JP2004000235A - 作動因子における対立遺伝子の変動の評価 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】個人から単離した細胞のビタミンD受容体遺伝子に関連する対立遺伝子の変異を分析する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有害な病的変化を蒙る危険のある個人の同定手段としての、作動因子における対立遺伝子の変動の同定方法に関する。本発明の方法は、特にビタミンD受容体遺伝子における対立遺伝子の変動の評価と、それによる骨密度を低下または上昇させる病的素質の予知に有効である。更に、これらの変動は、異なる治療方法に対する応答の予知とともに、長期にわたる骨粗鬆症の危険性の予知にも適用可能である。また、他の転写因子の遺伝子の変動による病理学的または生理学的変異に対する病的素質の決定または対抗のモデルとしても影響し、その結果、病気の危険性、および治療に対する応答の有する危険性が予知される。このような転写の制御因子は、ステロイド/レチノイド/チロイドホルモン受容体の遺伝子群のような、リガンドで活性化された遺伝子の制御因子であってもよいが、それに限定されるものではない。
【0002】
【従来の技術】
ビタミンDは、多くの組織中における細胞の分化、および複製という機能とともに、骨、およびカルシウム代謝の有力な制御因子としての機能を有する。ビタミンDは、高度に特異的なビタミンD受容体(1)を介して、ジヒドロキシ化された代謝産物(1,25−ジヒドロキシビタミンD、またはカルシトリオール)として作用する。また、標的となる遺伝子の発現の制御におけるカルシトリオールの作用には、ここで作動する転写活性因子のタンパクが介在している。ビタミンD受容体遺伝子のクローニングは、それが、チロイドホルモン、およびビタミンA派生物(4,5)はもちろん、ステロイドホルモン(糖質コルチコイド、プロゲステロン、エストロゲン、アンドロゲン、および鉱質コルチコイド)の受容体や、多くの自然な生理学的かつ進化的な過程の制御因子を含む、リガンドで活性化された受容体の上科の一部であることを示している。遺伝子の発現に対するこれら受容体タンパクの介在機構は、多くの研究の対象となっている。受容体の機能を低下させ、ヒトや動物の主要な機能に混乱を生じさせるような、まれに起こる明かな変異については、既に確認されている。例えば、ビタミンD受容体遺伝子の変異はビタミンD抵抗性のくる病を引き起こし(6)、アンドロゲン受容体遺伝子の変異は、アンドロゲンにおける感受性の欠如を引き起こす(7)ことが報じられている。また、エストロゲン受容体遺伝子では、まれに自然発生する多型性が、自発的流産の多くに関連している(8)。しかしながら、分子レベルの情報が豊富であるにもかかわらず、受容体遺伝子における自然な対立遺伝子の変動が通常の生理状態または病的状態におけるステロイドホルモンへの反応の多様性に対しておよぼす潜在的な寄与については殆ど知られていない。
【0003】
骨粗鬆症は、多大な治療費と、長時間にわたり影響する衰弱とを伴い、殆どの西欧諸国の年配者の間で、健康上の主要な問題のひとつとなっている(Riggs MEJM)。発病した骨粗鬆症の治療はおよそ満足ゆくものではないため、予防が最善の策となっている。骨粗鬆症の予防は、成人初期における骨密度最大値の増加と、関連する年齢、および閉経後における骨の損失を最小に抑える点とが中心となっている。双子および家族に対する研究から得られた証拠は、骨密度最大値には強い遺伝的影響があり、かつそれが、ホルモン的因子、栄養、および生活習慣により改良可能であることを示している(Kellyら、11)。また、双子に関する研究では、軸方向または付随的な骨の密度は、一卵性双生児の方が二卵生双生児よりもはるかによく一致していた。これらの研究の結果、骨密度の変動のうち全体の約75%が遺伝的要因によるものと計上され、かつこれについては、母娘による研究で確認された。本発明者らは、双子をモデルとして、この遺伝的影響の潜在的な機構について分析し、この遺伝的影響が、骨の形成の指標であるオステオカルシン(osteocalcin)のような、骨の転移の生化学的指標として確実に現れることを見いだした。更に、二卵生双生児では、オステオカルシン量の高さが骨密度の低さと関連していた。本発明者らはまた、この遺伝的影響が、例えばプロコラーゲンI型のC末端のプロペプチドのような、骨の形成に関する他の指標と同程度に観察可能で、かつ例えばプロコラーゲンI型のC末端のテロペプチドのような、骨の崩壊に関する他の指標よりも弱く観察可能であることを見いだした。通常、骨の形成と崩壊とは密接に連関し、あるいは、双子における骨の転移の生理学的過程は、互いに「対」となっている。双子におけるこの多少驚くべき結果は、骨の転移の指標としての骨の形成の指標から骨密度が予知され、かつ骨の転移の遺伝的制御が、骨密度に強い遺伝的影響をおよぼす経路であることを示している。双子における骨密度の代表的データは、一つの遺伝子または遺伝子群が、骨密度の遺伝的影響に対応し得ることを示唆している。しかしながら、この影響が如何に媒介されるか、また、どの遺伝子または遺伝子群が骨密度に影響するかは明かではない。本発明者らは、制限されたある長さの断片の多型性を用いた最近の研究において、ビタミンD受容体(VDR)のオステオカルシンを示す座位における通常の対立遺伝子の変動が、年齢、性別、または閉経の有無と独立していることを明かにした。活性を有するホルモンとしてのビタミンD(1,25ジヒドロキシビタミンD)に対するビタミンD受容体遺伝子は、骨ならびに腸のカルシウム吸収、骨の形成、骨再吸収細胞(オステロクラスト)の補充、および骨自体の吸収等のカルシウム代謝はもちろん、パラチロイドホルモンの生産および腎臓でのビタミンD自身の活性化における重要かつ中心的な制御因子である。活性を有するホルモンとしてのビタミンD受容体のあらゆる配列がこのような広い影響をおよぼし得るものと予想されるため、これら一般的なVDR遺伝子の対立遺伝子が骨密度に対しておよぼす影響については、双子をモデルとして調査した。双子のモデルでは、年齢や混乱の元となる様々な影響が、比較する組から排除される。
【0004】
これらの研究は、VDR遺伝子中の一般的な対立遺伝子の変動から、骨密度の差異が予知されるとともに、脊椎および股関節部の骨密度における遺伝的要因の50〜75%が計上されることを示している。
【0005】
このことは、制御タンパクおよび/または構成タンパクをエンコードする遺伝子の転写制御因子における遺伝子型の変動による、病気に対する感受性および治療としての望ましい対応の決定に関連した、生理学的設定値および生理学的に異常な状態となる傾向の決定の、明かな例であると思われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題および課題を解決するための手段】
