JP2003534387A - 腫瘍活性化プロドラッグ化合物、並びにこれらの製造方法及び使用方法 - Google Patents

腫瘍活性化プロドラッグ化合物、並びにこれらの製造方法及び使用方法

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JP2003534387A
JP2003534387A JP2001587810A JP2001587810A JP2003534387A JP 2003534387 A JP2003534387 A JP 2003534387A JP 2001587810 A JP2001587810 A JP 2001587810A JP 2001587810 A JP2001587810 A JP 2001587810A JP 2003534387 A JP2003534387 A JP 2003534387A
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、新規なプロドラッグ化合物、プロドラッグ化合物を含むことを特徴とする組成物、プロドラッグ化合物の製造方法及びプロドラッグ化合物の使用方法に関する。本プロドラッグ化合物は、結合残基を介してマスキング残基に結合した生物活性物質を含むことを特徴とする。本プロドラッグ化合物は、標的細胞又はその近くで選択的に活性化され、そして対応する剥き出しの生物活性物質よりも、低い毒性と、恐らくは長いインビボ半減期又は血清半減期を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 1.発明の分野 本発明は、新規なプロドラッグ化合物、新規なプロドラッグ化合物を含むこと
を特徴とする薬剤組成物、並びに腫瘍の増殖を阻害するため、及び/又は悪性腫
瘍及び/又は腫瘍形成性の癌を治療するための化合物の使用方法に関する。
【0002】 2.背景 癌は現在、先進世界における2番目に大きな死病であり、1年に6百万を超え
る死亡があるが、この数値は2022年には倍加すると予想されている。治療の
効果を改善するための努力にもかかわらず、これまでのところ比較的低い治癒率
しか達成していない。
【0003】 癌治療における現在の試みには、幾つかの重大な欠点がある。第1に、最も有
効な癌治療は、急速に分裂する細胞に作用する薬物からなる。しかし、多くの癌
は、急速に分裂する腫瘍細胞の割合が減少するときになって診断される。第2に
、急速に分裂する細胞集団を含む正常組織も、現在の抗癌物質の作用を受ける。
生じる毒性は、用量レベルを減少させ、治療の頻度を減少させる。第3に、腫瘍
細胞は、遺伝学的に不安定であり、高い突然変異率を有する。結果として、腫瘍
には、しばしば治療に対する抵抗性が生じる。最後に、現在の抗癌治療剤は、多
くの治療物質と同様に、血液及び血清中で酵素及び他の分解タンパク質に対して
不安定である場合がある。
【0004】 新しい細胞障害性薬物が定期的に臨床に入っていくが、これらの使用は、その
毒性副作用、高率に誘導される抵抗性、及び少数の例ではその血中安定性の低さ
によって妨げられたままである。詳細には、インビトロ及び/又はインビボで腫
瘍細胞に及ぼす細胞障害性又は細胞分裂抑制性作用を有する、細胞外で活性な物
質及びポリペプチドが最近になって同定されている。例えば、インビトロ及びイ
ンビボの両方で細胞に及ぼす多様な作用を有するサイトカインであるTNFαは
、インビトロで腫瘍細胞型に及ぼす細胞障害性及び細胞分裂抑制性作用を示す。
しかし、内皮細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、線維芽細胞及びケラチノサイトのよ
うな、多くの正常細胞型の増殖も、インビトロでTNFαにより阻害される。T
NFαに対するヒト内皮細胞の感受性は、これらの増殖の速度に相関する。組換
えTNFαを抗癌物質として多重臨床試験(第I相及び第II相)が行われている
が、目立った治療効果は得られていない。TNFαが誘導する全身毒性及びTN
Fαに対する獲得抵抗性は、抗新生物物質としてTNFαが成功するには、2つ
の重大な障害物である。
【0005】 即ち、充実性腫瘍型を治療する際に使用するための有効な抗新生物物質の入手
可能性には、依然ニーズが存在する。特に、腫瘍細胞に対してある程度の選択性
及び/又は特異性を示すか、あるいは毒性が全然ないかほとんどなく治療効果を
あげる用量で送達することができる、抗新生物物質が必要とされている。
【0006】 3.発明の要約 1つの側面において、本発明は、治療性が改善された新規なプロドラッグ化合
物を提供する。一般に、この新規なプロドラッグは、結合残基を介してマスキン
グ残基に結合した生物活性物質を含むことを特徴とする。マスキング及び結合残
基の性質によって、本発明のプロドラッグに含めると、生物活性物質は、腫瘍細
胞及び腫瘍血管新生に関与する内皮細胞に選択的に投与することができる。更に
、本発明のプロドラッグは、典型的には、対応する剥き出しの生物活性物質より
も、低い毒性と、恐らくは長いインビボ半減期又は血清半減期を示す。
【0007】 本発明は、一部には、ある種のアミノ酸配列を有するペプチドが、腫瘍細胞及
び血管新生に関与するある種の内皮細胞(「標的細胞」)又はその近くで、細胞
外媒体中のプロテアーゼ及び/又はペプチダーゼにより特異的に切断されるとい
う発見に基づく。詳細には、標的細胞外環境で特異的に切断されうるペプチドは
、アミノ酸配列:(Leu)y(Ala−Leu)xAla−Leu及び(Leu
y(Ala−Leu)xAla−Phe〔ここで、y=0又は1であり、そして
x=1、2又は3である〕を有するものを含む。本発明のプロドラッグの生物活
性物質及びマスキング残基を一緒に結合させるための結合残基の成分としてこれ
らのペプチドを利用すると、この生物活性物質をインビボで腫瘍若しくは標的細
胞又はその近くで選択的に放出又は遊離させることができる。
【0008】 結合残基を切断するペプチダーゼは、腫瘍又は腫瘍細胞に対して独特ではない
。健常細胞もまた、結合残基を切断できるペプチダーゼを産生する。しかし、有
意に多くの切断は、腫瘍細胞の周辺で観察されることが発見されている。操作の
どの特定の理論にも拘束されるわけではないが、腫瘍細胞は、健常細胞よりも有
意に高濃度の切断ペプチダーゼを排出しており、そしてそれがこれらの付近で観
察される高率の切断の原因であると考えられる。即ち、ペプチダーゼは、腫瘍又
は腫瘍細胞に独特ではないが、本発明のプロドラッグは、腫瘍細胞と健常細胞の
周囲の切断における観察される差を活用することによって、生物活性物質を腫瘍
細胞に選択的に送達する。更に、このようなペプチダーゼはまた、腫瘍血管新生
に関与する内皮細胞によって、健常細胞よりも高濃度で放出されるが、このため
、これらの内皮細胞への抗血管新生性化合物の調製及び選択的送達が可能になる
。即ち、結合残基、並びに標的及び健常細胞により産生及び/又は分泌される特
異的に切断するペプチダーゼの量の観察される差によって、本発明のプロドラッ
グは、細胞障害性又は細胞分裂抑制性の化合物を標的細胞に選択的に送達するこ
とができるが、それによって、悪性腫瘍形成癌のような腫瘍形成性症状を治療す
るために患者に細胞障害性及び/又は細胞分裂抑制性物質を送達する、選択的か
つ安全な手段を提供できる。
【0009】 プロドラッグのマスキング残基は、結合残基を介して生物活性物質に結合して
いる。マスキング残基は、単独又は結合残基と一緒に作用して、生物活性物質の
生物活性をブロック又は阻害する。更に、マスキング残基は、例えば、血清中に
存在するペプチダーゼによる、結合残基の非特異的分解及び/又は切断を防止し
、よって生物活性物質の非選択的放出を防止する。操作のどの理論にも拘束され
るわけではないが、生物活性物質の生物活性は、例えば、マスキング残基−結合
残基の集合及び/又は生物活性のために必要な生物活性物質上の荷電基のマスキ
ングにより引き起こされる立体障害のような、幾つかの機序によりブロック又は
阻害されると考えられる。結合残基の非特異的分解をインビボで防止するのに適
したマスキング残基は、アミノ又はカルボキシ末端修飾のような結合残基の曝露
末端の化学修飾から、薬物及び遺伝学的にコードされないアミノ酸又は他の酵素
的に非分解性のアミノ酸(例えば、D−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸
などを含む)のような小分子、ポリペプチド又は他の生物学的若しくは非生物学
的ポリマーのような大分子まで変化しうる。マスキング残基は、生物学的に不活
性であるか、あるいはこれ自体が、以下に記載される任意の生物活性物質又は任
意の他の薬物(細胞障害又は細胞分裂抑制活性のない薬物であっても)のように
、生物活性を持っていてもよい。
【0010】 生物活性物質は、典型的には、細胞に対して細胞障害性及び/又は細胞分裂抑
制性である分子又は構成体であるが、腫瘍及び/又は腫瘍形成性の癌の診断及び
/又は治療において有用な物質又は薬物であってもよい。本発明のプロドラッグ
における生物活性物質としての使用に適した分子の型は広範に変化しうる。プロ
ドラッグとしての処方には、生物活性物質は、結合残基の適切な末端と共有結合
を形成することができる反応性基を含むか、又は含むように修飾すべきである。
結合を作り出すために生物活性物質を修飾する必要があれば、これが選択的に放
出されるとき、実質的な生物活性を保持するように修飾すべきである。即ち、生
物活性物質は、アンスラサイクリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、葉酸誘
導体、ビンカアルカロイド、カリケアマイシン、ミトキサントロン、シトシンア
ラビノシド、アデノシンアラビノシド、リン酸フルダラビン、メルファラン、ブ
レオマイシン、マイトマイシン、L−カナバニン、タキソイド、カンプトセシン
、プロテアソームインヒビター、ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター
、エポチロン、ディスコデルモライド(discodermolide)、メイタンシノイド(
maytansinoids)、白金誘導体、デュオカルマイシン、コンブレスタスタチン及
びエピポドフィロトキシンのような小有機化合物から、オリゴヌクレオチド、オ
リゴペプチド及びオリゴ糖のような生物学的オリゴマー、核酸及びポリペプチド
のような大きな生物学的ポリマーまで変化しうる。
【0011】 当業者であれば、ポリペプチドのようなある種の生物活性物質が、結合残基の
末端と共有結合を形成できる複数の反応性基を含んでよいことは認識できよう(
例えば、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸のような、第
1級アミン又はカルボキシル側鎖を持つ複数のアミノ酸を有するポリペプチド)
。利用可能な反応性基のいずれか又は全てが、結合残基に結合してもよい。種々
の結合残基は、同一であっても異なっていてもよく、そして各結合残基は次に、
マスキング残基に結合しているが、これらも各結合残基に対して同一であっても
異なっていてもよい。即ち、生物活性物質上の利用可能な反応性基の数に応じて
、本発明のプロドラッグは、1個又は複数の同一又は異なる結合残基を含んでも
よい。
【0012】 生物活性物質は、細胞内又は細胞外で作用することにより、その生物学的作用
を発揮しうる。例えば、生物活性物質は、細胞膜を横断して、その細胞障害及び
/又は細胞分裂抑制作用を細胞の内側で発揮することができる、小有機化合物で
あってよい(例えば、アンスラサイクリン)。あるいは、生物活性物質は、受容
体の細胞外ドメインに結合して、細胞死を誘発する分子であってよい(例えば、
TNFαのようなサイトカイン)。
【0013】 生物活性物質はまた、細胞内で作用するが、細胞膜を横断できないか、又はそ
れ自体では膜を効率的に横断しない物質であってもよい。このような細胞内で活
性な生物活性物質は、細胞内又は細胞核内への輸送を促進するペプチドにカップ
リングさせてもよい。直接標的細胞の核内への生物活性物質の選択的送達は、生
物活性物質の選択性を改善し、かつ生物活性物質に対する薬物耐性を克服しうる
。細胞膜を横断できない細胞内で活性な物質は、グランザイムBのような細胞内
で活性なポリペプチド、多くのアンチセンスDNA及びRNA、多くのリボザイ
ム並びに遺伝子治療に有用な遺伝子を含む。更に、多くの細胞分裂抑制性又は細
胞障害性小分子は、それ自体で膜を横断するが、輸送ペプチドを伴うこのような
小分子(例えば、ドキソルビシン及びダウノルビシン)の処方は、その膜透過性
を増強しうる。本発明のこの側面において、マスキング残基は、単独又は結合残
基との組合せで、結合残基の選択的切断の前に、生物活性物質−輸送ペプチド構
成体が細胞に入るのを防止する。生物活性物質が輸送ペプチドを含む本発明のプ
ロドラッグは、これがなければ細胞膜を選択的に横断できないか、又はできたと
してもその効率が低い、腫瘍及び/又は標的細胞への生物活性物質の選択的送達
を可能にする。
【0014】 本発明の1つの好ましい実施態様では、生物活性物質は、細胞外で活性な細胞
障害性又は細胞分裂抑制性物質、即ち、細胞に入る必要なく細胞の増殖を阻害す
るか、かつ/又は細胞を死滅させる物質である。細胞外で活性な細胞障害性又は
細胞分裂抑制性物質は、マスキング残基に結合することができる実質的に任意の
分子であってよい。非限定例としては、例えば、ペプチド、細胞溶解性ペプチド
、抗血管新生性ペプチド及びポリペプチドを含む。好ましいポリペプチドは、腫
瘍細胞に及ぼす細胞障害性又は細胞分裂抑制性作用を有するものであり、TNF
α、IFN−α、IFN−γ、IL−1、IL−2、IL−6、IGF−1アン
タゴニスト、トロンボスポンジン−1由来ペプチド、サブスタンスPアンタゴニ
スト、TRAIL(Apo−2リガンド)及びFasリガンドを含むが、これら
に限定されない。このような細胞外で活性な生物活性物質を含む本発明のプロド
ラッグによって、標的細胞へのこの物質の選択的送達が可能になり、そのため患
者に対するその毒性が減少する。
【0015】 上で考察されるように、マスキング残基も生物活性を有してもよい。即ち別の
実施態様において、本発明のプロドラッグは、二元プロドラッグ、即ち、マスキ
ング残基と生物活性残基の両方が生物学的作用を発揮するプロドラッグである。
1つの実施態様において、この二元プロドラッグは、2つの細胞内で活性な物質
を含むことを特徴とする。この二元プロドラッグは、2つの生物活性小分子を標
的細胞に選択的に送達するプロドラッグを含む。他の二元プロドラッグは、標的
細胞に対して協調して作用する2つの分子を送達するプロドラッグを含む。例え
ば、二元プロドラッグは、細胞外受容体と相互作用するポリペプチドと細胞内標
的に作用する小分子とを送達できる。あるいは、二元プロドラッグは、細胞障害
剤と抗生物質のような、しばしば組合せて処方される2つの薬物、又はTNFα
とドキソルビシン、若しくは当該分野において周知の他の生物活性化合物の組合
せのような、相乗的に作用する2つの薬物を含むことを特徴としてよい。好まし
い二元プロドラッグは、標的細胞に対して協調して作用する2つの物質を送達す
るものである。
【0016】 生物活性物質が、細胞膜を横断できる細胞内で活性な小有機化合物であるとき
、これは、その膜透過性を増強するように作用する輸送ペプチドと結びついて、
又はマスキング残基も何らかの生物活性を有する二元プロドラッグとして、本発
明のプロドラッグ組成物に含まれる。細胞外で活性な物質及び上述の他の物質の
ような他の生物活性物質は、生物学的に不活性なマスキング残基と共に、又はマ
スキング残基も何らかの生物活性を有する二元プロドラッグとして、本発明のプ
ロドラッグに含まれる。
【0017】 別の側面において、本発明は、本発明のプロドラッグを含むことを特徴とする
薬剤組成物を提供する。この薬剤組成物は、一般に1つ以上の本発明のプロドラ
ッグと、薬剤学的に許容しうる担体、賦形剤又は希釈剤を含むことを特徴とする
。好ましくは、この薬剤組成物は、治療効果をあげる量のプロドラッグを含むこ
とを特徴とする。
【0018】 別の側面において、本発明は、腫瘍若しくは腫瘍細胞又は腫瘍血管新生に関与
する内皮細胞の成長又は増殖を阻害する方法を提供する。この方法は、腫瘍又は
標的細胞を、腫瘍細胞又は標的細胞の成長又は増殖を阻害するのに有効な本発明
のプロドラッグ又は薬剤組成物と接触させることを特徴とする。この方法は、腫
瘍及び/又は標的細胞の成長又は増殖をインビボ、インビトロ又はエクスビボで
阻害するために実施することができる。
【0019】 最後の側面において、本発明は、充実性腫瘍及びその転移並びに腫瘍形成性の
癌を治療する方法を提供する。この方法は、一般に、充実性腫瘍及び/又は癌を
有する、ヒトを含む動物に、腫瘍増殖の過程を止めるのに有効な量の本発明のプ
ロドラッグ又は薬剤組成物を投与することによって、その動物を治療することを
特徴とする。好ましくは、腫瘍を縮小又は根絶させるのに有効な量のプロドラッ
グ又は薬剤組成物が投与される。
【0020】 4.好ましい実施態様の詳細な説明 4.1 略語 本明細書において使用されるとき、遺伝学的にコードされたアミノ酸に関する
略語は、従来のものであり、以下のとおりである:
【0021】
【表3】
【0022】 本明細書において使用される種々の式との混乱を回避するために、遺伝学的に
コードされるアミノ酸残基は、一般に3文字略語で示す。他に記載がなければ、
3文字略語は、遺伝学的にコードされるアミノ酸のL−エナンチオマーを指す。
D−立体配置のアミノ酸は、明示的に区別されよう。例えば、「Arg」は、L
−アルギニンを指し、そして「D−Arg」は、D−アルギニンを指す。1文字
略語が使用されるとき、大文字はL−立体配置のアミノ酸を指し、そして小文字
は、D−立体配置のアミノ酸を指す。例えば、「R」は、L−アルギニンを指し
、そして「r」は、D−アルギニンを指す。ペプチド又はポリペプチド配列が、
一連の1文字又は3文字略語として表されるとき、他に特定する記載がなければ
、標準使用法及び慣例により、左手方向がアミノ末端方向であり、そして右手方
向がカルボキシ末端方向であると理解されよう。
【0023】 4.2 定義 本明細書において使用されるとき、以下の用語は、以下の意味を有するものと
する: 「生物活性物質」とは、本明細書において定義される、標的細胞に及ぼす生物
学的作用を発揮する分子又は構成体をいう。典型的には、この物質は、標的細胞
に対して細胞障害性及び/又は細胞分裂抑制性であるか、あるいは標的細胞を別
の細胞障害性又は細胞分裂抑制性物質の作用に対して感受性にする。
【0024】 「結合残基」とは、生物活性物質をマスキング残基に結合させ、そして本明細
書に定義される、腫瘍若しくは標的細胞又はその近くで特異的、選択的切断を受
けやすい、本明細書に記載される構造を持つ分子残基をいう。
【0025】 「正常細胞」、「正常組織」、「健常細胞」及び「健常組織」とは、腫瘍の形
成、増殖及び転移に関与していない細胞及び/又は組織をいう。本明細書におい
て使用されるとき、腫瘍血管新生に関与する内皮細胞は、正常又は健常細胞の定
義には含まれない。
【0026】 「マスキング残基」とは、結合残基を介して生物活性物質に結合すると、結合
残基と一緒に、この物質の生物活性をマスキングして、結合残基の非特異的分解
を防止することができる分子残基をいう。
【0027】 「ポリペプチド」とは、2つ以上のアミノ酸のポリマーをいう。この用語はま
た、当業者には既知のアミノ酸のポリマーのミミック(例えば、ペプチドミメテ
ィクス)及びアミノ酸のポリマーの誘導体(例えば、グリコペプチド)を含む。
「ペプチド」という用語は、約2個〜約40〜50個のアミノ酸を有するポリペ
プチドを意味する。
【0028】 「特異的切断」とは、配列依存的な切断をいう。即ち、結合残基の特異的切断
は、結合残基の特定のアミノ酸配列をペプチダーゼが認識及び切断する結果とし
て起こる切断である。したがって「特異的切断」は、結合残基のアミノ酸配列の
特性であり、血清又は消化管に存在するエキソペプチダーゼによる非特異的分解
のような、非特異的手段により引き起こされる切断及び/又は分解とは区別すべ
きものである。
【0029】 「選択的切断」とは、標的細胞又はその近くで達成される強化又は優先された
特異的切断をいう。即ち、結合残基の特異的切断は、標的細胞に独特ではないが
、標的細胞又はその近くで達成される切断が大量であると、その切断は本発明の
目的にとって「選択的」になる。
【0030】 「標的細胞」とは、腫瘍細胞又は腫瘍血管新生に関与する内皮細胞をいう。
【0031】 4.3 発明 本発明は、結合残基を介してマスキング残基に結合した生物活性物質を含むこ
とを特徴とする、新規なプロドラッグを提供する。本発明のプロドラッグは、一
般に式(I):
【0032】
【化4】
【0033】 〔式中、Mは、マスキング残基であり、L1は、結合残基であり、Bは、生物活
