JP2004000952A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】 明細書
【発明の名称】 水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒、その製造方法および液相水素添加又は脱水素反応の促進方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粒子を、アルカリ水溶液処理に供して、前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して得られた触媒性金属を含むスポンジ状金属母材と、このスポンジ状金属母材中に、その質量に対し、100〜10000ppmの含有量で含有されているマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種とを含むことを特徴とする水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒。
【請求項2】 請求項1に記載のスポンジ金属触媒を製造するために、
(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粒子を、アルカリ水溶液により処理して前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開するに際し、
前記合金粉末を、前記成分(A)の質量に対して、50〜10000ppmのマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有する水性処理液中に分散し、この分散液をアルカリ水溶液に添加して前記展開処理を施し、それによって形成されたスポンジ状金属粒子を捕集することを特徴とする、水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項3】 前記捕集されたスポンジ状金属粒子に少なくとも1回の水洗を施し、このとき、この少なくとも1回の水洗に用いられる洗浄水中に、前記スポンジ状金属粒子の質量に対し、合計110〜11000ppmの、マグネシウム及びカルシウムから選ばれた少なくとも1種を含有させることをさらに含む、請求項2に記載の水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項4】 請求項1に記載のスポンジ金属触媒を製造するために、
(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粉末を、アルカリ水溶液により処理して前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開し、このスポンジ状金属粒子を捕集し、これに少なくとも1回の水洗を施し、このとき、この少なくとも1回の水洗に用いられる洗浄水中に、前記スポンジ状金属粒子の質量に対し、合計110〜11000ppmの、マグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有させることを特徴とする水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項5】 請求項1に記載のスポンジ金属触媒を製造するために、
(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粉末を、アルカリ水溶液により処理して前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開し、このスポンジ状金属粒子を捕集し、これに少なくとも1回の水洗を施し、この水洗されたスポンジ状金属粒子を、その質量に対し、110〜11000ppmのマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有する水溶液中に、10〜40℃の温度において、浸漬保存して、前記スポンジ状金属粒子に、その質量に対して100〜10000ppmのマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有させることを特徴とする水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項6】 請求項1に記載のスポンジ金属触媒を用いて、液相における、有機化合物の水素添加反応又は脱水素反応を促進する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒の分離及び仕込の操作性が良好な水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒、この触媒の製造方法、及びこの触媒による液相水素添加又は脱水素反応の促進方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にスポンジ金属触媒は、「久保松照夫、小松信一郎著、“ラネー触媒”(共立出版,1971)」〔非特許文献1〕に詳しく記載されており、これは、水、酸水溶液、又はアルカリ水溶液に溶出されないが、触媒作用を有する金属例えばニッケル、コバルト、銅、鉄、銀、パラジウムなどの少なくとも1種からなる成分(A)と、水、酸水溶液又はアルカリ水溶液に溶出されるが、触媒作用を有しない元素、例えばアルミニウム、珪素、亜鉛、マグネシウムなどの少なくとも1種からなる成分(B)との合金(ラネー合金)を、侵食剤、例えば水、アルカリ水溶液、又は酸水溶液による処理に供して、成分(B)の少なくとも一部分を溶出(展開工程)して得られ、スポンジ状形態の触媒活性金属を主成分として含む触媒である。一般的には、スポンジ金属触媒は、上記成分(A)および成分(B)からそれぞれ少なくとも1種類を選択合金化し、得られた合金粉末を、水酸化ナトリウム水溶液に投入し、所定温度で所定時間、加熱攪拌して成分(B)の少なくとも一部分を溶出させてスポンジ状金属粒子を形成し、これに、溶出した成分(B)および過剰の侵食剤を除去するための水洗を施すことにより製造され、水中に保存される(この水を封止水とする)。
上記のようにして製造された従来のスポンジ金属触媒を液相反応に使用した場合、触媒が反応容器壁や撹拌翼に付着して、スポンジ金属触媒の仕込や使用後の触媒の分離に支障をきたすことがある。特に、スポンジ金属触媒は、水に難溶性の媒体を用いる反応に使用された場合、前記支障を生ずることが多かった。ここで媒体とは、一般に反応に使用する溶媒を意味するが、反応が無溶媒で行われる場合には、反応により生成する液体の反応生成物を意味する。さらに、スポンジ金属触媒が媒体に分散し難く、このために、触媒活性が低下することがあった。上記のようなスポンジ金属触媒の低操作性を解消する方法として、スポンジ金属触媒の保存に使用される封止水を、水および水に難溶性の媒体のいずれとも相溶する溶媒に置換後、これを水に難溶性の媒体に再度置換する方法が知られているが、この方法には操作が煩雑になるという欠点がある。
【0003】
【非特許文献1】
久保松照夫、小松信一郎「ラネー触媒」共立出版、1971 1〜103頁
