JP2004001133A - 超音波加工装置及び超音波加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】工具の被加工物に対する加圧力を精度良くコントロールしながら加工ができ、加工の量(加工深さ)の精度も向上することができる超音波加工装置及び超音波加工方法を提供する。
【解決手段】超音波穿孔装置(超音波加工装置)1の昇降テーブル(送りテーブル)11には、移動テーブル10上に固定された基部フレーム29と、基部フレーム29にリニアガイド50を介して昇降自在に設けられた昇降フレーム31とを有している。基部フレーム29にはエアシリンダ式のリフトシリンダ30が取り付けられ、シリンダロッド32の先端が昇降フレーム31に連結されている。リニアガイド50は、基部フレーム29との摩擦が小さくなるよう構成されており、リフトシリンダ30は、低摺動型(送り抵抗10g以下)でピストンとシリンダケースの摩擦が小さくなるよう構成されている。
【選択図】 図7
【解決手段】超音波穿孔装置(超音波加工装置)1の昇降テーブル(送りテーブル)11には、移動テーブル10上に固定された基部フレーム29と、基部フレーム29にリニアガイド50を介して昇降自在に設けられた昇降フレーム31とを有している。基部フレーム29にはエアシリンダ式のリフトシリンダ30が取り付けられ、シリンダロッド32の先端が昇降フレーム31に連結されている。リニアガイド50は、基部フレーム29との摩擦が小さくなるよう構成されており、リフトシリンダ30は、低摺動型(送り抵抗10g以下)でピストンとシリンダケースの摩擦が小さくなるよう構成されている。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波加工装置及び超音波加工方法の技術に関する。
詳細には、超音波加工装置の送りテーブルを制御する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、超音波により工具を振動させ、この振動を砥粒に伝達することにより工具形状に倣った形状を被加工物に形成する超音波加工装置の技術が知られている。
この装置は、振動する工具を支持するヘッド部が油圧式あるいは機械式のバランスで昇降できるように構成されており、このヘッド部の昇降移動によって、装置上の治具に固定された被加工物に所定の加工ができるように構成されている。
【0003】
あるいは、ヘッド部側を固定とし、その代わりに、油圧式あるいは機械式で昇降可能な送りテーブルを装置上に備え、この送りテーブルに被加工物をセットできるように構成して、加工時には被加工物側を送って加工する方式の装置も知られている。
【0004】
そして、上述のような構成において、昇降するヘッド部あるいは送りテーブルに位置センサを設けてその位置を測定できるようにし、これによって加工の深さを制御することとした超音波加工装置の技術も公知とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の構成のように、ヘッド部側を油圧式あるいは機械式のバランスで昇降させる場合、ヘッド部の重量が数十〜数百kgにも上ることから、ヘッド部の被加工物に対する送り力(加工圧)を適切に保持できるように、ヘッド部を精度良くコントロールしながら昇降移動させることが極めて困難であった。
【0006】
また、送りテーブルを昇降させる構成の場合、送りテーブルはヘッド部よりも一般的には軽量とできるものの、やはり油圧式/機械式のバランスで昇降させていたので、可動部分に大きい摩擦が発生し、その摩擦を上回る大きな力で駆動しなければならないことから、加工圧のコントロールは同様に難しかった。
【0007】
例えば、油圧式のシリンダを用いてヘッド部あるいは送りテーブルを送るよう構成される場合、油圧シリンダは内部の油が漏れないようにピストンとシリンダケースとの間にオイルシールが設けられてその油密性を確保する構成であるため、ピストンを移動させるためにはそのオイルシール部分で発生する摩擦に打ち克って移動し得る程の強い力を加える必要が生じ、加工圧が強くなる結果となっていた。
【0008】
また、油圧シリンダにおいて静止しているピストンを移動させる際には、静摩擦力が抵抗となるので、それを上回る強い力を加える必要がある。一方、いったんピストンが僅かでも動き出すと、発生する抵抗は動摩擦力となって静摩擦力よりも相当に小さくなる。従って、ピストンが動き出したら瞬時に力を弱めないと、工具が被加工物に対し送られすぎて、過大な加工圧で押し付けられてしまうことになる。
【0009】
このように、ヘッド部あるいは送りテーブルの移動時に発生する摩擦により、その制御に対する応答追従性が低下し、また、加工圧の大きさを適正に保ちながらヘッド部あるいは送りテーブルを移動させることが極めて難しかった。従って、特に脆性材料のようなデリケートな取扱いを要する被加工物を加工する場合は、過大に加わる加工圧によって被加工物が破損してしまうことが多く、歩留まりの低下が生じていた。
また、前述のように送りの応答追従性が良くないために、位置センサを用いても、送り量や送りスピードを精度よく制御することができないという不具合があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、超音波により工具を振動させ、この振動を砥粒に伝達することにより工具形状に倣った形状を被加工物に形成する超音波加工装置において、前記被加工物は、移動可能な送りテーブルに固定されるとともに、この送りテーブルはリニアガイドと低摺動型シリンダとを備え、該低摺動型シリンダの駆動によって、前記送りテーブルが前記リニアガイドに沿って移動して前記被加工物を前記工具に対し送るように構成したことを特徴とする超音波加工装置としたものである。
【0012】
請求項2においては、請求項1に記載の超音波加工装置であって、前記送りテーブルには、当該送りテーブルの位置を測定する位置測定手段を更に備えたことを特徴とする超音波加工装置としたものである。
【0013】
請求項3においては、請求項1または請求項2に記載の超音波加工装置であって、前記被加工物が脆性材料であることを特徴とする超音波加工装置としたものである。
【0014】
請求項4においては、砥粒を分散した液体を送りテーブルに固定された被加工物の表面に流しながら、工具を超音波により振動させつつ該被加工物に押し付け、該工具と該被加工物との間にある砥粒で該被加工物を削ることにより、工具形状に倣った形状を形成する超音波加工方法において、この送りテーブルはリニアガイドと低摺動型シリンダとを備え、該低摺動型シリンダの駆動によって、前記工具の超音波振動に追従させつつ、該リニアガイドに沿って、当該送りテーブルを工具に対して送り移動して、前記被加工物を削ることを特徴とする超音波加工方法としたものである。
【0015】
