはサンドミルなどの湿式粉砕法や乳化分散などの方法により微細な粒子に分散して添加することができる。インク吸収層が複数の層から構成される場合には、1層のみ添加してもよく、2層以上の層あるいは全ての層を形成する塗布液に添加することもできる。
【0049】
また、多孔質インク吸収層を一旦形成した後、オーバーコート方法により添加する場合には、均一な溶液に溶解して添加するのが好ましい。
【0050】
ジルコニウム原子またはアルミニウム原子を含む化合物は、インクジェット記録用紙1m2当たり、通常0.01〜5g、好ましくは0.05〜2g、特に好ましくは0.1〜1gの範囲で用いられる。
【0051】
上記化合物は2種以上を併用しても良く、この場合、ジルコニウム原子を含む化合物を2種以上を併用することも、アルミニウム原子を含む化合物を2種以上併用することもできる。
【0052】
(無機微粒子)
次に、本発明に用いられる無機微粒子について説明する。
【0053】
無機微粒子としては、従来のインクジェット記録用紙で公知の各種の固体微粒子を用いることができる。
【0054】
無機微粒子の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることが出来る。
【0055】
その様な無機微粒子は、一次粒子のままでバインダー中に均一に分散された状態で用いても、また、二次凝集粒子を形成してバインダー中に分散された状態で添加されても良いが、本発明では後者が好ましい。
【0056】
上記無機微粒子の形状は、本発明では特に制約を受けず、球状、棒状、針状、平板状、数珠状のいずれであっても良い。無機微粒子は、その一次平均粒径は3〜200nmのものが好ましい。平均粒径が200nmを越える微粒子を使用した場合には記録用紙の光沢性が低下したり、あるいは表面での光散乱による最高濃度の低下が生じたりして鮮明な画像が得にくくなる。平均粒径の下限は、特に限定されないが、粒子の製造上の観点から概ね3nm以上が好ましい。特に好ましい無機微粒子は、その一次平均粒径が3〜100nmである。
【0057】
上記無機微粒子の使用量は、記録用紙1m2当たり概ね3〜30g、好ましくは5〜25gである。
【0058】
本発明において、微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、多数個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0059】
本発明に係る無機微粒子としては、無機微粒子と少量の有機物(低分子化合物でも、高分子化合物でもよい)とからなる複合粒子でも、実質的には無機微粒子と見なす。この場合も乾燥被膜中に観察される最高次粒子の粒径をもってしてその無機微粒子の粒径とする。本発明において、無機微粒子と少量の有機物との複合粒子における有機物/無機微粒子の質量比は、概ね1/100〜1/4である。
【0060】
本発明に係る無機微粒子としては、低コストであることや高い反射濃度が得られる観点から低屈折率の微粒子であることが好ましく、シリカ、中でも気相法で合成されたシリカまたはコロイダルシリカがより好ましい。また、カチオン表面処理された気相法シリカ、カチオン表面処理されたコロイダルシリカ及びアルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等も用いることができる。
【0061】
(バインダー)
インク吸収層に用いられるバインダーとしては、疎水性バインダーまたは親水性バインダーが用いられるが、好ましくは親水性バインダーである。
【0062】
親水性バインダーとしては、例えば、ゼラチン(アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、アミノ基をフェニルイソシアネートや無水フタル酸等で封鎖した誘導体ゼラチンなど)、ポリビニルアルコール(平均重合度が300〜5000、ケン化度が80〜99.5%が好ましい)、ポリビニルピロリドン、ポリエチオレンオキシド、ヒドロキシルエチルセルロース、寒天、プルラン、デキストラン、アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、アルギン酸等が挙げられ、2種類以上を併用することもできる。これらの中、好ましい親水性ポリマーはポリビニルアルコールである。
【0063】
ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルを加水分解して得られ、本発明では平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1000〜5000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0064】
このポリビリルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0065】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することもできる。
【0066】
上記無機微粒子の使用量は、親水性バインダーに対して質量比で概ね1.5〜12倍であり、好ましくは2〜10倍、特に好ましくは3〜8倍である。
【0067】
(カチオン性ポリマー)
次に、本発明に係るカチオン性ポリマーについて説明する。
【0068】
本発明の記録用紙のインク吸収層に用いられるカチオン性ポリマーとして、特に制限はなく、インクジェット記録用紙で従来公知のカチオン性ポリマーが挙げられ、その中でも第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが好ましい。例えば、特開昭57−64591号に記載のグアニジル基を有するカチオン性ポリマー、特開昭59−20696号に記載のジメチルジアリルアンモニウムクロライド、特開昭59−33176号に記載のポリアミンスルホン類、特開昭63−115780号の(メタ)アクリル酸アルキル第4級アンモニウム塩または(メタ)アクリルアミドアルキル第4級アンモニウム塩型カチオン性ポリマー、特開昭64−9776号および同64−75281号に記載のジメチルアリルアンモニウムクロライドとアクリルアミドの共重合ポリマー、特開平3−133686号に記載の繰り返し単位中に第4級窒素原子を2個以上含有するカチオン性ポリマー、特開平4−288283号に記載の第4級アンモニウム塩基を有するポリビニルピロリドン、特開平6−92010号および同6−234268号に記載の2級アミンとエピハロヒドリンとの反応により得られるカチオン性ポリマー、国際特許公開99−64248号に記載のポリスチレン型カチオン性ポリマー、特開平11−348409号に記載の2種以上のカチオン性基を有する繰り返し単位からなるカチオン性ポリマーなどを挙げることができる。