従って、本発明は、第一に、制御タンパクおよび/または構成タンパクをエンコードする遺伝子の転写制御因子における遺伝子型の変動の分析を含む、個人における生理学的に異常な状態の要因および/または、治療として望ましい対応の評価方法からなっている。
【0007】
本発明は、第二に、個人のビタミンD受容体遺伝子における対立遺伝子の変動の分析を含む、個人における骨密度の高低の要因の予知方法からなっている。
【0008】
ここで、本発明の望ましい実施例には、エンドヌクレアーゼによる消化を用いた、制限されたある長さの断片の多型性の分析が含まれる。
【0009】
また、本発明の更に望ましい実施例では、エンドヌクレアーゼによる消化に先立ち、ビタミンD受容体の一部分を、ポリメラーゼチェーンリアクション法を用いて増幅させる。
【0010】
更にまた、本発明の更に望ましい実施例では、エンドヌクレアーゼは、Bsm1、Apa1、EcoRv、およびTaq1からなるグループより選択され、かつ最も望ましいエンドヌクレアーゼはBsm1である。
【0011】
一方、本発明の他の望ましい実施例として、ビタミンD受容体の一部分は、以下に示すグループから選択される一組のプライマーを用いて増幅される。
【0012】
5′−CAACCAAGACTACAAGTACCGCGTCAGTGA−3′
および、5′−AACCAGCGGAAGAGGTCAAGGG−3′
および、5′−CAGAGCATGGACAGGGAGCAAG−3′
および、5′−GCAACTCCTCATGGCTGAGGTCTCA−3′
【0013】
本発明の第二の側面には、ポリメラーゼチェーンリアクション法によるVDR遺伝子の一部分の増幅に用いるための、表5に示すVDR遺伝子の配列から得られるプライマーの組が含まれる。このVDR遺伝子の一部には、表5に示すように、Bsm1、Apa1、またはTaq1による切断部位が少なくとも1箇所含まれる。
【0014】
また、この側面に係る望ましい実施例では、このプライマーの組は以下の通りである。
【0015】
5′−CAACCAAGACTACAAGTACCGCGTCAGTGA−3′
および、5′−AACCAGCGGAAGAGGTCAAGGG−3′
または、5′−CAGAGCATGGACAGGGAGCAAG−3′
および、5′−GCAACTCCTCATGGCTGAGGTCTCA−3′
【0016】
骨粗鬆症および/または虚血性心臓病の危険性を測定するため、エストロゲンおよびアンドロゲン受容体を含む他の作動因子における対立遺伝子の構成を評価してもよい。アンドロゲン受容体における対立遺伝子の構成はまた、皮膚病の危険性および治療に対する応答の評価にも使用可能である。糖質コルチコイド受容体およびレチノイン酸受容体における対立遺伝子の構成を、骨粗鬆症の危険性の評価のため測定してもよい。また、鉱質コルチコイド受容体における対立遺伝子の構成を、高血圧の危険性の評価のため測定してもよく、原腫瘍形成遺伝子における対立遺伝子の構成を、癌の危険性の評価のため測定してもよい。更に、組織特異性制御因子の評価は、骨粗鬆症/癌の危険性の測定に使用可能である。
【0017】
本発明の本質をよりよく理解するため、本発明の望ましい形態について、以下の例および図とともに説明する。
【0018】
図1は、ビタミンD受容体の変動による、双子の組における腰部のBMDの差異を示すものである。
【0019】
図2は、エキソン7からエキソン9の3′末端の非コード領域までのビタミンD受容体遺伝子のマップで、研究に使用した多型性の制限酵素結合位置およびRFLPによる同定に使用するためPCR法で増幅した断片が示されている。また、アステリスクは多型性部位を示し、かつアステリスクのない部分は不変部位を示す。
【0020】
図3は、骨密度がVDRの遺伝子型により異なることを示すもので、対象は女性である。データは、母集団の平均と標準誤差とで示され、また、p値は、各グループにて対をなす二者間における、ステューデントのt検定のためのものである。
【0021】
図4は、腰椎における骨密度への遺伝的な影響が男性でも現れていることを示すものである。表示は図3と同様である。
【0022】
図5は、遺伝子型に応じた、年齢と腰椎骨中における無機物密度(BMD)の退行および破壊限界との関連を示すものである。
【0023】
図6は、遺伝子型に応じた、年齢と大腿骨頸中における無機物密度の退行および破壊限界との関連を示すものである。
【0024】
図7は、接合子およびVDR対立遺伝子の一致性に関する、双子の間における骨密度の差異を示すものである。腰椎および大腿中心の骨密度は、MZおよびDZの双子の組の骨密度における各組の示すパーセンテージの差異内に示され、かつDZの双子の組におけるVDRの一致または不一致に応じて示されている。VDRの対立遺伝子が一致するDZの双子では、あらゆる部位において、MZの双子との間で有意な差がないのに対し、一致しないDZの双子では、それぞれの部位において、これらグループの双方と明かに異なっている(ANOVA)。DZのグループ全体とVDR対立遺伝子の一致するグループの差異をMZの双子と比較すると、腰椎、骨頸、ワード三角(Ward’s triangle)、および大腿中心の転子部にて、それぞれ75%,48%,59%、および90%の遺伝的影響がVDR対立遺伝子により説明可能である。一方、他の転写活性因子であるレチノイン酸受容体α(21q7)では、いかなる部位でも△BMDを予知できなかった。
【0025】
図8は、VDRの不一致の程度に関する、二卵性双生児間での骨密度の差異を示すものである。双子の間での骨密度の差異は、0−完全に一致するもの、1−対立遺伝子が1つ不一致なもの、2−対立遺伝子がいずれも不一致なもの、の3グループに分けて記入されている。A,B,C、およびDの図は、それぞれ腰椎、大腿骨頸、ワード三角、および転子部のVDR遺伝子における分析結果を示している。この影響による回帰分析は、腰椎(p=0.0001)、ワード三角(p=0.006)、および転子部(p=0.034)にて有意な相関を示し、大腿骨頸(p=0.055)では不明確であった。また、同胞対称分散法を用いたところ、それぞれの双子の組における骨密度の差の平方(△2)と、腰椎、大腿骨頸、およびワード三角のVDR遺伝子の一致性とは有意な相関を示す一方、大腿中心の転子部では不明確であった。
【0026】
腰椎△2 =0.015+0.138 *不一致度(r=0.43,p=0.001)
大腿骨頸△2 =0.015+0.016 *不一致度(r=0.29,p=0.034)
ワード三角△2=0.017+0.026 *不一致度(r=0.34,p=0.01)