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、その触媒活性が高く、煩雑な操作を必要とせず、仕込や使用後の分離の操作性が良好で、かつ保存中の触媒活性の経時的な劣化が少なく、液相水素添加反応または脱水素反応を促進することのできるスポンジ金属触媒、その製造方法、及びその使用による液相水素添加又は脱水素反応促進方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定範囲量のアルカリ土類金属を含有するスポンジ金属触媒は、それを液相における水素添加反応または脱水素反応の触媒として使用した際に、触媒の仕込や分離の操作性が良好であり、しかも触媒活性が実用上十分に高く、かつ保存中の触媒活性の経時的な劣化が少ないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明の水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒は、(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粒子を、アルカリ水溶液処理に供して、前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して得られた触媒性金属を含むスポンジ状金属母材と、このスポンジ状金属母材中に、その質量に対し、100〜10000ppmの含有量で含有されているマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種とを含むことを特徴とするものである。
本発明の水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法(1)は、請求項1に記載のスポンジ金属触媒を製造するために、
(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粒子を、アルカリ水溶液により処理して前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開するに際し、
前記合金粉末を、前記成分(A)の質量に対して、50〜10000ppmのマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有する水性処理液中に分散し、この分散液をアルカリ水溶液に添加して前記展開処理を施し、それによって形成されたスポンジ状金属粒子を捕集することを特徴とするものである。
本発明の水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法(1)において、前記捕集されたスポンジ状金属粒子に少なくとも1回の水洗を施し、このとき、この少なくとも1回の水洗に用いられる洗浄水中に、前記スポンジ状金属粒子の質量に対し、合計110〜11000ppmの、マグネシウム及びカルシウムから選ばれた少なくとも1種を含有させることをさらに含むことが好ましい。
本発明の水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法(2)は、請求項1に記載のスポンジ金属触媒を製造するために、
(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粉末を、アルカリ水溶液により処理して前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開し、このスポンジ状金属粒子を捕集し、これに少なくとも1回の水洗を施し、このとき、この少なくとも1回の水洗に用いられる洗浄水中に、前記スポンジ状金属粒子の質量に対し、合計110〜11000ppmの、マグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有させることを特徴とするものである。
本発明の水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法(3)は、請求項1に記載のスポンジ金属触媒を製造するために、
(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粉末を、アルカリ水溶液により処理して前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開し、このスポンジ状金属粒子を捕集し、これに少なくとも1回の水洗を施し、この水洗されたスポンジ状金属粒子を、その質量に対し、110〜11000ppmのマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有する水溶液中に、10〜40℃の温度において、浸漬保存して、前記スポンジ状金属粒子に、その質量に対して100〜10000ppmのマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有させることを特徴とするものである。
本発明の液相における、有機化合物の水素添加反応又は脱水素反応を促進する方法は、請求項1に記載のスポンジ金属触媒を用いて前記液相水素添加又は脱水素反応を行うことを特徴とするものである。
本発明の反応促進方法は、本発明のスポンジ金属触媒を用いて、液相における、有機化合物の水素添加反応又は脱水素反応を促進することを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のスポンジ金属触媒の母材となる合金としては、成分(A)および成分(B)を合金化して得られたものが用いられる。成分(A)はニッケル、コバルト及び/又は鉄(例えばFe-Ni合金)が用いられ、必要により成分(A)にモリブデンが含まれていてもよい。成分(B)としては、アルミニウム、珪素、亜鉛及び/又はマグネシウムが用いられ特に安価であることからアルミニウムが好ましく用いられる。具体的には、母材合金として、Ni-Al合金、Fe-Ni-Al合金、Mo-Ni-Al合金などが例示できる。
【0008】
本発明方法(1),(2)で使用する水としては、水道水、地下水、湖水、河川水などが例示できる。
本発明方法(1),(2)で使用するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が例示できる。
【0009】
本発明におけるスポンジ金属触媒母材の展開方法及び、展開後のスポンジ状金属母材の水洗方法は、前記“ラネー触媒”(共立出版,1971)などに記載されている一般的な方法を使用できる。
【0010】
本発明のスポンジ金属触媒は、触媒性金属を含む、スポンジ状金属母材に100〜10000ppmの、カルシウム及びマグネシウムから選ばれた少なくとも1種が含有されているものである。このようなスポンジ金属触媒は、本発明方法(1)又は(2)又は(3)によって製造することができる。スポンジ金属触媒の、カルシウム及び/又はマグネシウムの含有量が100ppm未満の場合は、得られる触媒の仕込及び分離の操作性が不十分である。また、それが10000ppmを越えると、触媒活性が低下する。
【0011】
本発明方法(1)において、触媒活性金属成分(A)と、アルカリ溶出性元素成分(B)との合金の粉末に、アルカリ水溶液による展開処理を施す際に、この合金粉末粒子を、前記触媒活性金属成分(A)の質量に対し、50〜10000ppmのカルシウム(Ca)及び/又はマグネシウム(Mg)を含有する水性処理液中に分散し、この分散液を少量づつアルカリ水溶液に添加してこれを展開し、得られたCa及び/又はMg含有スポンジ状粉末を捕集することにより、本発明のスポンジ金属触媒を製造することができる。カルシウム及び/又はマグネシウム含有水性処理液中のCa又はMg含有量が、合金粉末中の前記成分(A)の質量に対して50ppm未満の場合は、触媒の分離及び仕込の操作性を十分に改良することができない。またそれが10000ppmを越えると、得られる触媒の触媒活性が不十分になる。
