JP2003332345A - ヘテロ接合バイポーラトランジスタ - Google Patents

ヘテロ接合バイポーラトランジスタ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 トランジスタの耐圧を向上できる構造を有す
るヘテロ接合バイポーラトランジスタを提供する。 【解決手段】 ヘテロ接合バイポーラトランジスタ1a
は、半導体保護層10と、コレクタ層20と、ベース層
22と、エミッタ層26とを備える。ベース層22は、
第1の半導体を含む。エミッタ層26は、第1の半導体
材料の禁制帯幅より大きな禁制帯幅を有する第2の半導
体を含む。ベース層22はコレクタ層20とエミッタ層
26との間に設けられている。コレクタ層20は、第3
の半導体を含む。半導体保護層10は、第1及び第3の
半導体の禁制帯幅より大きな禁制帯幅を有する半導体か
ら構成されており、コレクタ層20、ベース層22およ
びエミッタ層26の表面を覆うように設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヘテロ接合バイポ
ーラトランジスタに関する。
【0002】
【従来の技術】シリコン半導体を主材料として含むトラ
ンジスタを製造する半導体プロセスでは、シリコン酸化
膜を保護膜として用いることができる。また、良質なシ
リコン酸化膜は、このトランジスタを構成する半導体領
域を酸化することによりにより比較的容易に得られる。
【0003】一方、化合物半導体を主材料として含むヘ
テロ接合バイポーラトランジスタは、コレクタ、ベース
及びエミッタを構成する半導体層の接合を有している。
ヘテロ接合バイポーラトランジスタを製造する半導体プ
ロセスでは、熱酸化シリコン膜に対応するような良質な
膜が提供されていない。ヘテロ接合バイポーラトランジ
スタは、コレクタ、ベース及びエミッタを構成する半導
体層の表面を覆うように設けられたSiO2、SiN、
SiONといったシリコン系無機絶縁膜を備えており、
この無機絶縁膜がトランジスタの表面を保護している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】発明者らは、ヘテロ接
合バイポーラトランジスタを研究している。このトラン
ジスタを動作させるとき、ベース、コレクタ、エミッタ
に電圧を印加するが、これらの電圧のうちベース−コレ
クタ間に最も大きい逆バイアス電圧が加わる。故に、発
明者らは、トランジスタのベース−コレクタ間の逆方向
耐圧を大きくすることが重要であると考えている。この
逆方向耐圧は、ベース−コレクタ間のリーク電流と関係
している。ベース−コレクタ接合が露出される形態のト
ランジスタでは、ベース−コレクタ接合のリーク電流
は、内部接合に流れる電流成分と、接合の境界に流れる
電流成分からなる。発明者らは、この接合の境界に流れ
る電流成分を小さくすることが耐圧特性の向上に重要で
あると考えている。
【0005】発明者らが研究しているトランジスタで
は、ベース−コレクタ接合が露出されることを防ぐため
にこの接合上に絶縁性シリコン無機化合物膜を設けてい
る。発明者らは、このトランジスタに関して下記の技術
課題に着目している。このシリコン系無機絶縁膜は、プ
ラズマCVD法によって形成される。成膜中に、トラン
ジスタの半導体層の表面及びこれらの半導体層の接合が
プラズマに晒される。また、トランジスタを構成する半
導体領域上に無機絶縁膜を設けると、半導体領域の表面
のダングリングボンドにより表面準位が増加する。発明
者らは、これらの技術課題を解決する候補はシリコン系
無機絶縁膜に替えて半導体膜を用いることであると考え
ている。しかしながら、トランジスタは、2端子を有す
るダイオードと異なり、コレクタ、ベース及びエミッタ
といった3端子デバイスであり、第1導電型半導体領域
を第2導電型半導体領域により挟むnpn構造あるいは
pnp構造を備えている。故に、発明者らは、トランジ
スタの半導体領域を半導体膜で覆うと、新たなリーク電
流の経路を形成する可能性があると考えている。
【0006】そこで、本発明の目的は、トランジスタの
耐圧を向上できる構造を有するヘテロ接合バイポーラト
ランジスタを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の一側面は、ヘテ
ロ接合バイポーラトランジスタである。ヘテロ接合バイ
ポーラトランジスタは、コレクタ層と、ベース層と、エ
ミッタ層と、半導体保護層を備える。ベース層は、第1
の半導体を含む。エミッタ層は、第1の半導体材料の禁
制帯幅より大きな禁制帯幅を有する第2の半導体を含
む。ベース層はコレクタ層とエミッタ層との間に設けら
れている。コレクタ層は、第3の半導体を含む。半導体
保護層は、第1及び第3の半導体の禁制帯幅より大きな
禁制帯幅を有する半導体から構成されており、コレクタ
層、ベース層およびエミッタ層の表面を覆うように設け
られている。
【0008】半導体保護層の禁制帯幅は第1及び第3の
半導体の禁制帯幅より大きいので、望まれないリーク電
流経路が、ベース、コレクタ、エミッタの間に発生する
可能性を低減できる。また、このトランジスタは半導体
層を保護層として用いているので、トランジスタを構成
する半導体領域において表面準位の増加およびプラズマ
ダメージを低減できる。故に、半導体保護層は、ヘテロ
接合バイポーラトランジスタの耐圧を高めることができ
る。
【0009】また、半導体保護層が不純物を意図的に添
加していない半導体を含めば、半導体保護層全体にわた
って空乏層が形成される。
【0010】このトランジスタでは、エミッタコンタク
ト層を更に備えることができる。エミッタコンタクト層
は、第2の半導体材料の禁制帯幅より小さい禁制帯幅を
有する半導体を含む。エミッタ層は、エミッタコンタク
ト層とベース層との間に設けられている。半導体保護層
は、エミッタコンタクト層の表面を覆うように設けられ
ている。
【0011】半導体保護層は、エミッタコンタクト層の
表面を覆うので、エミッタコンタクト層の表面を介して
ベース・エミッタ間に流れる電流を低減するために役立
つ。
【0012】このトランジスタでは、サブコレクタ層を
更に備えることができる。コレクタ層はサブコレクタ層
とベース層との間に設けられている。半導体保護層は、
サブコレクタ層の表面を覆うように設けられている。
【0013】半導体保護層は、サブコレクタ層の表面を
覆うので、ベースとコレクタとの間にサブコレクタ層の
表面を介して流れる電流を低減するために役立つ。
【0014】このトランジスタでは、コレクタ層、ベー
