JP2003314567A - 転がり軸受、これを用いたベルト式無段変速機 - Google Patents

転がり軸受、これを用いたベルト式無段変速機

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JP2003314567A JP2002121078A JP2002121078A JP2003314567A JP 2003314567 A JP2003314567 A JP 2003314567A JP 2002121078 A JP2002121078 A JP 2002121078A JP 2002121078 A JP2002121078 A JP 2002121078A JP 2003314567 A JP2003314567 A JP 2003314567A
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Susumu Tanaka
進 田中
Hideyuki Uyama
英幸 宇山
Shinji Fujita
慎治 藤田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ベルト式無段変速機のプーリ軸を支持するラジ
アル玉軸受において、ベルトを巻き付ける両プーリ間の
芯ずれを小さくしながら、軸受寿命も長くする。 【解決手段】内輪1および外輪2を特定の合金鋼(C:
0.50〜0.90質量%、Cr:3.0〜15.0質
量%、Mn:0.10〜2.0%、Si:0.10〜
2.0質量%、クロム当量:3.5〜16.0)で形成
する。Ri/D=50.1〜51.9%且つRe/D=
50.1〜51.9%とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両のベルト式無
段変速機のプーリ軸を支持する転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】車両のベルト式無段変速機は、自動変速
機の変速機構として、ベルト駆動のプーリの半径を連続
的に変える機構を有するものである。例えば図4に示す
ように、平行に配置された入力軸(駆動軸)5と出力軸
(従動軸)6にそれぞれプーリ7,8が設けてあり、こ
れらのプーリ間に金属製のベルト9が巻き付けてある。
このベルト9は、厚さ0.2mm程度の薄板を10枚程
度重ねた構造の2条のリング91に、多数の薄い(厚さ
2mm程度の)摩擦片92を取り付けた構造となってお
り、この摩擦片92が押し合うときの押力で動力を伝え
るものである。
【0003】このベルト9を介して、入力軸プーリ(プ
ライマリプーリ)7から出力軸プーリ(セカンダリプー
リ)8に駆動力の伝動がなされる。両プーリ7,8は、
各軸5,6に固定された固定円錐板71,81と、油圧
機構によって軸方向に移動可能な可動円錐板72,82
とで構成され、両円錐板によってV字状プーリ溝が形成
されている。
【0004】これらのプーリ7,8の各可動円錐板7
2,82を軸方向に移動して溝幅を変え、ベルト9がプ
ーリ7,8に接触する位置(プーリの有効回転半径)を
変更することで、変速比を無段階に変えることができ
る。例えば、入力軸プーリの溝幅を縮小するとともに出
力軸プーリの溝幅を拡大すれば、入力軸プーリの有効回
転半径は小さくなり、出力軸プーリの有効回転半径が大
きくなって、大きな変速比が得られる。
【0005】各プーリ7,8の固定円錐板71,81が
一体化された軸部(プーリ軸)71a,81aは、ラジ
アル玉軸受11,12により支持されている。これらの
プーリ軸71a,81aは、軸出力を後段に伝達する際
に、反力としてスラスト荷重を受ける。そのため、この
スラスト荷重によって各ラジアル玉軸受11,12が軸
方向に変位して、入力軸プーリと出力軸プーリとで溝幅