【0012】
Ca及び/又はMg含有水性処理液に用いられるCa及び/又はMgは、使用する水に含まれているものであってもよく、その含有量が不足の場合は、これにCa及び/又はMg化合物を添加して不足分を補ってよい。このCa及び/又はMg化合物としては塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物などを用いることができる。
【0013】
本発明方法(1)において、そのCa及び/又はMg存在下における展開工程の後に、捕集されたスポンジ状金属粒子に、少なくとも1回の水洗を施し、このとき、この少なくとも1回の水洗に用いられる洗浄水中に、前記スポンジ状金属粒子の質量に対し、合計110〜11000ppmのCa及び/又はMgを含有させる工程をさらに施してもよい。
【0014】
また、本発明のスポンジ金属触媒の製造方法(2)において、成分(A)と成分(B)との合金の粉末粒子をアルカリ水溶液により展開して得られたスポンジ状金属粒子を捕集し、このスポンジ状金属粒子に少なくとも1回の水洗を施し、このとき、この少なくとも1回の水洗に用いられる洗浄水中に、前記スポンジ状金属粒子の質量に対し、合計110〜11000ppmのCa及び/又はMgを含有させる。
【0015】
本発明方法(2)において、洗浄水中の、Ca及び/又はMg含有量が110ppm未満の場合は、得られる触媒の分離及び仕込の操作性が不十分になり、保存安定性も不良になる。またそれが11000ppmを越えると、得られる触媒の触媒活性が不十分になる。水洗に使用する洗浄水全体で、スポンジ状金属粒子の質量に対して110〜11000ppmのCa及び/又はMgが含有されるように、各回の洗浄水のアルカリ土類金属含有量が、スポンジ状金属粒子の質量に対して10〜5500ppmになるよう調節して、複数回の洗浄を施してもよい。
【0016】
本発明のスポンジ金属触媒の製造方法(3)において、本発明のスポンジ金属触媒を製造するために、
ニッケル、コバルト及び鉄から選ばれた少なくとも1種からなる成分(A)と、アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムから選ばれた少なくとも1種からなる成分(B)とからなる合金の粉末をアルカリ水溶液により処理して、前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開し、このスポンジ状金属粒子を捕集し、これに少なくとも1回の水洗を施し、この水洗されたスポンジ状金属粒子を、その質量に対し、110〜11000ppmのCa及び/又はMgを含有する水溶液中に、10〜40℃の温度において、浸漬保存して、前記スポンジ状金属粒子に、その質量に対して100〜10000ppmのCa及び/又はMgを含有させる。
【0017】
本発明のスポンジ金属触媒の製造方法(1),(2)及び(3)の各々において、前記成分(A)としてニッケル、コバルト及び鉄からなる群から選ばれた少なくとも1種が用いられ、また前記成分(B)としてアルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種が用いられる。
なお、成分(B)としてアルミニウムが用いられ、アルカリとして水酸化ナトリウムが使用された場合、本発明の製造方法(2)によると、水洗により過剰量の水酸化ナトリウムを除去し、また溶出したアルミニウムを除去することが容易であり、このため、水洗回数を削減できるという効果も得ることができる。
【0018】
さらに、本発明のスポンジ金属触媒は、成分(A)の質量に対して100〜10000ppmのCa及び/又はMgを含有する合金の粉末を用い、これをアルカリ水溶液で展開処理し、水洗し、この工程間に、Ca及び/又はMgの含有量が所望量になるように工程条件をコントロールし、得られたスポンジ状粒子を捕集することによっても製造することができる。
【0019】
上記のようにして製造され、100〜10000ppmの、Ca及び/又はMgを含有する本発明のスポンジ金属触媒は水中で安定に保存することができる。また、本発明のスポンジ金属触媒は、液相における有機化合物の水素添加反応または脱水素反応を促進することができる。本発明のスポンジ金属触媒が用いられる反応例としては、ニトロベンゼンの水素添加還元反応によるアニリンの製造、ベンゾニトリルの水素添加反応によるベンジルアミンの製造、ジエタノールアミンの脱水素酸化反応によるイミノジ酢酸の製造などがある。これらの反応におけるスポンジ金属触媒の使用量には限定はないが、一般的には、反応物の質量に対して2〜50質量%である。
【0020】
反応装置としては回分式または連続式の液相用反応装置を用いることができるが、特に制限はない。通常、スポンジ金属触媒は媒体(反応溶媒または液体原料)と混合し懸濁状態で反応装置に輸送されるが、触媒の仕込方法には格別の限定はない。反応終了後、触媒はろ過あるいは沈降させて分離することができるが、その方法に格別の限定はない。
【0021】
【実施例】
本発明を下記実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0022】
実施例1
触媒(I)の製造と水素添加反応への利用
ニッケル-アルミニウム合金(Ni:Al=50:50(質量比))の粉末30gを、25%水酸化ナトリウム水溶液300g中に仕込み、80℃で1時間処理した。得られたスポンジニッケル粒子に、その質量に対して87.5ppmのマグネシウムを含有する洗浄水200g/回による洗浄を6回施し、毎回触媒を沈殿させ上澄み液をデカンテーションにより除去した。520ppmのマグネシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(I))が得られた。
スポンジ金属触媒(I)中のマグネシウム含有量は、下記の測定方法により測定した。
スポンジ金属触媒0.5g(固形分)を王水10ml中に混合し、これを砂浴にて加熱しながら溶解した。触媒が完全に溶解したことを確認後、この溶液を蒸留水で100mlまで希釈し測定試料を調製した。この試料をICP分析に供してマグネシウム含有量を定量した。
また、スポンジ金属触媒(I)の沈降容積(水中懸濁安定性)を下記方法により測定した。
触媒(I)10g(Dry換算)を200mlメスシリンダーに入れ、水を添加して、総量200mlまで希釈した。これをタービン翼撹拌機を用いて765rpmで5分間攪拌した後、撹拌翼を引き抜き5分間静置させて、沈降容積を測定したところその結果は22mlであった。
触媒(I)を用いてニトロベンゼンを水素500ml容量の電磁攪拌式オートクレーブ中に、ニトロベンゼン2.0g、触媒(I)0.35g、NaOH0.035g、水0.4g、溶媒としてo−ジクロロベンゼン100gを仕込み、オートクレーブ内を水素により十分に置換した後、反応温度80℃、反応圧力0.8MPaで反応を開始し、この反応操作を水素吸収が完全に停止するまで続けた。反応完了に要した時間は2時間であった。
反応終了後、オートクレーブ中の触媒の状況を調査したところ、撹拌翼や壁面への触媒の付着は認められず、生成物の取出しも容易であった。
【0023】
比較例1
触媒(II)の製造と水素添加反応への利用