転子部△2 =0.015+0.015 *不一致度(r=0.27,p=0.05)
【0027】
図9は、骨中における無機物密度の高さと、VDR遺伝子との関連を示すものである。
【0028】
A.Bsm−1対立遺伝子が不一致な二卵性双生児(n=22)における、腰椎骨の無機物密度を遺伝子型に従ってプロットし、双子の組における骨の無機物密度の値を線で結んだ。22組のうち21組では、(b)で示す対立遺伝子が多く存在する程高い骨質量を示した(白丸)が、1組は逆の傾向を示した(黒丸)。
【0029】
B.閉経前の無関係な女性の腰椎骨の無機物密度をVDR対立遺伝子に対応させたものである。個々のMZおよびDZの双子の組から一人を選び、かつグループ毎の被件者の数は図示の通りである。図より、遺伝子型がBBであるグループではBMDが低い一方、遺伝子型がbbでグループではBMDが高いことが明かである。この影響の大きさは、各部位における骨密度の標準偏差が、年齢に応じた人数に対応して、約0.11gm/cm2となることからも確認できる。ここで、平均±標準誤差の値を図にプロットし、かつ各グループ間の差異の有意性はANOVAにより算出した。また、各組間の比較は、組に依らないステューデントの検定により行った。なお、異なるグループにおける年齢、身長、および体重による比較では、有意な差はなかった。
【0030】
図10は、異なる遺伝子型を有する個人に対するカルシトリオール処方の結果を示すものである。
【0031】
【実施例】
調査1
方法
本研究には、骨密度の疫学適研究のため募集した288名の被験者が含まれている。全被験者は、緯度が南緯33°52′で、日光の照射が多いシドニー都市圏内から募集し、コーカサス−英−オーストラリア系(英国およびアイルランドを遠縁とする)の91名の被験者から、3つのエンドヌクレアーゼに対し制限されたある長さの断片の多型性(RFLP)のデータとともに、血清中のオステオカルシンのデータを得た。また、骨疾患を起こすか、オステオカルシン量を増加させることが知られている治療を受けた被験者はおらず、かつ全被験者が、コーカサス系で、腎機能も正常であることを、血清クレアチニンを用いて測定した。
【0032】
血清は、一晩絶食後の翌朝採取し、かつ静脈穿刺前の被験者へのカルシトリオール投与は行っていない。血清中のオステオカルシンは、ウサギの抗ヒツジオステオカルシンに基づく内部放射免疫検定により測定した(11)。この検定における通常のオステオカルシン量は、精製したヒツジオステオカルシンを用いた場合、3〜18ng/mlであった。オステオカルシン測定は最初に独立して行い、RFLP分析の結果とともに、コード化して保存した。
【0033】
DNA分析
RFLPの同定に用いるプローブには、ビタミンD受容体cDNAの、全コード化領域を含むがmRNAの3′側の未翻訳部分を欠く、2.1kbの断片を用いた。血液からのDNA抽出およびサザンブロティングには常法を用い、制限酵素には、
Pharmacia−LKBおよびNew−England Biolabs製のものを、その取扱説明書に基づき用いた。
【0034】
統計的方法
RFLPマーカーの相対的結合は、分割表およびX2検定を用いた棄却検定の自由な組み合せの偏差から、統計的に評価した。また、分散の解析(ANOVA)には、Statview+graphics統計用パッケージ(Abacus Concepts製、カリフォルニア州バークレー)を、Macintosh SE/30コンピュータにて起動させ使用した。RFLPと血清オステオカルシンとの関係の評価には、Fisherの保護最小有意差(PLSD)検定を用いた。有意水準の見積りは、あらゆる影響の棄却検定に対する最初のF検定(平均に差がない)および個々の類別(RFLP)クラスにおける連続的な変化の平均の、各組の間における比較の信頼水準のために行った。
【0035】
個々のRFLPマーカーは、ANOVAにおける連続的な可変物(オステオカルシン)に対する類別クラス(RFLP)の比較により、それぞれオステオカルシン血清の濃度の連携しているものと考えられる。オステオカルシンの値(ng/ml)は通常分別できないが、非母数解析を用いることにより、ln(l+オステオカルシン)として対数に変換可能である。
【0036】
結果
ビタミンD受容体のcDNAをプローブとして用い、未だ報告されていない2つのよくあるタイプのRFLP(Bsm IとEcoRVにより同定された)を発見し、かつ既に知られているRFLPを、Apa Iにより同定した(18)。このRFLPは、Aa(Apa I)、Bb(Bsm I)、およびEe(EcoRV)としてコードされている。ここで、大文字は部位の欠失を示し、小文字は部位の存在を示す。また、RFLPのメンデル遺伝学的本質は、同様の研究により確認されている(データ未掲載)。表1は、本研究と無関係な任意抽出による266名の志願者における、これらのRFLPの頻度を示すものである。182名の遺伝子型が、これらのRFLPを全て有すると評価された(表2)が、これらは強度の連関性の証拠であり、かつこの位置における連鎖の不均衡を示している。これらのRFLPは、AAとBB、およびEEにおいて、それぞれ83%および92%という頻度で強く連関し、また、これに応じて、aaとbb、およびeeとは、それぞれ61%および72%という頻度で連関している。これら一連の機能的解析結果はハプロタイプによるものではないが、可能性のある8つのハプロタイプのうちの2つが、被験者のうち53.2%で必要とされている。この明かな同種接合体から、a、b、e、およびA、B、Eが、最も高頻度となる可能性を有するハプロタイプとして示されている(表2)。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
*:182名に対し、3つのRFLPの全てについて試験した結果の被験者数(異型接 合体の場合、4名未満のものについては除外した。)
【0039】
【表3】
注:オステオカルシン値は、コーカサス−英−オーストラリア系(英国およびアイルランドを遠縁とする)の91名の被験者から、有益な3つのRFLPについて分析した。オステオカルシン値は通常分別できないため、統計的解析に先立ち対数に変換した。メジアンは、血清中のオステオカルシン値のメジアン、平均は、対数変換値(ln(l+オステオカルシン))の平均、SDは標準偏差、SEは平均の標準誤差である。また、Sig.は、同型接合体の平均値の間(Sig.1)および同型接合体(RFLP部位にはない)と異種接合体との間(Sig.2)についての有意性(このような変化が偶発する可能性)、p値は、あらゆる結果にわたるF検定のためのものである。
【0040】
【表4】
【0041】
PFLPと血清との関係
