JP2006063282A - オレフィン類重合用触媒およびこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法 - Google Patents

オレフィン類重合用触媒およびこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高い活性持続性と高い立体規則性の重合体を収率良く得ることができ、かつ水素レスポンスの良好なオレフィン類重合用触媒及びこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 (A)(a)マグネシウム化合物、(b)4価のチタンハロゲン化合物および(c)モノカルボン酸モノエステルを接触して得られる固体触媒成分、(B)一般式R AlQ3−p で表される有機アルミニウム化合物、(C)一般式(2)(RN) Si(OR)4−q―r で表される有機ケイ素化合物、および(D)モノカルボン酸モノエステルからなるオレフィン類重合用触媒、並びに当該触媒の存在下に行うオレフィン類重合体の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高い活性持続性を有し、かつ高立体規則性の重合体を得ることができる、かつ水素レスポンスの良好なオレフィン類重合用触媒およびオレフィン類重合体の製造方法に関するものである。
従来、オレフィンの重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物から成るオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合もしくは共重合させるオレフィンの重合方法が数多く提案されている。例えば、特許文献1(特開昭59−142206号公報)には、アルコキシマグネシウムを安息香酸エチルや酢酸メチルのごときモノカルボン酸モノエステルの存在下、芳香族炭化水素化合物に懸濁させ、次いで四塩化チタンのごときハロゲン化チタンを接触してなるオレフィン類重合用触媒成分が開示されている。
また、特許文献2(特開昭62−158704号公報)には、アルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素化合物に懸濁させ、しかる後にハロゲン化チタンと接触させて得られた組成物にさらにハロゲン化チタンを接触させ、この際いずれかの時点でフタル酸ジエステルのごとき芳香族ジカルボン酸のジエステルと接触させて得られる固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物からなるオレフィン類重合用触媒が開示されている。
さらに特許文献3(特開平9−169808号公報)には、アルコキシマグネシウム、チタン化合物、フタル酸ジエステルのごとき芳香族ジカルボン酸のジエステルおよび環状又は鎖状ポリシロキサンを用いて調製されるオレフィン類重合用触媒成分が開示されている。
上記従来技術は、その目的が生成ポリマー中に残留する塩素やチタン等の触媒残渣を除去する所謂脱灰行程を省略し得る程の高活性を有すると共に、併せて立体規則性重合体の収率の向上や、重合時の触媒活性の持続性を高めることに注力したものであり、それぞれ優れた成果を上げている。
オレフィン類重合用固体触媒成分の特にプロピレン重合用固体触媒成分中に含まれる電子供与性化合物(所謂、内部ドナー)として上記従来技術のように当初安息香酸エチルのごときモノカルボン酸モノエステルを用い、重合時に添加する電子供与性化合物(所謂、外部ドナー)も同じモノカルボン酸モノエステルを組み合わせた触媒が主流であった。その後、触媒の活性持続性の問題や、生成ポリマーの臭いの問題などから、内部ドナーとしてフタル酸ジエステルなどの芳香族ジカルボン酸ジエステルを用いた固体触媒成分と外部ドナーとして有機ケイ素化合物を用いた触媒が現在主流になっている。
上記の芳香族ジカルボン酸ジエステルを内部ドナーとして用いた固体触媒成分は、得られるオレフィン重合体の分子量分布が狭く、そのため重合体を加工する際の溶融粘弾性が低く、そのため最終製品であるポリオレフィンの成形性あるいは外観を損なうなど、その用途がある程度制限されるという問題がある。そこで、旧来のモノカルボン酸モノエステルを固体触媒成分の内部電子供与性化合物および重合時の外部電子供与性化合物に用いた触媒の工業的使用が見直されつつある。
しかしながら、上記のモノカルボン酸モノエステル系触媒は、現在の芳香族ジカルボン酸ジエステル系触媒に比べて活性持続性が低く、2段階で重合を行なうプロピレン・エチレンブロック共重合に用いた場合生産効率が低くなり、また得られる重合体の立体規則性が低いことから品質の高いブロック共重合体を生産することが難しい。そこで、旧来のモノカルボン酸モノエステル系触媒の利点を維持しつつ、かつ芳香族ジカルボン酸ジエステル系触媒の特性を持った特にプロピレン・エチレンブロック共重合に適した触媒の開発が望まれていた。
ところで上記のような触媒を用いて得られるポリマーは、自動車あるいは家電製品等の成型品の他、容器やフィルム等種々の用途に利用されている。これらは、重合により生成したポリマーパウダーを溶融し、各種の成型機により成型されるが、特に射出成型等でかつ大型の成型品を製造する際に、溶融ポリマーの流動性(メルトフローレイト)が高いことが要求される場合があり、そのためポリマーのメルトフローレイトを上げるべく多くの研究が為されている。
メルトフローレイトは、ポリマーの分子量に大きく依存する。当業界においてはプロピレンの重合に際し、生成ポリマーの分子量調節剤として水素を添加することが一般的に行われている。このとき低分子量のポリマーを製造する場合、すなわち高メルトフローレイトのポリマーを製造するためには通常多くの水素を添加するが、リアクターの耐圧にはその安全性から限度があり、添加し得る水素量にも制限がある。このため、より多くの水素を添加するためには重合するモノマーの分圧を下げざるを得ず、この場合生産性が低下することになる。また、水素を多量に用いることからコストの面の問題も生じる。従って、より少ない水素量で高メルトフローレイトのポリマーが製造できるような、いわゆる水素レスポンスが従来の触媒より高くかつポリマーの立体規則性と収率とを高度に維持できる触媒の開発が望まれていたが、上記従来技術では係る課題を解決するには充分ではなかった。
特開昭59−142206号公報(請求項1) 特開昭62−158704号公報(請求項1) 特開平9−169808号公報(請求項1)