ス層、及びエミッタコンタクト層の各々はInGaAs
半導体を含むことができる。エミッタ層は、InP半導
体を含むことができる。半導体保護層は、不純物を意図
的に添加していないInP半導体を含むことができる。
【0015】本発明の別の側面は、ヘテロ接合バイポー
ラトランジスタである。ヘテロ接合バイポーラトランジ
スタは、コレクタ層と、ベース層と、エミッタ層とを備
える。ベース層は、第1の半導体を含む。エミッタ層
は、第1の半導体の禁制帯幅より大きな禁制帯幅を有す
る第2の半導体を含んでおり、コレクタ層およびベース
層の表面を覆うように設けられている。
【0016】このトランジスタでは、エミッタ層の禁制
帯幅は第1の半導体の禁制帯幅より大きいので、ベー
ス、コレクタ、エミッタの間に望まれないリーク電流経
路が発生する可能性を低減できる。また、エミッタ層が
コレクタ層およびベース層の表面を覆うので、トランジ
スタを構成する半導体領域において表面準位の増加およ
びプラズマダメージを低減できる。故に、ヘテロ接合バ
イポーラトランジスタの耐圧が高くなる。
【0017】このトランジスタは、エミッタコンタクト
層を更に備えることができる。エミッタコンタクト層
は、第2の半導体材料の禁制帯幅より小さな禁制帯幅を
有する半導体を含む。エミッタ層は、エミッタコンタク
ト層とベース層との間に設けられている。
【0018】エミッタ層は、ベース層の表面を覆うの
で、ベース層の表面を介してエミッタコンタクト層とベ
ース電極との間を流れる電流の低減に役立つ。
【0019】このトランジスタは、サブコレクタ層を更
に備えることができる。コレクタ層は、サブコレクタ層
とベース層との間に設けられている。エミッタ層は、サ
ブコレクタ層の表面を覆うように設けられている。
【0020】エミッタ層は、サブコレクタ層の表面を覆
うので、ベースとコレクタ電極との間にサブコレクタ層
の表面を介して流れる電流を低減するために役立つ。
【0021】このトランジスタでは、コレクタ層、ベー
ス層、エミッタコンタクト層の各々はInGaAs半導
体を含むことができる。エミッタ層はInP半導体を含
むことができる。
【0022】ヘテロ接合バイポーラトランジスタを製造
する方法は、(a)コレクタ層、第1の半導体を含むベー
ス層、及び第1の半導体材料の禁制帯幅より大きな禁制
帯幅を有する第2の半導体を含むエミッタ層を含む第1
のメサを形成する工程と、(b)下地の半導体領域の表面
を覆うように、第1の半導体の禁制帯幅より大きな禁制
帯幅を有する半導体保護膜を形成する工程とを備える。
【0023】この方法は、(c)第1のメサを形成する工
程に先だって、エミッタコンタクト層を形成する工程を
更に備えることができる。
【0024】この方法は、(d)半導体保護膜を形成する
工程に先だって、サブコレクタ層を形成する工程を更に
備えることができる。或いは、この方法は、半導体保護
膜を形成する工程の後に、サブコレクタ層及び保護層を
形成する工程を更に備えることができる。
【0025】ヘテロ接合バイポーラトランジスタを製造
する方法は、(e)コレクタ層、第1の半導体を含むベー
ス層を含む第1のメサを形成する工程と、(f)下地の半
導体領域の表面を覆うように、第1の半導体材料の禁制
帯幅より大きな禁制帯幅を有する第2の半導体を含むエ
ミッタ層を形成する工程とを備える。
【0026】ヘテロ接合バイポーラトランジスタを製造
する方法は、(g)コレクタ層、及び第1の半導体を含む
ベース層を含む第1のメサを形成する工程と、(h)下地
の半導体領域の表面を覆うように、第1の半導体材料の
禁制帯幅より大きな禁制帯幅を有する第2の半導体を含
むエミッタ膜を形成する工程と、(i)エミッタ膜上にエ
ミッタコンタクト層を形成する工程と、(j)エミッタ膜
をエッチングして第1のメサを覆うようにエミッタ層を
形成する工程と、を備える。
【0027】ヘテロ接合バイポーラトランジスタを製造
する方法は、(k)サブコレクタ膜、コレクタ膜、及び第
1の半導体を含むベース膜を形成する工程と、(m)コレ
クタ膜及びベース膜をエッチングしてコレクタ層及びベ
ース層を含む第1のメサを形成する工程と、(n)サブコ
レクタ膜をエッチングしてサブコレクタ層を形成する工
程と、(p)下地の半導体領域の表面を覆うように、第1
の半導体材料の禁制帯幅より大きな禁制帯幅を有する第
2の半導体を含むエミッタ膜を形成する工程と、(q)エ
ミッタ膜上にエミッタコンタクト層を形成する工程と、
(r)エミッタ膜をエッチングして第1及び第2のメサを
覆うようにエミッタ層を形成する工程とを備える。
【0028】本発明の上記の目的および他の目的、特
徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発
明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容
易に明らかになる。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明の知見は、例示として示さ
れた添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮するこ
とによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を
参照しながら、本発明のヘテロ接合バイポーラトランジ
スタに係わる実施の形態を説明する。可能な場合には、
同一の部分には同一の符号を付する。
【0030】(第1の実施の形態)図1は、本実施の形態
に係わるヘテロ接合バイポーラトランジスタを示す平面
図である。図2(a)は、図1のI−I線に沿ってとられた
断面図である。図2(b)は、図1のII−II線に沿ってと
られた断面図である。本実施の形態に係わるヘテロ接合
バイポーラトランジスタ(以下、トランジスタと記す)1
aは、III−V族化合物半導体から形成されたnpnタ
イプトランジスタであり、そのエミッタのバンドギャッ
プはベースのバンドギャップより大きい。
【0031】図1を参照すると、トランジスタ1aは、
基板2、第1のメサ4、第2のメサ6、エミッタコンタ
クトメサ8、半導体保護層10、エミッタ電極12、ベ
ース電極14、およびコレクタ電極16を備える。図1
には、結晶軸を示す座標系Sが記載されている。基板2
としては、半絶縁性InP基板といった半導体基板が例
示される。また、半導体基板の主面は、例えば(100)
面である。
【0032】図1、図2(a)及び図2(b)を参照しなが
ら、トランジスタ1aの構成要素を説明する。第1のメ