91名の正常な被験者のオステオカルシンを、血清中のオステオカルシンのデータに基づき解析した(表3)。また、被験者の年齢、性別、および閉経の有無に関する分散を表4に示した。年齢は、いずれのRFLPの遺伝子型に対しても大きな影響をおよぼしていない。一方、Bsm I BBグループは、Bsm I bbグループに比べ有意に高い(p=0.0001)オステオカルシン値を示している。同様の影響は他のRFLPでもあり、Apa I対立遺伝子系では有意のp値(AA対aa、p<0.0025)を、EcoRV対立RFLPではより弱いp値(EE対ee、p=0.015)を示している。また、これら3つのRFLPの全てにおいて、BB:16.8ng/ml、Bb:8.9ng/ml、bb:8.8ng/ml(メジアン)等、制限部位の対立遺伝子(A,B,E)の欠失は高いオステオカルシン値に連動し、制限部位の対立遺伝子(a,b,e)の存在は低いオステオカルシン値に連動している。なお、未処理のオステオカルシン値に対する非母数統計解析(Kruskal−Wallis)からは、Apa I:p=0.0016、Bsm I:p=0.0001、EcoRV:0.0044と、本質的にANOVAと同様の結果が得られている。
【0042】
Bsm IおよびApa I RFLPが最も予知可能なため、被験者を、これら対立遺伝子の9つの組み合せに従い細分した。その結果、血清のオステオカルシン値は、遺伝子型に応じて明確に分離された(図1)。EcoRVマーカーの連関が弱いことは他のマーカーとの不均衡さから確定していたため、EE遺伝子型におけるBsm IおよびApa I対立遺伝子の分配ならびに被験者のオステオカルシン値について調査した(図2)。また、Bsm Iマーカーは専ら推論によるハプロタイプおよび連関するオステオカルシン値(p=0.003)を支配している。
【0043】
血清のオステオカルシン値による遺伝子型の予知は、男(n=14)を除くとBsm IおよびApa Iにより維持される(全ての結果をANOVAにより評価した場合、Bsm I:p=0.0001、Apa I:p=0.0034)。閉経状態は、オステオカルシン値の増加と連関し、かつ閉経後の早期には、広範なオステオカルシン値が観察された(19〜21)。そのため、閉経状態の役割を、年齢、閉経の有無、およびBsm I遺伝子型を含む共分散多重回帰解析により評価した。すなわち、閉経状態は、血清中のオステオカルシン濃度の決定にBsm Iの多型性より弱く関与する(r=−0.44、p< 0.001)。また、これら2つの因子のANOVAは同様の結果を示した(Bsm I:p=0.0002、閉経状態:p=0.24)。閉経前および閉経後の女性のデータを別々に解析したところ異なる結果が得られ、かつ遺伝子型は閉経状態よりも強く予知に関与した(図1)。
【0044】
調査2
材料および方法
被験者
被験社は互いに無関係な535名のボランティア(447名の女性と88名の男性)で、骨密度への遺伝的影響を調査し記録した。被験者はシドニー都市圏内から媒体を通じて募集したもので、その平均年齢は女性で51.4±13.8歳(平均±SD、範囲は20〜84歳)、男性で40.6±16.0歳(範囲は20〜79歳)であった。また、被験者はいずれもコーカサス−英−オーストラリア系(英国およびアイルランドを遠縁とする)であった。閉経状態は、高いFSHおよびLH量と低いエストラジオール量、ならびに少なくとも過去12年にわたる生理の欠如から確認した。被験者のうち、骨疾患の経験、疾患、および父母両系にわたる卵巣除去または薬物使用が有るもの(ホルモン置換療法を含む)は、骨密度の変化を起こしやすいため調査から除外した。
【0045】
骨無機質密度の分析
骨無機質密度(BMD)は、面積当りの密度(g/cm2)で表し、腰椎(L2〜4)および骨頸について、既に述べられている通り(Pocockら、1987)、二重光子吸収法または二重エネルギーx線吸収法(それぞれLunar DP−3またはDEXA、Lunar Radiation NCo.製、ウィスコンシン州マディソン)にて測定した。
【0046】
DNA 解析; PCR (ポリメラーゼチェーンリアクション)およびエンドヌクレアーゼ消化による RFLP 解析
集めた血液をヘパリン処理した試験管内に入れ、臨床遠心分離機を用い、生理食塩水中における沈降により白血球を分離した。精製した白血球は、白血球溶解バッファ(10mMのトリス塩酸(pH7.4)、生理食塩水、および0.5%W/Vのソジウム硫酸ナトリウム(SDS))中に溶解した。溶解液は50ug/mlのタンパクキナーゼK(Applied Bioscience製、パロ・アルト、米国)とともに65℃で2時間処理した。更に、Naniatisらの抽出法に従いフェノール−クロロホルム溶液で繰り返しDNAを抽出し、エタノールで沈澱させた。このDNAをTEバッファ(10mMのトリス塩酸、1mMのEDTA(pH8.0))に再溶解し、260nmにおける紫外線吸光度から定量した。
【0047】
更に、エキソン7から 3′側の未翻訳部分までのビタミンD受容体遺伝子をシークエンスした。この配列を表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
VDR遺伝子の3′側方部を増幅させるため、4つのオリゴヌクレオチドプライマーを合成した。Bsm1結合部位の同定は、825塩基対の断片を形成させるエキソン7(5′−CAACCAAGACTACAAGTACCGCGTCAGTGA−3′)
および他のイントロン8(5′−AACCAGCGGAAGAGGTCAAGGG−3′)
内で開始される一つのプライマーで、その部位がまたがる部分を増幅することにより促進させた。また、ApaIおよびTaqI結合部位の同定は、740塩基対の断片を形成させるイントロン8(5′−CAGAGCATGGACAGGGAGCAAG−3′)および他のエキソン9(5′−GCAACTCCTCATGGCTGAGGTCTCA−3′)
を用いた一つのプライマーで1回増幅を行うことにより促進させた(図2)。
【0050】
