JP2003343343A - 金属製円筒状体およびその製造方法 - Google Patents

金属製円筒状体およびその製造方法

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JP2003343343A JP2002152916A JP2002152916A JP2003343343A JP 2003343343 A JP2003343343 A JP 2003343343A JP 2002152916 A JP2002152916 A JP 2002152916A JP 2002152916 A JP2002152916 A JP 2002152916A JP 2003343343 A JP2003343343 A JP 2003343343A
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Tadanao Ito
忠直 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 内周壁の耐摩耗性に優れ、内燃機関用シリン
ダーライナー等の摺動摩擦を受ける部品に好適な金属製
円筒状体、および薄肉の円筒状体を精度よく、安価に、
生産性よく製造することができる金属製円筒状体の製造
方法を提供する。 【解決手段】 Siの含有量が13〜18質量%である
アルミニウム合金からなる円筒状体であり、初晶Siが
外周壁側よりも内周壁側に密に晶出している金属製円筒
状体、および円筒形の鋳型11内に配置された回転体1
2に金属溶湯を注ぎ、回転体12の回転によって金属溶
湯を飛散させ、飛散させた金属溶湯を鋳型11の内周壁
に堆積させる金属製円筒状体20の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属製円筒状体お
よびその製造方法に関し、特に、内燃機関用シリンダー
ライナー等の摺動摩擦を受ける部品に使用されるAL−
Si系合金製の円筒状体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車部品の軽量化に関連して、
自動車部品にアルミニウム材料が使用されるようになっ
ており、エンジンのシリンダブロック等はアルミニウム
製の鋳物材となりつつある。しかしながら、シリンダー
ライナーに代表される中空部品は、その内周壁がピスト
ンリングにより繰り返しの摺動摩擦を受けること、また
高温にさらされること等から、耐摩耗性、耐熱性、強度
等を考慮し鋳鉄により製造されることが普通であった。
最近になり、自動車部品の軽量化が急務となってきたこ
と、また熱伝導性の改良が要求されていること等から、
アルミニウム合金のシリンダーライナーへの使用が検討
されている。
【0003】シリンダーライナーのアルミニウム化にあ
たっては、強度、耐摩耗性の観点から、その材料である
アルミニウム合金は限定される。このようなアルミニウ
ム合金としては、耐摩耗性を高めるため11質量%以上
のSiを含有する過共晶AL−Si合金、また、耐熱強
度等をあげるために、過共晶AL−Si合金にさらにC
u、Mg、Ni、Fe、Mn等を添加した合金が一般的
であり、これを中空円筒状体に加工し、シリンダブロッ
クに鋳ぐるむことが試みられている。
【0004】過共晶AL−Si合金中のSiは、鋳造
時、合金が冷えて固まる際に最初に固体として(初晶と
して)晶出し、マトリックスの地に石ころのように分散
しており、この初晶Siは、シリンダーライナー内面の
耐摩耗性に寄与するものである。しかしながら、従来の
重力による金型鋳造法では、この初晶Siが50〜10
0μmと粗大化してしまうため、この方法で得られた鋳
造品を切削加工する際にその表面から初晶Siが脱落し
たり、逆に初晶Siが局所に偏析して不均一に分布する