方向の中心がずれる(所謂「芯ずれ」が生じる)ことを
防止する必要がある。前記芯ずれが大きくなると、ベル
ト9が蛇行してリング91と摩擦片92とが不適切に接
触することで損傷に至る場合もあるし、玉軸受11,1
2にすべりが生じて発熱量が大きくなる場合もある。
【0006】その対策として、特公平8−30526号
公報には、プーリ軸を支持する玉軸受について、内輪お
よび外輪の軌道溝の曲率半径(R)のボール直径(D)
に対する比(R/D)を、通常の標準設定値(0.5
3)よりも小さくすること(内輪で50.1〜50.9
%、外輪で50.1〜51.9%)が記載されている。
この比(R/D)が小さいほどスラスト荷重によって玉
軸受が軸方向にずれ難いため、前述のプーリ間の芯ずれ
は生じ難くなる。
【0007】また、特開平10−292859号公報に
は、内輪および玉の残留オーステナイト量を5%以下と
した4点接触玉軸受を用いることが記載されている。こ
こでは、残留オーステナイト量を5%以下とすることに
より、発熱時の残留オーステナイトの分解による寸法変
化を小さくしている。一方、ベルト式無段変速機の潤滑
油としては、トルクコンバーター、歯車機構、油圧機
構、湿式クラッチ等を円滑に作動させて動力を伝達する
ために、前記プーリ軸を支持する玉軸受も含めて、トラ
クションオイル(トラクション係数が0.09以上であ
り、粘度が40℃で30.8cst以上であって、特殊
な摩耗調整剤などを含む潤滑油)が使用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】特公平8−30526
号公報の方法のように、比(R/D)を小さくすると、
軌道溝とボールとの接触面積は大きくなって面圧が小さ
くなるため、軸受寿命が長くなることが期待される。し
かしながら、トラクションオイルで潤滑されるラジアル
玉軸受では、面圧を小さくする方法によって期待通りの
長い寿命を得ることは困難であることが分かった。その
理由は、潤滑油がトラクションオイルの場合と鉱油の場
合で剥離形態が異なることに起因すると推測される。
【0009】すなわち、潤滑油が鉱油の場合には、図5
(a)に示すように、剥離の起点部の位置が軌道溝の溝
幅方向の中心にあるに対して、トラクションオイルの場
合には、図5(b)に示すように、軌道溝の溝幅方向の
中心から外れた位置にある場合が多い。この位置は、軌
道輪と玉との回転速度差Vが大きな位置であり、軸受寿
命には軌道輪と玉との面圧Pだけでなく回転速度差Vも
何らかの影響を及ぼしていると考えられる。そして、比
(R/D)を小さくすることは、軌道溝の溝幅方向の中
心から外れた位置に玉が接触し易くなることに繋がる。
【0010】したがって、ベルト式無段変速機のプーリ
軸を支持するラジアル玉軸受の場合には、前記比(R/
D)を小さくする方法だけでは、両プーリ間の芯ずれを
小さくする目的と軸受寿命を長くする目的の両方を達成
することはできない。本発明は、このような従来技術の
課題を解決するためになされたものであり、ベルト式無
段変速機のプーリ軸を支持するラジアル玉軸受におい
て、ベルトを巻き付ける両プーリ間の芯ずれを小さくし
ながら、軸受寿命も長くすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、内輪と外輪との間に複数の転動体が転動
自在に配設された転がり軸受において、転動体として玉
を有し、内輪および外輪の軌道溝の曲率半径が玉の直径
の50.1%以上51.9%以下であり、内輪、外輪、
および転動体のうちの少なくともいずれかは、質量比
で、炭素(C)の含有率が0.50%以上0.90%以
下、クロム(Cr)の含有率が3.0%以上15.0%
以下、マンガン(Mn)の含有率が0.10%以上2.
0%以下、硅素(Si)の含有率が0.10%以上2.