実施例1と同様にして、スポンジニッケル触媒(II)を製造した。但し、洗浄水として、スポンジニッケルに対して87.5ppmのマグネシウムを含有する水の代わりに、4ppmのマグネシウムを含有する水を使用した。19.4ppmのマグネシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(II))が得られた。
触媒(II)10g(Dry換算)を採取し、実施例1と同様にして沈降容積を測定したところ、沈降容積は、27mlであった。
触媒(I)の代わりに触媒(II)を使用したことを除き、それ以外は実施例1と同様にしてニトロベンゼンに水素添加を施した。反応完了に要した時間は5時間であった。
反応終了後、触媒の状況を調査したところ、撹拌翼および壁面に触媒が付着しており、生成物をスムースに取出すことが難かしかった。
【0024】
実施例2
触媒(III)の製造と水素添加反応への利用
ニッケル-アルミニウム合金(Ni:Al=50:50(質量比))の粉末30gを25%水酸化ナトリウム水溶液300g中に仕込み、80℃で1時間処理した。得られたスポンジニッケル粒子をその質量に対して60ppmのマグネシウムを含有する水200g/回を用いる洗浄を5回施し、その後、6回目にスポンジニッケル粒子質量に対して301ppmのマグネシウムを含有する水200gで洗浄した。毎回触媒を沈殿させ上澄み液をデカンテーションにより除去した。588ppmのマグネシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(III))粒子が得られた。
500mlの電磁攪拌式オートクレーブに、ニトロベンゼン2.0g、触媒(III)0.35g、NaOH0.035g、水0.4g、溶媒としてo−ジクロロベンゼン100gを仕込み、オートクレーブ内を水素により十分に置換した後、反応温度80℃、反応圧力0.8MPaで反応を開始し、この反応を水素吸収が完全に停止するまで続けた。反応完了に要した時間は2時間であった。
反応終了後、触媒の状況を調査したところ、撹拌翼や壁面への触媒の付着は認められず、生成物の取出しも容易であった。
【0025】
実施例3
触媒(IV)の製造と水素添加反応への利用
ニッケル-アルミニウム合金(Ni:Al=50:50(質量比))の粉末30gをニッケル質量に対して50ppmのマグネシウムを含有する水20gに添加し、10分間攪拌させスラリ−状にした。このスラリ−を、25%水酸化ナトリウム水溶液300g中に仕込み、80℃で1時間処理した。得られたスポンジニッケル粒子に対して60ppmのマグネシウムを含有する水200g/回による洗浄を5回施し、毎回触媒を沈殿させ上澄み液をデカンテーションにより除去した。318ppmのマグネシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(IV))が得られた。
触媒(IV)10g(Dry換算)を採取し、実施例1と同様にして沈降容積を測定した結果、22mlであった。
触媒(I)の代わりに触媒(IV)を使用した以外は実施例1と同様にしてニトロベンゼンの水素添加を行った。反応完了に要した時間は2.1時間であった。
【0026】
実施例4
触媒(V)の製造とナトリウム含量
ニッケル-アルミニウム合金(Ni:Al=40:60(質量比))の粉末50gを20%水酸化ナトリウム水溶液400g中に仕込み、90℃で1時間処理した。得られたスポンジニッケル粒子を、その質量に対して160ppmのマグネシウムを含有する水350g/回による洗浄を7回施し、毎回触媒を沈殿させ上澄み液をデカンテーションにより分離した。804ppmのマグネシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(V))を得た。この触媒(V)のナトリウム含量を測定したところ、70ppmであった。
【0027】
比較例2
触媒(VI)の製造とナトリウム含量
実施例4と同様にして、421ppmのマグネシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(VI))を製造した。但し、洗浄水として捕集したスポンジニッケル粒子に、その質量に対して160ppmのマグネシウムを含有する水の代わりに、60ppmのマグネシウムを含有する水を使用した。触媒(VI)のNa含量を測定したところ、970ppmであった。
【0028】
実施例5
触媒(VII)の製造と水素添加反応への利用
ニッケル-アルミニウム合金(Ni:Al=50:50(質量比))の粉末30gを、25%水酸化ナトリウム水溶液300g中に仕込み、80℃で1時間処理した。得られたスポンジニッケル粒子をその質量に対して350ppmのカルシウムを含有する水200g/回による洗浄を6回施し、毎回触媒を沈殿させ上澄み液をデカンテーションにより除去した。2020ppmのカルシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(VII))が得られた。
触媒(VII) 10g(Dry換算)を採取し、実施例1と同様にして沈降容積を測定したところ、沈降容積は23mlであった。
触媒(VII) 0.55g(Dry換算)にエタノール8mlを添加し1分間攪拌した後、沈澱させ上澄み液をデカンテーションにて除去した。この操作を3回繰り返した後、触媒を反応容器に仕込んだ。さらにフェノール70ml、シクロヘキサノール30mlを仕込み、水素置換を十分にした後、反応温度50℃、常圧にて反応を開始し、開始5分後から35分後の間の水素吸収量を測定した結果、325mlであった。さらに、触媒調製から30日後、同様に反応を行い、水素吸収量を測定した結果285mlであった。
【0029】
比較例3
触媒(VIII)の製造と水素添加反応への利用
実施例5と同様にしてスポンジニッケル触媒(VIII)を製造した。但し、洗浄水としてスポンジニッケルに対して350ppmのカルシウムを含有する水の代わりに、20ppmのカルシウムを含有する水を使用した。80ppmのカルシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(VIII))が得られた。
触媒(VIII)10g(Dry換算)を採取し、実施例1と同様にして沈降容積を測定したところ、沈降容積は27mlであった。
触媒(VII) の代わりに触媒(VIII)を使用したことを除き、それ以外は実施例5と同様にしてフェノールに水素添加を施した。反応開始5分後から35分後の水素吸収量を測定した結果、275mlであった。さらに、触媒調製から30日後、同様に反応を行い、水素吸収量を測定した結果190mlであった。
【0030】
実施例6
触媒(IX)の製造とナトリウム含量
実施例4と同様にしてスポンジニッケル触媒(IX)を製造した。但し、洗浄水としてスポンジニッケルに対して160ppmのマグネシウムを含有する水の代わりに、350ppmのカルシウムを含有する水を使用した。2400ppmのカルシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(IX))が得られた。
触媒(IX)のナトリウム含量を測定したところ、50ppmであった。
【0031】
【発明の効果】
本発明の、Ca及び/又はMgを含有する水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒は、液相での水素添加反応または脱水素反応の触媒として使用した際に、触媒の仕込や分離の操作性が良好であり、しかも触媒活性も実用上十分であり、かつ保存中の触媒活性の経時的な劣化が少ないという性能を有し、有機化合物の液相水素添加及び脱水素反応用触媒として、高い実用性を有するものである。