請求項5においては、請求項4に記載の超音波加工方法であって、前記送りテーブルの振動振幅を測定し、この測定値に基づいて、前記送りテーブルの送り量を制御することを特徴とする超音波加工方法としたものである。
【0016】
請求項6においては、請求項4または請求項5に記載の超音波加工方法であって、前記被加工物が脆性材料であることを特徴とする超音波加工方法としたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
〔装置全体の概略構成〕
本発明の一実施形態としての超音波穿孔装置(超音波加工装置)の全体側面図が図1に、全体正面図が図2に、それぞれ示される。この図1,図2に示すように、この超音波穿孔装置1は、床上に設置される基台2の上にコラム3を立設し、このコラム3に穿孔ヘッド部4を支持する構成となっている。
【0019】
コラム3にはネジ軸5が上下方向に配置され、回転自在に支持されている。このネジ軸5に昇降体6が螺着されて、ネジ軸5と昇降体6とにより公知のボールネジ機構が構成されている。このネジ軸5には、コラム3上に設置されたモータ7のモータ軸が連結されている。この構成においてモータ7を正逆方向に回転駆動することで、昇降体6の上下位置を変更することができる。
コラム3には更にリニアガイドが上下方向に配設されて(図略)、このリニアガイドに沿って上下変位可能に、連結体8が備えられている。この連結体8に前記昇降体6が連結されることで、連結体8(ひいては、この連結体8に備えられる穿孔ヘッド部4)を上下方向(Z方向)に移動させることができる。
【0020】
連結体8には穿孔ヘッド部4が上下摺動自在に支持される。穿孔ヘッド部4には穿孔を行うための工具9が取り付けられるとともに、この工具9に超音波振動を与えるための機構が備えられている。この工具9は、高硬度のダイヤモンド粉末を焼結させたPCD工具である。
【0021】
基台2上には水平方向(XY方向)に移動可能な移動テーブル10が設置され、この移動テーブル10の上に、図2に示すように、昇降テーブル(送りテーブル)11、カメラ部41、研磨装置42の三者が並べて配置される。
昇降テーブル11上面の前記工具9に対向し得る位置には、被加工物としてのワーク13が固定可能とされる。このワーク13としては種々のものが考えられるが、本実施形態は、インクジェットプリンタ等のインクジェットヘッドに圧電式アクチュエータとして使用される、圧電セラミック材料(PZT)を加工する場合を示している。
ここで、カメラ部41は、後述する工具9の向きの調整作業を容易とするために、工具9を下方から撮影するためのものである。また、研磨装置42は、連続加工によってホーン23の後述する工具取付面23aが砥粒で摩滅したときに、それを研磨するためのものである。
【0022】
装置全体を覆うように基台2上にはカバー43が設置されて、穿孔作業時に発生する切り粉や後述する砥粒液が周囲に飛散しないように配慮されている。装置の正面には開閉可能な両開き式の扉44が設けられ(図1)、ワーク13の交換作業などの必要に応じて扉44を開いてカバー43内部にアクセスできるようになっている。
【0023】
〔穿孔ヘッド部の構成〕
穿孔ヘッド部4の構成について、側面図である図3、正面図である図4、および平面断面図である図5を主に参照しながら具体的に説明する。
この穿孔ヘッド部4は、前記連結体8に支持される基部フレーム14に、前記工具9を支持するための工具フレーム17を上下摺動自在に連結した構成となっている。基部フレーム14には支軸15が水平に架設され、この支軸15に、前後方向に細長いバランス体16の中央部が枢支されて揺動自在とされている。
基部フレーム14上にはエアシリンダ18が設置され(図3,図4)、このシリンダロッド19が下方に延出して、前記バランス体16の一端に連結されている。そして、バランス体16の前記シリンダロッド19が連結された一端に、前記工具フレーム17が連結されている。基部フレーム14には変位センサ(位置測定手段)20が設けられ、工具フレーム17の基部フレーム14に対する相対変位を検出できるように構成されている。
【0024】
図3に示すように、工具フレーム17の下端には環状のホーン支持部21が軸受22を介して旋回可能に設けられ、このホーン支持部21にホーン23が固定される。ホーン23は上下方向に細長く形成され、その上部には超音波振動子24が固着されるとともに、ホーン23の下端には平坦な工具取付面23aが形成され、この工具取付面23aに対して前記工具9が脱着可能に取り付けられる。
なお、基部フレーム14や工具フレーム17を覆うようにU字状または箱状のカバー45が設けられて、内部の超音波振動子24等を保護できるようになっている。
【0025】
図5の平面図に示すように、ホーン支持部21には側方に向けて突起25が設けられて、この突起25の一側に、付勢体26が工具フレーム17に設けられている。付勢体26は付勢バネ28の弾発作用により、突起25を一側に向けて常時押動するように構成されている。一方、付勢体26に突起25を挟んで対向する位置に、ツマミを有する角度微調整ネジ27が工具フレーム17に取り付けられる。
この構成において、角度微調整ネジ27のツマミを一方向に回転させると、その先端が突起25を前記付勢体26に抗して押すので、ホーン支持部21が図5の反時計回り方向に旋回される。一方、ツマミを逆方向に回転させた場合は、ネジ27の先端が後退して、前記付勢体26が突起25を押すので、ホーン支持部21は図5の時計回り方向に旋回される。従って、ネジ27を適宜回転させることで、ホーン支持部21の角度(即ち、ホーン23に取り付けられた工具9の水平面内における向き)を微調整することができる。
なお、ヘッド前面には固定ネジ36が設けられており(図3・図4)、前述の微調整作業が終了した後はこの固定ネジ36を回転させて締め付けることで、ホーン支持部21が不用意に旋回しないよう固定できるようになっている。
【0026】
〔昇降テーブルの構成〕
ワーク13を固定するための昇降テーブル11の構成を、図6の側面図及び図7の平面図を参照して説明する。
この昇降テーブル11は、移動テーブル10の上に立設固定された基部フレーム29と、この基部フレーム29にリニアガイド50を介して昇降自在に設けられた昇降フレーム31と、を有している。このリニアガイド50は、昇降フレーム31の移動方向が上下方向となるよう案内するためのものであり、その摺動部分の摩擦抵抗が小さい低摺動型に構成されている。
【0027】
前記基部フレーム29にはリフトシリンダ(低摺動型シリンダ)30が取り付けられ、このシリンダロッド32が上方に延出して、その先端が前記昇降フレーム31に連結されている。