性物質であり、そしてnは、1から生物活性物質中の反応性基の総数までの正の
整数である〕で示される化合物、又は薬剤学的に許容しうるその塩である。マス
キング残基は、結合残基の非特異的分解を防止し、そして(M−L1nは、生物
活性物質の生物活性をマスクすることにより、特異的に放出されるまでこれを不
活化する。結合残基は、腫瘍若しくは標的細胞又はその近くで特異的、選択的切
断を受けやすい。インビボでの結合残基の特異的かつ選択的切断によって、本発
明のプロドラッグとして処方される物質は、剥き出しの物質に比べて選択性の改
善を示す。プロドラッグとして処方される物質はまた、マスキング残基が血液又
は血清中のプロドラッグの分解を防止するため、剥き出しの物質に比べて安定性
の改善を示す。
【0034】 4.4 結合残基 結合残基は、腫瘍若しくは標的細胞又はその近くで特異的切断を受けやすい任
意の分子を含んでよい。結合残基は、マスキング残基、及び生物活性物質に共有
結合することによって、この2つを共に結合している。
【0035】 操作の理論に拘束されるわけではないが、腫瘍及び標的細胞は、細胞外媒体中
に、結合残基を特異的に切断できるプロテアーゼ又はペプチダーゼのような因子
を分泌すると考えられている。また、腫瘍血管新生に関与する内皮細胞は、同じ
分泌活性を示すと考えられている。健常細胞も、結合残基を特異的に切断する因
子を産生するが、腫瘍細胞及び腫瘍血管新生に関与する内皮細胞は、有意に高濃
度の因子を排出することにより、腫瘍及び/又は標的細胞、又はその近くでの特
異的かつ選択的切断を可能にしている。得られる生物活性物質の作用の選択性の
改善は、図1に図解される。図1Aは、結合残基(14)を介して生物活性物質
(12)に結合したマスキング残基(10)を含むことを特徴とする、本発明の
典型的なプロドラッグ(8)を図解する。図1Bにおいて、単独又は結合残基(
14)との組合せでマスキング残基(10)が、生物活性物質(12)の生物活
性をマスクするため、そして結合残基(14)が、健常細胞(16)又はその近
くで比較的安定であるため、プロドラッグ(8)は、健常細胞(16)の近くで
は活性でない。図1Cにおいて、標的(腫瘍又は血管新生性内皮細胞)細胞(1
8)は、結合残基(14)の間の結合を特異的に切断できる因子(20)を分泌
して、放出生物活性物質(12′)を遊離させる。遊離した生物活性物質(12
′)は、標的細胞(18)に対してその活性を自由に発揮できる。例えば、生物
活性物質(12′)は、標的細胞(18)上の受容体(22)に結合することに
より、腫瘍細胞(18)のアポトーシス又はべつの形の死を導く、細胞内カスケ
ード反応を開始させる。正常細胞(16)は、因子(20)を分泌しないか、又
は分泌しても非常に少量の因子(20)であるため、プロドラッグ(8)は、正
常細胞(16)の近くでは完全なまま残る。即ち、生物活性物質(12)は、正
常細胞(16)の近くでは活性でない。図2に図解されるように、プロドラッグ
としての生物活性物質の処方は、生物活性物質の毒性を減少させることができる
【0036】 因子(20)は、結合残基(14)を特異的に切断できる、標的細胞(18)
又はその近くの環境における、任意の分子又は条件であってよい。理論に拘束さ
れるわけではないが、因子(20)は、標的細胞により選択的に分泌されるプロ
テアーゼ又はペプチダーゼであると考えられる。しかし、結合残基を特異的に切
断する全てのプロテアーゼ又はペプチダーゼが未だ同定されてはいないため、因
子(20)は、結合残基を特異的に切断できる任意の条件であってもよい。例え
ば、因子(20)は、標的細胞の近くの低pH条件でさえありうる。因子(20
)は、標的細胞又はその近くに選択的に存在する。これは、専ら標的細胞又はそ
の近くに存在してもよく、あるいはプロドラッグ(8)が標的細胞又はその近く
で優先的に切断され、かつプロドラッグ(8)の投与が、剥き出しの生物活性物
質(12)又は放出生物活性物質(12′)の投与に比べて、標的細胞に対する
選択性の改善を示すように、標的細胞又はその近くで濃縮されていてもよい。
【0037】 好ましい結合残基は、標的細胞又はその近くで特異的切断を受けやすいペプチ
ドである。例えば、アミノ酸配列:(Leu)y(Ala−Leu)xAla−L
euを有するペプチド及びアミノ酸配列:(Leu)y(Ala−Leu)xAl
a−Phe〔ここで、y=0又は1であり、そしてx=1、2又は3である〕を
有するペプチドは、標的細胞に近い細胞外環境にある因子により特異的に切断さ
れることが発見されている。好ましいペプチド結合残基は、アミノ酸配列:Al
a−Leu−Ala−Leu(配列番号1)、Leu−Ala−Leu−Ala
−Leu(配列番号2)、Leu−Ala−Leu(配列番号3)、Leu−A
la(配列番号4)又はLeu−Ala−Phe(配列番号5)を含むことを特
徴とする。
【0038】 操作のどの特定の理論にも拘束されるわけではないが、結合残基は、2つの部
位で特異的に切断されると考えられる。第1のプロテアーゼ又はペプチダーゼは
、図3Aに実線の矢印で図解されるように、結合残基の各Leu−Ala−Le
u配列の第1のアミド結合(即ち、配列中のN末端LeuとAlaの間のアミド
結合)を切断すると考えられている。図3Aにおいて、iBuは、イソブチルを
表し;Meは、メチルを表し;Phは、フェニルを表し、そしてx及びyは、前
記と同義である。第2のプロテアーゼ又はペプチダーゼは、図3Aに断続線によ
り示されるように、続いて結合残基のAla−Leu又はAla−Phe残基の
アミド結合を切断すると考えられている。しかし、特異的切断はまた、結合残基
内の他のアミド結合又は他の結合でも起こるかもしれない。
【0039】 結合残基は、一方の末端を介して生物活性物質に、そしてもう一方の末端を介
してマスキング残基に結合している。結合の「極性」、即ち、結合残基のN末端
が生物活性物質に結合しているか、又はマスキング残基に結合しているかは、決
定的に重要であるかもしれないし、そうではないかもしれないが、生物活性物質
とマスキング残基の特性に依存するだろう。
【0040】 結合の異なる可能な極性及び生じる特異的切断生成物は、図3B及び図3Cに
結合残基(30)と共に図解されている。図3Bに関して、プロドラッグ(40
)では、マスキング残基Mは、結合残基(30)のアミノ末端に結合しており、
そして生物活性物質Bは、結合残基(30)のカルボキシ末端に結合している。
図解されるように、両方の結合はアミド結合であるが、後のセクションで更に詳
細に記述されるように、他の安定な結合も使用することができよう。第1のプロ
テアーゼ又はペプチダーゼは、結合残基のLeu−Ala−Leu配列の第1の
LeuとAlaの間のアミド結合を切断することにより、放出マスキング残基(
35)を遊離すると考えられる。第2のプロテアーゼ又はペプチダーゼは、生物
活性物質の誘導体のアミノ末端からN末端Ala残基を切断することにより、放
出生物活性物質(39)を遊離する。即ち、結合残基がLeu−Ala−Leu
−Ala−Leuのアミノ酸配列を持つペプチドであるとき、結合残基の切断は
、マスキング残基のLeu誘導体(35)及び生物活性物質のLeu誘導体(3
9)を遊離すると考えられる。マスキング残基のLeu誘導体(35)は、遊離
カルボキシ末端を持ち、そして生物活性物質のLeu誘導体は、遊離アミノ末端
を持つ。
【0041】 図3Cに関して、生物活性物質がアミノ末端に結合し、そしてマスキング残基
がカルボキシ末端に結合するように、結合の極性が逆転するならば(プロドラッ
グ(40′))、特異的切断によって放出生物活性物質(39′)及び放出マス
キング残基(35′)が得られる。即ち、結合残基が、Leu−Ala−Leu
−Ala−Leuのアミノ酸配列を持つペプチドであるとき、結合残基の切断は
、マスキング残基のLeu誘導体(35′)及び生物活性物質のLeu誘導体(
39′)を遊離すると考えられる。マスキング残基のLeu誘導体(35′)は
、遊離アミノ末端を持ち、そして生物活性物質のLeu誘導体(39′)は、遊
離カルボキシ末端を持つ。
【0042】 当業者であれば、多くの場合にマスキング残基と生物活性物質は、結合残基の
末端に直接結合するが、ある場合には結合残基を、マスキング残基と生物活性物
質のいずれか又は両方から、スペーシング残基により間隔をあけることが望まし
いことは認識されよう。結合残基と生物活性物質との間のスペーシング残基の使
用の例は、図3Dに図解される。
【0043】 図3Dにおいて、スペーシング残基(この例では、6−アミノカプロン酸とし
て図解される)を含む本発明のプロドラッグ(46)は、特異的に切断されて、
放出マスキング残基(35)と放出生物活性物質(48)が得られる。再度、ア
ミド結合が図解されるが、後のセクションで更に詳細に記述されるように、他の
安定な結合も使用することができよう。
【0044】 スペーシング残基は、特定の応用に応じて、長いか又は短いか、剛性か、半剛
性か又は柔軟性か、疎水性か又は親水性かであってよい。即ち、スペーシング残
基は、結合残基及び生物活性物質及び/又はマスキング残基との共有結合を形成
できる反応性基を有する任意の分子であってよい。結合残基のアミノ及びカルボ
キシ基末端と適切な結合を形成できる反応性基は、生物活性物質及びマスキング
残基と関連して以下に更に詳細に記述される。スペーシング残基としての使用に
適した分子は、ポリグリシン(柔軟性)又はポリプロリン(剛性)のようなペプ
チド、アミノアルキルカルボン酸(例えば、4−アミノブタン酸、5−アミノペ
ンタン酸、6−アミノカプロン酸など)、ポリエチレングリコールのようなポリ
アルキレンオキシド、及び当業者には明らかであるその他のものを含むが、これ
らに限定されない。使用されるならば、スペーシング残基は、好ましくは生物学
的に不活性な分子、即ち、免疫応答又は他の有害若しくは毒性応答を誘導しない
分子であるべきであり、放出生物活性物質(48)の生物活性に有意に有害な影
響を与えてはならない。
【0045】 以下に記述される二元プロドラッグのような、2つの生物活性物質を共に結合
させることが望まれる、本発明のある種の実施態様において、スペーシング残基
は、図3Eに図解されるように、特異的に切断可能な2つのペプチド配列を結合
させるために使用してもよい。図3Eに関して、二元プロドラッグ(52)は、
二元極性結合残基(58)を介して共に結合している2つの生物活性物質(38
)を含むことを特徴とする。二元極性結合残基(58)は、スペーサー残基(5
5)を介して共に結合している、2つの特異的に切断可能なペプチド(53)及
び(57)(これら自体は、上述のように結合残基を構成する)を含むことを特
徴とする。スペーサー(55)は、生物活性物質(38)への結合の前に、結合
残基(58)が2つのカルボキシ末端を有するように、両方のペプチド(53)
及び(57)のアミノ末端に結合しているジカルボン酸である。二元プロドラッ
グ(52)の特異的切断により、放出生物活性物質(39)及び結合残基(58
)の短いペプチド誘導体が生じる。任意のスペーシング残基は、前述のように、
結合残基(58)と一方又は両方の生物活性物質(39)の間に入れることがで
きよう。これらの二元極性結合残基は、本発明の二元プロドラッグに関連して以
下に更に詳細に記述される。
【0046】 nが1より大きい式(I)の実施態様において、プロドラッグの結合残基全て
が同一であってもよく、結合残基の幾つかが同一であり、他が異なっていてもよ
く、あるいは各結合残基が異なっていてもよい。同様に、マスキング残基(以下
に詳細に考察)の全て又は幾つかが同一であっても、あるいは異なっていてもよ
い。更に、結合残基の1つ、幾つか又は全てがスペーシング残基を含んでもよく
(どれも含まなくてもよい)、そして含むとき、種々のスペーシング残基は、同
一であっても異なっていてもよい。
【0047】 4.5 マスキング残基 最低でも、マスキング残基は、結合残基の非特異的切断及び/又は分解を防止
し、そして単独又は該結合残基と一緒に、生物活性物質の生物学的作用を阻害す
る。またこれは、以下に更に詳細に考察されるように、プロドラッグ組成物に、
インビボ半減期の長さ、安定性の増大、溶解度の高さなどのような、追加の有利
な性質を提供する。好ましいマスキング残基は、インビボで安定であり、健常細
胞に対して非毒性であり、そして非免疫原性であるものである。
【0048】 その最も単純な形で、マスキング残基は、例えば、インビボで結合残基を非特
異的に分解して、生物活性物質を時期尚早に放出させる、非特異的エキソペプチ
ダーゼなどによって、結合残基がインビボで非特異的に切断又は分解されるのを
防止する、結合残基の曝露末端の化学修飾を特徴としてもよい。例えば、結合残
基の曝露末端がアミノ末端であるとき、結合残基のアミノ末端アセチル化は、マ
スキング残基として役立つのに充分な、分解に対する抵抗性を提供しうる。結合
残基の曝露末端がカルボキシ末端であるとき、結合残基のアミド化又はエステル
化のようなカルボキシ末端修飾が、同様に分解に対する充分な抵抗性を提供しう
る。非特異的分解及び/又は切断を阻害又は防止する他の化学修飾も、当業者に
は明らかであろう。
【0049】 β−アミノ酸、γ−アミノ酸、コードされないα−アミノ酸及びD−アミノ酸
のような、遺伝学的にコードされないアミノ酸もまた、非特異的分解を阻害及び
/又は防止することが知られている。即ち、マスキング残基はまた、1つ以上の
遺伝学的にコードされないアミノ酸を含むことを特徴としてもよい。例えば、マ
スキング残基は、1つ以上のD−アミノ酸、1つ以上のβ−アミノ酸又はD−及
びβ−アミノ酸の混合物よりなるペプチドであってよい。この分類の好ましいマ
スキング基は、N−メチル−アラニン(「Me−Ala」)、D−アラニン及び
β−アラニンを含む。
【0050】 更に、マスキング残基は、生物学的に不活性な分子を含むことを特徴としても
よい。このような分子は、色素のような小分子、並びに生物学的及び非生物学的
ポリマーのようなポリマーを含む。例えば、ポリエチレングリコールのようなポ
リアルキレングリコールは、結合残基の分解を防止して、生物活性物質の活性を
阻害することができる。好ましいポリエチレングリコールマスキング残基は、約
1000Da、約4000Da、約5000Da、約8000Da、約10000Da又は
約12000Daの平均分子量を有する。他の適切な生物学的及び非生物学的ポリ
マーは、ジビニルエーテルと無水マレイン酸(DIVEMA)若しくは2−ヒド
ロキシプロピルメタクリラート(HPMA)のコポリマー、並びにDNA及び炭
水化物(糖質)のような他のポリマーを含むが、これらに限定されない。マスキ
ング残基はまた、プロドラッグの分解を防止し、かつ生物活性物質の活性を阻害
又は防止するポリペプチドであってもよい。好ましいポリペプチドマスキング残
基は、非免疫原性ポリペプチドである。例えば、適切なポリペプチドマスキング
残基は、アルブミン、イムノグロブリン、又は抗体を含む。
【0051】 本発明の他の実施態様において、マスキング残基は、それ自体が生物活性又は
他の治療活性を有していてもよい。マスキング残基が活性を有するプロドラッグ
化合物(「二元プロドラッグ」)は、以下に詳細に説明される。適切な活性マス
キング残基は、細胞分裂抑制性及び細胞障害性の小分子、他の治療活性小分子、
治療活性ポリペプチド及び当業者に知られている他の治療活性分子を含む。
【0052】 マスキング残基は、結合残基に結合しているため、マスキング残基は、結合さ
れることになる結合残基の末端に相補的な反応性基を含むか、又はこのような基
を含むように修飾する必要がある。例えば、マスキング残基を、結合残基のアミ
ノ末端に結合させようとするならば、マスキング残基は、カルボキシル基のよう
な、アミノ末端との共有結合を形成できる反応性基を含む必要がある。形成され
る結合は、プロドラッグの使用の条件、例えば、血清中で安定でなければならな
い。マスキング残基に含まれる、ペプチドのカルボキシ及びアミノ末端と反応し
て安定な結合を形成できる、相補的反応性基は、生物活性物質に関連して以下に
更に詳細に記述される。マスキング残基は、元々このような相補的反応性基を含
むか、又は適切な相補的反応性基を含むように修飾される。修飾の方法は、マス
キング残基の特性に依存し、そしてこれは当業者には明らかであろう。
【0053】 4.6 生物活性物質 生物活性物質は、腫瘍又は標的細胞に対する生物活性を有する任意の物質、あ
るいは腫瘍又は標的細胞に選択的に投与されることにより有利な立場を得る任意
の物質であってよい。好ましい生物活性物質は、例えば、TNFα、IFN−α
、IFN−γ、IL−1、IL−2、IL−6、IGF−1アンタゴニスト、細
胞溶解性ペプチド、抗血管新生性ペプチド、トロンボスポンジン由来ペプチド、
サブスタンスPアンタゴニスト、TRAIL(Apo−2リガンド)及びFas
リガンドのような、腫瘍及び/又は標的細胞に対して細胞障害性及び/又は細胞
分裂抑制性である物質、更には、細胞内で活性な物質と、それらの細胞への取り
込みを可能にするか又は促進する輸送ペプチドとを含むことを特徴とする構成体
を含む。当業者には認識されるように、本発明のプロドラッグとして処方するた
めには、生物活性物質は、これが共有結合することになる結合残基上の反応性基
と相補的、即ち、これと反応して共有結合を形成できる反応性基を元々含むか、
又はこれを含むように修飾するかのいずれかを必要とする。典型的には、このよ
うな相補的反応性基の対は、当該分野において周知であるように、求核試薬/求
電子試薬対を含む。
【0054】 多くの場合に、生物活性物質は、結合残基のN又はC末端に共有結合する。結
合残基のアミノ末端に相補的な適切な反応性基は、例えば、カルボキシ基、エス
テル(NHS−エステルのような活性化エステルを含む)、アジ化アシル、ハロ
ゲン化アシル、アシルニトリル、アルデヒド、ハロゲン化アルキルスルホニル、
ハロトリアジン、イミドエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、スル
ホン酸エステルなどを含む。結合残基のカルボキシ末端に相補的な適切な反応性
基は、例えば、アミン、アルコール、ハロゲン化アルキル、チオール、ヒドラジ
ン、ジアゾアルカン、スルホン酸エステルなどを含む。適度に穏やかな反応条件
下で、このような共有結合を形成するための条件は、周知である。好ましくは、
結合残基と生物活性物質との間の結合は、アミドである。相補的なアミノ及びカ
ルボキシ基を一緒に有する分子を結合させて、アミド結合を形成するための条件
は、周知である(例えば、Merrifield, 1997, Methods Enzymol. 289:3-13を参
照のこと)。特異的な結合化学は、実施例のセクションに提供されている。
【0055】 生物活性物質がポリペプチドであるならば、好ましい結合は、結合残基のカル
ボキシ末端アミノ酸残基とポリペプチドの遊離アミノ基との間のアミド結合であ
る。遊離アミノ基は、例えば、ポリペプチドのアミノ末端又はアミノ酸(例えば
、リシン残基)の側鎖にあってよい。生物活性ポリペプチドが、複数のアミノ含
有側鎖(例えば、複数のリシン残基)を含むことを特徴とする場合に、複数の結
合残基を、単一の生物活性ポリペプチド分子に結合させてもよい。結合した結合
残基のモル比は、便利には結合体化反応の生物活性物質:結合残基のモル比を調
整することにより制御することができる。腫瘍細胞のような標的細胞の近くでの
結合残基の特異的切断は、結合残基が切断される各アミン基で、ロイシン残基又
はフェニルアラニン残基により修飾された生物活性ポリペプチドを放出する。
【0056】 あるいは、結合残基は、生物活性物質の任意の他の反応性基に結合させてもよ
い。例えば、結合残基は、例えば、ポリペプチドのカルボキシ末端又は酸性アミ
ノ酸の側鎖で、あるいは他の物質の遊離カルボキシ基で、生物活性物質の遊離カ
ルボキシル基に結合させることができる。結合残基はまた、スルフヒドリル残基
及び結合基への結合を形成できる当業者には既知の他の残基を含む、ポリペプチ
ド中の他の反応性残基に結合させることができる。各反応性残基のための適切な
アダプター残基は、当業者には明らかであろう。
【0057】 ある場合に、生物活性物質は、結合残基との適切に安定な結合を生みださない
反応性基を含んでもよいか、あるいは生物活性物質は、結合残基上の所望の反応
性基に相補的でない反応性基を含む。例えば、生物活性物質と結合残基への所望
の結合点の両方が、カルボキシル基を含んでもよい。これらの場合に、生物活性
物質又は結合残基のいずれかの反応性基は、最初に二官能性アダプター分子の使
用によって相補的反応性基に変換してもよい。例えば、結合残基のカルボキシ末
端に、カルボキシル基を含む生物活性物質を結合させるのに適切な二官能性アダ
プター分子は、1,3−ジアミノプロパンのようなジアミノアルキルであろう。
このようなアダプター分子は、本発明の二元極性結合残基を作成するために使用
