JP2004000213A - 酵素活性の検出方法及びそれを用いたスクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬等の分野で有用な酵素活性の測定方法及びそれを用いた該酵素の阻害活性を有する候補化合物のスクリーニング方法に関し、より詳しくは、ランタノイド錯体の配位子交換に伴う発光強度の変化を測定することにより酵素活性の有無の測定を行う方法、及びこの方法を候補化合物の存在下で行い、発光強度の変化により候補化合物が酵素活性を阻害するか否かを評価する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ランタノイドイオンは、β−ジケトン、クラウンエーテル、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等と6〜8配位座が占有された錯体を形成する。特に、ランタノイドイオンとクラウンエーテル又はジエチレントリアミンペンタ酢酸とは、1:1の等モルにより、8配位座が占有された錯体(以下、「8配座錯体」という。又、1:1の等モルにより7配位座が占有された錯体を、「7配座錯体」という。)を形成する。これらのランタノイド錯体は、化学的に安定構造を有し、発光特性を有することが知られており、各種発光材料としての開発が行われている。又、最近ではこの発光特性を応用して、これらの錯体を酵素活性測定手段に用いる技術も検討されている。
【0003】
近年、コンビナトリアルケミストリーの手法で数多くの化合物が短期間で合成できる環境が整い、それにともなって合成した数多くの化合物を素早くバイオアッセイする方法(例えばハイ スループット スクリーニング)も種々検討されている。従来は、高感度に検出する手法としてラジオイムノアッセイ(以下、「RI」という。)法が用いられてきた。しかしながら、RI法は、操作性の問題、副生するラジオアイソトープ廃液の処理の問題等を有し、更にはその価格等の点で問題を有していた。そこで、ランタノイド錯体の発光を用いた時間分解蛍光測定法が注目されてきている。
【0004】
ランタノイド錯体を用いた酵素活性の測定方法は、種々のものが開示されている。例えば、特開平2−504109号は、ランタノイド錯体を用いた酵素活性の評価方法が開示されている。ここでの酵素活性の評価方法は、酵素反応により生じた生成物が配位子となって共存するランタノイドイオンとともに溶液中でランタノイド錯体を形成し、その結果生じる発光を測定するものである(特許文献1)。
【0005】
又、特表平10−505820号には、キノロンを増感剤として用いたランタノイド錯体、これを用いた検出ラベル、及びこの検出ラベルを適用した同一分子上の2つの距離を測定する方法が開示されている(特許文献2)。しかしながら特表平10−505820号の方法についても溶液中で初めてランタノイド錯体を形成するものであり、又、この方法は検出ラベルとしてのランタノイド錯体についてのものであり、本発明のような酵素活性の測定を目的とするものではない。
【0006】
更に、国際公開公報WO91/8490号では、本発明に係るランタノイド錯体と類似の錯体を酵素活性の測定に使用している。しかしながら、WO91/8490号に記載の錯体は、酵素の特的基質の活性部位とランタノイド錯体とがスペーサーを介せずに直接結合しており、酵素反応することにより新たに錯体が形成され発光が起きるものであり、本発明の配位子交換をメカニズムとする発光とは基本的に異なるものである(特許文献3)。
【0007】
又、ランタノイド錯体を用いたTRACE法(time resolved amplified cryptate emmision)では、検出にEu−クリプテートとアロフィコシアニン(allophycocyanin)の2種類の発光物質により標識された化合物を用いる。標識体として生成物に対する特異的抗体や受容体、アビジン等のタンパク質が選択される。この方法では、特異的抗体や受容体等のタンパク質をEu−クリプテートにより高分子を標識する際に、時間、手間、コスト等がかかる上、これらのタンパク質はロットの違いにより活性が異なることがあり、再現性の面で問題を生じることもある。(例えば非特許文献1)
【0008】
【特許文献1】
特開平2−504109号
【特許文献2】
特表平10−505820号
【特許文献3】
国際公開第91/8490号パンフレット
【非特許文献1】
J. Biomolecular Screening、3巻、91頁、1998年
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、抗体やRIを用いることなく、簡易に、より安定した酵素活性検出方法を提供するとともに、従来公知のバイオアッセイ方法に比べて少ないサンプル量で、より高感度でバイオアッセイできる方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
ランタノイド錯体に励起光を照射すると、ランタノイド錯体中の芳香族炭化水素又は複素環からなる光増感部位が励起され、励起エネルギーがランタノイドイオンに移動し、ランタノイドイオンが発光する。この際、ランタノイドイオンに水分子が配位していると、ランタノイドイオンの励起エネルギーは水分子のO−H伸縮振動を介して消失し、発光強度が低下するか又は発光しないことが知られている(Acc.Chem.Res.、14巻、384頁、1981年)。
【0011】
一方、従来公知の発光性のランタノイド錯体であって、ランタノイドと配位子とが1:1(モル)の錯体を形成するものは、いずれも該錯体の8つ以上の配位座が占有された状態である。このことは、「ランタノイドと配位子とが1:1(モル)の錯体を形成した場合、ランタノイドイオンが発光するのは、該錯体の8つ以上の配位座が水分子以外のエネルギーが消失しない配位子で占有された錯体である必要がある」ことを示唆している。
【0012】
そこで発明者らは、ランタノイドイオンに配位子及び水分子が配位して8つ以上の配位座が占有されている錯体において、配位している水分子を水分子以外の他の配位原子と交換して配位させ、ランタノイドイオンに配位している水分子を除去できれば、このランタノイド錯体中のランタノイドイオンが発光するのではないかと考えた。よって、錯体が酵素反応の前後でランタノイドイオンへの配位能が変化する基を有する場合、酵素反応前に錯体が7配座が占有された状態であっても、或いは7配座が占有された錯体に更に水が配位して8配座となっている状態であっても、酵素反応で生じた配位子が、水と比べてランタノイドイオンへの配位力が強く、配位している水分子に代わってランタノイドイオンに配位して8配位座を形成できるようになれば、新たに得られた8配座の錯体が発光することが想定される。
【0013】
発明者らは、この想定をもとに種々研究を行い、構造中に酵素の特異的基質を有し、そして水分子が配位した特定構造のランタノイド錯体に対して酵素反応を施すことにより、該ランタノイド錯体の分子内で配位子交換が起こり、ランタノイドイオンの発光強度が増加することを見いだした。引き続く研究でこの技術は前記酵素の活性を阻害する化合物のスクリーニングにも適用できることを見いだし、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、時間分解蛍光測定法による酵素活性の検出方法であって、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成するランタノイド錯体(A1)であって、
該錯体を構成する配位子(B1)は、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものであり、
又、ランタノイド錯体(A1)は、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しておらず、
f)酵素反応により変換された基(r2)が生じると、変換された基(r2)がランタノイドイオンへ配位してランタノイド錯体(A3)となり、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、ランタノイド錯体(A1)を用い、
2)ランタノイド錯体(A1)は、更に水分子がランタノイドイオンに配位して、ランタノイド錯体(A1b)となっていてもよい状態で、
3)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、ランタノイド錯体(A1又はA1b)に対象となる酵素を反応させ、
4)基質となり得る基(r1)は、酵素により変換されると、変換された基(r2)を有するランタノイド錯体(A2又はA2b)を生じ、
5)変換された基(r2)は、ランタノイド錯体(A2)の分子内でランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A3)となるか、又はランタノイド錯体(A2b)に水分子と交換して配位子置換してランタノイド錯体(A3)となり、
6)励起光の照射によりランタノイド錯体(A3)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定する、各工程を包含する酵素活性の検出方法、に関する。
【0015】
又、本発明は、上記検出方法を用いた、酵素に阻害活性を有する候補化合物のスクリーニング方法に関する。
【0016】
更に本発明は、一般式(I−1)
【化10】
[式中、Wは、下記の群
【化11】
(式中、Kはリジンを、Aはアラニンを、Pはプロリンを、Lはロイシンを、Sはセリンを表し、Rは、低級アルキル基を表す。)から選択される置換基を表し、Arは、芳香族炭素環基又は芳香族複素環基を表す。]で表される化合物を提供する。
【0017】
更に、本発明は、一般式(1−1)で表される化合物とランタノイドイオンとからなるランタノイド錯体を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる時間分解蛍光測定法(time−resolved fluorometry)とは、以下の方法である。
【0019】
Eu、Nd等を代表とするランタノイド(Lanthanides)原子は、特定の条件下で発光を発し、例えば現在よく用いられているEu錯体は励起光340nmを受けて615nmの発光を発する。励起光と発光との波長の差(ストークスシフト)が大きく、発光が長波長であることから、この発光は励起光の影響を受けにくく、また発光寿命が非常に長いため発光測定を励起光の照射後一定の時間が経ってから行うことが可能であり、この際共存物質の発光が消滅するという利点を有す。この方法を時間分解蛍光測定法という。
【0020】
本発明において、「酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件」とは、対象とする酵素がその特異的基質と反応できる条件、即ち、pH、温度、イオン強度を、該酵素が反応できるように調整し、又、活性発現に必要な補酵素を適切な量含み、該酵素に特異的に反応する基質を適切な濃度に設定した条件のことであり、個々の酵素の種類によって異なる。
【0021】
本発明において、「酵素反応の進行を抑制する条件」とは、対象とする酵素がその特異的基質と反応できない条件であれば特に限定されないが、例えば、「酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件」に、酵素反応を止めるストップバッファーを添加することにより生じさせることができる。ストップバッファーとしては、例えば、酵素を失活させ、且つ、発光特性に影響を及ぼさない化合物溶液、例えば、界面活性剤溶液を用いることが可能であり、具体的には、0.01〜0.1重量%のトリトン溶液、0.01〜0.1重量%のトゥイーン溶液等が例示される。
【0022】
本発明が対象とする酵素としては、例えばリン酸化酵素(OH基からリン酸エステルへ変換)、リン酸エステル分解酵素(リン酸エステルを分解してOH基に変換)、硫酸エステル化酵素(OH基から硫酸エステルへ変換)、硫酸エステル分解酵素(硫酸エステルを分解してOH基に変換)、カルボキシエステル化酵素(カルボン酸からカルボン酸エステル、又はOH基からカルボン酸エステルに変換)、エステル分解酵素(カルボン酸エステルからカルボン酸に変換)、アミド化酵素(カルボキシル基からアミド基、アミノ基からアミド基に変換)、アミド基分解酵素(アミド基からカルボキシル基又はアミノ基に変換)、アミノ化酵素(アミノ基の生成)、酸化酵素(OH基の消失)、カルボキシル化酵素(カルボン酸の生成)、脱炭酸酵素(カルボン酸の消失)、還元酵素(OH基、SH基の生成)等が挙げられる。
【0023】
なかでも酵素反応の前後で発光強度の変化が大きいものである、リン酸化酵素、リン酸エステル分解酵素、硫酸エステル化酵素、硫酸エステル分解酵素、カルボキシル化酵素(カルボン酸の生成)、アミド化酵素、アミド加水分解酵素、脱炭酸酵素(カルボン酸の消失)等が好ましく、より好ましくはリン酸化酵素、リン酸エステル分解酵素、硫酸エステル化酵素、硫酸エステル分解酵素、アミド加水分解酵素(カルボン酸の生成)、脱炭酸酵素(カルボン酸の消失)等が推奨される。
【0024】
本発明において「候補化合物」とは、酵素の阻害薬又は作動薬となり得る候補化合物のことであるが、ここでは特に特定の医薬品を開発する場合の化合物ライブラリーのなかから阻害活性を有する化合物をスクリーニング(一次スクリーニング)する際の、対象とする化合物ライブラリーに含まれる化合物群のことであり、本発明のスクリーニング方法は、この一次スクリーニングに用いることが可能である。この候補化合物は、更にインビボ(in vivo)で阻害するか否かを確認する試験(二次スクリーニング)を行うことができる。
【0025】
本発明においてランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成することが可能な配位子とは、配位子の分子内に7又は8個のランタノイドイオンに配位可能な置換基を有し、これらの7又は8個の配位可能な置換基が1つのランタノイドイオンに配位することにより7又は8の配位座が占有された錯体を形成する配位子をいう。又、ランタノイドイオンに配位可能な置換基とは、カルボキシル基(COOH)、カルボキシエステル(COOR:Rは、低級アルキル基を表す。)、アミノ基(一級、二級、三級)、水酸基、カルボニル基、アミド基由来のCO基、SH基、チオカルボニル基等が例示される。
【0026】
本発明において、「光増感部位」とは、励起三重項状態のエネルギー準位がランタノイドイオンの共鳴準位より高い性質を有するものであれば特に限定されない。即ち、励起光を照射された配位子のうち適当な電子軌道(π)を有する光増感部位がエネルギーを吸収し、一重項基底状態から第一の励起一重項状態における振動レベルにまで励起される。次いで、光増感部位内において項間交差による励起一重項状態から三重項状態にエネルギー遷移が行われる。この励起三重項状態のエネルギーが、同一分子内に存在するランタノイドイオンに遷移されランタノイドイオンが励起される。従って、光増感部位としては、この条件を満たす芳香族炭素環基又は芳香族複素環基等の置換基であれば差し支えなく、具体的には芳香族炭素環基としてフェニル基、ナフチル基が例示され、芳香族複素環基としてピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、クマリニル基等が例示される。
【0027】
本発明において、「低級アルキル基」としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基等が例示される。
【0028】
本発明において「酵素の特異的基質となり得る基(r1)」、及び酵素により「変換された基(r2)」としては、いずれも本発明が対象とする酵素に親和性を有するものであり、「酵素の特異的基質となり得る基(r1)」が該酵素により変換されて「変換された基(r2)」となり、そのようなものとしては、(r1/r2)の順に、
・−OH/−O−P(=O)−(OH)2、
・−OH/−O−S(=O)2−OH、
・−COOR/COOH、
・−CONHR/−COOH、
・−C(=O)−R’/−C(OH)−R’、
・−CH3/−CH2−OH、
・−CH3/−COOH、等が例示される。ここで、R及びR’は、低級アルキル基を表す。以下において特に記さない限り同様である。
【0029】
又、「酵素の特異的基質となり得る基(r3)」、及び酵素により「変換された基(r4)」としては、いずれも本発明が対象とする酵素に親和性を有するものであり、「酵素の特異的基質となり得る基(r3)」が該酵素により変換されて「変換された基(r4)」となり、そのようなものとしては、(r3/r4)の順に
・−O−P(=O)−(OH)2/−OH、
・−O−S(=O)2−OH/−OH、
・−COOH/−COOR、
・−COOH/−CONHR、
・−OH/−OCOR、等が例示される。
【0030】
本発明において「スペーサー」としては、配位子と酵素の特異的基質となり得る基とを結合する役割を有し、ランタノイドイオンへの配位能のないものであれば差し支えなく、例えば直鎖状アルキレン基、直鎖状オキシアルキレン基、フェニル環、ナフチル環等の芳香環、又はシクロペンチル環、シクロヘキシル環等の脂環族環を有するアルキレン基等が例示される。
【0031】
ランタノイド錯体(A1)及び配位子(B1)
本発明で用いられるランタノイド錯体(A1)としては、ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成するランタノイド錯体であって、該錯体を構成する配位子(B1)は、分子内に
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものである。
【0032】
又、ランタノイド錯体(A1)は、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前は好ましくはランタノイドイオンに配位しておらず、
f)酵素反応により変換された基(r2)が生じると、変換された基(r2)がランタノイドイオンへ配位してランタノイド錯体(A3)となり、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、ランタノイド錯体(A1)であれば特に限定されない。
【0033】
このランタノイド錯体(A1)は、前記酵素を用いて酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で該酵素を用いた酵素反応を行うことにより、ランタノイド錯体(A2)へと変換される。この際に、特異的基質となり得る基(r1)は、酵素により変換されて変換された基(r2)となる。
【0034】
本発明で用いられるランタノイド錯体(A1)は、特異的基質となり得る基(r1)がランタノイドイオンに配位していない7配座以下の、より好ましくは7配座のランタノイド錯体であり、例えば配位子(B1)とランタノイドイオンとを、好ましくは溶媒中で混合することにより得ることができる。
【0035】
又、配位子(B1)は、ランタノイドイオンに配位可能な置換基として、カルボキシル基を2個以上7個以下含むことが推奨される。
【0036】
配位子(B1)においてランタノイドイオンに配位可能な置換基としてカルボキシル基等の酸性官能基を選ぶことにより、ランタノイドイオンと配位子との配位力がより高くなるため、酵素活性の検出感度を顕著に上昇させると考えられる。
【0037】
より具体的な配位子(B1)としては、例えば一般式[I]から[V]で表される化合物からなる群から選択されるものが例示される。
【化12】
[式中、Arは、芳香族炭素環基又は芳香族複素環基を表し、
X1は、水素原子又はArを表し、
Lは、−CONH−又は−NHCO−を表し、
Dは、スペーサーを表し、
Eは、酵素の特異的基質となり得る基を含む基を表し、
R1及びR2は、水素原子を表すか、又はR1、R2及びY1がいっしょになってそれらが結合する炭素原子とともにベンゼン環を形成し、
R3、R4、R5、R6及びR7は、各々同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。但し、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つ以上が同時に炭素数1〜6のアルキル基となることはなく、且つR3、R4、R5、R6及びR7が同時に水素原子となることもない。
Y1は、式(J−1)、(J−2)及び(J−3)
【化13】
からなる群から選択される基を表すか、又はY1、R1及びR2がいっしょになってそれらが結合する炭素原子とともにベンゼン環を形成する。
Z1、Z2、Z3及びZ4は、同一又は異なって、−OH又は−NHArを表す。但し、Z1からZ4のうち、2つ以上が同時に−NHArとなることはなく、且つZ1、Z2、Z3及びZ4が同時に−OHとなることもない。
Gは、式(K−1)、(K−2)及び(K−3)
【化14】
からなる群から選択される基を表す。]
【0038】
式中、Dはスペーサーを表し、例えば、
1)−(CH2)m−、[m=2〜10]、
2)−(CH2−CH2−O−)m−、[m=2〜10]、
3)−(CH(CH3)−CH2−O)m−、[m=2〜10]、
4)−(CH2)m−Ph−、[m=1〜10]、
5)−(CH2)m−cyclohexyl−、[m=1〜10]等が例示され、なかでも、
・−(CH2)m−、[m=2〜10]、
・−(CH2)m−Ph−、[m=1〜10]等が好ましく、特に
・−(CH2)m−、[m=1〜6]、又は
・−(CH2)m−Ph−、[m=1〜6]が推奨される。
【0039】
本発明の方法におけるスペーサーの存在は非常に重要である。スペーサーを介せず配位子に酵素の特異的基質となり得る基が直接結合している場合、特異的基質となり得る基が酵素の活性部位に接近しににく、更には酵素反応後の特異的基質となり得る基が分子内でランタノイドイオンに配位しにくく、分子内で配位子交換を起こすことが困難となる。
【0040】
尚、本発明に係る配位子は、分子間の配位子交換により複数の配位子により8つ以上の配位座が占有されたランタノイド錯体を形成しても発光するが、測定に必要な発光強度を得るためには配位子の濃度を高く設定する必要がある。結果的に分子間での配位子交換では、酵素の検出感度が大幅に低下してしまう。
【0041】
一般式(I)から(V)においてArは光増感部として作用し、具体的なArとしては、芳香族炭素環基又は芳香族複素環基が例示され、例えば芳香族炭素環基としては、フェニル基、ナフチル基等が例示され、芳香族複素環基としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、クマリニル基等が例示され、これらの置換基は、低級アルキル基、低級アルキルカルボニル基、オキソ基、アミノ基、低級アルキルオキシ基、低級アルキルオキシカルボニル基、低級アルキルアミノ基、オキソ基等の置換基を有していてもよい。
【0042】
Eとしては、酵素の特異的基質となり得る基(r1)を含む基を表し、例えば1又は2以上のアミノ酸残基、若しくは1又は2以上の糖残基等が例示され、又、特異的基質となり得る基(r1)としては、例えば、
1)−OH、
2)−COOR、
3)−CONHR’、
4)−CH3、等が例示される。
【0043】
具体的なEとしては、
1)OH含有基として
・セリンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・スレオニンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・チロシンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・アミノ糖含有ペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)
(これらのペプチド中、OH含有アミノ酸の配列位置は限定されない)、
・単糖(グルコース、フルクトース、リボース、デオキシリボース、)を含有する基、
・N末端側から−KAPLSPKKAK、
・N末端側から−KAPLS、等が例示される。
ここでアミノ酸の略号は、K:リジン、A:アラニン、P:プロリン、L:ロイシン、S:セリン、を表す。
【0044】
2)カルボキシルエステル基含有基として、
・アスパラギン酸エステルを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・グルタミン酸エステルを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・γ−アミノ酪酸エステルを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・γ−アミノ酪酸エステルを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、等が例示される。尚、エステル基を構成するアルコール成分としては、特に限定されず、例えば炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基等が例示される。
【0045】
3)アミド基含有基としては、
・アスパラギンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・グルタミンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・アスパラギン酸アミド含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・グルタミン酸アミドを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・ε−アミド性のリジンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・アルギニンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、等が例示される。
【0046】
4)メチル基含有基として
・アラニン含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、等が例示される。
5)その他の基
・メチオニンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・システインを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)等が例示される。
【0047】
一般式[I]から[V]で表される化合物において、より具体的には以下の構造のものが例示される。これらの化合物は、従来公知のものを誘導体化することりより調製可能であり、例えば、後述する製造例又は製造例と公知技術とを組み合わせた方法等により製造できる。
【0048】
a)一般式[I]で表される化合物
一般式[I]で表される化合物としてより具体的には、一般式(I−1)で表される化合物が例示される。
【0049】
【化15】
アミノ酸の略号は、K:リジン、A:アラニン、P:プロリン、L:ロイシン、S:セリン、を表す。又、Rは、低級アルキル基を表し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が推奨される。
【0050】
一般式(I−1)で表される化合物において、Arとして好ましくはチエニル基、キノリニル基、クマリニル基、1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル等が推奨される。
【0051】
