JP2011218544A - 鋼の切削方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 乾式による鋼の切削方法を提供する。
【解決手段】 作業面は、成分組成が質量%でC:1.0〜1.6%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:3.0〜5.0%、WおよびMoの1種または2種を(2Mo+W):15〜20%、V:2.0〜5.0%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、断面組織中のMC型炭化物の長径が平均で0.5〜1.5μmであり、断面組織中に占める長径2.0〜5.0μm未満のMC型炭化物の面積率が1.5%以上かつ、長径5.0μm以上のMC型炭化物の面積率が0〜1.2%未満であり、硬さが63〜70HRCである切削工具によって、被切削鋼を90m/分以上の切削速度で乾式切削する鋼の切削方法である。好ましくは、切削工具の作業面は、成分組成がAl:0.2%以下および/または希土類元素の1種または2種以上を合計:0.2%以下を含む。Co:10%以下を含んでもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、金型等の製品に供される鋼の切削加工に最適な、鋼の切削方法に関するものである。
従来、鋼を切削する各種の切削工具用鋼には、硬質のV炭化物を富化することで強度や耐摩耗性を向上させた、例えば3質量%V系の高速度工具鋼が提案されている(特許文献1、2参照)。そして、鋼の切削は、切削工具の耐久性を確保する上で、冷却および潤滑のための切削液(切削油)を用いた湿式加工が行われているが、近年の環境保全の観点からは、切削液を使用しない乾式加工化が進んでいる。更には、加工時間を短縮するためには、切削速度を上げた高速切削が求められている。
特開平01−142056号公報 特開2003−313642号公報
しかし、工具作業面の温度が上昇する高速切削においては、それに切削工具に大きな負荷の掛かる乾式加工を適用すると、切削工具の損耗が著しい。よって、強度や耐摩耗性に優れた特許文献1、2による切削工具であっても、その高速切削の際の切削環境は湿式が一般的であった。そこで、乾式加工による高速切削を行うためには、工具作業面に各種のコーティングを施す手法も提案されているが、この場合でもコーティングの剥離が懸念され、やはり工具寿命の向上には課題があった。
本発明の目的は、機械的特性に優れた特許文献1や2による切削工具を用いては、その作業面にはコーティング処理を施さなくても乾式加工による高速切削が可能な、鋼の切削方法を提供することである。
本発明者は、特許文献1や2の切削工具において、その作業面にはコーティングを施さないことで、乾式切削中には作業面に分布するV炭化物が低融点の酸化物に変化し、それが被切削鋼の間に溶出する現象を把握した。しかも、その溶出物が上記の切削液と同じ作用効果を発揮して、切削工具の損耗を抑制できることを知見した。そして、以上の酸化および溶出現象を発現するには、該V炭化物の分布状況と切削条件との間に必要な関係があることを見いだし、それを突きとめたことで本発明に到達した。
すなわち本発明は、作業面は、成分組成が質量%でC:1.0〜1.6%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:3.0〜5.0%、WおよびMoの1種または2種を(2Mo+W):15〜20%、V:2.0〜5.0%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、断面組織中のMC型炭化物の長径が平均で0.5〜1.5μmであり、断面組織中に占める長径2.0〜5.0μm未満のMC型炭化物の面積率が1.5%以上かつ、長径5.0μm以上のMC型炭化物の面積率が0〜1.2%未満であり、硬さが63〜70HRCである切削工具によって、被切削鋼を90m/分以上の切削速度で乾式切削することを特徴とする鋼の切削方法である。好ましくは、切削工具の作業面は、断面組織中のMC型炭化物の長径が平均で0.9〜1.2μmであり、あるいはさらに、その成分組成がAl:0.2%以下および/または希土類元素の1種または2種以上を合計:0.2%以下を含むものである。希土類元素はCeが望ましい。あるいはさらに、切削工具の作業面は、Co:10%以下を含む成分組成である。