ことにより、得られたシリンダライナーにおいては初晶
Siの希薄な部分で偏摩耗がおこる等の欠点がみられ
た。また、シリンダーライナーに必要とされる形状は、
肉厚が数mmの薄肉の中空円筒状であり、このような円
筒状体の鋳造は、金型鋳造法では技術的に非常に難しい
ため、金型鋳造法では厚肉のものから薄く削り出す必要
があり、生産性、歩留まりの面でも欠点があった。
【0005】また、鋳鉄等で円筒状体を製造する方法の
一つに、遠心鋳造法がある。この方法は、回転鋳型に溶
湯を注ぎ、鋳型の回転の遠心力で鋳型内壁に金属を凝固
させるものである。しかしながら、アルミニウムのよう
な凝固の速い金属の場合、この方法で肉厚が数mmの円
筒状体を鋳造するには、溶湯のコントロールが難しかっ
た。
【0006】薄肉の円筒状体を製造する方法としては、
押出法が一般的である。しかしながら、この方法では、
押出用の大径ビレットを過共晶AL−Si合金にて鋳造
する過程で問題があり、大径ビレットの鋳造時の冷却速
度が遅いために初晶Siの粗大化、偏析が生じやすかっ
た。また、高濃度のSiを含有したアルミニウム合金を
押出す場合、非常に押出しにくく、押出し速度が遅くな
る、あるいは初晶Siによるダイスの摩耗が大きいため
寸法精度が悪くなる等の欠点がみられた。
【0007】この初晶Siの粒径の粗大化と偏析を解消
し、かつ薄肉の円筒状体を製造する方法としては、アル
ミニウム合金をアトマイズ粉化したものをビレット状に
固め、これを棒状あるいはパイプ状に押出し、さらに熱
処理で初晶Siの平均粒径を2〜30μmに調整した
後、切断してフロープレスにより薄肉の円筒状体を得る
方法が、特表平11−501990号公報に提案されて
いる。
【0008】この方法では、アトマイズにて粉体を製造
するため、粉体の粒子が細かく、その粒子中の初晶Si
は細かい。また、この粉体自体が250μm以下の微粉
であるので、微粉の集合体であるビレットは、初晶Si
の偏析が少なく、したがって押出したものについても、
初晶Siの偏析が少ない。また、最終的にフロープレス
により成形するため、寸法精度もかなりよいものであ
る。しかしながら、アトマイズによる粉末製造は、かな
り生産性が悪く、また押出、熱処理、切断、フロープレ
ス等数多くの工程を経るため、製造工程が複雑となり、
得られる円筒状体がかなりの高価なものとなる欠点があ
った。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】よって、本発明の目的
は、内周壁の耐摩耗性に優れ、内燃機関用シリンダーラ
イナー等の摺動摩擦を受ける部品に好適な金属製円筒状
体、および薄肉の円筒状体を精度よく、安価に、生産性
よく製造することができる金属製円筒状体の製造方法を
提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の金属
製円筒状体は、Siの含有量が13〜18質量%である
アルミニウム合金からなる円筒状体であり、初晶Si
が、外周壁側よりも内周壁側に密に晶出していることを
特徴とする。また、本発明の金属製円筒状体の肉厚は、
3〜15mmであることが望ましい。また、初晶Siの
平均粒径は、10〜40μmであることが望ましい。
【0011】また、本発明の金属製円筒状体は、Cu2
〜4質量%、Mg0.2〜1.0質量%、Ni0.5〜
2質量%、Fe0.3〜1.0質量%、Mn0.3〜
0.7質量%のいずれか1種以上を含有することが望ま
しい。また、本発明の内燃機関用シリンダーライナー
は、本発明の金属製円筒状体を切削加工してなることを
特徴とする。
【0012】また、本発明の金属製円筒状体の製造方法
は、円筒形の鋳型内に配置された回転体に金属溶湯を注
ぎ、回転体の回転によって金属溶湯を飛散させ、飛散さ
せた金属溶湯を鋳型の内周壁に堆積させることを特徴と