従って、本発明の目的は、モノカルボン酸モノエステルを内部ドナーに用いたオレフィン類重合用固体触媒成分を用いて、高い活性持続性を維持しながら高い立体規則性のオレフィン類重合体を高い収率で得ることができ、かつ水素レスポンスの良好なオレフィン類重合用触媒およびこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記従来技術に残された課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来のモノカルボン酸モノエステル系の固体触媒成分に、特定の有機ケイ素化合物およびモノカルボン酸モノエステルを組み合わせた触媒が、高い活性持続性を示し、特にプロピレンの重合に供したときに、高い立体規則性のオレフィン類重合体を高い収率で得られ、かつ水素レスポンスが高くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン原子およびモノカルボン酸モノエステルを含む固体触媒成分、
(B)下記一般式(1);R AlQ3−p (1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物、
(C)下記一般式(2);(RN) Si(OR)4−q―r (2)
(式中、Rは炭素数1〜12の鎖状又は分岐鎖状アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基又は水素原子を示し、Rは炭素数1〜12の鎖状又は分岐鎖状アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、RとRは同一でも異なっていてもよく、Rは炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、qは1、2又は3、rは0、1又は2であり、1≦q+r≦3である。)で表されるアミノシラン化合物、及び
(D)モノカルボン酸モノエステル
から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
また、本発明は、前記オレフィン類重合用触媒の存在下に行なうことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法を提供するものである。
本発明のオレフィン類重合用触媒は、旧来のモノエステル系固体触媒成分を用いても高い活性持続性を示し、かつ高い立体規則性の重合体を収率良く得ることができ、かつ水素レスポンスが良好である。従って、分子量分布が広く加工性に優れた汎用ポリオレフィンを、低コストで提供し得ると共に、高機能性を有するオレフィン類の共重合体の製造において有用性が期待される。
本発明のオレフィン類重合用触媒のうち固体触媒成分(A)(以下、「成分(A)」ということがある。)は、マグネシウム、チタン、ハロゲン原子およびモノカルボン酸モノエステルを含むものであって、具体的には、(a)マグネシウム化合物、(b)4価のチタンハロゲン化合物および(c)モノカルボン酸モノエステルを接触して得ることができる。マグネシウム化合物(以下単に「成分(a)ということがある。」としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等が挙げられる。これらのマグネシウム化合物の中でもジアルコキシマグネシウムが好ましく、具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられ、ジエトキシマグネシウムが特に好ましい。また、これらのジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得たものでもよい。また、上記のジアルコキシマグネシウムは、単独あるいは2種以上併用することもできる。
更に、本発明において成分(A)の調製に好適なジアルコキシマグネシウムは、顆粒状又は粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
上記の球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が3以下であり、好ましくは1から2であり、より好ましくは1から1.5である。
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は1から200μmのものが使用し得る。好ましくは5から150μmである。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は1から100μm、好ましくは5から50μmであり、更に好ましくは10から40μmである。また、その粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものを使用することが望ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。一方、100μm以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒径である。)で表すと3以下であり、好ましくは2以下である。
上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報などに例示されている。
本発明における成分(A)の調製に用いられる4価のチタンハロゲン化合物(b)(以下「成分(b)」ということがある。)は、一般式;
Ti(ORCl4−n
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは0または1〜3の整数である。)で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の1種あるいは2種以上である。
具体的には、チタンハライドとしてチタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライドが例示され、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が例示される。このうち、チタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライドである。これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
本発明における成分(A)の調製に用いられるモノカルボン酸モノエステル(c)(以下「成分(c)」ということがある。)としては脂肪族モノカルボン酸エステルまたは芳香族モノカルボン酸エステルであって、具体的にはギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸メチル、及び次の一般式(3);(RCCOOR (3)(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、同一であっても異なってもよく、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。)で表わされるモノカルボン酸エステル等の化合物が挙げられる。