【発明の名称】 水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒、その製造方法および液相水素添加又は脱水素反応の促進方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粒子を、アルカリ水溶液処理に供して、前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して得られた触媒性金属を含むスポンジ状金属母材と、このスポンジ状金属母材中に、その質量に対し、100〜10000ppmの含有量で含有されているマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種とを含むことを特徴とする水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒。
【請求項2】 請求項1に記載のスポンジ金属触媒を製造するために、
(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粒子を、アルカリ水溶液により処理して前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開するに際し、
前記合金粉末を、前記成分(A)の質量に対して、50〜10000ppmのマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有する水性処理液中に分散し、この分散液をアルカリ水溶液に添加して前記展開処理を施し、それによって形成されたスポンジ状金属粒子を捕集することを特徴とする、水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項3】 前記捕集されたスポンジ状金属粒子に少なくとも1回の水洗を施し、このとき、この少なくとも1回の水洗に用いられる洗浄水中に、前記スポンジ状金属粒子の質量に対し、合計110〜11000ppmの、マグネシウム及びカルシウムから選ばれた少なくとも1種を含有させることをさらに含む、請求項2に記載の水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項4】 請求項1に記載のスポンジ金属触媒を製造するために、
(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粉末を、アルカリ水溶液により処理して前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開し、このスポンジ状金属粒子を捕集し、これに少なくとも1回の水洗を施し、このとき、この少なくとも1回の水洗に用いられる洗浄水中に、前記スポンジ状金属粒子の質量に対し、合計110〜11000ppmの、マグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有させることを特徴とする水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項5】 請求項1に記載のスポンジ金属触媒を製造するために、
(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粉末を、アルカリ水溶液により処理して前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開し、このスポンジ状金属粒子を捕集し、これに少なくとも1回の水洗を施し、この水洗されたスポンジ状金属粒子を、その質量に対し、110〜11000ppmのマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有する水溶液中に、10〜40℃の温度において、浸漬保存して、前記スポンジ状金属粒子に、その質量に対して100〜10000ppmのマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有させることを特徴とする水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項6】 請求項1に記載のスポンジ金属触媒を用いて、液相における、有機化合物の水素添加反応又は脱水素反応を促進する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒の分離及び仕込の操作性が良好な水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒、この触媒の製造方法、及びこの触媒による液相水素添加又は脱水素反応の促進方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にスポンジ金属触媒は、「久保松照夫、小松信一郎著、“ラネー触媒”(共立出版,1971)」〔非特許文献1〕に詳しく記載されており、これは、水、酸水溶液、又はアルカリ水溶液に溶出されないが、触媒作用を有する金属例えばニッケル、コバルト、銅、鉄、銀、パラジウムなどの少なくとも1種からなる成分(A)と、水、酸水溶液又はアルカリ水溶液に溶出されるが、触媒作用を有しない元素、例えばアルミニウム、珪素、亜鉛、マグネシウムなどの少なくとも1種からなる成分(B)との合金(ラネー合金)を、侵食剤、例えば水、アルカリ水溶液、又は酸水溶液による処理に供して、成分(B)の少なくとも一部分を溶出(展開工程)して得られ、スポンジ状形態の触媒活性金属を主成分として含む触媒である。一般的には、スポンジ金属触媒は、上記成分(A)および成分(B)からそれぞれ少なくとも1種類を選択合金化し、得られた合金粉末を、水酸化ナトリウム水溶液に投入し、所定温度で所定時間、加熱攪拌して成分(B)の少なくとも一部分を溶出させてスポンジ状金属粒子を形成し、これに、溶出した成分(B)および過剰の侵食剤を除去するための水洗を施すことにより製造され、水中に保存される(この水を封止水とする)。
上記のようにして製造された従来のスポンジ金属触媒を液相反応に使用した場合、触媒が反応容器壁や撹拌翼に付着して、スポンジ金属触媒の仕込や使用後の触媒の分離に支障をきたすことがある。特に、スポンジ金属触媒は、水に難溶性の媒体を用いる反応に使用された場合、前記支障を生ずることが多かった。ここで媒体とは、一般に反応に使用する溶媒を意味するが、反応が無溶媒で行われる場合には、反応により生成する液体の反応生成物を意味する。さらに、スポンジ金属触媒が媒体に分散し難く、このために、触媒活性が低下することがあった。上記のようなスポンジ金属触媒の低操作性を解消する方法として、スポンジ金属触媒の保存に使用される封止水を、水および水に難溶性の媒体のいずれとも相溶する溶媒に置換後、これを水に難溶性の媒体に再度置換する方法が知られているが、この方法には操作が煩雑になるという欠点がある。
【0003】
【非特許文献1】
久保松照夫、小松信一郎「ラネー触媒」共立出版、1971 1〜103頁