する。また、本発明の金属製円筒状体の製造方法におい
ては、鋳型を、その中心軸を回転軸にして回転させるこ
とが望ましい。また、回転体の回転軸と鋳型の回転軸と
が、平行とされていないことが望ましい。
【0013】また、本発明の金属製円筒状体の製造方法
は、金属が、Siの含有量が13〜18質量%であるア
ルミニウム合金である場合に、特に有用である。また、
本発明の金属製円筒状体の製造方法においては、金属製
円筒状体の肉厚が3〜15mmとなるように、金属溶湯
を鋳型の内周壁に堆積させることが望ましい。また、本
発明の内燃機関用シリンダーライナーは、本発明の金属
製円筒状体の製造方法によって得られた金属製円筒状体
を切削加工してなることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の金属製円筒状体は、Siの含有量が13〜18
質量%であるアルミニウム合金からなる円筒状体であ
り、初晶Siが、外周壁側よりも内周壁側に密に晶出し
ているものである。アルミニウム合金中のSiの含有量
が13質量%未満では、初晶Siが十分晶出せず、耐摩
耗性を付与する初晶Si量が十分でない。一方、Siの
含有量が18質量%を超えると、金属製円筒状体の鋳造
の際に、溶湯保持温度がかなり高温となり、かつ凝固温
度範囲が広がるため鋳造がしにくくなるとともに、晶出
する初晶Siが過多となり、また、部分的な初晶Siの
凝集が起こりやすい。
【0015】また、初晶Siが外周壁側よりも内周壁側
に密に晶出している金属製円筒状体は、シリンダーライ
ナーのように他の部品が内周壁を摺動するような摺動部
品として、耐摩耗性の点から有利である。また、初晶S
iは応力集中の起点として働くため、摺動に関係しない
金属製円筒状体の外周壁は、むしろ、強度の観点から初
晶Siが少ないあるいは無いほうが好都合である。
【0016】本発明の金属製円筒状体の肉厚は、3〜1
5mmであることが好ましい。肉厚が15mmを超える
と、金属製円筒状体の鋳造の際に、内周壁側の冷却が不
十分となり、初晶Siの粒径が粗大化するおそれがあ
る。一方、肉厚が3mm未満では、表面精度を出すため
の後切削加工が困難となるおそれがある。
【0017】金属製円筒状体における初晶Siの粒径が
大きすぎると、金属製円筒状体の切削加工時にバイトを
破損したり、シリンダーライナーとしたときに、ピスト
ンおよびピストンリングの摩耗を招いたりする。一方、
初晶Siの粒径が小さすぎると、耐摩耗性に寄与しな
い。したがって、本発明の金属製円筒状体における初晶
Siの平均粒径は、10〜40μmの範囲であることが
好ましい。また、金属製円筒状体には、粒径が100μ
m以上のSi粒子が含まないことがより好ましい。
【0018】本発明の金属製円筒状体には、マトリック
スの強度を上げるために、Cuを2〜4質量%添加する
ことが好ましい。Cu添加は、マトリックスの強化で耐
摩耗性に寄与するとともに、初晶Siを保持するための
強度にも影響する。特に、溶体化処理を行うことによっ
てその効果は増す。Cuが2質量%未満では、強度への
寄与は少なく、4質量%を超えて添加しても効果は増加
しない。
【0019】また、本発明の金属製円筒状体には、Mg
を0.2〜1.0質量%添加することが好ましい。Mg
の添加も強度に寄与する。また、Mgは、アルミニウム
中に固溶し、合金基質の強化に役立つとともに、熱処理
によってMg2Si 等の金属間化合物を形成し、強靱
化、耐摩耗性向上に役立つ。Mgが0.2質量%未満で
は、強度向上の効果は少なく、1.0質量%を超えて添
加しても、添加しただけの効果が得られない。
【0020】また、Fe、Ni、Mnを添加し、耐熱性
を向上させることも好ましい。この場合、Niは0.5
〜2質量%、Feは0.3〜1.0質量%、Mnは0.