【0069】
本発明で特に好ましいカチオン性ポリマーは、第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが好ましく、第4級アンモニウム塩基を側鎖に有するカチオン性ポリマーがより好ましく、特に好ましくは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するカチオン性ポリマーである。
【0070】
【化1】
【0071】
一般式(1)において、Rは水素原子またはアルキル基を表し、R1、R2、R3は各々アルキル基またはベンジル基を表し、Jは単なる結合手または2価の有機基を表す。X−はアニオン基を表す。
【0072】
前記一般式(1)において、Rで表されるアルキル基としては、メチル基が好ましい。R1、R2、およびR3で表されるアルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基またはベンジル基である。Jで表される2価の有機基としては、好ましくは−CON(R′)−を表す。R′は水素原子またはアルキル基を表す。
【0073】
Xで表されるアニオン基は、例えば、ハロゲンイオン、酢酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0074】
好ましいカチオン性ポリマーは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるホモポリマーであってもよく、他の共重合可能な単量体との共重合であってもよい。共重合可能な繰り返し単位としては、前記一般式(1)以外のカチオン性単量体および、カチオン性基を有しない単量体を挙げることができる。
【0075】
カチオン性基を有する単量体としては、例えば、下記の繰り返し単位を挙げることができる。
【0076】
【化2】
【0077】
カチオン性基を有しない共重合可能な繰り返し単位としては、例えば、エチレン、スチレン、ブタジエン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート、アクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルメチルエーテル、塩化ビニル、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、アクリルニトリルなどを挙げることができる。
【0078】
本発明で好ましく用いられるカチオン性ポリマーが、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する場合、前記一般式(1)で表される繰り返し単位は、好ましくは20モル%以上、特に好ましくは40〜100モル%である。
【0079】
本発明に係る一般式(1)で表される繰り返し単位を有するカチオン性ポリマーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
【化3】
【0081】
【化4】
【0082】
【化5】
【0083】
上記カチオン性ポリマーの重量平均分子量は、概ね3000〜20万であり、好ましくは5000〜10万である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められたポリエチレングリコール換算の値で表す。
【0084】
本発明に係るカチオン性ポリマーの使用量は、記録用紙1m2当たり、概ね0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gである。
【0085】
(架橋剤)
親水性バインダーとしてポリビニルアルコールを使用する場合、空隙層中には皮膜の造膜性を改善し、また皮膜の耐水性や強度を高めるために、架橋剤を含有することが好ましい。
【0086】
そのような架橋剤としては、例えば、ホウ酸またはその塩、エポキシ系架橋剤(例えば、ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系架橋剤(例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系架橋剤(例えば、2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(例えば、1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミ明礬、イソシアネート系化合物等が挙げられ、その中でも、ホウ酸またはその塩が好ましい。
【0087】
ホウ酸またはその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことを示し、具体的にはオルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸およびそれらの塩が含まれる。
【0088】
ホウ酸またはその塩の使用量は、塗布液の無機微粒子や親水性バインダーの量により広範に変わり得るが、親水性バインダーに対して概ね1〜60質量%、好ましくは5〜40質量%である。
【0089】
ホウ酸またはその塩などの架橋剤は、本発明に用いられる多孔質層形成用の水溶性塗布液を塗布する際に、該塗布液中に添加してもよく、あるいは架橋剤を含まない多孔質層形成用の水溶性塗布液を塗布、乾燥した後、架橋剤を含有する溶液をオーバーコートするなどして供給することができる。
