JP2003309303A - 圧電膜型アクチュエータの製造方法および液体噴射ヘッドの製造方法 - Google Patents

圧電膜型アクチュエータの製造方法および液体噴射ヘッドの製造方法

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JP2003309303A
JP2003309303A JP2002115808A JP2002115808A JP2003309303A JP 2003309303 A JP2003309303 A JP 2003309303A JP 2002115808 A JP2002115808 A JP 2002115808A JP 2002115808 A JP2002115808 A JP 2002115808A JP 2003309303 A JP2003309303 A JP 2003309303A
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JP2002115808A
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Tetsuro Fukui
哲朗 福井
Yutaka Kagawa
豊 香川
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大面積で信頼性が高くかつ低駆動電圧で大変
位が得られ、応答速度が速く、かつ発生力が大きく、高
集積化が可能な圧電膜型アクチュエータおよび液体噴射
ヘッドの製造方法を提供する。 【解決手段】 中間転写体2上に多孔質層3を介して形
成された電極4の上に圧電膜1を形成し、圧電膜1と振
動板構造体8を金属、合金、金属酸化物等を成膜した接
合層7a、7bを介して接合する。その後に、中間転写
体2と電極4との間の多孔質層3を機械的に破壊するこ
とにより、あるいは、中間転写体2側からレーザ光を照
射させることにより、中間転写体2を電極4から剥離さ
せる。このように、圧電膜1を形成する工程と圧電膜1
を振動板構造体8に接合する工程を分離できるとともに
予め成膜した電極4を圧電膜型アクチュエータの上部電
極として利用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体噴射ヘッド、
マイクロホン、スピーカーなどの発音体、各種振動子や
発振子、さらにはセンサー等に用いられる圧電膜型アク
チュエータの製造方法、ならびに、圧電膜型アクチュエ
ータを用いた液体噴射ヘッドの製造方法に関するもので
ある。なお、ここで呼称される圧電膜型アクチュエータ
とは、電気エネルギーを機械エネルギーすなわち機械的
な変位や振動または応力に変換する素子およびその逆の
変換を行う素子を意味するものとする。
【0002】
【従来の技術】近年、光学や精密加工等の分野におい
て、サブミクロンのオーダーで光路長や位置を調整する
変位素子や微小変位を電気的変化として検知する検出素
子が所望されるようになってきており、これに応えるも
のとして、強誘電体の圧電/電歪材料に電界を加えた時
に起こる逆圧電効果や電歪効果に基づくところの変位あ
るいはその逆の現象を利用した素子である圧電膜型アク
チュエータの開発が進められている。
【0003】また、液体噴射ヘッド等においては、圧電
膜型アクチュエータの構造として、従来からユニモルフ
型やバイモルフ型が好適に採用されている。そこでは、
そのような圧電膜型アクチュエータを用いた液体噴射記
録装置の印字品質や印字速度等の向上が要求されてお
り、それに応えるべく、かかる圧電膜型アクチュエータ
の小型化、高密度化、低電圧駆動化、高速応答性化、お
よび長尺多ノズル化を図るための開発が進められてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述したユ
ニモルフ型やバイモルフ型の圧電膜型アクチュエータに
おいては、大きな屈曲変位や発生力あるいは発生電位を
得るために、振動板となる基板の厚さを薄くすることが
重要とされるが、かかる基板の厚さを減少させると、強
度が低下し、平滑性が低下するという問題があった。さ
らに、従来のユニモルフ型やバイモルフ型の圧電膜型ア
クチュエータにおいては、接着剤を用いるために信頼性
が損ねるという問題点もあった。
【0005】このような問題点を克服するために、特開
昭62−213399号公報には、圧電セラミックスと
セラミックス振動板を同時に焼結することで、接着剤を
用いることなく、強固な接合強度をもたらす技術が開示
されている。
【0006】しかしながら、この方法においては、高温
で異種の材料を焼結することから、振動板および圧電セ
ラミックスそのものが収縮するため、大面積でミクロン
オーダーの寸応精度を合わせることが困難であった。そ
のため信頼性の高い大面積の圧電膜型アクチュエータや
液体噴射ヘッドを得ることが困難であった。
【0007】そこで、本発明は、前述した従来技術の有
する未解決の課題に鑑みてなされたものであって、大面
積で信頼性が高く、かつ低駆動電圧で大変位が得られ、
応答速度が速く、高集積化が可能な圧電膜型アクチュエ
ータの製造方法および圧電膜型アクチュエータを用いる
液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを目的とする
ものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の圧電膜型アクチュエータの製造方法は、圧
電膜と振動板構造体とが接合された圧電膜型アクチュエ
ータの製造方法において、圧電膜を中間転写体上に形成
された電極上に形成する工程と、中間転写体上の圧電膜
と振動板構造体を接合層を介して接合する工程と、中間
転写体を電極から剥離する工程を含むことを特徴とす
る。
【0009】本発明の圧電膜型アクチュエータの製造方
法においては、電極は金属および/または金属酸化物で
あるであることが好ましく、また、圧電膜はパターニン
グされているものが好ましい。
【0010】本発明の圧電膜型アクチュエータの製造方
法においては、圧電膜と振動板構造体を接合層を介して
接合する接合層は、金属単体、合金、金属酸化物、金属
窒化物または金属間化合物であり、接合方法としては、
通電加熱、低温加熱、あるいは通電圧接により接合され
ることが好ましく、また、接合層の表面粗度Raは、
0.01μm〜2.5μmであることが好ましく、より
好ましくは、0.02μm〜1.0μmである。
【0011】本発明の圧電膜型アクチュエータの製造方
法においては、中間転写体を電極から剥離する工程にお
いて、中間転写体側からエキシマレーザ光や赤外レーザ
光等のレーザ光を照射して、該中間転写体を剥離するこ
とが好ましい。
【0012】本発明の圧電膜型アクチュエータの製造方
法においては、中間転写体を電極から剥離する工程にお
いて、束状の流体(ウォータージェット)を中間転写体
と電極の間に噴射して、該中間転写体を剥離することが
好ましい。その場合には、中間転写体と電極との間には
多孔質層が形成されていることが好ましい。そして、多
孔質層は金属酸化物を含有しているものが好ましく、多
孔質層としては密度が30%〜95%の多孔質層を用い
ることができる。
【0013】また、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法
は、液吐出口と、該液吐出口に接続された液室と、該液
室の一部に設けられた振動板と圧電膜からなる圧電膜型
アクチュエータとを備え、前記圧電膜型アクチュエータ
を作動させることにより液吐出口から液体を吐出させる
液体噴射ヘッドの製造方法において、中間転写体上に形
成された電極上に圧電膜を形成する工程と、中間転写体
上の圧電膜と振動板構造体を接合層を介して接合する工
程と、中間転写体を電極から剥離する工程を含むことを
特徴とする。
【0014】
【作用】本発明によれば、圧電膜を振動板構造体に直接
成膜するのではなく中間転写体を介在させて圧電膜を形
成するものであって、圧電膜を中間転写体に形成する工
程と圧電膜を振動板構造体に接合する工程を分離するこ
とができることから、圧電膜と振動板構造体の接合の加
熱温度を500℃以下の低温とすることができ、また、
圧電膜の成膜プロセスとアクチュエータの製造プロセス
が機能分離されていることから、アクチュエータとして
の振動板構造体の材料を幅広く選択することができ、さ
らに、圧電膜の性能を任意に調整した膜を得ることがで
きる利点がある。
【0015】また、圧電膜と振動板構造体の接合に際し
ては、金属、合金、金属酸化物、金属窒化物または金属
間化合物等からなる接合層を介して、通電加熱、低温加
熱、あるいは通電圧接により接合することによって、さ
らに、接合層の表面粗度Raを0.01μm〜2.5μ
m、より好ましくは0.02μm〜1.0μmとして接
合することによって、接着剤を用いることなく、接合強
度および耐久性を向上させることができ、信頼性の高い
圧電膜型アクチュエータを得ることができる。
【0016】また、圧電膜を形成した中間転写体を剥離
する際に、圧電膜上には電極が残された状態で剥離を起
こすため、これを圧電膜型アクチュエータの上部電極と
して利用することができ、プロセス上簡便な方法とな
る。さらに、機械的にあるいはレーザ光の照射によっ
て、圧電膜や電極を損傷させることなく容易に中間転写
体を剥離することができ、これにより、剥離後に圧電膜
上への電極の作製を不要にするとともに中間転写体を再
利用することが可能となる。
【0017】このように、低駆動電圧で大変位が得ら
れ、応答速度が速く、発生力の大きい、大面積化・高集
積化が可能な圧電膜型アクチュエータを得ることができ
る。
【0018】さらに、低駆動電圧で大変位が得られ、高
速応答が可能で安定した信頼性の高い長尺で高密度の液
体噴射ヘッドを作製することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0020】図1は、本発明の圧電膜型アクチュエータ
の製造方法の主要工程を示す工程図である。
【0021】本発明の圧電膜型アクチュエータ(以下、
単にアクチュエータともいう)の製造方法の主要工程
は、図1に示すように、中間転写体上に形成された電極
上に圧電膜を形成する工程と、中間転写体上の圧電膜を
振動板構造体に接合層(7a、7b)を介して接合する
工程と、中間転写体を電極および圧電膜から剥離する工
程とから構成されている。
【0022】第1の工程である圧電膜を中間転写体上に
形成する工程においては、図1の(a)に示すように、
中間転写体2上に多孔質層3および電極4を形成し、そ
の上に圧電膜1を形成する。
【0023】圧電膜1の形成は、焼結法、スパッタ法、
