JP2003313220A - オレフィン類重合用固体触媒成分および触媒 - Google Patents

オレフィン類重合用固体触媒成分および触媒

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 オレフィン類重合体を極めて高い収率で得る
ことのでき、特にはプロピレン重合体を高い立体規則性
を維持しながら極めて高い収率で得ることのできるオレ
フィン類重合用固体触媒成分および触媒を提供するこ
と。 【解決手段】 (a)マグネシウム化合物、(b)4価
のチタンハロゲン化合物、(c)電子供与性化合物およ
び(d)一般式(1)(R13CCOOR2で表わされ
るカルボン酸エステルを接触させることにより調製され
るオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、立体規則性を高度
に維持しながら、極めて高い収率でオレフィン類重合体
を得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分お
よび触媒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、オレフィンの重合においては、マ
グネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを
必須成分として含有する固体触媒成分が知られている。
また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機
ケイ素化合物から成るオレフィン類重合用触媒の存在下
に、オレフィンを重合もしくは共重合させるオレフィン
の重合方法が数多く提案されている。例えば、特開昭5
9−142206号公報には、アルコキシマグネシウム
を安息香酸エチルや酢酸メチルのごときカルボン酸モノ
エステルの存在下、芳香族炭化水素化合物に懸濁させ、
次いで四塩化チタンのごときハロゲン化チタンを接触し
てなるオレフィン類重合用触媒成分が開示されている。
【0003】また、特開昭62−158704号公報に
は、アルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素化合物に
懸濁させ、しかる後にハロゲン化チタンと接触させて得
られた組成物にさらにハロゲン化チタンを接触させ、こ
の際いずれかの時点でフタル酸ジエステルのごとき芳香
族ジカルボン酸のジエステルと接触させて得られる固体
触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合
物からなるオレフィン類重合用触媒が開示されている。
【0004】さらに特開平9−169808号公報に
は、アルコキシマグネシウム、チタン化合物、フタル酸
ジエステルのごとき芳香族ジカルボン酸のジエステルお
よび環状又は鎖状ポリシロキサンを用いて調製されるオ
レフィン類重合用触媒成分が開示されている。
【0005】上記従来技術は、その目的が生成ポリマー
中に残留する塩素やチタン等の触媒残渣を除去する所謂
脱灰行程を省略し得る程の高活性を有すると共に、併せ
て立体規則性重合体の収率の向上や、重合時の触媒活性
の持続性を高めることに注力したものであり、それぞれ
優れた成果を上げている。
【0006】オレフィン類重合用固体触媒成分の特にプ
ロピレン重合用固体触媒成分中に含まれる電子供与性化
合物(所謂、内部ドナー)としては、上記従来技術のよ
うに当初安息香酸エチルのごときカルボン酸モノエステ
ルが主流であった。その後、触媒の活性持続性の問題
や、生成ポリマーの臭いの問題などから、内部ドナーと
してフタル酸ジエステルなどの芳香族ジカルボン酸ジエ
ステルが主流になっている。
【0007】しかしながらこの芳香族ジカルボン酸ジエ
ステルを内部ドナーとして用いた固体触媒成分は活性持
続性に優れているが、この特性が逆に重合プロセスのト
ラブルの原因になるケースもある。つまり重合が終了し
た後、生成ポリマーとともに触媒も重合槽から排出させ
るが、その際もなお活性が持続しているために、排出配
管内で重合反応が起き、配管内にポリマーが生成してし
まい、これが配管内壁に付着して、その結果閉塞などの
トラブルが生じる。このような問題又は生成させるポリ
マーの品質要求から、旧来の安息香酸エチルのごときモ
ノカルボン酸エステルを内部ドナーに用いた固体触媒成
分が、今もなおオレフィン類、特にプロピレン重合用及
び共重合用として工業的に相当量用いられている。
【0008】しかし、上述したカルボン酸モノエステル
を内部ドナーに用いた固体触媒成分は高活性であるが、
近年のオレフィン重合体のコスト低減要求、プロセス改
善、また共重合体のような高機能を有する重合体を高率
よく製造するために、さらに触媒の高活性化が強く望ま
れており、この要求を満足するには必ずしも十分ではな
く、より一層の改良が望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、カルボン酸モノエステルを内部ドナーに用いたオレ
フィン類重合用固体触媒成分において、オレフィン類重
合体を極めて高い収率で得ることのでき、特にはプロピ
レン重合体を高い立体規則性を維持しながら高い収率で
得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分およ
び触媒を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記従来
技術に残された課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結
果、従来の安息香酸エステルに代表される芳香族カルボ
ン酸モノエステルに代えて特定のカルボン酸モノエステ
ルを用いた固体触媒成分が、オレフィン類の重合に供し
たときに極めて高い活性を示し、特にプロピレンの重合
に供したとき、高い立体規則性を維持しながら極めて高
い活性と収率を持つことを見出し、本発明を完成するに
至った。
【0011】すなわち、本発明は、(a)マグネシウム
化合物、(b)4価のチタンハロゲン化合物、および
(c)下記の一般式(1);(R13CCOOR
2(1)(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基を示
し、同一であっても異なってもよく、R2は炭素数1〜
12のアルキル基を示す。)で表わされるカルボン酸エ
ステルを接触して得られることを特徴とするオレフィン
類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0012】また、本発明は、(A)上記オレフィン類
重合用固体触媒成分、及び (B)下記一般式(2);R3 pAlQ3-p (2) (式中、R3は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは
水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3