【0090】
本発明では、上記ホウ酸に加えて、前述の他の架橋剤を併用することもできる。
【0091】
架橋剤の使用量は、親水性バインダーの種類、架橋剤の種類、無機微粒子の種類や親水性バインダーに対する比率等により変化するが、例えば、親水性バインダーとしてポリビニルアルコールを用いる場合には、通常、ポリビニルアルコール1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜300mgである。
【0092】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層には上記以外の各種の添加剤を添加することができ、例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、アニオン、カチオンまたは非イオン性の各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0093】
(支持体)
次に、本発明のインクジェット記録用紙に用いられる支持体について説明する。
【0094】
本発明のインクジェット記録用紙の支持体は、非吸水性の支持体である。吸水性支持体を用いた場合、本発明に係る多価金属化合物が、インク吸収層を形成する際、またはその後の保存時に支持体中に拡散して本発明の効果を十分に発揮することができない。
【0095】
本発明に用いられる非吸水性支持体としては、プラスチック樹脂フィルム支持体、あるいは紙の両面をプラスチック樹脂フィルムで被覆した支持体が挙げられる。プラスチック樹脂フィルム支持体としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルムあるいはこれらの積層したフィルム支持体等が挙げられる。これらのプラスチック樹脂フィルムは、透明または半透明なものも使用できる。
【0096】
本発明においては、プリント時のコックリング(しわ)が発生しない非吸水性支持体が好ましく、特に好ましい支持体は、紙の両面をプラスチック樹脂で被覆した支持体であり、最も好ましいのは紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体である。
【0097】
以下、本発明で特に好ましい支持体である紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体について説明する。
【0098】
本発明に係る支持体で用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP及び/またはLDPの比率は10〜70%が好ましい。上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0099】
紙中には、例えば、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0100】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。
【0101】
紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に、70〜200gが好ましい。紙の厚さは50〜210μmが好ましい。
【0102】
紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P 8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0103】
紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。
【0104】
紙のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、pH5〜9であることが好ましい。
【0105】
次に、この紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0106】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。
紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0107】
特に、塗布層側のポリオレフィン層は、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリオレフィンに対して概ね1〜20%、好ましくは2〜15%である。
【0108】
ポリオレフィン層中には、白地の調整を行うための耐熱性の高い着色顔料や蛍光増白剤を添加することができる。
【0109】
着色顔料としては、例えば、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。
【0110】
蛍光増白剤としては、例えば、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0111】
紙の表裏のポリエチレンの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、一般にはポリエチレン層の厚さはインク吸収層側で15〜50μm、バック層側で10〜40μmの範囲である。表裏のポリエチレンの比率はインク受容層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のポリエチレンの比率は、厚みで概ね3/1〜1/3である。
【0112】
更に、上記ポリエチレンで被覆紙支持体は、以下(1)〜(7)の特性を有していることが好ましい。
【0113】
(1)引っ張り強さ:JIS P 8113で規定される強度で縦方向が19.6〜294N、横方向が9.8〜196Nであることが好ましい。
【0114】
(2)引き裂き強度:JIS P 8116で規定される強度で縦方向が0.20〜2.94N、横方向が0.098〜2.45Nが好ましい。
【0115】
(3)圧縮弾性率:9.8kN/cm2が好ましい。