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、その触媒活性が高く、煩雑な操作を必要とせず、仕込や使用後の分離の操作性が良好で、かつ保存中の触媒活性の経時的な劣化が少なく、液相水素添加反応または脱水素反応を促進することのできるスポンジ金属触媒、その製造方法、及びその使用による液相水素添加又は脱水素反応促進方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定範囲量のアルカリ土類金属を含有するスポンジ金属触媒は、それを液相における水素添加反応または脱水素反応の触媒として使用した際に、触媒の仕込や分離の操作性が良好であり、しかも触媒活性が実用上十分に高く、かつ保存中の触媒活性の経時的な劣化が少ないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明の水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒は、(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粒子を、アルカリ水溶液処理に供して、前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して得られた触媒性金属を含むスポンジ状金属母材と、このスポンジ状金属母材中に、その質量に対し、100〜10000ppmの含有量で含有されているマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種とを含むことを特徴とするものである。
本発明の水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法(1)は、請求項1に記載のスポンジ金属触媒を製造するために、
(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粒子を、アルカリ水溶液により処理して前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開するに際し、
前記合金粉末を、前記成分(A)の質量に対して、50〜10000ppmのマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有する水性処理液中に分散し、この分散液をアルカリ水溶液に添加して前記展開処理を施し、それによって形成されたスポンジ状金属粒子を捕集することを特徴とするものである。
本発明の水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法(1)において、前記捕集されたスポンジ状金属粒子に少なくとも1回の水洗を施し、このとき、この少なくとも1回の水洗に用いられる洗浄水中に、前記スポンジ状金属粒子の質量に対し、合計110〜11000ppmの、マグネシウム及びカルシウムから選ばれた少なくとも1種を含有させることをさらに含むことが好ましい。
本発明の水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法(2)は、請求項1に記載のスポンジ金属触媒を製造するために、
(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粉末を、アルカリ水溶液により処理して前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開し、このスポンジ状金属粒子を捕集し、これに少なくとも1回の水洗を施し、このとき、この少なくとも1回の水洗に用いられる洗浄水中に、前記スポンジ状金属粒子の質量に対し、合計110〜11000ppmの、マグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有させることを特徴とするものである。
本発明の水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒の製造方法(3)は、請求項1に記載のスポンジ金属触媒を製造するために、
(A)ニッケル、コバルト、及び、鉄、からなる群から選ばれた少なくとも1種と、(B)アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種との合金の粉末を、アルカリ水溶液により処理して前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開し、このスポンジ状金属粒子を捕集し、これに少なくとも1回の水洗を施し、この水洗されたスポンジ状金属粒子を、その質量に対し、110〜11000ppmのマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有する水溶液中に、10〜40℃の温度において、浸漬保存して、前記スポンジ状金属粒子に、その質量に対して100〜10000ppmのマグネシウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有させることを特徴とするものである。
本発明の液相における、有機化合物の水素添加反応又は脱水素反応を促進する方法は、請求項1に記載のスポンジ金属触媒を用いて前記液相水素添加又は脱水素反応を行うことを特徴とするものである。
本発明の反応促進方法は、本発明のスポンジ金属触媒を用いて、液相における、有機化合物の水素添加反応又は脱水素反応を促進することを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のスポンジ金属触媒の母材となる合金としては、成分(A)および成分(B)を合金化して得られたものが用いられる。成分(A)はニッケル、コバルト及び/又は鉄(例えばFe-Ni合金)が用いられ、必要により成分(A)にモリブデンが含まれていてもよい。成分(B)としては、アルミニウム、珪素、亜鉛及び/又はマグネシウムが用いられ特に安価であることからアルミニウムが好ましく用いられる。具体的には、母材合金として、Ni-Al合金、Fe-Ni-Al合金、Mo-Ni-Al合金などが例示できる。
【0008】
本発明方法(1),(2)で使用する水としては、水道水、地下水、湖水、河川水などが例示できる。
本発明方法(1),(2)で使用するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が例示できる。
【0009】
本発明におけるスポンジ金属触媒母材の展開方法及び、展開後のスポンジ状金属母材の水洗方法は、前記“ラネー触媒”(共立出版,1971)などに記載されている一般的な方法を使用できる。
【0010】
本発明のスポンジ金属触媒は、触媒性金属を含む、スポンジ状金属母材に100〜10000ppmの、カルシウム及びマグネシウムから選ばれた少なくとも1種が含有されているものである。このようなスポンジ金属触媒は、本発明方法(1)又は(2)又は(3)によって製造することができる。スポンジ金属触媒の、カルシウム及び/又はマグネシウムの含有量が100ppm未満の場合は、得られる触媒の仕込及び分離の操作性が不十分である。また、それが10000ppmを越えると、触媒活性が低下する。
【0011】
本発明方法(1)において、触媒活性金属成分(A)と、アルカリ溶出性元素成分(B)との合金の粉末に、アルカリ水溶液による展開処理を施す際に、この合金粉末粒子を、前記触媒活性金属成分(A)の質量に対し、50〜10000ppmのカルシウム(Ca)及び/又はマグネシウム(Mg)を含有する水性処理液中に分散し、この分散液を少量づつアルカリ水溶液に添加してこれを展開し、得られたCa及び/又はMg含有スポンジ状粉末を捕集することにより、本発明のスポンジ金属触媒を製造することができる。カルシウム及び/又はマグネシウム含有水性処理液中のCa又はMg含有量が、合金粉末中の前記成分(A)の質量に対して50ppm未満の場合は、触媒の分離及び仕込の操作性を十分に改良することができない。またそれが10000ppmを越えると、得られる触媒の触媒活性が不十分になる。