一般式(I)で表される化合物は、例えばJ.Am.Chem.Soc.、117巻、8132〜8138頁(1995年)を参考に容易に製造可能であるが、具体的な製造方法を製造法1に示す。
製造法1
【化16】
[式中、Raは、ベンジル基、メトキシベンジル基等の置換基を有していてもよい低級アルキル基を表し、Xは、ハロゲン原子等の脱離基を表し、Epは、酵素の特異的基質となり得る基を含む基であって、必要に応じて酵素の特異的基質となり得る基が保護基により保護されたものを表し、Ar、D及びEは、前記に同じである。]
【0052】
(工程1−a)
本工程は、化合物1と化合物2とを反応させて、化合物3を製造する方法である。化合物2としては、2−ハロゲン化酢酸アルキルエステルが例示され、該アルキル基としては、芳香環を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、1,1−ジメチルエチル基、ベンジル基、置換ベンジル基等が挙げられ、特に1,1−ジメチルエチルが推奨される。Xは、ハロゲンを表し、好ましくはブロム原子が推奨される。用いる化合物2の量としては、1当量の化合物1に対し通常1.8〜2.0当量が例示される。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(以下、「THF」という。)、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という。)、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」という。)等、又はそれらの混合溶媒が例示され、なかでもジクロロメタンが推奨される。かくして得られる化合物3は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、結晶化、溶媒抽出、再沈殿、クロマトグラフィー等により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0053】
(工程1−b)
本工程は、塩基の存在下、化合物3と化合物4とを反応させ、化合物5を製造する方法である。用いる化合物3の量としては、1当量の化合物4に対し1.0〜2.0当量が例示される。又、塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が例示され、なかでも炭酸カリウムが推奨され、その使用量としては1当量の化合物4に対し1.0〜1.5当量が例示される。反応溶媒としては、THF、ジクロロメタン、DMF、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、DMSO等、又はそれらの混合溶媒が例示され、特にDMFが推奨される。かくして得られる化合物5は、公知の分離精製手段、例えば濃縮、減圧濃縮、結晶化、溶媒抽出、再沈殿、クロマトグラフィー等により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0054】
尚、化合物4は、製造法Aにより調製することができる。
製造法A
【化17】
[式中、X’は、脱離基を表す。Xは、ハロゲンを表す。]
【0055】
この方法は、塩基の存在下、芳香族アミン(Ar−NH2)と2位に脱離基(X’)を持つアセチルハライドとを反応させて化合物4を製造する方法である。ここで、X’は、ハロゲン原子等の脱離基を表す。アセチルハライドの使用量としては、芳香族アミン1当量に対して通常1〜2当量が例示される。塩基としては、例えばn−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド等が例示され、なかでもn−ブチルリチウムが推奨される。塩基の使用量としては、1当量の芳香族アミンに対し1〜3当量が例示される。反応溶媒としては、例えばTHF、DMF、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、DMSO等、又はそれらの混合溶媒が例示され、特にTHFが推奨される。
【0056】
(工程1−c)
本工程は、塩基の存在下、上記工程1−bで得られた化合物5と下記の化合物6とを反応させたのち、脱保護を行って一般式[I]で表される化合物を製造する方法である。化合物6においてX’’は脱離基を示し、例えば水酸基、ハロゲン原子等が例示される。具体的な塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が例示され、特に炭酸カリウムが推奨される。又、塩基の使用量としては、特に限定されず、例えば1当量の化合物5に対して2〜10当量が例示され、化合物6の使用量としては、1当量の化合物5に対し1.5〜5当量が例示される。又、反応溶媒としては、THF、DMF、DMSO、ジメトキシエタン等が例示される。反応時間は、通常1〜24時間が例示され、又、反応温度は、室温から120℃が例示される。
【0057】
一方、脱保護は、2,2,2−トリフルオロ酢酸、塩酸等の強酸を用いて行うことが可能であり、なかでも2,2,2−トリフルオロ酢酸が推奨される。脱保護における反応時間は、通常1〜24時間が例示され、又、反応温度は、室温から80℃が例示される。得られた一般式[I]で表される化合物は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、結晶化、溶媒抽出、再沈殿、クロマトグラフィー等により単離精製してもよい。
【0058】
尚、化合物6は、製造法Bにより調製することができる。
製造法B
【化18】
[式中、X’’、D及びEpは、前記に同じである。]
本工程は、カルボン酸(X−D−COOH)と、アミン(NH2−Ep)との反応であり、文献記載の方法(例えば、ペプチド合成の基礎と実験、泉屋信夫他、丸善社出版、1983年、Comprehensive Organic Synthesis、Vol.6、Pergamon Press社出版、1991年)、それに準じた方法又はこれらと従来公知の方法とを組み合わせることにより行うことができる。
【0059】
即ち、アミド化は、当業者に周知の縮合剤を用いて行うか、或いは当業者に利用可能なエステル活性化方法、混合酸無水物法、酸クロリド法、カルボジイミド法等により行うことができる。このようなアミド形成試薬としては、例えば、o−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(以下、「HATU」という。)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、「DCC」という。)、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリルエチル)カルボジイミド、カルボニルジイミダゾール(以下、「CDI」という。)、ジフェニルリン酸アジド、塩化2−クロロ−1,3−ジメチル−2−イミダゾリウム、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(以下、「PyBop」という。)、ブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(以下、「PyBrop」という。)、シアノリン酸ジエチル、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(以下「WSC・HCl」ということがある。)等が挙げられる。前記カルボン酸又はその反応性誘導体の使用量としては、使用する化合物又は溶媒の種類、その他の反応条件により異なるが、アミン1当量に対して0.5〜1当量が例示され、好ましくは0.5〜0.8当量が推奨される。また、アミド形成試薬の使用量としては、使用する化合物及び溶媒の種類、その他の反応条件により異なるが、カルボン酸又はその反応性誘導体1当量に対して1〜5当量が例示され、好ましくは1〜3当量が推奨される。ここで反応性誘導体としては、有機化学の分野において通常用いられる活性エステル誘導体、活性アミド誘導体等が挙げられる。反応溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、THF、ジエチルエーテル、DMF、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、トルエン等が挙げられる。反応時間としては、1〜12時間が例示される。かくして得られる化合物6は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、結晶化、溶媒抽出、再沈殿、クロマトグラフィー等により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0060】
一方、一般式[I]で表される化合物は、固相反応を用いることによる製造法2によっても製造することができる。
【0061】
製造法2
【化19】
[式中、R”は、芳香環を有していてもよい低級アルキル基を表し、SRは固相担体を表し、Ar、D、Ra、X及びEpは、前記に同じである。]
【0062】
(工程2−a)
本工程は、塩基の存在下、化合物5と末端に脱離基を持つ脂肪族又は芳香族カルボン酸エステルである化合物7を反応させ、続いてエステルを加水分解することによって化合物8を製造する方法である。用いられる塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が例示され、なかでも炭酸ナトリウムが推奨される。化合物7の使用量としては、1当量の化合物5に対して、通常1.5〜50当量が例示される。反応溶媒としては、DMF、THF、トルエン、ベンゼン等、又はこれらの混合溶媒が例示される。反応時間は、通常1〜24時間が例示され、又、反応温度は、通常、室温から120℃が例示される。
【0063】
又、エステルの加水分解は、塩基を用いて行うことが可能であり、塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水溶液が例示され、なかでも水酸化ナトリウム水溶液が推奨される。反応溶媒としては、THF、メタノール、エタノール等、又はこれらの混合溶媒が例示され、又、反応時間としては、1〜24時間が例示される。
【0064】
(工程2−b)
本工程は、化合物8と、酵素の特異的基質の反応部位を含む基Eが担持された固相担体9とを反応させて、化合物10を製造する方法である。
【0065】
具体的には、本反応は、前記のアミド形成反応により行われ、なかでもカルボジイミド法における塩化2−クロロ−1,3−ジメチル−2−イミダゾリウムが推奨される。
【0066】
化合物8の使用量としては、用いられる化合物又は溶媒の種類、その他の反応条件により異なるが、1当量の固相担体9に対して、通常1.5〜5当量が例示され、好ましくは2〜5当量が推奨される。又、アミド形成試薬の使用量としては、用いられる化合物又は溶媒の種類、その他の反応条件により異なるが、1当量の固相担体9に対して、1.1〜5当量が例示され、好ましくは2〜5当量が推奨される。
【0067】
反応溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、THF、ジエチルエーテル、DMF、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、トルエン等が例示され、反応時間としては、通常1〜20時間が例示される。得られた固相担体9は、例えば、DMF、メタノール、エタノール、THF、塩化メチレン、クロロホルム等、又はこれらの混合溶媒で洗浄することにより過剰な試薬等を除去することができる。
【0068】
尚、固相担体としては、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂等が例示される。
【0069】
(工程2−c)
本工程は、化合物10を酸で処理して、生成物を固相担体から遊離させると同時に、Ep中に含まれる保護基を脱保護をさせることによって、一般式[I]で表される化合物を製造する方法である。
【0070】
酸で処理する方法としては、例えば化合物10を有機酸含有不活性溶媒中で攪拌することによって行う。当該有機酸としては、例えばトリフルオロ酢酸(以下、「TFA」という。)等が例示され、また、当該不活性溶媒としては、水、塩化メチレン等が例示される。不活性溶媒中の有機酸の容積比率としては、通常5〜100%が例示され、好ましくは90〜95%が推奨される。更に、脱保護を完結させるために、40〜70℃にて0.5〜2時間、好ましくは1〜2時間撹拌してもよい。
【0071】
b)一般式[II]で表される化合物
一般式[II]で表される化合物は、例えば下記のものが例示され、米国特許第5859215号を参考に容易に製造可能である。
【化20】
[式中、Ar、B、D及びEは、前記に同じである。]
【0072】
c)一般式[III]で表される化合物
一般式[III]で表される化合物は、例えば以下のものが例示され、特表昭64−500458号、特表平10−505820号を参考に製造可能である。
【化21】
[式中、Ar、B、D及びEは、前記に同じである。]
【0073】
d)一般式[IV]で表される化合物
一般式[IV]で表される化合物は、例えば特表昭64−500458号、WO91/8490号、WO87/07955号、ACCOUNT of CHEMICAL RESEACH、17巻、202頁(1984年)等を参考に容易に製造可能である。具体的な化合物としては、例えば以下のものが例示される。
【化22】
[式中、Ar、B、D及びEは、前記に同じである。]
【0074】
f)一般式[V]で表される化合物
一般式[V]で表される化合物としては、例えば以下のものが例示される。
【化23】
[式中、R3、R4、R5、R6、R7、Ar、B、D及びEは、前記に同じである。]
【0075】
ランタノイド錯体(A1)の製造方法
本発明で用いるランタノイド錯体(A1)は、分子内に7つ以下の配位可能な置換基を有する化合物、例えば一般式[I]から[V]で表される化合物とランタノイドイオンとを混合して調製することができる。このランタノイドイオンは、ランタノイド金属酸化物、ランタノイド金属水酸化物、ランタノイド金属アルコキシド、ランタノイド金属アミド及びランタノイド金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のランタノイド金属化合物由来のものであり、例えば一般式[I]から[V]で表される化合物とランタノイド金属化合物とを溶媒中で混合することにより目的とする錯体が得られる。
【0076】
本発明で用いるランタノイド錯体(A1)の具体的な製造方法は以下の通りである。即ち、一般式[I]から[V]で表される化合物を溶媒に溶かし、ランタノイド金属化合物の水溶液(溶解する程度の水)又は粉末を加え、0〜100℃の温度下、1時間〜100時間程度撹拌する。次いで得られた生成物を晶析、液−液抽出、又はHPLC等の精製手段を行うことによりランタノイド錯体を得ることができる。更に、クロロホルム、メタノール等の溶媒を用いて再結晶を行っても差し支えない。
【0077】
本発明に用いるランタノイド金属化合物としては、ランタノイド金属酸化物、ランタノイド金属塩等が例示される。ランタノイド金属酸化物としては、3価であるM2O3(Mはランタノイド原子を示す。)が例示される。ランタノイド金属水酸化物としてはM(OH)3が例示され;ランタノイド金属塩としてはMn+(Z)n(Zは、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン等のモノカルボン酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン等のジカルボン酸イオン、クエン酸等のトリカルボン酸イオン、リン酸イオン等の陰イオンが例示される。
【0078】
本発明に用いるランタノイドイオンとしては、Eu3+、Tm3+、Er3+、Nd3+、Tm3+、Yb3+、Ce3+、Sm3+等が例示され、好ましくはEu3+、Tb3+、Sm3+、Dy3+等が推奨される。特に、これらのランタノイドイオンは、長寿命の発光が得られる点で優れている。
【0079】
ランタノイド錯体を調製するに際し用いられるランタノイド金属化合物の量としては、一般式[I]から[V]で表される化合物1当量に対し1.05〜10当量が例示され、好ましくは1.05〜2当量が推奨される。
【0080】
本発明のランタノイド錯体を製造するに際し用いる溶媒としては、特に限定されず、いずれの溶媒でも用いることが可能であり、具体的にはプロトン性溶媒、非プロトン性溶媒が挙げられる。プロトン性溶媒としては、水(例えば0.1Mトリメチルアンモニウムアセテート溶液)、メタノール、エタノール等のアルコール性溶媒等が例示され、又、非プロトン性溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系溶媒、DMSO、DMF等の1種若しくは2種以上が例示される。これらの溶媒の中でもアセトン、0.1Mトリメチルアンモニウムアセテート水溶液等が推奨される。
【0081】
具体的なランタノイド錯体(A1)としては、例えば一般式(I−1)
【化24】
[式中、W及びArは、前記に同じである。]で表される化合物と、ランタノイドイオンとからなる錯体が例示される。
【0082】
ランタノイドイオンとして好ましくは、Eu3+、Tb3+、Sm3+、Dy3+等が推奨され、特にEu3+が挙げられる。
【0083】
上記のランタノイド錯体(A1)は、通常、7配座以下の状態であるが、水分子が1分子配位して8配座の状態のランタノイド錯体(A1b)として、又は該錯体の水和物(A1b)として単離されることがある。一方、錯体の形態によっては水分子が配位していない形で単離される場合もあるが、水溶液中では水が配位して8〜9の配位座が占有されたランタノイド錯体(A1b)を形成する。7配座のランタノイド錯体[以下、一般式(I−2)で表す]とランタノイド錯体(A1b)との関係を次式に示す。
【0084】
【化25】
[式中、W及びArは、前記に同じである。]
【0085】
水が配位したランタノイド錯体(A1b)に励起光を照射すると、(例えばEu錯体であれば340nmの光を照射すると)、ランタノイドイオンは励起されるが、励起エネルギーが、配位している水分子のO−H振動により熱エネルギーとして消失してしまう。従って、励起エネルギーを発光エネルギーとすることができず、発光強度がほとんどないか、非常に弱いものである。
【0086】
尚、単離したランタノイド錯体が水を含有するかどうかについては、例えば示差熱分析(DSC)、発光寿命等により測定することが可能である。
【0087】
ランタノイド錯体(A1)からランタノイド錯体(A3)への酵素反応
酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、7配座のランタノイド錯体(A1)又は更に水分子が配位したランタノイド錯体(A1b)を、本発明が対象とする酵素により酵素反応させると、ランタノイド錯体中の酵素の基質となり得る基(r1)が酵素により変換されて、変換された基(r2)を有するランタノイド錯体(A2)又はその水和物(A2b)が得られる。
【0088】
ランタノイド錯体(A3)において、変換された基(r2)としては、例えば、
・−O−P(=O)−(OH)2、
・−O−S(=O)2−OH、
・−COOH、
・−C(OH)−R’、
・−CH2−OH等が例示される。ここでR’は、炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。
【0089】
酵素反応により得られたランタノイド錯体(A2)又はその水和物(A2b)における変換された基(r2)は、水分子と比べてランタノイドイオンへの配位能が高く、変換された基(r2)がランタノイドイオンに配位して、或いはランタノイド錯体(A2b)に水分子と配位子交換して配位して、8配座のランタノイド錯体(A3)となる。
【0090】
本反応が対象とする酵素として好ましくは、リン酸化酵素、硫酸化酵素、エステル加水分解酵素、アミド分解酵素、エステル化酵素、アミノ化酵素等が例示され、より好ましくはリン酸化酵素、硫酸化酵素、エステル加水分解酵素が推奨される。
【0091】
より好ましい具体的な酵素としては、セリンスレオニンキナーゼ類(CDK2、CDK4、cAPK−α、cGMK−α、PKC類、MAIIK類)、チロシンキナーゼ類(ZAP―70、erbB2、Fyn、Lck、Lyn、EGFレセプター、Src N1、Src N2、Insulinレセプター、H−ras 1/p21)、アセチルトランスフェラーゼ等が例示される。
【0092】
酵素反応は、ランタノイド錯体(A1)又は水和物(A1b)を反応基質として、例えば反応溶液中、所定の酵素の存在下、反応させることにより行う。
【0093】
反応溶媒としては、特に限定されず、通常の酵素反応で用いられている水溶液が使用可能であり、例えばトリス塩酸(Tris−HCl)バッファー、ヘペス(HEPES)バッファー等が例示され、好ましくはこれらのバッファーのpHが中性から弱塩基性(pH=6.8〜8.2)領域のものが推奨される。
【0094】
又、酵素が失活しない範囲内で必要に応じて水と可溶性の有機溶媒を併用することも可能である。そのような有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、DMF、DMSO等が例示される。
【0095】
基質濃度としては、用いる基質の種類、酵素等の種類により異なるが、例えば、0.1〜20μMが例示され、好ましくは0.1〜5μMが推奨される。
【0096】
酵素量としては、用いる酵素、基質等の種類により異なるが、例えば0.01〜10μg/wellが例示され、好ましくは0.1〜1.0μg/well程度が推奨される。尚、1wellは、10〜100μlである。
【0097】
反応温度としては、用いる酵素、基質等の種類により異なるが、例えば20〜70℃が例示され、好ましくは25〜40℃が推奨される。
【0098】
反応時間としては、用いる酵素、基質等の種類により異なるが、例えば10分〜24時間が例示され、好ましくは10分〜2時間が推奨される。
【0099】
更に、酵素の種類に応じて50〜200μMのATP、0.1〜10mMのマグネシウムイオン、0.1〜10mMのEDTA、1〜500mMの塩化ナトリウム、0.1〜50mMの炭酸水素アンモニウム、0.1〜10mMの硫酸ナトリウム、0.1〜10mMのジチオスレイトール(DTT)等を反応系に添加することができる。
【0100】
ここで、先にも述べたように配位子にスペーサー(D)を介せず酵素の特異的基質の反応部位(r1又はr2)が結合している場合、特異的基質の反応部位(r1又はr2)が酵素の活性部位に接近できず、結果として酵素反応の基質となることが困難となる。
【0101】
本発明で酵素の特異的基質の反応部位が酵素反応の前後で構造が変化する場合、ランタノイド錯体(A1)において、酵素反応前の特異的基質の反応部位(r1)は、ランタノイドイオンへの配位力が水分子と同等であるか又は水分子より配位力が弱く、近傍に大量に存在する水分子の配位が優先し、反応部位(r1)は、水分子と錯体交換を起こさない。一方、酵素反応後に生じた活性化された基質(r2)は、ランタノイドイオンへの配位力が水分子と比べて格段に強く、水分子と配位子交換することによりランタノイド錯体(A2b)に配位して、或いはランタノイドイオンに直接配位して、8配座のランタノイド錯体(A3)となり、発光強度に変化を生じ、発光強度が増大する。特に、変換された基(r2)が、負電荷を有する場合、電気的作用により配位することがあり、ランタノイドイオンに対してより強い配位力となる。
【0102】
リン酸化酵素によるリン酸エステル化反応を例にとって、反応式3を用いて錯体の変化の状態を示す。下記の式中、Eu錯体は、7配座錯体であり、リン酸化酵素の特異的基質となり得る基(r1)である水酸基がスペーサーを介して配位子に結合している。更にこの錯体は、水分子が配位した8配座錯体(A1b)となっている。この場合励起光を照射しても発光しないか、発光強度が弱いものである。この錯体に対しリン酸化酵素を反応させると、1級の水酸基がリン酸化された部分を有するランタノイド錯体(A2b)が得られる。リン酸エステルとなった水酸基(r2)は、アニオン性を有しており、又、ランタノイドイオンに対し1級の水酸基より強い結合力を有しており、8配座錯体(A2b)中の水分子と配位子交換することにより、配位子交換が起こった8配座のランタノイド錯体(A3)となる。ランタノイド錯体(A3)は、励起光を照射すると、Euイオンが励起され発光する。
【0103】
【化26】
【0104】
ランタノイド錯体(A4)及び配位子(B3)
本発明で用いられるランタノイド錯体(A4)は、8配座以上の錯体であり、ランタノイドイオンと配位子(B3)とが1:1(モル比)で錯体を形成するものであり、ランタノイドイオンと配位子(B3)とを、好ましくは水溶液中で混合することにより得られる。
【0105】
又、配位子(B3)としては、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r3)を有しており、
c)特異的基質となり得る基(r3)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応により変換されると変換された基(r4)となる、特徴を有するものが使用される。
【0106】
又、ランタノイド錯体(A4)は、
e)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応前は配位に参加しており、
f)変換された基(r4)が生じると、変換された基(r4)がランタノイドイオンから遊離して、7つ以下の配位座が1つの配位子によって占有されたランタノイド錯体(A6)となるものであり、
g)8つ以上の配位座が1つの配位子によって占有されたランタノイド錯体(A4)に励起光を照射すると発光し、
h)7つ以下の配位座が1つの配位子によって占有されたランタノイド錯体(A6)に励起光を照射しても、発光しないか発光が弱いものである、特徴を有する。
【0107】
この8配座以上のランタノイド錯体(A4)は、本発明が対象とする酵素により、前記ランタノイド錯体(A1)を酵素反応することにより得ることができ、又、ランタノイド錯体(A1)を構成し得る配位子(B1)を、本発明が対象とする酵素により酵素反応し、得られた配位子(B4)とランタノイドイオンとを混合することにより得ることができる。
【0108】
ランタノイド錯体(A4)を構成し得る配位子(B3)
本発明で用いる8配座以上のランタノイド錯体(A4)を構成可能な配位子(B3)において光増感部位としては、配位子(B1)に記載のものと同じであり、又、特異的基質となり得る基(r3)及び変換された基(r4)としては、r3/r4の順に
・−O−P(=O)−(OH)2/−OH、
・−O−S(=O)2−OH/−OH、
・−COOH/−COOR、
・−COOH/−CONHR、
・−OH/−OCOR等が例示される。(Rは、低級アルキル基を表す。)
【0109】
又、配位子(B3)は、好ましくはランタノイドイオンに配位可能な置換基としてカルボキシル基を2個以上7個以下含むことが推奨される。
【0110】
具体的な配位子(B3)としては、例えば下記の構造のものが例示される。
【化27】
[式中、Ar、D、Lは、前記に同じである。E’−r3は、Eを表す。r3は、酵素の特異的基質となり得る基を表す。]
【0111】
又、配位子(B3)とランタノイドイオンとから得られるランタノイド錯体(A4)としては、下記の構造のものが例示される。
【0112】
【化28】
【0113】