上記一般式(3)においてRはメチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基であり、好ましくはメチル基である。Rがメチル基である化合物はピバル酸のエステル(あるいはトリメチル酢酸のエステル)である。またRはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が好ましく、特に好ましくはメチル基及びエチル基である。具体的な化合物としては、トリメチル酢酸メチル(ピバル酸メチル)、トリメチル酢酸エチル(ピバル酸エチル)、トリメチル酢酸プロピル(ピバル酸プロピル)、トリメチル酢酸イソプロピル(ピバル酸イソプロピル)、トリメチル酢酸ブチル(ピバル酸ブチル)、トリメチル酢酸イソブチル(ピバル酸イソブチル)、トリメチル酢酸t−ブチル(ピバル酸t−ブチル)、トリエチル酢酸メチル、トリエチル酢酸エチル、トリエチル酢酸プロピル、トリエチル酢酸イソプロピル、トリエチル酢酸ブチル、トリエチル酢酸イソブチル、トリエチル酢酸t−ブチル、トリプロピル酢酸メチル、トリプロピル酢酸エチル、トリプロピル酢酸プロピル、トリプロピル酢酸イソプロピル、トリプロピル酢酸ブチル、トリプロピル酢酸イソブチル、トリプロピル酢酸t−ブチル、トリイソプロピル酢酸メチル、トリイソプロピル酢酸エチル、トリイソプロピル酢酸プロピル、トリイソプロピル酢酸イソプロピル、トリイソプロピル酢酸ブチル、トリイソプロピル酢酸イソブチル、トリイソプロピル酢酸t−ブチルなどが挙げられる。
上記のモノカルボン酸エステルの中でも安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸エチル、アニス酸エチル、トリメチル酢酸メチル(ピバル酸メチル)およびトリメチル酢酸エチル(ピバル酸エチル)が好ましい。これらのモノカルボン酸エステルは1種又は2種以上用いることができる。
本発明においては、上記成分(a)、(b)及び(c)を、芳香族炭化水素化合物(d)(以下単に「成分(d)」ということがある。)の存在下で接触させることによって成分(A)を調製する方法が調製方法の好ましい態様であるが、この成分(d)としては具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素化合物が好ましく用いられる。また、これらは単独で用いても、2種以上混合して使用してもよい。
以下に、本発明の成分(A)の調製方法について述べる。具体的には、ジアルコキシマグネシウム(a)を、4価のチタンハロゲン化合物(b)または芳香族炭化水素化合物(d)に懸濁させ、ピバル酸エステルなどのモノカルボン酸モノエステル(c)及び必要に応じて更に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触して固体成分を得る方法が挙げられる。該方法において、球状のマグネシウム化合物を用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることができ、また球状のマグネシウム化合物を用いなくとも、例えば噴霧装置を用いて溶液あるいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレードライ法により粒子を形成させることにより、同様に球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることができる。
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行われる。接触温度は、各成分の接触時の温度であり、反応させる温度と同じ温度でも異なる温度でもよい。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
本発明の好ましい固体触媒成分(A)の調製方法としては、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、次いで成分(b)を接触させた後に成分(c)を接触させ、反応させることにより固体触媒成分(A)を調製する方法、あるいは、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、次いで成分(c)を接触させた後に成分(b)を接触させ、反応させることにより固体触媒成分(A)を調製する方法を挙げることができる。
以下に、本発明の固体触媒成分(A)を調製する際の好ましい接触順序をより具体的に例示する。
(1)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(2)(a)→(d)→(c)→(b)→《中間洗浄→(d)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(3)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(b)→(c)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(4)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(c)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(5)(a)→(d)→(c)→(b)→《中間洗浄→(d)→(b)→(c)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(6)(a)→(d)→(c)→(b)→《中間洗浄→(d)→(c)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
なお、上記の各接触方法において、二重かっこ(《 》)内の工程については、必要に応じ、複数回繰り返し行なうことで一層活性が向上する。かつ《 》内の工程で用いる成分(b)は、新たに加えたものでも、前工程の残留分のものでもよい。また、上記(1)〜(6)で示した洗浄工程以外でも、各接触段階で得られる生成物を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄することもできる。
以上を踏まえ、本願における固体触媒成分(A)の特に好ましい調製方法としては、ジアルコキシマグネシウム(a)を沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)に懸濁させ、次いでこの懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させた後、反応処理を行う。この際、該懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させる前又は接触した後に、安息香酸エチルなどのモノカルボン酸エステル(c)の1種あるいは2種以上を、−20〜130℃で接触させ、さらにモノカルボン酸モノエステル(c)を接触させ、反応処理を行い、固体反応生成物(1)を得る。この際、モノカルボン酸モノエステルの1種あるいは2種以上を接触させる前または後に、低温で熟成反応を行なうことが望ましい。この固体反応生成物(1)を常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(中間洗浄)した後、再度4価のチタンハロゲン化合物(b)を、芳香族炭化水素化合物の存在下に、−20〜100℃で接触させ、反応処理を行い、固体反応生成物(2)を得る。なお必要に応じ、中間洗浄及び反応処理を更に複数回繰り返してもよい。次いで固体反応生成物(2)を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(最終洗浄)し、固体触媒成分(A)を得る。
上記の処理あるいは洗浄の好ましい条件は以下の通りである。
・低温熟成反応:−20〜70℃、好ましくは−10〜60℃、より好ましくは0〜30℃で、1分〜6時間、好ましくは5分〜4時間、特に好ましくは10分〜3時間。
・反応処理:40〜130℃、好ましくは70〜120℃、特に好ましくは80〜115℃で、0.5〜6時間、好ましくは0.5〜5時間、特に好ましくは1〜4時間。
・洗浄:0〜110℃、好ましくは30〜100℃、特に好ましくは30〜90℃で、1〜20回、好ましくは1〜15回、特に好ましくは1〜10回。
なお、洗浄の際に用いる炭化水素化合物は、常温で液体の芳香族あるいは飽和炭化水素化合物が好ましく、具体的には、芳香族炭化水素化合物としてトルエン、キシレン、エチルベンゼンなど、飽和炭化水素化合物としてヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。好ましくは、中間洗浄では芳香族炭化水素化合物を、最終洗浄では飽和炭化水素化合物を用いることが望ましい。
固体触媒成分(A)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えばマグネシウム化合物(a)1モル当たり、4価のチタンハロゲン化合物(b)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、モノカルボン酸エステル(c)が0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、芳香族炭化水素化合物(d)が0.001〜500モル、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.005〜10モルである。
また本発明における固体触媒成分(A)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、モノカルボン酸モノエステルの含有量は特に規定されないが、好ましくは、チタンが1.0〜8.0重量%、好ましくは2.0〜8.0重量%、より好ましくは3.0〜8.0重量%、マグネシウムが10〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%、更に好ましくは15〜25重量%、ハロゲン原子が20〜85重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜80重量%、更に好ましくは45〜75重量%、またモノカルボン酸モノエステルが合計0.5〜30重量%、より好ましくは合計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%である。
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)(以下単に「成分(B)」ということがある。)としては、上記一般式(1)で表される化合物であれば、特に制限されないが、Rとしては、エチル基、イソブチル基が好ましく、Qとしては、水素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、pは、2又は3が好ましく、3が特に好ましい。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムである。
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられるアミノシラン化合物(C)(以下単に「成分(C)」ということがある。)としては、上記一般式(2)で表される化合物であり、このアミノシラン化合物はN原子が直接Si原子に結合した化合物であり、このようなアミノシラン化合物としては、アルキルアミノトリアルコキシシラン、ビス(アルキルアミノ)ジアルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)ジアルコキシシラン、シクロアルキルアミノトリアルコキシシラン、アルキル置換シクロアルキルアミノトリアルコキシシラン、ハロゲン置換シクロアルキルアミノトリアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアミノトリアルコキシシラン、ビス(アルキルアミノ)ジアルコキシシラン、ビス(シクロアルキルアルキルアミノ)ジアルコキシシラン、ビス(アルキル置換シクロアルキルアミノ)ジアルコキシシラン、ビス(ハロゲン置換シクロアルキルアミノ)ジアルコキシシラン、ビス(シクロアルキルアルキルアミノ)ジアルコキシシラン、シクロアルキルアミノアルキルジアルコキシシランなどを挙げることができる。
上記一般式(2)中、Rとしてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基および水素原子が好ましく、Rとしてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基およびシクロペンチル基が好ましい。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基およびt−ブチル基が好ましい。またRとしてはメチル基およびエチル基が好ましい。また、一般式(2)中、q及びrがそれぞれ1の場合、Rは炭素数1〜5のもの、特に炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
