JP2003313642A - 高速度工具鋼及びその製造方法 - Google Patents

高速度工具鋼及びその製造方法

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JP2003313642A
JP2003313642A JP2002121141A JP2002121141A JP2003313642A JP 2003313642 A JP2003313642 A JP 2003313642A JP 2002121141 A JP2002121141 A JP 2002121141A JP 2002121141 A JP2002121141 A JP 2002121141A JP 2003313642 A JP2003313642 A JP 2003313642A
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carbide
less
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area ratio
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Kimitsugu Yano
公亜 矢野
Akira Toumoto
晁 嶌本
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Nippon Koshuha Steel Co Ltd
Original Assignee
Nippon Koshuha Steel Co Ltd
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  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性,潤滑性,靭性において優れた特性
を有する高速度工具鋼を提供することにある。 【解決手段】 質量%で、 C:0.85〜1.50
%、Si:1.0%以下、Mn:0.5%以下、Cr:
3.0〜5.0%、2Mo+W:14.0〜24.0
%、V:2.0〜4.0%、Co:0.8〜10.0%
およびS:0.001〜0.050%、さらに希土類元
素のうちの一種または二種以上を0.005〜0.20
0%含み、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物か
らなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、潤滑性と耐摩耗性
において優れた高速度工具鋼及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】切削加工には切削油剤を用いた湿式加工
が主であるが、クーラントに費やすエネルギーの低減と
環境保全の点から、切削油剤を用いないドライ加工が進
んでいる。しかしながら、切削油剤には、(イ)切削工
具とワーク材,切りくずとの間に潤滑膜を作り、切削抵
抗を減少させる。(ロ)切削加工時に発生する摩擦熱を
冷却し、切削工具の軟化を防ぐ。(ハ)切りくずの排出
を助ける。等の役割があり、ドライ化は一部の加工にし
か適用されていない。
【0003】そこで、特開2000−84704号公報
には、湿式,乾式に限らず刃先部の摩耗、チッピングの
少ない材料を用いた切削工具、さらには耐熱性に優れ、
コーティング膜との相性の良い材料を用いた切削工具を
提供する手段が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特
開2000−84704号公報のものは、炭化物の最大
径が大きすぎ靭性の点で問題があること、切削工具のす
くい面にはコーティングが施されていない場合が多く乾
式切削には不向きであること、コーティング膜が剥がれ
るとその後はもたなくなり耐久性に欠ける、といった諸
問題点がある。本発明は、上記のような従来の諸問題点
に鑑み、切削工具の母材そのものに耐摩耗性,潤滑性,
靭性において優れた特性を付与することにより解決した
高速度工具鋼及びその製造方法を提供することを目的と
したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
め、本願の第1発明においては、質量%で、C:0.8
5〜1.50%、Si:1.0%以下、Mn:0.5%
以下、Cr:3.0〜5.0%、2Mo+W:14.0
〜24.0%、V:2.0〜4.0%、Co:0.8〜
10.0%およびS:0.001〜0.050%、さら
に希土類元素のうちの一種又は二種以上を0.005〜
0.200%含み、残部が実質的にFeおよび不可避的
不純物からなることを特徴とする。このような構成とす
ることにより、高速度鋼中に形成された球状の希土類硫
化物が、切削加工時に切削工具とワーク材との間に潤滑
剤の役目を果たして摩擦抵抗を低減するとゝもに、硫化
物が球状となることで靭性の低下が抑制された高速度工
具鋼が得られる。
【0006】また、前記の目的を達成するため、本願の
第2発明においては、円相当径で1.5μm以上3.0
μm未満のMC型炭化物の面積率が1.0〜3.0%
(条件A)、円相当径で3.0μm以上7.0μm未満
のMC型炭化物の面積率が0.2〜2.0%(条件
B)、円相当径で7.0μm以上のMC型炭化物の面積
率が0.5%以下(条件C)、及び円相当径で0.5μ
m以上のMC型炭化物の面積率が合計で3.0〜8.0
%(条件D)の条件を満たすことを特徴とする。このよ
うな構成とすることにより、高い耐引っかき摩耗性と靭
性が確保される。
【0007】そして、本願の第3発明においては、円相
当径で0.5μm以上のMC型炭化物の面積率が5.