又、7配座以下のランタノイド錯体を形成し得る配位子(B1)を、本発明が対象とする酵素により酵素反応を行うことにより、8配座以上のランタノイド錯体を形成し得る配位子(B3)とすることができる。一方、7配座以下のランタノイド錯体を形成し得る配位子(B1)の製造方法に準じて別途合成することも可能である。
【0114】
ランタノイド錯体(A4)からランタノイド錯体(A6)への酵素反応
この反応は、反応式3に記載の反応の逆反応に相当する。即ち、ランタノイド錯体(A4)中の酵素の特異的基質となり得る基(r3)は、前記酵素により、又は前記酵素と逆反応を促進させる酵素により反応させることにより、変換された基(r4)となり、その結果、7配座以下のランタノイド錯体(A6)を得る。
【0115】
本反応が対象とする酵素としては、例えば、リン酸エステル加水分解酵素、硫酸エステル加水分解酵素、アミド分解酵素、カルボキシエステル加水分解酵素、酸化酵素、脱炭酸酵素等が例示され、好ましくはリン酸エステル加水分解酵素が推奨され、より好ましい酵素としては、ホスホプロテインホスファターゼ類、ホスホリパーゼ等が例示される。
【0116】
この場合においては、酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、8配座以上のランタノイド錯体(A4)に酵素を反応させると、基質となり得る基(r3)は、酵素により変換されて、変換された基(r4)を有する生成物(A5)を生じる。
【0117】
ランタノイド錯体中の変換された基(r4)は、ランタノイドイオンから直ちにはずれて、7配座以下のランタノイド錯体(A6)となり、更にこの錯体(A6)は、水和物(A6b)となることもある。
【0118】
ここで、基質となり得る基(r3)は、前記置換基(r2)と同一の置換基であり、又、変換された基(r4)は、置換基(r1)と同一の置換基である。又、8配座以上のランタノイド錯体(A4)は、ランタノイド錯体(A3)と同じものであり、7配座以下のランタノイド錯体(A6)は、ランタノイド錯体(A1)と同じものである。
【0119】
基質となり得る基(r3)及び変換された基(r4)として好ましくは、(r3/r4の順に)
・−O−P(=O)−(OH)2/−OH、
・−O−S(=O)2−OH/−OH、
・−COOH/COOR、等が例示される。
【0120】
リン酸エステル分解酵素による加水分解反応における錯体の変化につき反応式4に示す。式中、Eu錯体(A4)は、8配座錯体であり、リン酸エステル分解酵素の特異的基質となり得る基(r3)であるリン酸エステルがスペーサーを介して配位子に結合している。この錯体に励起光を照射すると高い発光強度を示す。この錯体(A4)に対しリン酸エステル分解酵素を反応させると、リン酸エステルが分解して1級の水酸基を有するランタノイド錯体(A5)が得られる。生じた水酸基(r4)は、又、ランタノイドイオンに対し水分子と比べて配位力が同等又は弱く、ランタノイドイオンから遊離して7配座である錯体(A6)となる。ランタノイド錯体(A6)は、励起光を照射しても、8配座の錯体(A4)と比べて発光強度が弱い。
【0121】
【化29】
【0122】
この反応において各ランタノイド錯体(A4、又はA6若しくはA6b)の発光強度を測定すれば、8配座のランタノイド錯体(A4)は発光強度が高く、一方、7配座のランタノイド錯体(A6若しくはA6b)は、発光強度が低いかほとんどなく、発光強度が減少することがわかる。
【0123】
時間分解蛍光測定法による発光強度の測定
本発明では、時間分解蛍光測定法により、発光強度を測定する。前記のごとく、本発明にかかるランタノイド錯体を用いた場合の時間分解蛍光測定は、励起光と発光との波長の差(ストークスシフト)が大きく、発光が長波長であり、励起光の照射後一定時間後に発光を測定することで共存物質の発光を抑制できる利点を有す。
【0124】
本発明においてランタノイド錯体に照射する励起光は、光増感部位を励起させるために照射し、その波長としては、ランタノイドイオンが発光できる波長であれば特に限定されず、320〜360nmの波長が例示でき、特にランタノイドイオンの発光が最大となるような波長、例えば、Euイオンであれば340nm付近の波長が好ましい。一方、励起光により励起されたランタノイドイオンが発光する波長は、ランタノイドイオンの種類及び配位子の種類により異なる。各々の励起波長と発光波長としては、例えば表1に記載のものが例示される。
【0125】
【表1】
【0126】
時間分解蛍光測定に用いる機器としては特に限定されず、例えば、マルチラベルカウンタ:DELFIA 1234FLUOROMETER、ARVOsx(いずれもwallac.velthold社製)、Ultra(テカン社製)、Analyst(LJL Biosystems社製)等が例示される。
【0127】
時間分解蛍光測定における遅延時間(delay time)としては、特に限定されず、例えば50〜250μsecが例示される。
【0128】
時間分解蛍光測定における測定回数(cycle time)としては、特に限定されず、例えば500〜2500回が例示される。
【0129】
酵素活性の検出方法
本発明の7配座以下のランタノイド錯体(A1)から8配座以上のランタノイド錯体(A3)への構造変換は、酵素活性に依存しており、酵素活性が高ければ(A1)から(A3)への変換率は高く、酵素活性が低ければ変換率は低い。一方、7配座以下のランタノイド錯体(A1)から8配座以上のランタノイド錯体(A3)への変換率を発光強度の変化で判断すると、発光強度の変化が大きければランタノイド錯体(A1)からランタノイド錯体(A3)への変換率が高く、従って酵素活性が高いことを示す。
【0130】
従って、この発光強度の変化を検出することにより酵素活性の検出を行うことができる。
【0131】
候補化合物のスクリーニング方法
本発明では、ランタノイド錯体を用いた酵素活性の測定することにより、該酵素に拮抗する候補化合物のスクリーニングを行うことが可能である。即ち、所定量の酵素を加えて候補化合物及びランタノイド錯体の存在下で酵素反応を行う場合、候補化合物が酵素反応を阻害すれば、7配座以下のランタノイド錯体(A1)又は水和物(A1b)は、8配座のランタノイド錯体(A3)へとは変換されず、その結果発光強度もほとんど変化しない。一方、候補化合物が酵素反応を阻害しなければ、7配座以下のランタノイド錯体(A1)又は水和物(A1b)は、8配座のランタノイド錯体(A3)へと変換され、その結果、発光強度も大きく変化する。即ち、発光強度の変化と、候補化合物の阻害活性とはパラレルな関係にあり、候補化合物の阻害活性が高ければ発光強度の変化は小さく、一方、候補化合物の阻害活性が低ければ発光強度の変化は大きい。
【0132】
本発明で用いられる候補化合物のスクリーニングの対象化合物としては、例えばコンビナトリアルケミストリーにより合成可能な化合物ライブラリーのなかから選択される。
【0133】
即ち、時間分解蛍光測定法による酵素に阻害作用を有する候補化合物のスクリーニング方法であって、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成するランタノイド錯体(A1)であって、該錯体を構成する配位子(B1)は、分子内に
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものであり、
又、ランタノイド錯体(A1)は、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前は好ましくはランタノイドイオンに配位しておらず、
f)酵素反応により変換された基(r2)が生じると、変換された基(r2)がランタノイドイオンへ配位してランタノイド錯体(A3)となるものであり、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、ランタノイド錯体(A1)を用い、
2)ランタノイド錯体(A1)は、更に水がランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A1b)となっていてもよい状態で、
3)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、ランタノイド錯体(A1又はA1b)に前記酵素を反応させ、
4)特異的基質となり得る基(r1)が酵素によって変換されれると、酵素により変換された基(r2)を有するランタノイド錯体(A2又はA2b)を生じ、
5)変換された基(r2)は、ランタノイド錯体(A2)の分子内でランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A3)となるか、若しくはランタノイド錯体(A2b)に水分子と配位子置換してランタノイド錯体(A3)となり、又、特異的基質となり得る基(r1)が変換されなければ、ランタノイド錯体(A1又はA1b)は変化せず、
6)励起光の照射により、ランタノイド錯体(A3)又はランタノイド錯体(A1若しくはA1b)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
8)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下で、前記工程1)から7)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程により行うことができる。
【0134】
ここで、阻害活性の有無の判断の方法としては、以下のごとく行うことができる。即ち、候補化合物の非存在下で酵素反応を行った場合の発光強度m1と、特定の候補化合物の存在下での酵素反応を行った場合の発光強度m2とを比べ、m2/m1=1であれば当該候補化合物はこの酵素を全く阻害しないこととなり、m2/m1=0であれば当該候補化合物はこの酵素を100%阻害することとなる。
【0135】
一方、上記スクリーニング方法は、ランタノイド錯体(A4)からランタノイド錯体(A6)への酵素反応における、酵素に阻害作用を有する候補化合物のスクリーニング方法にも適用可能である。この場合においても酵素反応の反応条件は、前記記載のものが適用可能である。
【0136】
具体的な方法としては、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成するランタノイド錯体(A4)であって、該錯体を構成する配位子(B3)は、分子内にa)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r3)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r3)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応により変換されると変換された基(r4)となるものであり、
又、ランタノイド錯体(A3)は、
e)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しており、
f)酵素反応により変換された基(r4)が生じると、変換された基(r4)がランタノイドイオンから遊離してランタノイド錯体(A6)となり、
g)ランタノイド錯体(A4)とランタノイド錯体(A6)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、ランタノイド錯体(A4)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、ランタノイド錯体(A4)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r3)は酵素によって変換されれると、変換された基(r4)を有するランタノイド錯体(A5)を生じ、
4)変換された基(r4)は、ランタノイドイオンから遊離してランタノイド錯体(A6)となり、又、特異的基質となり得る基(r3)が変換されなければランタノイド錯体(A4)は変化せず、
5)ランタノイド錯体(A6)は、水分子がランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A6b)となっていてもよく、
6)励起光の照射により、ランタノイド錯体(A4)又はランタノイド錯体(A6若しくはA6b)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
8)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下、前記工程1)から7)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程により行うことができる。
【0137】
配位子(B1)から配位子(B2)への酵素反応への応用
本発明の酵素活性の検出方法は、ランタノイド錯体のみでなく錯体形成前の配位子に対しても適用可能である。
【0138】
即ち、錯体形成前の配位子(B1)を、酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で酵素反応を行い、酵素反応後の混合物(B1及び/又はB2を含む)とランタノイドイオンとを錯体形成反応させ、得られた錯体混合物の発光強度を測定することにより、酵素活性の検出をすることができる。
【0139】
ここで配位子(B1)としては、例えば一般式[I]から[V]で表される化合物が例示できる。
【0140】
配位子(B1)を本発明に係る酵素反応をすることにより得られる変換された基(r2)を有する配位子(B2)は、水溶液中でランタノイドイオンとともに8配座のランタノイド錯体(A3)を形成し、この錯体(A3)は、励起光の照射により発光する。
【0141】
即ち、具体的な酵素活性の検出方法としては、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成可能な配位子(B1)であって、該配位子は、分子内に
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものであり、
又、配位子(B1)は、ランタノイド錯体(A1)を形成した場合、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前は好ましくは錯体(A1)においてランタノイドイオンに配位せず、
f)一方、変換された基(r2)を有する配位子がランタノイドイオンとともにランタノイド錯体(A3)を形成した場合、変換された基(r2)は、ランタノイドイオンに配位しており、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、配位子(B1)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、配位子(B1)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素によって変換されると変換された基(r2)を有する配位子(B2)を生じ、又、基質となり得る基(r1)が変換されなければ配位子(B1)は変化せず、
4)上記3)にランタノイドイオンを作用させると、変換された基(r2)を有する配位子(B2)は、ランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A2)となり、ついでこの錯体は上記2)の反応で変換された基(r2)がランタノイドイオンに更に配位してランタノイド錯体(A3)となり、一方、配位子(B1)がランタノイドイオンに配位すると、ランタノイド錯体(A1)を形成し、更にこのランタノイド錯体(A1)は、水分子が配位したランタノイド錯体(A1b)となってもよく、
5)上記4)に励起光を照射すると、ランタノイド錯体(A3)又はランタノイド錯体(A1若しくはA1b)中のランタノイドイオンが発光し、
6)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
7)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下、前記工程1)から6)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程により行うことができる。
【0142】
ここで、酵素の種類、酵素反応における各種反応条件等は、前記のものが適用できる。
【0143】
又、酵素反応後の反応液へのランタノイドイオンの添加量としては、例えば、反応の際使用する配位子1モルに対し、ランタノイドイオンを1.0〜2.5モルモル、好ましくは1.1〜1.5モル程度加えればよい。
【0144】
イオン種としては、特に限定されず、前記記載の3価のランタノイド金属塩由来のものが適用できる。
【0145】
ランタノイドイオン添加後、錯体形成に必要な適当な時間、例えば10〜30分程度経過後に発光強度を測定することにより、その発光強度をもって酵素活性の指標とすることができる。この反応につき、反応式5に示す。
【0146】
【化30】
【0147】
尚、a)ランタノイド錯体を用いて酵素反応を行う場合と、b)配位子の段階で酵素反応を行い反応終了後ランタノイド錯体を形成する場合、における相違点は、a)が酵素の至適pHで反応を行い、任意のpHに於いて測定できるのに対し、b)は反応終了後、錯形成をより効率的に行うため、中性以上、好ましくは弱塩基性以上のpHにすればよい。一方、ランタノイド錯体(A1又はA4)が反応溶媒に溶解しにくいものである場合は、配位子の段階で酵素反応を行い、その後、ランタノイド錯体とすることができる。
【0148】
配位子(B3)から配位子(B4)への酵素反応への応用
更に、本発明は、配位子(B1)から配位子(B2)への酵素反応の逆方向への反応においても酵素活性の測定を行うことができる。
【0149】
即ち、この方法は、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成可能な配位子(B3)であって、該配位子(B3)は、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r3)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r3)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応により変換されると変換された基(r4)となるものであり、
又、この配位子(B3)は、ランタノイド錯体(A4)を形成した場合、
e)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しており、
f)一方、変換された基(r4)を有する配位子がランタノイドイオンともにランタノイド錯体(A6)を形成した場合、変換された基(r4)は、好ましくはランタノイドイオンに配位せず、
g)ランタノイド錯体(A4)とランタノイド錯体(A6)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、配位子(B3)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、配位子(B3)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素により変換されると、変換された基(r4)を有する配位子(B4)を生じ、
4)配位子(B4)にランタノイドイオンを作用させると、配位子(B4)は、変換された基(r4)が好ましくはランタノイドイオンに配位することのない状態でランタノイド錯体(A6)となり、
5)ランタノイド錯体(A6)は、水分子が配位してランタノイド錯体(A6b)となってもよく、
6)励起光の照射により、ランタノイド錯体(A6又はA6b)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定する、各工程による。
【0150】
ここで、配位子(B3)から配位子(B1)への酵素反応の条件としては、前記のものが適用可能であり、又、酵素反応後のランタノイド錯体の形成についても前記の条件が適用できる。
【0151】
この反応につき、反応式6に示す。
【化31】
【0152】
配位子を用いた候補化合物のスクリーニング方法
本発明では、候補化合物の存在下で配位子に対して酵素反応を施し、得られた反応混合物をランタノイド錯体形成反応させ、次いで発光強度を測定することにより酵素阻害活性を有する候補化合物のスクリーニング方法とすることができる。即ち、配位子(B1)から配位子(B2)への酵素反応、又は配位子(B3)から配位子(B4)への酵素反応を、各々の酵素の阻害活性を有する候補化合物の存在下で行う場合、候補化合物が各々の酵素反応を阻害すれば反応は進行せず、一方、候補化合物が各々の酵素反応を阻害しなければ反応が進行する。その後、この反応溶液にランタノイドイオンを添加することにより、ランタノイド錯体を形成する。この錯体に励起光を照射すると、反応状況に応じてランタノイド錯体が発光する。
【0153】
具体的には、配位子(B1)から配位子(B2)への反応において、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成可能な配位子(B1)であって、該配位子は、分子内に
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものであり、
又、配位子(B1)は、ランタノイド錯体(A1)を形成した場合、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前は好ましくは錯体(A1)においてランタノイドイオンに配位せず、
f)一方、変換された基(r2)を有する配位子がランタノイドイオンとともにランタノイド錯体(A3)を形成した場合、変換された基(r2)は、ランタノイドイオンに配位しており、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、配位子(B1)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、配位子(B1)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素によって変換されれると、変換された基(r2)を有する配位子(B2)を生じ、又、基質となり得る基(r1)が変換されなければ配位子(B1)は変化せず、
4)上記3)にランタノイドイオンを作用させると、変換された基(r2)を有する配位子(B2)は、ランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A2)となり、ついでこの錯体は上記2)の反応で変換された基(r2)がランタノイドイオンに更に配位して、ランタノイド錯体(A3)となり、一方、配位子(B1)がランタノイドイオンに配位すると、ランタノイド錯体(A1)を形成し、更にこのランタノイド錯体(A1)は、水分子が配位したランタノイド錯体(A1b)となってもよく、
5)上記4)に励起光を照射すると、ランタノイド錯体(A3)又はランタノイド錯体(A1若しくはA1b)中のランタノイドイオンが発光し、
6)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
7)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下、前記工程1)から6)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程を包含する方法である。
【0154】
一方、配位子(B3)から配位子(B4)への反応においては、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成可能な配位子(B3)であって、該配位子は、分子内に
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r3)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r3)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応により変換さると変換された基(r4)となるものであり、
又、この配位子(B3)がランタノイド錯体(A4)を形成した場合、
e)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しており、
f)変換された基(r4)を有する配位子がランタノイドイオンとともに錯体(A6)を形成する場合、変換された基(r4)は、好ましくはランタノイド錯体(A6)においてランタノイドイオンに配位せず、
g)ランタノイド錯体(A4)とランタノイド錯体(A6)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する配位子(B3)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、該配位子(B3)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素により変換されると、変換された基(r4)を有する配位子(B4)を生じ、又、基質となり得る基(r3)が変換されなければ、配位子(B3)は変化せず、
4)上記3)にランタノイドイオンを作用させると、配位子(B4)は、好ましくは変換された基(r4)がランタノイドイオンに配位することのない状態でランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A6)となり、又、この錯体(A6)は、更に水分子が配位してランタノイド錯体(A6b)となってもよく、一方、配位子(B3)は、特異的基質となり得る基(r3)がランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A4)を生じ、
5)上記4)に励起光を照射することにより、ランタノイド錯体(A6若しくはA6b)又はランタノイド錯体(A4)中のランタノイドイオンが発光し、
6)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
7)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下、前記工程1)から6)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程を包含する方法である。
【0155】
酵素反応の条件としては、前記記載のものが適用可能であり、又、酵素反応後のランタノイド錯体の形成条件も前記のものが適用できる。
【0156】
即ち、本発明のランタノイド錯体を、特定酵素、特にリン酸化酵素、硫酸化酵素等の、特異的基質として作用させることにより、従来公知のランタノイド錯体と比べて酵素反応の前後での発光強度の変化が大きく異なることから、従来公知のランタノイド錯体と比べてより少ない基質量で酵素活性の測定が可能となった。更に、このランタノイド錯体は、前記特定酵素に阻害活性を有する候補化合物のスクリーニングする際にも利用することができる。
【0157】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、時間分解蛍光測定は、マルチラベルカウンタ:ARVOsx(wallac velthold社製)を用いて、以下のパラメーターにより行った。
【0158】
Emission filter name D615 (Europium)
Excitation filter name D340
Delay time 50 msec.
Window time 2350 msec.
Cycle 6500 msec.
Second window delay time 0 msec.