サ4は、基板2の主面上に設けられており、サブコレク
タ層(図2(a)及び図2(b)の参照番号18)を含む。第
1のメサ(サブコレクタ層18)は、〔011〕(以下、
特段の記述がある場合を除き結晶学的に等価な結晶方向
を示す)方向に伸びる一対の側面4a及び4bと、〔0
1−1〕方向に伸びる一対の側面4c及び4dとを有す
る。第1のメサ4の主面は、第1の領域と、この第1の
領域を囲むように設けられた第2の領域とを備える。コ
レクタ電極16は、第1のメサ4の第2の領域に電気的
に接続されており、第1のメサ4のステップ4cを横切
って〔011〕方向に伸びている。第1のメサ4は、当
該トランジスタ1aを別のトランジスタから電気的に分
離するために役立つ。
【0033】第2のメサ6は、第1のメサ4の第1の領
域上に設けられており、コレクタ層20及びベース層2
2を含んでいる。第2のメサ6(コレクタ層20、及び
ベース層22)は、〔011〕方向に伸びる一対の側面
6a、6bと、〔01−1〕方向に伸びる一対の側面6
c、6dとを有する。第2のメサ6の主面は、第1の領
域と、この第1の領域を囲むように設けられた第2の領
域とを備える。ベース電極14は、第2のメサ6の第2
の領域に電気的に接続されており、第1及び第2のメサ
4、6のステップ4c、6dを横切って〔011〕方向
に伸びている。コレクタ層20は、サブコレクタ層18
上に設けられており、ベース層22は、コレクタ層20
上に設けられている。
【0034】また、第2のメサ6は、更にエミッタ層2
6を含むことができる。エミッタ層26は、ベース層2
2上に設けられている。しかしながら、エミッタ層は、
第2のメサ(ベース・コレクタメサ呼ばれる)6と別個に
設けることができる。
【0035】エミッタコンタクトメサ8は、第2のメサ
6上に設けられており、エミッタコンタクト層28を含
む。エミッタコンタクト層28は、〔011〕方向に伸
びる一対の側面28a及び28bと、〔01−1〕方向
に伸びる一対の側面28c及び28dとを有する。側面
28a及び28bの各々は逆メサ形状を有しており、側
面28c及び28dの各々は順メサ形状を有する。
【0036】エミッタ電極12は、エミッタコンタクト
層28に電気的に接続されており、エミッタコンタクト
層28の順メサ形状の側面28d、並びに第1及び第2
のメサ4、6のステップ4d、6dを横切って〔01
1〕方向に伸びている。
【0037】半導体保護層10は、コレクタ層20、ベ
ース層22およびエミッタ層26の表面を覆うように設
けられている。図1に示される実施の形態においては、
半導体保護層10を明示的に示すために、コレクタ層2
0、ベース層22及びエミッタ層26の表面を覆う矩形
領域に半導体保護層10が設けられているが、基板全体
に対して保護機能を発揮するために、基板の全面に設け
られていることが好ましい。
【0038】半導体保護層10は、ベース層22の半導
体及びコレクタ層20の半導体の禁制帯幅より大きな禁
制帯幅を有する半導体から構成されているので、リーク
電流経路が、ベース、コレクタ、エミッタの間に発生す
る可能性を低減できる。故に、半導体保護層は、ヘテロ
接合バイポーラトランジスタの耐圧を高めることができ
る。
【0039】また、トランジスタ1aは、シリコン系無
機化合物層に替えて半導体保護層10を用いているの
で、トランジスタを構成する半導体層と同じ成長法を採
用できる。故に、トランジスタを構成する半導体領域の
表面がプラズマに晒されることがないので、この半導体
領域の表面準位の増加が抑えられると共に半導体領域に
対するプラズマダメージも低減できる。
【0040】更に、半導体保護層10の不純物濃度が十
分に低ければ、半導体保護層10の全体にわたって又は
部分的に空乏層が形成される。半導体保護層10に空乏
層が形成されるようにするためにの条件としては、例え
ば、膜厚400ナノメートル以下、キャリア濃度1.0
×1015cm-3以下であることが好ましい。空乏層の形
成により、半導体保護層10を介して流れるキャリアを
低減できる。空乏層を確実に形成するためには、半導体
保護層10が不純物を意図的に添加していない半導体か
ら構成されていることが好ましい。
【0041】加えて、半導体保護層10が十分に空乏化
していれば、半導体保護層10内の残存キャリア濃度を
小さくできる。発明者の知見によれば、残存キャリアは
浮遊容量を増加させる。トランジスタには高周波信号が
入力されるが、半導体保護層10が完全に空乏化してい
れば、トランジスタの高周波特性が浮遊容量により悪化
することがない。
【0042】トランジスタ1aが動作している状態で
は、ベース・コレクタ間にはミリアンペア程度の量の電
流が流れている。また、ベース・コレクタ接合には、大
きな電圧が印加されている。故に、ベース・コレクタ接
合の近傍には、ホットエレクトロンが生じている。一
方、トランジスタ1aのベース・コレクタ接合のエッジ
がメサ表面に現れている。シリコン系無機化合物層が直
接に覆っている場合、成膜の際にプラズマダメージによ
って発生する界面準位や、界面近傍のシリコン系無機化
合物層にホットエレクトロンが捕獲される現象が生じ
る。この現象は、界面近傍のリーク電流増大や寄生効果
といった悪影響を生じさせる。半導体保護層10は接合
のエッジを覆っているので、ホットエレクトロンの捕獲
が生じにくい。
【0043】シリコン系無機化合物層に替えて半導体保
護層10がベース層22およびエミッタ層26の表面を
覆っているので、ベース層22およびエミッタ層26の
表面を介してエミッタ・ベース間に流れる電流を抑制す
る。
【0044】シリコン系無機化合物層に替えて半導体保
護層10がエミッタコンタクト層28の表面を覆ってい
るので、エミッタコンタクト層28の表面(側面)を介し
て、エミッタ電極・ベース電極間に通じるリーク電流を
抑えることができる。
【0045】さらに、半導体保護層10がサブコレクタ
メサの側面を覆っていれば、隣接した素子間に流れるリ
ーク電流を抑制できる。
【0046】トランジスタ1aの主要な構成要素が説明
された。 具体例; 基板2:半絶縁性InP基板; 層18:Si添加InGaAs、200〜500nm、
1.0×1019cm-3〜2.0×1019cm-3 ; 層20:Si添加InGaAs、200〜500nm、
1.0×1015cm-3〜2.0×1017cm-3 ; 層22: C添加InGaAs、30nm〜100n
m、2.0×1019cm-3〜4.0×1019cm-3; 層26:Si添加InP、50nm〜200nm、1.