上記のようなアミノシラン化合物を具体的に例示すると、ジメチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチル(n−プロピル)アミノトリエトキシシラン、t−ブチルアミノトリエトキシシラン、エチル(n−プロピル)アミノトリエトキシシラン、エチル(iso−プロピル)アミノトリエトキシシラン、メチルエチルアミノトリエトキシシラン、シクロペンチルアミノトリメトキシシラン、シクロペンチルアミノトリエトキシシラン、シクロヘキシルアミノトリメトキシシラン、シクロヘキシルアミノトリエトキシシラン、2−メチルシクロペンチルアミノトリメトキシシラン、2−メチルシクロペンチルアミノトリエトキシシラン、2−エチルシクロペンチルアミノトリメトキシシラン、2−エチルシクロペンチルアミノトリエトキシシラン、2−クロロシクロペンチルアミノトリメトキシシラン、2−クロロシクロペンチルアミノトリエトキシシラン、2−ブロモシクロペンチルアミノトリメトキシシラン、2−ブロモシクロペンチルアミノトリエトキシシラン、2−メチルシクロヘキシルアミノトリメトキシシラン、2−メチルシクロヘキシルアミノトリエトキシシラン、2−エチルシクロヘキシルアミノトリメトキシシラン、2−エチルシクロヘキシルアミノトリエトキシシラン、2−クロロシクロヘキシルアミノトリメトキシシラン、2−クロロシクロヘキシルアミノトリエトキシシラン、2−ブロモシクロヘキシルアミノトリメトキシシラン、2−ブロモシクロヘキシルアミノトリエトキシシラン、シクロペンチルメチルアミノトリメトキシシラン、シクロペンチルメチルアミノトリエトキシシラン、1―シクロペンチルエチルアミノトリメトキシシラン、1―シクロペンチルエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(メチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(メチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(エチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(エチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(プロピルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(プロピルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(イソプロピルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(イソプロピルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(ブチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(イソブチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(イソブチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(t−ブチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(シクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(シクロペンチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(2−メチルシクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(2−メチルシクロペンチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(2−エチルシクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルシクロペンチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(2−クロロシクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(2−クロロシクロペンチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(2−ブロモシクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(2−ブロモシクロペンチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(2−メチルシクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(2−メチルシクロヘキシルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(2−エチルシクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルシクロヘキシルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(2−クロロシクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(2−クロロシクロヘキシルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(2−ブロモシクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(2−ブロモシクロヘキシルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(シクロペンチルメチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(シクロペンチルメチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(1―シクロペンチルエチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(1―シクロペンチルエチルアミノ)ジトリエトキシシラン、メチル(イソプロピルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(イソプロピルアミノ)ジメトキシシラン、nープロピル(アミノ)ジメトキシシラン、イソプロピル(イソプロピルアミノ)ジメトキシシラン、Sec−ブチル(イソプロピルアミノ)ジメトキシシラン、t−ブチル(イソプロピルアミノ)ジメトキシシラン、シクロペンチル(イソプロピルアミノ)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(イソプロピルアミノ)ジメトキシシラン、メチル(n―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(n―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、nープロピル(n―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、イソプロピル(n―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、Sec−ブチル(n―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、t−ブチル(n―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロペンチル(n―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、メチル(n―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、メチル(n―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、メチル(sec―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(sec―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、nープロピル(sec―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、イソプロピル(sec―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、Sec−ブチル(n―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、t−ブチル(n―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロペンチル(sec―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(sec―ブチルアミノ)ジメトキシシラン、メチル(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、nープロピル(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、イソプロピル(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、n―ブチル(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、Sec−ブチル(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、t−ブチル(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロペンチル(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、2−メチルシクロペンチル(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、2―メチルシクロヘキシル(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、メチル(シクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(シクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、nープロピル(シクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、イソプロピル(シクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、Sec−ブチル(シクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、t−ブチル(シクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロペンチル(シクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(シクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、メチル(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、nープロピル(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、イソプロピル(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、Sec−ブチル(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、t−ブチル(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、シクロペンチル(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、等を挙げることができる。
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられるモノカルボン酸モノエステル(D)(以下単に「成分(D)」ということがある。)としては、固体触媒成分(A)を構成する成分(c)のモノカルボン酸モノジエステルと同じものが使用でき、これらのなかでも芳香族モノカルボン酸モノエステルが好ましく、具体的には、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチルなどが挙げられる。これらの中でも特にp−エトキシ安息香酸エチルが好ましい。