【0012】
Ca及び/又はMg含有水性処理液に用いられるCa及び/又はMgは、使用する水に含まれているものであってもよく、その含有量が不足の場合は、これにCa及び/又はMg化合物を添加して不足分を補ってよい。このCa及び/又はMg化合物としては塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物などを用いることができる。
【0013】
本発明方法(1)において、そのCa及び/又はMg存在下における展開工程の後に、捕集されたスポンジ状金属粒子に、少なくとも1回の水洗を施し、このとき、この少なくとも1回の水洗に用いられる洗浄水中に、前記スポンジ状金属粒子の質量に対し、合計110〜11000ppmのCa及び/又はMgを含有させる工程をさらに施してもよい。
【0014】
また、本発明のスポンジ金属触媒の製造方法(2)において、成分(A)と成分(B)との合金の粉末粒子をアルカリ水溶液により展開して得られたスポンジ状金属粒子を捕集し、このスポンジ状金属粒子に少なくとも1回の水洗を施し、このとき、この少なくとも1回の水洗に用いられる洗浄水中に、前記スポンジ状金属粒子の質量に対し、合計110〜11000ppmのCa及び/又はMgを含有させる。
【0015】
本発明方法(2)において、洗浄水中の、Ca及び/又はMg含有量が110ppm未満の場合は、得られる触媒の分離及び仕込の操作性が不十分になり、保存安定性も不良になる。またそれが11000ppmを越えると、得られる触媒の触媒活性が不十分になる。水洗に使用する洗浄水全体で、スポンジ状金属粒子の質量に対して110〜11000ppmのCa及び/又はMgが含有されるように、各回の洗浄水のアルカリ土類金属含有量が、スポンジ状金属粒子の質量に対して10〜5500ppmになるよう調節して、複数回の洗浄を施してもよい。
【0016】
本発明のスポンジ金属触媒の製造方法(3)において、本発明のスポンジ金属触媒を製造するために、
ニッケル、コバルト及び鉄から選ばれた少なくとも1種からなる成分(A)と、アルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムから選ばれた少なくとも1種からなる成分(B)とからなる合金の粉末をアルカリ水溶液により処理して、前記成分(B)の少なくとも一部分を溶出して、スポンジ状金属粒子に展開し、このスポンジ状金属粒子を捕集し、これに少なくとも1回の水洗を施し、この水洗されたスポンジ状金属粒子を、その質量に対し、110〜11000ppmのCa及び/又はMgを含有する水溶液中に、10〜40℃の温度において、浸漬保存して、前記スポンジ状金属粒子に、その質量に対して100〜10000ppmのCa及び/又はMgを含有させる。
【0017】
本発明のスポンジ金属触媒の製造方法(1),(2)及び(3)の各々において、前記成分(A)としてニッケル、コバルト及び鉄からなる群から選ばれた少なくとも1種が用いられ、また前記成分(B)としてアルミニウム、珪素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種が用いられる。
なお、成分(B)としてアルミニウムが用いられ、アルカリとして水酸化ナトリウムが使用された場合、本発明の製造方法(2)によると、水洗により過剰量の水酸化ナトリウムを除去し、また溶出したアルミニウムを除去することが容易であり、このため、水洗回数を削減できるという効果も得ることができる。
【0018】
さらに、本発明のスポンジ金属触媒は、成分(A)の質量に対して100〜10000ppmのCa及び/又はMgを含有する合金の粉末を用い、これをアルカリ水溶液で展開処理し、水洗し、この工程間に、Ca及び/又はMgの含有量が所望量になるように工程条件をコントロールし、得られたスポンジ状粒子を捕集することによっても製造することができる。
【0019】
上記のようにして製造され、100〜10000ppmの、Ca及び/又はMgを含有する本発明のスポンジ金属触媒は水中で安定に保存することができる。また、本発明のスポンジ金属触媒は、液相における有機化合物の水素添加反応または脱水素反応を促進することができる。本発明のスポンジ金属触媒が用いられる反応例としては、ニトロベンゼンの水素添加還元反応によるアニリンの製造、ベンゾニトリルの水素添加反応によるベンジルアミンの製造、ジエタノールアミンの脱水素酸化反応によるイミノジ酢酸の製造などがある。これらの反応におけるスポンジ金属触媒の使用量には限定はないが、一般的には、反応物の質量に対して2〜50質量%である。
【0020】
反応装置としては回分式または連続式の液相用反応装置を用いることができるが、特に制限はない。通常、スポンジ金属触媒は媒体(反応溶媒または液体原料)と混合し懸濁状態で反応装置に輸送されるが、触媒の仕込方法には格別の限定はない。反応終了後、触媒はろ過あるいは沈降させて分離することができるが、その方法に格別の限定はない。
【0021】
【実施例】
本発明を下記実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0022】
実施例1
触媒(I)の製造と水素添加反応への利用
ニッケル-アルミニウム合金(Ni:Al=50:50(質量比))の粉末30gを、25%水酸化ナトリウム水溶液300g中に仕込み、80℃で1時間処理した。得られたスポンジニッケル粒子に、その質量に対して87.5ppmのマグネシウムを含有する洗浄水200g/回による洗浄を6回施し、毎回触媒を沈殿させ上澄み液をデカンテーションにより除去した。520ppmのマグネシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(I))が得られた。
スポンジ金属触媒(I)中のマグネシウム含有量は、下記の測定方法により測定した。
スポンジ金属触媒0.5g(固形分)を王水10ml中に混合し、これを砂浴にて加熱しながら溶解した。触媒が完全に溶解したことを確認後、この溶液を蒸留水で100mlまで希釈し測定試料を調製した。この試料をICP分析に供してマグネシウム含有量を定量した。
また、スポンジ金属触媒(I)の沈降容積(水中懸濁安定性)を下記方法により測定した。
触媒(I)10g(Dry換算)を200mlメスシリンダーに入れ、水を添加して、総量200mlまで希釈した。これをタービン翼撹拌機を用いて765rpmで5分間攪拌した後、撹拌翼を引き抜き5分間静置させて、沈降容積を測定したところその結果は22mlであった。
触媒(I)を用いてニトロベンゼンを水素500ml容量の電磁攪拌式オートクレーブ中に、ニトロベンゼン2.0g、触媒(I)0.35g、NaOH0.035g、水0.4g、溶媒としてo−ジクロロベンゼン100gを仕込み、オートクレーブ内を水素により十分に置換した後、反応温度80℃、反応圧力0.8MPaで反応を開始し、この反応操作を水素吸収が完全に停止するまで続けた。反応完了に要した時間は2時間であった。
反応終了後、オートクレーブ中の触媒の状況を調査したところ、撹拌翼や壁面への触媒の付着は認められず、生成物の取出しも容易であった。
【0023】
比較例1
触媒(II)の製造と水素添加反応への利用