される前述のスペーサー残基(図3Eに図解)に多少類似している。アダプター
分子としての使用に適した分子は、反応性基の特性に依存し、そして当業者には
明らかであろう。
【0058】 好ましくは、生物活性物質は、この生物活性物質が、生物活性の有意な消失な
く誘導体化を許容しうる、生物活性物質の反応性基を介して結合残基に結合され
る。プロドラッグは、結合残基の特異的切断により、典型的には生物活性物質の
ロイシル誘導体を遊離するため、生物活性物質の遊離ロイシル誘導体は、最適な
活性を持つべきである。結合の妥当な部位及び/又は生物活性物質に対する結合
残基の妥当な比を求めるために、生物活性物質のロイシル誘導体を調製して、例
えば、以下の実施例において記述されるような細胞ベースの測定法及び当業者に
は既知の生物活性物質の活性を測定するのに適した他の測定法において、機能的
活性に関して測定することができる。更に、生物活性物質を、結合残基との縮合
のための相補的反応性基を生成させるために修飾するならば、修飾生物活性物質
のロイシル誘導体を最適な活性について測定する。
【0059】 好ましくは、プロドラッグ自体もまた最適な活性について測定される。完全な
プロドラッグは、正常な生理環境では活性がないかほとんどないはずであるが、
活性化された放出生物活性物質は、最適な活性を持つはずである。機能的活性に
ついての測定法は、プロドラッグの安定性、活性化、毒性及び治療活性を測定す
るための、当業者には既知の測定法を含む。この測定法は、例えば、試験動物を
使用してインビボで、又は当業者には既知の細胞ベースの測定法を使用してイン
ビトロで実施することができる。好ましい測定法は、当業者には既知の腫瘍細胞
モデルを使用する細胞ベースの測定法を含む。安定性、活性化、毒性及び治療活
性のための典型的な測定法は、以下の実施例に与えられる。マスキング残基、結
合残基及び生物活性物質の所定の組合せについて、マスキング/結合残基と生物
活性物質の比を変化させることにより、幾つかのプロドラッグを調製することが
できる。プロドラッグが、固相又は液相法により調製されるとき、生物活性物質
へのマスキング/結合残基の結合の部位もまた制御することができる。上述の生
物活性物質のロイシル誘導体に関する活性測定法の結果は、スクリーニングに先
だって潜在的に有用な化学量論及び/又は結合の部位を求めるために使用するこ
とができる。理想的プロドラッグは、当業者には既知の、生物活性物質に適した
測定法により、安定性、毒性、活性化及び治療活性の最適な組合せを示すもので
ある。
【0060】 4.6.1 細胞外で活性な生物活性物質 1つの重要な側面において、本プロドラッグの生物活性物質は、細胞外で活性
な生物活性物質である。細胞外で活性な生物活性物質は、細胞に入り込む必要な
くその生物活性を発揮できる物質である。好ましい細胞外で活性な生物活性物質
は、それら自体では細胞膜を通り抜けられない分子である。細胞外で活性な生物
活性物質は、細胞外受容体の小分子アゴニスト及びアンタゴニストのような小分
子及び細胞外で作用する他の小分子を含む。細胞外で活性な生物活性物質はまた
、サイトカイン、ペプチドホルモン、抗体のようなペプチド及びポリペプチド、
並びに当業者には既知の他の細胞外で活性な分子を含む。本発明のプロドラッグ
として処方できるポリペプチドの特定の例は、TNFα、IFN−α、IFN−
γ、IL−1、IL−2、IL−6、IGF−1アンタゴニスト、トロンボスポ
ンジン−1由来ペプチド、サブスタンスPアンタゴニスト、TRAIL(Apo
−2リガンド)及びFasリガンドを含むが、これらに限定されない。
【0061】 4.6.1.1 TNFαの腫瘍選択的プロドラッグ 本発明のこの側面の1つの好ましい実施態様において、プロドラッグは、活性
TNFαを標的細胞に選択的に送達する。TNFαは、本発明の任意の結合残基
を介してマスキング残基に結合させることができる。
【0062】 TNFαは、多くの異なる細胞型により26kDa(233アミノ酸)の内在性
膜貫通型タンパク質として産生され、そこから17kDa(157アミノ酸)の成
熟TNFαが、残基76〜77間のAla−Val結合のタンパク分解性切断に
より細胞外媒体中に放出される。抗腫瘍物質としての使用可能性により、組換え
タンパク質としてその精製、クローニング及び発現が行われた。生物活性TNF
αは、溶液中で三量体として存在し、そして各サブユニットは、157アミノ酸
のポリペプチドである。各成熟TNFα三量体は、サブユニットの界面で3つの
受容体分子と相互作用することができる。TNFαは、大多数の哺乳動物細胞の
表面上の特異的受容体に結合することにより、その活性を媒介する。TNFα結
合による受容体の凝集は、標的細胞における受容体活性化の機序かもしれない(
Bannerら, 1993, Cell 73:431-445)。TNFαに関する広範な総説については
、SidhuとBollon, 1993, Pharmacol. Ther. 57:79-128を参照のこと。
【0063】 TNFαは、インビトロで多くの細胞型に対して細胞障害性、及び細胞分裂抑
制性であってよい。しかし、この抗増殖作用は、腫瘍細胞に制限されるものでは
なく、内皮細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、線維芽細胞及びケラチノサイトのよう
な多くの正常細胞もまた、TNFαにより阻害される。TNFαに対するヒト内
皮細胞の感受性は、その増殖の速度に相関する。
【0064】 多重臨床試験(第I相及び第II相)が、抗癌物質としての組換えTNFαで行
われたが、目立った治療効果は得られていない。TNFα抵抗性、及び主にTN
Fα誘導全身毒性が、TNFαを抗新生物物質として使用するための2つの主要
な限界である。TNFαは、全身注入後の重篤な毒性のために、局所に、又は単
離肢灌流により注入できさえすれば、臨床試験において使用することができる。
TNFαを種々のスケジュールで投与した第I相臨床試験からのデータは、発熱
、悪寒、硬直、疲労、下痢、吐き気、頭痛、及び低血圧を含む共通の毒性副作用
を示している。重篤な低血圧は、用量を限定する毒性である。TNFαを単一物
質として投与した第II相試験では、有意な臨床的抗腫瘍作用は観察されなかった
【0065】 TNFαは、マウスでの腫瘍の緩解において見込みを示したが、TNFαの毒
性は、ヒトにおける治療効果を妨げる。マウスにおける腫瘍緩解には、約400
μg/kgの用量を必要とするが、一方ヒトは、わずか8〜10μg/kgしか許容でき
ず、それ以上では生命を脅かす毒性が起こる(Kramerら, 1988, Cancer Researc
h 48:920-925)。更に、TNFαは、ヒトへの注射後20分間という非常に短い
半減期である。TNFαは、急速に血液から一掃されて、腎臓と肝臓に集められ
る。更にこれは、急速にこれを不活化するN末端エンドペプチダーゼに感受性で
ある(NakamuraとKomiya, 1996, Biol. Pharm. Bull. 19:677-677)。インビボ
で動物試験は、インビトロと同様に、他のサイトカイン(IFN−α、IFN−
γ、IL−1、IL−2及びIL−6)、更には細胞障害性薬物(シクロホスフ
ァミド、ドキソルビシン)がTNFαの抗腫瘍作用を増強することを証明してい
る。しかし、毒性副作用は、許容できないレベルまで上昇するため、これは無効
力の問題を解決しない。
【0066】 生物学的及び非生物学的ポリマーへのTNFαの結合体化は、TNFαの安定
性における適度な改善を示している。例えば、TNFαは、カルボジイミドを使
用してゼラチンに結合体化できる。これは、その細胞障害活性の57%を保持し
ており、インビボでは腫瘍に対して更に活性である(Tabataら, 1993, J. Pharm
. Pharmacol. 45:303-308)。TNFαはまた、TNFαのリシンアミノ残基と
PEGの末端コハク酸基の間のアミド結合を介して、ポリエチレングリコールに
カップリングさせた(分子量5000のN−スクシンイミジルスクシナートモノ
メトキシポリエチレングリコール)。広範なPEG修飾により、インビトロの活
性は完全に消失したが、部分的に修飾された結合体は、TNFαの活性を一部保
持していた。TNFαはまた、分子量30,000のジビニルエーテルと無水マ
レイン酸コポリマー(DIVEMA)にも結合体化させている。
【0067】 最近の研究は、PEGによるTNFαの化学修飾が、サイトカインの安定性及
び抗腫瘍力を増大させることを証明している(Tsutsumiら, 1995, J. Pharmacol
. and Exp. Therapeutics 278:1006-1011)。TNFαは、PEGポリマーに共
有結合させて、種々の分子サイズの画分に分離した(Tsutsumiら, 1995, 上記)
。TNFαに対してPEGの量を増加させると、TNFαの比活性が有意に減少
した(Tsutsumiら, 1995, 上記)。しかし、PEG結合体は、未変性PEGに比
較して薬物動態学的安定性に改善を示した(Tsutsumiら, 1995, 上記)。更に、
PEG−TNFα結合体は、未変性TNFαよりも大きなインビボの腫瘍分布を
示した(Tsutsumiら, 1995, 上記)。全体的に見て、最も有効なPEG−TNF
α結合体(これは、そのリシンアミノ残基の56%がPEGにカップリングして
いる)は、比活性が2倍減少したにもかかわらず、未変性PEGに比べて100
倍改善したインビボの抗腫瘍力を示した(Tsutsumiら, 1995, 上記)。この誘導
体はまた、TNFα抵抗性腫瘍に対して非常に著しい活性を有する(Tsutsumiら
, 1995b, British J. of Cancer 71:963-968;Tsutsumiら, 1996, J. Pharm. Ex
p. Therap. 278:1006-1011;Tsutsumi, 1996b, Jpn. J. Cancer Res. 87:1078-1
085)。そのリシン残基の56%が修飾されたPEG−TNFα結合体は、試験
した結合体の中で、生物活性、血漿安定性及び組織分布の最適なバランスを示し
たが、使用するにはなお毒性が強すぎた(Tsutsumiら, 1995, 上記)。更に多く
PEG修飾した結合体は、安定性の改善を示したが、結合体の総合的な効力は、
比活性の有意な又は全体的消失のため減少した。後の研究では、高分子量(12
,000)のPEGでは、TNFα−PEG結合体が、リシン修飾の程度がわず
か36%で、その活性のほとんどを消失したことを証明した。この大きな消失は
、TNFαがその受容体と相互作用するのを容易に妨げる、大きな立体障害によ
って説明される(Tsutsumiら, 1996c, British J. Cancer 74:1090-1095)。
【0068】 抗新生物物質としてのTNFαの欠陥を克服するために、TNFαは、本発明
のプロドラッグとして処方することができる。TNFαプロドラッグは、上述の
PEG−TNFα結合体に匹敵する血漿安定性及び組織分布を示すはずである。
しかし、腫瘍若しくは標的細胞又はその近くでのプロドラッグの選択的活性化に
よりロイシル−TNFαが遊離するため、プロドラッグ結合体は、インビボのT
NFαの比活性の消失はほとんど又は全然示さないはずである。結果として、本
プロドラッグは、完全な不活化を達成するのに必要なだけ多くのPEGを持つこ
とができるため、毒性の減少が保証され、より高い用量レベルを使用できるよう
になる。更に、標的細胞又はその近くでのプロドラッグの選択的活性化は、PE
G−TNFα結合体に比べて、プロドラッグの選択性を劇的に増強するはずであ
る。PEG−TNFα結合体は、腫瘍細胞に対して適度な組織分布の優先性を示
しただけであるが、一方TNFαプロドラッグは、腫瘍細胞又はその近くで選択
的に活性化される。
【0069】 本発明のこの側面の1つの実施態様において、TNFαは、マスキング残基が
ポリアルキレングリコール(好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG))
のような生体適合性ポリマーである、プロドラッグとして処方される。1000
Da、4000Da、5000Da、8000Da、10000Da、120000Da又は
更に大きな分子量のような、種々の平均分子量のPEG分子を使用することがで
きる。結合残基は、本発明の任意の結合残基であってよい。好ましい結合残基は
、Ala−Leu−Ala−Leu(配列番号1)、Leu−Ala−Leu−
Ala−Leu(配列番号2)、Leu−Ala−Leu(配列番号3)、Le
u−Ala(配列番号4)又はLeu−Ala−Phe(配列番号5)を含む。
TNFαは、幾つかの遊離アミノ基を含むため、複数の異なるマスキング残基及
び結合残基を同時に使用することができる。
【0070】 TNFαの遊離アミノ基がPEGでマスクされた結合残基で飽和されている程
度は、他の因子の中でもとりわけ、PEG(又は他のマスキングポリマー)の平
均分子量(MW)に依存する。一般に、ポリマー又はPEGのMWが大きいほど
、プロドラッグ処方中のTNFαの活性を不活化するのに必要な飽和の程度は低
い。種々のMWの色々なPEGに関する飽和の特定のレベルは、Tsutsumiら, 19
95, 上記に教示されている。
【0071】 当業者であれば、本発明のTNFαプロドラッグの特別の利点が、Tsutsumiら
, 1995, 上記に報告されたものよりも相当高いレベルの飽和度を利用できること
であると認識しよう。PEG又はポリマーマスキング残基は、腫瘍若しくは標的
細胞又はその近くで特異的かつ選択的に切断されるため、本発明のプロドラッグ
として処方されると、TNFαは、PEG又はポリマーでマスクされた結合残基
により完全に不活化される。即ち、Tsutsumiら, 1995, 上記に記述されたTNF
α−PEG複合体とは異なり、使用されるPEGのMWにかかわらず、TNFα
分子は、PEGでマスクされた結合残基で飽和させてよい。即ち、本発明のPE
G−TNFαプロドラッグは、選択的であることに加えて、当該分野において報
告されたPEG−TNFα複合体よりも低い毒性を示しさえする。
【0072】 本発明の特異的PEG−TNFαプロドラッグ、更にはこれらの合成方法は、
実施例において提供される。
【0073】 4.6.1.2. 腫瘍活性化IGF−1アンタゴニストプロドラッグ 別の実施態様において、プロドラッグは、インスリン様成長因子(IGF−1
)のオリゴペプチドアンタゴニストを腫瘍又は標的細胞にインビボで選択的に送
達する。マスキング残基は、上述の任意のマスキング残基から選択することがで
き、そして結合残基もまた、上述の任意の結合残基から選択することができる。
好ましい実施態様において、マスキング残基は、PEGのようなポリマー、更に
好ましくはPEGのスクシニル化誘導体であり、そして結合残基は、テトラペプ
チドのAla−Leu−Ala−Leuである。結合残基は、アンタゴニストの
遊離アミノ基に、1つかそれ以上のリシン側鎖及び/又はアミノ末端で結合させ
る。
【0074】 インスリン様成長因子及びそのI型受容体の発現は、多くの癌型の進展中に非
常にしばしばアップレギュレートされる。最近のデータは、細胞の形質転換及び
腫瘍細胞周期プログレッションを刺激する他に、IGF−1受容体によるシグナ
ル生成は、腫瘍細胞アポトーシス(薬物誘導アポトーシスを含む)を阻害するこ
とにより、重要な腫瘍プロモーション作用を発揮することを示している。これと
矛盾なく、IGFが介在する生存機能の阻害は、従来の化学療法の抗腫瘍作用を
増大させるようである(Gooch J.L.ら, 1999, Breast Cancer Res. Treat. 56:1
-10)。
【0075】 IGF−1受容体リガンドに似ており、IGF−1受容体機能をインビトロ及
びインビボで効率的に阻害する、全体がD−アミノ酸からなるIGF−1のアン
タゴニストが設計されている。このようなペプチドの1つは、IGF−1のDド
メインに由来するレトロ−エナンチオ配列である、D−Cys−D−Ser−D
−Lys−D−Ala−D−Pro−D−Lys−D−Leu−D−Pro−D
−Ala−D−Ala−D−Tyr−D−Cysである。未変性タンパク質のコ
ンフォメーションとレトロ−エナンチオペプチドのそれとの間の重複を更に増大
させるために、これは、人工的に導入したジスルフィド架橋を介して環化されて
いる(Haeyryら, 1995, Faseb J. 9:1336-1344;Pietrzkowskiら, 1992, Cancer
Res. 52:6447-6451)。
【0076】 このようなアンタゴニストは、非常に有用な抗癌物質になりえたはずだが、多
くの正常細胞及び組織においてIGF−1受容体が介在するシグナル生成の決定
的な重要性、更にはIGF−1受容体とインスリン受容体の間の高い類似性のた
め、このようなアンタゴニストは、毒性副作用を回避するために癌細胞に選択的
に投与しなければならない。
【0077】 本発明の1つの実施態様において、PEGは、テトラペプチドリンカーのAl
a−Leu−Ala−Leuを介してIGF−1アンタゴニストに結合させる。
このアンタゴニストは、アンタゴニスト活性の有意な消失なくロイシンで誘導体
化することができる反応性基でのみ誘導体化される。
【0078】 4.6.1.3 トロンボスポンジン−1由来ペプチドの腫瘍活性化プロドラッ
グ 別の好ましい実施態様において、プロドラッグ化合物は、血管新生インヒビタ
ーのトロンボスポンジン−1(TSP−1)の構造から誘導される抗血管新生性
ペプチドを標的細胞に選択的に送達することができる。
【0079】 全ての腫瘍の絶え間ない増殖及び転移は、血管新生に強く依存している。実験
系では、血管新生のインヒビターは、腫瘍がそれに対して抵抗性を顕わさないと
思われる、顕著に活性な抗癌物質であることが証明されている(Harris, 1997,
The Lancet 349:13-15;Dawsonら, 1999, Mol. Pharmacol. 55:332-338;Boehm
ら, 1997, Nature 390:404-407)。しかし、効力、安定性、及び選択性が改善さ
れた新しい抗血管新生性薬物を開発するニーズは依然として存在する(Molemaら
, 1998, Biochem. Pharmacol. 55:1939-1945)。部分的又は全体的にD−アミノ
酸からなる抗血管新生性ペプチドが開発されている(Dawsonら, 1999, 上記)。
【0080】 トロンボスポンジン−1(TSP−1)は、血管新生の天然のインヒビターで
あり、新しい抗血管新生性分子の開発のための1つの供給源を提供する。TSP
−1は、血管新生を含む多様な生体活性へのその関与に寄与する、複数の構造ド
メインを持つ450kDaのホモ三量体タンパク質である。TSP−1の治療可能
性は、動物モデルにおいて立証されており、ここでTSP−1は、新血管形成を
妨げることにより悪性腫瘍の増殖及びプログレッションをブロックすることが証
明されている。
【0081】 本発明のこの実施態様において、TSP−1の1次配列に由来するペプチドが
、標的細胞への選択的送達のためのプロドラッグ化合物として処方される。特に
、TSP−1の1次構造からのアミノ酸のI型反復に由来するD−アミノ酸の逆
配列を含むことを特徴とするペプチド配列は、抗増殖性及び抗血管新生性を有す
る(Dawsonら, 1999, 上記)。このようなペプチドは、本発明のこの実施態様に
おけるプロドラッグ化合物としての処方に好ましい。本発明のこの実施態様にお
いて、好ましいマスキング残基は、PEGのような生体適合性ポリマーを含み、
そして好ましい結合残基は、Ala−Leu−Ala−Leu(配列番号1)、
Leu−Ala−Leu−Ala−Leu(配列番号2)、Leu−Ala−L
eu(配列番号3)、Leu−Ala(配列番号4)又はLeu−Ala−Ph
e(配列番号5)を含む。
【0082】 4.6.1.4 サブスタンスPアンタゴニストの腫瘍活性化プロドラッグ 本発明の別の好ましい実施態様において、サブスタンスPアンタゴニストは、
標的細胞への選択的送達のためのプロドラッグ化合物として処方される。
【0083】 成長因子は、癌の病理及び進展において重要な役割を演じる。治療の新しい標
的は、このような成長因子が、肺癌のプログレッションにおいて演じる役割の理
解から同定されている。ボンベシン、ブラジキニン及びサブスタンスPのペプチ
ドアンタゴニストは、対応する未変性成長因子のフラグメントにD−アミノ酸を
置換することにより開発されている。アンタゴニストは、広い範囲の神経ペプチ
ドの生物学的作用をブロックし、そして小細胞肺癌(SCLC)及び非小細胞肺
癌(NSCLC)のインビトロ、更にはインビボの細胞増殖を阻害する(Bunnら
, 1994, Cancer Res. 54:3602-3610;Secklら, 1997, Cancer Res. 57:51-54;C