0%以上15.0%未満であり、MC型炭化物の最大
径が円相当径で7.0μm未満であることを特徴とす
る。このような構成とすることにより、高い耐凝着摩耗
性を得ながら靭性が維持される。
【0008】更に、本願の第4発明においては、凝固時
のMC型炭化物の晶出温度と、MC型またはMC型
共晶炭化物の晶出温度との差(ΔT)が15≦ΔT
(℃)≦50であり、第5発明においては、質量%で、
0.005%≦Ti+N≦0.040%を含むことを特
徴とする。このような構成とすることにより、MC型炭
化物の粒径が制御され、耐引っかき摩耗性と靭性の維持
が兼ね備えられる。
【0009】また、前記の目的を達成するため、本願の
第6発明においては、鋼塊の外周からD/5におけるデ
ンドライトセルサイズが125μm以下であることを特
徴とする。このような構成とすることにより、炭化物の
分布が均一なものとなり、偏摩耗や刃先のチッピングを
引き起こすことのない長寿命のものとなる。
【0010】そして更に、本願の第7発明においては、
鋼塊の外周からD/5における平均凝固速度が10℃/
min以上であることを特徴とする製造方法にある。こ
のような構成とすることにより、デンドライトセルサイ
ズとMC型炭化物の粒径を制御することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施形態により詳
細に説明する。本発明者らは、高速度鋼中にSと希土類
元素を複合添加することによって球状の希土類硫化物が
形成され、これが切削加工時に切削工具とワーク材との
間に潤滑剤の役目を果たして摩擦抵抗を低減するとゝも
に、希土類硫化物が球状となることから工具材の靭性を
損なわない利点があることを知見した。すなわち、S量
が増加すると磨耗係数が小さくなるが、これに比例して
靭性が低下するとゝもに異方性が顕著となる。しかし、
これに希土類元素を添加して硫化物を球状化させること
により、靭性の低下が抑制されることを知見した。本発
明はこの知見に基づいて成されたものである。
【0012】一方、希土類元素の添加はMC型炭化物を
微細化する作用があることが知られているが、MC型炭
化物が細かすぎると十分な耐摩耗性が得られないといっ
た問題点がある。すなわち、溶解法,粉末法を問わず、
MC型炭化物を微細化した高速度工具鋼は炭化物が細か
すぎるため、工具使用時に発生する切りくずや硬質粒子
によってマトリックスとともに炭化物も除去されてしま
い、十分な耐摩耗性が得られないといった問題点があ
る。
【0013】また、断続切削工具のように摩耗形態が引
っかき・凝着複合型の摩耗の場合、切削初期に発生する
引っかき摩耗に対してはMC型炭化物の生成量は多く、
粒径は大きい方が有利であるが、生成量が多すぎたり粒
度が大きすぎると靭性や被研削性が損なわれる。更に
は、工具の摩耗が進み、切削抵抗が上がったときに発生
する凝着摩耗に対してはMC型炭化物が多く存在する
方が有利であるが、MC型炭化物の生成量が多すぎた
り分布が不均一であると、偏摩耗から刃先の欠けを引き
起こすといった問題もある。
【0014】そこで、切削工具として十分な耐摩耗性を
維持するためには、炭化物の粒度,生成量および分布の
制御を行う必要がある。すなわち、炭化物の粒径と生成
量および分布の制御は高速度工具鋼の耐摩耗性と靭性を
最大限に引き出す上で重要な第二の要素であるとの結論
を得た。本発明は、炭化物粒度の制御も同時に行うこと
により完成したものである。
【0015】詳述すると、MC型炭化物の粒径が及ぼす
引っかき摩耗特性および靭性への影響を詳細に調べた結
果、円相当径1.5μm以上の炭化物は引っかき摩耗特
性を向上させる一方、円相当径3.0μm以上の炭化物
は靭性を著しく低下させる知見を得た。さらには、7.