の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物か
ら形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒
を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明のオレフィン類重合用触媒
のうち固体触媒成分(A)(以下、「成分(A)」とい
うことがある。)の調製に用いられるマグネシウム化合
物(以下単に「成分(a)ということがある。」として
は、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウ
ム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマ
グネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン
化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム
等が挙げられる。これらのマグネシウム化合物の中でも
ジアルコキシマグネシウムが好ましく、具体的には、ジ
メトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプ
ロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エト
キシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネ
シウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられ、
ジエトキシマグネシウムが特に好ましい。また、これら
のジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、
ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下に
アルコールと反応させて得たものでもよい。また、上記
のジアルコキシマグネシウムは、単独あるいは2種以上
併用することもできる。
【0014】更に、本発明において成分(A)の調製に
好適なジアルコキシマグネシウムは、顆粒状又は粉末状
であり、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し
得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用し
た場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重
合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱
い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起
因する閉塞等の問題が解消される。
【0015】上記の球状ジアルコキシマグネシウムは、
必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬
鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒
子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が3
以下であり、好ましくは1から2であり、より好ましく
は1から1.5である。
【0016】また、上記ジアルコキシマグネシウムの平
均粒径は1から200μmのものが使用し得る。好まし
くは5から150μmである。球状のジアルコキシマグ
ネシウムの場合、その平均粒径は1から100μm、好
ましくは5から50μmであり、更に好ましくは10か
ら40μmである。また、その粒度については、微粉及
び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものを使用することが
望ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下
であり、好ましくは10%以下である。一方、100μ
m以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下
である。更にその粒度分布をln(D90/D10)
(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D
10は積算粒度で10%における粒径である。)で表す
と3以下であり、好ましくは2以下である。
【0017】上記の如き球状のジアルコキシマグネシウ
ムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公
報、特開昭62−51633号公報、特開平3−743
41号公報、特開平4−368391号公報、特開平8
−73388号公報などに例示されている。
【0018】本発明における成分(A)の調製に用いら
れる4価のチタンハロゲン化合物(b)(以下「成分
(b)」ということがある。)は、一般式Ti(O
4nCl 4-n(式中、R4 は炭素数1〜4のアルキル
基を示し、nは0または1〜3の整数である。)で表さ
れるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド
群から選択される化合物の1種あるいは2種以上であ
る。
【0019】具体的には、チタンハライドとしてチタン
テトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテ
トラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキ
シチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライ
ド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタン
トリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、
ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジク
ロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−
ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロ
ライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキ
シチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロラ
イド等が例示される。このうち、チタンテトラハライド
が好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライドで
ある。これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併