Flash energy area Low
Flash absorbance measurement No
【0159】
又、発光強度の測定は、特に記さない限り1mMトリス−塩酸バッファー(pH7.4)、10mM塩化ナトリウム、0.05%トゥイーン溶液下で測定した。
【0160】
参考例1
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1―ジメチルエチル)エステルの合成
【0161】
【化32】
【0162】
市販の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(3.4g、20mmol)をジクロロメタンに溶解し、tert−ブチル 2−ブロモアセテート(5.3ml、36mmol)を加え、反応液を1.5時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C−200、溶出溶媒;クロロホルム−メタノール(5:1))により精製して、表題化合物を得た(4.5g、収率56%)。
【0163】
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ ppm:1.44(s,18H),2.91(s,8H),3.01(s,8H)、3.34(s,4H)
【0164】
参考例2
1−ブロモ−2−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エタンの合成
【0165】
【化33】
【0166】
市販の7−アミノ−4−メチル−2(1H)−キノリノン(950mg、5.5mmol)をTHFに懸濁し、n−ブチルリチウム(1.46M n−ペンタン溶液、4.1ml、6.1mmol)を滴下し、室温で1時間攪拌した。続いて、2−ブロモ酢酸ブロミド(0.72ml、8.3ml)を滴下し、更に室温で1時間攪拌した。析出している白色結晶を濾取、水洗浄後、減圧下乾燥し、表題化合物を得た(1.4g、収率87%)。
【0167】
1H NMR(300MHz,DMSO−d6)δ ppm:2.37(s,3H),4.03(s,2H),6.25(s,1H),7.29(dd,J=8.7、1.4Hz,1H),7.63(d,J=8.7Hz,1H),7.71(d,J=1.4Hz,1H),10.59(s,1H)、11.52(s、1H)
【0168】
参考例3
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1―ジメチルエチル)エステルの合成
【0169】
【化34】
【0170】
参考例1で得られた化合物(1.9g、4.76mmol)及び参考例2で得られた化合物(1.4g、4.76mmol)をDMFに溶解し、これに炭酸カリウム(1.32g、9.52mmol)を室温で加え、室温で20時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C−200 溶出溶媒;クロロホルム−メタノール(5:1))により精製して、表題化合物を得た(0.75g、収率26%)。
【0171】
1H NMR(CD3OD,300MHz)δ ppm:1.47(s,9H),1.51(s,9H),2.50(s,3H),2.76(br,2H),2.84(br,2H),3.05(br,2H),3.19(br,2H),3.36(s,8H),3.37−3.48(m,4H),3.60(s,2H),6.41(s,1H),7.37(dd,J=8.7、1.4Hz,1H),7.72(d,J=8.7Hz,1H),7.98(d,J=1.4Hz,1H)ESI−MS(m/e):(M+H)+=615.4
【0172】
参考例4
1−ブロモ−[1−(1,1―ジメチルエチルオキシカルボニル)−2−(1,1―ジメチルエチルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキサンの合成
【0173】
【化35】
【0174】
H−Ser(tBu)−OtBu(217mg、1.0mmol)、HATU(452mg、1.2mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.4ml、2.4mmol)をDMFに溶解し、これに6−ブロモヘキサン酸(195mg、1.0mmol)を室温で加え、室温で6時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(WakogelC−200、溶出溶媒;ヘキサン−酢酸エチル(10:1))により精製して、表題化合物を得た(46mg、収率12%)。
【0175】
1H NMR(CDCl3,300MHz)δ ppm:1.18(s,9H),1.49(s,9H),1.45−1.58(m,2H),1.66−1.77(m,2H),1.86−1.95(m,2H),2.26−2.34(m,2H),3.42(t,J=7.8Hz,2H),3.54(dd,J=8.8、3.4Hz,1H),3.80(dd,J=8.8、3.4Hz,1H),34.63(dt,J=8.8、3.4Hz,1H),6.28(d,J=8.8,1H)
【0176】
参考例5
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[1−(1,1―ジメチルエチルオキシカルボニル)−2−(1,1―ジメチルエチルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1―ジメチルエチル)エステルの合成
【0177】
【化36】
参考例3で得られた化合物(20mg、0.0326mmol)及び参考例4で得られた化合物(46mg、0.0978mmol)をDMFに溶解し、これに炭酸ナトリウム(28mg、0.3mmol)を加え、120℃で1.5時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm,2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥して表題化合物を得た(6.5mg、収率21%)。
ESI−MS(m/e):(M+H)+=928.5
【0178】
参考例6
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(1−カルボキシ−2−ヒドロキシエチル)アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッドの合成
【0179】
【化37】
参考例5で得られた化合物(6.5mg、0.007mmol)を90%TFAを含む水に溶解し、60℃で1時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm,2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、目的物を含む溶出液を凍結乾燥し、表題化合物を得た(2.3mg、収率46%)。
ESI−MS(m/e):(M+H)+=704.23
【0180】
製造例1
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(1−カルボキシ−2−ヒドロキシエチル)アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ユーロピウムキレートの合成
【0181】
【化38】
参考例6で得られた化合物(2.3mg、0.0033mmol)及びEuCl3・6H2O(24mg、0.066mmol)を、pH=5に調整した0.1Mトリメチルアンモニウムアセテート水溶液(1ml)に溶解し、50℃で170時間攪拌した。反応混合液をそのまま(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm,2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(1.4mg、収率30%)。
発光強度:2.38x106count(5μM水溶液)
【0182】
参考例7
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[1−カルボキシ−2−(1,1―ジメチルエチルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキシル−1、4、7、10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1−ジメチルエチル)エステルの合成
【0183】
【化39】
参考例4において、H−Ser(tBu)−OtBuの代わりにH−Ser(tBu)−OMeを用いる他は参考例4と同様の反応を行い、1−ブロモ−[1−(メチルオキシカルボニル)−2−(1,1―ジメチルエチルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキサンを得た。次いで、この化合物と参考例3で得られた化合物とを、参考例5に記載の反応に準じて120℃で20時間反応を行った。得られた反応液を参考例5に記載の精製方法に準じて精製し、表題化合物を得た。
【0184】
参考例8
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(1−メトキシカルボニル−2S−ヒドロキシエチル)アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッドの合成
【0185】
【化40】
参考例7で得られた化合物(9mg、0.01mmol)をベンゼン−メタノール混合溶媒(4ml:1ml)に溶解し、トリメチルシリルジアゾメタン(2Mヘキサン溶液、0.5ml)を加え、反応混合液を室温で1時間撹拌した。減圧下溶媒を留去して、参考例7で得られた化合物に対応するメチルエステルを得た(9mg、収率100%)。
【0186】
このメチルエステル(9mg、0.01mml)を、10%の水を含むTFA(5ml)に溶解し、反応混合液を60℃で0.5時間撹拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm,2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥して表題化合物を得た(2.0mg、収率28%)。
ESI−MS(m/e):(M+H)+=718.3
【0187】
製造例2
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(1−メトキシカルボニル−2S−ヒドロキシエチル)アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ユーロピウムキレートの合成
【化41】
参考例8で得られた化合物を用い、製造例1に準じて反応を行い、表題化合物を得た。
発光強度:4.13x106count(5μMバッファー溶液)
【0188】
参考例9
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(6−メトキシカルボニル)ヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1―ジメチルエチル)エステルの合成
【0189】
【化42】
参考例3で得られた化合物(0.4g、0.65mmol)及びメチル 6−ブロモ−n−ヘキサノエート(0.62g、3.0mmol)をDMFに溶解し、これに炭酸ナトリウム(0.56g、6.0mmol)を加え、120℃で2時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(0.1g、収率21%)。
【0190】
ESI−MS(m/e):(M+H)+=743.4
【0191】
参考例10
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(6−カルボキシ)ヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1−ジメチルエチル)エステルの合成
【0192】
【化43】
【0193】
参考例9で得られた化合物(100mg、0.134mmol)をメタノール(1ml)に溶解し、この反応液に2M水酸化ナトリウム水溶液(5ml)を加えて、反応混合液を室温で2時間撹拌した。減圧下メタノールを留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm,2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(14mg、収率14%)。
【0194】
ESI−MS(m/e):(M+H)+=729.4
【0195】
参考例11
【化44】
市販のFmoc−Ser(PO(OBn)OH)−OH(500mg、1mmol)をジクロロメタン(10ml)に溶解し、シクロヘキサノン(3ml)、tert−ブチル−2,2,2−トリクロロアセトイミデート(655mg、3mmol)を加え、反応混合液を100℃で2時間撹拌した。減圧下溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C−200、溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(5:1))により精製して、Fmoc−Ser(PO(OBn)OH)−OtBuを得た(0.55g、収率100%)。得られた化合物(400mg、0.73mmol)をDMF(32ml)に溶解し、ピペリジン(8ml)を加え、反応混合液を室温で1時間撹拌した。減圧下溶媒を留去して得られた残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、次いで凍結乾燥してFmoc基を除去した表題化合物を得た(9mg、収率4%)。
【0196】
参考例12
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[1−カルボキシ−2S−(ジヒドロキシホスフィニルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッドの合成
参考例11で得られた化合物(9mg、0.0272mmol)及び参考例10で得られた化合物(13.5mg、0.0185mmol)をDMF(1ml)に溶解し、WSC HCl(7.1mg)、HOBt H2O(5.8mg)を加え、反応混合液を室温で17時間撹拌した。減圧下溶媒を留去して得られた残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥して4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[1−(1,1―ジメチルエチルオキシカルボニル)−2S−(ヒドロキシ−O−ベンジルオキシホスフィニルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1―ジメチルエチル)エステルを得た(5.3mg、収率27%)。
【0197】
この縮合化合物(5.3mg)を、10%の水を含むTFA(5ml)に溶解し、反応混合液を60℃で0.5時間撹拌した。減圧下溶媒を留去して得られた残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥して表題化合物を得た(5.4mg、収率100%)。
ESI−MS(m/e):(M+H)+=784.7
【0198】
製造例3
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[1−カルボキシ−2S−(ジヒドロキシホスフィニルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ユーロピウムキレートの合成
【0199】
【化45】
【0200】
参考例12で得られた化合物を用いて製造例1と同様の方法により反応を行い、表題化合物を得た。
発光強度:10.72x106count(5μMバッファー溶液)
【0201】
参考例13
一般式(S)
【化46】
[式中、SR’は、固相樹脂を表す。]で表されるレジンの合成
【0202】
市販のNovaSyn TGR樹脂(0.21mmol/g)0.1gを用いて、4当量のFmoc−Lys(Boc)−OH、4当量のHATU、8当量のN,N−ジイソプロピルエチルアミンを用い、室温で15時間反応させることによりアミノ酸カップリングを行った。引き続き20%ピペリジン含有DMFを用い、室温で0.5時間反応させることにより脱Fmoc化反応を行った。次いで、同様の操作を繰り返してアミノ酸を延長した。即ち、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Ser(t−Bu)−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Lsy(Boc)−NH2を用いて、順次Fmocアミノ酸の縮合及び脱Fmoc化を繰り返してアミノ酸残基を延長した。最後の段階であるFmoc−Lsy(Boc)−NH2を縮合後、20%ピペリジン含有DMFを用いて脱Fmoc化を行い、更に乾燥させて一般式(S)で表されるレジンを得た。
【0203】
参考例14
【化47】
【0204】
参考例10で得られた化合物(14mg、0.02mmol)、HATU(11.4mg、0.03mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.01ml、0.06mmol)をDMFに溶解し、これに参考例13で得られたレジン(78mg、0.013mmol)を室温で加え、18時間攪拌した。レジンをDMF(2mlx3)、メタノール(2mlx3)、ジクロロメタン(2mlx3)の順で洗浄した。得られたレジンを90%TFA−H2O(2ml)で60℃で1時間処理した後、レジンをろ過してのぞき、減圧下濾液を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(8.6mg、収率50%)。
【0205】
製造例4
【化48】
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(1−カルボキシ−2−ヒドロキシエチル)アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッドの代わりに参考例11で得られた化合物を用いる他は製造例1と同様の方法により反応を行い、表題化合物を得た。
発光強度:6.89x104count(5μMバッファー溶液)
【0206】
参考例15
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[4−(メトキシカルボニルメチル)フェニル]メチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1−ジメチルエチル)エステルの合成
【化49】
参考例3で得られた化合物(0.05g、0.081mmol)及びメチル 4−(ブロモメチル)フェニルアセテート(0.059g、0.24mmol)をDMFに溶解し、これに炭酸カリウム(0.1g、0.7mmol)を加え、80℃で1時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(0.036g、収率57%)。
【0207】
ESI−MS(m/e):(M+H)+=777
【0208】
参考例16
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[4−(カルボキシメチル)フェニル]メチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1−ジメチルエチル)エステルの合成
【化50】
【0209】
参考例15で得られた化合物(35.8mg、0.046mmol)をメタノール(1ml)に溶解し、この反応液に2M水酸化ナトリウム水溶液(5ml)を加えて、反応混合液を室温で2.5時間撹拌した。減圧下メタノールを留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm,2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(33.3mg、収率95%)。
【0210】
ESI−MS(m/e):(M+H)+=763
【0211】
参考例17
配位子の作成
【化51】
【0212】
参考例16で得られた化合物(16.6mg、0.022mmol)、HATU(8.4mg、0.022mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.0078ml、0.047mmol)をDMFに溶解し、これに参考例13で得られたレジン(60mg、0.010mmol)を室温で加え、18時間攪拌した。レジンをDMF(2mlx3)、メタノール(2mlx3)、ジクロロメタン(2mlx3)の順で洗浄した。得られたレジンを90%TFA−H2O(2ml)で60℃で1時間処理した後、レジンをろ過して除去し、減圧下濾液を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(6.9mg、収率40%)。
【0213】
製造例5
錯体の調製
【化52】
参考例6で得られた化合物の代わりに参考例17で得られた化合物を用いる他は製造例1と同様の方法により反応を行い、表題化合物を得た。
発光強度:1.50x105count(1μMバッファー溶液)
【0214】
試験例
製造例1及び試験例3で得られたユーロピウム錯体の各種濃度(0.1M−TBSバッファー溶液中)での発光強度を表2に示す。尚、発光強度の測定は、マルチラベルカウンタ:ARVOsx(delay time 400μs)を用いた615nmの波長を測定することにより行った。
【0215】
【表2】
【0216】
製造例3の化合物は、製造例1の化合物を基質とし、酵素(例えばCDK4等のリン酸エステル化酵素)を用いて、酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で反応させることにより得られるものであり、低濃度においてもリン酸エステル化前後での化合物の発光強度が大きく異なることがわかる。従って、本発明の方法により、リン酸エステル化酵素等の酵素反応の検出が可能となった。
【0217】
酵素反応の測定
1)10XRバッファーの調製
200mM トリス・塩酸(pH7.4)
100mM 塩化マグネシウム
45mM 2−メルカプトエタノール
100mM EGTA
1M−トリス・塩酸(pH7.4)及び200mM−EGTA(pH7.4)を各々調製し、所定の濃度になる割合で混合し、2−メルカプトエタノール溶液及び塩化マグネシウム溶液を加えてメスアップした。
【0218】
2)ストップバッファー
0.1重量%トリトンX−100及び10mMのEGTAを0.1Mリン酸ナトリウムに溶解させてストップバッファーとした。
【0219】
3)CDK溶液の調製
まずCdk4のcDNAをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質発現用ベクターに組み込み、バキュロウイルスを作製した。それを昆虫細胞Sf9に感染させ、GST融合CDK4を高発現させた。その細胞を回収して可溶化した後、グルタチオンセファロースカラムを行った後プレシージョンプロテアーゼ(アマシャムファルマシアバイオテック社製品)によりGSTを切断した。この様にして得た溶液中には、サイクリンD2−CDK4複合体及びCDK4単独が存在するため、複合体のみを精製する目的で陰イオン交換カラム(溶出液:0.2Mトリス−塩酸バッファー(pH7.4)、0.1M塩化マグネシウム、45mM 2−メルカプトエタノール、10mMEGTA、0−0.5M塩化ナトリウム直線勾配;0.2M濃度で溶出する)を行うことによりサイクリンD2−CDK4複合体溶液(0.05〜0.5mg/ml)を得、サイクリンD2−CDK4酵素液とした。
【0220】
得られたサイクリンD2−Cdk4酵素液、バッファーA及びイオン交換水を1:1:2(重量比)の比により混合し、酵素液とした。
【0221】
バッファーAの組成:200mMトリス−塩酸(pH7.4)、100mM塩化マグネシウム、45mM 2−メルカプトエタノール、100mM O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’N’−4酢酸の各濃度に調製した。
【0222】
4)基質溶液の調製
対象とするランタノイド錯体を、純水を用いて5mM濃度となるように調製し、この溶液を適宜希釈して以下で用いた種々の希釈溶液とした。
【0223】
実施例1
コーニングBlack half 96ウエルプレートにDMSO1.1μlずつ手動で添加(n=4)し、ポジティブコントロールのウエルには反応後、ネガティブコントロールのウエルには反応開始前にストップバッファーを添加した。1−4列及び5−8列のウエルをそれぞれポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして用いた。
【0224】
酵素反応条件
総容量:20μl
ATP濃度:50μl
Mg濃度:10mM
2−ME濃度:4.5mM
EGTA濃度:10mM
製造例4の化合物濃度:0.05,0.1,1.0,2.0,5.0,10,20(μM)
【0225】
操作手順
1)10μlの製造例4の化合物溶液及び5μlの酵素液を各々のウエルに添加する。又、ネガティブコントロールには、ストップバッファー10μlを添加する。
2)5μlのATP溶液を各々のウエルに添加して、酵素反応を開始させる。
3)37℃、1時間攪拌後、ポジティブコントロールに10μlのストップバッファーを添加して酵素反応を終結させる。
4)マルチラベルカウンタ:ARVOsxを用いて各々のウエルの615nmの発光強度を測定する。
【0226】
上記方法により得られた結果を表3に示す。
【0227】
【表3】
【0228】
上記の結果より、製造例4の錯体をcdk4を用いて酵素反応することにより、615nmにおける発光強度が酵素反応前と比べて増加することが判明した。
【0229】
実施例2
コーニングBlack half 96ウエルプレートの各々のウエルにDMSO及び60nM、600nM、1μM、6μM、10μMの各濃度のフラボピリドールのDMSO溶液又はDMSOを2.5μMずつ手動で添加した(n=2)。ネガティブコントロールのウエル以外には反応後に、又、ネガティブコントロールのウエルには反応開始前にストップバッファーを添加した。
【0230】
酵素反応条件
総容量:50μl
ATP濃度:50μM
Mg濃度:10mM
2−ME濃度:4.5mM
EGTA濃度:10mM
製造例4の化合物濃度:10μM
フラボピリドール濃度:3、30、50、300、500nM(最終濃度)
【0231】
酵素液の調整
cdk4溶液 1ml、10xRバッファー1ml及び純水4mlを混合し酵素液として用いた。
【0232】
操作手順
1)50μMの製造例4の化合物溶液を各々のウエルに10μlずつ添加する。2)CDK4溶液を30μlずつ各々のウエルに添加する。
3)10μlの250μM ATP溶液を各々のウエルに添加して、酵素反応を開始させる。
4)37℃で1時間攪拌後、30μlのストップバッファーを添加して酵素反応を終結させる。
5)マルチラベルカウンタ:ARVOsxを用いて各々のウエルの615nmの発光強度を、上記条件にて測定する。
【0233】
ここでは、基質である製造例4の錯体の濃度を10mMに固定し、cdk4の阻害剤であるフラボピリドールの濃度を種々変化させた際の615nmの発光のカウントについて検討した。図1は、615nmの発光のカウント(Y軸)を阻害剤の濃度(X軸)に対してプロットしたものである。この図は、フラボピリドールの濃度依存的に615nmの発光強度が減少していくことを示している。
【0234】
実施例3
製造例5の化合物を用いて、該化合物濃度を35μMとした他は実施例2と同様の方法により酵素反応を行った。その結果を表4に示した。
【表4】
【0235】
以上、表3及び図1の結果より、製造例4の錯体を用い特定酵素(ここではcdk4)による酵素を行うと(実施例2)、反応の前後で反応液の615nmの発光強度が変化し、又、その変化はcdk4の阻害剤の存在により減弱することが示された。又、表4の結果より、製造例5の化合物のような基質を用いても実施例2と同様に酵素活性が測定可能である。従って、本発明の方法に係るランタノイド錯体を用いることにより酵素活性を検出することが可能である。又、酵素に拮抗作用を有する候補化合物をスクリーニングする場合にも有用である。
【0236】
【発明の効果】
本発明を採用することにより、抗体やラジオアイソトープを用いることなく、より高感度で簡易に酵素活性を測定できることとなった。更に、この方法をハイスループットスクリーニング方法に適用することにより、従来のバイオアッセイ方法に比べて少ないサンプル量で、より高感度で候補化合物をスクリーニングすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】阻害剤濃度(X軸)と発光強度である発光アカウント(Y軸)の関係を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬等の分野で有用な酵素活性の測定方法及びそれを用いた該酵素の阻害活性を有する候補化合物のスクリーニング方法に関し、より詳しくは、ランタノイド錯体の配位子交換に伴う発光強度の変化を測定することにより酵素活性の有無の測定を行う方法、及びこの方法を候補化合物の存在下で行い、発光強度の変化により候補化合物が酵素活性を阻害するか否かを評価する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ランタノイドイオンは、β−ジケトン、クラウンエーテル、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等と6〜8配位座が占有された錯体を形成する。特に、ランタノイドイオンとクラウンエーテル又はジエチレントリアミンペンタ酢酸とは、1:1の等モルにより、8配位座が占有された錯体(以下、「8配座錯体」という。又、1:1の等モルにより7配位座が占有された錯体を、「7配座錯体」という。)を形成する。これらのランタノイド錯体は、化学的に安定構造を有し、発光特性を有することが知られており、各種発光材料としての開発が行われている。又、最近ではこの発光特性を応用して、これらの錯体を酵素活性測定手段に用いる技術も検討されている。
【0003】
近年、コンビナトリアルケミストリーの手法で数多くの化合物が短期間で合成できる環境が整い、それにともなって合成した数多くの化合物を素早くバイオアッセイする方法(例えばハイ スループット スクリーニング)も種々検討されている。従来は、高感度に検出する手法としてラジオイムノアッセイ(以下、「RI」という。)法が用いられてきた。しかしながら、RI法は、操作性の問題、副生するラジオアイソトープ廃液の処理の問題等を有し、更にはその価格等の点で問題を有していた。そこで、ランタノイド錯体の発光を用いた時間分解蛍光測定法が注目されてきている。
【0004】
ランタノイド錯体を用いた酵素活性の測定方法は、種々のものが開示されている。例えば、特開平2−504109号は、ランタノイド錯体を用いた酵素活性の評価方法が開示されている。ここでの酵素活性の評価方法は、酵素反応により生じた生成物が配位子となって共存するランタノイドイオンとともに溶液中でランタノイド錯体を形成し、その結果生じる発光を測定するものである(特許文献1)。
【0005】
又、特表平10−505820号には、キノロンを増感剤として用いたランタノイド錯体、これを用いた検出ラベル、及びこの検出ラベルを適用した同一分子上の2つの距離を測定する方法が開示されている(特許文献2)。しかしながら特表平10−505820号の方法についても溶液中で初めてランタノイド錯体を形成するものであり、又、この方法は検出ラベルとしてのランタノイド錯体についてのものであり、本発明のような酵素活性の測定を目的とするものではない。
【0006】
更に、国際公開公報WO91/8490号では、本発明に係るランタノイド錯体と類似の錯体を酵素活性の測定に使用している。しかしながら、WO91/8490号に記載の錯体は、酵素の特的基質の活性部位とランタノイド錯体とがスペーサーを介せずに直接結合しており、酵素反応することにより新たに錯体が形成され発光が起きるものであり、本発明の配位子交換をメカニズムとする発光とは基本的に異なるものである(特許文献3)。
【0007】