3〜0.7質量%が適当である。添加量が多すぎると逆
に強度低下が起こる。
【0021】次に、本発明の金属製円筒状体の製造方法
について説明する。本発明の金属製円筒状体の製造方法
は、従来の金型鋳造、ビレットの押出あるいはアトマイ
ズ粉のビレットの押出、プレス等とは全く異なる製法で
あって、ほぼ1工程にて金属製円筒状体を製造する方法
である。本発明の金属製円筒状体の製造方法の特徴は、
円筒形の鋳型の内周壁に、微細に分散された溶湯を堆積
させることにより中空鋳造品を直接作り出すことにあ
る。
【0022】図1は、本発明の金属製円筒状体の製造方
法に使用される鋳造装置の一例を示す図である。この鋳
造装置は、チャンバー(図示略)内に中心軸を回転軸と
して回転可能に設置された円筒形の鋳型11と、この鋳
型11内に回転軸が鋳型12の中心軸と同軸となるよう
に配置された回転体12と、この回転体12に軸体13
を介して接続された、上下方向に移動可能なモーター1
4と、アルミニウム合金を溶解させるルツボ(図示略)
から樋15を通って供給される溶湯を回転体12に注ぐ
パイプ16と、鋳型11をその下端にて支持し、駆動装
置(図示略)に接続された回転円板17とを具備して概
略構成されるものである。
【0023】鋳型11は、濡れ性、冷却のための熱伝導
性が良いことから銅製のものが好ましい。また、鋳型1
1は、冷却効果を高めるためには、その体積を溶湯量に
対して十分大きいものにしておく必要がある。
【0024】回転体12の材質は、これ自身で溶湯の熱
を奪わないように断熱材を使用したものが好ましい。そ
の形状は、図1のような平円盤状でよいが、鋳造する金
属製円筒状体の径が大きくなり、注湯量を増したい場合
は、溶湯を外方に飛散させるための複数の孔が内周壁か
ら外周壁まで貫通して形成されたカップ状のものでもよ
い。回転体12が平円盤の場合は、回転速度と材質表面
状況等により飛散溶滴の形状がある程度決まってくる。
また、カップ状の場合、孔の孔径と位置によって、溶滴
の飛散方向と量をコントロールすることが容易になる。
【0025】この鋳造装置において、ルツボから樋15
を通って供給されたアルミニウム合金の溶湯は、鋳型1
1の上端面付近にてモーター14により回転している回
転体12に樋15の端部のパイプ16から注がれる。回
転体12に注がれた溶湯は、回転体12の回転によって
発生する遠心力により分断され、外周接線方向へ飛散す
る。飛散した溶湯は、回転体12を囲む鋳型11の内周
壁に円周状に堆積する。この際、飛散して鋳型11の内
周壁に当たった直後の溶湯の冷却効果を高めるために、
鋳型11を回転させ、鋳型11の回転によって発生する
遠心力によって堆積溶湯を鋳型11の内周壁に押し付け
る効果をもたせることが好ましい。
【0026】鋳型11の内周壁に向かって飛散した溶湯
は、そのままでは鋳型11の上端面付近で帯状に堆積す
るだけであるので、モーター14を下方に移動させるこ
とによって回転体12を下方に移動させる。これによっ
て、鋳型11の内周壁に沿って中空円筒状の鋳造品、す
なわち本発明の金属製円筒状体20が製造される。な
お、回転体12を上下方向に移動させるかわりに、鋳型
11を上下方向に移動させてもよい。
【0027】鋳型11を回転させる場合は、鋳型11の
回転方向は、回転体12と同一方向のほうが、鋳型11
の内周壁における溶湯の跳ね返り落下(スプラッシュ)
を防ぐ意味で好ましい。また、鋳型11の回転速度は、
堆積した溶湯にかかる遠心力が1G以上になるようにす
ることが、遠心力を生じさせ鋳型11の内周壁への溶湯
の接触を強化する意味で好ましい。鋳型の回転速度を上
げることにより堆積した溶湯に対しても遠心力が働くこ
とにより、鋳型に押し付けられる程度が強まり、冷却が
強められる。
【0028】また、回転体12の回転数により飛散した
溶湯の溶滴の大きさをある程度コントロールすることも
可能であり、回転数を増すことにより溶滴を細かく分断
することができる。これにより、堆積時の冷却速度をコ
ントロールすることが可能となる。
【0029】以上説明したような、本発明の金属製円筒
状体の製造方法によれば、円筒形の鋳型11内に配置さ
れた回転体12に溶湯を注ぎ、回転体12の回転によっ
て溶湯を飛散させ、飛散させた溶湯を鋳型11の内周壁