hanとGeraci, 1998, Drug Resistance Updates 1:377-388)。特に、サブスタン
スPアンタゴニストは、現在知られていない機序によってSCLC細胞における
アポトーシスを誘導することが証明されている(ChanとGeraci, 1998, 上記)。
【0084】 したがって、この実施態様では、サブスタンスPアンタゴニストは、標的細胞
への選択的送達のためのプロドラッグとして処方される。好ましいサブスタンス
Pアンタゴニストは、アミノ酸配列:D−Arg−Pro−Lys−Pro−D
−Trp−Gln−D−Trp−Phe−D−Trp−Leu−Leu−NH2
(「SPD」)のペプチドである。好ましいマスキング残基は、PEGのような
生体適合性ポリマーを含み、そして好ましい結合残基は、Ala−Leu−Al
a−Leu(配列番号1)、Leu−Ala−Leu−Ala−Leu(配列番
号2)、Leu−Ala−Leu(配列番号3)、Leu−Ala(配列番号4
)又はLeu−Ala−Phe(配列番号5)を含む。
【0085】 4.6.2 ポリペプチド 本発明の他の実施態様において、生物活性物質は、ポリペプチドであってよい
。任意の細胞障害性及び/又は細胞分裂抑制性ポリペプチドを、本発明のプロド
ラッグとして処方することができる。生物活性物質がポリペプチドであるとき、
好ましい結合残基は、ペプチドを含み、そしてポリペプチドの生物活性物質と結
合残基の間の好ましい結合は、アミド結合である。適切なポリペプチドは、TN
Fα、IFN−α、IFN−γ、IL−1、IL−2、IL−6、IGF−1ア
ンタゴニスト、トロンボスポンジン−1由来ペプチド、サブスタンスPアンタゴ
ニスト、TRAIL(Apo−2リガンド)及びFasリガンドを含む、上述の
細胞外で活性なポリペプチドを含む。本発明のこれらの実施態様に適したポリペ
プチドはまた、必ずしも細胞外で活性でないポリペプチドも含む。ポリペプチド
の生物活性物質は、例えば、グランザイムBのような細胞内で活性なポリペプチ
ド、及び、例えば、細胞溶解性ペプチドのような、多様な機能を持つ他のポリペ
プチドを含む。
【0086】 4.6.2.1 細胞溶解性ペプチドの腫瘍活性化プロドラッグ 本発明の別の実施態様では、プロドラッグは、標的細胞にこれらの細胞をイン
ビボで溶解できるペプチドを選択的に送達する。この実施態様において、細胞溶
解性ペプチドは、上述の任意の結合残基を介して上述の任意のマスキング残基に
結合させる。結合残基は、遊離アミノ基のような細胞溶解性ペプチドの任意の反
応性基に結合させることができる。好ましいマスキング残基は、PEGを含み、
そして好ましい結合残基は、テトラペプチドのAla−Leu−Ala−Leu
を含む。スクシニル化PEG誘導体は、便利に結合残基に結合させることができ
る。
【0087】 ヨーロッパミツバチ(European honey bee)の毒液に見い出される26残基の
ペプチドであるメリチンは、細胞溶解性である。その活性は、その最初の20ア
ミノ酸により形成されるアルファ−ヘリックスの両親媒性に依存する(Dempsey,
1990, Biochim. Biophys. Acta 1031:143-161;Werkmeisterら, 1993, Biochim
. Biophys. Acta 1157:50-54, 1993)。メリチンの両親媒性アルファ−ヘリック
ス構造に基づいて、同様又は更に大きい細胞溶解活性を有する、単純化配列が設
計されている(Cornutら, 1994, FEBS Lett. 349:29-33;Castanoら, 1999, Bio
chim. Biophys. Acta 1416:161-175)。これは、交互のリシン及びロイシン残基
だけから作られるアルファ−ヘリックスの事例である(5〜22量体;Kij
j=2i)。15残基の長さは、血清の非存在下でインビトロで利用される実験
条件では最適であると考えられる(Lys−Leu−Leu−Lys−Leu−
Leu−Leu−Lys−Leu−Leu−Leu−Lys−Leu−Leu−
Lys)。更には、N末端アルファ−アミノ基をブロックすると、ペプチドの効
力が改善されることが証明されている。
【0088】 D−リシン及びD−ロイシン残基から作られる同様な配列(LK15)は、同
様の細胞溶解性を持つ両親媒性アルファ−ヘリックスを形成する。これは、体液
中に見い出される多くの哺乳動物ペプチダーゼの作用に対する抵抗性という利点
を有しており、よってインビボでは更に安定性が高い。
【0089】 腫瘍細胞膜に及ぼす細胞溶解性ペプチドの作用は、細胞障害性薬物をより多く
細胞に送り込むことを可能にするか、又は抵抗の機序に関与する代謝プロセスを
破壊することにより、薬物抵抗性を直接的に克服できた(細胞溶解)。
【0090】 これらの固有の細胞溶解活性のため、哺乳動物細胞において活性な剥き出しの
細胞溶解性ペプチドは、本質的に毒性である。これらは、プロドラッグの形で腫
瘍細胞を特異的に標的としなければならない。
【0091】 好ましい実施態様において、このプロドラッグは、テトラペプチド結合残基:
Ala−Leu−Ala−Leuを介してマスキング残基PEGに結合させた、
細胞溶解性ペプチドLK15を含むことを特徴とする。この細胞溶解性ペプチド
は、有意な細胞溶解活性の消失なくロイシル誘導体化を許容しうる反応性基での
み誘導体化される。
【0092】 4.6.3 細胞内で活性なプロドラッグ 別の好ましい実施態様において、生物活性物質は、輸送ペプチドに結合させた
細胞内で活性な物質を含むことを特徴とする構成体である。細胞内で活性な物質
は、細胞に対して細胞障害性又は細胞分裂抑制性であり、その細胞障害又は細胞
分裂抑制活性を細胞内で発揮する。細胞内で活性な物質を含むプロドラッグ化合
物は、式(II):
【0093】
【化5】
【0094】 〔式中、M及びL1は、上記式(I)と同義であり、TPは、輸送ペプチドであ
り、L2は、任意の細胞内で不安定な切断部位であり、Aは、細胞内で活性な生
物活性物質であり、mは、1〜(k−1)の整数であり、そしてpは、1〜(k
−m)の整数である(ここで、kは、TPの反応性基の総数に等しい整数である
)〕により図解される。
【0095】 適切な細胞内で活性な物質は、細胞内で活性な小分子、ペプチド、タンパク質
、核酸又はこれらの類似体を含む。これらの物質は、それ自体で細胞に入り込む
ことができるかもしれないし、できないかもしれない。例えば、適切な細胞内で
活性な物質は、アンスラサイクリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、葉酸誘
導体、ビンカアルカロイド、カリケアマイシン、ミトキサントロン、シトシンア
ラビノシド、アデノシンアラビノシド、リン酸フルダラビン、メルファラン、ブ
レオマイシン、マイトマイシン、L−カナバニン、タキソイド、カンプトセシン
、プロテアソームインヒビター、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ
インヒビター、エポチロン、メイタンシノイド(maytansinoids)、ディスコデ
ルモライド(discodermolide)、白金誘導体、デュオカルマイシン、コンブレタ
スタチン及びエピポドフィロトキシンのような、細胞に入り込むことができる小
分子を含む。細胞内で活性な物質はまた、アンチセンスRNA及びDNAを含む
アンチセンス核酸、リボザイム、DNA、cDNA、遺伝子、タンパク質並びに
ポリペプチドのような、細胞に入り込めないか、又は非効率的に細胞に入り込む
もっと大きな分子を含む。
【0096】 構成体の輸送ペプチド部分は、標的細胞中への細胞内で活性な物質の輸送及び
/又は物質の核移行を可能化、促進又は増強する。細胞内で活性な生物活性物質
を含む、任意の生物活性物質の作用は、輸送ペプチド構成体と共にプロドラッグ
として処方することにより、改善できる可能性がある。例えば、ドキソルビシン
のような、細胞内で活性な生物活性物質の、輸送ペプチド構成体とのプロドラッ
グとしての処方は、物質の取り込みを改善するだけでなく、細胞の核への物質の
送達をも可能にするかもしれない。核内で活性な物質の核内送達の改善は、その
作用の効力を増大させ、物質に対する抵抗性を減少させることができよう。
【0097】 細胞内及び/又は核内へ輸送され、そして一緒に複合体化又は結合体化された
ペプチド、タンパク質、核酸、更には小分子を運ぶという、珍しい性質を有する
、4つの別個の型のペプチドが最近になって性状解析されている。これらの型の
ペプチドのうち3つ、アンテナペディアホメオドメイン由来ペプチド、HIV
Tatトランス活性化タンパク質由来ペプチド、及びアルギニンの9量体は、原
形質膜を破壊することなく、これを通って移行することにより細胞に入り込む。
これらは、4℃で、更には生理的温度で細胞に入り込み、そしてこれらの取り込
みは、受容体依存性ではない。細胞膜を通過後、これらは細胞質に到達して、核
へと運ばれることができる(PCT出願番号WO 98/52614;Derossiら, 1996, J.
Biol. Chem. 271:18188-18193;Vivesら, 1997, J. Biol. Chem. 272:16010-16
017)。
【0098】 アンテナペディアペプチドは、キイロショウジョウバエ(Drosophila)転写因
子であるアンテナペディアのDNA結合ホメオドメインの第3ヘリックスに対応
する、16アミノ酸ポリペプチド(Lys−Lys−Trp−Lys−Met−
Arg−Arg−Asn−Gln−Phe−Trp−Val−Lys−Val−
Gln−Arg−Gly)である(Derossiら、1994, J. Biol. Chem. 269:1044
4-10450)。移行プロセスは、正に荷電したペプチドと負に荷電した膜リン脂質
の間の直接相互作用の確立、これに続く反転したミセルの誘導に基づくと考えら
れる。ミセルの親水性腔がペプチドを受け入れ、次にペプチドは細胞質区画に放
出されうる(Derossiら, 1996, 上記)。このペプチドは、癌細胞中にCDKイ
ンヒビター及びp53由来ペプチドを細胞内で運ぶために、インビトロで使用さ
れている(Bonfantiら, 1997, Cancer Res. 57:1442-1446;Kimら, 1999, J. Bi
ol. Chem. 274:34924-34931)。
【0099】 Tatは、HIV−1の複製に関与する86アミノ酸のタンパク質である。外
来のTatタンパク質は、原形質膜を通って移行し、細胞核に到達する。この移
行活性は、塩基性アミノ酸のクラスターが原因とされており、そしてこのクラス
ターを含む短いペプチドは、同様に原形質膜を通って移行して、タンパク質を核
に運ぶことができる。このような短く非常に有効なペプチドの1例は、Gly−
Arg−Lys−Lys−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Arg−
Pro−Pro−Gln−Cysである。移行は4℃でも起こり、エンドサイト
ーシス又は膜受容体による認識には関係しない。移行の様式は、アンテナペディ
アペプチドのそれに類似していると考えられ、塩基性アミノ酸と、細胞膜の負に
荷電したリン脂質との相互作用に関係する(Vivesら, 1997, 上記)。
【0100】 6〜25残基からなり、少なくともその50%がグアニジノ又はアミノ残基を
含むポリペプチドもまた、細胞膜を横切って、有機小分子、ペプチド、タンパク
質及び核酸のような化合物を4℃で、更には生理的温度で移行させることができ
る。詳細には、9個の隣接するアルギニン残基からなるペプチドは、非常に効率
的に、試験した全細胞型中にアンチセンスペプチド核酸、オバルブミン、抗体、
多様なペプチド、シクロスポリン及びタキソールを移行させることが判った。移
行の正確な機序は、未だ知られていない(PCT出願番号WO 98/52614)。
【0101】 第4の分類のペプチド(長さ3〜30アミノ酸残基)は、マウス及びヒトで天
然又は病的に生じる多反応性抗DNA抗体のCDR領域に由来する。抗DNA抗
体に由来する30アミノ酸の輸送ペプチドの1例は、Val−Ala−Tyr−
Ile−Ser−Arg−Gly−Gly−Val−Ser−Thr−Tyr−
Tyr−Ser−Asp−Thr−Val−Lys−Gly−Arg−Phe−
Thr−Arg−Gln−Lys−Tyr−Asn−Lys−Arg−Alaで
ある。これらのペプチドは、4℃で細胞に入り込まず、エンドサイトーシスによ
り取り込まれるようである(Avrameasら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 9
5:5601-5606;PCT出願番号WO 99/07414)。未だ同定されていない機序により
、ペプチドは、細胞質及び核に移行する。これらはまた、タンパク質、酵素及び
核酸を核に運ぶこともできる。
【0102】 部分的又は全体的にD−アミノ酸から作られた、これらの輸送ペプチドの変種
もまた使用することができる。インビボで、これらは、安定性の大きな改善とい
う利点を持つ。
【0103】 この実施態様において、マスキング残基は、細胞膜を横切る輸送ペプチド−細
胞内で活性な物質構成体の移行を防止することにより、細胞内で活性な物質の生
物活性を阻害し、そして任意の結合残基の非特異的なインビボの分解を防止する
任意の残基であってよい。プロドラッグが、マスキング残基及び/又は結合残基
を切断することができる条件をほとんど又は全然表明しない健常細胞の環境にあ
るとき、マスキング残基は、健常細胞への細胞内で活性な物質の非選択的侵入を
防止する。よってプロドラッグの毒性は減少する。腫瘍又は標的細胞の環境では
、マスキング及び/又は結合残基は、切断されて構成体を遊離する。構成体の輸
送ペプチド部分は、細胞内で活性な物質を細胞中に運び、そこで物質は腫瘍又は
標的細胞でその活性を発揮することができる。
【0104】 この構成体は、場合により輸送ペプチドと細胞内で活性な物質の間に切断部位
を含むことを特徴としてもよい。切断部位は、細胞内での切断を受けやすく、か
つ細胞外環境又は血清中での切断には抵抗性である必要がある。切断部位は、そ
れ自体で細胞外切断には抵抗性であるか、あるいは切断部位は、構成体がプロド
ラッグとして処方されるとき、細胞外切断に抵抗性であってもよい。プロドラッ
グの結合残基の選択的切断によって、標的細胞又はその近くでの構成体の選択的
活性化が得られるため、切断部位は標的細胞又はその近くで選択的に切断可能で
ある必要はない。しかし、切断部位は、標的細胞内での選択的切断に対して場合
により感受性であってもよく、このことが、更に良好な活性と更に大きな標的細
胞選択性をこの実施態様のプロドラッグに与える。適切な切断部位は、細胞外環
境で安定であり、かつ細胞内でプロテアーゼ切断を受けやすいペプチド配列を含
む。例えば、適切なプロテアーゼ感受性ペプチド配列は、Arg−Xaa−(L
ys/Arg)−Arg又は他のフリン基質(Nakayama, 1997, Biochem. J. 32
7:625-635)、Asp−Glu−Val−Asp−Ala−Pro−Lys又は
他のカスパーゼ基質(Enari H.ら, 1996, Nature 380:723-726)及びLeu−L
eu−Val−Tyr又は他のプロテアソーム基質(Rockら, 1994, Cell 78:76
1-771)を含むが、これらに限定されない。
【0105】 4.6.3.1 輸送ペプチドのマスク誘導体 本発明の実施態様において、輸送ペプチドは、結合残基を介してマスキング残
基で選択的にマスクされる。マスキング残基は、単独又は結合残基と一緒に、輸
送ペプチドの細胞内輸送を妨げる。結合残基が選択的に切断されると、活性な輸
送ペプチドが遊離される。次に輸送ペプチドは、生物活性物質を一緒に細胞中及
び/又は細胞の核中に運ぶことができる。結合残基は、上述の結合残基のいずれ
かであってよく、そしてマスキング残基は、上述のマスキング残基のいずれかで
あってよい。結合残基は、輸送活性の有意な又は完全な消失なしに、ロイシル誘
導体化を許容しうる輸送ペプチドの任意の反応性基に結合させることができる。
好ましいマスキング残基は、スクシニル化PEGを含み、そして好ましい結合残
基は、テトラペプチドのAla−Leu−Ala−Leuを含む。
【0106】 これらの輸送ペプチドは、細胞内に、そして核内に輸送されるという珍しい性
質を有する。これらは、これらと複合体化又は結合体化されたペプチド、タンパ
ク質、核酸、及び小分子を運ぶことができる。しかし、輸送ペプチドは、全てで
はないとしてもほとんどの正常細胞を含む、広い範囲の細胞型の中に輸送される
。よって細胞障害性又は細胞分裂抑制性物質を含む輸送ペプチド構成体は、重大
な毒性の問題に遭遇する。
【0107】 正常細胞を避け、それによって毒性を最小化する、標的細胞への輸送ペプチド
構成体の選択的送達は、特に望ましい。癌細胞選択的ベクターを開発するために
、輸送ペプチド構成体が本発明のプロドラッグとして処方される。ペプチドの輸
送活性は、例えば、結合テトラペプチドのAla−Leu−Ala−Leuを介
してのマスキング残基への結合体化によって、可逆的にブロックされる。活性は
、輸送ペプチドの特異的な本質的に正に荷電した側鎖上又はその近くでの結合体
化のため、ブロックされる。結合テトラペプチドは、標的細胞の細胞外環境にお
いて選択的に放出されるペプチダーゼによって切断可能である。例えば、PEG
での輸送ペプチドの修飾は、ペプチドの輸送活性をマスクし、更にまたプロドラ
ッグの溶解度及び半減期を増大させる。
【0108】 プロドラッグの選択的切断は、輸送ペプチドのロイシン誘導体を遊離するため
、輸送活性の消失が最小で誘導体化できる輸送ペプチドの残基が同定される。輸
送ペプチドの反応性基は、最初にロイシン残基で誘導体化して、結合残基及びマ
スキング残基での誘導体化に適した部位を決定する。輸送ペプチドの適切な反応
性基は、輸送活性の有意な消失なく、ロイシン残基での誘導体化を許容しうる任
意の反応性基を含む。
【0109】 本発明のこの実施態様の典型的なプロドラッグは、誘導体化輸送ペプチドに結
合したドキソルビシンを含むことを特徴とする。この輸送ペプチドは、上述のよ
うに決定した輸送ペプチドの適切な反応性基で、結合テトラペプチドのAla−
Leu−Ala−Leuを介して、マスキング残基のPEGで誘導体化すること
ができる。
【0110】 4.6.3.2 プロアポトーシスタンパク質−担体ペプチドプロドラッグ 本発明のこの実施態様において、プロドラッグは、細胞内で活性なプロアポト
ーシスタンパク質を標的細胞にインビボで選択的に輸送する。プロアポトーシス
タンパク質は、プロアポトーシスタンパク質と輸送ペプチドを含むことを特徴と
する構成体として、プロドラッグに処方される。輸送ペプチドは、細胞中へのプ
ロアポトーシスタンパク質の侵入を促進する。輸送ペプチドは、上述のものから
選択される。輸送ペプチドは、プロアポトーシスタンパク質の任意の反応性基に
結合させることができ、好ましい反応性基は、タンパク質のアミノ末端の遊離ア
ミノ基及びタンパク質のリシン側鎖の遊離εアミノ基を含む。本発明のこの実施
態様において好ましいアポトーシスタンパク質は、グランザイムBである。
【0111】 マスキング残基は、単独又は結合残基と一緒に、ペプチドの輸送活性を妨げ、
結合残基の非特異的切断を防止する、上述の任意のマスキング残基であってよい
。結合残基は、上述の任意の結合残基であってよい。好ましいマスキング残基は
、PEGを含み、好ましい結合残基は、テトラペプチドのAla−Leu−Al
a−Leuを含む。プロドラッグが標的細胞の環境にあるとき、結合残基は、切
断されて活性輸送ペプチドの活性ロイシル誘導体を遊離する。輸送ペプチドは、
これと共にプロアポトーシスタンパク質を細胞中に運ぶ。輸送ペプチドは、細胞
内で切断を受けやすい任意の切断部位を介して、タンパク質に結合させることが
できる。そうするならば、切断部位は、細胞内で切断されて、完全な活性プロア
ポトーシスタンパク質を標的細胞内で遊離することができる。
【0112】 約28.5kDaの単鎖セリンプロテアーゼであるグランザイムBは、最初にキ
ラーリンパ球により誘導されるアポトーシスの開始において決定的に重要な役割
を演じることが証明された。この死滅作用は、膜溶解性タンパク質のパーフォリ
ンとセリンプロテアーゼのグランザイムBとの相乗作用により生じる(Blinkら,
1999, Immunol. Cell Biol. 77:206-215;Trapaniら, 1998, J. Biol. Chem. 2
73:27934-27938)。パーフォリンは、酵素のための通路を構成する膜貫通孔の形
成を誘導することにより、グランザイムBを細胞質及び細胞の核に到達させる。
次にグランザイムBは、酵素的切断及びプロカスパーゼの活性化によって既存の
死の経路を開始させることにより、また、DNA−PK及びポリ−ADPリボー
スポリメラーゼのように、核内基質を直接切断することにより、アポトーシスを