本発明であれば、切削液の使用量を低減できることは勿論、その使用自体をしない乾式加工であっても、高速切削時の切削工具の作業面の摩耗を抑制できる。よって、切削時間の短縮と環境保全の両側面に応え得る有効な技術となる。
実施例No.1の作業面が有する断面組織の光学顕微鏡写真と、その画像解析図である。
本発明の特徴は、強度や耐摩耗性に優れた3質量%V系の高速度工具鋼でなる切削工具を用いた上では、その作業面にはコーティングを行わずに、V炭化物を最適な分布状態に制御することで、高速切削であり、かつ乾式環境であるからこその潤滑効果が得られることである。以下、その構成要件毎に説明する。
(1)切削工具は、その作業面の成分組成が質量%でC:1.0〜1.6%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:3.0〜5.0%、WおよびMoの1種または2種を(2Mo+W):15〜20%、V:2.0〜5.0%、残部がFeおよび不可避的不純物である。
つまり、作業面(刃先)にコーティングを行わない本発明の切削工具は、その作業面が工具素材と同じ成分組成の高速度工具鋼で構成させることができる。
Cは、Cr、W、Mo、Vと結合して炭化物を生成し、焼入れ焼戻し硬さを与え、耐摩耗性、耐熱性、耐焼付性の向上に寄与する。多すぎると靭性が低下し、また巨大な炭化物を生じさせるので、後述のCr、W、Mo、Vとのバランスを考慮した上では、1.0〜1.6質量%(以下、単に%と記す)とする。好ましくは1.1〜1.5%である。
SiおよびMnは、溶製工程における脱酸を目的として各0.1〜1.0%添加する。好ましくは0.2〜0.6%である。
Crは、適切な含有量の設定によって、焼入れ性、耐摩耗性、耐酸化性、高温強度、焼戻し軟化抵抗を向上させる。しかし多すぎると、かえって高温強度、焼戻し軟化抵抗を低下させるので、3.0〜5.0%とする。好ましくは、3.8〜4.5%である。
WおよびMoは、Cと結合してMC型の特殊炭化物を形成し、耐摩耗性、耐焼付特性の向上に寄与する。また、焼戻しによる二次硬化作用が大きく、高温強度に寄与する。ただし、多すぎると靭性、熱間加工性を損なう。よって、それらの1種または2種を(2Mo+W)で15〜20%とする。好ましくは、16.5〜19.5%である。
Vは、Cと結合して硬質のV炭化物を形成し、作業面の耐摩耗性を向上させる。そして本発明の潤滑効果を達成するには、後述の分布形態を満たしたV炭化物を形成する最も重要な元素である。しかし、V炭化物の量が多すぎると熱間加工性が著しく低下する。よって、本発明のVは2.0〜5.0%とする。好ましくは、2.5〜4.6%である。
その他、上記の切削工具は、その作業面の成分組成として以下の元素を添加することができる。
Alは、V炭化物の絶対量を増やすと共に、それらを微細に晶出させる効果がある任意の添加元素である。しかし、多量に添加すると、鋼中の酸素と非金属介在物を形成して靱性を劣化させる。よって、添加する場合でも0.2%以下とする。好ましくは0.02%以上であり、さらに好ましくは0.1%以上である。
希土類元素は、Alと同様にV炭化物の絶対量を増やしかつ、それらを微細に晶出させる効果を有する任意の添加元素である。そして、これらの効果は、Alとの複合添加により一層大きくなる。しかし多すぎると、鋼中のS(硫黄)や酸素と結合して介在物を形成し、鋳造欠陥の原因となる。よって希土類元素は、添加する場合でも、その1種または2種以上の合計で0.2%以下とする。好ましくは0.02%以上および/または0.05%以下である。そして、希土類元素の中では、取扱い中の酸化が起こり難く、上記効果が得られやすいCeが望ましい。
Coは、鋼素材の基地を強化して焼戻し硬さを高めるとともに、耐熱性を向上させる任意の添加元素である。多量に添加すると靭性が低下するため、添加する場合でも10%以下とする。好ましくは4.0%以上である。4.5%以上および/または5.5%以下であることが、より望ましい。