用することもできる。
【0020】本発明における成分(A)の調製に用いら
れるカルボン酸エステル(c)(以下「成分(c)」と
いうことがある。)は上記の一般式(1)で表わされる
化合物である。上記一般式(1)においてR1はメチル
基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基であ
り、好ましくはメチル基であり、具合的にはピバル酸の
エステル(あるいはトリメチル酢酸のエステル)であ
る。またR2はメチル基、エチル基、プロピル基、イソ
プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が
好ましく、特に好ましくはメチル基及びエチル基であ
る。具体的な化合物としては、トリメチル酢酸メチル
(ピバル酸メチル)、トリメチル酢酸エチル(ピバル酸
エチル)、トリメチル酢酸プロピル(ピバル酸プロピ
ル)、トリメチル酢酸イソプロピル(ピバル酸イソプロ
ピル)、トリメチル酢酸ブチル(ピバル酸ブチル)、ト
リメチル酢酸イソブチル(ピバル酸イソブチル)、トリ
メチル酢酸t−ブチル(ピバル酸t−ブチル)、トリエ
チル酢酸メチル、トリエチル酢酸エチル、トリエチル酢
酸プロピル、トリエチル酢酸イソプロピル、トリエチル
酢酸ブチル、トリエチル酢酸イソブチル、トリエチル酢
酸t−ブチル、トリプロピル酢酸メチル、トリプロピル
酢酸エチル、トリプロピル酢酸プロピル、トリプロピル
酢酸イソプロピル、トリプロピル酢酸ブチル、トリプロ
ピル酢酸イソブチル、トリプロピル酢酸t−ブチル、ト
リイソプロピル酢酸メチル、トリイソプロピル酢酸エチ
ル、トリイソプロピル酢酸プロピル、トリイソプロピル
酢酸イソプロピル、トリイソプロピル酢酸ブチル、トリ
イソプロピル酢酸イソブチル、トリイソプロピル酢酸t
−ブチルなどが挙げられる。これらの中でもトリメチル
酢酸メチル(ピバル酸メチル)およびトリメチル酢酸エ
チル(ピバル酸エチル)が好ましい。これらのカルボン
酸エステルは1種又は2種以上用いることができる。
【0021】本発明においては、上記成分(a)、
(b)及び(c)を、芳香族炭化水素化合物(d)(以
下単に「成分(d)」ということがある。)の存在下で
接触させることによって成分(A)を調製する方法が調
製方法の好ましい態様であるが、この成分(d)として
は具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼンなど
の沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素化合物が好ま
しく用いられる。また、これらは単独で用いても、2種
以上混合して使用してもよい。
【0022】以下に、本発明の成分(A)の調製方法に
ついて述べる。具体的には、ジアルコキシマグネシウム
(a)を、アルコール、ハロゲン化炭化水素溶媒、4価
のチタンハロゲン化合物(b)または芳香族炭化水素化
合物(d)に懸濁させ、ピバル酸エステルなどのモノカ
ルボン酸エステル(c)及び/または4価のチタンハロ
ゲン化合物(b)を接触して固体成分を得る方法が挙げ
られる。該方法において、球状のマグネシウム化合物を
用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープな固
体触媒成分を得ることができ、また球状のマグネシウム
化合物を用いなくとも、例えば噴霧装置を用いて溶液あ
るいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレード
ライ法により粒子を形成させることにより、同様に球状
でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることが
できる。
【0023】各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水
分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、
撹拌しながら行われる。接触温度は、各成分の接触時の
温度であり、反応させる温度と同じ温度でも異なる温度
でもよい。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場
合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、
室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接
触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130
℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場
合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体
成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用し
た溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難
になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分
以上、より好ましくは30分以上である。
【0024】本発明の好ましい固体触媒成分(A)の調
製方法としては、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、
次いで成分(b)を接触させた後に成分(c)を接触さ
せ、反応させることにより固体触媒成分(A)を調製す
る方法、あるいは、成分(a)を成分(d)に懸濁さ
せ、次いで成分(c)を接触させた後に成分(b)を接
触させ、反応させることにより固体触媒成分(A)を調
製する方法を挙げることができる。
【0025】以下に、本発明の固体触媒成分(A)を調
製する際の好ましい接触順序をより具体的に例示する。 (1)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→
(d)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A) (2)(a)→(d)→(c)→(b)→《中間洗浄→
(d)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A) (3)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→
(d)→(b)→(c)》→最終洗浄→固体触媒成分
(A) (4)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→
(d)→(c)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分
(A) (5)(a)→(d)→(c)→(b)→《中間洗浄→