誘導する(Froelichら, 1996, Biochem. Biophys. Res. Commun. 227:658-665;
Yangら, 1998, J. Biol. Chem. 273:34278-34283)。このプロドラッグにおいて
、輸送ペプチドは、グランザイムBを細胞に侵入させ、アポトーシスを誘導させ
ることにより、潜在的にパーフォリンの役割を演じる。
【0113】 本発明のこの実施態様の好ましいプロドラッグは、グランザイムBのカルボキ
シ末端から誘導体化輸送ペプチドのアミノ末端へのアミド結合を介した、上述の
、輸送ペプチドのPEG−Ala−Leu−Ala−Leu誘導体に結合したグ
ランザイムBを含むことを特徴とする。グランザイムBプロドラッグは、単独又
はドキソルビシン若しくは上述の任意のドキソルビシンプロドラッグとの組合せ
で投与することができる。
【0114】 4.7 二元プロドラッグ化合物 本発明の重要な実施態様において、プロドラッグ化合物は、二元プロドラッグ
である。二元プロドラッグ化合物は、2つ以上の物質を標的細胞に送達すること
ができる。二元プロドラッグにおいて、生物活性物質は、詳細に上述されたよう
な細胞分裂抑制性又は細胞障害性物質である。更に、二元プロドラッグのマスキ
ング残基もまた生物活性を有する。
【0115】 そのマスキング残基が、単独又は結合残基と一緒に生物活性物質の活性を防止
し、プロドラッグからのその放出の前には不活性であり、かつプロドラッグのイ
ンビボ分解を防止する限り、マスキング残基を、細胞内で生物活性であっても細
胞外で生物活性であってもよい。適切なマスキング残基を、詳細には本明細書で
考察される細胞外及び細胞内での生物活性物質から選択することができる。適切
なマスキング残基はまた、小分子の治療物質も含む。例えば、適切なマスキング
残基を、アンスラサイクリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、葉酸誘導体、
ビンカアルカロイド、カリケアマイシン、ミトキサントロン、シトシンアラビノ
シド、アデノシンアラビノシド、リン酸フルダラビン、メルファラン、ブレオマ
イシン、マイトマイシン、L−カナバニン、タキソイド、カンプトセシン、プロ
テアソームインヒビター、ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター、エポ
チロン、メイタンシノイド(maytansinoids)、ディスコデルモライド(discode
rmolide)、白金誘導体、デュオカルマイシン、コンブレスタスタチン及びエピ
ポドフィロトキシンから選択することができる。
【0116】 本発明の二元プロドラッグは、腫瘍又は標的細胞に及ぼす生物活性及び治療効
果を有する、任意の対の物質を含む。例えば、二元プロドラッグは、2つの生物
活性ポリペプチド、2つの生物活性小分子、2つの細胞外で活性な生物活性物質
、生物活性ポリペプチドと生物活性小分子、及び当業者には明らかな他の対の生
物活性物質を含むことを特徴としてよい。本発明の特に有用なプロドラッグは、
標的細胞で協調して作用する、1対の物質を含むことを特徴とするものである。
例えば、一方の物質は、受容体に結合すると、もう一方の物質の輸送を促進する
、細胞表面受容体に対するリガンドであってもよい。別の有用な対では、一方の
物質は、細胞膜の透過性を変化させて、もう一方の物質の輸送を促進することが
できる。第3の対では、小分子とポリペプチドが、同じ標的細胞に相乗作用を有
していてもよい。
【0117】 マスキング残基及び生物活性物質は、前述されたように結合残基に結合させる
ことができる(例えば、図3B、図3C、及び図3Dを参照のこと)。もし生物
活性物質もマスキング残基も、結合残基のアミノ末端に結合されるとき、切断後
に充分な活性を保持していないならば、これらは、両方ともカルボキシル基を介
して結合残基に結合させなければならない。これは、便利には図3Eに図解され
る、「二元極性」結合残基を使用して達成することができる。
【0118】 図3Eに関して、二元極性結合残基(58)は、2つの生物活性物質(38)
に結合させて、二元プロドラッグ(52)が得られる。二元極性結合残基(58
)は、3つのセグメント:第1セグメント(53)、第2セグメント(55)及
び第3セグメント(57)を含むことを特徴とする。セグメント(53)及び(
57)は、それぞれ本明細書に記述される結合残基であり、同一であっても異な
っていてもよい。結合残基セグメント(53)及び(57)は、第2セグメント
(55)を介して、そのアミノ末端で一緒に結合している。即ち、第2セグメン
ト(53)は、典型的には、ジカルボン酸のような、アミノ基との共有結合を形
成できる、2つの反応性基を有するスペーサー又はアダプター残基である(例え
ば、シトラコニル、ジメチルマレイル、グルタリル、スクシニル及びジグリコリ
ル)。標的細胞の近くに置くと、二元プロドラッグ(52)は切断されて、二元
プロドラッグ(52)1モル毎に2モルの放出生物活性物質(39)を放出する
。当然ながら、二元プロドラッグ(52)は、場合により、前述のように、一方
又は両方の生物活性残基の間にあるスペーシング残基を含んでもよい。
【0119】 図3Eに図解される二元プロドラッグ(52)において、結合セグメント(5
3)及び(55)は、生物活性物質(38)と同様に同一である。しかし、当業
者であれば、必ずしもこうでなくともよいことを認識しよう。結合セグメント(
53)及び(55)並びに生物活性物質(38)は、それぞれ相互に独立に、同
一であっても異なっていてもよい。
【0120】 本発明のある二元プロドラッグの実施態様において、一方の生物活性物質は、
小分子活性物質のドキソルビシンである。ドキソルビシンは、上述の任意の生物
活性剤に結合させることができる。例えば、1つの実施態様において、二元プロ
ドラッグは、2つの抗新生物物質、TNFαとドキソルビシンを送達する。他の
2つの二元プロドラッグの実施態様において、ドキソルビシンは、上述のIGF
−1アンタゴニストに、又は上述の細胞溶解性ペプチドLK15に結合させるこ
とができる。1つのドキソルビシン分子を、本発明の結合残基の1つを介して別
のドキソルビシン分子に結合させて、選択的プロドラッグを生成させることさえ
できる。
【0121】 4.7.1 TNFαを含むことを特徴とする二元プロドラッグ 好ましい二元プロドラッグは、相互に協調して作用する生物活性剤の対を含む
ことを特徴とする。例えば、多くの腫瘍細胞株でのTNFαの細胞障害作用は、
他のサイトカイン及び抗腫瘍薬物によって増強される。例えば、IFN−γ、I
FN−α及びIL−1は、TNFαの細胞障害作用を強化するか、又はTNFα
に対する細胞の抵抗性を排除することが証明されている。TNFαと、ドキソル
ビシン、VM−26、エトポシド、テニポシド及びダウノルビシンのようなトポ
イソメラーゼを標的とする薬物との間には相乗作用が存在するという説得力ある
証拠が存在する。この相乗作用は、トポイソメラーゼI及びIIの比活性の急速な
上昇と関係しており、これによってDNA鎖の破壊が増強され、切断複合体が生
じる(Kreuserら, 1995, Recent Results Cancer Res. 139:371-382)。ドキソ
ルビシンはまた、TNFαでの治療の前又は治療中に投与すれば、内因性TNF
αのため、TNFαに対する腫瘍細胞の抵抗性を抑制することもできる(Borsel
linoら, 1995, Anticancer Res. 14:2643-2648;Watanabeら, 1995, Jpn. J. Ca
ncer Res. 86:395-399)。
【0122】 TNFαは、古典的な抗癌物質、そして特にアンスラサイクリンと相乗的に作
用することが証明されているため、TNFαとドキソルビシンを含むことを特徴
とする二元プロドラッグを調製する。ドキソルビシンは、ペプチド結合残基のカ
ルボキシ末端に結合させることができ、そしてTNFαは、結合残基のアミノ末
端にジカルボン酸スペーサーを介して結合させることができる。標的細胞の近く
でのプロドラッグの活性化によって、ロイシル−ドキソルビシン及び結合残基の
一部で修飾されたTNFαが遊離する。
【0123】 本発明の1つの実施態様において、生物活性物質のドキソルビシンは、報告さ
れるようにテトラペプチド結合残基のAla−Leu−Ala−Leuに結合さ
せて(米国特許第5,962,216号)、Ala−Leu−Ala−Leu−Doxが
得られる。TNFα二元プロドラッグは、メチルマレイルアダプター残基を介し
て、Ala−Leu−Ala−Leu−DoxをTNFαのロイシル誘導体に結
合させることにより調製される。
【0124】 4.7.2 二元トロンボスポンジン−1誘導体プロドラッグ 他の実施態様では、ドキソルビシンは、上述のトロンボスポンジン−1由来ペ
プチドに結合させて、強力な二元プロドラッグを生成させることができる。
【0125】 抗血管新生性化合物と細胞障害性抗癌物質との間に、相乗作用がしばしば観察
されているため(Teicherら, 1992, Cancer Res. 52:6702-6704)、二元プロド
ラッグの形態におけるこのようなペプチドとアンスラサイクリンとの組合せは、
2つの物質のそれぞれの抗腫瘍作用を増強することができた。またこれは、明ら
かに薬物抵抗性問題を克服する助けとなりえた。
【0126】 本発明の1つの実施態様において、二元プロドラッグは、Ala−Leu−A
la−Leu−DoxをTSP−1のペプチド誘導体のカルボキシ末端又はアミ
ノ酸側鎖に結合させることにより調製される。本発明のこの実施態様の生物活性
物質は、TSP−1の1次構造からのコンセンサス配列に由来するペプチドを含
むことを特徴とする。特に、TSP−1のアミノ酸のI型反復に由来するD−ア
ミノ酸の逆配列は、抗増殖性及び抗血管新生性を有し(Dawsonら, 1999, 上記)
、本発明のこの実施態様において特に有用な生物活性物質である。
【0127】 4.7.3 二元サブスタンスPアンタゴニストプロドラッグ 本発明の更に別の実施態様において、二元プロドラッグは、ドキソルビシンを
サブスタンスPアンタゴニストに結合させることにより調製することができる。
【0128】 最近の研究成果は、化学療法物質と組合せたサブスタンスPアンタゴニストの
使用が、肺癌における薬物抵抗性を克服するための方法を提供しうることを示し
た(ChanとGeraci, 1998, 上記)。抗癌物質をサブスタンスP成長因子のアンタ
ゴニストに結合体化させると、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌に対する強力な薬物
の開発のための効率的なアプローチが得られる。
【0129】 本発明のこの実施態様の二元プロドラッグは、D−Arg−Pro−Lys−
Pro−D−Trp−Gln−D−Trp−Phe−D−Trp−Leu−Le
u−NH2(「SPD」)という配列の強力なサブスタンスPアンタゴニストを
含むことを特徴とする。Ala−Leu−Ala−Leu−Doxは、ジカルボ
ン酸メチルマレイル残基を介してSPDのアミノ末端に結合させることができる
【0130】 4.8 プロドラッグ化合物の製造方法 プロドラッグ化合物は、当業者には既知の標準的合成法又は組換え法により調
製することができる。例えば、ペプチド結合残基は、従来の固相又は液相ペプチ
ド化学によって合成することができる。生物活性物質及びマスキング残基は、市
販の供給源から、又は天然供給源からの精製、組換え発現及び他の方法のような
、他の周知の方法により入手することができる。二元極性リンカー及びスペーサ
ー残基は、市販の供給源から、又は他の周知の方法により、合成又は入手するこ
とができる。
【0131】 典型的には、本プロドラッグは、マスキング残基と生物活性物質を結合残基と
共に縮合することにより、合成により調製される。プロドラッグ化合物の調製に
おいて、有利には周知の保護基を使用することができる。例えば、本発明のプロ
ドラッグ化合物は、図4Aに与えられるスキームにより調製することができる。
結合残基(30)の遊離アミノ基は、最初にFmocのような標準的保護基で保
護されて、Fmoc保護化合物(70)が得られる。次にFmoc保護化合物(
70)の反応性基を生物活性物質(38)の相補的反応性基と縮合して、Fmo
c保護複合体(72)を生成させることにより、共有結合が生成する。複合体(
72)の脱保護により化合物(74)が得られる。次にマスキング残基(34)
の相補的反応性基との縮合により、プロドラッグ化合物(76)が生成する。当
業者であれば、この一般スキームは、事実上任意のプロドラッグに適合させうる
ことを認識するであろう。例えば、マスキング残基は、生物活性物質との反応の
前に、結合残基に結合させることができる。更に、複数のFmoc保護複合体(
72)は、これらのモル比の日常作業的な調整によって、単一の生物活性物質(
38)と縮合させることができる。
【0132】 図4Bにおいて、本発明の典型的なプロドラッグ組成物(40)は、反応性カ
ルボキシ基を含むマスキング残基の活性化型(34)を、結合残基(30)のア
ミノ末端にカップリングさせることにより、化合物(36)を得ることによって
作成される。化合物(36)は、反応性アミン基を含む生物活性物質(38)に
結合させて、プロドラッグ(40)が得られる。標的細胞の近くでは、プロドラ
ッグ(40)は、特異的に切断されて、化合物(35)及び放出生物活性物質(
39)が得られる。放出生物活性物質(39)は、結合残基(30)からのC末
端ロイシン残基を含む。反応を制御するために、図4Aの保護戦略を使用しても
よい。
【0133】 図4Cは、スペーシング残基を含むことを特徴とする、本発明のプロドラッグ
の調製法を図解する。結合残基(30)に結合したマスキング残基(34)を含
むことを特徴とする、化合物(36)は、スペーシング残基(42)にカップリ
ングさせて、化合物(44)が得られる。次に化合物(44)は、生物活性物質
(38)とカップリングさせて、プロドラッグ化合物が得られるが、ここで生物
活性物質(38)は、スペーシング残基(42)により結合残基(30)から分
離されている。標的細胞の近くでプロドラッグが活性化すると、生物活性物質(
38)、スペーシング残基(42)及びロイシン残基を含むことを特徴とする、
化合物(48)が遊離する。また、この合成は、図4Aに図解されるものと類似
した保護スキームを利用することにより、制御してもよい。
【0134】 二元プロドラッグの調製法は、図4Dに図解される。化合物(58)は、逆の
極性で二元極性結合残基(55)により結合された、2つの結合残基(53)及
び(57)を含むことを特徴とする。重要なことに、化合物(58)は、プロド
ラッグの他の残基に結合させるための、2個の遊離カルボキシル基を有する。2
分子の生物活性物質(38)は、化合物(58)の遊離カルボキシル基にカップ
リングさせて、二元プロドラッグ(52)が得られる。標的細胞の近くでの二元
プロドラッグ(52)の切断により、2分子の放出生物活性物質(39)が遊離
する。放出生物活性物質(39)の両分子は、ロイシン残基で誘導体化された生
物活性剤(38)を含むことを特徴とする。
【0135】 結合残基がペプチドであり、かつ生物活性物質がポリペプチドであり、かつ結
合残基の末端がアミド結合を介して生物活性物質の相補的末端に結合しているな
らば、プロドラッグ、又はその一部は、便利には組換え合成法により調製するこ
とができる。結合残基及び生物活性物質のアミノ酸配列をコードする核酸を調製
して、標準法により共有結合残基−生物活性物質複合体を発現するために使用す
ることができる(例えば、Ausubelら, 1987, Current Protocols in Molecular
Biology, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと)。次にマスキング
残基は、例えば、標準的液相ペプチド化学により結合残基のアミノ末端に結合さ
せることができる。マスキング残基もペプチド又はポリペプチドであり、かつマ
スキング残基の末端もアミド結合を介して結合残基の相補的末端に結合している
ならば、便利にはプロドラッグ全体を組換え合成法により調製することができる
。プロドラッグを発現する核酸は、マスキング残基、結合残基及び生物活性物質
のアミノ酸配列を直列にコードすべきである。組換え合成法により産生されるプ
ロドラッグは、結合残基がプロテアーゼ、ペプチダーゼ又は他の因子によって切
断されない、任意の真核生物又は原核生物系で発現することができる。
【0136】 4.9 処方、投与及び用量 4.9.1 組成物及び投与 本発明のプロドラッグは、腫瘍又は標的細胞の増殖を阻害又は防止するための
、多様な応用において使用することができる。例えば、本プロドラッグは、ヒト
及び動物における腫瘍細胞増殖に関連する疾患を治療又は予防するために使用す
ることができる。
【0137】 癌又はこれに関連した疾患を治療又は予防するために使用するとき、本発明の
プロドラッグは、単一で、プロドラッグの混合物として、他の抗新生物物質との
組合せで、又は他の薬剤学的活性物質との組合せで、投与又は適用することがで
きる。プロドラッグは、プロドラッグそれ自体として投与することができるか、
あるいは当該分野において周知であるように、種々の担体、希釈剤又は賦形剤と
混合してもよい。
【0138】 本発明のプロドラッグを含むことを特徴とする薬剤組成物は、従来の混合、溶
解、研和、乳化、カプセル化、閉じ込め又は凍結乾燥プロセスによって製造する
ことができる。薬剤組成物は、薬剤学的に使用できる調剤への活性ペプチドの加
工を促進する、1つ以上の生理学的に許容しうる担体、希釈剤、賦形剤又は助剤
を使用して、従来法で処方することができる。妥当な処方は、選択される投与の
経路に依存する。
【0139】 全身処方は、注射(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内又は腹腔内注射)
による投与のために設計されたものを含む。
【0140】 注射には、本発明のプロドラッグは、水溶液、好ましくは、ハンクス液、リン
ゲル液、又は緩衝生理食塩水のような、生理学的に適合性の緩衝液中に処方して
もよい。この溶液は、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤のような、製剤用物質
を含んでもよい。
【0141】 あるいは、本プロドラッグは、使用の前に適切なビヒクル(例えば、発熱物質
を含まない滅菌水)で構成するための粉末形態であってもよい。
【0142】 前述の処方に加えて、本化合物はまた、デポー調剤としても処方してもよい。
このような持効性処方は、体内移植(例えば、皮下又は筋肉内)により、又は筋
肉内注射により投与してもよい。即ち、例えば、本化合物は、適切なポリマー若
しくは疎水性物質(例えば、許容しうる油中のエマルションとして)又はイオン
交換樹脂と共に、あるいはやや溶解度の低い誘導体として(例えば、やや溶解度
の低い塩として)処方してもよい。
【0143】 あるいは、他の薬剤送達システムを利用してもよい。リポソーム及びエマルシ
ョンは、本発明のペプチドを送達するために使用してもよい、送達ビヒクルの周
知の例である。ジメチルスルホキシドのようなある種の有機溶媒も利用してもよ
いが、通常は毒性の大きさという犠牲を伴う。更に、本化合物は、治療物質を含
む固体ポリマーの半透性マトリックスのような、徐放システムを使用して送達し
てもよい。種々の徐放性材料が確立されており、当業者には周知である。これら
の化学的性質に依存して、徐放性カプセルは、数週間〜100日超にわたり本化
合物を放出することができる。治療物質の化学的性質及び生物学的安定性に依存
して、タンパク質安定化のための追加的戦略を利用してもよい。
【0144】 本発明のプロドラッグは、荷電した側鎖を含むことができるため、これらは、
遊離塩基として、又は薬剤学的に許容しうる塩として、上述の処方のいずれかに
含められる。薬剤学的に許容しうる塩は、遊離塩基の活性を実質的に保持し、か
つ無機酸との反応により調製される塩である。薬剤の塩は、対応する遊離塩基形
態よりも、水性及び他のプロトン性溶媒への溶解度が高い傾向にある。
【0145】 4.9.2 有効用量 本発明のプロドラッグ、又はその組成物は、意図される目的を達成するのに有
効な量で一般には使用される。当然ながら、使用される量は、特定の応用に依存
することを理解すべきである。
【0146】 例えば、抗新生物物質としての使用には、治療上有効量のプロドラッグ、又は
その組成物が、それを必要とする動物又はヒトに適用又は投与される。治療上有
効量とは、標的細胞の増殖を阻害するか、又はこれに対して致死的である、ペプ
チド又は組成物の量を意味する。実際の治療上有効量は、特定の応用に依存する
。通常の技術を持つ当業者であれば、例えば、実施例に提供されるインビトロ測