PCRには、200ngのゲノムDNA、20pmolの各プライマー、200uMのdNTP、50mMの塩化カリウム、10mMのトリス(pH8.3)、1.5mMの塩化マグネシウム、および1UのTaqDNAポリメラーゼ(東洋紡製、大阪)を含む20ulの試料を用いた。そして、個々の試料を、以下に示す37回の増幅ステップに供した。すなわち、ステップ1:94℃3分、62℃1分、72℃2分、ステップ2〜6:94℃20秒、62℃1分、72℃1分、ステップ7〜36:それぞれ5秒、5秒、30秒、である。増幅には、あらゆる熱サイクル装置を効果的に用いるとよい。PCR法の産物は10ulずつ等分した後、65℃にて5ユニットのBsm1(New EnglandBiolabs.米国マサチューセッツ州)、37℃にてApa1、または65℃にてTaq1*(Promega Co.オーストラリア)の各エンドヌクレアーゼにより1時間消化させた。ここで、無関係な遺伝子のクローンは、Bsm1およびApa1による消化のための分子内制御に使用され、また、Taq1による消化に際しては、PCR産物自身における不変のTaq1結合部位が分子内制御に使用された。次いで、消化後のPCR産物を、0.5ug/mlの臭化エチジウム、0.09Mのトリスホウ酸塩、および0.002MのEDTAを含む1.2%(Bsm1およびApa1)または2.0%(Taq1)のアガロースゲル(pH8.3)を用い、100Vで1時間分離した。アガロースゲル用の分子量の基準には、EcoRIで消化されたSPP1マーカー(Bresatec Limited、アデレード、オーストラリア)を用いた。配列の多型性を見いだすにあたっては、関連する結合部位の配列のための他の制限酵素が利用可能であった。例えば、Bsm1結合部位には不変のStu I結合部位(B対立遺伝子はAGGCCTGCGCATTCCC、b対立遺伝子では下線のGがAになる。)が隣接しているが、この配列の変化は、Aos1、Fsp1、Mst1、Fdi1、Hinp1、Hha1、およびそれらのアイソチジマーにより検出可能である。多型性を有するApa1結合部位の配列は、隣接するPvu2結合部位(A対立遺伝子はGAGGGGCCCAGCTG、a対立遺伝子では下線のGがTになる。)内で終わっている。Gの存在は、Ban2、Aoc2、Pss1、Pal1、Hae3、Cfr3I、Asu1、Sau96I、Eco0109I、Dra2、およびそれらのアイソチジマーにより検出可能である。Ban1およびそのアイソチジマーに対する多型性は、Tの存在によるものである。Taq1多型性の配列は、不変のHba1からHae3結合部位にわたって延び、そのT対立遺伝子はGCGCTGATTGAGGCC(t対立遺伝子では下線のTがCになる。)である。この多型性はMbo1、Sau3A、Dpn1、およびそれらのアイソチジマーにより検出可能である。
【0051】
Taq1*RFLP:血清中のオステオカルシン濃度を予知するビタミンD受容体中のBsm1およびApa1RFLPについては既に述べた。これらの多型性部位は、ゲノムDNAのエキソン7から3′側の未翻訳部分(3′−UTR)までの間に位置している。これら2つの通常のビタミンD受容体の対立遺伝子(ABおよびab)間の差異を特性付けるため、本発明者らは、この遺伝子型における同種接合体AABB、aabbを含む配列を形成し、15のコード化されていない差異を含む多くの配列の差異を同定した。エキソン9のコード化領域における似たような差異、すなわちイソロイシンコドンのTとCの差異(ATTもATCもイソロイシンコドンである。)もあった。
【0052】
統計的解析
分散の解析(ANOVA)は、Statview+graphics統計用パッケージ(Abacus Concepts製、カリフォルニア州バークレー)を、Macintosh SE/30コンピュータにて起動させ使用した。RFLPとBMD、身長、および体重との関係の評価には、Fisherの保護最小有意差(PLSD)検定を用いた。有意水準の見積りは、あらゆる影響の棄却検定に対する最初のF検定(平均に差がない)および個々の類別(RFLP)クラスにおける連続的な変化の平均の、各組の間における比較の信頼水準のために行った。組の間における比較は、ステューデントのt検定により行った。また、連続的と絶対的な変化の関係は、多重解析により評価し、RFLPマーカー間の関係は、分割表およびカイ2分布により評価した。
【0053】
結果
535名の被験者におけるRFLPの分布を表6に示す。これらのRFLPは、Bb(Bsm1)、Aa(Apa1)、Tt(Taq1)によりコードされ、大文字は結合部位の欠失を、小文字は結合部位の存在をそれぞれ表している。Bsm1およびApa1RFLPの分布(表1)も上記と同様の結果を示している。また、RFLPは高い連携性を有している。(表7)すなわち、AA遺伝子型の分布は、BBおよびttとそれぞれ92.7%および95.3%という高頻度で連関しているのに対し、aaは、bbおよびttとそれぞれ61.6%および65.3%という頻度で連関している。Bsm1とTaq1RFLPの比較では、tt、Tt、およびTT遺伝子型は、BB、Bb、およびbbと、それぞれ95.5%、95.1%および96.4%という高頻度で連関し分布している。Bsm1とTaq1が密接に連関するというこの結果から、以下の記述ではTaq1とBsm1とを同等とみなし、Bsm1の結果についてのみ言及する。
【0054】
腰椎(LS)および骨頸(FN)におけるRFLPとBMDとの関係について、535名の被験者について調査した。この被験者の年齢、身長、体重、および閉経の有無の分布を表8に示す。年齢、身長、および体重は、RFLP遺伝子型と有意な関連を示さない(表9)。また、女性の場合、BBおよびAAグループのLS BMDの平均は9.9%(1.107対1.118)および8.6%(1.049対1.139)で、いずれもbbおよびaaグループより低く、BBおよびAAグループのFN BMDの平均も、5.6%および5.3%と、いずれもbbおよびaaグループより低かった。異種配偶子を有する対立遺伝子が支配的であることもまた観察された(図3)。すなわち、より低いLSおよびFN BMDが、いずれも制限部位の対立遺伝子(BA)と関連していた。LSおよびFNのBBAA遺伝子型とbbaa遺伝子型におけるBMDの平均の差(それぞれ13.4%および7.8%)は、BBとbbまたはAAとaaとの間におけるそれよりも大きかった(表9)。
【0055】
【表6】
【0056】
表7:RFLPマーカーの連関の程度
Bsm−1遺伝子型とApa−1およびTaq1遺伝子型との連関を表示した。nは被験者数を、カイ2乗およびp値は関連のないマーカー間における棄却検定による排除を反映している。
【表7】
【0057】
【表8】
【0058】
【表9】
注:nは被験者数を、pは、ANOVAから得られた変数の遺伝子型に対する影響を示す。全てのp値が、異なる遺伝子型における平均値が有意の差を有していないことを示している。
【0059】
遺伝子型の影響は、女性の場合、年齢(歳)、閉経の有無(閉経後の平均年数;YPM)、身長(cm)、体重(kg)、およびBsm1遺伝子型(BB=1、Bb=2、bb=3)を含む共分散の多重回帰により評価し、等化した。ここで、
LS BMD(g/cm2)=0.419+0.054・Bsm遺伝子型−0.004・年齢−0.994・YPM+0.02・体重+0.004・身長(n=425)、r=0.58、p=0.34
【0060】
FN BMD(g/cm2)=0.456+0.025・Bsm遺伝子型−0.004・年齢−0.004・YPM+0.04・体重+0.02・身長(n=425)、r=0.68、p=0.47