に堆積させているので、従来の金型鋳造法や遠心鋳造法
では困難であった薄肉の円筒状体を鋳造により精度よく
製造することができ、しかも、アトマイズ粉のビレット
の押出による製法よりも安価に、生産性よく金属製円筒
状体を製造することができる。
【0030】また、本発明の金属製円筒状体の製造方法
によれば、以下の理由から、初晶Siが外周壁側よりも
内周壁側に密に晶出している金属製円筒状体を製造する
ことができる。すなわち、Siの含有量が13〜18質
量%であるアルミニウム合金の溶湯が鋳型11の内周壁
に堆積を始めた段階(金属製円筒状体の外周壁側にあた
る部分)は、非常に微小な体積の溶湯の溶滴が鋳型11
により急冷されるため、初晶Siが生成しにくくなる。
溶湯の堆積が続いて徐々に厚さを重ねると、溶湯の溶滴
は、溶湯が堆積・凝固したアルミニウム合金を介して冷
却されるので、若干冷却速度が緩くなり初晶Siの生成
が見られるようになる。最終的に所要の厚さにまで溶湯
が堆積した段階で、溶湯供給を止めると、中空の金属製
円筒状体20ができるが、この最終凝固部分すなわち金
属製円筒状体の内周壁側は、自由凝固に近いので比較的
冷却は緩くなる。これに伴って若干晶出する初晶Siが
多めになる。このように、金属製円筒状体の外周壁側は
急冷により初晶Siの晶出が抑えられ、初晶Siの少な
い組織となり、内周壁側は徐冷により初晶Siの密な組
織となる。外周壁側を急冷するには、鋳型を熱伝導のよ
い材質とし、その体積を大きくとるほうがよいが、堆積
する溶滴用量との兼ね合いであまり急冷にすると、堆積
が不連続となる可能性がある。したがって、最適な溶滴
の堆積速度と鋳型との組み合わせを考える必要がある。
【0031】さらに、前述したように、外周壁側に比
べ、内周壁側に初晶Siが密に生成されていることによ
り、シリンダーライナーのように内面を摺動する部品と
しては、耐摩耗性の点から有利である。また、外周壁側
は摺動に関係しないため、強度の観点からは、むしろ応
力集中の起点として働く初晶Siは外周壁側に少ないあ
るいは無いほうが好都合である。本発明の金属製円筒状
体の製造方法によれば、外周壁側にほとんど初晶Siの
無い、あるいは少ない金属製円筒状体が得られ、その意
味でもシリンダーライナー材として好適である。この初
晶Siの生成割合は、添加Si量と鋳造条件、特に溶湯
の供給量と回転体の速度および鋳型条件により調整され
る。
【0032】また、本発明の金属製円筒状体の製造方法
において、金属製円筒状体の肉厚が3〜15mmとなる
ように、溶湯を鋳型11の内周壁に堆積させるようにす
れば、従来の金型鋳造やビレット鋳造と比較して、溶湯
がかなり急冷されるため、晶出する初晶Si粒は細か
い。一方、飛散する溶湯の溶滴は、アトマイズ粉ほど細
かくないため、アトマイズ粉の初晶Siよりは粒径はお
おきい。このように、本発明の金属製円筒状体の製造方
法においては、平均10〜30μm程度のシリンダーラ
イナーとして最適な粒径の初晶Siが晶出される。
【0033】また、本発明の金属製円筒状体の製造方法
は、図1の装置を使った方法に限定はされず、例えば、
図2に示すように、回転体12の回転軸と鋳型11の回
転軸とを平行とはせず、回転体12の回転軸を鋳型11
の回転軸に対して角度θほど傾斜させ、この回転軸が傾
斜した回転体12に溶湯を注ぐ方法であってもよい。こ
の場合、鋳型11の回転速度を、回転体12の回転速度
とずらすことにより、回転体12から飛散した溶湯を、
鋳型11の内周壁に広範囲に分散させることができ、鋳
型11の内周壁の面積あたりの堆積速度を小さくでき
る。したがって、この回転体13の回転軸を傾斜させる
方法によれば、傾斜の角度θにより溶湯の堆積速度を調
整することができる。また、この場合、長さが短い金属
製円筒状体の製造であれば、回転体12を上下に移動さ
せる必要がなくなる。回転体12の回転軸と鋳型11の
回転軸との間の角度θは、45度以下が好ましく、30
度以下がより好ましい。角度θが大きくなりすぎると、
飛散した溶湯の溶滴が、鋳型11の内周壁に衝突した後
に跳ね飛ばされる傾向がある。
【0034】なお、本発明の金属製円筒状体の製造方法
は、上述したSiの含有量が13〜18質量%であるア