0μm以上の炭化物が存在するとチッピングの発生頻度
が著しく高くなることを見いだした。これより、高い摩
耗性を得ながら靭性を確保するには1.5μm〜3.0
μmの炭化物を富加し、3.0μm以上の炭化物を制限
することが有効となる。ここで言う炭化物の円相当径と
は粒径であり、断面の個々の炭化物の面積を測定し、そ
れらを真円に置き換えた場合の円の直径を指す。
【0016】具体的には、耐摩耗性を得るには円相当径
で1.5μm以上3.0μm未満のMC型炭化物の面積
率は少なくとも1.0%以上、3.0μm以上7.0μ
m未満のMC型炭化物の面積率は0.2%以上存在する
ことが望ましい。また、円相当径で3.0μm以上7.
0μm未満のMC型炭化物の面積率は、2.0%を越え
ると工具として必要な靭性が得られないため上限を2.
0%とする。1.5μm以上3.0μm未満のMC型炭
化物の面積率が3.0%をを越えると3.0μm以上の
MC型炭化物面積率もまた許容範囲を越えるため、上限
を3.0%とする(上記の条件A,B)。なお、ここで
言う面積率とは炭化物の生成量であり、鍛伸,圧延方向
と平行な断面において炭化物の占める面積の割合を指
す。
【0017】また、上記のように、円相当径で7.0μ
m以上のMC型炭化物が存在すると工具の欠けなどを著
しく引き起こすため、面積率で0.5%以下に制限す
る。そして更に、工具として十分な耐摩耗性を有するに
は、円相当径で0.5μm以上のMC型炭化物の生成量
が面積率にして合計で3.0%以上必要であるが、生成
量が多くなりすぎると靭性が低下するため、靭性を維持
する上限として8.0%とする(上記の条件C,D)。
【0018】しかし、MC型炭化物の生成量(面積率)
と粒径が適正に制御されていても、MC型炭化物が少
なすぎては耐凝着摩耗性が得られないため、面積率でM
C型炭化物は5.0%以上必要である。しかしなが
ら、多すぎると靭性が低下するため上限を15.0%未
満とする。また、粗大なMC型炭化物が存在すると工
具刃先の偏摩耗や欠けを引き起こすため、MC型炭化
物の最大径は円相当径で7.0μm未満であることが望
ましい。また、個々のMC型炭化物は細かくとも、図
1に示すような密集炭化物も単体の粗大なMC型炭化
物と同様の挙動を示すため、密集炭化物の集合体大きさ
も7.0μm未満に制限する。
【0019】以上の炭化物粒径制御において、凝固時の
MC型炭化物晶出温度とMC型またはMC型共晶炭
化物の晶出温度との差(ΔT)はMC型炭化物の粒径を
決定する上で重要な要素である。ΔTが小さすぎると晶
出するMC型炭化物が細かすぎ、ΔTが大きすぎるとM
C型炭化物が粗大化しすぎる。耐摩耗性に寄与する円相
当径1.5μm以上3.0μm未満MC型炭化物を1.