リフトシリンダ30はエアシリンダ式に構成されており、圧縮空気をシリンダケースの内部(シリンダ室)に供給/ドレンすることで、シリンダ室内部のピストン(図示せず)が上/下方向に摺動し、シリンダロッド32が連動して動くことにより、シリンダロッド32の先端に連結されている昇降フレーム31の上下位置を変更することができる。なお、シリンダケースは平滑な表面を有するガラスで形成されており、ピストンはカーボンファイバーで形成されている。これは、ピストンのシリンダケースに対する摩擦抵抗を小さくするためである。
【0028】
さらに、このリフトシリンダ30は、その内部のピストンとシリンダケース内壁との間に僅かな隙間を有しており、ピストンとシリンダケース内壁との間の摩擦係数が小さくなるように構成されている。本明細書において「低摺動型のエアシリンダ」とは、摺動部分に平滑なガラスやカーボンファイバー、固体潤滑剤(例えば、有機モリブデン等)のような摩擦抵抗を低減するための材料や構造を配したものであって、その送り抵抗が好ましくは10g以下であるエアシリンダを意味する。
なお、脆性材料(例えば、本実施形態のPZT)の加工に用いる場合は、リフトシリンダ30の送り抵抗を5g以下として、前述のリニアガイド50の送り抵抗と併せた昇降フレーム31の全体の送り抵抗が10g以下となることが、加工圧の安定や、制御に対する昇降テーブルの応答追従性の向上という観点からは望ましい。
【0029】
前記基部フレーム29には変位センサ33が設置されて、昇降フレーム31の上下位置を測定できるようになっている。
また、内部のリフトシリンダ30や変位センサ33を保護すべく、箱状のカバー46が昇降フレーム31に設けられる。
【0030】
昇降フレーム31の上部は水平に構成され、この上に、ワーク13を取り付けるためのワーク台12が設置される。また、ワーク台12の脇の位置において、昇降フレーム31上にクランプ機構34が設けられている。このクランプ機構34はエアシリンダで構成されており、ワーク台12上にワーク13を載置した状態でエアシリンダを作動させると、伸張するシリンダロッド35がワーク13を水平方向へ押圧し、ワーク台12に設けられたガイド部に突き当てた状態で固定するようになっている。
【0031】
この超音波穿孔装置1は図示せぬ砥粒液溜めを備えており、この砥粒液溜めには、砥粒(例えば、粒径4〜6μm程度のSiC)を分散させた液体が注入されている。砥粒液溜めに接続させて、パイプや可撓性のホースや管継手などからなる砥粒液循環経路が形成され、この経路が、前記昇降テーブル11近傍に設けた中継パイプ47(図1,図2,図6に図示)に接続されている。この中継パイプ47には供給孔48が形成されるとともに、更に該供給孔48の近傍位置において、案内棒49が下向きに突設されている。案内棒49は湾曲状に構成されて斜め方向に向きを変え、その先端が、昇降テーブル11上のワーク台12の直上方に位置している。
この構成で、砥粒液溜めに設置された図略のポンプを駆動させると、砥粒液は中継パイプ47内に送られ、その一部が供給孔48を介して外部に漏出する。中継パイプ47の外面に漏れ出た砥粒液は案内棒49を伝ってワーク台12上に落下し、工具9による加工に用いられる。
【0032】
〔穿孔作業の様子の説明〕
以上に示した構成において、実際に工具9を超音波振動させてワーク13に穿孔する作業を説明する。
まず、ワーク13を前記クランプ機構34によりワーク台12上に固定したのち、前記移動テーブル10をXY方向に移動させるとともに、前記モータ7を駆動して穿孔ヘッド部4を下降させ、図6の鎖線で示すように、前記工具9がワーク13のすぐ上に僅かな隙間をおいて位置するようにする。
そして、変位センサ33で昇降フレーム31の位置を常時測定しながら、リフトシリンダ30に圧縮空気を供給して、シリンダロッド32を徐々に伸張させて昇降フレーム31を上方向へ移動させ、ワーク13を上昇させる。そして、ワーク13の上面が工具9に接触した瞬間の昇降フレーム31の位置を、装置1を制御するコントローラの適宜の記憶手段にゼロ位置として記憶しておく。
そして、穿孔ヘッド部4の超音波振動子24を駆動し、ホーン23を介して振幅数μm程度の上下方向の超音波振動を工具9に付与しながら、リフトシリンダ30に圧縮空気を供給してワーク13を上昇させ、工具9に対し押し付ける。また、前記砥粒液循環経路のポンプが駆動されることにより、中継パイプ47から案内棒49を経由して砥粒液が工具9の周囲に供給される。
これによりワーク13は、工具9との間にある砥粒によって削られてゆき、工具9に倣った形状の溝や孔等がワーク13の上面に形成される。
【0033】
ここで、昇降テーブル11に取り付けられた昇降フレーム31は、前述した低摺動型のリフトシリンダ30により、前述したリニアガイド50を介して、工具9の上下方向の超音波振動に追従するように、基部フレーム29に沿って摺動する。
これにより、昇降フレーム31の送り抵抗が10g以下であり、加工圧に対して十分に小さいことから、昇降フレーム31がスムーズに摺動され、精度よく加工することができる構成となっている。
【0034】
このように加工時の加工圧を安定的に得られる本発明は、加工時の作業効率の向上という効果をも奏させることができる。
即ち、従来の構成では加工圧の変動が激しいため、瞬時に加わる過大な加工圧によってワーク13が破損してしまうことを防止すべく、安全マージンを大きく見込んで、目標の加工圧(平均加工圧)を低く設定せざるを得なかった。このために、加工効率が低下してしまっていた。
しかし、加工圧の変動を小さく抑えることができる本発明によれば、加工圧の目標値を大きく設定してもワーク13の破損は回避されるから、加工効率を向上させ、作業時間を短縮し得るのである。
【0035】
また、本発明は、上記のように昇降フレーム31を送る際の加工圧を精度良くコントロールできるので、本実施形態のように、ワーク13が脆性材料と延性材料の複合材料で構成されている場合に特に適合的である。
即ち、本実施形態におけるワーク13(インクジェットヘッドのアクチュエータ)は、脆性材料である薄い平板状の複数の圧電セラミックシートと、延性材料である薄い複数枚の銀電極シートとを、交互に積層した積層体構造とされている。そして本実施形態の装置は、前記工具9によって、前記銀電極シートを切断するようにしながら、同時に当該積層体に対し適宜深さの溝加工を施すものである。
このような用途の場合、加工圧が不十分であると、銀電極シートが意図した破断面で切断できず伸びてしまい、場合によっては、伸びた銀電極シートが他の層の銀電極シートに触れてショートを起こしてしまう。一方で、加工圧が過大であると、脆性材料であるセラミックシートが破損してしまう。
即ち、本実施形態のような、加工圧を狭い範囲で厳密にコントロールする必要がある用途に、本発明は特に適合的であると言うことができる。
【0036】
また、昇降フレーム31がスムーズに摺動されることにより、変位センサ33で超音波振動による昇降フレーム31の振幅を測定し、これを加味した形での昇降フレーム31の送り制御を行うことで、加工時の加工深さの精度を向上させ得る構成となっている。
【0037】