(4)不透明度:JIS P 8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい。
【0116】
(5)白さ:JIS Z 8727で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜96、a*=−3〜+5、b*=−7〜+2であることが好ましい。
【0117】
(6)クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である支持体が好ましい。
【0118】
(7)原紙中の水分は、中紙に対して4〜10%が好ましい。
(8)インク受容層を設ける光沢度(75度鏡面光沢度)は10〜90%が好ましい。
【0119】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層は、単一の層構成を有するインク吸収層であっても多層構成からなるインク吸収層であっても良いが、非吸水性支持体から最も離れたインク吸収層が、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するカチオン性ポリマーを少なくとも1種含有することが好ましい。
【0120】
(その他のインクジェット記録用紙の構成因子)
本発明のインクジェット記録用紙において、多孔質インク吸収層及び下引き層など必要に応じて適宜設けられる各種の層を支持体上に塗布する方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができる。好ましい方法は、各層を構成する塗布液を支持体上に塗設して乾燥して得られる。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての親水性バインダー層を1回の塗布で済ます同時塗布が好ましい。
【0121】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0122】
本発明のインクジェット記録用紙の記録面の膜面pHは、3.0〜7.5が好ましい。膜面pHが3.0以上であれば、インクジェットで記録した際に染料が析出して金属状に光沢が変化するいわゆるブロンジングを防止でき、また、膜面pHが7.5以下であれば、十分な滲み耐性を発揮することができる。
【0123】
本発明のインクジェット記録用紙の記録面の膜面pHの測定は、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.49に記載の方法に従って、蒸留水を用い、30秒後に測定する方法で求めることができる。
【0124】
本発明において、記録面の膜面pHは、記録面を形成する塗工液のpHを調整することにより所定の範囲にすることができる。また、記録面を形成した後、適当なpH調整剤をオーバーコートすることにより所定の範囲にすることもできる。pH調整剤としては適当な酸やアルカリの水溶液を用いることもでき、この場合、使用する酸やアルカリの種類、濃度は、調整するpHの幅によって適宜選択することができる。
【0125】
なお、本発明のインクジェット記録用紙は、特に水溶性染料インクを用いたインクジェット記録において特に効果が大きく好ましいが、顔料インクを用いたインクジェット記録でも使用することが出来る。
【0126】
本発明のインクジェット記録用紙を用いて画像記録する際には、水性インクを用いた記録方法が好ましく用いられる。
【0127】
上記水性インクとは、下記着色剤及び溶媒、その他の添加剤を有する記録液体である。着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が使用できる。
【0128】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0129】
その他の水性インクの添加剤としては、例えば、pH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤、等が挙げられる。
【0130】
水性インク液は、記録用紙に対する濡れ性を良好にするために、20℃において、通常、0.025〜0.06N/m、好ましくは0.03〜0.05N/mの範囲内の表面張力を有するのが好ましい。上記インクのpHは、好ましくは5〜10であり、特に好ましくは6〜9である。
【0131】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。尚、実施例中で「%」は特に断りのない限り質量%を示す。
【0132】
実施例1
《インクジェット記録用紙の作製》
(支持体1の作製)
含水率が6%、坪量が200g/m2の写真用原紙の裏面側に、押し出し塗布法により密度が0.92の低密度ポリエチレンを35μmの厚さで塗布した。次いで、表面側にアナターゼ型酸化チタンを5.5%含有する、密度が0.92の低密度ポリエチレンを40μmの厚さで押し出し塗布法で塗布して、両面をポリエチレンで被覆した支持体1を作製した。表側にコロナ放電を行いポリビニルアルコールからなる下引き層を0.03g/m2、裏面にもコロナ放電を行った後ラテックス層を0.12g/m2になるように塗布した。
【0133】
(シリカ分散液−1の調製)
一次粒子の平均粒径が約0.014μmの気相法シリカ(トクヤマ製:レオロシールQS−20)125kgを、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用い、硝酸でpHを3.0に調整した。620Lの純水中に室温で吸引分散した後、UvitexNFWliquid(チバスペシャリティーケミカル)1.5Lを撹拌分散しながら添加した後、全量を694Lに純水で仕上げた。この分散液を希釈して、無機微粒子の電子顕微鏡写真を撮影したところ、殆どの粒子が0.02μm以下のサイズであり、一次粒子まで分散されていることを確認した。
【0134】
(シリカ分散液−2の調製)