(d)→(b)→(c)》→最終洗浄→固体触媒成分
(A) (6)(a)→(d)→(c)→(b)→《中間洗浄→
(d)→(c)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分
(A)
【0026】なお、上記の各接触方法において、二重か
っこ(《 》)内の工程については、必要に応じ、複数
回繰り返し行なうことで一層活性が向上する。かつ
《 》内の工程で用いる成分(b)は、新たに加えたも
のでも、前工程の残留分のものでもよい。また、上記
(1)〜(6)で示した洗浄工程以外でも、各接触段階
で得られる生成物を、常温で液体の炭化水素化合物で洗
浄することもできる。
【0027】以上を踏まえ、本願における固体触媒成分
(A)の特に好ましい調製方法としては、ジアルコキシ
マグネシウム(a)を沸点50〜150℃の芳香族炭化
水素化合物(d)に懸濁させ、次いでこの懸濁液に4価
のチタンハロゲン化合物(b)を接触させた後、反応処
理を行う。この際、該懸濁液に4価のチタンハロゲン化
合物(b)を接触させる前又は接触した後に、ピバル酸
エステルなどのモノカルボン酸エステル(c)の1種あ
るいは2種以上を、−20〜130℃で接触させ、さら
にモノカルボン酸エステル(c)を接触させ、反応処理
を行い、固体反応生成物(1)を得る。この際、モノカ
ルボン酸エステルの1種あるいは2種以上を接触させる
前または後に、低温で熟成反応を行なうことが望まし
い。この固体反応生成物(1)を常温で液体の炭化水素
化合物で洗浄(中間洗浄)した後、再度4価のチタンハ
ロゲン化合物(b)を、芳香族炭化水素化合物の存在下
に、−20〜100℃で接触させ、反応処理を行い、固
体反応生成物(2)を得る。なお必要に応じ、中間洗浄
及び反応処理を更に複数回繰り返してもよい。次いで固
体反応生成物(2)を、常温で液体の炭化水素化合物で
洗浄(最終洗浄)し、固体触媒成分(A)を得る。
【0028】上記の処理あるいは洗浄の好ましい条件は
以下の通りである。 ・低温熟成反応:−20〜70℃、好ましくは−10〜
60℃、より好ましくは0〜30℃で、1分〜6時間、
好ましくは5分〜4時間、特に好ましくは10分〜3時
間。 ・反応処理:40〜130℃、好ましくは70〜120
℃、特に好ましくは80〜115℃で、0.5〜6時
間、好ましくは0.5〜5時間、特に好ましくは1〜4
時間。 ・洗浄:0〜110℃、好ましくは30〜100℃、特
に好ましくは30〜90℃で、1〜20回、好ましくは
1〜15回、特に好ましくは1〜10回。 なお、洗浄の際に用いる炭化水素化合物は、常温で液体
の芳香族あるいは飽和炭化水素化合物が好ましく、具体
的には、芳香族炭化水素化合物としてトルエン、キシレ
ン、エチルベンゼンなど、飽和炭化水素化合物としてヘ
キサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
好ましくは、中間洗浄では芳香族炭化水素化合物を、最
終洗浄では飽和炭化水素化合物を用いることが望まし
い。
【0029】固体触媒成分(A)を調製する際の各成分
の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定で
きないが、例えばマグネシウム化合物(a)1モル当た
り、4価のチタンハロゲン化合物(b)が0.5〜10
0モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは
1〜10モルであり、一般式(1)で表されるモノカル
ボン酸エステル(c)が0.01〜10モル、好ましく
は0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6
モルであり、芳香族炭化水素化合物(d)が0.001
〜500モル、好ましくは0.001〜100モル、よ
り好ましくは0.005〜10モルでである。
【0030】また、本発明における固体触媒成分(A)
中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、モノカルボ
ン酸エステルの含有量は特に規定されないが、好ましく
は、チタンが1.0〜8.0重量%、好ましくは2.0
〜8.0重量%、より好ましくは3.0〜8.0重量
%、マグネシウムが10〜70重量%、より好ましくは
10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%、
更に好ましくは15〜25重量%、ハロゲン原子が20
〜85重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に
好ましくは40〜80重量%、更に好ましくは45〜7
5重量%、また一般式(1)で表されるモノカルボン酸
エステルが合計0.5〜30重量%、より好ましくは合
計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%
である。
【0031】本発明のオレフィン類重合用触媒を形成す
る際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)(以下
単に「成分(B)」ということがある。)としては、上
記一般式(2)で表される化合物であれば、特に制限さ
れないが、R3としては、エチル基、イソブチル基が好
ましく、Qとしては、水素原子、塩素原子、臭素原子が
好ましく、pは、2又は3が好ましく、3が特に好まし
い。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例
としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニ
ウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチ
ルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイ
ドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用でき
る。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブ
チルアルミニウムである。
【0032】また本発明の触媒では上記成分(A)及び
成分(B)の他に電子供与性化合物(C)(以下単に
「成分(C)」ということがある。)を用いることがで
きる。特にプロピレンの立体規則性重合を行う際、成分
(C)を用いることにより、触媒の活性および重合体の
立体規則性を向上させることができる。
【0033】電子供与性化合物(C)としては、酸素原
子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であり、例え
ばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル
類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン
類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−
O−C結合を含む有機ケイ素化合物等が挙げられる。
【0034】これらの中でもエステル類が好ましく、特
に好ましくはモノカルボン酸エステルである。具体的に
は上記固体触媒成分(A)の調製で用いた成分(c)の
カルボン酸エステル、またギ酸メチル、酢酸エチル、酢
酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘ
キシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、メチルベン
ゾエート、プロピルベンゾエート、ブチルベンゾエー
ト、オクチルベンゾエート、シクロヘキシルベンゾエー
ト、フェニルベンゾエート、p−トルイル酸メチル、p
−トルイル酸エチル、p−メトキシエチルベンゾエー
ト、アニス酸メチル、等のモノカルボン酸エステルが挙
げられ、この中でもエチルベンゾエート、p−エトキシ
エチルベンゾエート、アニス酸エチルが特に好ましく用
いられる。
【0035】本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下
にオレフィン類の重合もしくは共重合を行う。オレフィ
ン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1
−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロ
ヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるい
は2種以上併用することができる。とりわけ、エチレ
ン、プロピレン及び1−ブテンが好適に用いられる。特
に好ましくはプロピレンである。プロピレンの重合の場
合、他のオレフィン類との共重合を行うこともできる。
共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブ
テン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニ
ルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1
種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、
エチレン及び1−ブテンが好適に用いられる。
【0036】各成分の使用量比は、本発明の効果に影響
を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるも
のではないが、通常成分(B)は成分(A)中のチタン
原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50
〜1000モルの範囲で用いられる。成分(C)は、
(B)成分1モル当たり、0.002〜10モル、好ま
しくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜
0.5モルの範囲で用いられる。
【0037】各成分の接触順序は任意であるが、重合系
内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、固体
触媒成分(A)を接触させることが望ましい。電子供与
性化合物(C)を用いる場合、まず有機アルミニウム化
合物(B)を装入し、次いで電子供与性化合物(C)を
接触させ、次いで固体触媒成分(A)を接触させること
が望ましい。更にあるいは重合系内にまず有機アルミニ
ウム化合物(B)を装入し、一方で成分(A)と成分
(C)とを予め接触させ、接触させた成分(A)、成分
(C)を重合系内に装入接触させ触媒を形成することを
特徴とすることも好ましい態様である。このように予め
成分(A)と成分(C)とを接触させて処理することに
よって、触媒の対水素活性および生成ポリマーの結晶性
をより向上させることが可能となる。
【0038】本発明における重合方法は、有機溶媒の存
在下でも不存在下でも行うことができ、またプロピレン
等のオレフィン単量体は、気体及び液体のいずれの状態
でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好
ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以
下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合
法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合
反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよ
い。
【0039】更に、本発明において成分(A)及び成分
(B)、又は成分(C)を含有する触媒を用いてオレフ
ィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活
性、立体規則性及び生成する重合体の粒子性状等を一層
改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うこと
が望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフ
ィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることがで
きる。具体的には、オレフィン類の存在下に成分
(A)、成分(B)または成分(C)を接触させ、成分
(A)1gあたり0.1〜100gのポリオレフィンを
予備的に重合させ、さらに成分(B)または成分(C)
を接触させ触媒を形成する。
【0040】予備重合を行うに際して、各成分及びモノ
マーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガ
ス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲
気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、
次いで成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレ
フィン及び/または1種あるいは2種以上の他のオレフ
ィン類を接触させる。
【0041】本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下
で、オレフィン類の重合を行った場合、従来の触媒を使
用した場合に較べ、同じ水素量で生成ポリマーのメルト
フローレイト(MI)が向上しており、更に触媒活性及
び生成ポリマーの立体規則性も従来の触媒と同等の性能
を示す。すなわち、本発明の触媒をオレフィン類の重合
に用いると、活性及びポリマーの結晶性を高度に維持し
つつ、対水素活性が改善されるという作用が確認され
た。
【0042】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限