定法を利用して、過度の実験をすることなく、特定の応用のための特定のプロド
ラッグの治療上有効量を決定することができる。
【0147】 腫瘍若しくは標的細胞の増殖又はこれらに関連する疾患を、治療又は予防する
ための使用には、本発明のプロドラッグ、又はその組成物は、治療上有効量で投
与又は適用される。治療上有効量とは、腫瘍若しくは標的細胞の増殖又はこれら
に関連する疾患の症候を改善するために、あるいは同増殖又は同疾患を改善、治
療又は予防するために有効な量を意味する。治療上有効量の決定は、特に本明細
書に提供される詳細な開示に照らせば、充分に当業者の能力の範囲内である。
【0148】 全身投与には、治療上有効用量は、最初はインビトロ測定法により推定するこ
とができる。例えば、細胞培養において決定されるI50(即ち、細胞培養物の5
0%に対して致死的である試験化合物の濃度)、細胞培養において決定されるM
IC(即ち、増殖に対する最小阻止濃度)、又は細胞培養において決定されるI100 (即ち、細胞培養物の100%に対して致死的であるペプチドの濃度)を含
む、プロドラッグ血中濃度範囲を達成するために、用量は、動物モデルにおいて
処方することができる。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確
に決定するために使用することができる。
【0149】 初期用量はまた、当業者には周知の方法を使用して、インビボのデータ(例え
ば、動物モデル)から推定することができる。通常の技術を持つ当業者であれば
、動物データに基づいてヒトへの投与を容易に最適化することができよう。
【0150】 投与されるプロドラッグの量は、当然ながら、処置される被験者、被験者の体
重、病気の重篤度、投与の様式及び処方医の判定に依存する。
【0151】 抗腫瘍療法は、断続的に繰り返される。治療は、単独で、又は例えば他の抗新
生物物質若しくは他の薬剤学的に有効な物質のような他の薬物と組合せて提供さ
れる。
【0152】 4.9.3 毒性 好ましくは、本明細書に記載されるプロドラッグの治療上有効用量は、実質的
な毒性を引き起こすことなく治療上の恩恵を提供する。
【0153】 本明細書に記載されるプロドラッグの毒性は、例えば、LD50(集団の50%
に対して致死的な用量)又はLD100(集団の100%に対して致死的な用量)
を求めることによって、細胞培養又は実験動物において標準の薬剤学的手順によ
り求められる。毒性と治療効果の間の用量比は、治療指数である。高い治療指数
を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養測定法及び動物試験から得られるデ
ータは、ヒトにおける使用に毒性でない用量範囲を処方する際に使用することが
できる。本明細書に記載されるプロドラッグの用量は、好ましくは、毒性がほと
んど又は全くない有効用量を含む血中濃度の範囲内にある。用量は、使用される
投与剤形及び利用される投与の経路に依存するこの範囲内で変化させてよい。厳
密な処方、投与の経路及び用量は、個々の医師が患者の症状を考慮して選択する
ことができる(例えば、Finglら, 1975, The Pharmacological Basis of Therap
eutics, Ch. 1, p.1を参照のこと)。
【0154】 5.実施例1:TNFαの腫瘍選択的プロドラッグ この実施例では、我々はTNFαのプロドラッグ処方を記述する。プロドラッ
グを調製するために、生物活性物質のTNFαは、テトラペプチド結合残基を介
して複数のポリエチレングリコールマスキング残基に結合させた。
【0155】 PEG残基は、テトラペプチド結合残基のAla−Leu−Ala−Leuを
介してTNFαに結合させた。テトラペプチドリンカーのAla−Leu−Al
a−Leuは、血中ペプチダーゼに対して抵抗性のタンパク質−薬物結合体を生
成させることが知られているため、これを選択した(Trouetら, 1982, Proc. Na
tl. Acad. Sci. USA 79:626-629)。
【0156】 TNFαのロイシル誘導体 アラニル−ロイシル−アラニル−ロイシルリンカーを含むプロドラッグでは、
腫瘍環境での細胞外加水分解により、生物活性物質のロイシル誘導体が遊離する
。TNFαの修飾に関して適切な化学量論を求めるために、ロイシル誘導体を最
初に調製した。ロイシン残基は、これらのカルボキシル基と、TNFαの末端ア
ミノ基又は側鎖アミノ基(例えば、リシンのε−アミン)との間のペプチド結合
により共有結合している。修飾の程度は、反応性ロイシン分子対TNFαの比を
変化させることにより制御した。
【0157】 TNFαのロイシル誘導体は、有機−水性媒体中でアセトール−ロイシンのN
−ヒドロキシスクシンイミドエステルを使用する、遊離アミノ基のアシル化によ
り調製した。ヒドロキシアルキル化アミノ酸活性化エステルは、優れた反応性を
有しており、そしてタンパク質のアシル化には特に適合している(Hermanson, 1
996, Bioconjugate Techniques, Academic Press, San Diego, New York;Geogh
eganら, 1979, Biochemistry 18:5392-5399)。NaIO4による穏やかな条件で
のアセトール−ロイシル残基の脱保護後、TNFαの誘導体は、サイズ排除クロ
マトグラフィーにより精製した。これらの純度は、ゲル電気泳動により評価した
【0158】 TNFα及びTNFαのロイシル誘導体の活性を、プロドラッグの調製のため
に使用される修飾の程度を選択するために比較した。有意な量のTNFα活性を
保つロイシン対PEG比は、以下に考察されるTNFαプロドラッグのための基
本として選択した。
【0159】 TNFα及びその誘導体の活性は、報告されたように古典的な測定法を使用し
て求めた(Creaseyら, 1987, Cancer Res. 47:145-149)。L929マウス線維
芽細胞は、96ウェルマイクロタイタープレートに接種して増殖させた。次にこ
れらを、増加濃度のTNFα又はLeux−TNFαの存在下でアクチノマイシ
ンD(1μg/ml)に曝露した。37℃で24時間のインキュベーション後、細胞
溶解(乳酸デヒドロゲナーゼ〔LDH〕放出測定法)及び生存率(可溶性ホルマ
ザン塩中の生存細胞によるWST−1の形質転換)を測定した。
【0160】 HEp−2細胞(主として55kDa TNFα受容体を発現するヒト類表皮癌
細胞株)を使用して、受容体結合測定法も実施して、どのように修飾が受容体結
合に影響を及ぼすかを求めた。細胞は、4℃で〔125I〕−TNFα及び増加濃
度のTNFα又はLeux−TNFαに曝露した。数回の洗浄後、細胞に付随し
た放射活性を定量した。HL60細胞(主として75kDa受容体を発現するヒト
前骨髄球性白血病細胞株)を同様に使用した(Kurodaら, 1995, Int. J. Cancer
63:152-157)。
【0161】 TNFαプロドラッグ TNFαは、テトラペプチドのC末端ロイシンによりTNFαの第1級アミノ
基に結合した、選択されたリンカーのテトラペプチドを介して、1つ以上のPE
G分子に結合体化させた。PEG−リンカー残基は、上述のTNFαのロイシル
誘導体の活性測定法により求めた適切な比で、TNFαに結合体化させた。例え
ば、ロイシル−TNFα結合体が、有意な活性を保持しながら、そのアミノ基の
56%以下の修飾を許容しうるならば、PEG−リンカー残基は、TNFαのア
ミノ基の56%を修飾するのに充分なモル比でTNFαに結合させた。PEG〔
H(OCH2−CH2nOH〕分子の最適な分子量は、前もって求めた結合体化
レベルで薬物の不活化が起こる、最低の分子量である。分子量1000、400
0、8000、10000のPEGが、そのジアルコール型の下で利用可能であ
るが、分子量5000のエーテル型〔H(OCH2−CH2nOMe〕も見い出
された。
【0162】 アミノ保護テトラペプチドのR1−Ala−Leu−Ala−Leuの合成は
、典型的な固相ペプチド合成法を用いて実施することができた(Merrifield, 19
63, JACS 85:2149-2154)。異なるアミノ保護基(R1)は、ペプチドの目的とす
る利用法に応じて使用することができた。必要であれば、保護テトラペプチドは
、セミ−分取HPLCにより精製することができた。
【0163】 PEGは、コハク酸残基のようなスペーサー又はアダプターによって、第1級
アミンに容易にカップリングさせることができた。スクシニル化PEGは、市販
品を入手できた。あるいは、充分に記述され文書化された合成法が、文献から利
用できた(米国特許第5,612,460号;米国特許第5,808,096号)。PEG化化合物
は、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製することができた。
【0164】 TNFαプロドラッグの安定性及び活性 血中安定性及び腫瘍分泌ペプチダーゼによる再活性化は、インビトロで迅速に
評価することができた。最初に、上述のように、不活化を照合するためにTNF
αの結合体で、受容体結合測定法を行った。次に、MCF−7/6(乳癌)、L
S−174−T(結腸癌)、LNCaP(前立腺癌)及びNCI−H209(小
細胞肺癌)、又は他の細胞株により調整した培地を使用して、腫瘍放出ペプチダ
ーゼによる結合体の再活性化を照合した。タイムラグを延ばしながら37℃でイ
ンキュベーション後、結合体は、ウェスタン免疫ブロット法又は活性測定法によ
って分析した。
【0165】 次にプロドラッグは、インビボで試験した(急性毒性/致死率試験及び化学療
法活性)が、単一物質としても、並びにドキソルビシンのような他の細胞障害性
及び/又は細胞分裂抑制性抗癌物質と組合せても行った。結合体での致死率試験
にはOF−1マウスを使用した。結合体又は親化合物の用量を増大させながら静
脈内経路により投与して、LD50値は28日後に求めた。単回注射も多回注射プ
ロトコールも考慮した。
【0166】 結合体の化学療法評価には、Balb/c nu−nuマウスに、前述の細胞
株から増殖したヒト腫瘍の断片を両方の側腹部に皮下移植した。腫瘍は、少なく
とも6mmの平均直径に達するまで増殖させた。次に、食塩水、ドキソルビシン、
プロドラッグ単独又はドキソルビシンと組合せたプロドラッグからなる処置を、
静脈内ボーラス注射として投与した。動物は、連続5週間、週に1回処置した。
臨床徴候、体重及び腫瘍増殖を少なくとも60日間モニターした。処置効果は、
腫瘍増殖の遅延及び処置群対対照動物の腫瘍容量の比に基づいて評価した。
【0167】 6.実施例2:腫瘍活性化二元TNFα−ドキソルビシンプロドラッグ この実施例では、我々は、インビボでTNFα及び抗新生物物質のドキソルビ
シンを標的細胞で放出する、二元プロドラッグを提示する。
【0168】 最初に、TNFαの−Mal−Leu−OH誘導体を調製した。ロイシンメチ
ルエステル(Leu−OMe)のアミノ末端を、ジメチルマレイン酸無水物で修
飾して、ジメチルマレイルロイシン(Mal−Leu−OMe)を得た。次に、
TNFαの遊離アミノ基と−Mal−Leu−OMeの遊離カルボキシル基との
間にアミド結合を形成することにより、TNFαの遊離アミノ残基を修飾した。
Leu残基の酵素によるエステルの加水分解(Shin C.G., 1997, Bull. Chem. S
oc. Jpn. 70, 1427-1434)後、得られた−Mal−LeuOH TNFα誘導体
を、活性に関して未変性TNFαと比較した。活性を有意に変えることなく−M
al−LeuOHで修飾できるTNFαの遊離アミノ残基の最大数は、上記実施
例1で検討したように求めた。
【0169】 求めた化学量論を用いて、TNFαは、二元プロドラッグを得るために、Ma
l−Leu−Ala−Leu−Ala−Leu−Doxで同様に修飾された。ペ
プチド−Dox結合体は、米国特許第5,962,216号により調製した。
【0170】 代わりの二元プロドラッグはまた、ロイシンを、TNFαにおいて利用可能な
遊離カルボキシル基に直接カップリングすることにより調製した。TNFαは、
5個のアスパラギン酸及び9個のグルタミン酸残基を有する。
【0171】 TNFα誘導体は、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製し、そしてその
純度は、電気泳動法により求めた。
【0172】 二元プロドラッグの活性及び/又は不活性、安定性及び再活性化は、上記実施
例1に記載されたように測定した。二元プロドラッグのインビボ毒性及び活性も
また、上記実施例1に記載されたように評価した。
【0173】 8.実施例3:腫瘍活性化IGF−1アンタゴニストプロドラッグ この実施例では、我々は、テトラペプチド結合残基を介してPEGに結合した
インスリン様成長因子−1(IGF−1)のオリゴペプチドアンタゴニストを含
むことを特徴とするプロドラッグを説明する。
【0174】 選択されたIGF−1アンタゴニストは、D−アミノ酸から作られた環状ドデ
カペプチドである。これは、式:シクロ〔H−D−Cys−D−Ser−D−L
ys−D−Ala−D−Pro−D−Lys−D−Leu−D−Pro−D−A
la−D−Ala−D−Tyr−D−Cys−OH〕で示される。このペプチド
は、2個のシステイン残基の側鎖の間のジスルフィド架橋を介して環化している
。これは、標準的固相ペプチド合成法により合成した。
【0175】 IGF−1アンタゴニストのロイシル結合体 IGF−1アンタゴニストの遊離アミノ基は、上記実施例1に記載されたよう
にロイシン残基で修飾した。最初に、IGF−1アンタゴニストの末端アミノ基
だけを修飾した。末端アミノ基の修飾によって活性の有意な消失が生じたら、I
GF−1アンタゴニストの他の反応性基を修飾して、機能的活性の保持に関して
測定した。
【0176】 結合体は、セミ分取逆相HPLCにより精製した。結合体の純度は、逆相HP
LC−MSにより求めた。結合体の構造特性は、NMR及び質量分析法により照
合した。
【0177】 IGF−1アンタゴニスト及びそのロイシル誘導体の活性は、受容体結合及び
細胞増殖測定法で比較した。MCF−7/6ヒト乳癌細胞を、無血清培地に接種
して増殖させた。次にこれらを4℃で〔125I〕−IGF−1と共に、増加濃度
のIGF−1、IGF−1アンタゴニスト又はそのロイシル誘導体の存在下でイ
ンキュベートした。洗浄後、細胞に付随した放射活性を定量した。
【0178】 MCF−7/6細胞はまた、IGF−1が誘導した増殖に及ぼす、IGF−1
アンタゴニスト及びそのロイシル誘導体の阻害作用を比較するために使用した。
細胞は、無血清培地に10ng/ml IGF−1及び増加濃度のIGF−1アンタ
ゴニスト又はそのロイシル誘導体の存在下で接種した。次に細胞増殖を、DNA
への〔3H〕−チミジンの取り込みによって評価した。
【0179】 IGF−1アンタゴニストプロドラッグ IGF−1アンタゴニストは、実施例1に記載されたように、テトラペプチド
のC末端ロイシンによりアンタゴニストの第1級アミノ基に結合した、選択され
たリンカーのテトラペプチドを介して、1つ以上のPEG分子に結合体化させた
【0180】 放射標識(14C又は3H)アミノ酸をプロドラッグの画分に組み込んだ。次に
得られた放射活性結合体をトレーサーとして使用して、インビトロ試験における
代謝物の高感度検出ができるようにした。全てのPEG化化合物は、サイズ排除
クロマトグラフィーにより精製された。
【0181】 IGF−1アンタゴニストプロドラッグの不活化は、IGF−1アンタゴニス
トのロイシル誘導体について上述された活性測定法を用いて試験した。血中安定
性及び腫瘍細胞調整培地中での再活性化は、実施例1に記載されたように、更に
はHPLC分析により試験した。次いで毒性及び化学療法活性試験を、プロドラ
ッグ及びドキソルビシンと組合せたプロドラッグで実施した。これらの試験は、
実施例1に記載されたように、更にはHPLCにより、もう1度実施した。
【0182】 7.実施例4:腫瘍活性化細胞溶解性ペプチドプロドラッグ この実施例では、我々は、テトラペプチド結合残基を介してPEGマスキング
残基に結合した細胞溶解性ペプチドを含むことを特徴とするプロドラッグを記述
する。
【0183】 細胞溶解性ペプチドLK15Cの合成: 本細胞溶解性ペプチドは、文献に細胞溶解性と記載されたもの(Castanoら, 1
999, 上記)と同様に、専らロイシンとリシン残基からなる。しかし、インビボ
のタンパク質分解に対する比較的低い感受性を得るために、D−アミノ酸だけを
使用した。10個のD−ロイシンと5個のD−リシン残基を含む、H−D−Ly
s−D−Leu−D−Leu−D−Lys−D−Leu−D−Leu−D−Le
u−D−Lys−D−Leu−D−Leu−D−Leu−D−Lys−D−Le
u−D−Leu−D−Lys−OHという構造の15量体(LK15)は、必要
に応じてリシン側鎖のε−アミノ基上の直交する保護基を使用して、標準的固相
ペプチド合成法により調製した。
【0184】 細胞溶解性ペプチドのロイシル結合体 細胞溶解性ペプチドの遊離アミノ基は、上記実施例1に記載されたようにロイ
シン残基で修飾した。最初に、細胞溶解性ペプチドの各リシン側鎖のε−アミノ
基を修飾した。必要であれば、末端アミノ基もロイシンで修飾した。合成工程の
直交する保護基は、特定のアミノ基を選択的に修飾するために活用した。
【0185】 結合体は、セミ分取逆相HPLCにより精製した。結合体の純度は、逆相HP
LC−MSにより求めた。結合体の構造特性は、NMR及び質量分析により照合
した。
【0186】 細胞溶解性ペプチド及びその誘導体の活性は、溶血測定法で、更には腫瘍細胞
からのLDH放出を定量することにより評価した。赤血球は、健常ドナーからク
エン酸塩に回収した新鮮ヒト血液から単離した。ペプチド希釈液を96ウェルプ
レートに分配し、次に各ウェルに赤血球懸濁液を加えた。37℃で30分間イン
キュベートして遠心分離後、A414測定のために上清を新しいプレートに移した
。ブランク(溶血なし)値は、曝露していない細胞から得て、100%溶血は、
蒸留水に懸濁した細胞から求めた。血清が、モノマー−ポリマー平衡の電位変化
によりペプチドの細胞溶解活性を変化させるかどうかを照合するために、種々の
濃度のヒト血清(10〜100%)でも測定を実施した。
【0187】 細胞溶解活性はまた、有核癌細胞でも求めた。我々は、増加濃度のLK15又
はそのロイシル誘導体に曝露した細胞からのLDH放出の程度に基づき、細胞溶
解を評価した。MCF−7/6細胞は96ウェルプレートで増殖させ、次に増加
濃度の試験化合物に37℃で1時間曝露した。上清及び細胞単層を分離して、L
DH活性の測定に使用した。培地に放出された総活性の百分率を考慮した。
【0188】 細胞溶解性ペプチドプロドラッグ 細胞溶解性ペプチドは、実施例1に記載されたように、テトラペプチドのC末
端ロイシンにより細胞溶解性ペプチドの第1級アミノ基に結合した、選択された
リンカーのテトラペプチドを介して、1つ以上のPEG分子に結合体化させた。
第1級アミノ基の選択及び化学量論は、実施例1でTNFαについて検討したよ
うな、細胞溶解性ペプチドのロイシル誘導体からの活性の結果により求めた。
【0189】 細胞溶解性ペプチドプロドラッグの不活化は、細胞溶解性ペプチドのロイシル
誘導体に関して、上述の活性測定法を用いて試験した。血中安定性及び腫瘍細胞
調整培地中の再活性化は、実施例1に記載されたように、更にはHPLC分析に
より試験した。次に毒性及び化学療法活性試験は、プロドラッグ及びドキソルビ
シンと組合せたプロドラッグで実施した。これらの試験は、実施例1に記載され
たように、更にはHPLCにより、もう1度実施した。
【0190】 8.実施例5:腫瘍活性化二元抗血管新生性ペプチド−ドキソルビシンプロドラ
ッグ この実施例では、我々は、インビボで腫瘍又はその近くでドキソルビシン及び
抗血管新生性ペプチドを放出する、二元プロドラッグを記述する。
【0191】 トロンボスポンジン−1(TSP−1)の第2の1型反復に由来する、D−ア
ミノ酸から作られた逆配列が開発されている。これらのペプチドは、抗増殖性及
び抗血管新生性を有する(Dawsonら, 1999, 上記)。19残基のペプチドである
Mal IIは、TSP−1のプロパージン様反復に由来し、3個のL−アミノ酸
のいずれか1個がそのD−エナンチオマーにより置換されると、強力な抗血管新
生性を有することが証明されている。インビトロ及びインビボの抗血管新生活性
は、低濃度で達成される。最も興味深いこのようなペプチドは、D−Ile15
Mal IIである(Dawsonら, 1999, 上記)。これは、活性の消失なく7個のア
ミノ酸という小ささまで短くすることができるため、かなり変性を受けやすく、
そして7量体へのエチルアミド末端基の付加によって、更にその効力が増加する
【0192】 アセチル−Gly−Val−D−Ile−Thr−Arg−Ile−Argと