0×1017cm-3〜5.0×1018cm-3; 層28:Si添加InGaAs、200nm、1.0×
1019〜2.0×1019 ; 層10:アンドープInP、 20nm。
【0047】(第2の実施の形態)図3は、別の実施の形
態のトランジスタ1bを示す図面である。図4(a)は、
図1のIII−III線に沿ってとられた断面図である。図4
(b)は、図1のIV−IV線に沿ってとられた断面図であ
る。本実施の形態に係わるヘテロ接合バイポーラトラン
ジスタ(以下、トランジスタと記す)1bは、III−V族
化合物半導体から形成されたnpnタイプトランジスタ
であり、そのエミッタのバンドギャップはベースのバン
ドギャップより大きい。図3には、結晶軸を示す座標系
Sが記載されている。
【0048】図3を参照すると、トランジスタ1aと同
様に、トランジスタ1bは、基板2、第1のメサ4、エ
ミッタコンタクトメサ8、ベース電極14、コレクタ電
極16、およびエミッタ電極12を備える。しかしなが
ら、トランジスタ1bは、第1の実施の形態における構
成に限定されるものではない。また、トランジスタ1b
は、半導体保護層を備えておらず、トランジスタ1aの
第2のメサ6に替えて、第2のメサ7を備える。また、
トランジスタ1bは、エミッタ層10の代わりにエミッ
タ層11を備える。
【0049】第2のメサ7は、第1のメサ4の第1の領
域上に設けられており、コレクタ層21及びベース層2
3を含んでいる。第2のメサ7(コレクタ層21、及び
ベース層23)は、〔011〕方向に伸びる一対の側面
7a、7bと、〔01−1〕方向に伸びる一対の側面7
c、7dとを有する。第2のメサ7の主面は、第1の領
域と、この第1の領域を囲むように設けられた第2の領
域とを備える。ベース電極14は、第2のメサ7の第2
の領域に電気的に接続されており、第1及び第2のメサ
4、7のステップ4c、7dを横切って〔011〕方向
に伸びている。コレクタ層21は、サブコレクタ層18
上に設けられており、ベース層23は、コレクタ層21
上に設けられている。
【0050】エミッタ層11は、第2のメサ7(ベース
・コレクタメサ呼ばれる)を覆うように設けられてい
る。エミッタ層11は、コレクタ層21およびベース層
23の表面を覆うように設けられている。エミッタ層1
1は2つの部分からなる。第1の部分は、ベース層23
とエミッタコンタクト層28との間に位置して、トラン
ジスタのワイドギャップエミッタとして機能する。第2
の部分は、ベース層23及びコレクタ層21の表面を覆
って半導体保護層として機能する。
【0051】エミッタ層11は、ベース層23及びコレ
クタ層21の禁制帯幅より大きな禁制帯幅を有する半導
体から構成されているので、望まれないリーク電流経路
が、ベースとコレクタとの間に発生する可能性を低減で
きる。故に、エミッタ層11は、ヘテロ接合バイポーラ
トランジスタの耐圧を高めることができる。
【0052】また、トランジスタ1bは、シリコン系無
機化合物層に替えてエミッタ層11を保護層として用い
ているので、トランジスタを構成する半導体層と同じ成
長法を採用できる。故に、トランジスタを構成する半導
体領域の表面がプラズマに晒されることがないので、こ
の半導体領域の表面準位の増加が抑えられると共に半導
体領域に対するプラズマダメージも低減できる。
【0053】トランジスタ1bが動作しているとき、ベ
ース・コレクタ間にはミリアンペア程度の量の電流が流
れている。また、ベース・コレクタ接合には、大きな電
圧が印加されている。故に、ベース・コレクタ接合の近
傍には、ホットエレクトロンが生じている。一方、トラ
ンジスタ1bのベース・コレクタ接合のエッジがメサ表
面に現れている。半導体層11は接合のエッジを覆って
いるので、ホットエレクトロンの捕獲が生じにくい。
【0054】エミッタ層11を保護膜と兼用しているの
で、エミッタ層11の不純物濃度は、1.0×1016
-3以上〜1.0×1017cm-3以下であることが好ま
しい。発明者らの見積もりでは、ベース層23の不純物
濃度が4×1019cm-3でありエミッタ層の不純物濃度
が1.0×1017cm-3であるとき、エミッタ層におけ
る空乏層の広がりが100ナノメートルであり、エミッ
タ層の不純物濃度が1.0×1016cm-3であるとき、
エミッタ層における空乏層の広がりが350ナノメート
ルである。この程度の空乏層の広がりが得られれば、エ
ミッタ層11は保護層として用いることが可能である。
空乏層の形成により、半導体層11を介して流れる電流
を低減できる。また、保護層としての機能が期待される
半導体層11の部分が完全に空乏化していれば、浮遊容
量により、トランジスタの高周波特性が悪化することが
ない。
【0055】エミッタ層11の濃度を低下させること
は、エミッタ層の抵抗を増大させることになる。エミッ
タ層の機能は、電子に対しては障壁として働くことな
く、正孔に対しては障壁として働くことである。故に、
エミッタ層の不純物濃度を低くすることは、トランジス
タの他の層の不純物濃度を低下させることに比べると、
実現可能性がある。
【0056】エミッタ層11は、第1のメサ4を覆うよ
うに設けられている。第1のメサ4は、サブコレクタ層
18を含む。エミッタ層11がサブコレクタ層を覆って
いれば、隣接した素子間に流れるリーク電流を抑制でき
る。半導体層11は、サブコレクタ層18の表面を覆う
ように設けられている。半導体層11は、サブコレクタ
層18の禁制帯幅より大きな禁制帯幅を有する半導体か
ら構成されているので、望まれないリーク電流経路が発
生する可能性を低減できる。
【0057】エミッタコンタクトメサ8は、第2のメサ
7上に設けられており、エミッタコンタクト層28を含
む。エミッタ電極12は、エミッタコンタクト層28に
電気的に接続されており、エミッタコンタクト層28の
順メサ形状の側面28d、並びに第1及び第2のメサ
4、7のステップ4d、7dを横切って〔011〕方向
に伸びている。
【0058】コレクタ電極16は、第1のメサ4の第2
の領域に電気的に接続されており、第1のメサ4のステ
ップ4cを横切って〔011〕方向に伸びている。コレ
クタ電極16とサブコレクタ層18との接続を得るため
に、第1のメサ4上の半導体層11に開口部を設けるこ
とが好ましい。半導体層11の厚さに関係なく、確実に
コレクタ電極16とサブコレクタ層18との接続を得る
ことができる。
【0059】半導体基板上に複数のトランジスタが設け
られているとき、第1のメサ4は、当該トランジスタ1
bを別のトランジスタから電気的に分離するために役立
つ。また、半導体層11は、トランジスタ毎に別個に設
けられている。
【0060】トランジスタ1bの主要な構成要素が説明
された。
【0061】(第3の実施の形態)図5(a)、図5(b)、
図6(a)、図6(b)、図7(a)、図7(b)、図8(a)及
び図8(b)を参照しながら、ヘテロ接合バイポーラトラ
ンジスタを製造する方法を説明する。ヘテロ接合バイポ
ーラトランジスタを製造するために、基板40を準備す
る。
【0062】(成膜工程)第1の成膜工程では、基板40
上に複数のIII−V族化合物半導体膜を成長する。図5
(a)に示される実施例では、半絶縁性InP基板といっ
た基板40上に、サブコレクタ膜42、コレクタ膜4
4、ベース膜46、エミッタ膜48及びエミッタコンタ