カチオン性ポリマー(HP−1)を1.63kg、エタノールを2.2L、n−プロパノールを1.5L含有する水溶液(pH=3.0)18Lに、上記シリカ分散液−1の69.4Lを攪拌しながら添加し、次いで、ホウ酸275gとホウ砂165gを含有する水溶液7.0Lを添加し、更に、消泡剤SN381(サンノプコ株式会社製)を1g添加した。この混合液を三和工業株式会社製高圧ホモジナイザーで分散し、全量を純水で97Lに仕上げてシリカ分散液−2を調製した。
【0135】
このシリカ分散液−2を希釈して透明な支持体上に塗布し、電子顕微鏡で観察した結果、平均粒径が約50nm(二次粒子)のサイズであった。
【0136】
【化6】
【0137】
(塗布液−1の調製)
次いで、上記のようにして得られたシリカ分散液−2を使用して、下記の塗布液を調製した。
【0138】
シリカ分散液−2の650mLを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0139】
1:ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA203)
の10%水溶液 6ml
2:ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)
の5%水溶液 260ml
3:ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)
の5%水溶液 95ml
4:界面活性剤(S−1)30%溶液 4ml
5:アニオン性蛍光増白剤(チバスペシャリティーケミカルズ製;UVITE
X NFW LIQUID9)の10%液 10ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。塗布液のpHは約4.5であった。
【0140】
【化7】
【0141】
(記録用紙101の作製)
前記作製した支持体1に、上記塗布液−1を湿潤膜厚が140μmになるように塗布し、約7℃に一度冷却した後に、20〜65℃の風を吹き付けて乾燥して、記録用紙101を作製した。
【0142】
(記録用紙102の作製)
上記記録用紙101に、硝酸ジルコニウムを固形分付量として0.5g/m2になるようにオーバーコートして、記録用紙102を作製した。
【0143】
(記録用紙103の作製)
上記記録用紙101に、酢酸ジルコニウムを固形分付量が0.5g/m2になるようにオーバーコートして、記録用紙103を作製した。
【0144】
(記録用紙104の作製)
上記記録用紙101に、ポリ塩化アルミニウム化合物(多木化学(株)製PAC250A、酸化アルミニウム(Al2O3)換算濃度=10%)を固形分付量が0.5g/m2になるようにオーバーコートして、記録用紙104を作製した。
【0145】
(記録用紙105の作製)
上記記録用紙101に、硝酸ジルコニウムを固形分付量が0.25g/m2、ポリ塩化アルミニウム化合物(多木化学(株)製PAC250A、酸化アルミニウム(Al2O3)換算濃度=10%)を固形分付量が0.25g/m2になるようにオーバーコートして、記録用紙105を作製した。
【0146】
(記録用紙106の作製)
上記記録用紙101に、酢酸ジルコニウムを固形分付量が0.25g/m2、ポリ塩化アルミニウム化合物(多木化学(株)製PAC250A、酸化アルミニウム(Al2O3)換算濃度=10%)を固形分付量が0.25g/m2になるようにオーバーコートして、記録用紙106を作製した。
【0147】
(記録用紙107、108の作製)
上記記録用紙106の作製において、酢酸ジルコニウムとポリ塩化アルミニウム化合物との添加量を、表1に記載のように変更した以外は同様にして、記録用紙107、108を作製した。
【0148】
(記録用紙109〜111の作製)
上記記録用紙106の作製において、塗布液−1で用いたカチオン性ポリマー(HP−1)を、表1に記載のカチオン性ポリマーに変更した以外は同様にして、記録用紙109〜111を作製した。
【0149】
《記録用紙の各特性評価》
(多価金属化合物の水抽出率の測定)
上記作製した各記録用紙について、下記の方法に従って多価金属化合物の水抽出率を測定した。
【0150】
〈インク受容層からの水抽出分〉
各記録用紙を20cm2切り取り、剃刀でインク受容層を剥離し、剥離したインク受容層を50mlの遠沈管に入れ、さらに超純水を20ml加えた後、1時間放置した。次に、遠心分離器(5000rpm、5分)を用いて、剥離したインク受容層の固形分と水相に分離した。分離した水相を、50mlメスフラスコに移し、遠沈管に20mlの超純水を加え、軽く攪拌後、遠心分離機(5000rpm、5分)を用いて、固形分と水相に分け、水相を先の50mlメスフラスコに移し、超純水で50mlに調液した。このようにして得られた水相を、ICP発光分析装置(セイコー電子社製、SPS4000)を使用して、求められた多価金属化合物の定量値をインク受容層からの水抽出分とした。
【0151】
〈インク受容層中の含有量〉
上記操作で残ったインク受容層を遠沈管より取り出し、硫酸と硝酸との混酸を使用し、マイクロウェーブ式湿式分解装置(Microdigest6、プロラボ社製)を用いて分解した。分解後、50mlに調液し、0.45μmのフィルターで不溶成分の除去を行い、得られた分解液をICP発光分析装置(セイコー電子社製、SPS4000)を使用し、求められた多価金属化合物の定量分と上記インク受容層からの多価金属化合物の水抽出分との和がインク受容層中の多価金属化合物の含有量として算出した。
【0152】
ICP発光分析装置を用いた定量に関しては、検量線法を用い、ICP発光分析装置の分析波長については、ジルコニウム原子を有する化合物の場合は分析波長339.198nm(出力1.3kW)、アルミニウム原子を有する化合物の場合は369.152nm(出力1.3kW)で求めた。
【0153】
また、検量線は、マイクロウェーブ式湿式分解装置を用いた分解に使用した混酸溶液に原子吸光分析用試薬(関東化学社製)を添加して用いた。
【0154】
以上により求めたインク受容層からの多価金属化合物の水抽出分とインク受容層中の多価金属化合物の含有量から、下式に従って水抽出率を求めた。
【0155】
水抽出率(%)=(インク受容層からの水抽出分)/(インク受容層中の含有量)