なお、前述した穿孔ヘッド部4のエアシリンダ18(図3)は、工具フレーム17の変位を変位センサ20で測定しながら必要に応じて圧縮空気の給排を行って、工具フレーム17を支持する力を調節している。これにより、穿孔作業中にワーク13に対し過大な力で工具9が押し付けられることが防止されるので、本実施形態の圧電セラミックのような脆性材料のワーク13を加工する場合でも、ワーク13の破損が十分に回避される構成となっている。
【0038】
工具9によりワーク13に穿孔を行っている間も、前記昇降フレーム31の位置が変位センサ33(図6)によって常時測定されている。そして昇降フレーム31が、前記ゼロ位置から所定の距離だけ上昇した時点で、リフトシリンダ30への圧縮空気の供給が停止され、ワーク13の上昇が停止される。この結果、前記ワーク13には、正確に当該距離だけの深さの孔あるいは溝を形成することができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいてさまざまな設計変更が可能なものである。
【0040】
例えば、前述したようなリニアガイド50を用いる代わりに、昇降フレーム31に設けられた軸受の外輪が基部フレーム29に設けられた上下方向のレールに沿って転がるように構成して、昇降テーブル11の移動方向を案内するようにしても良い。
このときに、前記軸受として例えばエア軸受を用いれば、昇降テーブル11の上下動の際に発生する摩擦抵抗が小さくなり、昇降テーブル11の送り感度を向上させることができる。
【0041】
また、例えば、前述したリフトシリンダ30は、エアシリンダ式であり、シリンダケースがガラスで形成されており、ピストンがカーボンファイバーで形成されているがそれに限られない。ピストンとシリンダケースが接触する内壁の部分が低摩擦となるような構成であれば、エアシリンダ式に限定されず、また、他の材料でシリンダケースとピストンが形成されていてもよい。
【0042】
また、本実施形態ではワーク13は圧電セラミック材料とされているが、それに限定されるものでもない。ただし本発明は、上述のように加工圧を安定させることができるために、破損し易い脆性材料の加工に特に有効である。
【0043】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0044】
即ち、請求項1に示す如く、超音波により工具を振動させ、この振動を砥粒に伝達することにより工具形状に倣った形状を被加工物に形成する超音波加工装置において、前記被加工物は、移動可能な送りテーブルに固定されるとともに、この送りテーブルはリニアガイドと低摺動型シリンダとを備え、該低摺動型シリンダの駆動によって、前記送りテーブルが前記リニアガイドに沿って移動して前記被加工物を前記工具に対し送るように構成したことを特徴とする超音波加工装置とした。
従って、送りテーブルが低摺動型シリンダの駆動によりリニアガイドに沿って移動するので、送りに対する抵抗が小さく、送りテーブルの送り感度を向上させることができる。従って、送りテーブルの送り速度をきめ細かく且つ精度よく制御できるため、工具の被加工物に対する加圧力を精度良くコントロールしながら加工を行うことができるほか、送りの停止のタイミングも正確に計ることができ、加工の量(加工深さ)の精度も向上される。
【0045】
請求項2に示す如く、請求項1に記載の超音波加工装置であって、前記送りテーブルには、当該送りテーブルの位置を測定する位置測定手段を更に備えたことを特徴とする超音波加工装置とした。
従って、送り抵抗の小さい送りテーブルに位置測定手段を設け、この測定結果に基づいて送りを行うことになるから、送り速度の制御の精度がより一層向上する。特に、前記の請求項1の構成では、送りテーブルの送り抵抗が小さいために、工具の振動を受けて、被加工物が送りテーブルとともに振動することになる。請求項2の構成ではこの振動をも位置測定手段により精度良く測定できるので、当該振動の振幅を加味したテーブル送り量のコントロールが可能になる。従って、加工精度がより一層向上する。
【0046】
請求項3に示す如く、請求項1または請求項2に記載の超音波加工装置であって、前記被加工物が脆性材料であることを特徴とする超音波加工装置とした。
従って、加圧力が前述のとおり精度良く制御されるので、被加工物たる脆性材料の破損を防止しつつ、加工時間を短縮することが可能になる。
【0047】
請求項4に示す如く、砥粒を分散した液体を送りテーブルに固定された被加工物の表面に流しながら、工具を超音波により振動させつつ該被加工物に押し付け、該工具と該被加工物との間にある砥粒で該被加工物を削ることにより、工具形状に倣った形状を形成する超音波加工方法において、この送りテーブルはリニアガイドと低摺動型シリンダとを備え、該低摺動型シリンダの駆動によって、前記工具の超音波振動に追従させつつ、該リニアガイドに沿って、当該送りテーブルを工具に対して送り移動して、前記被加工物を削ることを特徴とする超音波加工方法とした。
従って、送りテーブルが低摺動型シリンダの駆動によってリニアガイドに沿って移動し、工具の超音波振動に追従するので、被加工物に対する工具の押付け力(加圧力)の変動を小さく抑えることができる。このように加圧力が安定するから、被加工物の破損などを回避できるほか、被加工物の仕上がり形状も良好である。
【0048】
請求項5に示す如く、請求項4に記載の超音波加工方法であって、前記送りテーブルの振動振幅を測定し、この測定値に基づいて、前記送りテーブルの送り量を制御することを特徴とする超音波加工方法とした。
従って、送りテーブルの振動振幅を測定してそれをもとにテーブル送り量を制御するので、請求項2と同様、加工精度が向上する。
【0049】
請求項6に示す如く、請求項4または請求項5に記載の超音波加工方法であって、前記被加工物が脆性材料であることを特徴とする超音波加工方法とした。
従って、加圧力が前述のとおり精度良く制御されるので、被加工物たる脆性材料の破損を防止しつつ、加工時間を短縮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施形態に係る超音波穿孔装置の全体的な構成を示した側面図。
【図2】
同じく正面図。
【図3】
穿孔ヘッド部の側面図一部断面図。
【図4】
同じく正面図。
【図5】
同じく平面断面図。
【図6】
昇降テーブルの側面断面図。
【図7】
同じく平面図。
【符号の説明】
1 超音波穿孔装置(超音波加工装置)
9 工具
11 昇降テーブル(送りテーブル)
13 ワーク(被加工物)
20 変位センサ(位置測定手段)
30 リフトシリンダ(低摺動型シリンダ)
50 リニアガイド
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波加工装置及び超音波加工方法の技術に関する。