上記成分(C)と成分(D)の好ましい組合せを表1に示す。
Figure 2006063282
本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行う。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン、プロピレン及び1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましくはプロピレンである。プロピレンの重合の場合、他のオレフィン類との共重合を行うこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン及び1−ブテンが好適に用いられる。
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常成分(B)は成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。成分(C)および成分(D)は、(B)成分1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。
成分(C)と成分(D)の使用量比は、通常成分(C)1モルに対して成分(D)が0.1〜10モルであり、好ましくは0.3〜3モル、特に好ましくは1モルである。
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで有機ケイ素化合物(C)およびモノカルボン酸モノエステル(D)を接触させ、次いで固体触媒成分(A)を接触させる。具体的な接触順序を以下に示す。
・ 成分(B)に成分(C)を接触させ、次いで成分(D)を接触させ、その後成分(A)を接触させる。
・ 成分(B)に成分(D)を接触させ、次いで成分(C)を接触させ、その後成分(A)を接触させる。
・ 成分(B)に成分(C)および成分(D)の混合物を接触させ、次いで成分(A)を接触させる。
上記で例示した接触順序の内、(1)の接触順序がより好ましい。
上記(3)の接触方法では、成分(C)と成分(D)を予め混合して混合物として重合系に添加するが、成分(C)と成分(D)がエステル交換やその他の反応が起き、触媒性能が低下する場合があるため、混合した場合は、成分(C)と成分(D)が反応する前に重合系に添加する。更にあるいは重合系内にまず成分(B)を装入し、一方で成分(A)と成分(C)および成分(D)とを予め接触させ、接触させた成分(A)、成分(C)および成分(D)を重合系内に装入接触させ触媒を形成することも好ましい態様である。このように予め成分(A)と成分(C)および成分(D)とを接触させて処理することによって、触媒の対水素活性および生成ポリマーの結晶性をより向上させることが可能となる。
本発明におけるオレフィン類重合体の製造方法は前記オレフィン類重合用触媒を用いるものであって、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができ、またプロピレン等のオレフィン単量体は、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
更に、本発明において成分(A)及び成分(B)、又は成分(C)および成分(D)を含有する触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活性、立体規則性及び生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。具体的には、オレフィン類の存在下に成分(A)、成分(B)または成分(C)を接触させ、成分(A)1gあたり0.1〜100gのポリオレフィンを予備的に重合させ、さらに成分(B)または成分(C)及び成分(D)を接触させ触媒を形成する。
予備重合を行うに際して、各成分及びモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン及び/または1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。
本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下で、オレフィン類の重合を行った場合、従来の触媒を使用した場合に較べ、活性持続性が高く、高立体規則性の重合体を収率よく得られるという作用が確認された。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
実施例1〜4
〈固体触媒成分の調製〉
撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量200mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム10g及びトルエン40mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに予め装入されたトルエン10ml及びチタンテトラクロライド50mlの溶液中に添加した。次いで、該懸濁液を−5℃で2時間反応させた(低温熟成処理)。その後、安息香酸エチル5.1gを添加して、さらに90℃まで昇温した後、撹拌しながら2時間反応処理(第1処理)を行った。反応終了後、生成物を70℃のトルエン100mlで1回洗浄し、さらに、70℃のn−ヘプタン100mlで4回洗浄(中間洗浄)し、新たにチタンテトラクロライド50mlを加えて、撹拌しながら100℃で1時間の反応処理(第2処理)を行った。さらにチタンテトラクロライド50mlを加えて、撹拌しながら100℃で1時間の反応処理(第3処理)を行った。次いで、生成物を40℃のヘプタン100mlで7回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、4.98重量%であった。