であった。女性の場合、腰椎および骨頸におけるBMDはいずれも年齢および閉経の有無と弱く関連し、かつLSおよびFNにて、Bsm1 RFPはBMDと独立して関連していた。
男性の場合の結果を以下に示す。
LS BMD(g/cm2)=1.039+0.058・Bsm遺伝子型(n=85)、r=0.22、RS=0.05、p=0.038、Fの評点=4.9
FN BMD(g/cm2)=1.046−0.003・年齢(n=85)、r=0.132、R2=0.10、p=0.017、Fの評点=5.9
【0061】
破壊限界への到達
骨粗鬆症による破壊の危険性を増加させるまで低下した腰椎のBMDの値は、アーストラリアDubbo市における断面の調査の結果から得た。この値は0.97gm/cm2で、アメリカ人における破壊限界の値と類似していた。もし、遺伝子型がBMDおよびその後の骨粗鬆症の可能性に影響しているならば、骨質量の変化および破壊限界に到達する年齢の差異が遺伝子型と関連して現れるはずである。図5は、女性の場合において、BB、Bb、およびbbの各遺伝子型でLS BMDの低下を示す線が、破壊限界の値と交差する年齢を示す図である。BBとbbでは到達までに10年の差があり(60.3歳と71.1歳)、かつBb異型遺伝子では中間的な値(68.1歳)を示した。破壊限界を0.7gm/cm2とした骨頸の場合でも、同様の結果が得られた(BB;66歳、Bb;70歳、bb;74歳)。
【0062】
調査3
通常のVDR対立遺伝子の骨密度に対する影響を双子をモデルとして調査した。
双子では、年齢や混乱の元となる様々な影響が排除される。75のMZと55のDZからなる250名のコーカソイドの双子(双子7組の男性MZ双子および6組の男性DZ双子を含む。)について調査を行った。被験者の年齢は17歳から70歳にわたり、平均年齢はMZでは45±13歳、DZでは44±11歳(平均±SD)であった。BMDは、腰椎および骨頸について、既に述べられている通り(Pocockら、1987)、二重光子吸収法または二重エネルギーx線吸収法(それぞれLunar DP−3またはDEXA、Lunar Radiation NCo.製、ウィスコンシン州マディソン)にて測定した。女性の双子間における閉経の有無は全員等しく、閉経後の場合、その年数も等しかった。
【0063】
骨の変動のマーカーとして既に示した、Bsm−1、Apa−1、およびEcoRV結合部位として多型性を有する部位のVDR遺伝子をシークエンスした。これらの部位は、エキソン7から3′−UTRまでの間に位置している。コード化領域または潜在的スプライシング部位には多型性部位はなく、また、イントロン8のGがAに置換された、情報量に富んだBsm−1結合部位を有していた。そして、これが、最も通常の2つうの対立遺伝子のコード化領域における唯一の相違点であった。エキソン9のTの代わりにCが含まれ、ATTがATCに変わる場合もあるが、エンコードされるアミノ酸(イソロイシン)は変化しない。Bsm−1結合部位の側方のDNA配列は、被験者の遺伝子型決定を容易化するための、エキソン7からエキソン9まで2.1〜2.2kbの断片を増幅させる、ポリメラーゼチェーンリアクションに基づく方法に用いた。白血球DNAのPCR増幅は、Bsm−1(New England Biolabs Inc. Gene Search、ブリスベーン、オーストラリア)によるエンドヌクレアーゼ消化の前に、Corbett FTS−1サーマルシークエンサー(Corbett Research、Mortlake NSW、オーストラリア)を用い、
5′−CAACCAAGACTACAAGTACCGCGTCAGTGA−3′
および、5′−AACCAGCGGAAGAGGTCAAGGG−3′
をプライマーとして行った。Bsm−1結合部位の存在により、825塩基対の生産物が650塩基対および175塩基対の断片に分断された。また、Bsm−1による消化と平行して、1個のBsm−1結合部位を有する4.7kbのプラスミドを、部分的な消化による対立遺伝子の指示ミスを避けるための内部制御に用いた。
【0064】
双子を用いた調査結果から、腰椎および大腿中心における組内のBMDの差異(△BMD%)に対する対立遺伝子の変動の影響を、DZ双子について検討した(図7)。いずれの部位でも、VDRの対立遺伝子が一致するものの方が、不一致なものより有意に低い値を示した。一方、MZ双子における腰椎の△BMD%とVDR対立遺伝子が一致するDZ双子の場合とは有意な差を示さず、いずれも、対立遺伝子が不一致なDZ双子の場合と有意な差(p<0.0001)を示した。また、大腿中心の場合には、環境的影響が大きいこともあり、類似ではあるがより弱い影響を示した。閉経前の双子における制限もこの結果を覆すものではなかった。身長および体重等の形質による結果のばらつきを制御すると、VDR遺伝子型は、腰椎(p=0.0002)および転子部(p=0.02)では最も強い予知因子であるが、大腿中心の首部ではそうではない。上記のような骨の変化の指標としてのBsm−1対立遺伝子の支配的な影響という観点から、本発明者らは、遺伝子型における差異の程度と双子の組における特徴の差異との間のほぼ一定の関係が、骨質量の特徴に支配的な影響をおよぼしているものと予想した。血縁間における連鎖の解析によれば、ある特徴の差の2乗と、血縁関係のある双子における相同遺伝子の比率との間の有意な相関は、遺伝的な連鎖を示し、かつVDR対立遺伝子は、腰椎および大腿中心の殆どの部分で支配的であった。△BMDをVDR対立遺伝子における一致の程度と比較すると、不一致な双子では、1.5〜2.5倍の値を示した(図7および8参照)。また、VDR対立遺伝子が不一致な22組の双子のうち21組では、b対立遺伝子が骨密度の高さに関連していた(図9A)。更に、閉経前の女性では(MZおよびDZの双子の組から1名ずつ無作為に選択した。)、bb対立遺伝子が骨密度の高さに関連する一方、BB対立遺伝子が骨密度の低さに関連し、対立遺伝子の支配的影響が明かであった(図9B)。
【0065】
これらのデータは、VDR対立遺伝子の差異が、通常の個人の集団における骨密度の比率の主要な差異を表すことを証明している。BB、AA、EE、および/またはttの各VDR遺伝子型は、男女双方で骨密度の低さに関連している。従って、VDR遺伝子のRFLP遺伝子型は、骨における変化の増加および骨密度の低下傾向や、男女双方における、骨密度最大値および以後の骨質量の生理的変動を予知する際に有効である。一方、骨密度や骨の変化に対する遺伝的影響の機構はいまだ明かではない。しかしながら、1,25−ジヒドロキシビタミンDは、VDR遺伝子のプロモーター中のビタミンD応答要素を経てオステオカルシン合成の促進因子として作用している(Morrison 1989 Science)。本発明者らは、VDR遺伝子における通常の対立遺伝子の変動が血清中のオステオカルシン量の差異に関連し、かつこれらのVDR遺伝子における対立遺伝子の変動から、二卵生双生児における骨密度の差異が予知できることを示した。