詳細には、超音波加工装置の送りテーブルを制御する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、超音波により工具を振動させ、この振動を砥粒に伝達することにより工具形状に倣った形状を被加工物に形成する超音波加工装置の技術が知られている。
この装置は、振動する工具を支持するヘッド部が油圧式あるいは機械式のバランスで昇降できるように構成されており、このヘッド部の昇降移動によって、装置上の治具に固定された被加工物に所定の加工ができるように構成されている。
【0003】
あるいは、ヘッド部側を固定とし、その代わりに、油圧式あるいは機械式で昇降可能な送りテーブルを装置上に備え、この送りテーブルに被加工物をセットできるように構成して、加工時には被加工物側を送って加工する方式の装置も知られている。
【0004】
そして、上述のような構成において、昇降するヘッド部あるいは送りテーブルに位置センサを設けてその位置を測定できるようにし、これによって加工の深さを制御することとした超音波加工装置の技術も公知とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の構成のように、ヘッド部側を油圧式あるいは機械式のバランスで昇降させる場合、ヘッド部の重量が数十〜数百kgにも上ることから、ヘッド部の被加工物に対する送り力(加工圧)を適切に保持できるように、ヘッド部を精度良くコントロールしながら昇降移動させることが極めて困難であった。
【0006】
また、送りテーブルを昇降させる構成の場合、送りテーブルはヘッド部よりも一般的には軽量とできるものの、やはり油圧式/機械式のバランスで昇降させていたので、可動部分に大きい摩擦が発生し、その摩擦を上回る大きな力で駆動しなければならないことから、加工圧のコントロールは同様に難しかった。
【0007】
例えば、油圧式のシリンダを用いてヘッド部あるいは送りテーブルを送るよう構成される場合、油圧シリンダは内部の油が漏れないようにピストンとシリンダケースとの間にオイルシールが設けられてその油密性を確保する構成であるため、ピストンを移動させるためにはそのオイルシール部分で発生する摩擦に打ち克って移動し得る程の強い力を加える必要が生じ、加工圧が強くなる結果となっていた。
【0008】
また、油圧シリンダにおいて静止しているピストンを移動させる際には、静摩擦力が抵抗となるので、それを上回る強い力を加える必要がある。一方、いったんピストンが僅かでも動き出すと、発生する抵抗は動摩擦力となって静摩擦力よりも相当に小さくなる。従って、ピストンが動き出したら瞬時に力を弱めないと、工具が被加工物に対し送られすぎて、過大な加工圧で押し付けられてしまうことになる。
【0009】
このように、ヘッド部あるいは送りテーブルの移動時に発生する摩擦により、その制御に対する応答追従性が低下し、また、加工圧の大きさを適正に保ちながらヘッド部あるいは送りテーブルを移動させることが極めて難しかった。従って、特に脆性材料のようなデリケートな取扱いを要する被加工物を加工する場合は、過大に加わる加工圧によって被加工物が破損してしまうことが多く、歩留まりの低下が生じていた。
また、前述のように送りの応答追従性が良くないために、位置センサを用いても、送り量や送りスピードを精度よく制御することができないという不具合があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、超音波により工具を振動させ、この振動を砥粒に伝達することにより工具形状に倣った形状を被加工物に形成する超音波加工装置において、前記被加工物は、移動可能な送りテーブルに固定されるとともに、この送りテーブルはリニアガイドと低摺動型シリンダとを備え、該低摺動型シリンダの駆動によって、前記送りテーブルが前記リニアガイドに沿って移動して前記被加工物を前記工具に対し送るように構成したことを特徴とする超音波加工装置としたものである。
【0012】
請求項2においては、請求項1に記載の超音波加工装置であって、前記送りテーブルには、当該送りテーブルの位置を測定する位置測定手段を更に備えたことを特徴とする超音波加工装置としたものである。
【0013】
請求項3においては、請求項1または請求項2に記載の超音波加工装置であって、前記被加工物が脆性材料であることを特徴とする超音波加工装置としたものである。
【0014】
請求項4においては、砥粒を分散した液体を送りテーブルに固定された被加工物の表面に流しながら、工具を超音波により振動させつつ該被加工物に押し付け、該工具と該被加工物との間にある砥粒で該被加工物を削ることにより、工具形状に倣った形状を形成する超音波加工方法において、この送りテーブルはリニアガイドと低摺動型シリンダとを備え、該低摺動型シリンダの駆動によって、前記工具の超音波振動に追従させつつ、該リニアガイドに沿って、当該送りテーブルを工具に対して送り移動して、前記被加工物を削ることを特徴とする超音波加工方法としたものである。
【0015】
請求項5においては、請求項4に記載の超音波加工方法であって、前記送りテーブルの振動振幅を測定し、この測定値に基づいて、前記送りテーブルの送り量を制御することを特徴とする超音波加工方法としたものである。
【0016】
請求項6においては、請求項4または請求項5に記載の超音波加工方法であって、前記被加工物が脆性材料であることを特徴とする超音波加工方法としたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
〔装置全体の概略構成〕
本発明の一実施形態としての超音波穿孔装置(超音波加工装置)の全体側面図が図1に、全体正面図が図2に、それぞれ示される。この図1,図2に示すように、この超音波穿孔装置1は、床上に設置される基台2の上にコラム3を立設し、このコラム3に穿孔ヘッド部4を支持する構成となっている。
【0019】
コラム3にはネジ軸5が上下方向に配置され、回転自在に支持されている。このネジ軸5に昇降体6が螺着されて、ネジ軸5と昇降体6とにより公知のボールネジ機構が構成されている。このネジ軸5には、コラム3上に設置されたモータ7のモータ軸が連結されている。この構成においてモータ7を正逆方向に回転駆動することで、昇降体6の上下位置を変更することができる。
コラム3には更にリニアガイドが上下方向に配設されて(図略)、このリニアガイドに沿って上下変位可能に、連結体8が備えられている。この連結体8に前記昇降体6が連結されることで、連結体8(ひいては、この連結体8に備えられる穿孔ヘッド部4)を上下方向(Z方向)に移動させることができる。
【0020】
連結体8には穿孔ヘッド部4が上下摺動自在に支持される。穿孔ヘッド部4には穿孔を行うための工具9が取り付けられるとともに、この工具9に超音波振動を与えるための機構が備えられている。この工具9は、高硬度のダイヤモンド粉末を焼結させたPCD工具である。
【0021】