0%以下であり、モリブデン(Mo)は含有しないか含
有する場合の含有率が2.0%以下であり、バナジウム
(V)は含有しないか含有する場合の含有率が2.0%
以下である合金鋼を所定形状に成形した後、焼入れと焼
戻しを施して得られたものであることを特徴とする転が
り軸受を提供する。
【0012】本発明の転がり軸受によれば、内輪、外
輪、および転動体のうちの少なくともいずれかを上記特
定の合金鋼で形成することにより、トラクションオイル
で潤滑され、内輪および外輪の軌道溝の曲率半径(R)
が玉(転動体)の直径(D)の50.1%以上51.9
%以下である場合でも、従来の合金鋼(SUJ2等の軸
受鋼、SCR420やSCM420等の肌焼鋼)で形成
された転がり軸受よりも軸受寿命を長くすることができ
る。
【0013】合金鋼各成分の数値限定の臨界的意義は以
下の通りである。 [炭素(C)含有率:0.50%以上0.90%以下]
Cは、マトリックスに固溶して鋼に硬さを付与するとと
もに、Cr、Mo、V、W等の元素と結合して炭化物を
形成して耐摩耗性を付与する元素である。熱処理後に転
がり軸受として必要な硬さと耐摩耗性を確保するため
に、0.50%以上含有する必要がある。
【0014】0.90%を超えて含有すると、製鋼時に
粗大な共晶炭化物が生成され易くなって、転がり疲労寿
命や機械的強度が著しく低下する場合がある。また、冷
間加工性や旋削加工性が低くなって、加工コストが高く
なる。Cの含有率は0.55%以上0.80%以下であ
ることが好ましい。 [クロム(Cr)含有率:3.0%以上15.0%以
下]Crは、マトリックスに固溶して、焼入れ性、焼戻
し軟化抵抗性、耐食性等を高くするとともに、微細な炭
化物を形成して、熱処理時の結晶粒の粗大化を防止して
転がり疲労寿命を長くしたり、耐摩耗性や耐熱性を高く
したりする元素である。また、組織を安定化して寸法安
定性を高くしたり、水素侵入による寿命低下を大幅に抑
制したりする元素でもある。Crの含有率が3.0%未
満であると、これらの作用が十分に得られない。
【0015】Crの含有率が15.0%を超えると、製
鋼時に粗大な共晶炭化物が生成され易くなって、転がり
疲労寿命や機械的強度が著しく低下する場合がある。ま
た、冷間加工性や旋削加工性が低くなって、加工コスト
が高くなる。Crの含有率は4.0%以上13.5%以
下であることが好ましく、コストの点から4.0%以上
9.0%以下であることがより好ましい。 [マンガン(Mn)含有率:0.10%以上2.0%以
下]Mnは製鋼時の脱酸素剤として作用する元素であ
る。また、Crと同様に、マトリックスに固溶して焼入
れ性を高くする作用を有する。Mnの含有率が0.10
%未満であると、これらの作用が実質的に得られない。
【0016】Mnの含有率が2.0%を超えると、冷間
加工性や旋削加工性が低くなるだけでなく、マルテンサ
イト変態開始温度が低下して、十分な硬さが得られなく
なる場合がある。Mnの含有率の好ましい範囲は、0.
10%以上1.5%以下である。 [合金鋼の硅素(Si)含有率:0.10%以上2.0
%以下]SiはMnと同様に、製鋼時の脱酸素剤として
作用する元素である。また、CrやMnと同様に、マト
リックスに固溶して焼入れ性を高くする作用を有する。
また、マトリックスのマルテンサイトを強化し、軸受寿
命を延長するために有効な元素である。また、焼戻し軟
化抵抗性、寸法安定性、耐熱性を高くする作用も有す
る。Siの含有率が0.10%未満であると、これらの
作用が実質的に得られない。
【0017】Siの含有率が2.0%を超えると、冷間
加工性、旋削加工性、鍛造性が低くなる場合がある。S
iの含有率の好ましい範囲は、0.10%以上1.5%
以下である。 [合金鋼のモリブデン(Mo)含有率:0以上2.0%
以下]Moは、Crと同様に、マトリックスに固溶し