実施例1と同様にして、スポンジニッケル触媒(II)を製造した。但し、洗浄水として、スポンジニッケルに対して87.5ppmのマグネシウムを含有する水の代わりに、4ppmのマグネシウムを含有する水を使用した。19.4ppmのマグネシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(II))が得られた。
触媒(II)10g(Dry換算)を採取し、実施例1と同様にして沈降容積を測定したところ、沈降容積は、27mlであった。
触媒(I)の代わりに触媒(II)を使用したことを除き、それ以外は実施例1と同様にしてニトロベンゼンに水素添加を施した。反応完了に要した時間は5時間であった。
反応終了後、触媒の状況を調査したところ、撹拌翼および壁面に触媒が付着しており、生成物をスムースに取出すことが難かしかった。
【0024】
実施例2
触媒(III)の製造と水素添加反応への利用
ニッケル-アルミニウム合金(Ni:Al=50:50(質量比))の粉末30gを25%水酸化ナトリウム水溶液300g中に仕込み、80℃で1時間処理した。得られたスポンジニッケル粒子をその質量に対して60ppmのマグネシウムを含有する水200g/回を用いる洗浄を5回施し、その後、6回目にスポンジニッケル粒子質量に対して301ppmのマグネシウムを含有する水200gで洗浄した。毎回触媒を沈殿させ上澄み液をデカンテーションにより除去した。588ppmのマグネシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(III))粒子が得られた。
500mlの電磁攪拌式オートクレーブに、ニトロベンゼン2.0g、触媒(III)0.35g、NaOH0.035g、水0.4g、溶媒としてo−ジクロロベンゼン100gを仕込み、オートクレーブ内を水素により十分に置換した後、反応温度80℃、反応圧力0.8MPaで反応を開始し、この反応を水素吸収が完全に停止するまで続けた。反応完了に要した時間は2時間であった。
反応終了後、触媒の状況を調査したところ、撹拌翼や壁面への触媒の付着は認められず、生成物の取出しも容易であった。
【0025】
実施例3
触媒(IV)の製造と水素添加反応への利用
ニッケル-アルミニウム合金(Ni:Al=50:50(質量比))の粉末30gをニッケル質量に対して50ppmのマグネシウムを含有する水20gに添加し、10分間攪拌させスラリ−状にした。このスラリ−を、25%水酸化ナトリウム水溶液300g中に仕込み、80℃で1時間処理した。得られたスポンジニッケル粒子に対して60ppmのマグネシウムを含有する水200g/回による洗浄を5回施し、毎回触媒を沈殿させ上澄み液をデカンテーションにより除去した。318ppmのマグネシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(IV))が得られた。
触媒(IV)10g(Dry換算)を採取し、実施例1と同様にして沈降容積を測定した結果、22mlであった。
触媒(I)の代わりに触媒(IV)を使用した以外は実施例1と同様にしてニトロベンゼンの水素添加を行った。反応完了に要した時間は2.1時間であった。
【0026】
実施例4
触媒(V)の製造とナトリウム含量
ニッケル-アルミニウム合金(Ni:Al=40:60(質量比))の粉末50gを20%水酸化ナトリウム水溶液400g中に仕込み、90℃で1時間処理した。得られたスポンジニッケル粒子を、その質量に対して160ppmのマグネシウムを含有する水350g/回による洗浄を7回施し、毎回触媒を沈殿させ上澄み液をデカンテーションにより分離した。804ppmのマグネシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(V))を得た。この触媒(V)のナトリウム含量を測定したところ、70ppmであった。
【0027】
比較例2
触媒(VI)の製造とナトリウム含量
実施例4と同様にして、421ppmのマグネシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(VI))を製造した。但し、洗浄水として捕集したスポンジニッケル粒子に、その質量に対して160ppmのマグネシウムを含有する水の代わりに、60ppmのマグネシウムを含有する水を使用した。触媒(VI)のNa含量を測定したところ、970ppmであった。
【0028】
実施例5
触媒(VII)の製造と水素添加反応への利用
ニッケル-アルミニウム合金(Ni:Al=50:50(質量比))の粉末30gを、25%水酸化ナトリウム水溶液300g中に仕込み、80℃で1時間処理した。得られたスポンジニッケル粒子をその質量に対して350ppmのカルシウムを含有する水200g/回による洗浄を6回施し、毎回触媒を沈殿させ上澄み液をデカンテーションにより除去した。2020ppmのカルシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(VII))が得られた。
触媒(VII) 10g(Dry換算)を採取し、実施例1と同様にして沈降容積を測定したところ、沈降容積は23mlであった。
触媒(VII) 0.55g(Dry換算)にエタノール8mlを添加し1分間攪拌した後、沈澱させ上澄み液をデカンテーションにて除去した。この操作を3回繰り返した後、触媒を反応容器に仕込んだ。さらにフェノール70ml、シクロヘキサノール30mlを仕込み、水素置換を十分にした後、反応温度50℃、常圧にて反応を開始し、開始5分後から35分後の間の水素吸収量を測定した結果、325mlであった。さらに、触媒調製から30日後、同様に反応を行い、水素吸収量を測定した結果285mlであった。
【0029】
比較例3
触媒(VIII)の製造と水素添加反応への利用
実施例5と同様にしてスポンジニッケル触媒(VIII)を製造した。但し、洗浄水としてスポンジニッケルに対して350ppmのカルシウムを含有する水の代わりに、20ppmのカルシウムを含有する水を使用した。80ppmのカルシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(VIII))が得られた。
触媒(VIII)10g(Dry換算)を採取し、実施例1と同様にして沈降容積を測定したところ、沈降容積は27mlであった。
触媒(VII) の代わりに触媒(VIII)を使用したことを除き、それ以外は実施例5と同様にしてフェノールに水素添加を施した。反応開始5分後から35分後の水素吸収量を測定した結果、275mlであった。さらに、触媒調製から30日後、同様に反応を行い、水素吸収量を測定した結果190mlであった。
【0030】
実施例6
触媒(IX)の製造とナトリウム含量
実施例4と同様にしてスポンジニッケル触媒(IX)を製造した。但し、洗浄水としてスポンジニッケルに対して160ppmのマグネシウムを含有する水の代わりに、350ppmのカルシウムを含有する水を使用した。2400ppmのカルシウムを含有するスポンジニッケル触媒(触媒(IX))が得られた。
触媒(IX)のナトリウム含量を測定したところ、50ppmであった。
【0031】
【発明の効果】
本発明の、Ca及び/又はMgを含有する水素添加反応又は脱水素反応用スポンジ金属触媒は、液相での水素添加反応または脱水素反応の触媒として使用した際に、触媒の仕込や分離の操作性が良好であり、しかも触媒活性も実用上十分であり、かつ保存中の触媒活性の経時的な劣化が少ないという性能を有し、有機化合物の液相水素添加及び脱水素反応用触媒として、高い実用性を有するものである。
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