いう構造のD−Ile15−Mal IIのヘプタペプチド誘導体は、標準的固相ペ
プチド合成法により合成した。また、アセチル−Gly−Val−D−Ile−
Thr−Arg−Ile−Arg−NHEtという構造のヘプタペプチドのエチ
ルアミドでキャップした誘導体、及びヘプタペプチドに由来するD−ヘプタペプ
チドのD−Arg−D−Ile−D−Arg−D−Thr−D−Ile−D−V
al−Glyも標準法により合成した。
【0193】 このヘプタペプチド及び2つの誘導体は、それぞれ最初にロイシン残基にカッ
プリングさせた。キャップされたヘプタペプチドでは、ロイシン残基は、標準法
により、ジメチルマレイルジカルボン酸アダプターを介してArg残基の側鎖に
カップリングさせた。他の両方のペプチドでは、ロイシン残基は、そのアミノ基
によりカルボキシ末端に結合させた。得られたペプチドの活性は、対応する未変
性ペプチドの活性と比較した。化合物の活性は、EAhy926細胞株のような
内皮細胞で評価した(Edgellら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:3734-3
737)。血管内皮細胞成長因子(VEGF)の存在下で種々の濃度の化合物と共
にインキュベーション後、細胞生存率(WST−1試薬)を、DNAへの〔3
〕−チミジン取り込みに及ぼす作用と共に測定した。
【0194】 次に3つの未変性ヘプタペプチドを、標準的合成法により、それぞれLeu−
Ala−Leu−Ala−Leu−Doxに結合体化させて、二元プロドラッグ
を生成させた。キャップされたヘプタペプチドでは、Leu−Ala−Leu−
Ala−Leu−Dox構成体は、標準法により、ジメチルマレイルジカルボン
酸スペーサーを介して、Arg残基の側鎖にカップリングさせた。全化合物の特
性は、逆相HPLC(−MS)により求めた。必要ならば、セミ−分取HPLC
を精製のために利用した。構造は、アミノ酸、NMR及びMS分析により確認し
た。
【0195】 各二元プロドラッグについて、ヒト全血中のその安定性、更には腫瘍細胞調整
培地によるその再活性化を評価した。血中安定性及び調整培地による再活性化は
、HPLC及び放射標識分子(抗血管新生性ペプチド部分に標識アミノ酸を含む
二元プロドラッグをトレーサーとして使用した)を使用することにより血管新生
性ペプチド及びその誘導体の検出を可能にして、上述のように試験した。アンス
ラサイクリン及びその誘導体には、蛍光検出を使用した。
【0196】 次に各二元プロドラッグについて、上記実施例1に記載されたように、そのイ
ンビボの毒性を評価した。次にその化学療法活性は、Dox及び対応する未変性
抗血管新生性ペプチドの活性と、単独又は組合せて比較した。
【0197】 9.実施例6:腫瘍活性化二元IGF−1アンタゴニスト−ドキソルビシンプロ
ドラッグ この実施例では、我々は、インビボで腫瘍又はその近くでドキソルビシン及び
IGF−1アンタゴニストを放出する、二元プロドラッグを記述する。
【0198】 上記実施例3に記載されたIGF−1アンタゴニストを、二元プロドラッグを
調製するために使用した。二元プロドラッグでは、結合体化は、アンタゴニスト
の遊離N末端アミノ基よりも、むしろそのカルボキシ末端で起こる。
【0199】 理想的には、Doxの腫瘍ペプチダーゼ感受性ペプチド誘導体を比較的小さい
アンタゴニストのカルボキシル基に付加することは、それが、(立体障害現象に
より)IGF−1受容体に結合するのを防止する。そうであれば、二元結合体は
、不活性であり、細胞外で作用するアンタゴニストの更に別のマスキングを必要
としない。マスキングを必要とするならば、アンタゴニストの2個のリシン残基
を、腫瘍環境で除去されるpH感受性(例えば、ジメチルマレイル)基で修飾す
る。
【0200】 IGF−1アンタゴニストのロイシル誘導体は、適切な直交する保護基を利用
する、ペプチドのC末端での標準的カップリング法により調製した。必要であれ
ば、ジスルフィド架橋を標準法により再利用した。次に得られたIGF−1アン
タゴニストのC末端ロイシル誘導体は、そのC末端でAla−Leu−Ala−
Leu−DoxのN末端と、標準法によりカップリングさせた。得られた二元プ
ロドラッグからは、腫瘍微環境にあるとき、DoxとIGF−1アンタゴニスト
両方のロイシル誘導体が生じると考えられる。
【0201】 ロイシル誘導体及びプロドラッグは、セミ−分取逆相HPLCにより精製した
。結合体の純度は、逆相HPLC−MSにより求めた。結合体の構造特性は、N
MR及び質量分析により照合した。
【0202】 最初に、ロイシル誘導体の活性は、実施例3に記載されたように測定した。2
番目に、完全なプロドラッグがIGF−1受容体に結合できないことを検定した
。次にその血中安定性及び腫瘍細胞調整培地による再活性化を測定した。アンス
ラサイクリン及びその誘導体を検出するために、蛍光検出を使用した。IGF−
1アンタゴニストの活性が、二元プロドラッグにおいて阻害されていないならば
、2個のリシン残基のε−アミノ基を、例えば、ジメチルマレイル基のようなp
H感受性残基でマスキングした。
【0203】 もう1度、インビトロ試験の後に、二元プロドラッグのインビボ毒性を評価し
て、その化学療法活性を、Dox及びIGF−1アンタゴニストの活性と、単独
又は組合せて比較した。MCF−7/6ヒト乳癌を担持するヌードマウスを活性
測定のために使用した。
【0204】 10.実施例7:腫瘍活性化二元細胞溶解性ペプチド−ドキソルビシンプロドラ
ッグ この実施例では、我々は、インビボで標的細胞又はその近くで細胞溶解性ペプ
チド及びドキソルビシンを特異的に放出する、二元プロドラッグを提示する。
【0205】 二元プロドラッグはまた、上記実施例4に記載された細胞溶解性ペプチドで調
製した。結合体化の最適な部位は、実施例4において決定されたとおりである。
例えば、遊離カルボキシ末端は、結合体化の有効そうな部位である。細胞溶解性
ペプチドの細胞溶解活性は、実施例4に記載されたように可逆的にマスキングし
た。
【0206】 LK15ペプチドは、ジメチルマレイルジカルボン酸アダプターを介して、標
準的合成法により、Leu−Ala−Leu−Ala−Leu−Doxに結合体
化させた。
【0207】 分析的性状解析、活性測定、血中安定性測定、再活性化測定、及び致死性測定
は、上記実施例4に記載されたように実施した。上記実施例4に記載されたよう
な化学療法試験、及びアンスラサイクリンに対して比較的抵抗性の結腸直腸腫瘍
での試験も実施した(例えば、LS−174−T)。結果は、剥き出しの細胞溶
解性ペプチド、ドキソルビシン及び2つの物質の組合せと比較した。
【0208】 11.実施例8:腫瘍活性化二元サブスタンスPアンタゴニスト−ドキソルビシ
ンプロドラッグ この実施例では、我々は、インビボで腫瘍又はその近くでサブスタンスPアン
タゴニスト及びドキソルビシンを選択的に放出する、二元プロドラッグを記述す
る。
【0209】 活性の最も広いスペクトルを示す、最も強力なサブスタンスPアンタゴニスト
の1つは、11残基のアミド化ペプチドのD−Arg−Pro−Lys−Pro
−D−Trp−Gln−D−Trp−Phe−D−Trp−Leu−Leu−N
2(「SPD」)である。このペプチドは、腫瘍内、腫瘍周辺、又は腹腔内に
注射されると、インビボで活性を示した(Secklら, 1997, 上記)。
【0210】 SPDは、リンカーペプチド−Dox結合体をカップリングするために使用す
るための遊離カルボキシル基がなく、アミド化カルボキシ末端Leuは、活性に
非常に重要であるらしい。したがって、SPDのN末端(D−Arg)を、前述
の合成法により、標準的な直交する側鎖保護基を伴う、典型的な溶液ペプチド化
学を用いて、ジカルボン酸メチルマレイル残基で修飾した(Nyeki, 1998, J. Pe
ptide Sc. 4:486-495)。
【0211】 次にロイシン残基のアミノ末端を、アミノ末端D−アルギニンに導入された遊
離カルボキシル基にカップリングさせた。次にロイシン誘導体は、Ala−Le
u−Ala−Leu−Doxの遊離末端アミノ基にカップリングさせた。
【0212】 腫瘍放出ペプチダーゼによる再活性化により、ロイシルDox及びロイシル−
ジメチルマレイル−SPD又はSPDが得られると考えられる。よってロイシル
−ジメチルマレイル−SPDも合成して、その活性又は更なる活性化に関して試
験した。
【0213】 二元プロドラッグ及びその誘導体の純度は、HPLC分析により求めた。必要
であれば、セミ分取HPLCを精製のために利用した。二元プロドラッグ及びそ
の誘導体の構造は、アミノ酸分析、NMR及びMS分析により照合した。
【0214】 最初に、スイス−3T3細胞への〔125I〕−ブラジキニンの結合を阻害する
、二元プロドラッグの能力を測定した。二元プロドラッグがインヒビターとして
予想外に活性であるならば、その活性は、例えば、実施例3に記載されたように
側鎖アミノ基を可逆的に修飾することによりマスキングした。
【0215】 次に、血中安定性及び腫瘍細胞調整培地による再活性化を測定した。蛍光及び
UV検出によって、ドキソルビシン及びサブスタンスPアンタゴニストの検出が
できた。調整培地中で生成した代謝物の活性は、ヒト肺細胞株(例えば、COR
−L23又はNCI−H69)で測定した。細胞障害性及び増殖測定は、実施例
1及び実施例3に記載されたように実施した。
【0216】 次に致死性試験を実施し、次いで、実施例1に記載されたように、ヌードマウ
スに移植した、異なるヒト肺腫瘍の実験的化学療法を行った。
【0217】 12.実施例9:ドキソルビシンの細胞内送達のための腫瘍選択的輸送ペプチド
(例えば、Tat) この実施例では、我々は、ドキソルビシンを標的細胞の核に直接運ぶための、
HIV Tat由来輸送ペプチド(Gly−Arg−Lys−Lys−Arg−
Arg−Gln−Arg−Arg−Arg−Pro−Pro−Gln−Cys)
プロドラッグの設計及び調製を記述する。PEG−Ala−Leu−Ala−L
euとのカップリングによる、本発明のプロドラッグとしての構成体の処方は、
構成体に標的細胞に対する選択性を提供し、かつその安定性を増大させる。構成
体のHIV−Tat由来輸送ペプチドは、ドキソルビシンを、ドキソルビシンの
作用部位である細胞の核まで運ぶ。
【0218】 輸送ペプチドのロイシル誘導体 結合テトラペプチドの選択的切断は、恐らくHIV−Tat由来輸送ペプチド
構成体のロイシル誘導体を遊離するため、HIV−Tat由来輸送ペプチドのロ
イシル誘導体を、細胞に入り込むその能力を保持するロイシル誘導体を同定する
ために最初に合成した。
【0219】 ロイシン残基は、そのカルボキシル基と、存在するか又は付加された側鎖アミ
ノ(例えば、リシン残基)又はグアニジノ(例えば、アルギニン残基)基との間
のペプチド結合によって、HIV−Tat由来輸送ペプチドに共有結合させた。
次に誘導体は、その内在化される能力に関して比較した。
【0220】 あるいは、輸送活性は、リシン又はアルギニン残基の側鎖を、ジメチルマレイ
ル又はシトラコニル基のような酸不安定残基でキャップすることにより、可逆的
にブロックすることができる。これらの基は、対応する無水物から導入され、p
Hが、腫瘍細胞の近くではしばしば遭遇する値である6.5未満に下がると、不
安定である(Lavieら, 1991, 上記)。
【0221】 各合成化合物の純度は、逆相HPLCにより求めた。必要であれば、化合物は
、セミ分取又は分取HPLCにより精製して、構造情報は、アミノ酸分析、MS
、NMR及び元素分析から得た。
【0222】 ビオチン化ペプチド及びそのロイシル誘導体のMCF−7/6ヒト乳癌細胞へ
の取り込み量は、ストレプトアビジン結合ホースラディッシュペルオキシダーゼ
との反応後に求めた。細胞は、0.1〜20μg/mlのビオチン化ペプチドと共に
1〜18時間インキュベートし、洗浄し、エタノールで固定し、トリトンX−1
00で浸透性にして、ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ結合体(5μg/ml
)と共に1時間インキュベートした。更に洗浄後、o−フェニレンジアミン及び
22を基質として使用して、ペルオキシダーゼ活性を定量した。
【0223】 輸送ペプチドのPEG−Ala−Leu−Ala−Leu誘導体 結合体化のための最も良好な位置が決定すれば、PEG−Ala−Leu−A
la−Leuは、上記実施例1に記載されたように、その位置に導入する。幾つ
かのロイシル誘導体が適切な輸送活性を示すならば、幾つかのPEG−Ala−
Leu−Ala−Leu結合体を調製した。細胞浸透を防止するための理想的な
PEG分子量は、上述の細胞内取り込み測定法により求めた。
【0224】 HIV−Tat由来輸送ペプチドのPEG−リンカーテトラペプチド結合体は
、細胞取り込みと同様に試験した。更に、その血中安定性及び癌細胞調整培地に
よる再活性化も評価した。これらの試験では、放射標識残基を取り込む結合体を
トレーサーとして使用して、結合体及び潜在的代謝物の高感度検出を可能にした
。ペプチド結合体は、クエン酸塩添加チューブに回収した健常ドナーからの全血
中で37℃でインキュベートした。選択した時点で、試料を遠心分離して、細胞
を除去して、HPLCにより分析した。経時的な結合体の消失を定量した。MC
F−7/6(乳癌)及びLS−174−T(結腸癌)細胞株により調整した培地
を使用して、結合体の腫瘍ペプチダーゼ再活性化を照合した。タイムラグを延ば
しながら37℃でインキュベーション後、結合体及びその代謝物をHPLCによ
り分析した。
【0225】 次に腫瘍への選択的送達を確認するために、インビボの組織分布試験を実施し
た。Balb/c nu−nuマウスに、ヒト腫瘍の断片を両方の側腹部に皮下
移植して、これを少なくとも6mmの平均直径に達するまで増殖させた。ビオチン
化及び/又は放射標識ペプチド結合体からなる処置を、静脈内ボーラス注射とし
て投与した。選択した時点で、腫瘍、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、脳、肺、及び血
漿を回収した。組織の均質化後、ビオチン化及び/又は放射標識ペプチドをスト
レプトアビジンでコートしたマルチウェルプレートに単離して定量した。
【0226】 ドキソルビシンプロドラッグ 次にHIV−Tat由来輸送ペプチドの適切なPEG−Ala−Leu−Al
a−Leu誘導体にカップリングすることにより、腫瘍選択的ベクターペプチド
のドキソルビシン結合体を調製した。輸送ペプチドのカルボキシ末端を、標準的
合成法を介してドキソルビシンの遊離ヒドロキシル基にカップリングさせた。第
2のプロドラッグでは、グルタル酸無水物スペーサーを、エステル結合を介して
ドキソルビシンの遊離ヒドロキシル残基に、そして輸送ペプチドのアミノ末端に
結合させた。
【0227】 第3の構成体は、アミド結合により、ドキソルビシンのダウノサミン残基を介
して、ドキソルビシンを輸送ペプチドにカップリングすることにより調製した。
この場合に、細胞内(ゴルジ装置内又は核内)で切断されて遊離ドキソルビシン
を遊離するペプチドスペーサーを、薬物と担体ペプチドの間で使用した。適切な
スペーサーは、一方で腫瘍細胞調整培地の存在下、又は腫瘍細胞ホモジェネート
(又は細胞成分画分)の存在下で、ペプチドスペーサーをスクリーニングし、同
定された。このペプチドスペーサーは、調整培地に対するその抵抗性及び中性p
Hでの細胞ホモジェネートに対するその感受性に基づいて選択した。
【0228】 ヒト全血中でのドキソルビシン−担体ペプチド結合体の安定性は、上記実施例
1に記載されたように測定して、次にヒト乳癌MCF−7/Adrのような、皮
下抵抗性腫瘍を担持するヌードマウスにおいて、そのインビボの毒性(致死性試
験)及び化学療法活性の評価を行った。
【0229】 13.実施例10:プロアポトーシスタンパク質−担体ペプチドプロドラッグ この実施例では、我々は、プロアポトーシスタンパク質構成体を標的細胞に選
択的に送達するプロドラッグを記述する。この構成体は、プロアポトーシスタン
パク質を標的細胞の核中に運ぶ輸送ペプチド、及びプロアポトーシスタンパク質
のグランザイムBを含む。
【0230】 グランザイムB−輸送ペプチドプロドラッグ グランザイムBは、YTナチュラルキラー細胞株から均質になるまで精製した
(Harrisら, 1998, J. Biol. Chem. 273:27364-27373)。あるいは、組換え酵素
を発現させて、酵母菌のピチアパストリス(Pichia pastoris)から精製した(S
unら, 1999, Biochem. Biophys. Res. Commun. 261:251-255)。
【0231】 グランザイムB及び輸送ペプチドの構成体は、標準的組換え法により調製した
。輸送ペプチドのアミノ末端をグランザイムBのカルボキシ末端に縮合させた。
結合体は、様々な腫瘍細胞型に及ぼすインビトロでのそのアポトーシス誘導性に
関して試験した。プロ−カスパーゼ3活性化測定法、更にはDNA断片化を利用
して、その活性を照合した(Sunら, 1999, 上記)。
【0232】 生じた構成体が、細胞内取り込み及びグランザイムBのプロアポトーシス作用
を許容するならば、構成体の腫瘍特異的プロドラッグ処方を、上記実施例9に記
載されたように調製した。輸送ペプチドのPEG−Leu−Ala−Leu−A
la−Leu誘導体を最初に調製し、次にグランザイムBに結合体化させた。あ
るいは、輸送ペプチドのLeu−Ala−Leu−Ala−Leu−PEG誘導
体を調製し、次にグランザイムBに結合体化させた。
【0233】 ヒト全血中の安定性及び完全な腫瘍特異的結合体の腫瘍細胞調整培地による再
活性化は、上記実施例1に記載されたように、放射標識結合体を使用して、HP
LCにより分析した。次にインビボの評価は、正常マウスにおける毒性試験、及
び上記実施例1に記載された、ヌードマウスへのヒト腫瘍の異種移植の実験的化
学療法を含む。
【0234】 ドキソルビシン−グランザイムBプロドラッグ グランザイムBプロドラッグのプロアポトーシス作用を、ドキソルビシンの投
与により強化することができた。このことはまた、ドキソルビシンに対する抵抗
性を克服する方法でありうるが、これはしばしばアポトーシスの誘導における欠
陥に関係している(Dive, 1997, J. Int. Med. 242:139-145;HaqとZanke, 1998
, Cancer Metast. Rev. 17, 233-239;DennisとKastan M.B., 1998, Drug Resis
tance Updates 1:301-309, 1998)。
【0235】 最初のアプローチとして、グランザイムBプロドラッグは、上述の任意のドキ
ソルビシンプロドラッグと共に投与した。更に、輸送ペプチドのPEG−Ala
−Leu−Ala−Leu誘導体を含むことを特徴とする、ドキソルビシンプロ
ドラッグを調製した。このプロドラッグでは、ドキソルビシンを、細胞内のセリ
ンプロテアーゼのグランザイムBによって特異的に切断することができる、ペプ
チドスペーサーにより輸送ペプチドに結合体化させた。このスペーサーは、グラ
ンザイムBの既知の特異性に基づいて開発された。最適な治療効果のために、2
つのプロドラッグは、グランザイムB感受性ドキソルビシン構成体の取り込みの
前に、グランザイムBの腫瘍内蓄積ができるように、逐次投与された。
【0236】 第3のアプローチとして、ドキソルビシンとグランザイムB−輸送ペプチド構
成体の二元プロドラッグ処方を調製した。この二元プロドラッグでは、ドキソル
ビシンを、腫瘍調整培地中で、更にはグランザイムBの存在下でも安定なままで
あるが、他の細胞内ヒドロラーゼには感受性である、エステル又はペプチドスペ
ーサーを介して輸送ペプチド構成体に結合させた。
【0237】 本発明は、例示された実施態様による範囲に限定されるものではなく、実施態
様は本発明の単一の側面の説明を意図するものであり、そして機能的に同等であ
る任意の組成物及び方法は、本発明の範囲に入っている。実際、前記説明及び付
随する図面から、上述のものに加えて本発明の種々の修飾が当業者には明らかと
なろう。このような修飾は、添付される請求の範囲に入ることが企図される。
【0238】 本明細書に引用される全ての特許及び刊行物は、参照することによりその全体
が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 本発明の典型的なプロドラッグを図解する。
【図1B】 健常細胞の近くの図1Aのプロドラッグを図解する。
【図1C】 腫瘍細胞の近くにあるときの図1Aのプロドラッグの活性化を図解する。
【図2】 本発明のプロドラッグのインビボの機能を図解する。
【図3A】 本発明の2つの結合残基の構造を図解する。
【図3B】 腫瘍若しくは標的細胞又はその近くの細胞外環境における1つの極性のプロド
ラッグの特異的切断を図解する。