0〜3.0%、また靭性を著しく損なう3.0μm以上
7.0μm未満のMC型炭化物を0.2〜2.0%、さ
らには7.0μm以上のMC型炭化物を0.5%以下に
制御するには、15≦ΔT(℃)≦50が適正範囲であ
る。
【0020】つぎに、工具の寿命には炭化物の分布状態
が重要な要素となる。すなわち、炭化物粒径が適正であ
っても、炭化物の分布が不均一で偏りがあると偏摩耗を
起こし、ひいては刃先のチッピングを引き起こす。図2
にデンドライトの組織写真を示す。デンドライトセルサ
イズが十分小さいと、鋼塊を熱間および冷間加工して断
面形状を小さくしたときに炭化物が均一に分布するが、
デンドライトセルサイズが大きいと加工後も不均一に分
布する。
【0021】ここで、タップやホブ等の切削工具の刃部
は鋼塊の外周からD/5に相当するため、粒径制御した
MC型炭化物が熱間および冷間加工後に均一に分布せし
めるためには、鋼塊の外周からD/5におけるデンドラ
イトセルサイズが125μm以下であることが好まし
い。ここで言うデンドライトセルサイズとは、組織図中
にランダムに線を引いて、共晶相を横切った数を測定し
て平均間隔を測定する交線法により求めたものを指す。
【0022】また、デンドライトセルサイズは合金成分
によらず溶鋼の凝固速度によって変動する。そこで、鋼
塊の外周からD/5におけるデンドライトセルサイズが
125μm以下となるには、鋼塊のD/5の平均凝固速
度が10℃/min以上必要となる。ここで言う平均凝
固速度とは、溶鋼が1400℃から1200℃まで冷却
する際の速度を平均したものを指す。つぎに、本発明に
係る高速度工具鋼において各成分元素を前記の範囲に限
定した理由について述べる。
【0023】C:0.85〜1.50% Cは炭化物形成元素と結合して炭化物を形成するとゝも
に、マトリックスに固溶して、高速度工具鋼として必要
な強度,硬さおよび耐摩耗性等を確保するのに重要な元
素である。これらの効果を得るために0.85%以上必
要とするが、多すぎると靭性および加工性が低下するた
め上限を1.50%とする。 Si:1.0%以下 Siは脱酸剤として作用するとゝもに基地の固溶強化に
寄与する元素である。しかしながら、添加が多すぎると
偏析を助長し、希土類硫化物や炭化物の分布が不均一に
なり、潤滑性や耐摩耗性を損なうとゝもに、靭性が低下
するため上限を1.0%とする。
【0024】Mn:0.5%以下 Mnもまた脱酸,脱硫剤として添加する。しかしなが
ら、多量に入れすぎるとSとともにMnSを形成し、鍛
伸方向に長く伸びて靭性を低下させるため上限を0.5
%以下とする。 Cr:3.0〜5.0% CrはCと結合して複炭化物を形成し、焼入焼戻し硬さ
を高めるとともに耐摩耗性に寄与するとゝもに、焼入性
を向上させる。このためには、少なくとも3.0%以上
添加させる必要があるが、5.0%を越えると著しい効
果が認められないことから上限を5.0%とする。
【0025】2Mo+W:14.0〜24.0% MoおよびWはCと結びついてMC,MC炭化物を
形成する。凝固過程で晶出するMC炭化物は主に耐凝
着摩耗性に寄与し、熱処理時に析出する二次炭化物はマ
トリックス強度に寄与するため重要な元素である。これ
らの効果を得るには、少なくとも2Mo+Wで14.0
%以上を必要とする。しかしながら、24.0%を越え
ると熱間加工性および靭性を阻害することから上限を2
4%とする。
【0026】V:2.0%〜4.0% VはCとともに非常に硬度の高いMC型炭化物を形成す
る。凝固過程で晶出するMC型炭化物は凝着摩耗特性,
引っかき摩耗特性ともに大きく寄与し、熱処理時に析出
する二次炭化物はマトリックス強度に寄与するため重要
な元素である。これらの効果を得るには少なくとも2.