又、ランタノイド錯体を用いたTRACE法(time resolved amplified cryptate emmision)では、検出にEu−クリプテートとアロフィコシアニン(allophycocyanin)の2種類の発光物質により標識された化合物を用いる。標識体として生成物に対する特異的抗体や受容体、アビジン等のタンパク質が選択される。この方法では、特異的抗体や受容体等のタンパク質をEu−クリプテートにより高分子を標識する際に、時間、手間、コスト等がかかる上、これらのタンパク質はロットの違いにより活性が異なることがあり、再現性の面で問題を生じることもある。(例えば非特許文献1)
【0008】
【特許文献1】
特開平2−504109号
【特許文献2】
特表平10−505820号
【特許文献3】
国際公開第91/8490号パンフレット
【非特許文献1】
J. Biomolecular Screening、3巻、91頁、1998年
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、抗体やRIを用いることなく、簡易に、より安定した酵素活性検出方法を提供するとともに、従来公知のバイオアッセイ方法に比べて少ないサンプル量で、より高感度でバイオアッセイできる方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
ランタノイド錯体に励起光を照射すると、ランタノイド錯体中の芳香族炭化水素又は複素環からなる光増感部位が励起され、励起エネルギーがランタノイドイオンに移動し、ランタノイドイオンが発光する。この際、ランタノイドイオンに水分子が配位していると、ランタノイドイオンの励起エネルギーは水分子のO−H伸縮振動を介して消失し、発光強度が低下するか又は発光しないことが知られている(Acc.Chem.Res.、14巻、384頁、1981年)。
【0011】
一方、従来公知の発光性のランタノイド錯体であって、ランタノイドと配位子とが1:1(モル)の錯体を形成するものは、いずれも該錯体の8つ以上の配位座が占有された状態である。このことは、「ランタノイドと配位子とが1:1(モル)の錯体を形成した場合、ランタノイドイオンが発光するのは、該錯体の8つ以上の配位座が水分子以外のエネルギーが消失しない配位子で占有された錯体である必要がある」ことを示唆している。
【0012】
そこで発明者らは、ランタノイドイオンに配位子及び水分子が配位して8つ以上の配位座が占有されている錯体において、配位している水分子を水分子以外の他の配位原子と交換して配位させ、ランタノイドイオンに配位している水分子を除去できれば、このランタノイド錯体中のランタノイドイオンが発光するのではないかと考えた。よって、錯体が酵素反応の前後でランタノイドイオンへの配位能が変化する基を有する場合、酵素反応前に錯体が7配座が占有された状態であっても、或いは7配座が占有された錯体に更に水が配位して8配座となっている状態であっても、酵素反応で生じた配位子が、水と比べてランタノイドイオンへの配位力が強く、配位している水分子に代わってランタノイドイオンに配位して8配位座を形成できるようになれば、新たに得られた8配座の錯体が発光することが想定される。
【0013】
発明者らは、この想定をもとに種々研究を行い、構造中に酵素の特異的基質を有し、そして水分子が配位した特定構造のランタノイド錯体に対して酵素反応を施すことにより、該ランタノイド錯体の分子内で配位子交換が起こり、ランタノイドイオンの発光強度が増加することを見いだした。引き続く研究でこの技術は前記酵素の活性を阻害する化合物のスクリーニングにも適用できることを見いだし、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、時間分解蛍光測定法による酵素活性の検出方法であって、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成するランタノイド錯体(A1)であって、
該錯体を構成する配位子(B1)は、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものであり、
又、ランタノイド錯体(A1)は、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しておらず、
f)酵素反応により変換された基(r2)が生じると、変換された基(r2)がランタノイドイオンへ配位してランタノイド錯体(A3)となり、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、ランタノイド錯体(A1)を用い、
2)ランタノイド錯体(A1)は、更に水分子がランタノイドイオンに配位して、ランタノイド錯体(A1b)となっていてもよい状態で、
3)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、ランタノイド錯体(A1又はA1b)に対象となる酵素を反応させ、
4)基質となり得る基(r1)は、酵素により変換されると、変換された基(r2)を有するランタノイド錯体(A2又はA2b)を生じ、
5)変換された基(r2)は、ランタノイド錯体(A2)の分子内でランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A3)となるか、又はランタノイド錯体(A2b)に水分子と交換して配位子置換してランタノイド錯体(A3)となり、
6)励起光の照射によりランタノイド錯体(A3)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定する、各工程を包含する酵素活性の検出方法、に関する。
【0015】
又、本発明は、上記検出方法を用いた、酵素に阻害活性を有する候補化合物のスクリーニング方法に関する。
【0016】
更に本発明は、一般式(I−1)
【化10】
[式中、Wは、下記の群
【化11】
(式中、Kはリジンを、Aはアラニンを、Pはプロリンを、Lはロイシンを、Sはセリンを表し、Rは、低級アルキル基を表す。)から選択される置換基を表し、Arは、芳香族炭素環基又は芳香族複素環基を表す。]で表される化合物を提供する。
【0017】
更に、本発明は、一般式(1−1)で表される化合物とランタノイドイオンとからなるランタノイド錯体を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる時間分解蛍光測定法(time−resolved fluorometry)とは、以下の方法である。
【0019】
Eu、Nd等を代表とするランタノイド(Lanthanides)原子は、特定の条件下で発光を発し、例えば現在よく用いられているEu錯体は励起光340nmを受けて615nmの発光を発する。励起光と発光との波長の差(ストークスシフト)が大きく、発光が長波長であることから、この発光は励起光の影響を受けにくく、また発光寿命が非常に長いため発光測定を励起光の照射後一定の時間が経ってから行うことが可能であり、この際共存物質の発光が消滅するという利点を有す。この方法を時間分解蛍光測定法という。
【0020】
本発明において、「酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件」とは、対象とする酵素がその特異的基質と反応できる条件、即ち、pH、温度、イオン強度を、該酵素が反応できるように調整し、又、活性発現に必要な補酵素を適切な量含み、該酵素に特異的に反応する基質を適切な濃度に設定した条件のことであり、個々の酵素の種類によって異なる。
【0021】
本発明において、「酵素反応の進行を抑制する条件」とは、対象とする酵素がその特異的基質と反応できない条件であれば特に限定されないが、例えば、「酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件」に、酵素反応を止めるストップバッファーを添加することにより生じさせることができる。ストップバッファーとしては、例えば、酵素を失活させ、且つ、発光特性に影響を及ぼさない化合物溶液、例えば、界面活性剤溶液を用いることが可能であり、具体的には、0.01〜0.1重量%のトリトン溶液、0.01〜0.1重量%のトゥイーン溶液等が例示される。
【0022】
本発明が対象とする酵素としては、例えばリン酸化酵素(OH基からリン酸エステルへ変換)、リン酸エステル分解酵素(リン酸エステルを分解してOH基に変換)、硫酸エステル化酵素(OH基から硫酸エステルへ変換)、硫酸エステル分解酵素(硫酸エステルを分解してOH基に変換)、カルボキシエステル化酵素(カルボン酸からカルボン酸エステル、又はOH基からカルボン酸エステルに変換)、エステル分解酵素(カルボン酸エステルからカルボン酸に変換)、アミド化酵素(カルボキシル基からアミド基、アミノ基からアミド基に変換)、アミド基分解酵素(アミド基からカルボキシル基又はアミノ基に変換)、アミノ化酵素(アミノ基の生成)、酸化酵素(OH基の消失)、カルボキシル化酵素(カルボン酸の生成)、脱炭酸酵素(カルボン酸の消失)、還元酵素(OH基、SH基の生成)等が挙げられる。
【0023】
なかでも酵素反応の前後で発光強度の変化が大きいものである、リン酸化酵素、リン酸エステル分解酵素、硫酸エステル化酵素、硫酸エステル分解酵素、カルボキシル化酵素(カルボン酸の生成)、アミド化酵素、アミド加水分解酵素、脱炭酸酵素(カルボン酸の消失)等が好ましく、より好ましくはリン酸化酵素、リン酸エステル分解酵素、硫酸エステル化酵素、硫酸エステル分解酵素、アミド加水分解酵素(カルボン酸の生成)、脱炭酸酵素(カルボン酸の消失)等が推奨される。
【0024】
本発明において「候補化合物」とは、酵素の阻害薬又は作動薬となり得る候補化合物のことであるが、ここでは特に特定の医薬品を開発する場合の化合物ライブラリーのなかから阻害活性を有する化合物をスクリーニング(一次スクリーニング)する際の、対象とする化合物ライブラリーに含まれる化合物群のことであり、本発明のスクリーニング方法は、この一次スクリーニングに用いることが可能である。この候補化合物は、更にインビボ(in vivo)で阻害するか否かを確認する試験(二次スクリーニング)を行うことができる。
【0025】
本発明においてランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成することが可能な配位子とは、配位子の分子内に7又は8個のランタノイドイオンに配位可能な置換基を有し、これらの7又は8個の配位可能な置換基が1つのランタノイドイオンに配位することにより7又は8の配位座が占有された錯体を形成する配位子をいう。又、ランタノイドイオンに配位可能な置換基とは、カルボキシル基(COOH)、カルボキシエステル(COOR:Rは、低級アルキル基を表す。)、アミノ基(一級、二級、三級)、水酸基、カルボニル基、アミド基由来のCO基、SH基、チオカルボニル基等が例示される。
【0026】
本発明において、「光増感部位」とは、励起三重項状態のエネルギー準位がランタノイドイオンの共鳴準位より高い性質を有するものであれば特に限定されない。即ち、励起光を照射された配位子のうち適当な電子軌道(π)を有する光増感部位がエネルギーを吸収し、一重項基底状態から第一の励起一重項状態における振動レベルにまで励起される。次いで、光増感部位内において項間交差による励起一重項状態から三重項状態にエネルギー遷移が行われる。この励起三重項状態のエネルギーが、同一分子内に存在するランタノイドイオンに遷移されランタノイドイオンが励起される。従って、光増感部位としては、この条件を満たす芳香族炭素環基又は芳香族複素環基等の置換基であれば差し支えなく、具体的には芳香族炭素環基としてフェニル基、ナフチル基が例示され、芳香族複素環基としてピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、クマリニル基等が例示される。
【0027】
本発明において、「低級アルキル基」としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基等が例示される。
【0028】
本発明において「酵素の特異的基質となり得る基(r1)」、及び酵素により「変換された基(r2)」としては、いずれも本発明が対象とする酵素に親和性を有するものであり、「酵素の特異的基質となり得る基(r1)」が該酵素により変換されて「変換された基(r2)」となり、そのようなものとしては、(r1/r2)の順に、
・−OH/−O−P(=O)−(OH)2、
・−OH/−O−S(=O)2−OH、
・−COOR/COOH、
・−CONHR/−COOH、
・−C(=O)−R’/−C(OH)−R’、
・−CH3/−CH2−OH、
・−CH3/−COOH、等が例示される。ここで、R及びR’は、低級アルキル基を表す。以下において特に記さない限り同様である。
【0029】
又、「酵素の特異的基質となり得る基(r3)」、及び酵素により「変換された基(r4)」としては、いずれも本発明が対象とする酵素に親和性を有するものであり、「酵素の特異的基質となり得る基(r3)」が該酵素により変換されて「変換された基(r4)」となり、そのようなものとしては、(r3/r4)の順に
・−O−P(=O)−(OH)2/−OH、
・−O−S(=O)2−OH/−OH、
・−COOH/−COOR、
・−COOH/−CONHR、
・−OH/−OCOR、等が例示される。
【0030】
本発明において「スペーサー」としては、配位子と酵素の特異的基質となり得る基とを結合する役割を有し、ランタノイドイオンへの配位能のないものであれば差し支えなく、例えば直鎖状アルキレン基、直鎖状オキシアルキレン基、フェニル環、ナフチル環等の芳香環、又はシクロペンチル環、シクロヘキシル環等の脂環族環を有するアルキレン基等が例示される。
【0031】
ランタノイド錯体(A1)及び配位子(B1)
本発明で用いられるランタノイド錯体(A1)としては、ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成するランタノイド錯体であって、該錯体を構成する配位子(B1)は、分子内に
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものである。
【0032】
又、ランタノイド錯体(A1)は、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前は好ましくはランタノイドイオンに配位しておらず、
f)酵素反応により変換された基(r2)が生じると、変換された基(r2)がランタノイドイオンへ配位してランタノイド錯体(A3)となり、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、ランタノイド錯体(A1)であれば特に限定されない。
【0033】
このランタノイド錯体(A1)は、前記酵素を用いて酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で該酵素を用いた酵素反応を行うことにより、ランタノイド錯体(A2)へと変換される。この際に、特異的基質となり得る基(r1)は、酵素により変換されて変換された基(r2)となる。
【0034】
本発明で用いられるランタノイド錯体(A1)は、特異的基質となり得る基(r1)がランタノイドイオンに配位していない7配座以下の、より好ましくは7配座のランタノイド錯体であり、例えば配位子(B1)とランタノイドイオンとを、好ましくは溶媒中で混合することにより得ることができる。
【0035】
又、配位子(B1)は、ランタノイドイオンに配位可能な置換基として、カルボキシル基を2個以上7個以下含むことが推奨される。
【0036】
配位子(B1)においてランタノイドイオンに配位可能な置換基としてカルボキシル基等の酸性官能基を選ぶことにより、ランタノイドイオンと配位子との配位力がより高くなるため、酵素活性の検出感度を顕著に上昇させると考えられる。
【0037】
より具体的な配位子(B1)としては、例えば一般式[I]から[V]で表される化合物からなる群から選択されるものが例示される。
【化12】
[式中、Arは、芳香族炭素環基又は芳香族複素環基を表し、
X1は、水素原子又はArを表し、
Lは、−CONH−又は−NHCO−を表し、
Dは、スペーサーを表し、
Eは、酵素の特異的基質となり得る基を含む基を表し、
R1及びR2は、水素原子を表すか、又はR1、R2及びY1がいっしょになってそれらが結合する炭素原子とともにベンゼン環を形成し、
R3、R4、R5、R6及びR7は、各々同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。但し、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つ以上が同時に炭素数1〜6のアルキル基となることはなく、且つR3、R4、R5、R6及びR7が同時に水素原子となることもない。
Y1は、式(J−1)、(J−2)及び(J−3)
【化13】
からなる群から選択される基を表すか、又はY1、R1及びR2がいっしょになってそれらが結合する炭素原子とともにベンゼン環を形成する。
Z1、Z2、Z3及びZ4は、同一又は異なって、−OH又は−NHArを表す。但し、Z1からZ4のうち、2つ以上が同時に−NHArとなることはなく、且つZ1、Z2、Z3及びZ4が同時に−OHとなることもない。
Gは、式(K−1)、(K−2)及び(K−3)
【化14】
からなる群から選択される基を表す。]
【0038】
式中、Dはスペーサーを表し、例えば、
1)−(CH2)m−、[m=2〜10]、
2)−(CH2−CH2−O−)m−、[m=2〜10]、
3)−(CH(CH3)−CH2−O)m−、[m=2〜10]、
4)−(CH2)m−Ph−、[m=1〜10]、
5)−(CH2)m−cyclohexyl−、[m=1〜10]等が例示され、なかでも、
・−(CH2)m−、[m=2〜10]、
・−(CH2)m−Ph−、[m=1〜10]等が好ましく、特に
・−(CH2)m−、[m=1〜6]、又は
・−(CH2)m−Ph−、[m=1〜6]が推奨される。
【0039】
本発明の方法におけるスペーサーの存在は非常に重要である。スペーサーを介せず配位子に酵素の特異的基質となり得る基が直接結合している場合、特異的基質となり得る基が酵素の活性部位に接近しににく、更には酵素反応後の特異的基質となり得る基が分子内でランタノイドイオンに配位しにくく、分子内で配位子交換を起こすことが困難となる。
【0040】
尚、本発明に係る配位子は、分子間の配位子交換により複数の配位子により8つ以上の配位座が占有されたランタノイド錯体を形成しても発光するが、測定に必要な発光強度を得るためには配位子の濃度を高く設定する必要がある。結果的に分子間での配位子交換では、酵素の検出感度が大幅に低下してしまう。
【0041】
一般式(I)から(V)においてArは光増感部として作用し、具体的なArとしては、芳香族炭素環基又は芳香族複素環基が例示され、例えば芳香族炭素環基としては、フェニル基、ナフチル基等が例示され、芳香族複素環基としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、クマリニル基等が例示され、これらの置換基は、低級アルキル基、低級アルキルカルボニル基、オキソ基、アミノ基、低級アルキルオキシ基、低級アルキルオキシカルボニル基、低級アルキルアミノ基、オキソ基等の置換基を有していてもよい。
【0042】
Eとしては、酵素の特異的基質となり得る基(r1)を含む基を表し、例えば1又は2以上のアミノ酸残基、若しくは1又は2以上の糖残基等が例示され、又、特異的基質となり得る基(r1)としては、例えば、
1)−OH、
2)−COOR、
3)−CONHR’、
4)−CH3、等が例示される。
【0043】
具体的なEとしては、
1)OH含有基として
・セリンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・スレオニンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・チロシンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・アミノ糖含有ペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)
(これらのペプチド中、OH含有アミノ酸の配列位置は限定されない)、
・単糖(グルコース、フルクトース、リボース、デオキシリボース、)を含有する基、
・N末端側から−KAPLSPKKAK、
・N末端側から−KAPLS、等が例示される。
ここでアミノ酸の略号は、K:リジン、A:アラニン、P:プロリン、L:ロイシン、S:セリン、を表す。
【0044】
2)カルボキシルエステル基含有基として、
・アスパラギン酸エステルを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・グルタミン酸エステルを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・γ−アミノ酪酸エステルを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・γ−アミノ酪酸エステルを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、等が例示される。尚、エステル基を構成するアルコール成分としては、特に限定されず、例えば炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基等が例示される。
【0045】
3)アミド基含有基としては、
・アスパラギンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・グルタミンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・アスパラギン酸アミド含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・グルタミン酸アミドを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・ε−アミド性のリジンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・アルギニンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、等が例示される。
【0046】
4)メチル基含有基として
・アラニン含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、等が例示される。
5)その他の基
・メチオニンを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)、
・システインを含有するペプチド(アミノ酸配列で1〜10個程度)等が例示される。
【0047】
一般式[I]から[V]で表される化合物において、より具体的には以下の構造のものが例示される。これらの化合物は、従来公知のものを誘導体化することりより調製可能であり、例えば、後述する製造例又は製造例と公知技術とを組み合わせた方法等により製造できる。
【0048】
a)一般式[I]で表される化合物
一般式[I]で表される化合物としてより具体的には、一般式(I−1)で表される化合物が例示される。
【0049】
【化15】
アミノ酸の略号は、K:リジン、A:アラニン、P:プロリン、L:ロイシン、S:セリン、を表す。又、Rは、低級アルキル基を表し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が推奨される。
【0050】
一般式(I−1)で表される化合物において、Arとして好ましくはチエニル基、キノリニル基、クマリニル基、1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル等が推奨される。
【0051】
一般式(I)で表される化合物は、例えばJ.Am.Chem.Soc.、117巻、8132〜8138頁(1995年)を参考に容易に製造可能であるが、具体的な製造方法を製造法1に示す。
製造法1
【化16】
[式中、Raは、ベンジル基、メトキシベンジル基等の置換基を有していてもよい低級アルキル基を表し、Xは、ハロゲン原子等の脱離基を表し、Epは、酵素の特異的基質となり得る基を含む基であって、必要に応じて酵素の特異的基質となり得る基が保護基により保護されたものを表し、Ar、D及びEは、前記に同じである。]
【0052】
(工程1−a)
本工程は、化合物1と化合物2とを反応させて、化合物3を製造する方法である。化合物2としては、2−ハロゲン化酢酸アルキルエステルが例示され、該アルキル基としては、芳香環を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、1,1−ジメチルエチル基、ベンジル基、置換ベンジル基等が挙げられ、特に1,1−ジメチルエチルが推奨される。Xは、ハロゲンを表し、好ましくはブロム原子が推奨される。用いる化合物2の量としては、1当量の化合物1に対し通常1.8〜2.0当量が例示される。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(以下、「THF」という。)、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という。)、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」という。)等、又はそれらの混合溶媒が例示され、なかでもジクロロメタンが推奨される。かくして得られる化合物3は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、結晶化、溶媒抽出、再沈殿、クロマトグラフィー等により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0053】
(工程1−b)
本工程は、塩基の存在下、化合物3と化合物4とを反応させ、化合物5を製造する方法である。用いる化合物3の量としては、1当量の化合物4に対し1.0〜2.0当量が例示される。又、塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が例示され、なかでも炭酸カリウムが推奨され、その使用量としては1当量の化合物4に対し1.0〜1.5当量が例示される。反応溶媒としては、THF、ジクロロメタン、DMF、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、DMSO等、又はそれらの混合溶媒が例示され、特にDMFが推奨される。かくして得られる化合物5は、公知の分離精製手段、例えば濃縮、減圧濃縮、結晶化、溶媒抽出、再沈殿、クロマトグラフィー等により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0054】
尚、化合物4は、製造法Aにより調製することができる。
製造法A
【化17】
[式中、X’は、脱離基を表す。Xは、ハロゲンを表す。]
【0055】
この方法は、塩基の存在下、芳香族アミン(Ar−NH2)と2位に脱離基(X’)を持つアセチルハライドとを反応させて化合物4を製造する方法である。ここで、X’は、ハロゲン原子等の脱離基を表す。アセチルハライドの使用量としては、芳香族アミン1当量に対して通常1〜2当量が例示される。塩基としては、例えばn−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド等が例示され、なかでもn−ブチルリチウムが推奨される。塩基の使用量としては、1当量の芳香族アミンに対し1〜3当量が例示される。反応溶媒としては、例えばTHF、DMF、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、DMSO等、又はそれらの混合溶媒が例示され、特にTHFが推奨される。
【0056】
(工程1−c)
本工程は、塩基の存在下、上記工程1−bで得られた化合物5と下記の化合物6とを反応させたのち、脱保護を行って一般式[I]で表される化合物を製造する方法である。化合物6においてX’’は脱離基を示し、例えば水酸基、ハロゲン原子等が例示される。具体的な塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が例示され、特に炭酸カリウムが推奨される。又、塩基の使用量としては、特に限定されず、例えば1当量の化合物5に対して2〜10当量が例示され、化合物6の使用量としては、1当量の化合物5に対し1.5〜5当量が例示される。又、反応溶媒としては、THF、DMF、DMSO、ジメトキシエタン等が例示される。反応時間は、通常1〜24時間が例示され、又、反応温度は、室温から120℃が例示される。
【0057】
一方、脱保護は、2,2,2−トリフルオロ酢酸、塩酸等の強酸を用いて行うことが可能であり、なかでも2,2,2−トリフルオロ酢酸が推奨される。脱保護における反応時間は、通常1〜24時間が例示され、又、反応温度は、室温から80℃が例示される。得られた一般式[I]で表される化合物は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、結晶化、溶媒抽出、再沈殿、クロマトグラフィー等により単離精製してもよい。
【0058】
尚、化合物6は、製造法Bにより調製することができる。
製造法B
【化18】
[式中、X’’、D及びEpは、前記に同じである。]
本工程は、カルボン酸(X−D−COOH)と、アミン(NH2−Ep)との反応であり、文献記載の方法(例えば、ペプチド合成の基礎と実験、泉屋信夫他、丸善社出版、1983年、Comprehensive Organic Synthesis、Vol.6、Pergamon Press社出版、1991年)、それに準じた方法又はこれらと従来公知の方法とを組み合わせることにより行うことができる。
【0059】
即ち、アミド化は、当業者に周知の縮合剤を用いて行うか、或いは当業者に利用可能なエステル活性化方法、混合酸無水物法、酸クロリド法、カルボジイミド法等により行うことができる。このようなアミド形成試薬としては、例えば、o−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(以下、「HATU」という。)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、「DCC」という。)、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリルエチル)カルボジイミド、カルボニルジイミダゾール(以下、「CDI」という。)、ジフェニルリン酸アジド、塩化2−クロロ−1,3−ジメチル−2−イミダゾリウム、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(以下、「PyBop」という。)、ブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(以下、「PyBrop」という。)、シアノリン酸ジエチル、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(以下「WSC・HCl」ということがある。)等が挙げられる。前記カルボン酸又はその反応性誘導体の使用量としては、使用する化合物又は溶媒の種類、その他の反応条件により異なるが、アミン1当量に対して0.5〜1当量が例示され、好ましくは0.5〜0.8当量が推奨される。また、アミド形成試薬の使用量としては、使用する化合物及び溶媒の種類、その他の反応条件により異なるが、カルボン酸又はその反応性誘導体1当量に対して1〜5当量が例示され、好ましくは1〜3当量が推奨される。ここで反応性誘導体としては、有機化学の分野において通常用いられる活性エステル誘導体、活性アミド誘導体等が挙げられる。反応溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、THF、ジエチルエーテル、DMF、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、トルエン等が挙げられる。反応時間としては、1〜12時間が例示される。かくして得られる化合物6は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、結晶化、溶媒抽出、再沈殿、クロマトグラフィー等により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0060】
一方、一般式[I]で表される化合物は、固相反応を用いることによる製造法2によっても製造することができる。
【0061】
製造法2
【化19】
[式中、R”は、芳香環を有していてもよい低級アルキル基を表し、SRは固相担体を表し、Ar、D、Ra、X及びEpは、前記に同じである。]