ルミニウム合金に限定はされず、このアルミニウム合金
以外の金属にも適用可能である。この場合であっても、
薄肉の円筒状体を精度よく、安価に、生産性よく製造す
ることができるという本発明の効果は十分に発揮され
る。また、図示例の鋳造装置では、鋳型11の中心軸は
垂直方向となっているが、本発明の金属製円筒状体の製
造方法においては、鋳型の中心軸が水平方向とされた鋳
造装置を用いても構わない。
【0035】次に、本発明のシリンダーライナーについ
て説明する。本発明の金属製円筒状体の製造方法により
鋳造された金属製円筒状体からシリンダーライナーを製
造するには、最終厚さから数mmほど厚くされた金属製
円筒状体を鋳造し、寸法形状を出すためにその表面を面
削加工すればそれで良い。必要ならば、溶体化処理等の
熱処理を行い、硬度を高めてから面削加工を行ってもよ
い。いずれにしても、本発明の金属製円筒状体の製造方
法によれば、金属製円筒状体は1工程で製造可能である
ので、したがって、シリンダーライナーは、その後の切
削のみで製造が可能となり、大幅な工程の短縮となる。
【0036】
【実施例】以下、実施例を示す。 (実施例1)Si16.0質量%、Cu3.0質量%、
Mg0.5質量%、Ni1.0質量%、Fe0.3質量
%、Mn0.4質量%、残部Alの合金をルツボにて9
00℃に加熱し溶解させた。厚さ30mm、内径110
mm、長さ150mmの純銅製鋳型内に、アルミナ製耐
火物を50mmφに加工した円盤状回転体を鋳型と同軸
状に置いた。回転体は下方に設置したモーターにより6
00rpmで回転させた。
【0037】初め、回転体を鋳型上端面付近に置き、こ
の回転体の上方からルツボの溶湯を滴下させるととも
に、徐々に一定速度で回転体を下方に移動させた。鋳型
は、回転体と同方向に100rpmにて回転させた。こ
の結果、厚さ6mm、長さ約120mmの円筒状体の鋳
造品を得た。これを長さ方向で半分に切断し、その断面
をミクロ観察した。その結果、外周壁側より2mmまで
は、初晶Siが見られなかった。内周壁付近では、平均
粒径30μmの初晶Siが均一に分布していた。
【0038】(比較例1)実施例1と同様の組成の合金
をルツボにて溶解させた後、この溶湯から連続鋳造鋳型
にて8インチ径のビレットを鋳造した。これを切断し、
均熱処理した後、外周壁を面削した。これを間接押出機
により外径110mmφ、肉厚10mmのパイプに押し
出した。その断面を調べたところ、内周壁から外周壁に
かけて、最大粒径200μmの初晶Siを含む、平均粒
径85μmの初晶Siが、多数、ランダムに偏在してい
た。
【0039】(比較例2)実施例1と同様の組成の合金
をルツボにて溶解させた後、内径110mmφ、長さ1
50mmの銅製金型に、中子として外径95mmφ、長
さ150mmのシェル型を同軸状に置き、これらの隙間
に溶湯を2箇所から流し込んだ。しかし、完全に溶湯が
隙間全体に行き渡らず、円筒状体の鋳造品は得られなか
った。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の金属製円
筒状体は、Siの含有量が13〜18質量%であるアル
ミニウム合金からなる円筒状体であり、初晶Siが、外
周壁側よりも内周壁側に密に晶出しているものであるの
で、内周壁の耐摩耗性に優れており、内燃機関用シリン
ダーライナー等の摺動摩擦を受ける部品に好適である。
【0041】また、肉厚が、3〜15mmであれば、粒
径が粗大化した初晶Siが少なくなり、また、表面精度
を出すための後切削加工が容易である。また、初晶Si
の平均粒径が、10〜40μmであれば、シリンダーラ
イナーとして十分な耐摩耗性を発揮しつつ、金属製円筒
状体の切削加工時にバイトを破損したり、シリンダーラ
イナーとしたときに、ピストンおよびピストンリングの
摩耗を招いたりすることがない。
【0042】また、本発明の金属製円筒状体の製造方法
は、円筒形の鋳型内に配置された回転体に金属溶湯を注
ぎ、回転体の回転によって金属溶湯を飛散させ、飛散さ
せた金属溶湯を鋳型の内周壁に堆積させる方法であるの
で、薄肉の円筒状体を精度よく、安価に、生産性よく製
造することができる。また、本発明の金属製円筒状体の
製造方法において、鋳型をその中心軸を回転軸にして回