0%含有させる必要があるが、4.0%を越えるとMC
型炭化物の粒度制御が困難となるため上限を4.0%と
する。
【0027】Co:0.80〜10.0% Coは基地を強化して熱処理硬さを高めるとともに耐熱
性を付与する元素であり、マトリックスの高温軟化とそ
れに伴う凝着摩耗を低減させる。これらの効果を得るに
は0.80%を必要とするが、多量に添加すると靭性が
低下するため上限を10.0%とする。
【0028】希土類元素:0.005〜0.200% S:0.001〜0.050%以下 希土類元素はMnよりもSと結合しやすく、球状の硫化
物を形成する。希土類硫化物は切削加工時の工具とワー
ク材との潤滑剤の役目を果たし、摩擦抵抗を低減すると
ともに球状に形成することから工具材の靭性を損なわな
い利点がある。しかしながら、希土類元素にはMC型炭
化物の晶出温度を低め、炭化物粒度を微細にする効果が
あるため、多すぎると耐摩耗性を損なう。さらに、Sは
偏析係数が高く、多すぎると偏析して地きずや炭化物偏
析の原因となるため、希土類元素の一種または二種以上
を合計で下限を0.005%,上限を0.200%と
し、Sの下限を0.001%,上限を0.0050%と
する。
【0029】Ti+N:0.005〜0.040% MC型炭化物の生成核となるTi及びNはMC型炭化物
の晶出温度を高め、MC型炭化物の粒度に大きく影響す
る。希土類元素の添加によって成長が抑制されるMC型
炭化物を、十分な耐摩耗性が得られる粒度に制御する目
的で添加する。少なすぎるとMC型炭化物が細かすぎ、
工具として必要な耐摩耗性が得られないが、多すぎると
MC型炭化物が粗大化しすぎて切削工具の偏摩耗や欠け
を引き起こすため、合計で下限を0.005%,上限を
0.040%とする。
【0030】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。 (実施例1):表1に、本発明鋼1乃至10、比較鋼1
1乃至16の化学成分および凝固速度を示す。供試料は
10kgの小型溶解炉で溶製し、1200℃に保持した
加熱ヒーター中にセットされたルツボに鋳込んだ。凝固
速度はヒーターの冷却速度を変えることにより変動さ
せ、溶鋼が1400℃から1200℃に冷却するまでの
速度をルツボ内にセットした熱電対で測定した。
【0031】
【表 1】
【0032】870℃の焼きなまし後に供試材より25
mm角の試験片を採取し、交線法によりデンドライトセ
ルサイズを求めた。また、試験片を1500℃に加熱し
て溶融させ、平均冷却速度を先の凝固速度におのおの合
わせて冷却し、示差熱分析計を用いて凝固時のMC型炭
化物晶出温度とMC型又はMC型共晶炭化物の晶出
温度をそれぞれ測定した。これらMC型炭化物晶出温度
とMC型又はMC型共晶炭化物の晶出温度との差を
ΔT(℃)として求めた。結果を表2に示す。
【0033】
【表 2】
【0034】試験片を採取した後の鋼塊は、1110℃
に加熱して25mm角まで熱間鍛造及び焼きなましを行
なった。鍛造材から各種試験用の試験片をそれぞれ採取
し、 固相線温度:Ts(℃)=5/9×((2310−20
0〔C%〕+40〔V%〕+8〔W%〕+5〔Mo
%〕)+32)より50℃低い温度で焼入れし、560
℃の焼戻しを3回実施後、所定寸法に加工した。画像解
析は、10%シュウ酸電解腐食した試験片の縦断面でM
C型炭化物及びMC型炭化物の面積率および粒径を測
定した。これらの結果を表2に示す。摩擦摩耗試験は、
ボールオンディスク型摩擦・摩耗試験により回転速度1
00m/sec,荷重5N,回転距離400mで実施し
た。相手材にはSCr420を使用した。
【0035】さらに、摩耗試験は大越式摩耗試験により
摩擦距離200m,最終荷重18.9kg,摩擦速度を
引っかき摩耗域の0.30m/secと凝着摩耗域の
2.86m/secの2条件で実施した。相手材にはS
Cr420を使用した。抗折試験は、スパン20mmの
3点曲げ試験を実施した。抗折試験片は3mm×5mm