【0062】
(工程2−a)
本工程は、塩基の存在下、化合物5と末端に脱離基を持つ脂肪族又は芳香族カルボン酸エステルである化合物7を反応させ、続いてエステルを加水分解することによって化合物8を製造する方法である。用いられる塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が例示され、なかでも炭酸ナトリウムが推奨される。化合物7の使用量としては、1当量の化合物5に対して、通常1.5〜50当量が例示される。反応溶媒としては、DMF、THF、トルエン、ベンゼン等、又はこれらの混合溶媒が例示される。反応時間は、通常1〜24時間が例示され、又、反応温度は、通常、室温から120℃が例示される。
【0063】
又、エステルの加水分解は、塩基を用いて行うことが可能であり、塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水溶液が例示され、なかでも水酸化ナトリウム水溶液が推奨される。反応溶媒としては、THF、メタノール、エタノール等、又はこれらの混合溶媒が例示され、又、反応時間としては、1〜24時間が例示される。
【0064】
(工程2−b)
本工程は、化合物8と、酵素の特異的基質の反応部位を含む基Eが担持された固相担体9とを反応させて、化合物10を製造する方法である。
【0065】
具体的には、本反応は、前記のアミド形成反応により行われ、なかでもカルボジイミド法における塩化2−クロロ−1,3−ジメチル−2−イミダゾリウムが推奨される。
【0066】
化合物8の使用量としては、用いられる化合物又は溶媒の種類、その他の反応条件により異なるが、1当量の固相担体9に対して、通常1.5〜5当量が例示され、好ましくは2〜5当量が推奨される。又、アミド形成試薬の使用量としては、用いられる化合物又は溶媒の種類、その他の反応条件により異なるが、1当量の固相担体9に対して、1.1〜5当量が例示され、好ましくは2〜5当量が推奨される。
【0067】
反応溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、THF、ジエチルエーテル、DMF、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、トルエン等が例示され、反応時間としては、通常1〜20時間が例示される。得られた固相担体9は、例えば、DMF、メタノール、エタノール、THF、塩化メチレン、クロロホルム等、又はこれらの混合溶媒で洗浄することにより過剰な試薬等を除去することができる。
【0068】
尚、固相担体としては、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂等が例示される。
【0069】
(工程2−c)
本工程は、化合物10を酸で処理して、生成物を固相担体から遊離させると同時に、Ep中に含まれる保護基を脱保護をさせることによって、一般式[I]で表される化合物を製造する方法である。
【0070】
酸で処理する方法としては、例えば化合物10を有機酸含有不活性溶媒中で攪拌することによって行う。当該有機酸としては、例えばトリフルオロ酢酸(以下、「TFA」という。)等が例示され、また、当該不活性溶媒としては、水、塩化メチレン等が例示される。不活性溶媒中の有機酸の容積比率としては、通常5〜100%が例示され、好ましくは90〜95%が推奨される。更に、脱保護を完結させるために、40〜70℃にて0.5〜2時間、好ましくは1〜2時間撹拌してもよい。
【0071】
b)一般式[II]で表される化合物
一般式[II]で表される化合物は、例えば下記のものが例示され、米国特許第5859215号を参考に容易に製造可能である。
【化20】
[式中、Ar、B、D及びEは、前記に同じである。]
【0072】
c)一般式[III]で表される化合物
一般式[III]で表される化合物は、例えば以下のものが例示され、特表昭64−500458号、特表平10−505820号を参考に製造可能である。
【化21】
[式中、Ar、B、D及びEは、前記に同じである。]
【0073】
d)一般式[IV]で表される化合物
一般式[IV]で表される化合物は、例えば特表昭64−500458号、WO91/8490号、WO87/07955号、ACCOUNT of CHEMICAL RESEACH、17巻、202頁(1984年)等を参考に容易に製造可能である。具体的な化合物としては、例えば以下のものが例示される。
【化22】
[式中、Ar、B、D及びEは、前記に同じである。]
【0074】
f)一般式[V]で表される化合物
一般式[V]で表される化合物としては、例えば以下のものが例示される。
【化23】
[式中、R3、R4、R5、R6、R7、Ar、B、D及びEは、前記に同じである。]
【0075】
ランタノイド錯体(A1)の製造方法
本発明で用いるランタノイド錯体(A1)は、分子内に7つ以下の配位可能な置換基を有する化合物、例えば一般式[I]から[V]で表される化合物とランタノイドイオンとを混合して調製することができる。このランタノイドイオンは、ランタノイド金属酸化物、ランタノイド金属水酸化物、ランタノイド金属アルコキシド、ランタノイド金属アミド及びランタノイド金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のランタノイド金属化合物由来のものであり、例えば一般式[I]から[V]で表される化合物とランタノイド金属化合物とを溶媒中で混合することにより目的とする錯体が得られる。
【0076】
本発明で用いるランタノイド錯体(A1)の具体的な製造方法は以下の通りである。即ち、一般式[I]から[V]で表される化合物を溶媒に溶かし、ランタノイド金属化合物の水溶液(溶解する程度の水)又は粉末を加え、0〜100℃の温度下、1時間〜100時間程度撹拌する。次いで得られた生成物を晶析、液−液抽出、又はHPLC等の精製手段を行うことによりランタノイド錯体を得ることができる。更に、クロロホルム、メタノール等の溶媒を用いて再結晶を行っても差し支えない。
【0077】
本発明に用いるランタノイド金属化合物としては、ランタノイド金属酸化物、ランタノイド金属塩等が例示される。ランタノイド金属酸化物としては、3価であるM2O3(Mはランタノイド原子を示す。)が例示される。ランタノイド金属水酸化物としてはM(OH)3が例示され;ランタノイド金属塩としてはMn+(Z)n(Zは、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン等のモノカルボン酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン等のジカルボン酸イオン、クエン酸等のトリカルボン酸イオン、リン酸イオン等の陰イオンが例示される。
【0078】
本発明に用いるランタノイドイオンとしては、Eu3+、Tm3+、Er3+、Nd3+、Tm3+、Yb3+、Ce3+、Sm3+等が例示され、好ましくはEu3+、Tb3+、Sm3+、Dy3+等が推奨される。特に、これらのランタノイドイオンは、長寿命の発光が得られる点で優れている。
【0079】
ランタノイド錯体を調製するに際し用いられるランタノイド金属化合物の量としては、一般式[I]から[V]で表される化合物1当量に対し1.05〜10当量が例示され、好ましくは1.05〜2当量が推奨される。
【0080】
本発明のランタノイド錯体を製造するに際し用いる溶媒としては、特に限定されず、いずれの溶媒でも用いることが可能であり、具体的にはプロトン性溶媒、非プロトン性溶媒が挙げられる。プロトン性溶媒としては、水(例えば0.1Mトリメチルアンモニウムアセテート溶液)、メタノール、エタノール等のアルコール性溶媒等が例示され、又、非プロトン性溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系溶媒、DMSO、DMF等の1種若しくは2種以上が例示される。これらの溶媒の中でもアセトン、0.1Mトリメチルアンモニウムアセテート水溶液等が推奨される。
【0081】
具体的なランタノイド錯体(A1)としては、例えば一般式(I−1)
【化24】
[式中、W及びArは、前記に同じである。]で表される化合物と、ランタノイドイオンとからなる錯体が例示される。
【0082】
ランタノイドイオンとして好ましくは、Eu3+、Tb3+、Sm3+、Dy3+等が推奨され、特にEu3+が挙げられる。
【0083】
上記のランタノイド錯体(A1)は、通常、7配座以下の状態であるが、水分子が1分子配位して8配座の状態のランタノイド錯体(A1b)として、又は該錯体の水和物(A1b)として単離されることがある。一方、錯体の形態によっては水分子が配位していない形で単離される場合もあるが、水溶液中では水が配位して8〜9の配位座が占有されたランタノイド錯体(A1b)を形成する。7配座のランタノイド錯体[以下、一般式(I−2)で表す]とランタノイド錯体(A1b)との関係を次式に示す。
【0084】
【化25】
[式中、W及びArは、前記に同じである。]
【0085】
水が配位したランタノイド錯体(A1b)に励起光を照射すると、(例えばEu錯体であれば340nmの光を照射すると)、ランタノイドイオンは励起されるが、励起エネルギーが、配位している水分子のO−H振動により熱エネルギーとして消失してしまう。従って、励起エネルギーを発光エネルギーとすることができず、発光強度がほとんどないか、非常に弱いものである。
【0086】
尚、単離したランタノイド錯体が水を含有するかどうかについては、例えば示差熱分析(DSC)、発光寿命等により測定することが可能である。
【0087】
ランタノイド錯体(A1)からランタノイド錯体(A3)への酵素反応
酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、7配座のランタノイド錯体(A1)又は更に水分子が配位したランタノイド錯体(A1b)を、本発明が対象とする酵素により酵素反応させると、ランタノイド錯体中の酵素の基質となり得る基(r1)が酵素により変換されて、変換された基(r2)を有するランタノイド錯体(A2)又はその水和物(A2b)が得られる。
【0088】
ランタノイド錯体(A3)において、変換された基(r2)としては、例えば、
・−O−P(=O)−(OH)2、
・−O−S(=O)2−OH、
・−COOH、
・−C(OH)−R’、
・−CH2−OH等が例示される。ここでR’は、炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。
【0089】
酵素反応により得られたランタノイド錯体(A2)又はその水和物(A2b)における変換された基(r2)は、水分子と比べてランタノイドイオンへの配位能が高く、変換された基(r2)がランタノイドイオンに配位して、或いはランタノイド錯体(A2b)に水分子と配位子交換して配位して、8配座のランタノイド錯体(A3)となる。
【0090】
本反応が対象とする酵素として好ましくは、リン酸化酵素、硫酸化酵素、エステル加水分解酵素、アミド分解酵素、エステル化酵素、アミノ化酵素等が例示され、より好ましくはリン酸化酵素、硫酸化酵素、エステル加水分解酵素が推奨される。
【0091】
より好ましい具体的な酵素としては、セリンスレオニンキナーゼ類(CDK2、CDK4、cAPK−α、cGMK−α、PKC類、MAIIK類)、チロシンキナーゼ類(ZAP―70、erbB2、Fyn、Lck、Lyn、EGFレセプター、Src N1、Src N2、Insulinレセプター、H−ras 1/p21)、アセチルトランスフェラーゼ等が例示される。
【0092】
酵素反応は、ランタノイド錯体(A1)又は水和物(A1b)を反応基質として、例えば反応溶液中、所定の酵素の存在下、反応させることにより行う。
【0093】
反応溶媒としては、特に限定されず、通常の酵素反応で用いられている水溶液が使用可能であり、例えばトリス塩酸(Tris−HCl)バッファー、ヘペス(HEPES)バッファー等が例示され、好ましくはこれらのバッファーのpHが中性から弱塩基性(pH=6.8〜8.2)領域のものが推奨される。
【0094】
又、酵素が失活しない範囲内で必要に応じて水と可溶性の有機溶媒を併用することも可能である。そのような有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、DMF、DMSO等が例示される。
【0095】
基質濃度としては、用いる基質の種類、酵素等の種類により異なるが、例えば、0.1〜20μMが例示され、好ましくは0.1〜5μMが推奨される。
【0096】
酵素量としては、用いる酵素、基質等の種類により異なるが、例えば0.01〜10μg/wellが例示され、好ましくは0.1〜1.0μg/well程度が推奨される。尚、1wellは、10〜100μlである。
【0097】
反応温度としては、用いる酵素、基質等の種類により異なるが、例えば20〜70℃が例示され、好ましくは25〜40℃が推奨される。
【0098】
反応時間としては、用いる酵素、基質等の種類により異なるが、例えば10分〜24時間が例示され、好ましくは10分〜2時間が推奨される。
【0099】
更に、酵素の種類に応じて50〜200μMのATP、0.1〜10mMのマグネシウムイオン、0.1〜10mMのEDTA、1〜500mMの塩化ナトリウム、0.1〜50mMの炭酸水素アンモニウム、0.1〜10mMの硫酸ナトリウム、0.1〜10mMのジチオスレイトール(DTT)等を反応系に添加することができる。
【0100】
ここで、先にも述べたように配位子にスペーサー(D)を介せず酵素の特異的基質の反応部位(r1又はr2)が結合している場合、特異的基質の反応部位(r1又はr2)が酵素の活性部位に接近できず、結果として酵素反応の基質となることが困難となる。
【0101】
本発明で酵素の特異的基質の反応部位が酵素反応の前後で構造が変化する場合、ランタノイド錯体(A1)において、酵素反応前の特異的基質の反応部位(r1)は、ランタノイドイオンへの配位力が水分子と同等であるか又は水分子より配位力が弱く、近傍に大量に存在する水分子の配位が優先し、反応部位(r1)は、水分子と錯体交換を起こさない。一方、酵素反応後に生じた活性化された基質(r2)は、ランタノイドイオンへの配位力が水分子と比べて格段に強く、水分子と配位子交換することによりランタノイド錯体(A2b)に配位して、或いはランタノイドイオンに直接配位して、8配座のランタノイド錯体(A3)となり、発光強度に変化を生じ、発光強度が増大する。特に、変換された基(r2)が、負電荷を有する場合、電気的作用により配位することがあり、ランタノイドイオンに対してより強い配位力となる。
【0102】
リン酸化酵素によるリン酸エステル化反応を例にとって、反応式3を用いて錯体の変化の状態を示す。下記の式中、Eu錯体は、7配座錯体であり、リン酸化酵素の特異的基質となり得る基(r1)である水酸基がスペーサーを介して配位子に結合している。更にこの錯体は、水分子が配位した8配座錯体(A1b)となっている。この場合励起光を照射しても発光しないか、発光強度が弱いものである。この錯体に対しリン酸化酵素を反応させると、1級の水酸基がリン酸化された部分を有するランタノイド錯体(A2b)が得られる。リン酸エステルとなった水酸基(r2)は、アニオン性を有しており、又、ランタノイドイオンに対し1級の水酸基より強い結合力を有しており、8配座錯体(A2b)中の水分子と配位子交換することにより、配位子交換が起こった8配座のランタノイド錯体(A3)となる。ランタノイド錯体(A3)は、励起光を照射すると、Euイオンが励起され発光する。
【0103】
【化26】
【0104】
ランタノイド錯体(A4)及び配位子(B3)
本発明で用いられるランタノイド錯体(A4)は、8配座以上の錯体であり、ランタノイドイオンと配位子(B3)とが1:1(モル比)で錯体を形成するものであり、ランタノイドイオンと配位子(B3)とを、好ましくは水溶液中で混合することにより得られる。
【0105】
又、配位子(B3)としては、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r3)を有しており、
c)特異的基質となり得る基(r3)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応により変換されると変換された基(r4)となる、特徴を有するものが使用される。
【0106】
又、ランタノイド錯体(A4)は、
e)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応前は配位に参加しており、
f)変換された基(r4)が生じると、変換された基(r4)がランタノイドイオンから遊離して、7つ以下の配位座が1つの配位子によって占有されたランタノイド錯体(A6)となるものであり、
g)8つ以上の配位座が1つの配位子によって占有されたランタノイド錯体(A4)に励起光を照射すると発光し、
h)7つ以下の配位座が1つの配位子によって占有されたランタノイド錯体(A6)に励起光を照射しても、発光しないか発光が弱いものである、特徴を有する。
【0107】
この8配座以上のランタノイド錯体(A4)は、本発明が対象とする酵素により、前記ランタノイド錯体(A1)を酵素反応することにより得ることができ、又、ランタノイド錯体(A1)を構成し得る配位子(B1)を、本発明が対象とする酵素により酵素反応し、得られた配位子(B4)とランタノイドイオンとを混合することにより得ることができる。
【0108】
ランタノイド錯体(A4)を構成し得る配位子(B3)
本発明で用いる8配座以上のランタノイド錯体(A4)を構成可能な配位子(B3)において光増感部位としては、配位子(B1)に記載のものと同じであり、又、特異的基質となり得る基(r3)及び変換された基(r4)としては、r3/r4の順に
・−O−P(=O)−(OH)2/−OH、
・−O−S(=O)2−OH/−OH、
・−COOH/−COOR、
・−COOH/−CONHR、
・−OH/−OCOR等が例示される。(Rは、低級アルキル基を表す。)
【0109】
又、配位子(B3)は、好ましくはランタノイドイオンに配位可能な置換基としてカルボキシル基を2個以上7個以下含むことが推奨される。
【0110】
具体的な配位子(B3)としては、例えば下記の構造のものが例示される。
【化27】
[式中、Ar、D、Lは、前記に同じである。E’−r3は、Eを表す。r3は、酵素の特異的基質となり得る基を表す。]
【0111】
又、配位子(B3)とランタノイドイオンとから得られるランタノイド錯体(A4)としては、下記の構造のものが例示される。
【0112】
【化28】
【0113】
又、7配座以下のランタノイド錯体を形成し得る配位子(B1)を、本発明が対象とする酵素により酵素反応を行うことにより、8配座以上のランタノイド錯体を形成し得る配位子(B3)とすることができる。一方、7配座以下のランタノイド錯体を形成し得る配位子(B1)の製造方法に準じて別途合成することも可能である。
【0114】
ランタノイド錯体(A4)からランタノイド錯体(A6)への酵素反応
この反応は、反応式3に記載の反応の逆反応に相当する。即ち、ランタノイド錯体(A4)中の酵素の特異的基質となり得る基(r3)は、前記酵素により、又は前記酵素と逆反応を促進させる酵素により反応させることにより、変換された基(r4)となり、その結果、7配座以下のランタノイド錯体(A6)を得る。
【0115】
本反応が対象とする酵素としては、例えば、リン酸エステル加水分解酵素、硫酸エステル加水分解酵素、アミド分解酵素、カルボキシエステル加水分解酵素、酸化酵素、脱炭酸酵素等が例示され、好ましくはリン酸エステル加水分解酵素が推奨され、より好ましい酵素としては、ホスホプロテインホスファターゼ類、ホスホリパーゼ等が例示される。
【0116】
この場合においては、酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、8配座以上のランタノイド錯体(A4)に酵素を反応させると、基質となり得る基(r3)は、酵素により変換されて、変換された基(r4)を有する生成物(A5)を生じる。
【0117】
ランタノイド錯体中の変換された基(r4)は、ランタノイドイオンから直ちにはずれて、7配座以下のランタノイド錯体(A6)となり、更にこの錯体(A6)は、水和物(A6b)となることもある。
【0118】
ここで、基質となり得る基(r3)は、前記置換基(r2)と同一の置換基であり、又、変換された基(r4)は、置換基(r1)と同一の置換基である。又、8配座以上のランタノイド錯体(A4)は、ランタノイド錯体(A3)と同じものであり、7配座以下のランタノイド錯体(A6)は、ランタノイド錯体(A1)と同じものである。
【0119】
基質となり得る基(r3)及び変換された基(r4)として好ましくは、(r3/r4の順に)
・−O−P(=O)−(OH)2/−OH、
・−O−S(=O)2−OH/−OH、
・−COOH/COOR、等が例示される。
【0120】
リン酸エステル分解酵素による加水分解反応における錯体の変化につき反応式4に示す。式中、Eu錯体(A4)は、8配座錯体であり、リン酸エステル分解酵素の特異的基質となり得る基(r3)であるリン酸エステルがスペーサーを介して配位子に結合している。この錯体に励起光を照射すると高い発光強度を示す。この錯体(A4)に対しリン酸エステル分解酵素を反応させると、リン酸エステルが分解して1級の水酸基を有するランタノイド錯体(A5)が得られる。生じた水酸基(r4)は、又、ランタノイドイオンに対し水分子と比べて配位力が同等又は弱く、ランタノイドイオンから遊離して7配座である錯体(A6)となる。ランタノイド錯体(A6)は、励起光を照射しても、8配座の錯体(A4)と比べて発光強度が弱い。
【0121】
【化29】
【0122】
この反応において各ランタノイド錯体(A4、又はA6若しくはA6b)の発光強度を測定すれば、8配座のランタノイド錯体(A4)は発光強度が高く、一方、7配座のランタノイド錯体(A6若しくはA6b)は、発光強度が低いかほとんどなく、発光強度が減少することがわかる。
【0123】
時間分解蛍光測定法による発光強度の測定
本発明では、時間分解蛍光測定法により、発光強度を測定する。前記のごとく、本発明にかかるランタノイド錯体を用いた場合の時間分解蛍光測定は、励起光と発光との波長の差(ストークスシフト)が大きく、発光が長波長であり、励起光の照射後一定時間後に発光を測定することで共存物質の発光を抑制できる利点を有す。
【0124】
本発明においてランタノイド錯体に照射する励起光は、光増感部位を励起させるために照射し、その波長としては、ランタノイドイオンが発光できる波長であれば特に限定されず、320〜360nmの波長が例示でき、特にランタノイドイオンの発光が最大となるような波長、例えば、Euイオンであれば340nm付近の波長が好ましい。一方、励起光により励起されたランタノイドイオンが発光する波長は、ランタノイドイオンの種類及び配位子の種類により異なる。各々の励起波長と発光波長としては、例えば表1に記載のものが例示される。
【0125】
【表1】
【0126】
時間分解蛍光測定に用いる機器としては特に限定されず、例えば、マルチラベルカウンタ:DELFIA 1234FLUOROMETER、ARVOsx(いずれもwallac.velthold社製)、Ultra(テカン社製)、Analyst(LJL Biosystems社製)等が例示される。
【0127】
時間分解蛍光測定における遅延時間(delay time)としては、特に限定されず、例えば50〜250μsecが例示される。
【0128】
時間分解蛍光測定における測定回数(cycle time)としては、特に限定されず、例えば500〜2500回が例示される。
【0129】
酵素活性の検出方法
本発明の7配座以下のランタノイド錯体(A1)から8配座以上のランタノイド錯体(A3)への構造変換は、酵素活性に依存しており、酵素活性が高ければ(A1)から(A3)への変換率は高く、酵素活性が低ければ変換率は低い。一方、7配座以下のランタノイド錯体(A1)から8配座以上のランタノイド錯体(A3)への変換率を発光強度の変化で判断すると、発光強度の変化が大きければランタノイド錯体(A1)からランタノイド錯体(A3)への変換率が高く、従って酵素活性が高いことを示す。
【0130】
従って、この発光強度の変化を検出することにより酵素活性の検出を行うことができる。
【0131】
候補化合物のスクリーニング方法
本発明では、ランタノイド錯体を用いた酵素活性の測定することにより、該酵素に拮抗する候補化合物のスクリーニングを行うことが可能である。即ち、所定量の酵素を加えて候補化合物及びランタノイド錯体の存在下で酵素反応を行う場合、候補化合物が酵素反応を阻害すれば、7配座以下のランタノイド錯体(A1)又は水和物(A1b)は、8配座のランタノイド錯体(A3)へとは変換されず、その結果発光強度もほとんど変化しない。一方、候補化合物が酵素反応を阻害しなければ、7配座以下のランタノイド錯体(A1)又は水和物(A1b)は、8配座のランタノイド錯体(A3)へと変換され、その結果、発光強度も大きく変化する。即ち、発光強度の変化と、候補化合物の阻害活性とはパラレルな関係にあり、候補化合物の阻害活性が高ければ発光強度の変化は小さく、一方、候補化合物の阻害活性が低ければ発光強度の変化は大きい。
【0132】
本発明で用いられる候補化合物のスクリーニングの対象化合物としては、例えばコンビナトリアルケミストリーにより合成可能な化合物ライブラリーのなかから選択される。
【0133】
即ち、時間分解蛍光測定法による酵素に阻害作用を有する候補化合物のスクリーニング方法であって、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成するランタノイド錯体(A1)であって、該錯体を構成する配位子(B1)は、分子内に
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものであり、
又、ランタノイド錯体(A1)は、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前は好ましくはランタノイドイオンに配位しておらず、
f)酵素反応により変換された基(r2)が生じると、変換された基(r2)がランタノイドイオンへ配位してランタノイド錯体(A3)となるものであり、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、ランタノイド錯体(A1)を用い、
2)ランタノイド錯体(A1)は、更に水がランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A1b)となっていてもよい状態で、
3)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、ランタノイド錯体(A1又はA1b)に前記酵素を反応させ、
4)特異的基質となり得る基(r1)が酵素によって変換されれると、酵素により変換された基(r2)を有するランタノイド錯体(A2又はA2b)を生じ、
5)変換された基(r2)は、ランタノイド錯体(A2)の分子内でランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A3)となるか、若しくはランタノイド錯体(A2b)に水分子と配位子置換してランタノイド錯体(A3)となり、又、特異的基質となり得る基(r1)が変換されなければ、ランタノイド錯体(A1又はA1b)は変化せず、
6)励起光の照射により、ランタノイド錯体(A3)又はランタノイド錯体(A1若しくはA1b)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
8)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下で、前記工程1)から7)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程により行うことができる。
【0134】
ここで、阻害活性の有無の判断の方法としては、以下のごとく行うことができる。即ち、候補化合物の非存在下で酵素反応を行った場合の発光強度m1と、特定の候補化合物の存在下での酵素反応を行った場合の発光強度m2とを比べ、m2/m1=1であれば当該候補化合物はこの酵素を全く阻害しないこととなり、m2/m1=0であれば当該候補化合物はこの酵素を100%阻害することとなる。
【0135】
一方、上記スクリーニング方法は、ランタノイド錯体(A4)からランタノイド錯体(A6)への酵素反応における、酵素に阻害作用を有する候補化合物のスクリーニング方法にも適用可能である。この場合においても酵素反応の反応条件は、前記記載のものが適用可能である。
【0136】
具体的な方法としては、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成するランタノイド錯体(A4)であって、該錯体を構成する配位子(B3)は、分子内にa)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r3)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r3)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応により変換されると変換された基(r4)となるものであり、
又、ランタノイド錯体(A3)は、
e)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しており、
f)酵素反応により変換された基(r4)が生じると、変換された基(r4)がランタノイドイオンから遊離してランタノイド錯体(A6)となり、
g)ランタノイド錯体(A4)とランタノイド錯体(A6)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、ランタノイド錯体(A4)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、ランタノイド錯体(A4)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r3)は酵素によって変換されれると、変換された基(r4)を有するランタノイド錯体(A5)を生じ、
4)変換された基(r4)は、ランタノイドイオンから遊離してランタノイド錯体(A6)となり、又、特異的基質となり得る基(r3)が変換されなければランタノイド錯体(A4)は変化せず、
5)ランタノイド錯体(A6)は、水分子がランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A6b)となっていてもよく、
6)励起光の照射により、ランタノイド錯体(A4)又はランタノイド錯体(A6若しくはA6b)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
8)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下、前記工程1)から7)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程により行うことができる。
【0137】
配位子(B1)から配位子(B2)への酵素反応への応用
本発明の酵素活性の検出方法は、ランタノイド錯体のみでなく錯体形成前の配位子に対しても適用可能である。
【0138】
即ち、錯体形成前の配位子(B1)を、酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で酵素反応を行い、酵素反応後の混合物(B1及び/又はB2を含む)とランタノイドイオンとを錯体形成反応させ、得られた錯体混合物の発光強度を測定することにより、酵素活性の検出をすることができる。
【0139】
ここで配位子(B1)としては、例えば一般式[I]から[V]で表される化合物が例示できる。
【0140】
配位子(B1)を本発明に係る酵素反応をすることにより得られる変換された基(r2)を有する配位子(B2)は、水溶液中でランタノイドイオンとともに8配座のランタノイド錯体(A3)を形成し、この錯体(A3)は、励起光の照射により発光する。
【0141】
即ち、具体的な酵素活性の検出方法としては、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成可能な配位子(B1)であって、該配位子は、分子内に
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものであり、
又、配位子(B1)は、ランタノイド錯体(A1)を形成した場合、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前は好ましくは錯体(A1)においてランタノイドイオンに配位せず、