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで十分に乾燥し、次いでプロピレンガスで置換された内容積1800mlの攪拌装置付きステンレス製オートクレーブに、n−ヘプタン700mlを装入し、プロピレンガス雰囲気下に保ちつつ、先ずトリエチルアルミニウム2.10mmol、次いでジエチルアミノトリエトキシシラン0.21mmolを装入し、その後p−エトキシ安息香酸エチル0.21mmolを装入し、最後に前記固体触媒成分をTiとして0.0053mmol装入し、重合用触媒を形成した。次いで、0.2MPaのプロピレン圧をかけ、攪拌を保ちながら20℃で30分間予備的な重合を行った。その後、120mlの水素を装入し、系内のプロピレン圧を0.7MPa として70℃で表2に示した15〜180分重合を継続した。なお、重合が進行するにつれて低下する圧力は、プロピレンのみを連続的に供給することにより補い、重合中一定の圧力に保持した。上記重合方法に従い、プロピレンの重合を行い、生成された重合体をろ別し、減圧乾燥して固体重合体を得た。一方、ろ液を凝縮して重合溶媒に溶存する重合体を得、その量を(M) とし、固体重合体の量を(N) とする。また、得られた固体重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間抽出し、n−ヘプタンに不溶解の重合体を得、この量を(P) とする。固体触媒成分当たりの重合活性(Y) を下記式で表す。
(Y)=[ (M) +(N)](g)/固体触媒成分量(g)
また、n−ヘプタンに不溶な全ポリマー(HI)を下記式で表わす。
(HI)={ (P) (g)/ [(M)+(N) ] (g) } ×100
さらに、生成固体重合体のメルトフローレート(MI) および嵩比重(BD)を測定したところ、表2に示すような結果が得られた。
なお、生成固体重合体(N)のメルトフローレイトの値(MI)は、ASTM D 1238、 JIS K 7210に準じて測定した。
実施例5〜8
ジエチルアミノトリエトキシシランの代わりにシクロペンチルアミノトリエトキシシランを用いた以外は実施例1〜4と同様に実験を行った。その結果を表2に示す。
実施例9〜12
ジエチルアミノトリエトキシシランの代わりにシクロヘキシルアミノトリエトキシシランを用いた以外は実施例1〜4と同様に実験を行った。その結果を表2に示す。
実施例13〜16
ジエチルアミノトリエトキシシランの代わりにビス(t−ブチルアミノ)ジメトキシシランを用いた以外は実施例1〜4と同様に実験を行った。その結果を表2に示す。
実施例17〜20
ジエチルアミノトリエトキシシランの代わりにエチル(t―ブチルアミノ)ジメトキシシランを用いた以外は実施例1〜4と同様に実験を行った。その結果を表2に示す。
比較例1〜4
ジエチルアミノトリエトキシシランを用いなかった以外は実施例1〜4と同様に実験を行った。得られた結果を表2に示す。
比較例5〜8
ジエチルアミノトリエトキシシランの代わりにクロヘキシルメチルジメトキシシランを用いた以外は実施例1〜4と同様に実験を行った。得られた結果を表2に示す。
Figure 2006063282
以上の結果から、従来のモノカルボン酸モノエステル系の固体触媒成分に、アミノシラン化合物およびモノカルボン酸モノエステルを使用した触媒が、高い活性持続性を示し、高い立体規則性の重合体を収率良く得られ、かつ水素レスポンスが良好であることがわかる。
本発明の触媒成分及び重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。

Claims (10)

  1. (A)マグネシウム、チタン、ハロゲン原子およびモノカルボン酸モノエステルを含む固体触媒成分、
    (B)下記一般式(1);R AlQ3−p (1)
    (式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)
    で表される有機アルミニウム化合物、
    (C)下記一般式(2);(RN) Si(OR)4−q―r (2)
    (式中、Rは炭素数1〜12の鎖状又は分岐鎖状アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基又は水素原子を示し、Rは炭素数1〜12の鎖状又は分岐鎖状アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、RとRは同一でも異なっていてもよく、Rは炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、qは1、2又は3、rは0、1又は2であり、1≦q+r≦3である。)で表されるアミノシラン化合物、及び
    (D)モノカルボン酸モノエステル
    から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
  2. 前記固体触媒成分が、(a)マグネシウム化合物、(b)4価のチタンハロゲン化合物および(c)モノカルボン酸モノエステルを接触して得られることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン類重合用触媒。
  3. 前記マグネシウム化合物がアルコキシマグネシウムである請求項2に記載のオレフィン類重合用触媒。
  4. 前記固体触媒成分(A)を構成するモノカルボン酸モノエステルが下記の一般式(3);
    (RCCOOR (3)
    (式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、同一であっても異なってもよく、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン類重合用触媒。
  5. 前記アミノシラン化合物(C)が、アルキルアミノトリアルコキシシラン、ビス(アルキルアミノ)ジアルコキシシラン、アルキルアルキルアミノジアルコキシシラン又はシクロアルキルアミノトリアルコキシシランであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン類重合用触媒。
  6. 前記アミノシラン化合物(C)が、ジエチルアミノトリエトキシシランであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン類重合用触媒。
  7. 前記モノカルボン酸モノエステル(D)がパラエトキシ安息香酸エチルであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン類重合用触媒。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項記載のオレフィン類重合用触媒の存在下に行なうことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。
  9. 前記オレフィン類重合体が、プロピレン重合体であることを特徴とする請求項8記載のオレフィン類重合体の製造方法。
  10. 前記(A)〜(D)の各成分を重合系内に装入するに際し、成分(D)を装入する前に成分(C)を装入することを特徴とする請求項8又は9記載のオレフィン類重合体の製造方法。
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