×30mm、摩耗試験片は20mm×10mm×35m
mである。試験結果を表3に示す。
【0036】
【表 3】
【0037】図3にS量と摩擦係数との関係を示すが、
本発明鋼1,2および比較鋼11,12から、Sが増加
すると摩擦係数が小さくなることがわかる。一方、図4
にS量と抗折力との関係を示すが、Sが増加すると鍛伸
方向に硫化物が伸びて靭性が低下するとゝもに、異方性
が顕著になる。これに希土類元素を添加して硫化物を球
状化させることにより、靭性の低下が制御されることが
わかる。希土類元素の添加により抗折力のレベルが全体
的に向上しているのは、MC型炭化物が微細化している
ためである。しかしながら、MC型炭化物の微細化は、
断続切削工具の寿命を決定する上で最も重要な因子であ
る耐引っかき摩耗性を低下させる。
【0038】図5にTiおよびNの添加による耐摩耗性
への影響を示すが、TiおよびNの添加により耐引っか
き摩耗性が向上することがわかる。一方、図6に示すよ
うにTiおよびNを過剰に添加することにより靭性が著
しく低下する。これは、図7に示すようにTiおよびN
の増加に伴い粗大なMC型炭化物が増大するためで、こ
のことから、S添加による摩擦係数の低減と希土類元素
添加による硫化物の形態制御に伴う靭性の向上および異
方性の低減を行なう一方で、MC型炭化物の粒度を適正
な範囲に制御することが好ましいことがわかる。
【0039】MC型炭化物の粒度は、MC型炭化物晶出
温度とMC型またはMC型共晶炭化物の晶出温度と
の差(ΔT)によって決定づけられる。図8にΔT
(℃)と耐引っかき摩耗性および靭性の関係を示す。Δ
Tが同程度であってもSが低い比較鋼12は耐摩耗性に
劣り、希土類元素の添加されていない比較鋼11は靭性
に劣ることがこのことからもわかる。
【0040】次に、工具の引っかき摩耗が進み、切削抵
抗が上がったときに起こる凝着摩耗及び靭性に対するM
C型炭化物の量と粒径の影響を図9,10に示す。
0.5μm以上のMC型炭化物面積率が5%以上で耐
凝着摩耗性が向上していることがわかる。また、7.0
μm以上の粗大な炭化物もしくは密集炭化物が存在する
ことにより、靭性が低下する傾向が認められる。
【0041】さらに、炭化物の均一分布により靭性を維
持するには、凝固時のセルサイズが平均で125μm以
下であることが好ましいことが図11からわかる。図1
2に凝固セルサイズと凝固速度の関係を示すが、鋼種に
かかわらず凝固セルサイズは凝固速度によって決定づけ
られるため、凝固速度によってセルサイズを制御するこ
とが可能である。
【0042】(実施例2):表1に示す本発明鋼1と4
および比較鋼12に相当する鋼を量産規模の溶製炉で溶
解し、同一鋼塊型に鋳込んだ後、1110℃に加熱して
φ100熱間鍛造し、焼きなましを実施した。この素材
を外径φ80mmのホブに成形し、実施例1と同様、
(固相線温度−50)℃で焼入れ、560℃の焼戻しを
3回実施後、仕上げ加工,Ti系コーティングを行なっ
た。
【0043】ホブによる切削試験は、ホブの寿命とされ
る最大逃げ面摩耗が0.2mmに達するまで下記の条件
にて実施し、寿命に達するまでの切削長で性能比較を行
なった。切削試験の結果を表4に示す。なお、被削材:
SCr420、切削速度:150m/min、切込み深
ささ:5.0mm、送り:2.0mm/rev、切削
油:なし、の条件で行った。
【0044】
【表 4】
【0045】
【発明の効果】本発明は上記のような構成であるから、
潤滑性及び靭性の特性を有するとゝもに、工具として十
分な高い耐摩耗性を有する高速度工具鋼を得ることがで
きるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】細かいMC型炭化物が密集した状態を示す組
織写真である。
【図2】デンドライトの組織写真である。
【図3】S量と摩擦係数との関係を示す図である。
【図4】S量と抗析力との関係を示す図である。
【図5】TiおよびNの添加と耐摩耗性の関係を示す図
である。