転させることにより、鋳型の回転によって発生する遠心
力によって堆積溶湯が鋳型の内周壁に押し付けられるの
で、堆積溶湯が効率よく冷却される。
【0043】また、本発明の金属製円筒状体の製造方法
を、Siの含有量が13〜18質量%であるアルミニウ
ム合金に適用した場合、初晶Siが、外周壁側よりも内
周壁側に密に晶出している金属製円筒状体を得ることが
できる。また、本発明の金属製円筒状体の製造方法にお
いて、金属製円筒状体の肉厚が3〜15mmとなるよう
に、金属溶湯を鋳型の内周壁に堆積させることにより、
平均粒径が10〜30μm程度のシリンダーライナーと
して最適な初晶Siが晶出される。
【0044】また、本発明の内燃機関用シリンダーライ
ナーは、本発明の金属製円筒状体の製造方法によって得
られる、Siの含有量が13〜18質量%であるアルミ
ニウム合金からなる金属製円筒状体を切削加工してなる
ものであるので、内周壁の耐摩耗性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の金属製円筒状体の製造方法に用いら
れる鋳造装置の一例を示す概略図である。
【図2】 本発明の金属製円筒状体の製造方法に用いら
れる鋳造装置の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
11 鋳型 12 回転体 20 金属製円筒状体

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Siの含有量が13〜18質量%である
    アルミニウム合金からなる円筒状体であり、 初晶Siが、外周壁側よりも内周壁側に密に晶出してい
    ることを特徴とする金属製円筒状体。
  2. 【請求項2】 肉厚が、3〜15mmであることを特徴
    とする請求項1記載の金属製円筒状体。
  3. 【請求項3】 初晶Siの平均粒径が、10〜40μm
    であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の
    金属製円筒状体。
  4. 【請求項4】 Cu2〜4質量%、Mg0.2〜1.0
    質量%、Ni0.5〜2質量%、Fe0.3〜1.0質
    量%、Mn0.3〜0.7質量%のいずれか1種以上を
    含有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか一
    項に記載の金属製円筒状体。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4いずれか一項に記載の
    金属製円筒状体を切削加工してなることを特徴とする内
    燃機関用シリンダーライナー。
  6. 【請求項6】 円筒形の鋳型内に配置された回転体に金
    属溶湯を注ぎ、回転体の回転によって金属溶湯を飛散さ
    せ、飛散させた金属溶湯を鋳型の内周壁に堆積させるこ
    とを特徴とする金属製円筒状体の製造方法。
  7. 【請求項7】 鋳型を、その中心軸を回転軸にして回転
    させることを特徴とする請求項6記載の金属製円筒状体
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 回転体の回転軸と鋳型の回転軸とが平行
    とされていないことを特徴とする請求項7記載の金属製
    円筒状体の製造方法。
  9. 【請求項9】 金属が、Siの含有量が13〜18質量
    %であるアルミニウム合金であることを特徴とする請求
    項6ないし8いずれか一項に記載の金属製円筒状体の製
    造方法。
  10. 【請求項10】 金属製円筒状体の肉厚が3〜15mm
    となるように、金属溶湯を鋳型の内周壁に堆積させるこ
    とを特徴とする請求項9記載の金属製円筒状体の製造方
    法。
  11. 【請求項11】 請求項9または請求項10記載の金属
    製円筒状体の製造方法によって得られた金属製円筒状体
    を切削加工してなることを特徴とする内燃機関用シリン
    ダーライナー。
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