て、焼入れ性、焼戻し軟化抵抗性、耐食性等を高くする
とともに、微細な炭化物を形成して、熱処理時の結晶粒
の粗大化を防止して転がり疲労寿命を長くしたり、耐摩
耗性を高くしたりする元素である。また、組織を安定化
して寸法安定性を高くしたり、水素侵入による寿命低下
を大幅に抑制したりする元素でもある。
【0018】Moの含有率が2.0%を超えると、製鋼
時に粗大な共晶炭化物が生成され易くなって、転がり疲
労寿命や機械的強度が著しく低下する場合がある。ま
た、冷間加工性や旋削加工性が低くなって、加工コスト
が高くなる。なお、Moは本発明で使用する合金鋼の必
須成分ではない。 [合金鋼のバナジウム(V)の含有率:0以上2.0%
以下]Vは、炭化物や窒化物を形成し易い元素であり、
これらの炭化物や窒化物の存在により、機械的強度、耐
摩耗性、耐熱性が著しく高くなる。また、組織を安定化
して寸法安定性を高くしたり、水素侵入による寿命低下
を大幅に抑制したりする元素でもある。
【0019】Vの含有率が2.0%を超えると、製鋼時
に粗大な共晶炭化物が生成され易くなって、転がり疲労
寿命や機械的強度が著しく低下する場合がある。また、
冷間加工性や旋削加工性が低くなって、加工コストが高
くなる。なお、Vは本発明で使用する合金鋼の必須成分
ではない。本発明はまた、内輪、外輪、および転動体の
うちの少なくともいずれかは、上記特定の合金鋼からな
り、転動体として玉を有し、内輪および外輪の軌道溝の
曲率半径(R)が玉の直径(D)の50.1%以上5
1.9%以下であり、ベルト式無段変速機のベルトを巻
き付けるプーリの回転軸を支持する用途で使用される転
がり軸受(ラジアル玉軸受)を提供する。
【0020】このラジアル玉軸受によれば、比(R/
D)を特公平8−30526号公報と同様の範囲に小さ
くして、スラスト荷重によって玉軸受が軸方向にずれ難
い構成としたため、プーリ間の芯ずれが生じ難くなる。
また、上記特定の合金鋼を使用したため、トラクション
オイルで潤滑された場合でも、従来の合金鋼(SUJ2
等の軸受鋼、SCR420やSCM420等の肌焼鋼)
を使用した場合よりも軸受寿命が長くなる。
【0021】すなわち、このラジアル玉軸受では、比
(R/D)を小さくすることにより両プーリ間の芯ずれ
を小さくし、上記特定の合金鋼を使用することにより軸
受寿命を長くしている。これにより、ベルト式無段変速
機のプーリ軸を支持するラジアル玉軸受において、ベル
トを巻き付ける両プーリ間の芯ずれを小さくしながら、
軸受寿命も長くすることが可能となった。
【0022】本発明の転がり軸受において、前記合金鋼
は、下記の(1)式で表されるクロム当量が3.5以上
16.0以下であり、焼入れと焼戻しを施した後の表層
部の残留オーステナイト量が6体積%以上25体積%以
下であることが好ましい。 クロム当量=〔Cr〕+2〔Si〕+1.5〔Mo〕+5〔V〕‥‥(1) (式中、〔M〕は元素Mの含有率(質量%)を示す。) ここでは、内輪、外輪、転動体の表層部の残留オーステ
ナイト量を6体積%以上25体積%以下とすることによ
り、内輪および外輪と転動体との間に異物が混入した
り、内輪および外輪と転動体との間に滑りが生じたりし
ても、表面疲労が生じ難くなって軸受寿命が長くなる。
【0023】そして、クロム当量が3.5未満である
と、6体積%以上25体積%以下の残留オーステナイト
量を確保しながら、十分な寸法安定性を得ることができ
ない。また、Cr、Si、Mo、Vの含有率が高くなる
ことで、前述のように、転がり疲労寿命や機械的強度が
著しく低下したり、加工コストが高くなるため、クロム
当量の上限を16.0とした。好ましい範囲は5.0以
上16.0以下であり、より好ましくは7.0以上1
4.0以下である。
【0024】本発明はまた、本発明の転がり軸受によ
り、ベルトを巻き付けるプーリの回転軸が支持されてい