(2)切削工具は、その作業面の断面組織中にあるMC型炭化物の長径が平均で0.5〜1.5μmであり、断面組織中に占める長径2.0〜5.0μm未満のMC型炭化物の面積率が1.5%以上かつ、長径5.0μm以上のMC型炭化物の面積率が0〜1.2%未満である。
本発明の潤滑効果が、そのコーティングを施さない作業面に分布するV炭化物の酸化および溶出挙動によって得られることは上述の通りである。つまり、切削工具の作業面に分布したV炭化物は、切削中の温度上昇によってV酸化物へと変化し、そして溶融することで潤滑剤の役割をする。そして、この場合に重要となるのが、作業面の基地中に存在するV炭化物の分布調整である。
作業面の耐摩耗性を担う基地中のV炭化物は、その粒子径を最適な大きさに調整することで上記の潤滑効果も向上する。V炭化物が小さすぎると、潤滑剤の直接的な役割を担うV酸化物の生成量が少なくなり、十分な潤滑効果が得られ難くなる。しかし一方では、V炭化物が粗大になりすぎると、切削工具を構成する素材自体の靭性を損ねるだけでなく、焼戻し硬さや、そして工具形状に加工するための被研削性の低下をも招き、切削工具として成立できなくなる。そこで、これら素材としての機械的特性を維持した上では、本発明の潤滑効果を最大限に発揮し得るV炭化物の粒径を研究した結果、その両立には最適な狭域があることを見いだした。
そして、このV炭化物は、上述した本発明鋼の組織観察においては、主にMoやWで構成されるMC型等の他の炭化物とは異なるMC型炭化物として区別でき、特定することができる。そこで本発明では、該断面組織中に観察されるMC型炭化物をもって、V炭化物の作用効果に有効な粒径を特定できた。すなわち、断面組織中のMC型炭化物は、その長径の平均で0.5〜1.5μmである。この粒径が0.5μm未満であると、本発明の潤滑効果が不十分である。そして、1.5μmを超えると、切削工具への加工が難しくなる。好ましい長径の平均は0.8μm以上および/または1.3μm以下である。さらに好ましくは0.9μm以上および/または1.2μm以下である。
さらには、MC型炭化物のなかでも、特に本発明の潤滑効果に寄与するのは大型の炭化物である。したがって、本発明の場合、上記ではその全体としてのMC型炭化物の粒径分布を調整した上では、さらに大型のMC型炭化物に限定しては、その分布状況を別けて管理することが重要である。すなわち、断面組織中に占める長径2.0〜5.0μm未満のMC型炭化物の面積率は1.5%以上である。この面積率が1.5%未満であると、本発明の潤滑効果が不十分となる。但し、粗大なMC型炭化物は、切削工具への加工性を劣化するので、断面組織中に占める長径5.0μm以上のMC型炭化物の面積率は1.2%以下に規制する。そして、長径2.0〜5.0μm未満のMC型炭化物についても、その面積率の上限は3.5%以下とすることが望ましい。
(3)切削工具は、その作業面の硬さが63〜70HRCである。
上記の硬さが低すぎると、作業面の摩耗が著しくなる。しかし硬さが高すぎると、靭性が低下して、折損の原因となる。よって、切削工具の作業面の硬さは63〜70HRCとする。
(4)被切削鋼を切削するときの切削速度は90m/分以上の高速切削とする。
本発明の潤滑機構に作用するV酸化物は、切削中の作業面の温度上昇によってV炭化物から生成され、そして溶融する。切削速度が遅すぎると、該作業面の温度が十分に上昇せず、V炭化物の酸化が起こり難い。よって、切削速度は90m/分以上とする。好ましくは、150m/分以上である。なお、このときの切削速度とは、作業面(刃先)の速度である。そして、旋削、転削、穴あけ工具等の各切削工具においては、その最外または外周刃部の速度である。
(5)被切削鋼を切削するときの切削環境は、切削液を使用しない乾式加工とする。
上記のV酸化物が生成されるには、その作業面に分布するV炭化物を酸化するための酸素が必要である。そこで本発明においては、その切削中の雰囲気を大気とした乾式加工とすることで、上記の酸素を大気中から供給する。切削液を使用した湿式加工だと、作業面が大気環境から遮断され、十分量の酸素が供給され難い。
以上をもって、本発明のV炭化物の調整による潤滑機構は、従来の湿式加工によるものや、コーティングによるものとは異なり、コーティングを行わない切削工具による乾式加工の組合せ環境下によって発現されるものである。