f)一方、変換された基(r2)を有する配位子がランタノイドイオンとともにランタノイド錯体(A3)を形成した場合、変換された基(r2)は、ランタノイドイオンに配位しており、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、配位子(B1)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、配位子(B1)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素によって変換されると変換された基(r2)を有する配位子(B2)を生じ、又、基質となり得る基(r1)が変換されなければ配位子(B1)は変化せず、
4)上記3)にランタノイドイオンを作用させると、変換された基(r2)を有する配位子(B2)は、ランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A2)となり、ついでこの錯体は上記2)の反応で変換された基(r2)がランタノイドイオンに更に配位してランタノイド錯体(A3)となり、一方、配位子(B1)がランタノイドイオンに配位すると、ランタノイド錯体(A1)を形成し、更にこのランタノイド錯体(A1)は、水分子が配位したランタノイド錯体(A1b)となってもよく、
5)上記4)に励起光を照射すると、ランタノイド錯体(A3)又はランタノイド錯体(A1若しくはA1b)中のランタノイドイオンが発光し、
6)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
7)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下、前記工程1)から6)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程により行うことができる。
【0142】
ここで、酵素の種類、酵素反応における各種反応条件等は、前記のものが適用できる。
【0143】
又、酵素反応後の反応液へのランタノイドイオンの添加量としては、例えば、反応の際使用する配位子1モルに対し、ランタノイドイオンを1.0〜2.5モルモル、好ましくは1.1〜1.5モル程度加えればよい。
【0144】
イオン種としては、特に限定されず、前記記載の3価のランタノイド金属塩由来のものが適用できる。
【0145】
ランタノイドイオン添加後、錯体形成に必要な適当な時間、例えば10〜30分程度経過後に発光強度を測定することにより、その発光強度をもって酵素活性の指標とすることができる。この反応につき、反応式5に示す。
【0146】
【化30】
【0147】
尚、a)ランタノイド錯体を用いて酵素反応を行う場合と、b)配位子の段階で酵素反応を行い反応終了後ランタノイド錯体を形成する場合、における相違点は、a)が酵素の至適pHで反応を行い、任意のpHに於いて測定できるのに対し、b)は反応終了後、錯形成をより効率的に行うため、中性以上、好ましくは弱塩基性以上のpHにすればよい。一方、ランタノイド錯体(A1又はA4)が反応溶媒に溶解しにくいものである場合は、配位子の段階で酵素反応を行い、その後、ランタノイド錯体とすることができる。
【0148】
配位子(B3)から配位子(B4)への酵素反応への応用
更に、本発明は、配位子(B1)から配位子(B2)への酵素反応の逆方向への反応においても酵素活性の測定を行うことができる。
【0149】
即ち、この方法は、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成可能な配位子(B3)であって、該配位子(B3)は、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r3)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r3)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応により変換されると変換された基(r4)となるものであり、
又、この配位子(B3)は、ランタノイド錯体(A4)を形成した場合、
e)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しており、
f)一方、変換された基(r4)を有する配位子がランタノイドイオンともにランタノイド錯体(A6)を形成した場合、変換された基(r4)は、好ましくはランタノイドイオンに配位せず、
g)ランタノイド錯体(A4)とランタノイド錯体(A6)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、配位子(B3)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、配位子(B3)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素により変換されると、変換された基(r4)を有する配位子(B4)を生じ、
4)配位子(B4)にランタノイドイオンを作用させると、配位子(B4)は、変換された基(r4)が好ましくはランタノイドイオンに配位することのない状態でランタノイド錯体(A6)となり、
5)ランタノイド錯体(A6)は、水分子が配位してランタノイド錯体(A6b)となってもよく、
6)励起光の照射により、ランタノイド錯体(A6又はA6b)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定する、各工程による。
【0150】
ここで、配位子(B3)から配位子(B1)への酵素反応の条件としては、前記のものが適用可能であり、又、酵素反応後のランタノイド錯体の形成についても前記の条件が適用できる。
【0151】
この反応につき、反応式6に示す。
【化31】
【0152】
配位子を用いた候補化合物のスクリーニング方法
本発明では、候補化合物の存在下で配位子に対して酵素反応を施し、得られた反応混合物をランタノイド錯体形成反応させ、次いで発光強度を測定することにより酵素阻害活性を有する候補化合物のスクリーニング方法とすることができる。即ち、配位子(B1)から配位子(B2)への酵素反応、又は配位子(B3)から配位子(B4)への酵素反応を、各々の酵素の阻害活性を有する候補化合物の存在下で行う場合、候補化合物が各々の酵素反応を阻害すれば反応は進行せず、一方、候補化合物が各々の酵素反応を阻害しなければ反応が進行する。その後、この反応溶液にランタノイドイオンを添加することにより、ランタノイド錯体を形成する。この錯体に励起光を照射すると、反応状況に応じてランタノイド錯体が発光する。
【0153】
具体的には、配位子(B1)から配位子(B2)への反応において、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成可能な配位子(B1)であって、該配位子は、分子内に
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものであり、
又、配位子(B1)は、ランタノイド錯体(A1)を形成した場合、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前は好ましくは錯体(A1)においてランタノイドイオンに配位せず、
f)一方、変換された基(r2)を有する配位子がランタノイドイオンとともにランタノイド錯体(A3)を形成した場合、変換された基(r2)は、ランタノイドイオンに配位しており、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、配位子(B1)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、配位子(B1)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素によって変換されれると、変換された基(r2)を有する配位子(B2)を生じ、又、基質となり得る基(r1)が変換されなければ配位子(B1)は変化せず、
4)上記3)にランタノイドイオンを作用させると、変換された基(r2)を有する配位子(B2)は、ランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A2)となり、ついでこの錯体は上記2)の反応で変換された基(r2)がランタノイドイオンに更に配位して、ランタノイド錯体(A3)となり、一方、配位子(B1)がランタノイドイオンに配位すると、ランタノイド錯体(A1)を形成し、更にこのランタノイド錯体(A1)は、水分子が配位したランタノイド錯体(A1b)となってもよく、
5)上記4)に励起光を照射すると、ランタノイド錯体(A3)又はランタノイド錯体(A1若しくはA1b)中のランタノイドイオンが発光し、
6)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
7)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下、前記工程1)から6)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程を包含する方法である。
【0154】
一方、配位子(B3)から配位子(B4)への反応においては、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成可能な配位子(B3)であって、該配位子は、分子内に
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r3)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r3)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応により変換さると変換された基(r4)となるものであり、
又、この配位子(B3)がランタノイド錯体(A4)を形成した場合、
e)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しており、
f)変換された基(r4)を有する配位子がランタノイドイオンとともに錯体(A6)を形成する場合、変換された基(r4)は、好ましくはランタノイド錯体(A6)においてランタノイドイオンに配位せず、
g)ランタノイド錯体(A4)とランタノイド錯体(A6)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する配位子(B3)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、該配位子(B3)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素により変換されると、変換された基(r4)を有する配位子(B4)を生じ、又、基質となり得る基(r3)が変換されなければ、配位子(B3)は変化せず、
4)上記3)にランタノイドイオンを作用させると、配位子(B4)は、好ましくは変換された基(r4)がランタノイドイオンに配位することのない状態でランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A6)となり、又、この錯体(A6)は、更に水分子が配位してランタノイド錯体(A6b)となってもよく、一方、配位子(B3)は、特異的基質となり得る基(r3)がランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A4)を生じ、
5)上記4)に励起光を照射することにより、ランタノイド錯体(A6若しくはA6b)又はランタノイド錯体(A4)中のランタノイドイオンが発光し、
6)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
7)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下、前記工程1)から6)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程を包含する方法である。
【0155】
酵素反応の条件としては、前記記載のものが適用可能であり、又、酵素反応後のランタノイド錯体の形成条件も前記のものが適用できる。
【0156】
即ち、本発明のランタノイド錯体を、特定酵素、特にリン酸化酵素、硫酸化酵素等の、特異的基質として作用させることにより、従来公知のランタノイド錯体と比べて酵素反応の前後での発光強度の変化が大きく異なることから、従来公知のランタノイド錯体と比べてより少ない基質量で酵素活性の測定が可能となった。更に、このランタノイド錯体は、前記特定酵素に阻害活性を有する候補化合物のスクリーニングする際にも利用することができる。
【0157】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、時間分解蛍光測定は、マルチラベルカウンタ:ARVOsx(wallac velthold社製)を用いて、以下のパラメーターにより行った。
【0158】
Emission filter name D615 (Europium)
Excitation filter name D340
Delay time 50 msec.
Window time 2350 msec.
Cycle 6500 msec.
Second window delay time 0 msec.
Flash energy area Low
Flash absorbance measurement No
【0159】
又、発光強度の測定は、特に記さない限り1mMトリス−塩酸バッファー(pH7.4)、10mM塩化ナトリウム、0.05%トゥイーン溶液下で測定した。
【0160】
参考例1
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1―ジメチルエチル)エステルの合成
【0161】
【化32】
【0162】
市販の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(3.4g、20mmol)をジクロロメタンに溶解し、tert−ブチル 2−ブロモアセテート(5.3ml、36mmol)を加え、反応液を1.5時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C−200、溶出溶媒;クロロホルム−メタノール(5:1))により精製して、表題化合物を得た(4.5g、収率56%)。
【0163】
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ ppm:1.44(s,18H),2.91(s,8H),3.01(s,8H)、3.34(s,4H)
【0164】
参考例2
1−ブロモ−2−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エタンの合成
【0165】
【化33】
【0166】
市販の7−アミノ−4−メチル−2(1H)−キノリノン(950mg、5.5mmol)をTHFに懸濁し、n−ブチルリチウム(1.46M n−ペンタン溶液、4.1ml、6.1mmol)を滴下し、室温で1時間攪拌した。続いて、2−ブロモ酢酸ブロミド(0.72ml、8.3ml)を滴下し、更に室温で1時間攪拌した。析出している白色結晶を濾取、水洗浄後、減圧下乾燥し、表題化合物を得た(1.4g、収率87%)。
【0167】
1H NMR(300MHz,DMSO−d6)δ ppm:2.37(s,3H),4.03(s,2H),6.25(s,1H),7.29(dd,J=8.7、1.4Hz,1H),7.63(d,J=8.7Hz,1H),7.71(d,J=1.4Hz,1H),10.59(s,1H)、11.52(s、1H)
【0168】
参考例3
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1―ジメチルエチル)エステルの合成
【0169】
【化34】
【0170】
参考例1で得られた化合物(1.9g、4.76mmol)及び参考例2で得られた化合物(1.4g、4.76mmol)をDMFに溶解し、これに炭酸カリウム(1.32g、9.52mmol)を室温で加え、室温で20時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C−200 溶出溶媒;クロロホルム−メタノール(5:1))により精製して、表題化合物を得た(0.75g、収率26%)。
【0171】
1H NMR(CD3OD,300MHz)δ ppm:1.47(s,9H),1.51(s,9H),2.50(s,3H),2.76(br,2H),2.84(br,2H),3.05(br,2H),3.19(br,2H),3.36(s,8H),3.37−3.48(m,4H),3.60(s,2H),6.41(s,1H),7.37(dd,J=8.7、1.4Hz,1H),7.72(d,J=8.7Hz,1H),7.98(d,J=1.4Hz,1H)ESI−MS(m/e):(M+H)+=615.4
【0172】
参考例4
1−ブロモ−[1−(1,1―ジメチルエチルオキシカルボニル)−2−(1,1―ジメチルエチルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキサンの合成
【0173】
【化35】
【0174】
H−Ser(tBu)−OtBu(217mg、1.0mmol)、HATU(452mg、1.2mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.4ml、2.4mmol)をDMFに溶解し、これに6−ブロモヘキサン酸(195mg、1.0mmol)を室温で加え、室温で6時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(WakogelC−200、溶出溶媒;ヘキサン−酢酸エチル(10:1))により精製して、表題化合物を得た(46mg、収率12%)。
【0175】
1H NMR(CDCl3,300MHz)δ ppm:1.18(s,9H),1.49(s,9H),1.45−1.58(m,2H),1.66−1.77(m,2H),1.86−1.95(m,2H),2.26−2.34(m,2H),3.42(t,J=7.8Hz,2H),3.54(dd,J=8.8、3.4Hz,1H),3.80(dd,J=8.8、3.4Hz,1H),34.63(dt,J=8.8、3.4Hz,1H),6.28(d,J=8.8,1H)
【0176】
参考例5
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[1−(1,1―ジメチルエチルオキシカルボニル)−2−(1,1―ジメチルエチルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1―ジメチルエチル)エステルの合成
【0177】
【化36】
参考例3で得られた化合物(20mg、0.0326mmol)及び参考例4で得られた化合物(46mg、0.0978mmol)をDMFに溶解し、これに炭酸ナトリウム(28mg、0.3mmol)を加え、120℃で1.5時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm,2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥して表題化合物を得た(6.5mg、収率21%)。
ESI−MS(m/e):(M+H)+=928.5
【0178】
参考例6
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(1−カルボキシ−2−ヒドロキシエチル)アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッドの合成
【0179】
【化37】
参考例5で得られた化合物(6.5mg、0.007mmol)を90%TFAを含む水に溶解し、60℃で1時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm,2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、目的物を含む溶出液を凍結乾燥し、表題化合物を得た(2.3mg、収率46%)。
ESI−MS(m/e):(M+H)+=704.23
【0180】
製造例1
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(1−カルボキシ−2−ヒドロキシエチル)アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ユーロピウムキレートの合成
【0181】
【化38】
参考例6で得られた化合物(2.3mg、0.0033mmol)及びEuCl3・6H2O(24mg、0.066mmol)を、pH=5に調整した0.1Mトリメチルアンモニウムアセテート水溶液(1ml)に溶解し、50℃で170時間攪拌した。反応混合液をそのまま(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm,2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(1.4mg、収率30%)。
発光強度:2.38x106count(5μM水溶液)
【0182】
参考例7
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[1−カルボキシ−2−(1,1―ジメチルエチルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキシル−1、4、7、10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1−ジメチルエチル)エステルの合成
【0183】
【化39】
参考例4において、H−Ser(tBu)−OtBuの代わりにH−Ser(tBu)−OMeを用いる他は参考例4と同様の反応を行い、1−ブロモ−[1−(メチルオキシカルボニル)−2−(1,1―ジメチルエチルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキサンを得た。次いで、この化合物と参考例3で得られた化合物とを、参考例5に記載の反応に準じて120℃で20時間反応を行った。得られた反応液を参考例5に記載の精製方法に準じて精製し、表題化合物を得た。
【0184】
参考例8
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(1−メトキシカルボニル−2S−ヒドロキシエチル)アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッドの合成
【0185】
【化40】
参考例7で得られた化合物(9mg、0.01mmol)をベンゼン−メタノール混合溶媒(4ml:1ml)に溶解し、トリメチルシリルジアゾメタン(2Mヘキサン溶液、0.5ml)を加え、反応混合液を室温で1時間撹拌した。減圧下溶媒を留去して、参考例7で得られた化合物に対応するメチルエステルを得た(9mg、収率100%)。
【0186】
このメチルエステル(9mg、0.01mml)を、10%の水を含むTFA(5ml)に溶解し、反応混合液を60℃で0.5時間撹拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm,2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥して表題化合物を得た(2.0mg、収率28%)。
ESI−MS(m/e):(M+H)+=718.3
【0187】
製造例2
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(1−メトキシカルボニル−2S−ヒドロキシエチル)アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ユーロピウムキレートの合成
【化41】
参考例8で得られた化合物を用い、製造例1に準じて反応を行い、表題化合物を得た。
発光強度:4.13x106count(5μMバッファー溶液)
【0188】
参考例9
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(6−メトキシカルボニル)ヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1―ジメチルエチル)エステルの合成
【0189】
【化42】
参考例3で得られた化合物(0.4g、0.65mmol)及びメチル 6−ブロモ−n−ヘキサノエート(0.62g、3.0mmol)をDMFに溶解し、これに炭酸ナトリウム(0.56g、6.0mmol)を加え、120℃で2時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(0.1g、収率21%)。
【0190】
ESI−MS(m/e):(M+H)+=743.4
【0191】
参考例10
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(6−カルボキシ)ヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1−ジメチルエチル)エステルの合成
【0192】
【化43】
【0193】
参考例9で得られた化合物(100mg、0.134mmol)をメタノール(1ml)に溶解し、この反応液に2M水酸化ナトリウム水溶液(5ml)を加えて、反応混合液を室温で2時間撹拌した。減圧下メタノールを留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm,2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(14mg、収率14%)。
【0194】
ESI−MS(m/e):(M+H)+=729.4
【0195】
参考例11
【化44】
市販のFmoc−Ser(PO(OBn)OH)−OH(500mg、1mmol)をジクロロメタン(10ml)に溶解し、シクロヘキサノン(3ml)、tert−ブチル−2,2,2−トリクロロアセトイミデート(655mg、3mmol)を加え、反応混合液を100℃で2時間撹拌した。減圧下溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C−200、溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(5:1))により精製して、Fmoc−Ser(PO(OBn)OH)−OtBuを得た(0.55g、収率100%)。得られた化合物(400mg、0.73mmol)をDMF(32ml)に溶解し、ピペリジン(8ml)を加え、反応混合液を室温で1時間撹拌した。減圧下溶媒を留去して得られた残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、次いで凍結乾燥してFmoc基を除去した表題化合物を得た(9mg、収率4%)。
【0196】
参考例12
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[1−カルボキシ−2S−(ジヒドロキシホスフィニルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッドの合成
参考例11で得られた化合物(9mg、0.0272mmol)及び参考例10で得られた化合物(13.5mg、0.0185mmol)をDMF(1ml)に溶解し、WSC HCl(7.1mg)、HOBt H2O(5.8mg)を加え、反応混合液を室温で17時間撹拌した。減圧下溶媒を留去して得られた残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥して4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[1−(1,1―ジメチルエチルオキシカルボニル)−2S−(ヒドロキシ−O−ベンジルオキシホスフィニルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1―ジメチルエチル)エステルを得た(5.3mg、収率27%)。
【0197】
この縮合化合物(5.3mg)を、10%の水を含むTFA(5ml)に溶解し、反応混合液を60℃で0.5時間撹拌した。減圧下溶媒を留去して得られた残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥して表題化合物を得た(5.4mg、収率100%)。
ESI−MS(m/e):(M+H)+=784.7
【0198】
製造例3
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[1−カルボキシ−2S−(ジヒドロキシホスフィニルオキシ)エチル]アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ユーロピウムキレートの合成
【0199】
【化45】
【0200】
参考例12で得られた化合物を用いて製造例1と同様の方法により反応を行い、表題化合物を得た。
発光強度:10.72x106count(5μMバッファー溶液)
【0201】
参考例13
一般式(S)
【化46】
[式中、SR’は、固相樹脂を表す。]で表されるレジンの合成
【0202】
市販のNovaSyn TGR樹脂(0.21mmol/g)0.1gを用いて、4当量のFmoc−Lys(Boc)−OH、4当量のHATU、8当量のN,N−ジイソプロピルエチルアミンを用い、室温で15時間反応させることによりアミノ酸カップリングを行った。引き続き20%ピペリジン含有DMFを用い、室温で0.5時間反応させることにより脱Fmoc化反応を行った。次いで、同様の操作を繰り返してアミノ酸を延長した。即ち、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Ser(t−Bu)−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Lsy(Boc)−NH2を用いて、順次Fmocアミノ酸の縮合及び脱Fmoc化を繰り返してアミノ酸残基を延長した。最後の段階であるFmoc−Lsy(Boc)−NH2を縮合後、20%ピペリジン含有DMFを用いて脱Fmoc化を行い、更に乾燥させて一般式(S)で表されるレジンを得た。
【0203】
参考例14
【化47】
【0204】
参考例10で得られた化合物(14mg、0.02mmol)、HATU(11.4mg、0.03mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.01ml、0.06mmol)をDMFに溶解し、これに参考例13で得られたレジン(78mg、0.013mmol)を室温で加え、18時間攪拌した。レジンをDMF(2mlx3)、メタノール(2mlx3)、ジクロロメタン(2mlx3)の順で洗浄した。得られたレジンを90%TFA−H2O(2ml)で60℃で1時間処理した後、レジンをろ過してのぞき、減圧下濾液を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(8.6mg、収率50%)。
【0205】
製造例4
【化48】
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−(1−カルボキシ−2−ヒドロキシエチル)アミノ−6−オキソヘキシル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッドの代わりに参考例11で得られた化合物を用いる他は製造例1と同様の方法により反応を行い、表題化合物を得た。
発光強度:6.89x104count(5μMバッファー溶液)
【0206】
参考例15
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[4−(メトキシカルボニルメチル)フェニル]メチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1−ジメチルエチル)エステルの合成
【化49】
参考例3で得られた化合物(0.05g、0.081mmol)及びメチル 4−(ブロモメチル)フェニルアセテート(0.059g、0.24mmol)をDMFに溶解し、これに炭酸カリウム(0.1g、0.7mmol)を加え、80℃で1時間攪拌した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(0.036g、収率57%)。