クト膜50を順に成長する。
【0063】この成膜は、例えば有機金属気相成長法
(OMVPE)を用いてエピタキシャル成長により行われ
る。サブコレクタ膜42の不純物濃度は、コレクタ膜4
4の不純物濃度よりも高い。サブコレクタ膜42をn導
電型にするために、n型ドーパントが添加されている。
サブコレクタ膜42の不純物濃度は、コレクタ損失(コ
レクタ−エミッタ間を流れる電流ICEと、コレクタ−エ
ミッタ間電圧VCEの積)を小さくするように比較的高く
決定される。好適なサブコレクタ膜42としては、例え
ば、材料がInGaAs、ドーパントがSi、不純物濃
度の上限が1×1019〜5×1019cm-3、膜厚200
nm以上500nm以下である。
【0064】コレクタ膜44をn導電型にするために、
n型ドーパントが添加されている。コレクタ膜44の不
純物濃度は、コレクタ損失を小さくするために大きいこ
とが好ましいが、トランジスタ動作に好適なベース・コ
レクタ接合を得るためにあまり高くできない。コレクタ
膜44の不純物濃度を高くすると、ベース・コレクタ接
合容量が増加するだけでなく、ベース・コレクタ耐圧を
高めることができない。好適なコレクタ膜44として
は、例えば、材料がInGaAs、ドーパントがSi、
不純物濃度の上限が1×1015〜1×1017cm-3、膜
厚200nm以上500nm以下である。コレクタ膜の
厚さは、ベース・コレクタ容量CBCを増加させないよう
に決定される。
【0065】ベース膜46をp導電型にするために、p
型ドーパントが添加されている。ベース膜46の不純物
濃度は、ベース抵抗rbbを低減するために比較的大きく
決定される。ベース膜46の厚さは、優れた電流増幅率
を得るために比較的薄く決定される。ベース膜46のド
ーパントは、固容限が亜鉛に比べて比較的大きい炭素
(C)が使用される。炭素(C)の拡散係数が亜鉛(Zn)の
拡散係数に比べて小さいので、より急峻な不純物プロフ
ァイルが得られる。好適なベース膜46としては、例え
ば、材料がInGaAs、ドーパントがC、不純物濃度
の上限が2×10 19〜4×1019cm-3、膜厚30nm
以上100nm以下である。
【0066】エミッタ膜48の半導体のバンドギャップ
は、ベース膜46のバンドギャップより大きい。エミッ
タ膜48をn導電型にするために、n型ドーパントとし
てシリコン(Si)が使用される。好適なエミッタ層48
としては、例えば、材料がInP、ドーパントがSi、
不純物濃度の上限が2×1017〜5×1018cm-3、膜
厚50nm以上200nm以下である。
【0067】エミッタコンタクト膜50の半導体のバン
ドギャップは、エミッタ膜48のバンドギャップより小
さい。エミッタコンタクト膜50をn導電型にするため
に、n型ドーパントとしてシリコン(Si)が使用され
る。好適なエミッタコンタクト層50としては、例え
ば、材料がInGaAs、ドーパントがSi、不純物濃
度の上限が1×1019〜5×1019cm-3、膜厚が10
0nm以上である。エミッタコンタクト膜50の膜厚の
下限は、エミッタ電極の金属がシンターによって拡散す
る距離より大きく決定される。
【0068】また、エミッタコンタクト膜50は、ステ
ップ状の不純物濃度変化、あるいは、連続的な不純物濃
度変化を有する不純物プロファイルを有することができ
る。不純物プロファイルにおいて、エミッタ膜48から
離れた領域の不純物濃度は、エミッタ膜48に近い領域
の不純物濃度より大きい。例示的なエミッタコンタクト
膜50としては、シリコンを1.0×1018から2.0
×1019cm-3添加した250ナノメートルのGaIn
As膜が示される。或いは、エミッタコンタクト膜50
は、2層構造を備えることができ、例えば、シリコンを
1.0×1019から2.0×1019cm-3添加した10
0〜200ナノメートルの第1のGaInAs膜と、シ
リコンを1.0×1018から1.0×1019cm-3添加
した50〜100ナノメートルの第2のGaInAs膜
とを備える。第2のGaInAs膜は、第1のGaIn
As膜とInP膜との間に設けられている。
【0069】(エミッタコンタクトメサ形成)図5(b)に
示されるように、エミッタコンタクト膜50上にマスク
層52を形成する。マスク層52は、エッチングにより
形成されるエミッタコンタクト層がほぼ矩形になるよう
にパターン形成されている。図6を参照すると、マスク
層52は、〔011〕方向に伸びる第1及び第2の辺5
2a及び52bと、〔01−1〕方向に伸びる第3及び
第4の辺52c及び52dとを備える。また、マスク層
52は、辺52c及び52dの各々から伸び出す突起5
2e、52f、52g、52hを形成するように設けら
れた追加の辺52i、52j、52k、52mを備え
る。突起52e、52f、52g、52hの各々は、そ
れぞれ、辺52a及び52bの一部と追加の辺52i、
52j、52k、52mの各々とにより規定されてい
る。マスクパターンは、パターンを形成する4つの主要
辺と、主要辺のいくつかから伸び出す4つの突起とを備
える。突起の各々は、主要辺の内の一つと、この辺を主
要辺の内の他の一つと接続する追加の斜辺とにより規定
されている。
【0070】次いで、マスク層52を用いて、エミッタ
コンタクト膜50をエッチングするエミッタコンタクト
メサを形成する。エッチングは、例えば、リン酸系のエ
ッチャントを用いて行われる。このエッチャントを用い
ると、InGaAs半導体のエミッタコンタクト膜をI
nP半導体のエミッタ膜に対して選択的にエッチングで
きる。この実施例においては、InP半導体膜はエッチ
ング停止層として働いている。マスク層52は、エッチ
ング終了後に除去される。
【0071】図7は、エッチングにより得られたエミッ
タコンタクト層50aを示す平面図である。図7を参照
すると、マスク層52を用いてエッチングを行ったの
で、ほぼ矩形のエミッタコンタクト層50aが得られて
いる。エミッタコンタクト層50aは、〔011〕方向
に伸びる側面51a及び51bと、〔01−1〕方向に
伸びる側面51c及び51dとを有する。本実施例で
は、リン酸系のエッチャントを用いてInGaAs半導
体のエミッタコンタクト膜50をエッチングしている。
この形態では、エミッタコンタクト層50aの側面51
a及び51bは、逆テーパ形状を有する。エミッタコン
タクト層50aの側面51c及び51dは、順テーパ形
状を有する。
【0072】(ベース・コレクタメサ形成)図8(a)を参
照すると、エミッタコンタクト層51及びエミッタ膜4
8上にマスク層54が形成されている。マスク層54
は、ベース・コレクタメサを形成する領域を規定するパ
ターンを有する。
【0073】まず、第1のエッチャントを用いてベース
膜46に対してエミッタ膜48を選択的にエッチングし
て、エミッタ層48aを形成する。InP半導体のエミ
ッタ膜及びInGaAs半導体のベース膜を備えるトラ
ンジスタの実施例では、塩酸系エッチャントを用いるこ
とができる。このエッチャントにより、InGaAs半
導体膜に対してInP半導体膜を選択的にエッチングす
ることが可能になる。
【0074】次いで、第2のエッチャントを用いてベー
ス膜46及びコレクタ膜44をエッチングして、ベース
層46a及びコレクタ層44aを形成する。ベース層4