本発明および比較例の切削方法を実施する上では、その切削工具に生じる損耗状態を評価するための試料を、表1に示す成分組成の高速度工具鋼素材を用いて作製した。まず真空溶解炉で成分を調整した10kgの鋼塊を溶製した。そして、表1のNo.2の鋼塊については1210℃で、No.3および6の鋼塊には1220℃で、そしてNo.5の鋼塊には1170℃で均質化熱処理を施した。次に、これらの鋼塊を1150℃で熱間鍛造して25mm厚さ×25mm幅の鋼材とし、870℃で焼きなまし処理後、10mm厚さ×20mm幅×65mm長さの形状に加工した。そして、1190℃からのガス冷却による焼入れ処理を行い、560℃で1時間保持の焼戻し処理を2回行って、後述の摩耗試験用の試料とした。表1には、試料の試験面(作業面)の硬さと、その断面組織中のMC型炭化物の平均長径および、断面組織中に占める長径2.0〜5.0μm未満と5.0μm以上のMC型炭化物の面積率を記す。
MC型炭化物の平均長径および上記の面積率は、次の要領で測定した。まず、10%ナイタール腐食液によって試験面を腐食した。次に、この腐食面を倍率2000倍の光学顕微鏡で観察し、測定視野5600μm(70μm×80μm)中に観察される個々のMC型炭化物(図1の白色粒子)の長径を画像解析によって求めた。画像解析では、長径が0.15μm以上のMC型炭化物を、その抽出の対象とした。そして、この作業を7視野繰返して、これら長径の平均値を求めた。MC型炭化物の面積率は、対象となる長径のMC型炭化物について、その個々の面積の合計を、測定総面積39200μm(5600μm×7視野)で除した百分率表記のものとした。図1は、No.1の断面組織の光学顕微鏡写真と、そのコントラストを強調した画像解析図である。
また、摩耗試験用の試料に加えては、靱性および被研削性を評価するための試料も作製した。靱性の評価試料は、上記の焼きなまし処理後の鋼材から加工した5mm直径×65mm長さの鋼片に、同様の焼入れ焼戻しを行った抗折試験片である。被研削性の評価試料は、上記の焼戻し処理後の鋼材から切り出した2mm厚さ×18mm幅×50mm長さの試験片である。
損耗状態の評価については、大越式摩耗試験を実施した。試験条件は、相手材:SCM415、摩擦距離:400m、最終荷重:6.8kg、摩擦速度(切削速度に相当):118m/分および172m/分の、実際の乾式加工に相当するものとした。そして試験後には、試験面に残った摩耗痕の幅を測定して、摩耗量を算出した。
靱性の評価は、抗折試験を実施した。試験条件は、荷重押込み速度:1mm/分、スパン(試験片の支持間隔):50mmでの3点曲げ試験を行い、試験片破断時の押し込み荷重を測定し、抗折力を算出した。
被研削性の評価には、平面研削盤を用いた。研削条件は、砥石:株式会社ノリタケカンパニー製80KV75、砥石速度:1820m/分、切り込み量:5μm/パス、パス回数:10回で行った。そして研削後には、その砥石で軟質材料(SKD61相当鋼)を研削することで、軟質材料に転写された砥石の損耗量を測定し、研削比(試料の削れ量/砥石の損耗量[体積比])を算出した(すなわち、数値が高いほど被研削性に優れる)。以上の試験結果を表2に纏めて示す。
表2より、作業面のMC型炭化物が最適に調整された本発明No.1〜4は、その高い摩擦速度の乾式環境下において、長径2.0〜5.0μm未満のMC型炭化物量が少ない比較例No.5より摩耗量が低く抑えられている。長径5.0μm以上の粗大なMC型炭化物量が多い比較例No.6は、摩耗量は低く抑えられているものの、研削比が低く、本発明No.1〜4よりは被研削性に劣る。
また、上記の大越式摩耗試験と同時には、表1に示す高速度工具鋼素材からは、実際の切削状況を評価するための切削工具も作製した。すなわち、上記の焼きなまし処理後の鋼材からは、それをチップ形状に加工した。なお本加工では、鋼材の脱炭層の影響を除外するために、鋼材表面から2mm以上内部が作業面になるようにした。そして、同様の焼入れ焼戻し処理を行って、旋盤用チップに仕上げた。