するものではない。 実施例1 〈固体触媒成分の調製〉撹拌機を具備し、窒素ガスで充
分に置換された、容量200mlの丸底フラスコに、ジ
エトキシマグネシウム10g及びトルエン40mlを装
入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、撹拌機を
具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500ml
の丸底フラスコに予め装入されたトルエン10ml及び
チタンテトラクロライド50mlの溶液中に添加した。
次いで、該懸濁液を−5℃で2時間反応させた(低温熟
成処理)。その後、ピバル酸エチル4.5gを添加し
て、さらに90℃まで昇温した後、撹拌しながら2時間
反応処理(第1処理)を行った。反応終了後、生成物を
100℃のトルエン650mlで4回洗浄(中間洗浄)
し、新たにチタンテトラクロライド50mlを加えて、
撹拌しながら100℃で2時間の反応処理(第2処理)
を行った。さらにチタンテトラクロライド50mlを加
えて、撹拌しながら100℃で1時間の反応処理(第3
処理)を行った。次いで、生成物を40℃のヘプタン1
00mlで7回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体
触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分中のチタン含
有量を測定したところ、4.98重量%であった。
【0043】〔重合触媒の形成および重合〕窒素ガスで
完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オー
トクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32mmol、
パラエトキシエチルベンゾエート0.53mmolおよび前
記固体触媒成分をチタン原子として0.0026mmol装
入し、重合用触媒を形成した。その後、水素ガス3.0
リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、2
0℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で
1時間重合反応を行った。このときの固体触媒成分1g
当たりの重合活性、生成重合体中の沸騰n−ヘプタン不
溶分の割合(HI)、及び生成重合体(a)の嵩比重
(BD)とメルトインデックスの値(MI)を表1に示
した。
【0044】なお、ここで使用した固体触媒成分当たり
の重合活性は下式により算出した。 重合活性=生成重合体(g)/固体触媒成分(g) また、生成重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合
(HI)は、この生成重合体を沸騰n−ヘプタンで6時
間抽出したときのn−ヘプタンに不溶解の重合体の割合
(重量%)とした。さらに、生成重合体(a)のメルト
インデックスの値(MI)は、ASTM D1238及びJIS K7
210に準じ、嵩比重(BD)はJIS K6721に準じて測定
した。
【0045】実施例2 ピバル酸エチル4.5gの代わりにトリエチル酢酸エチ
ル5.9gを用いた以外は実施例1と同様に実験を行っ
た。得られた結果を表1に示す。
【0046】比較例1 ピバル酸エチル4.5gの代わりに安息香酸エチル5.
1gを用いた以外は実施例1と同様に実験を行った。得
られた結果を表1に示す。
【0047】比較例2 ピバル酸エチル4.5gの代わりに酢酸エチル3.0g
を用いた以外は実施例1と同様に実験を行った。得られ
た結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】以上の結果から、固体触媒調製時にピバル
酸エステルなどのカルボン酸エステルを用いると、生成
重合体の立体規則性を高度に維持しながら、触媒の活性
が向上することがわかる。
【0050】
【発明の効果】本発明のオレフィン類重合用触媒は、高
い立体規則性を高度に維持しながら、オレフィン類重合
体を極めて高い収率で得ることができる。従って、汎用
ポリオレフィンを、低コストで提供し得ると共に、高機
能性を有するオレフィン類の共重合体の製造において有
用性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の触媒成分及び重合触媒を調製する工程
を示すフローチャート図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J128 AA01 AB01 AC04 AC05 AC06 BA00A BA01A BA01B BB00A BB01B BC05A BC06A BC15B BC16B CA16A CB22C CB25C CB42A CB56A CB62C CB66C EB02 EB04 EB05 EB08 EB10

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)マグネシウム化合物、(b)4価
    のチタンハロゲン化合物、および(c)下記の一般式
    (1); (R13CCOOR2 (1) (式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基を示し、同一
    であっても異なってもよく、R2は炭素数1〜12のア
    ルキル基を示す。)で表わされるカルボン酸エステルを
    接触して得られることを特徴とするオレフィン類重合用
    固体触媒成分。
  2. 【請求項2】 前記マグネシウム化合物が、アルコキシ
    マグネシウムである請求項1に記載のオレフィン類重合
    用固体触媒成分。
  3. 【請求項3】 前記カルボン酸エステルが、ピバル酸エ
    ステルである請求項1に記載のオレフィン類重合用固体
    触媒成分。
  4. 【請求項4】 前記カルボン酸エステルが、ピバル酸エ
    チルである請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触
    媒成分。
  5. 【請求項5】 (A)請求項1〜4に記載のオレフィン
    類重合用固体触媒成分、及び(B)下記一般式(2); R3 pAlQ3-p (2) (式中、R3は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは
    水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3
    の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物か
    ら形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触
    媒。
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