基台2上には水平方向(XY方向)に移動可能な移動テーブル10が設置され、この移動テーブル10の上に、図2に示すように、昇降テーブル(送りテーブル)11、カメラ部41、研磨装置42の三者が並べて配置される。
昇降テーブル11上面の前記工具9に対向し得る位置には、被加工物としてのワーク13が固定可能とされる。このワーク13としては種々のものが考えられるが、本実施形態は、インクジェットプリンタ等のインクジェットヘッドに圧電式アクチュエータとして使用される、圧電セラミック材料(PZT)を加工する場合を示している。
ここで、カメラ部41は、後述する工具9の向きの調整作業を容易とするために、工具9を下方から撮影するためのものである。また、研磨装置42は、連続加工によってホーン23の後述する工具取付面23aが砥粒で摩滅したときに、それを研磨するためのものである。
【0022】
装置全体を覆うように基台2上にはカバー43が設置されて、穿孔作業時に発生する切り粉や後述する砥粒液が周囲に飛散しないように配慮されている。装置の正面には開閉可能な両開き式の扉44が設けられ(図1)、ワーク13の交換作業などの必要に応じて扉44を開いてカバー43内部にアクセスできるようになっている。
【0023】
〔穿孔ヘッド部の構成〕
穿孔ヘッド部4の構成について、側面図である図3、正面図である図4、および平面断面図である図5を主に参照しながら具体的に説明する。
この穿孔ヘッド部4は、前記連結体8に支持される基部フレーム14に、前記工具9を支持するための工具フレーム17を上下摺動自在に連結した構成となっている。基部フレーム14には支軸15が水平に架設され、この支軸15に、前後方向に細長いバランス体16の中央部が枢支されて揺動自在とされている。
基部フレーム14上にはエアシリンダ18が設置され(図3,図4)、このシリンダロッド19が下方に延出して、前記バランス体16の一端に連結されている。そして、バランス体16の前記シリンダロッド19が連結された一端に、前記工具フレーム17が連結されている。基部フレーム14には変位センサ(位置測定手段)20が設けられ、工具フレーム17の基部フレーム14に対する相対変位を検出できるように構成されている。
【0024】
図3に示すように、工具フレーム17の下端には環状のホーン支持部21が軸受22を介して旋回可能に設けられ、このホーン支持部21にホーン23が固定される。ホーン23は上下方向に細長く形成され、その上部には超音波振動子24が固着されるとともに、ホーン23の下端には平坦な工具取付面23aが形成され、この工具取付面23aに対して前記工具9が脱着可能に取り付けられる。
なお、基部フレーム14や工具フレーム17を覆うようにU字状または箱状のカバー45が設けられて、内部の超音波振動子24等を保護できるようになっている。
【0025】
図5の平面図に示すように、ホーン支持部21には側方に向けて突起25が設けられて、この突起25の一側に、付勢体26が工具フレーム17に設けられている。付勢体26は付勢バネ28の弾発作用により、突起25を一側に向けて常時押動するように構成されている。一方、付勢体26に突起25を挟んで対向する位置に、ツマミを有する角度微調整ネジ27が工具フレーム17に取り付けられる。
この構成において、角度微調整ネジ27のツマミを一方向に回転させると、その先端が突起25を前記付勢体26に抗して押すので、ホーン支持部21が図5の反時計回り方向に旋回される。一方、ツマミを逆方向に回転させた場合は、ネジ27の先端が後退して、前記付勢体26が突起25を押すので、ホーン支持部21は図5の時計回り方向に旋回される。従って、ネジ27を適宜回転させることで、ホーン支持部21の角度(即ち、ホーン23に取り付けられた工具9の水平面内における向き)を微調整することができる。
なお、ヘッド前面には固定ネジ36が設けられており(図3・図4)、前述の微調整作業が終了した後はこの固定ネジ36を回転させて締め付けることで、ホーン支持部21が不用意に旋回しないよう固定できるようになっている。
【0026】
〔昇降テーブルの構成〕
ワーク13を固定するための昇降テーブル11の構成を、図6の側面図及び図7の平面図を参照して説明する。
この昇降テーブル11は、移動テーブル10の上に立設固定された基部フレーム29と、この基部フレーム29にリニアガイド50を介して昇降自在に設けられた昇降フレーム31と、を有している。このリニアガイド50は、昇降フレーム31の移動方向が上下方向となるよう案内するためのものであり、その摺動部分の摩擦抵抗が小さい低摺動型に構成されている。
【0027】
前記基部フレーム29にはリフトシリンダ(低摺動型シリンダ)30が取り付けられ、このシリンダロッド32が上方に延出して、その先端が前記昇降フレーム31に連結されている。
リフトシリンダ30はエアシリンダ式に構成されており、圧縮空気をシリンダケースの内部(シリンダ室)に供給/ドレンすることで、シリンダ室内部のピストン(図示せず)が上/下方向に摺動し、シリンダロッド32が連動して動くことにより、シリンダロッド32の先端に連結されている昇降フレーム31の上下位置を変更することができる。なお、シリンダケースは平滑な表面を有するガラスで形成されており、ピストンはカーボンファイバーで形成されている。これは、ピストンのシリンダケースに対する摩擦抵抗を小さくするためである。
【0028】
さらに、このリフトシリンダ30は、その内部のピストンとシリンダケース内壁との間に僅かな隙間を有しており、ピストンとシリンダケース内壁との間の摩擦係数が小さくなるように構成されている。本明細書において「低摺動型のエアシリンダ」とは、摺動部分に平滑なガラスやカーボンファイバー、固体潤滑剤(例えば、有機モリブデン等)のような摩擦抵抗を低減するための材料や構造を配したものであって、その送り抵抗が好ましくは10g以下であるエアシリンダを意味する。
なお、脆性材料(例えば、本実施形態のPZT)の加工に用いる場合は、リフトシリンダ30の送り抵抗を5g以下として、前述のリニアガイド50の送り抵抗と併せた昇降フレーム31の全体の送り抵抗が10g以下となることが、加工圧の安定や、制御に対する昇降テーブルの応答追従性の向上という観点からは望ましい。
【0029】
前記基部フレーム29には変位センサ33が設置されて、昇降フレーム31の上下位置を測定できるようになっている。
また、内部のリフトシリンダ30や変位センサ33を保護すべく、箱状のカバー46が昇降フレーム31に設けられる。
【0030】
昇降フレーム31の上部は水平に構成され、この上に、ワーク13を取り付けるためのワーク台12が設置される。また、ワーク台12の脇の位置において、昇降フレーム31上にクランプ機構34が設けられている。このクランプ機構34はエアシリンダで構成されており、ワーク台12上にワーク13を載置した状態でエアシリンダを作動させると、伸張するシリンダロッド35がワーク13を水平方向へ押圧し、ワーク台12に設けられたガイド部に突き当てた状態で固定するようになっている。