【0066】
すなわち、これらVDR遺伝子のRFLPは、男女双方において骨質量の生理的変動のマーカーであり、かつ本発明者らは、Bsm1RFLPが、LSとFN において、BMDに対し独立した相関を有することを見いだした。
【0067】
【表10】
【0068】
【表11A】
注: p;相関の程度が有意の差異を有するかを判定するためのp値。双子のモデルの場合、rMZとrDZとの間の有意な差異が、係る特徴に対する遺伝的影響の証拠となる。本発明者らによる、DZ双子における、双子間で同一のVDR遺伝子型を持つもの(DZ一致)と双子間で異なるVDR遺伝子型を持つもの(DZ不一致)との比較では、rDZ一致とrDZ不一致との間における有意に異なる相関は、係る特徴に対するVDR遺伝子の遺伝的影響の貢献を支持している。
【0069】
【表11B】
【0070】
同種配偶子であるBBAAまたはAAtt遺伝子型が低い骨密度と関連し、かつBBAA配偶子を有するLSおよびFNにおけるBMDの平均値は、約12%および8%とbbaa遺伝子型に比べ男女双方で低くなっていることは重要な点である。また、これらの遺伝子型の差異は以後の生活に重要である、というのは、この差異が10年間にわたる破壊限界の差異を表しているからである。これらの対立遺伝子の差異は、双子の研究で観察される骨質量への遺伝的影響の機構を示し、かつ低骨質量に係る対立遺伝子の有無の遺伝的検知方法を提供する。すなわち、ビタミンD受容体の遺伝子型の同定は、重要な骨質量の測定法として、骨粗鬆症の予防および治療に新たな路を開くものである。
【0071】
異なった遺伝子型に応じた処理上の差異の説明
以上のデータには、上記したVDR対立遺伝子が異なる機能を有することが示されている。従って、異なる遺伝子型を有する個人では、カルシトリオールおよび/またはその類似体に対して異なる応答を示すと予想される。このことを、Bsm 1遺伝子型にそれぞれ同型配偶子(BBおよびbb)を有する10名の若い女性にカルシトリオールを投与し、それに対する応答を、骨カルシウム代謝に係る3つのマーカー、すなわちオステオカルシン、パラチロイドホルモン(PTH)、および尿中カルシウムを用いて分析することにより確認した(図10参照)。
【0072】
BBとbbのグループとでは、基礎的な血清オステオカルシン値が異なり(p<0.01)、対立遺伝子がBBであるものでは、やはりオステオカルシン値が高かった。カルシトリオールの投与後における、基礎的な値からの増加率はbbのグループの方が高く、BBのグループにおける増加率は相対的に低かったが、基礎的なオステオカルシン量が多いため、総反応量はBBのグループの方が多くなった。
【0073】
パラチロイドホルモンはカルシトリオールにより抑制されることが知られているが、カルシトリオールによる抑制の程度は、遺伝子型により明かに異なった。すなわち、パラチロイドホルモンによる抑制力は、BBのグループでは弱いがbbのグループでは強かった。これは、カルシトリオールの投与に対するPTHの応答が明かに異なることを示している。調査期間中における尿中の総カルシウム排出量(グラフの下側)はBBのグループの方が明かにbbのグループより多い。これは、遺伝子型に応じて、カルシウムの運用が異なることを示している。また、カルシトリオール処理に伴う抑制によるパラチロイドホルモンの減少が、尿中におけるカルシウム排出量の増加と対をなしていることから、骨中カルシウムの流動と両立可能な、異なるカルシウム代謝機構の存在が示唆される。
【0074】
VDR および他の特性
ビタミンD受容体およびビタミンD内分泌系は、他の様々な病的および生理的状況に影響している。そして、ビタミンD受容体遺伝子におけるこのような差異を、内性または外性のカルシトリオールに対する異なった応答およびビタミンD類似体を用いた治療への誘導のみならず、重要な成分の制御にカルシトリオールが影響する他の疾患を受容し得るまで発達させることも可能である。ビタミンD内分泌系を内部に備える状況または疾患の公知の例には、エイズウイルス(HIV−I)の複製、胸部ガン細胞の増殖、結腸ガン細胞の成長、ケラチン生成細胞の分化、乾蘚細胞の複製および作用、精子形成、黒色腫および他のガン細胞等がある。
【0075】
すなわち、ここに記載したように、本発明の結果、VDR中の機能的に異なる対立遺伝子が、その感受性、発展性、予防能力、および種々の処置における治療能力により、ビタミンD受容体およびビタミンD内分泌系により制御されている状況または病気に影響をおよぼし得ることは明かである。また、ここに記載したものはビタミンD内分泌系に影響される病的および生理的状況の例であり、ビタミンD内分泌系に影響される他の病的および生理的状況を排除するものではない。ここに記載したデータから、Walters M(「ビタミンD内分泌系の新たに同定された作用」、Endocrine Reviews 13,719−764)により最近著されたような、更にはそこで述べられている論文中に掲載されているような、ビタミンD内分泌系に影響されることが知られているあらゆる病的および生理的状況を、ここに記載の方法により評価および調査可能なことは明かである。しかも、これらはビタミンD受容体の遺伝子型に影響されるため、個人の遺伝子型が、ビタミンD受容体およびビタミンD内分泌系を含むあらゆる病的および生理的状況に対する感受性、発展性、予防能力、および処置に重要であることもまた明かである。
【0076】
これらのデータでは、その生理的機構に係わりなく、骨密度の制御に関連する遺伝子が当初から同定されていた。重要なのは、その影響の大きさが、骨密度に対する強い遺伝的影響の主な要因として説明されることであって、実際のところ、骨密度にて補正された母集団の変動のうち半分以上がそれに依っている。これらの発見は、骨粗鬆症の危険性の増加に対するより早期の干渉を可能とし、かつ骨密度における母集団の広い分散の機構に対する重要な洞察を提供するとともに、特異的な対象物に対する新たな治療法への路を開くものである。また、この1個の遺伝子の多面発現活性は、これまで複雑かつ分断された遺伝子の制御によるとみなされていた、多くの病理形態学的過程のモデルの一つでもある。
【0077】
この研究では、自然に存在する作動因子および転写活性因子の対立遺伝子の機能付けについて、対象となる遺伝子の形成と相関させて述べた。また、この受容体対立遺伝子の差異が、対象となる器官(例えば骨密度)の主要な差異に関連することをデータとして示した。この方法による遺伝的分析は、リガンドで活性化された受容体の上科の遺伝子中における自然な対立遺伝子の変動の機能的重要性に対する研究の模範を示すものであり、ステロイドホルモン内分泌系のより完全な理解に重要な貢献をなし得るものである。更に、この方法は、あらゆる種類の作動的制御因子の対立遺伝子に適用可能である。