るベルト式無段変速機を提供する。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
説明する。
【0026】
【表1】
【0027】先ず、合金成分が上記表1に示す組成であ
る、各合金鋼A−1〜A−10,B−1〜B5を用意し
た。表1にはまた、各合金鋼のCr当量を示した。表1
において、合金成分の含有率が本発明の請求項1の範囲
から外れるものと、Cr当量が本発明の請求項2の範囲
から外れるものに下線を施した。これらの合金鋼を用い
て、呼び番号6208のラジアル玉軸受(内径40m
m、外径80mm、幅18mm)用の内輪と外輪を作製
した。その際、図1に示す内輪1の軌道溝11の曲率半
径Riと、外輪2の軌道溝21の曲率半径Reを各種値
に形成した。各合金鋼を所定形状に成形加工した後に、
840〜1050℃での焼入れと160°での焼戻しを
行った。また、熱処理後に、研削仕上げ加工と超仕上げ
加工を行った。軌道溝11,21の表面粗さは0.01
〜0.04μmRaの範囲内とした。
【0028】また、直径(D)が11.906mmであ
るSUJ2製の等級20相当の玉3を用意した。この玉
3には浸炭窒化処理がなされている。この玉3と、上述
の内輪1および外輪2と、金属製の波形プレス保持器
(図1では保持器が省略されている。)とを用いて、試
験軸受を組み立てた。各試験軸受について、内輪1およ
び外輪2の「材料」「軌道面の表面硬さ」「軌道面の残
留γ(残留オーステナイト量)」と、「軌道溝の曲率半
径(R)/玉の直径(D)」は、表2に示す各種構成と
なっている。なお、ラジアル内部すきまは「C3すき
ま」以下とした。
【0029】これらの試験軸受を、各10体ずつ用意
し、日本精工(株)製の玉軸受寿命試験機に取付け、下
記の条件で回転させる寿命試験を行った。回転中に振動
を測定し、軸受の振動値が初期振動値の5倍となった時
点で回転を終了し、この時点までの回転時間を寿命とし
た。また、この時点で内外輪の軌道溝面のいずれに剥離
が生じているかを調べた。なお、軸受の振動値が初期振
動値の5倍とならない場合の試験の打ち切り時間は、こ
の条件での計算寿命である706時間の3倍とした。
【0030】次に、各種類毎に10体の試験軸受の結果
をワイブル分布のグラフ(累積破損確率−寿命)にプロ
ットし、このグラフから、短寿命側から10%の軸受に
剥離が発生するまでの総回転時間(L10寿命)を求め
た。各試験軸受のL10寿命測定値について、No. 25の
値を「1」とした相対値を算出した。 <寿命試験の条件> 回転速度:3000rpm ラジアル荷重:4800N アキシャル荷重:2000N 潤滑油:「トラクションオイル」に分類される昭和シェ
ル製の無段変速機用潤滑油「NS−1」に、水道水を3
体積%混合したもの 油温度:130℃ 回転輪:内輪 また、各試験軸受を130℃に1000時間保持する高
温保持試験を行い、試験前後の軸受外径の寸法変化量を
測定した。
【0031】これらの試験結果を、試験軸受の構成とと
もに下記の表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】また、内輪の「R/D」が51.0%であ
って、使用した材料の炭素含有率が本発明の範囲内にあ
って、軌道面の残留γ(残留オーステナイト量)が6〜
25%の範囲内にある試験軸受(No. 3,5,7,9,
11〜15,19,22)について、クロム当量と寿命
比(L10寿命の相対値)との関係を図2にグラフで示
す。
【0034】また、「R/D」が内輪で52.0%で外
輪で53.0%であるNo. 18を除いた全試験軸受につ
いて、クロム当量と内輪の「R/D」との関係を図3に
グラフで示す。このグラフにおいて、各プロットは、寿
命比が1.0以下の場合に「△」で、1.0を超え2.