【0031】
この超音波穿孔装置1は図示せぬ砥粒液溜めを備えており、この砥粒液溜めには、砥粒(例えば、粒径4〜6μm程度のSiC)を分散させた液体が注入されている。砥粒液溜めに接続させて、パイプや可撓性のホースや管継手などからなる砥粒液循環経路が形成され、この経路が、前記昇降テーブル11近傍に設けた中継パイプ47(図1,図2,図6に図示)に接続されている。この中継パイプ47には供給孔48が形成されるとともに、更に該供給孔48の近傍位置において、案内棒49が下向きに突設されている。案内棒49は湾曲状に構成されて斜め方向に向きを変え、その先端が、昇降テーブル11上のワーク台12の直上方に位置している。
この構成で、砥粒液溜めに設置された図略のポンプを駆動させると、砥粒液は中継パイプ47内に送られ、その一部が供給孔48を介して外部に漏出する。中継パイプ47の外面に漏れ出た砥粒液は案内棒49を伝ってワーク台12上に落下し、工具9による加工に用いられる。
【0032】
〔穿孔作業の様子の説明〕
以上に示した構成において、実際に工具9を超音波振動させてワーク13に穿孔する作業を説明する。
まず、ワーク13を前記クランプ機構34によりワーク台12上に固定したのち、前記移動テーブル10をXY方向に移動させるとともに、前記モータ7を駆動して穿孔ヘッド部4を下降させ、図6の鎖線で示すように、前記工具9がワーク13のすぐ上に僅かな隙間をおいて位置するようにする。
そして、変位センサ33で昇降フレーム31の位置を常時測定しながら、リフトシリンダ30に圧縮空気を供給して、シリンダロッド32を徐々に伸張させて昇降フレーム31を上方向へ移動させ、ワーク13を上昇させる。そして、ワーク13の上面が工具9に接触した瞬間の昇降フレーム31の位置を、装置1を制御するコントローラの適宜の記憶手段にゼロ位置として記憶しておく。
そして、穿孔ヘッド部4の超音波振動子24を駆動し、ホーン23を介して振幅数μm程度の上下方向の超音波振動を工具9に付与しながら、リフトシリンダ30に圧縮空気を供給してワーク13を上昇させ、工具9に対し押し付ける。また、前記砥粒液循環経路のポンプが駆動されることにより、中継パイプ47から案内棒49を経由して砥粒液が工具9の周囲に供給される。
これによりワーク13は、工具9との間にある砥粒によって削られてゆき、工具9に倣った形状の溝や孔等がワーク13の上面に形成される。
【0033】
ここで、昇降テーブル11に取り付けられた昇降フレーム31は、前述した低摺動型のリフトシリンダ30により、前述したリニアガイド50を介して、工具9の上下方向の超音波振動に追従するように、基部フレーム29に沿って摺動する。
これにより、昇降フレーム31の送り抵抗が10g以下であり、加工圧に対して十分に小さいことから、昇降フレーム31がスムーズに摺動され、精度よく加工することができる構成となっている。
【0034】
このように加工時の加工圧を安定的に得られる本発明は、加工時の作業効率の向上という効果をも奏させることができる。
即ち、従来の構成では加工圧の変動が激しいため、瞬時に加わる過大な加工圧によってワーク13が破損してしまうことを防止すべく、安全マージンを大きく見込んで、目標の加工圧(平均加工圧)を低く設定せざるを得なかった。このために、加工効率が低下してしまっていた。
しかし、加工圧の変動を小さく抑えることができる本発明によれば、加工圧の目標値を大きく設定してもワーク13の破損は回避されるから、加工効率を向上させ、作業時間を短縮し得るのである。
【0035】
また、本発明は、上記のように昇降フレーム31を送る際の加工圧を精度良くコントロールできるので、本実施形態のように、ワーク13が脆性材料と延性材料の複合材料で構成されている場合に特に適合的である。
即ち、本実施形態におけるワーク13(インクジェットヘッドのアクチュエータ)は、脆性材料である薄い平板状の複数の圧電セラミックシートと、延性材料である薄い複数枚の銀電極シートとを、交互に積層した積層体構造とされている。そして本実施形態の装置は、前記工具9によって、前記銀電極シートを切断するようにしながら、同時に当該積層体に対し適宜深さの溝加工を施すものである。
このような用途の場合、加工圧が不十分であると、銀電極シートが意図した破断面で切断できず伸びてしまい、場合によっては、伸びた銀電極シートが他の層の銀電極シートに触れてショートを起こしてしまう。一方で、加工圧が過大であると、脆性材料であるセラミックシートが破損してしまう。
即ち、本実施形態のような、加工圧を狭い範囲で厳密にコントロールする必要がある用途に、本発明は特に適合的であると言うことができる。
【0036】
また、昇降フレーム31がスムーズに摺動されることにより、変位センサ33で超音波振動による昇降フレーム31の振幅を測定し、これを加味した形での昇降フレーム31の送り制御を行うことで、加工時の加工深さの精度を向上させ得る構成となっている。
【0037】
なお、前述した穿孔ヘッド部4のエアシリンダ18(図3)は、工具フレーム17の変位を変位センサ20で測定しながら必要に応じて圧縮空気の給排を行って、工具フレーム17を支持する力を調節している。これにより、穿孔作業中にワーク13に対し過大な力で工具9が押し付けられることが防止されるので、本実施形態の圧電セラミックのような脆性材料のワーク13を加工する場合でも、ワーク13の破損が十分に回避される構成となっている。
【0038】
工具9によりワーク13に穿孔を行っている間も、前記昇降フレーム31の位置が変位センサ33(図6)によって常時測定されている。そして昇降フレーム31が、前記ゼロ位置から所定の距離だけ上昇した時点で、リフトシリンダ30への圧縮空気の供給が停止され、ワーク13の上昇が停止される。この結果、前記ワーク13には、正確に当該距離だけの深さの孔あるいは溝を形成することができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいてさまざまな設計変更が可能なものである。
【0040】
例えば、前述したようなリニアガイド50を用いる代わりに、昇降フレーム31に設けられた軸受の外輪が基部フレーム29に設けられた上下方向のレールに沿って転がるように構成して、昇降テーブル11の移動方向を案内するようにしても良い。
このときに、前記軸受として例えばエア軸受を用いれば、昇降テーブル11の上下動の際に発生する摩擦抵抗が小さくなり、昇降テーブル11の送り感度を向上させることができる。
【0041】
また、例えば、前述したリフトシリンダ30は、エアシリンダ式であり、シリンダケースがガラスで形成されており、ピストンがカーボンファイバーで形成されているがそれに限られない。ピストンとシリンダケースが接触する内壁の部分が低摩擦となるような構成であれば、エアシリンダ式に限定されず、また、他の材料でシリンダケースとピストンが形成されていてもよい。
【0042】