(滲み耐性の評価)
上記作製した各記録用紙を用いて、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM770Cで、マゼンタのベタプリントを背景として線幅が約0.3mmのブラックラインをプリントし、50℃、相対湿度85%で7日間保存した。次いで、保存前後での各線幅をマイクロデンシトメーターで測定(反射濃度が最大濃度の50%部分の幅を線幅とした)し、下式で表される滲み率を測定し、下記の基準に則り滲み耐性の評価を行った。なお、滲み率は、少ない程滲み耐性が良好であることを示す。
【0156】
滲み率=(画像保存後の線幅)/(画像保存前の線幅)
◎:滲み率が1〜1.20倍である
○:滲み率が1.21〜1.4倍である
△:滲み率が1.41〜1.6倍である
×:滲み率が1.61倍以上である
(ブロンジングの評価)
上記と同様のインクジェットプリンターで、各記録用紙に黒のベタ画像をプリントし、23℃、相対湿度80%で1週間保存した後、プリント画像の状態を目視で観察して、下記の基準に則りブロンジングを評価した。
【0157】
○:ブロンジングが、ほとんど認められない
△:一部でブロンジングが認められるが実用上問題ない
×:ブロンジングが激しく認められる。
【0158】
以上により得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
表1より明らかなように、本発明の水抽出率の異なる2種の多価金属化合物を使用したインクジェット記録用紙は滲み、ブロンジングともに良好な結果が得られることが分かる。
【0161】
また、本発明に係る一般式(1)で表されるカチオン性ポリマーを使用したインクジェット記録用紙は、ブロンジングを劣化させることなく、滲みを改良できることが分かる。
【0162】
実施例2
実施例1に記載の塗布液−1の調製において、塗布液を完成させる前に酢酸ジルコニウム、ポリ塩化アルミニウム化合物(多木化学(株)製PAC250A、酸化アルミニウム(Al2O3)換算濃度=10%)のそれぞれの固形分付量が、実施例1に記載の記録用紙106と等しくなるように添加し、記録用紙201を作製した。
【0163】
上記作製した記録用紙201について、実施例1と同様の方法で滲み耐性及びブロンジングを評価した結果、いずれの特性も良好な結果が得られ、本発明に係る多価金属化合物は、添加方法に依らず、効果が得られることが分かった。
【0164】
【発明の効果】
本発明により、ブロンジングを発生させることなく、印字プリントの保存中の滲み耐性や耐水性を改良し、かつインク吸収性に優れたインクジェット記録用紙を提供することができた。
Claims (12)
- 非吸水性支持体上に、無機微粒子とバインダーを含有する多孔質層をインク受容層として有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が、水抽出率が異なる少なくとも2種の多価金属化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 水抽出率の最も高い多価金属化合物が、分子内にアルミニウム原子を有する化合物(但し、酸化アルミニウムを除く)であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
- 水抽出率の最も低い多価金属化合物が、分子内にジルコニウム原子を有する化合物(但し酸化ジルコニウムを除く)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用紙。
- 非吸水性支持体上に、無機微粒子とバインダーを含有する多孔質層をインク受容層として有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が、少なくとも1種の分子内にアルミニウム原子を有する化合物(酸化アルミニウムを除く)と、少なくとも1種の分子内にジルコニウム原子を有する化合物(但し、酸化ジルコニルを除く)とを含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 前記無機微粒子の一次平均粒径が、3〜100nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記無機微粒子が、シリカ微粒子またはアルミナ微粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記無機微粒子が、気相法シリカであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記バインダーが、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記インク受容層が、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記架橋剤が、ホウ酸であることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記インク受容層が、第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記第4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーが、側鎖に該第4級アンモニウム塩基を有することを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録用紙。
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JP (1) | JP2004001240A (ja) |
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2002
- 2002-04-23 JP JP2002120849A patent/JP2004001240A/ja active Pending
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