0以下の場合に「○」で、2.0を超える場合に「●」
で示した。
【0035】なお、図3において、範囲Aは、内輪の
(R/D)が50.1%以上51.9%以下と、クロム
当量が3.5以上16.0以下の両方を満たす範囲を示
す。この範囲A内に「△」のプロットが二つあるが、こ
れらは使用した合金鋼の合金成分の組成が本発明の範囲
外のものである。これらの結果から分かるように、No.
1〜15の試験軸受は、内輪および外輪の(R/D)を
50.1%以上51.9%以下としながら、合金成分
が本発明の範囲内にあるA−1〜A−10の合金鋼を材
料として用い、軌道面の残留オーステナイト量が6〜
25体積%の範囲内にあり、クロム当量が3.5〜1
6.0の範囲内にあるため、上記〜のいずれか一つ
を満たさないNo. 16〜25の試験軸受よりも、トラク
ションオイルで潤滑された場合の軸受寿命を長くするこ
とができる。
【0036】すなわち、No. 1〜15の構成とすること
により、ベルト式無段変速機のプーリ軸を支持するラジ
アル玉軸受として、ベルトを巻き付ける両プーリ間の芯
ずれを小さくながら、滑りが生じた場合でも表面疲労が
生じ難く、トラクションオイル潤滑下での軸受寿命が長
いものを得ることができる。特に、No. 2〜15の試験
軸受は、クロム当量が5.0以上16.0以下である合
金鋼A−2〜A−10を使用していることにより、寿命
比1.8以上および高温での寸法変化量5μm以下の良
好な結果が得られた。これに対して、No. 1では、クロ
ム当量が比較的低い3.55の合金鋼を使用しているた
め、高温での寸法変化量が7μmであった。また、No.
16〜19では、クロム当量が1.97および2.61
と低い合金鋼を使用しているため、高温での寸法変化量
が17〜23μmと大きかった。
【0037】さらに、No. 7〜11,13,14の試験
軸受は、クロム当量が7.0以上14以下である合金鋼
A−4〜A−6,A8,A9を使用していることによ
り、寿命比3.0以上の特に良好な結果が得られた。し
たがって、合金成分が本発明の範囲内にあってクロム当
量が5.0以上16.0以下の範囲内にあるA−2〜A
−10の合金鋼を材料として用い、軌道面の残留オース
テナイト量を6〜25体積%の範囲内とすることで、内
輪および外輪の(R/D)を50.1%以上51.9%
以下としながら、トラクションオイルで潤滑された場合
の軸受寿命を長くし、しかも良好な高温での寸法安定性
を得ることができる。
【0038】すなわち、No. 2〜15の構成とすること
により、ベルト式無段変速機のプーリ軸を支持するラジ
アル玉軸受として、ベルトを巻き付ける両プーリ間の芯
ずれを小さくながら、滑りが生じた場合でも表面疲労が
生じ難く、滑りによる発熱が発生した場合でも寸法変化
が少なく、トラクションオイル潤滑下での軸受寿命が長
いものを得ることができる。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
特定の合金鋼を使用することにより、トラクションオイ
ルで潤滑され、内輪および外輪の軌道溝の曲率半径
(R)が玉の直径(D)の50.1%以上51.9%以
下とした場合でも、従来の合金鋼(SUJ2等の軸受
鋼、SCR420やSCM420等の肌焼鋼)で形成さ
れた転がり軸受よりも軸受寿命を長くすることができ
る。
【0040】すなわち、内輪および外輪の軌道溝の曲率
半径(R)が玉の直径(D)の50.1%以上51.9
%以下とするとともに、特定の合金鋼を使用することに
よって、ベルト式無段変速機のプーリ軸を支持するラジ
アル玉軸受において、ベルトを巻き付ける両プーリ間の
芯ずれを小さくしながら、軸受寿命を長くすることがで
きる。
【0041】また、特に、請求項2の構成とすることに
より、上記効果に加えて、滑りが生じた場合でも表面疲
労が生じ難く、滑りによる発熱が発生した場合でも寸法
変化を少なくでき、焼き付きが生じ難くなる効果が得ら
れる。さらに、本発明のベルト式無段変速機によれば、
本発明の転がり軸受でベルトを巻き付けるプーリの回転