【図3C】 腫瘍若しくは標的細胞又はその近くの細胞外環境における第2の極性のプロド
ラッグの特異的切断を図解する。
【図3D】 スペーシング残基を含むことを特徴とするプロドラッグの特異的切断を図解す
る。
【図3E】 二元極性プロドラッグの特異的切断を図解する。
【図4A】 保護残基を使用する、本発明のプロドラッグの製造のための一般スキームを図
解する。
【図4B】 本発明のプロドラッグの製造法を図解する。
【図4C】 スペーシング残基を含むことを特徴とするプロドラッグの製造法を図解する。
【図4D】 二元極性プロドラッグの製造法を図解する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 43/00 123 C07H 15/252 C07H 15/252 A61K 37/02 (31)優先権主張番号 00870306.8 (32)優先日 平成12年12月18日(2000.12.18) (33)優先権主張国 欧州特許庁(EP) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK ,DM,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE, GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,J P,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK, MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,R O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ, VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 オロンスキー,アーノルド アメリカ合衆国、カリフォルニア 94022、 ロス・アルトス・ヒルズ、マタデロ・クリ ーク・レーン 28540 Fターム(参考) 4C057 BB02 BB05 CC04 DD01 JJ50 4C076 BB13 CC27 CC42 EE59 FF63 4C084 AA02 AA17 BA09 BA18 BA44 DA25 DC50 NA15 ZB262 4C086 AA01 EA10 NA15 ZB26

Claims (61)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(I): 【化1】 〔式中、Bは、ポリペプチド又は細胞外で活性な物質を含むことを特徴とする生
    物活性物質であり;各L1は、独立に結合残基であり;各Mは、独立に、(M−
    1nが、Bの活性を妨げ、かつ腫瘍若しくは標的細胞又はその近くで切断を受
    けやすい、マスキング残基であり;そしてnは、1からBの反応性基の総数まで
    の整数である〕で示される、プロドラッグ組成物。
  2. 【請求項2】 各L1が、同一である、請求項1記載のプロドラッグ組成物
  3. 【請求項3】 各L1が、独立に、(Leu)y(Ala−Leu)xAla
    −Leu及び(Leu)y(Ala−Leu)xAla−Phe〔ここで、y=0
    又は1であり、そしてx=1、2又は3である〕よりなる群から選択されるアミ
    ノ酸配列を含むことを特徴とするペプチドである、請求項1及び2記載のプロド
    ラッグ。
  4. 【請求項4】 各L1が、独立に、アミノ酸配列:Ala−Leu−Ala
    −Leu又はアミノ酸配列:Leu−Ala−Leu−Ala−Leuを含むこ
    とを特徴とするペプチドである、請求項3記載のプロドラッグ。
  5. 【請求項5】 各(M−L1)が、Bのアミノ末端、Bのアミノ酸側鎖、B
    のリシン側鎖又はBのアルギニン側鎖に共有結合している、請求項1〜4のいず
    れか1項記載のプロドラッグ。
  6. 【請求項6】 Bの遊離反応性基の約36%〜約86%が、(M−L1)基
    でブロックされている、請求項1〜5のいずれか1項記載のプロドラッグ。
  7. 【請求項7】 M又はL1が、アダプター残基を含む、請求項1〜6のいず
    れか1項記載のプロドラッグ。
  8. 【請求項8】 アダプター残基が、シトラコニル、ジメチルマレイル、スク
    シニル、グルタリル及びジグリコリルよりなる群から選択される、請求項7記載
    のプロドラッグ。
  9. 【請求項9】 M又はL1が、スペーサー残基を含む、請求項1〜8のいず
    れか1項記載のプロドラッグ。
  10. 【請求項10】 Mが、正常組織及び体液中の(M−L1)のインビボの切
    断を低減又は防止する、請求項1〜9のいずれか1項記載のプロドラッグ。
  11. 【請求項11】 Mが、ポリマーである、請求項1〜10のいずれか1項記
    載のプロドラッグ。
  12. 【請求項12】 Mが、ポリアルキレングリコールである、請求項11記載
    のプロドラッグ。
  13. 【請求項13】 Mが、約1000Da〜約12000Daの平均分子量を有す
    るポリエチレングリコールである、請求項12記載のプロドラッグ。
  14. 【請求項14】 Mが、ポリペプチド、イムノグロブリン、抗体及びアルブ
    ミンよりなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか1項記載のプロドラ
    ッグ。
  15. 【請求項15】 Mが、N末端でブロックされたアミノ酸及び遺伝学的にコ
    ードされないアミノ酸よりなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか1
    項記載のプロドラッグ。
  16. 【請求項16】 Mが、D−アミノ酸である、請求項15記載のプロドラッ
    グ。
  17. 【請求項17】 Mが、N−Me−アラニン、D−アラニン又はβ−アラニ
    ンである、請求項14又は15記載のプロドラッグ。
  18. 【請求項18】 Mが、生理的pHで負に荷電している、請求項1〜17の
    いずれか1項記載のプロドラッグ。
  19. 【請求項19】 Mが、生物活性物質である、請求項1〜18のいずれか1
    項記載のプロドラッグ。
  20. 【請求項20】 Mが、アンスラサイクリン、ドキソルビシン、ダウノルビ
    シン、葉酸誘導体、ビンカアルカロイド、カリケアマイシン、ミトキサントロン
    、シトシンアラビノシド、アデノシンアラビノシド、リン酸フルダラビン、メル
    ファラン、ブレオマイシン、マイトマイシン、L−カナバニン、タキソイド、カ
    ンプトセシン、プロテアソームインヒビター、ファルネシル−タンパク質トラン
    スフェラーゼインヒビター、エポチロン、メイタンシノイド、ディスコデルモラ
    イド、白金誘導体、デュオカルマイシン、コンブレタスタチン、エピポドフィロ
    トキシン、TNFα、IFN−α、IFN−γ、IL−1、IL−2、IL−6
    、IGF−1アンタゴニスト、細胞溶解性ペプチド、抗血管新生性ペプチド、ト
    ロンボスポンジン由来ペプチド、サブスタンスPアンタゴニスト、TRAIL(
    Apo−2リガンド)及びFasリガンドよりなる群から選択される、請求項1
    9記載のプロドラッグ。
  21. 【請求項21】 (M−L1nが、Bのインビボ毒性を低下させる、請求項
    1〜20のいずれか1項記載のプロドラッグ。
  22. 【請求項22】 Bが、TNFα、IFN−α、IFN−γ、IL−1、I
    L−2、IL−6、IGF−1アンタゴニスト、細胞溶解性ペプチド、抗血管新
    生性ペプチド、トロンボスポンジン由来ペプチド、サブスタンスPアンタゴニス
    ト、TRAIL(Apo−2リガンド)及びFasリガンドよりなる群から選択
    される、請求項1〜21のいずれか1項記載のプロドラッグ。
  23. 【請求項23】 Bが、輸送ペプチド及び生物活性物質を含むことを特徴と
    する構成体である、請求項1〜21のいずれか1項記載のプロドラッグ。
  24. 【請求項24】 式(II): 【化2】 〔式中、M及びL1は、請求項1〜21のいずれか1項と同義であり;各Aは、
    独立に、細胞内で活性な生物活性物質であり;各L2は、独立に、細胞内で切断
    を受けやすい任意の結合残基であり;TPは、(L2−A)mを細胞内に運ぶこと
    ができるポリペプチドであり;mは、1〜(k−1)の整数であり、そしてpは
    、1〜(k−m)の整数である(ここで、kは、TPの反応性基の総数に等しい
    整数である)〕で示される組成物である、プロドラッグ。
  25. 【請求項25】 mが、1であり、そしてpが、1である、請求項24記載
    のプロドラッグ。
  26. 【請求項26】 (M−L1)が、TPの一方の末端に結合し、そして(L2 −A)が、TPのもう一方の末端に結合している、請求項24及び25記載のプ
    ロドラッグ。
  27. 【請求項27】 (M−L1nが、TPがAを細胞内に運ぶのを防止する、
    請求項24〜26のいずれか1項記載のプロドラッグ。
  28. 【請求項28】 Aが、薬物、ポリペプチド、核酸若しくはその類似体、又
    はマーカー分子である、請求項24〜27のいずれか1項記載のプロドラッグ。
  29. 【請求項29】 Aが、アンスラサイクリン、ドキソルビシン、ダウノルビ
    シン、葉酸誘導体、ビンカアルカロイド、カリケアマイシン、ミトキサントロン
    、シトシンアラビノシド、アデノシンアラビノシド、リン酸フルダラビン、メル
    ファラン、ブレオマイシン、マイトマイシン、L−カナバニン、タキソイド、カ
    ンプトセシン、プロテアソームインヒビター、ファルネシル−タンパク質トラン
    スフェラーゼインヒビター、エポチロン、メイタンシノイド、ディスコデルモラ
    イド、白金誘導体、デュオカルマイシン、コンブレタスタチン、エピポドフィロ
    トキシン、BH3ペプチド、p53ペプチド、カスパーゼ、グランザイムB、リ
    ボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、c−DNA、ペプチド核酸、ロー
    ダミン、FITC、ビオチン及びGFPよりなる群から選択される、請求項28
    記載のプロドラッグ。
  30. 【請求項30】 TPが、アンテナペディアホメオドメイン由来ペプチド、
    Tatトランス活性化タンパク質由来ペプチド、アルギニンオリゴマー及び多反
    応性抗DNA抗体のCDR領域に由来するペプチドよりなる群から選択される、
    請求項24〜29のいずれか1項記載のプロドラッグ。
  31. 【請求項31】 TPが、下記: 【表1】 よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項30記
    載のプロドラッグ。
  32. 【請求項32】 TPが、1個以上のD−アミノ酸を含むことを特徴とする
    、請求項24〜31のいずれか1項記載のプロドラッグ。
  33. 【請求項33】 TPが、下記: 【表2】 よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項32記
    載のプロドラッグ。
  34. 【請求項34】 L2が、細胞内プロテアーゼによる切断を受けやすいペプ
    チドである、請求項24〜33のいずれか1項記載のプロドラッグ。
  35. 【請求項35】 L2が、カスパーゼ基質、フリン基質、プロテアソーム基
    質及びグランザイムB基質よりなる群から選択される、請求項34記載のプロド
    ラッグ。
  36. 【請求項36】 式(III): 【化3】 〔式中、D1及びD2は、それぞれ独立に生物活性物質であり、そしてL3は、腫
    瘍若しくは標的細胞又はその近くで切断を受けやすい結合残基である〕で示され
    る二元プロドラッグ組成物。
  37. 【請求項37】 L3が、アダプター残基を含むことを特徴とする(該アダ
    プター残基は、2個のカルボン酸残基又は2個のアミノ残基を含むことを特徴と
    する)、請求項36記載の二元プロドラッグ。
  38. 【請求項38】 アダプター残基が、シトラコニル、ジメチルマレイル、ス
    クシニル、グルタリル及びジグリコリルよりなる群から選択される、請求項37
    記載の二元プロドラッグ。
  39. 【請求項39】 nが、1である、請求項36〜38のいずれか1項記載の
    二元プロドラッグ。
  40. 【請求項40】 D1及びD2が、協調して作用する1対の生物活性分子を構
    成する、請求項36〜39のいずれか1項記載の二元プロドラッグ。
  41. 【請求項41】 D1又はD2が、細胞内で活性な生物活性物質である、請求
    項36〜40のいずれか1項記載の二元プロドラッグ。
  42. 【請求項42】 D1及びD2が、両方とも細胞内で活性な生物活性物質であ
    る、請求項36〜40のいずれか1項記載の二元プロドラッグ。
  43. 【請求項43】 D1又はD2が、細胞外で活性な生物活性物質である、請求
    項36〜40のいずれか1項記載の二元プロドラッグ。
  44. 【請求項44】 D1又はD2の一方が、細胞内で活性な生物活性物質であり
    、そしてもう一方が、細胞外で活性な生物活性物質である、請求項36〜40の
    いずれか1項記載の二元プロドラッグ。
  45. 【請求項45】 D1又はD2が、アンスラサイクリン、ドキソルビシン、ダ
    ウノルビシン、葉酸誘導体、ビンカアルカロイド、カリケアマイシン、ミトキサ
    ントロン、シトシンアラビノシド、アデノシンアラビノシド、リン酸フルダラビ
    ン、メルファラン、ブレオマイシン、マイトマイシン、L−カナバニン、タキソ
    イド、カンプトセシン、プロテアソームインヒビター、ファルネシル−タンパク
    質トランスフェラーゼインヒビター、エポチロン、メイタンシノイド、ディスコ
    デルモライド、白金誘導体、デュオカルマイシン、コンブレタスタチン、エピポ
    ドフィロトキシン、TNFα、IFN−α、IFN−γ、IL−1、IL−2、
    IL−6、IGF−1アンタゴニスト、細胞溶解性ペプチド、抗血管新生性ペプ
    チド、トロンボスポンジン由来ペプチド、サブスタンスPアンタゴニスト、TR
    AIL(Apo−2リガンド)及びFasリガンドよりなる群から選択される、
    請求項36〜44のいずれか1項記載の二元プロドラッグ。
  46. 【請求項46】 D1又はD2の一方が、TNFαであり、そしてD1又はD2 のもう一方が、抗腫瘍物質である、請求項45記載の二元プロドラッグ。
  47. 【請求項47】 D1又はD2の一方が、TNFαであり、そしてD1又はD2 のもう一方が、インターフェロン、IFN−α又はIFN−γである、請求項4
    6項記載の二元プロドラッグ。
  48. 【請求項48】 D1が、ドキソルビシンであり、そしてD2が、TNFα、
    IGF−1アンタゴニスト、細胞溶解性ペプチド、抗血管新生性ペプチド、サブ
    スタンスPアンタゴニスト、プロテアソームインヒビター及びファルネシル−タ
    ンパク質トランスフェラーゼインヒビターよりなる群から選択される、請求項4
    5記載の二元プロドラッグ。
  49. 【請求項49】 D1又はD2が、細胞内で活性な生物活性物質、細胞内で活
    性な生物活性物質を細胞中に運ぶことができるポリペプチド、及び細胞内で切断
    を受けやすい任意の結合残基を含むことを特徴とする構成体である、請求項36
    〜46のいずれか1項記載の二元プロドラッグ。
  50. 【請求項50】 D1及びD2が、それぞれ独立に、細胞内で活性な生物活性
    物質、細胞内で活性な生物活性物質を細胞中に運ぶことができるポリペプチド、
    及び細胞内で切断を受けやすい任意の結合残基を含むことを特徴とする構成体で
    ある、請求項49記載の二元プロドラッグ。
  51. 【請求項51】 細胞内で活性な生物活性物質が、アンスラサイクリン、ド
    キソルビシン、ダウノルビシン、葉酸誘導体、ビンカアルカロイド、カリケアマ
    イシン、ミトキサントロン、シトシンアラビノシド、アデノシンアラビノシド、
    リン酸フルダラビン、メルファラン、ブレオマイシン、マイトマイシン、L−カ
    ナバニン、タキソイド、カンプトセシン、プロテアソームインヒビター、ファル
    ネシル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビター、エポチロン、メイタンシ
    ノイド、ディスコデルモライド、白金誘導体、デュオカルマイシン、コンブレタ
    スタチン、エピポドフィロトキシン、BH3ペプチド、p53ペプチド、カスパ
    ーゼ、グランザイムB、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、c−D
    NA、ペプチド核酸、ローダミン、FITC、ビオチン及びGFPよりなる群か
    ら選択される、請求項49又は50記載の二元プロドラッグ。
  52. 【請求項52】 細胞内で活性な生物活性物質を細胞中に運ぶことができる
    ポリペプチドが、アンテナペディアホメオドメイン由来ペプチド、Tatトラン
    ス活性化タンパク質由来ペプチド、アルギニンオリゴマー及び多反応性抗DNA
    抗体のCDR領域に由来するペプチドよりなる群から選択される、請求項49〜
    51のいずれか1項記載の二元プロドラッグ。
  53. 【請求項53】 インビボ、エクスビボ又はインビトロで腫瘍の増殖を阻害
    する方法であって、腫瘍を請求項1〜52のいずれか1項記載のプロドラッグと
    接触させることを特徴とする方法。
  54. 【請求項54】 新生物疾患を治療する方法であって、治療上有効量の請求
    項1〜52のいずれか1項記載のプロドラッグを投与することを特徴とする方法
  55. 【請求項55】 更に治療上有効量の第2の抗腫瘍物質を投与することを特
    徴とする、請求項53又は54記載の方法。
  56. 【請求項56】 請求項1〜52のいずれか1項記載のプロドラッグ及び薬
    剤学的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤を含むことを特徴とする、薬剤組成
    物。
  57. 【請求項57】 更に第2の抗腫瘍物質を含むことを特徴とする、請求項5
    6記載の薬剤組成物。
  58. 【請求項58】 請求項1〜35のいずれか1項記載のプロドラッグの製造
    方法であって、 (1)Mの前駆体を、Mの反応性基がL1の相補的反応性基と縮合する条件下
    で、L1の前駆体と反応させることにより、M−L1を生成する工程;及び (2)1〜n個の(M−L1)を、L1の反応性基がBの相補的反応性基と縮合
    する条件下で、Bの前駆体と反応させることにより、プロドラッグを生成する工
    程 を含むことを特徴とする方法。
  59. 【請求項59】 請求項1〜35のいずれか1項記載のプロドラッグの製造
    方法であって、 (1)1〜n個のL1の前駆体を、(L1nの反応性基がBの相補的反応性基
    と縮合する条件下で、Bの前駆体と反応させることにより、(L1n−Bを生成
    する工程;及び (2)(L1n−Bを、(L1nの反応性基が(M)nの相補的反応性基と縮
    合する条件下で、(M)nの前駆体と反応させることにより、プロドラッグを生
    成する工程 を含むことを特徴とする方法。
  60. 【請求項60】 請求項36〜52のいずれか1項記載のプロドラッグの製
    造方法であって、 (1)D1の前駆体を、D1の反応性基がL3の相補的反応性基と縮合する条件
    下で、L3の前駆体と反応させることにより、D1−L3を生成する工程;及び (2)1〜n個の(D1−L3)を、L3の反応性基がD2の相補的反応性基と縮
    合する条件下で、D2の前駆体と反応させることにより、プロドラッグを生成す
    る工程 を含むことを特徴とする方法。
  61. 【請求項61】 請求項36〜52のいずれか1項記載のプロドラッグの製
    造方法であって、 (1)1〜n個のL3の前駆体を、(L3nの反応性基がD2の相補的反応性基
    と縮合する条件下で、D2の前駆体と反応させることにより、(L3n−D2を生
    成する工程;及び (2)(L3n−D2を、(L3nの反応性基が(D1nの相補的反応性基と
    縮合する条件下で、(D1nと反応させることにより、プロドラッグを生成する
    工程 を含むことを特徴とする方法。
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