6a及びコレクタ層44aがInGaAs半導体から成
る実施例では、硫酸系エッチャントを用いることができ
る。このエッチングは、ベース膜及びコレクタ膜を十分
に除去すると共に、サブコレクタ膜を残すように行われ
る。サブコレクタ膜の膜厚は、このエッチング工程にお
ける減少量を考慮して決定されている。これらのエッチ
ングにより、ベース・コレクタメサ56が得られる。ベ
ース・コレクタメサ56は、コレクタ層44a、ベース
層46a、及びエミッタ層48aを含む。エッチング終
了後に、マスク層54を除去する。
【0075】(サブコレクタメサ形成)図8(b)を参照す
ると、ベース・コレクタメサ56及びサブコレクタ膜4
2上にマスク層58が形成されている。マスク層58
は、サブコレクタメサを形成する領域を規定するパター
ンを有する。
【0076】基板4上に設けられたサブコレクタ膜42
をエッチャントを用いてエッチングする。InGaAs
半導体のサブコレクタ膜及びInP基板を備えるトラン
ジスタの実施例では、リン酸系エッチャントを用いるこ
とができる。このエッチングは、InP基板に対してサ
ブコレクタ膜を選択的に除去できる。
【0077】これらのエッチングにより、サブコレクタ
メサ60が得られる。サブコレクタメサ60は、サブコ
レクタ層42aを備える。エッチング終了後に、マスク
層58を除去する。
【0078】(保護膜形成)図9(a)を参照すると、In
P基板40、サブコレクタメサ60、ベース・コレクタ
メサ56及びエミッタコンタクト層50a上に半導体保
護膜62が形成されている。この成膜は、例えばOMV
PE法を用いて行われる。半導体保護膜62のバンドギ
ャップは、サブコレクタ層42a、コレクタ層40a、
ベース層46a、エミッタコンタクト層50aのバンド
ギャップよりも大きい。また、半導体保護膜62の不純
物濃度は、サブコレクタ層42a、ベース層46a、エ
ミッタコンタクト層50aの不純物濃度よりも小さい。
半導体保護膜62の不純物濃度は、サブコレクタ層42
a、コレクタ層40a、ベース層46a、エミッタ層4
8a、エミッタコンタクト層50aと半導体保護膜62
が接触したときに、半導体保護膜62が空乏化するよう
に決定される。半導体保護膜62の厚さは、サブコレク
タ層42a、コレクタ層40a、ベース層46a、エミ
ッタ層48a、エミッタコンタクト層50aと半導体保
護膜62が接触したときに、半導体保護膜62が実質的
に或いは完全に空乏化するように決定される。
【0079】半導体保護膜62としてInP半導体を用
いるときは、上記のメサを十分に覆うために、少なくと
も100ナノメートル程度が必要であり、好ましくは2
00ナノメートル程度である。好適な実施例としては、
半導体保護膜62は、不純物を意図的に添加していない
InP半導体膜からなる。このInP半導体膜は、n導
電型を示し、その電子濃度は1×1015cm-3以下であ
る。この半導体保護膜62が、サブコレクタ層42a、
コレクタ層40a、ベース層46a、エミッタ層48
a、エミッタコンタクト層50aに接触したときに、空
乏層の深さは200ナノメートル程度である。半導体保
護膜62の膜厚を200ナノメートル程度にすれば、半
導体保護膜62の全体が空乏化される。空乏化した半導
体領域にはキャリア(伝導電子)が存在しないので、サブ
コレクタ層42a、コレクタ層40a、ベース層46
a、エミッタ層48a、エミッタコンタクト層50aの
間に半導体保護層62を介して電流が流れることはな
い。
【0080】(保護膜エッチング)図9(b)を参照する
と、レジスト材からなるマスク層66が半導体保護層6
2上に形成されている。マスク層66は、エミッタコン
タクト、ベースコンタクト、コレクタコンタクトを形成
する位置に開口部66a〜66dを有している。マスク
層66を用いて半導体保護層62をエッチングして半導
体保護層62aを形成する。InPエミッタ層及びIn
P基板に対してInP膜をエッチングするエッチャント
としては、塩酸系エッチャントを用いることができる。
エッチング時間により、エッチング量を制御する。ベー
ス電極部分は、ベース層が露出するまでエッチングして
もよい。エッチング終了後にマスク層66を除去する。
【0081】(メタル堆積)図10(a)を参照しながら、
メタル堆積工程を説明する。この工程では、エミッタ電
極、ベース電極及びコレクタ電極を形成するために利用
するレジスト材からなるマスク層68を半導体保護層6
2a上に形成する。マスク層68は、コレクタ電極を形
成するための領域、エミッタ電極を形成するための領
域、及びベース電極を形成するための領域の各々に開口
部68a、68b、68cを有する。このマスク層上の
全面にメタル膜70を形成する。メタル膜としては、P
t/Ti/Pt/Au膜といったメタル多層膜が例示さ
れる。
【0082】(電極形成)図10(b)に示すように、メタ
ル膜を形成した後にマスク層68を選択的に除去する
と、リフトオフ法によりコレクタ電極74、エミッタ電
極76、及びベース電極78が得られる。
【0083】引き続いて、熱処理を施すと、ヘテロ接合
バイポーラトランジスタの主要工程が完了する。InG
aAs半導体の組成は、GaAsに格子整合するIn
0.53Ga0.47Asである。トランジスタの典型的なサイ
ズは、エミッタコンタクト層の幅は約1マイクロメート
ルであり、ベース・コレクタメサの幅は約2マイクロメ
ートルである。トランジスタの長さは、駆動電流の最大
値により規定されるけれども、数マイクロメートル以上
であり約20マイクロメートルも可能である。
【0084】(第4の実施の形態)図11(a)を参照し
て、別の実施の形態を説明する。この製造方法では、ベ
ース・コレクタメサ形成工程(図8(a))の後に、引き続
いて半導体保護膜72を形成する。成膜条件は、第3の
実施の形態における保護膜形成工程(図9(a))と同様の
条件が適用できるが、別の成膜条件を用いることができ
る。
【0085】図11(b)を参照して、サブコレクタメサ
工程を説明する。半導体保護膜72を形成した後に、サ
ブコレクタ領域を規定するためのマスク層74を形成す
る。マスク層74を用いて半導体保護膜72及びサブコ
レクタ膜42をエッチングして、サブコレクタメサ76
を形成する。InGaAs半導体のサブコレクタ膜及び
InP半導体の半導体保護膜72がInP基板上に設け
られているトランジスタでは、InP半導体のエッチン
グに塩酸系エッチャントを用いることができ、InGa
As半導体のサブコレクタ膜のエッチングにリン酸系エ
ッチャントを用いることができる。これらのエッチャン
トを使い分けることにより、InGaAs半導体膜に対
してInP半導体膜を選択的に除去でき、InP基板に
対してサブコレクタ膜を選択的に除去できる。
【0086】サブコレクタメサ76は、半導体保護層7
2a及びサブコレクタ層42bを含む。基板上に複数の
トランジスタが設けられている場合、半導体保護層72
aは、個々のトランジスタ毎に互いに分離されている。
引き続いて図12(a)に示されるように、マスク層68
上にメタル膜70を形成した後にマスク層68をリフト
オフして電極を形成すると、図12(b)に示されたトラ
ンジスタ1cが得られる。
【0087】本実施の形態は、他の実施の形態と同様
に、リーク電流を低減できるという利点を有する。
【0088】(第5の実施の形態)図13(a)〜図13