また、本実施形態ではワーク13は圧電セラミック材料とされているが、それに限定されるものでもない。ただし本発明は、上述のように加工圧を安定させることができるために、破損し易い脆性材料の加工に特に有効である。
【0043】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0044】
即ち、請求項1に示す如く、超音波により工具を振動させ、この振動を砥粒に伝達することにより工具形状に倣った形状を被加工物に形成する超音波加工装置において、前記被加工物は、移動可能な送りテーブルに固定されるとともに、この送りテーブルはリニアガイドと低摺動型シリンダとを備え、該低摺動型シリンダの駆動によって、前記送りテーブルが前記リニアガイドに沿って移動して前記被加工物を前記工具に対し送るように構成したことを特徴とする超音波加工装置とした。
従って、送りテーブルが低摺動型シリンダの駆動によりリニアガイドに沿って移動するので、送りに対する抵抗が小さく、送りテーブルの送り感度を向上させることができる。従って、送りテーブルの送り速度をきめ細かく且つ精度よく制御できるため、工具の被加工物に対する加圧力を精度良くコントロールしながら加工を行うことができるほか、送りの停止のタイミングも正確に計ることができ、加工の量(加工深さ)の精度も向上される。
【0045】
請求項2に示す如く、請求項1に記載の超音波加工装置であって、前記送りテーブルには、当該送りテーブルの位置を測定する位置測定手段を更に備えたことを特徴とする超音波加工装置とした。
従って、送り抵抗の小さい送りテーブルに位置測定手段を設け、この測定結果に基づいて送りを行うことになるから、送り速度の制御の精度がより一層向上する。特に、前記の請求項1の構成では、送りテーブルの送り抵抗が小さいために、工具の振動を受けて、被加工物が送りテーブルとともに振動することになる。請求項2の構成ではこの振動をも位置測定手段により精度良く測定できるので、当該振動の振幅を加味したテーブル送り量のコントロールが可能になる。従って、加工精度がより一層向上する。
【0046】
請求項3に示す如く、請求項1または請求項2に記載の超音波加工装置であって、前記被加工物が脆性材料であることを特徴とする超音波加工装置とした。
従って、加圧力が前述のとおり精度良く制御されるので、被加工物たる脆性材料の破損を防止しつつ、加工時間を短縮することが可能になる。
【0047】
請求項4に示す如く、砥粒を分散した液体を送りテーブルに固定された被加工物の表面に流しながら、工具を超音波により振動させつつ該被加工物に押し付け、該工具と該被加工物との間にある砥粒で該被加工物を削ることにより、工具形状に倣った形状を形成する超音波加工方法において、この送りテーブルはリニアガイドと低摺動型シリンダとを備え、該低摺動型シリンダの駆動によって、前記工具の超音波振動に追従させつつ、該リニアガイドに沿って、当該送りテーブルを工具に対して送り移動して、前記被加工物を削ることを特徴とする超音波加工方法とした。
従って、送りテーブルが低摺動型シリンダの駆動によってリニアガイドに沿って移動し、工具の超音波振動に追従するので、被加工物に対する工具の押付け力(加圧力)の変動を小さく抑えることができる。このように加圧力が安定するから、被加工物の破損などを回避できるほか、被加工物の仕上がり形状も良好である。
【0048】
請求項5に示す如く、請求項4に記載の超音波加工方法であって、前記送りテーブルの振動振幅を測定し、この測定値に基づいて、前記送りテーブルの送り量を制御することを特徴とする超音波加工方法とした。
従って、送りテーブルの振動振幅を測定してそれをもとにテーブル送り量を制御するので、請求項2と同様、加工精度が向上する。
【0049】
請求項6に示す如く、請求項4または請求項5に記載の超音波加工方法であって、前記被加工物が脆性材料であることを特徴とする超音波加工方法とした。
従って、加圧力が前述のとおり精度良く制御されるので、被加工物たる脆性材料の破損を防止しつつ、加工時間を短縮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施形態に係る超音波穿孔装置の全体的な構成を示した側面図。
【図2】
同じく正面図。
【図3】
穿孔ヘッド部の側面図一部断面図。
【図4】
同じく正面図。
【図5】
同じく平面断面図。
【図6】
昇降テーブルの側面断面図。
【図7】
同じく平面図。
【符号の説明】
1 超音波穿孔装置(超音波加工装置)
9 工具
11 昇降テーブル(送りテーブル)
13 ワーク(被加工物)
20 変位センサ(位置測定手段)
30 リフトシリンダ(低摺動型シリンダ)
50 リニアガイド
Claims (6)
- 超音波により工具を振動させ、この振動を砥粒に伝達することにより工具形状に倣った形状を被加工物に形成する超音波加工装置において、
前記被加工物は、移動可能な送りテーブルに固定されるとともに、
この送りテーブルはリニアガイドと低摺動型シリンダとを備え、該低摺動型シリンダの駆動によって、前記送りテーブルが前記リニアガイドに沿って移動して前記被加工物を前記工具に対し送るように構成したことを特徴とする超音波加工装置。 - 前記送りテーブルには、当該送りテーブルの位置を測定する位置測定手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波加工装置。
- 前記被加工物が脆性材料であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の超音波加工装置。
- 砥粒を分散した液体を送りテーブルに固定された被加工物の表面に流しながら、工具を超音波により振動させつつ該被加工物に押し付け、該工具と該被加工物との間にある砥粒で該被加工物を削ることにより、工具形状に倣った形状を形成する超音波加工方法において、
この送りテーブルはリニアガイドと低摺動型シリンダとを備え、該低摺動型シリンダの駆動によって、前記工具の超音波振動に追従させつつ、該リニアガイドに沿って、当該送りテーブルを工具に対して送り移動して、前記被加工物を削ることを特徴とする超音波加工方法。 - 前記送りテーブルの振動振幅を測定し、この測定値に基づいて、前記送りテーブルの送り量を制御することを特徴とする請求項4に記載の超音波加工方法。
- 前記被加工物が脆性材料であることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の超音波加工方法。
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- 2002-05-31 JP JP2002160078A patent/JP2004001133A/ja active Pending
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