【図6】TiおよびNの添加と靭性との関係を示す図で
ある。
【図7】TiおよびNの添加とMC型炭化物の面積率と
の関係を示す図である。
【図8】ΔT(℃)と耐引っかき摩耗性および靭性の関
係を示す図である。
【図9】MC型炭化物面積率と凝着摩耗域の耐摩耗性
との関係を示す図である。
【図10】MC型炭化物面積率と靭性との関係を示す
図である。
【図11】凝固セルサイズと靭性との関係を示す図であ
る。
【図12】凝固セルサイズと凝固速度との関係を示す図
である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C:0.85〜1.50
    %、Si:1.0%以下、Mn:0.5%以下、Cr:
    3.0〜5.0%、2Mo+W:14.0〜24.0
    %、V:2.0〜4.0%、Co:0.8〜10.0%
    およびS:0.001〜0.050%、さらに希土類元
    素のうちの一種または二種以上を0.005〜0.20
    0%含み、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物か
    らなることを特徴とする高速度工具鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の高速度鋼で以下の条件を
    満たすことを特徴とする高速度工具鋼。 (A)円相当径で1.5μm以上3.0μm未満のMC
    型炭化物の面積率が1.0〜3.0% (B)円相当径で3.0μm以上7.0μm未満のMC
    型炭化物の面積率が0.2〜2.0% (C)円相当径で7.0μm以上のMC型炭化物の面積
    率が0.5%以下 (D)円相当径で0.5μm以上のMC型炭化物の面積
    率が合計で3.0〜8.0%
  3. 【請求項3】 円相当径で0.5μm以上のMC型炭
    化物の面積率が5.0%以上15.0%未満であり、M
    C型炭化物の最大径が円相当径で7.0μm未満であ
    ることを特徴とする請求項1又は2記載の高速度工具
    鋼。
  4. 【請求項4】 凝固時のMC型炭化物の晶出温度と、M
    C型またはMC型共晶炭化物の晶出温度との差(Δ
    T)が15≦ΔT(℃)≦50であることを特徴とする
    請求項1ないし3のうちいずれか一つに記載の高速度工
    具鋼。
  5. 【請求項5】 質量%で、0.005%≦Ti+N≦
    0.040%を含むことを特徴とする請求項1ないし4
    のうちいずれか一つに記載の高速度工具鋼。
  6. 【請求項6】 鋼塊の外周からD/5におけるデンドラ
    イトセルサイズが125μm以下であることを特徴とす
    る請求項1ないし6のうちいずれか一つに記載の高速度
    工具鋼。
  7. 【請求項7】 鋼塊の外周からD/5における平均凝固
    速度が10℃/min以上であることを特徴とする請求
    項1ないし7のうちいずれか一つに記載の高速度工具鋼
    の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1295370C (zh) * 2005-03-22 2007-01-17 江苏天工工具股份有限公司 高速工具钢及其稀土处理工艺
JP2011218544A (ja) * 2010-03-25 2011-11-04 Hitachi Metals Ltd 鋼の切削方法
CN103009026A (zh) * 2012-12-26 2013-04-03 马鞍山市恒利达机械刀片有限公司 一种具有高耐磨性和强抗冲击性的滚剪刀加工方法
JP2015160957A (ja) * 2014-02-26 2015-09-07 山陽特殊製鋼株式会社 耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼およびその製造方法

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