(c)及び図14(a)〜図14(c)を参照して、別の実施
の形態に係わるヘテロ接合バイポーラトランジスタを製
造する方法を説明する。ヘテロ接合バイポーラトランジ
スタを製造するために、基板40を準備する。本実施の
形態のトランジスタは、第3の実施の形態に示されたト
ランジスタと、半導体保護層がエミッタ層と兼用されて
いる点で異なっている。
【0089】(第1の成膜工程)第1の成膜工程では、基
板40上に複数のIII−V族化合物半導体膜を成長す
る。図13(a)に示される実施例では、半絶縁性InP
基板といった基板40上に、サブコレクタ膜82、コレ
クタ膜84、及びベース膜86を順に成長する。この成
膜は、例えばOMVPE法を用いてエピタキシャル成長
により行われる。本実施の形態においては、サブコレク
タ膜82はSi添加InGaAsから構成され、コレク
タ膜84はアンドープInGaAsから構成され、ベー
ス膜86は、C添加InGaAsから構成されている。
これらの半導体膜のドーパント濃度及び膜厚は、第3の
実施の形態に係わる実施例と同じ値であることができ
る。
【0090】(ベース・コレクタメサ形成)第1の成膜工
程の後には、ベース・コレクタメサ形成工程を行う。図
13(a)を参照すると、ベース膜86上にマスク層88
が形成されている。マスク層88は、ベース・コレクタ
メサを形成する領域を規定するパターンを有する。エッ
チャントを用いてベース膜86及びコレクタ膜84をエ
ッチングして、ベース層86a及びコレクタ層84aを
形成する。ベース層86a及びコレクタ層84aがIn
GaAs半導体から成るトランジスタの実施例では、こ
のエッチングのために硫酸系エッチャントを用いること
ができる。このエッチングは、ベース膜及びコレクタ膜
を十分に除去すると共に、サブコレクタ膜を残すように
行われる。これらのエッチングにより、ベース・コレク
タメサ90が得られる。エッチング終了後に、マスク層
88を除去する。
【0091】(サブコレクタメサ形成)図13(c)を参照
すると、ベース・コレクタメサ90及びサブコレクタ膜
82上にマスク層92が形成されている。マスク層92
は、サブコレクタメサを形成する領域を規定するパター
ンを有する。基板40上に設けられたサブコレクタ膜8
2をエッチャントを用いてエッチングする。InGaA
s半導体のサブコレクタ膜及びInP基板を備える実施
例では、リン酸系エッチャントを用いることができる。
リン酸系エッチャントを用いると、InP基板に対して
InGaAs半導体サブコレクタ膜を選択的に除去でき
る。このエッチングにより、サブコレクタ層(サブコレ
クタメサ)82aが得られる。エッチング終了後に、マ
スク層92を除去する。
【0092】(第2の成膜工程)図14(a)に示される実
施例では、半絶縁性InP基板といった基板40、ベー
ス・コレクタメサ90、及びサブコレクタメサ82a上
にエミッタ膜94及びエミッタコンタクト膜96を形成
する。エミッタ膜94は、ベース・コレクタメサ90及
びサブコレクタ層82aの表面を覆っている。エミッタ
膜94の半導体のバンドギャップは、ベース膜86のバ
ンドギャップより大きい。好適なエミッタ膜94として
は、例えば、材料がInP、ドーパントがSiが例示さ
れる。エミッタ膜94を保護膜と兼用するので、エミッ
タ層の不純物濃度は、1.0×1016cm-3以上〜1.
0×1017cm-3以下であることが好ましい。エミッタ
コンタクト膜96の半導体のバンドギャップは、エミッ
タ膜94のバンドギャップより小さい。好適なエミッタ
コンタクト層96としては、例えば、材料がInGaA
s、ドーパントがSi、不純物濃度の上限が1×1019
〜2×1019cm-3、膜厚が200nm以上である。
【0093】(エミッタコンタクトメサ形成)図14(b)
を参照して、エミッタコンタクトメサ形成工程を説明す
る。この工程では、エミッタコンタクト層96aを形成
する。まず、エミッタコンタクト膜96上にマスク層9
8を形成する。マスク層98は、図6に示されるよう
に、エミッタコンタクト層がほぼ矩形になるようにパタ
ーン形成されている。マスク層98を用いて、エミッタ
コンタクト膜96をエッチングしてエミッタコンタクト
メサを形成する。エッチングは、例えば、リン酸系のエ
ッチャントを用いて行われる。この実施例においては、
InP半導体膜はエッチング停止層として働いている。
マスク層98は、エッチング終了後に除去される。
【0094】(エミッタ層エッチング)図14(c)を参照
すると、レジスト材からなるマスク層100がエミッタ
膜94上に形成されている。マスク層100は、エミッ
タコンタクト、ベースコンタクト、コレクタコンタクト
を形成する位置に開口部100a〜100cを有すると
共に、ベース・コレクタメサ90及びサブコレクタ層8
2aの上面及び側面を覆うように設けられている。マス
ク層100を用いてエミッタ膜94をエッチングしてエ
ミッタ層94aを形成する。このエッチングのために、
塩酸系エッチャントを使用できる。このエッチャントを
用いると、InGaAsコレクタ層86aに対してIn
P半導体膜を選択的に除去できる。エッチング終了後に
マスク層100を除去する。エミッタ層94aは、ベー
ス・コレクタメサ90及びサブコレクタ層82aの表面
を覆っている。基板上に複数のトランジスタが設けられ
ている場合、エミッタ層94aは、個々のトランジスタ
毎に互いに分離されている。
【0095】(メタル堆積)引き続いて、図15(a)に示
されるように、マスク層102を設けた後に基板全面に
メタル層104を堆積する。マスク層102は、エミッ
タ電極及びベース電極のための第1の開口部102aと
コレクタ電極のための第2の開口部102bとを備え
る。
【0096】(電極形成)マスク層102を除去すると、
電極が形成される。本実施の形態では、図15(b)に示
されるように、ベース電極106及びエミッタ電極10
8は自己整合的に形成されている。コレクタ電極110
は、サブコレクタ層82a上に設けられている。これに
より、トランジスタ1dが得られる。
【0097】好適な実施の形態において本発明の原理を
図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から
逸脱することなく配置および詳細において変更され得る
ことができることは、当業者によって認識される。本発
明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定され
るものではない。例えば、半導体膜はOMVPE法で形
成されているが、MBE法で形成することもできる。し
たがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来
る全ての修正および変更に権利を請求する。
【0098】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
トランジスタの耐圧を向上できる構造を有するヘテロ接
合バイポーラトランジスタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、第1の実施の形態に係わるヘテロ接合
バイポーラトランジスタを示す平面図である。
【図2】図2(a)は、図1のI−I線に沿ってとられた断