【0207】
ESI−MS(m/e):(M+H)+=777
【0208】
参考例16
4−[2−[(1,2−ジヒドロ−4−メチル−2−オキソ−7−キノリニル)アミノ]−2−オキソ]エチル−10−[4−(カルボキシメチル)フェニル]メチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ジアセティックアシッド ビス(1,1−ジメチルエチル)エステルの合成
【化50】
【0209】
参考例15で得られた化合物(35.8mg、0.046mmol)をメタノール(1ml)に溶解し、この反応液に2M水酸化ナトリウム水溶液(5ml)を加えて、反応混合液を室温で2.5時間撹拌した。減圧下メタノールを留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm,2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(33.3mg、収率95%)。
【0210】
ESI−MS(m/e):(M+H)+=763
【0211】
参考例17
配位子の作成
【化51】
【0212】
参考例16で得られた化合物(16.6mg、0.022mmol)、HATU(8.4mg、0.022mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.0078ml、0.047mmol)をDMFに溶解し、これに参考例13で得られたレジン(60mg、0.010mmol)を室温で加え、18時間攪拌した。レジンをDMF(2mlx3)、メタノール(2mlx3)、ジクロロメタン(2mlx3)の順で洗浄した。得られたレジンを90%TFA−H2O(2ml)で60℃で1時間処理した後、レジンをろ過して除去し、減圧下濾液を留去して得られる残渣を、(A)0.1%TFA/H2O及び(B)0.1%TFA/アセトニトリルからなる溶媒系の直線状勾配を用いたODSカラム(YMC−Pack ODS−AQ、s−5mm、2x25cm)、流速10ml/minの逆相クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、表題化合物を得た(6.9mg、収率40%)。
【0213】
製造例5
錯体の調製
【化52】
参考例6で得られた化合物の代わりに参考例17で得られた化合物を用いる他は製造例1と同様の方法により反応を行い、表題化合物を得た。
発光強度:1.50x105count(1μMバッファー溶液)
【0214】
試験例
製造例1及び試験例3で得られたユーロピウム錯体の各種濃度(0.1M−TBSバッファー溶液中)での発光強度を表2に示す。尚、発光強度の測定は、マルチラベルカウンタ:ARVOsx(delay time 400μs)を用いた615nmの波長を測定することにより行った。
【0215】
【表2】
【0216】
製造例3の化合物は、製造例1の化合物を基質とし、酵素(例えばCDK4等のリン酸エステル化酵素)を用いて、酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で反応させることにより得られるものであり、低濃度においてもリン酸エステル化前後での化合物の発光強度が大きく異なることがわかる。従って、本発明の方法により、リン酸エステル化酵素等の酵素反応の検出が可能となった。
【0217】
酵素反応の測定
1)10XRバッファーの調製
200mM トリス・塩酸(pH7.4)
100mM 塩化マグネシウム
45mM 2−メルカプトエタノール
100mM EGTA
1M−トリス・塩酸(pH7.4)及び200mM−EGTA(pH7.4)を各々調製し、所定の濃度になる割合で混合し、2−メルカプトエタノール溶液及び塩化マグネシウム溶液を加えてメスアップした。
【0218】
2)ストップバッファー
0.1重量%トリトンX−100及び10mMのEGTAを0.1Mリン酸ナトリウムに溶解させてストップバッファーとした。
【0219】
3)CDK溶液の調製
まずCdk4のcDNAをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質発現用ベクターに組み込み、バキュロウイルスを作製した。それを昆虫細胞Sf9に感染させ、GST融合CDK4を高発現させた。その細胞を回収して可溶化した後、グルタチオンセファロースカラムを行った後プレシージョンプロテアーゼ(アマシャムファルマシアバイオテック社製品)によりGSTを切断した。この様にして得た溶液中には、サイクリンD2−CDK4複合体及びCDK4単独が存在するため、複合体のみを精製する目的で陰イオン交換カラム(溶出液:0.2Mトリス−塩酸バッファー(pH7.4)、0.1M塩化マグネシウム、45mM 2−メルカプトエタノール、10mMEGTA、0−0.5M塩化ナトリウム直線勾配;0.2M濃度で溶出する)を行うことによりサイクリンD2−CDK4複合体溶液(0.05〜0.5mg/ml)を得、サイクリンD2−CDK4酵素液とした。
【0220】
得られたサイクリンD2−Cdk4酵素液、バッファーA及びイオン交換水を1:1:2(重量比)の比により混合し、酵素液とした。
【0221】
バッファーAの組成:200mMトリス−塩酸(pH7.4)、100mM塩化マグネシウム、45mM 2−メルカプトエタノール、100mM O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’N’−4酢酸の各濃度に調製した。
【0222】
4)基質溶液の調製
対象とするランタノイド錯体を、純水を用いて5mM濃度となるように調製し、この溶液を適宜希釈して以下で用いた種々の希釈溶液とした。
【0223】
実施例1
コーニングBlack half 96ウエルプレートにDMSO1.1μlずつ手動で添加(n=4)し、ポジティブコントロールのウエルには反応後、ネガティブコントロールのウエルには反応開始前にストップバッファーを添加した。1−4列及び5−8列のウエルをそれぞれポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして用いた。
【0224】
酵素反応条件
総容量:20μl
ATP濃度:50μl
Mg濃度:10mM
2−ME濃度:4.5mM
EGTA濃度:10mM
製造例4の化合物濃度:0.05,0.1,1.0,2.0,5.0,10,20(μM)
【0225】
操作手順
1)10μlの製造例4の化合物溶液及び5μlの酵素液を各々のウエルに添加する。又、ネガティブコントロールには、ストップバッファー10μlを添加する。
2)5μlのATP溶液を各々のウエルに添加して、酵素反応を開始させる。
3)37℃、1時間攪拌後、ポジティブコントロールに10μlのストップバッファーを添加して酵素反応を終結させる。
4)マルチラベルカウンタ:ARVOsxを用いて各々のウエルの615nmの発光強度を測定する。
【0226】
上記方法により得られた結果を表3に示す。
【0227】
【表3】
【0228】
上記の結果より、製造例4の錯体をcdk4を用いて酵素反応することにより、615nmにおける発光強度が酵素反応前と比べて増加することが判明した。
【0229】
実施例2
コーニングBlack half 96ウエルプレートの各々のウエルにDMSO及び60nM、600nM、1μM、6μM、10μMの各濃度のフラボピリドールのDMSO溶液又はDMSOを2.5μMずつ手動で添加した(n=2)。ネガティブコントロールのウエル以外には反応後に、又、ネガティブコントロールのウエルには反応開始前にストップバッファーを添加した。
【0230】
酵素反応条件
総容量:50μl
ATP濃度:50μM
Mg濃度:10mM
2−ME濃度:4.5mM
EGTA濃度:10mM
製造例4の化合物濃度:10μM
フラボピリドール濃度:3、30、50、300、500nM(最終濃度)
【0231】
酵素液の調整
cdk4溶液 1ml、10xRバッファー1ml及び純水4mlを混合し酵素液として用いた。
【0232】
操作手順
1)50μMの製造例4の化合物溶液を各々のウエルに10μlずつ添加する。2)CDK4溶液を30μlずつ各々のウエルに添加する。
3)10μlの250μM ATP溶液を各々のウエルに添加して、酵素反応を開始させる。
4)37℃で1時間攪拌後、30μlのストップバッファーを添加して酵素反応を終結させる。
5)マルチラベルカウンタ:ARVOsxを用いて各々のウエルの615nmの発光強度を、上記条件にて測定する。
【0233】
ここでは、基質である製造例4の錯体の濃度を10mMに固定し、cdk4の阻害剤であるフラボピリドールの濃度を種々変化させた際の615nmの発光のカウントについて検討した。図1は、615nmの発光のカウント(Y軸)を阻害剤の濃度(X軸)に対してプロットしたものである。この図は、フラボピリドールの濃度依存的に615nmの発光強度が減少していくことを示している。
【0234】
実施例3
製造例5の化合物を用いて、該化合物濃度を35μMとした他は実施例2と同様の方法により酵素反応を行った。その結果を表4に示した。
【表4】
【0235】
以上、表3及び図1の結果より、製造例4の錯体を用い特定酵素(ここではcdk4)による酵素を行うと(実施例2)、反応の前後で反応液の615nmの発光強度が変化し、又、その変化はcdk4の阻害剤の存在により減弱することが示された。又、表4の結果より、製造例5の化合物のような基質を用いても実施例2と同様に酵素活性が測定可能である。従って、本発明の方法に係るランタノイド錯体を用いることにより酵素活性を検出することが可能である。又、酵素に拮抗作用を有する候補化合物をスクリーニングする場合にも有用である。
【0236】
【発明の効果】
本発明を採用することにより、抗体やラジオアイソトープを用いることなく、より高感度で簡易に酵素活性を測定できることとなった。更に、この方法をハイスループットスクリーニング方法に適用することにより、従来のバイオアッセイ方法に比べて少ないサンプル量で、より高感度で候補化合物をスクリーニングすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】阻害剤濃度(X軸)と発光強度である発光アカウント(Y軸)の関係を示す図である。
Claims (14)
- 時間分解蛍光測定法による酵素活性の検出方法であって、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成するランタノイド錯体(A1)であって、
該錯体を構成する配位子(B1)は、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものであり、
又、ランタノイド錯体(A1)は、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しておらず、
f)酵素反応により変換された基(r2)が生じると、変換された基(r2)がランタノイドイオンへ配位してランタノイド錯体(A3)となり、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、ランタノイド錯体(A1)を用い、
2)ランタノイド錯体(A1)は、更に水分子がランタノイドイオンに配位して、ランタノイド錯体(A1b)となっていてもよい状態で、
3)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、ランタノイド錯体(A1又はA1b)に対象となる酵素を反応させ、
4)基質となり得る基(r1)は、酵素により変換されて変換された基(r2)を有するランタノイド錯体(A2又はA2b)を生じ、
5)変換された基(r2)は、ランタノイド錯体(A2)の分子内でランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A3)となるか、又はランタノイド錯体(A2b)に水分子と交換して配位子置換してランタノイド錯体(A3)となり、
6)励起光の照射によりランタノイド錯体(A3)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定する、各工程を包含する酵素活性の検出方法。 - 時間分解蛍光測定法による酵素活性の検出方法であって、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成するランタノイド錯体(A4)であって、
該錯体を構成する配位子(B3)は、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r3)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r3)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応により変換されると変換された基(r4)となるものであり、
又、ランタノイド錯体(A4)は、
e)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しており、
f)酵素反応により変換された基(r4)が生じると、変換された基(r4)がランタノイドイオンから遊離してランタノイド錯体(A6)となり、
g)ランタノイド錯体(A4)とランタノイド錯体(A6)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、ランタノイド錯体(A4)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、ランタノイド錯体(A4)に対象となる酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素により変換されると変換された基(r4)を有するランタノイド錯体(A5)を生じ、
4)変換された基(r4)は、ランタノイド錯体(A5)のランタノイドイオンから遊離して、ランタノイド錯体(A6)となり、
5)ランタノイド錯体(A6)は、更に水がランタノイドイオンに配位して、ランタノイド錯体(A6b)となっていてもよい状態で、
6)励起光の照射によりランタノイド錯体(A6又はA6b)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定する、各工程を包含する酵素活性の検出方法。 - 時間分解蛍光測定法による、酵素に阻害作用を有する候補化合物のスクリーニング方法であって、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成するランタノイド錯体(A1)であって、
該錯体を構成する配位子(B1)は、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものであり、
又、ランタノイド錯体(A1)は、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しておらず、
f)酵素反応により変換された基(r2)が生じると、変換された基(r2)がランタノイドイオンへ配位してランタノイド錯体(A3)となるものであり、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、ランタノイド錯体(A1)を用い、
2)ランタノイド錯体(A1)は、更に水がランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A1b)となっていてもよい状態で、
3)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、ランタノイド錯体(A1又はA1b)に前記酵素を反応させ、
4)特異的基質となり得る基(r1)が酵素によって変換されると、酵素により変換された基(r2)を有するランタノイド錯体(A2又はA2b)を生じ、
5)変換された基(r2)は、ランタノイド錯体(A2)の分子内でランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A3)となるか、若しくはランタノイド錯体(A2b)に水分子と配位子置換してランタノイド錯体(A3)となり、又、特異的基質となり得る基(r1)が変換されなければ、ランタノイド錯体(A1又はA1b)は変化せず、
6)励起光の照射により、ランタノイド錯体(A3)又はランタノイド錯体(A1若しくはA1b)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
8)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下で、前記工程1)から7)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程を包含する方法。 - 時間分解蛍光測定法による、酵素に阻害作用を有する候補化合物のスクリーニング方法であって、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成するランタノイド錯体(A4)であって、
該錯体を構成する配位子(B3)は、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r3)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r3)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応により変換されると変換された基(r4)となるものであり、
又、ランタノイド錯体(A3)は、
e)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しており、
f)酵素反応により変換された基(r4)が生じると、変換された基(r4)がランタノイドイオンから遊離してランタノイド錯体(A6)となり、
g)ランタノイド錯体(A4)とランタノイド錯体(A6)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、ランタノイド錯体(A4)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、ランタノイド錯体(A4)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r3)は酵素によって変換されると、変換された基(r4)を有するランタノイド錯体(A5)を生じ、
4)変換された基(r4)は、ランタノイド錯体(A5)のランタノイドイオンから遊離してランタノイド錯体(A6)となり、又、特異的基質となり得る基(r3)が変換されなければランタノイド錯体(A4)は変化せず、
5)ランタノイド錯体(A6)は、水分子がランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A6b)となっていてもよく、
6)励起光の照射により、ランタノイド錯体(A4)又はランタノイド錯体(A6若しくはA6b)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
8)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下、前記工程1)から7)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程を包含する方法。 - 時間分解蛍光測定法による酵素活性の検出方法であって、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成可能な配位子(B1)であって、該配位子(B1)は、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものであり、
又、この配位子(B1)は、ランタノイド錯体(A1)を形成した場合、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しておらず、
f)一方、変換された基(r2)を有する配位子がランタノイドイオンとともにランタノイド錯体(A3)を形成した場合、変換された基(r2)はランタノイドイオンに配位し、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、配位子(B1)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、配位子(B1)に対象となる酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素により変換されると、変換された基(r2)を有する配位子(B2)を生じ、
4)配位子(B2)にランタノイドイオンを作用させると、配位子(B2)は、ランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A2)となり、次いでこの錯体は、3)で生じた変換された基(r2)がランタノイドイオンに更に配位して、ランタノイド錯体(A3)となり、
5)励起光の照射により、ランタノイド錯体(A3)中のランタノイドイオンが発光し、
6)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定する、各工程を包含する酵素活性の検出方法。 - 時間分解蛍光測定法による酵素活性の検出方法であって、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成可能な配位子(B3)であって、該配位子(B3)は、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r3)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r3)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応により変換されると変換された基(r4)となるものであり、
又、この配位子(B3)は、ランタノイド錯体(A4)を形成した場合、
e)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しており、
f)一方、変換された基(r4)を有する配位子がランタノイドイオンともにランタノイド錯体(A6)を形成した場合、変換された基(r4)は、好ましくはランタノイドイオンに配位せず、
g)ランタノイド錯体(A4)とランタノイド錯体(A6)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、配位子(B3)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、配位子(B3)に対象となる酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素により変換されると、変換された基(r4)を有する配位子(B4)を生じ、
4)配位子(B4)にランタノイドイオンを作用させると、配位子(B4)は、変換された基(r4)がランタノイドイオンに配位することのない状態でランタノイド錯体(A6)となり、
5)ランタノイド錯体(A6)は、水分子が配位してランタノイド錯体(A6b)となってもよく、
6)励起光の照射により、ランタノイド錯体(A6又はA6b)中のランタノイドイオンが発光し、
7)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定する、各工程を包含する酵素活性の検出方法。 - 時間分解蛍光測定法による、酵素に阻害作用を有する候補化合物のスクリーニング方法であって、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成可能な配位子(B1)であって、該配位子(B1)は、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r1)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r1)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応により変換されると変換された基(r2)となるものであり、
又、配位子(B1)は、ランタノイド錯体(A1)を形成した場合、
e)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素反応前は好ましくは錯体(A1)においてランタノイドイオンに配位せず、
f)一方、変換された基(r2)を有する配位子がランタノイドイオンとともにランタノイド錯体(A3)を形成した場合、変換された基(r2)は、ランタノイドイオンに配位しており、
g)ランタノイド錯体(A1)とランタノイド錯体(A3)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する、配位子(B1)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、配位子(B1)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r1)は、酵素によって変換されると、変換された基(r2)を有する配位子(B2)を生じ、又、基質となり得る基(r1)が変換されなければ配位子(B1)は変化せず、
4)上記3)にランタノイドイオンを作用させると、変換された基(r2)を有する配位子(B2)は、ランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A2)となり、ついでこの錯体は上記2)の反応で変換された基(r2)がランタノイドイオンに更に配位してランタノイド錯体(A3)となり、一方、配位子(B1)がランタノイドイオンに配位すると、ランタノイド錯体(A1)を形成し、更にこのランタノイド錯体(A1)は、水分子が配位したランタノイド錯体(A1b)となってもよく、
5)上記4)に励起光を照射すると、ランタノイド錯体(A3)又はランタノイド錯体(A1若しくはA1b)中のランタノイドイオンが発光し、
6)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
7)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下、前記工程1)から6)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程を包含する方法。 - 時間分解蛍光測定法による、酵素に阻害作用を有する候補化合物のスクリーニング方法であって、
1)ランタノイドイオンと配位子とが1:1(モル比)で錯体を形成可能な配位子(B3)であって、該配位子(B3)は、分子内に、
a)光増感部位を有し、
b)前記酵素の特異的基質となり得る基(r3)を有し、
c)特異的基質となり得る基(r3)は、スペーサーを介して配位子に結合しており、
d)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応により変換されると変換された基(r4)となるものであり、
又、この配位子(B3)がランタノイド錯体(A4)を形成した場合、
e)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素反応前はランタノイドイオンに配位しており、
f)変換された基(r4)を有する配位子がランタノイドイオンとともに錯体(A6)を形成する場合、変換された基(r4)は、好ましくはランタノイド錯体(A6)においてランタノイドイオンに配位せず、
g)ランタノイド錯体(A4)とランタノイド錯体(A6)とは、励起光照射による発光強度が異なる特徴を有する配位子(B3)を用い、
2)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下で、候補化合物の存在下、該配位子(B3)に前記酵素を反応させ、
3)特異的基質となり得る基(r3)は、酵素により変換されれると、変換された基(r4)を有する配位子(B4)を生じ、又、基質となり得る基(r3)が変換されなければ、配位子(B3)は変化せず、
4)上記3)にランタノイドイオンを作用させると、配位子(B4)は、好ましくは変換された基(r4)がランタノイドイオンに配位することのない状態でランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A6)となり、又、この錯体(A6)は、更に水分子が配位してランタノイド錯体(A6b)となってもよく、一方、配位子(B3)は、特異的基質となり得る基(r3)がランタノイドイオンに配位してランタノイド錯体(A4)を生じ、
5)上記4)に励起光を照射することにより、ランタノイド錯体(A6若しくはA6b)、又はランタノイド錯体(A4)中のランタノイドイオンが発光し、
6)前記発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
7)候補化合物の存在下、酵素反応の進行を抑制する条件下、前記工程1)から6)を行い、得られたランタノイドイオンの発光強度と前記7)での発光強度を比較する、各工程を包含する方法。 - ランタノイド錯体(A1)が、一般式[I]から[V]で表される化合物からなる群から選択される化合物とランタノイドイオンとを混合して得られるものである請求項1に記載の方法。
X1は、水素原子又はArを表し、
Lは、−CONH−又は−NHCO−を表し、
Dは、スペーサーを表し、
Eは、酵素の特異的基質となり得る基を含む基を表し、
R1及びR2は、水素原子を表すか、又はR1、R2及びY1がいっしょになってそれらが結合する炭素原子とともにベンゼン環を形成し、
R3、R4、R5、R6及びR7は、各々同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。但し、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つ以上が同時に炭素数1〜6のアルキル基となることはなく、且つR3、R4、R5、R6及びR7が同時に水素原子となることもなく、
Y1は、式(J−1)、(J−2)及び(J−3)
Z1、Z2、Z3及びZ4は、各々同一又は異なって、−OH又は−NHArを表し、但し、Z1からZ4のうち、2つ以上が同時に−NHArとなることはなく、且つZ1、Z2、Z3及びZ4が、同時に−OHとなることもなく、
Gは、式(K−1)、(K−2)及び(K−3)
- 時間分解蛍光測定法による酵素に阻害作用を有する候補化合物のスクリーニング方法であって、
a)酵素と酵素に特異的に反応する基質とが反応する条件下、一般式(I−2)
b)酵素反応の進行を抑制する条件下、一般式(I−2)で表されるランタノイド錯体及び候補化合物の存在下、酵素反応を行い、酵素反応の際の発光強度を時間分解蛍光測定法により測定し、
c)工程a)及び工程b)で得られた発光強度を比較することを特徴とする、酵素に阻害作用を有する候補化合物のスクリーニング方法。
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JP2003123622A JP2004000213A (ja) | 2002-04-26 | 2003-04-28 | 酵素活性の検出方法及びそれを用いたスクリーニング方法 |
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JP2012521208A (ja) * | 2009-03-24 | 2012-09-13 | オサケ ユキチュア アークティク パートナーズ アクチボラーグ | 蛍光アッセイ法 |
CN104610325A (zh) * | 2014-12-30 | 2015-05-13 | 宿州学院 | 一种新型镧配位聚合物及其制备方法 |
-
2003
- 2003-04-28 JP JP2003123622A patent/JP2004000213A/ja active Pending
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JP2012521208A (ja) * | 2009-03-24 | 2012-09-13 | オサケ ユキチュア アークティク パートナーズ アクチボラーグ | 蛍光アッセイ法 |
US8993246B2 (en) | 2009-03-24 | 2015-03-31 | Oy Arctic Partners Ab | Luminescence assay method |
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