そして、これら表1のNo.1〜6のチップを用いて、汎用旋盤による切削試験を実施した。切削条件は、被切削鋼をS45C(92.6HRB)とし、切削速度:94m/分、切削距離:236m、切り込み:0.2mm(片側0.1mm)、送り:0.2mm/回転で、切削油を使用しない乾式加工とした。そして切削後には、チップ先端の摩耗部分の最大深さを測定した。結果を表3に示す。
表3の結果より、本発明の切削方法によるNo.1〜4は、比較例であるNo.5に比べて最大摩耗深さが小さく、乾式条件での切削工具の損耗が抑制されている。なお、比較例No.6が被研削性に劣ることは、上記の通りである。
表4に示す成分組成の高速度工具鋼素材を用いて、本発明および比較例の方法に使用する切削工具を作製した。まず真空溶解炉で成分を調整した10kgの鋼塊を溶製した。次に、この鋼塊を1150℃で熱間鍛造して25mm厚さ×25mm幅の鋼材とした。このとき、表4のNo.10の鋼塊は、熱間加工性が悪く、鍛造後に割れが多発して、続く切削工具の製造が不可能であった。
続いて、表4のNo.7〜9の鋼材については、これを870℃で焼きなまし処理した後、チップ形状に加工した。なお本加工では、鋼材の脱炭層の影響を除外するために、鋼材表面から2mm以上内部が作業面になるようにした。そして、1190℃からのガス冷却による焼入れ処理を行い、560℃で1時間保持の焼戻し処理を2回行って、旋盤用チップに仕上げた。表4には、チップの作業面の硬さと、その断面組織中のMC型炭化物の平均長径および、断面組織中に占める長径2.0〜5.0μm未満と5.0μm以上のMC型炭化物の面積率を記す(測定要領は上記に従う)。
表4のNo.7〜9のチップを用いて、汎用旋盤による切削試験を実施した。切削条件は、被切削鋼をS45C(92.6HRB)とし、切削速度:94m/分、切削距離:236m、切り込み:0.2mm(片側0.1mm)、送り:0.2mm/回転で、切削油を使用しない乾式加工とした。そして切削後には、チップ先端の摩耗部分の最大深さを測定した。結果を表5に示す。
表5の結果より、本発明の切削方法によるNo.7、8は、比較例であるNo.9に比べて最大摩耗深さが小さく、乾式条件での切削工具の損耗が抑制されている。これは、比較例であるNo.9が、その工具作業面のV含有量が低く、長径2.0〜5.0μm未満のV炭化物量が少ないためである。
本発明は、タップやホブによる鋼の切削加工の他には、より切削速度の速いドリルやエンドミルを用いた切削にも適用し得る。

Claims (6)

  1. 作業面は、成分組成が質量%でC:1.0〜1.6%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:3.0〜5.0%、WおよびMoの1種または2種を(2Mo+W):15〜20%、V:2.0〜5.0%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、断面組織中のMC型炭化物の長径が平均で0.5〜1.5μmであり、断面組織中に占める長径2.0〜5.0μm未満のMC型炭化物の面積率が1.5%以上かつ、長径5.0μm以上のMC型炭化物の面積率が0〜1.2%未満であり、硬さが63〜70HRCである切削工具によって、被切削鋼を90m/分以上の切削速度で乾式切削することを特徴とする鋼の切削方法。
  2. 作業面は、断面組織中のMC型炭化物の長径が平均で0.9〜1.2μmであることを特徴とする請求項1に記載の鋼の切削方法。
  3. 切削工具の作業面は、成分組成が質量%でAl:0.2%以下を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の鋼の切削方法。
  4. 切削工具の作業面は、成分組成が質量%で希土類元素の1種または2種以上を合計:0.2%以下を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鋼の切削方法。
  5. 希土類元素はCeであることを特徴とする請求項4に記載の鋼の切削方法。
  6. 切削工具の作業面は、成分組成が質量%でCo:10%以下を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の鋼の切削方法。
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