軸が支持されていることによって、両プーリ間の芯ずれ
を小さくしながら長期間安定的にプーリを回転させるこ
とができるため、ベルトの耐久性を長期間保持すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】転がり軸受の構成と、内輪および外輪の軌道溝
の曲率半径とを説明する図である。
【図2】実施形態の結果から得られた、材料をなす合金
鋼のクロム当量と寿命比(L10寿命の相対値)との関係
を示すグラフである。
【図3】実施形態の結果から得られた、材料をなす合金
鋼のクロム当量と、内輪の「R/D」と、寿命比(L10
寿命の相対値)との関係を示すグラフである。
【図4】車両のベルト式無段変速機の一例を示す断面図
である。
【図5】軌道輪の剥離形態を示す図であって、(a)は
潤滑油が鉱油の場合を示し、(b)は潤滑油がトラクシ
ョンオイルの場合を示す。
【符号の説明】
1 内輪 11 内輪の軌道溝 2 外輪 21 外輪の軌道溝 3 玉(転動体) 5 入力軸(駆動軸) 6 出力軸(従動軸) 7 入力軸プーリ(プライマリプーリ) 71 固定円錐板 72 可動円錐板 8 出力軸プーリ(セカンダリプーリ) 81 固定円錐板 82 可動円錐板 9 ベルト 91 リング 92 摩擦片 D 玉の直径 Ri 内輪の軌道溝の曲率半径 Re 外輪の軌道溝の曲率半径
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16C 33/66 F16C 33/66 Z F16H 9/00 F16H 9/00 Z (72)発明者 藤田 慎治 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 Fターム(参考) 3J050 AA02 BA03 BB13 CE05 DA01 3J101 AA02 AA42 AA52 AA62 BA53 BA54 BA70 EA03 EA04 EA67 FA32 FA33 FA35 GA01 GA11

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内輪と外輪との間に複数の転動体が転動
    自在に配設された転がり軸受において、 転動体として玉を有し、内輪および外輪の軌道溝の曲率
    半径が玉の直径の50.1%以上51.9%以下であ
    り、 内輪、外輪、および転動体のうちの少なくともいずれか
    は、 質量比で、炭素(C)の含有率が0.50%以上0.9
    0%以下、クロム(Cr)の含有率が3.0%以上1
    5.0%以下、マンガン(Mn)の含有率が0.10%
    以上2.0%以下、硅素(Si)の含有率が0.10%
    以上2.0%以下であり、モリブデン(Mo)は含有し
    ないか含有する場合の含有率が2.0%以下であり、バ
    ナジウム(V)は含有しないか含有する場合の含有率が
    2.0%以下である合金鋼を所定形状に成形した後、焼
    入れと焼戻しを施して得られたものであることを特徴と
    する転がり軸受。
  2. 【請求項2】 前記合金鋼は、下記の(1)式で表され
    るクロム当量が3.5以上16.0以下であり、焼入れ
    と焼戻しを施した後の表層部の残留オーステナイト量が
    6体積%以上25体積%以下である請求項1記載の転が
    り軸受。 クロム当量=〔Cr〕+2〔Si〕+1.5〔Mo〕+5〔V〕‥‥(1) (式中、〔M〕は元素Mの含有率(質量%)を示す。)
  3. 【請求項3】 ベルト式無段変速機のベルトを巻き付け
    るプーリの回転軸を支持する用途で使用される請求項1
    または2記載の転がり軸受。
  4. 【請求項4】 請求項1または2記載の転がり軸受によ
    り、ベルトを巻き付けるプーリの回転軸が支持されてい
    るベルト式無段変速機。
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