面図である。図2(b)は、図1のII−II線に沿ってとら
れた断面図である。
【図3】図3は、第2の実施の形態のトランジスタを示
す平面図である。
【図4】図4(a)は、図1のIII−III線に沿ってとられ
た断面図である。図4(b)は、図1のIV−IV線に沿っ
てとられた断面図である。
【図5】図5(a)は、第3の実施の形態のヘテロ接合バ
イポーラトランジスタの製造方法における成膜工程を示
す断面図であり、図5(b)は、エミッタコンタクトメサ
形成工程を示す断面図である。
【図6】図6は、エミッタコンタクトメサ形成用のマス
ク層を示す平面図である。
【図7】図7は、エミッタコンタクト層を示す平面図で
ある。
【図8】図8(a)は、ベース・コレクタメサ形成工程を
示す工程断面図であり、図8(b)は、サブコレクタメサ
形成工程を示す工程断面図である。
【図9】図9(a)は、保護膜形成工程を示す工程断面図
であり、図9(b)は、保護膜エッチング工程を示す工程
断面図である。
【図10】図10(a)は、メタル形成工程を示す工程断
面図であり、図10(b)は、電極形成工程を示す工程断
面図である。
【図11】図11(a)及び図11(b)は、第4の実施の
形態のヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を
示す工程断面図である。
【図12】図12(a)及び図12(b)は、第4の実施の
形態のヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を
示す工程断面図である。
【図13】図13(a)は、第5の実施の形態のヘテロ接
合バイポーラトランジスタの製造方法における第1の成
膜工程を示す断面図であり、図13(b)は、ベース・コ
レクタメサ形成工程を示す断面図であり、図13(c)
は、サブコレクタメサ形成工程を示す断面図である。
【図14】図14(a)は、第2の成膜工程工程を示す断
面図である。図14(b)は、サブコレクタメサ形成を示
す断面図であり、図14(b)は、エミッタコンタクトメ
サ形成工程を示す断面図であり、図14(c)は、エミッ
タ層エッチング工程を示す断面図である。
【図15】図15(a)は、メタル形成工程を示す工程断
面図であり、図15(b)は、電極形成工程を示す工程断
面図である。
【符号の説明】
1a、1b、1c、1d…トランジスタ、2…基板、4
…第1のメサ、6、7…第2のメサ、8…エミッタコン
タクトメサ、10、11…半導体保護層、12…エミッ
タ電極、14…ベース電極、16…コレクタ電極、20
…コレクタ層、22…ベース層、18…サブコレクタ
層、26…エミッタ層、28…エミッタコンタクト層、
40…基板、42…サブコレクタ膜、44…コレクタ
膜、46…ベース膜、48…エミッタ膜、50…エミッ
タコンタクト膜、82…サブコレクタ膜、84…コレク
タ膜、86…ベース膜、90…ベース・コレクタメサ、
94…エミッタ膜、96…エミッタコンタクト膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5F003 AP05 AP06 AZ01 BA11 BA91 BA92 BB04 BC08 BE04 BE90 BF01 BF03 BF06 BG03 BH08 BH18 BH93 BM02 BM03 BP31 BP32 BP94 BP96 5F043 AA15 BB08 GG04 5F045 AA04 AB12 AB17 AF04 AF05 CA02 CB04 CB05 DA62

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の半導体を含むベース層と、前記第
    1の半導体材料の禁制帯幅より大きな禁制帯幅を有する
    第2の半導体を含むエミッタ層と、第3の半導体を含む
    コレクタ層とを備えるヘテロ接合バイポーラトランジス
    タであって、前記ベース層は前記コレクタ層と前記エミ
    ッタ層との間に設けられており、 前記コレクタ層、前記ベース層および前記エミッタ層の
    表面を覆うように設けられ、前記第1及び第3の半導体
    の禁制帯幅より大きな禁制帯幅を有する半導体保護層を
    備える、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  2. 【請求項2】 前記第2の半導体材料の禁制帯幅より小
    さな禁制帯幅を有する半導体を含むエミッタコンタクト
    層を更に備え、 前記エミッタ層は、前記エミッタコンタクト層と前記ベ
    ース層との間に設けられており、 前記半導体保護層は、前記エミッタコンタクト層の表面
    を覆うように設けられている、請求項1に記載のヘテロ
    接合バイポーラトランジスタ。
  3. 【請求項3】 サブコレクタ層を更に備え、 前記コレクタ層は前記サブコレクタ層と前記ベース層と
    の間に設けられており、 前記半導体保護層は、前記サブコレクタ層の表面を覆う
    ように設けられている、請求項1又は請求項2に記載の
    ヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  4. 【請求項4】 前記コレクタ層、前記ベース層、及び前
    記エミッタコンタクト層の各々はInGaAs半導体を
    含み、 前記エミッタ層は、InP半導体を含んでおり、 前記半導体保護層は、不純物を意図的に添加していない
    InP半導体を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の
    ヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  5. 【請求項5】 第1の半導体を含むベース層と、 コレクタ層と、 前記第1の半導体の禁制帯幅より大きな禁制帯幅を有す
    る第2の半導体を含んでおり、前記コレクタ層および前
    記ベース層の表面を覆うように設けられたエミッタ層と
    を備えるヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  6. 【請求項6】 前記第2の半導体材料の禁制帯幅より小
    さな禁制帯幅を有する半導体を含むエミッタコンタクト
    層を更に備え、 前記エミッタ層は、前記エミッタコンタクト層と前記ベ
    ース層との間に設けられている、請求項5に記載のヘテ
    ロ接合バイポーラトランジスタ。
  7. 【請求項7】 サブコレクタ層を更に備え、 前記コレクタ層は前記サブコレクタ層と前記ベース層と
    の間に設けられており、 前記エミッタ層は、前記サブコレクタ層の表面を覆うよ
    うに設けられている、請求項5又は請求項6に記載のヘ
    テロ接合バイポーラトランジスタ。
  8. 【請求項8】 前記コレクタ層、前記ベース層、前記エ
    ミッタコンタクト層の各々はInGaAs半導体を含
    み、 前記エミッタ層はInP半導体を含む、請求項5〜7の
    いずれかに記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
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