【0078】
制御タンパクおよび/または構造タンパクをエンコードする遺伝子の転写制御因子における遺伝子型の変動は、病気に対する感受性と、治療に対して起こり得る応答の測定とに影響する生理的設定値および病理形態学的状態を決定する。これらの遺伝子型の変動は、病気の予防および治療に際しての、病気の危険性の測定および治療法の選択のための一般的なモデルとして使用される。
【0079】
このモデルの特異的な例として、ビタミンD受容体遺伝子における対立遺伝子の変動による、骨の変化、骨質量、および環境的要因への感受性の決定がある。これらの変動は、骨粗鬆症の進行の危険性に対するマーカーであり、種々の治療に対して起こり得る応答を示唆するものである。
【0080】
本発明者らは、機能的に異なるビタミンD受容体の対立遺伝子を定義するRFLPマーカーを同定した。ここで述べたRFLPとは、遺伝的現象と連鎖した物理的マーカーであるが、今回定義されたマーカーとの連鎖の範囲に依存した、他のあらゆるRFLP、物理的マーカー、多型性配列、または、今回定義されたマーカーに連関し、ビタミンD受容体遺伝子または側方のDNA内で認められた遺伝的影響によっても、上記したマーカーと同様の情報が提供可能である。従って、本発明の方法は、今回定義されたマーカーと連鎖する、他の公知または未知のマーカーによっても説明される。
【0081】
当業者は、上記した各実施例で示すような本発明に対し、広範にわたり記載された本発明の意図または目的を逸脱しない範囲で、多くの変形および/または改良が可能であることを認めるであろう。すなわち、本発明の実施例は、記載されたあらゆる点で、本発明を制限するものではない。
【0082】
「参考文献」
【図面の簡単な説明】
【図1】ビタミンD受容体の変動による、双子の組における腰部のBMDの差異を示すものである。
【図2】エキソン7からエキソン9の3′末端の非コード領域までのビタミンD受容体遺伝子のマップで、研究に使用した多型性の制限酵素結合位置およびRFLPによる同定に使用するためPCR法で増幅した断片が示されている。また、アステリスクは多型性部位を示し、かつアステリスクのない部分は不変部位を示す。
【図3】骨密度がVDRの遺伝子型により異なることを示すもので、対象は女性である。データは、母集団の平均と標準誤差とで示され、また、p値は、各グループにて対をなす二者間における、ステューデントのt検定のためのものである。
【図4】腰椎における骨密度への遺伝的な影響が男性でも現れていることを示すものである。表示は図3と同様である。
【図5】遺伝子型に応じた、年齢と腰椎骨中における無機物密度(BMD)の退行および破壊限界との関連を示すものである。
【図6】遺伝子型に応じた、年齢と大腿骨頸中における無機物密度の退行および破壊限界との関連を示すものである。
【図7】接合子およびVDR対立遺伝子の一致性に関する、双子の間における骨密度の差異を示すものである。
【図8】VDRの不一致の程度に関する、二卵性双生児間での骨密度の差異を示すものである。
【図9A】骨中における無機物密度の高さと、VDR遺伝子との関連を示すものである。Bsm−1対立遺伝子が不一致な二卵性双生児(n=22)における、腰椎骨の無機物密度を遺伝子型に従ってプロットし、双子の組における骨の無機物密度の値を線で結んだ。
【図9B】骨中における無機物密度の高さと、VDR遺伝子との関連を示すものである。閉経前の無関係な女性の腰椎骨の無機物密度をVDR対立遺伝子に対応させたものである。
【図10】異なる遺伝子型を有する個人に対するカルシトリオール処方の結果を示すものである。
Claims (10)
- 個人から単離した細胞のビタミンD受容体遺伝子に関連する対立遺伝子の変異を分析することを含む、骨密度の高低および/または骨代謝の発達の高低に対する個人の傾向を分析する方法。
- 分析が、エンドヌクレアーゼによる消化を用いた制限酵素断片長多型を含む、請求項1記載の方法。
- ビタミンD受容体の一部分を、エンドヌクレアーゼによる消化の前に、ポリメラーゼチェーンリアクション法を用いて増幅する、請求項2記載の方法。
- エンドヌクレアーゼが、Bsm1、Apa1、EcoRV、Taq1、およびこれらのアイソシゾマーからなる群から選択される、請求項2または3に記載の方法。
- 制限エンドヌクレアーゼがBsm1である、請求項4記載の方法。
- ビタミンD受容体の一部分が、
5′−CAACCAAGACTACAAGTACCGCGTCAGTGA−3′および
5′−AACCAGCGGAAGAGGTCAAGGG−3′;または
5′−CAGAGCATGGACAGGGAGCAAG−3′および
5′−GCAACTCCTCATGGCTGAGGTCTCA−3′;
からなる群から選択される一対のプライマーを用いて増幅される、請求項3ないし5のいずれか一項に記載の方法。 - 分析されるビタミンD受容体遺伝子の一部分が、ビタミンD受容体の可変部、またはBsm1、Apa1、EcoRV、およびTaq1切断部位の少なくとも一つと関連した遺伝子領域を示す、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
- プライマー対が、
5′−CAACCAAGACTACAAGTACCGCGTCAGTGA−3′および
5′−AACCAGCGGAAGAGGTCAAGGG−3′;または
5′−CAGAGCATGGACAGGGAGCAAG−3′および
5′−GCAACTCCTCATGGCTGAGGTCTCA−3′;
である、請求項3ないし7のいずれか一項に記載のポリメラーゼチェーンリアクション法において使用するためのプライマー対。 - 骨密度の高低、骨代謝の発達の高低、および/または治療応答性に対する個人の傾向を評価するために、ポリメラーゼチェーンリアクション法においてVDR遺伝子の対立遺伝子の変異に関連する一部分を増幅するための、
5′−CAACCAAGACTACAAGTACCGCGTCAGTGA−3′および
5′−AACCAGCGGAAGAGGTCAAGGG−3′;または
5′−CAGAGCATGGACAGGGAGCAAG−3′および
5′−GCAACTCCTCATGGCTGAGGTCTCA−3′;
から選択されるプライマー対。 - 個人の細胞を、調節および/または構造タンパクをコードする遺伝子の転写調節因子の遺伝子型変異について分析することを含む、病態生理学的状態および/または治療応答性に対する個人の傾向を評価する方法。
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