ゾルゲル法、CVD法、水熱合成法、レーザーアブレー
ション法、ガスデポジション法等の公知の方法を適宜採
用することができ、用途に応じた特性が取れる圧電膜組
成と製法を選択することができる。圧電膜1の組成とし
ては、鉛、チタンおよびジルコニウムから構成される酸
化物であるペロブスカイト構造を持つチタン酸ジルコン
酸鉛(PZT)やチタン酸バリウム、チタン酸ジルコン
酸バリウム、あるいは、それらにMn,Nb,La,G
e等の元素を添加した組成でも良い。また、チタン酸亜
鉛酸ニオブ酸鉛やチタン酸マンガン酸ニオブ酸鉛等のリ
ラクサ系組成であっても良い。圧電膜の結晶性として
は、多結晶体でも単結晶体でも良い。また、圧電膜1の
形態は、図1の(a)にはパターニングされた形態を図
示するが、用途に応じて種々の形態とすることができ、
パターニングされた形態に限定されるものではない。パ
ターニングする方法としては、ベタ膜をドライあるいは
ウェットでエッチングする方法やサンドブラスト法や機
械的切断処理や成膜時にメタルマスクあるいはレジスト
を形成しておきパターニングする方法がある。さらに
は、光硬化型の樹脂で、高密度の鋳型を形成しその間を
PZTペーストで埋め込むリフトオフ方式もある。圧電
膜1の膜厚は、0.1μm〜20μmであり、好ましく
は0.5μm〜12μmである。
【0024】中間転写体2に形成する電極4の材料とし
ては、金属および/または金属酸化物を用いることがで
きる。金属としては、例えば、白金、イリジウム、金、
アルミニウム、銅等が用いられる。金属酸化物として
は、1×10-1Ω・cm〜1×10-6Ω・cmの導電性
を有する金属酸化物である。例えば、LaNiO3 、L
aCrO3 、SrRuO3 、La1-x Srx CoO3
La1-x-y Srx CayRuO3 、La1-x Srx Ti
3 、Nb1-x Srx TiO3 等の酸化物である。本発
明の電極としては、好ましくは金属酸化物である。
【0025】また、圧電膜1を形成する中間転写体2と
しては、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、サファイ
ア、チタン酸ストロンチウム等の無機酸化物を用いる。
なお、用途に応じては単結晶体であっても良い。また、
中間転写体2の膜厚は10μm〜5mmの厚みが良く、
好ましくは100μm〜2mmである。中間転写体2を
10μm以下の膜厚とすると、圧電膜1の形状保持と次
工程の接合でのハンドリングが悪いという問題があり、
また、5mm以上の膜厚では、接合後に中間転写体2を
剥離する時に電極4と圧電膜1を損傷させることなく剥
離することが難しくなるという問題があり、好ましくな
い。なお、中間転写体2は、後述するように、中間転写
体2の接合後の剥離工程における剥離手法によりその光
学特性あるいは層構成が限定される場合もある。
【0026】多孔質層3は、圧電膜1を振動板構造体8
に接合した後に中間転写体2を剥離する際に容易に剥離
することができるように形成するものであり、多孔質層
3は、カーボンまたは未焼結性セラミックスを含有する
材料から形成することが好ましく、例えば、中間転写体
2上にカーボンと金属酸化物含有層を予め作成し、この
カーボン含有層を圧電膜1を焼成する熱により脆弱な金
属酸化物層とすることによって、脆弱な多孔質層3を形
成することができる。このように形成された脆弱な多孔
質層3を破壊させることにより、中間転写体2を電極4
および圧電体1とを分離させ、中間転写体2を容易に剥
離させることができる。また、アルミナ・ジルコニアの
セラミックスの混合層や、主成分がアルミナ層と主成分
がジルコニア層の積層構造も好ましい態様である。な
お、後述するように、剥離手法によっては、例えば、レ
ーザ光の照射により剥離する場合には、多孔質層3を介
在させることなく中間転写体2を剥離することも可能で
ある。
【0027】第2の工程である圧電膜を振動板構造体に
接合する工程において、振動板構造体8は、図1の
(b)に示すように、アクチュエータを構成する振動板
5と基板部6とからなり、振動板5と基板部6は、一体
成形されたものでも、接合されたものであっても良い。
この振動板構造体8は、圧電膜1に接合する際の熱で変
形しない耐熱性が必要であり、少なくとも150℃以上
の耐熱性を持った材質であるものが好ましい。ここで、
150℃以上の耐熱性とは150℃雰囲気下30分間の
加熱処理をした後の寸法変位が3%未満であることをい
う。
【0028】振動板5としては、ヤング率が50GPa
以上の材料で、例えばSUS、Ti、ジルコニア、S
i、Cu、SiO2 、ガラス、Cr等が挙げられる。振
動板5は一層構成であっても複数の層構成であっても良
い。複数の層構成の場合でも全体でヤング率が50GP
a以上であることが必要である。振動板5の膜厚は、
0.5μm〜20μmで、好ましくは1μm〜10μm
である。また、振動板5は、Y,B等の微量金属でドー
ピングされたものを用いることもできる。
【0029】振動板構造体8の基板部6の材料は、上記
振動板5の材料と同一であっても良いが、他の材料とし
ては、アルミナ、セルシアン、マグネシアや炭素繊維が
含有されたセラミックス系複合材料などが挙げられる。
このアクチュエータを液体噴射ヘッドに適用する際に
は、基板部6としては、例えば、Si基板やSUS基板
等であって、液室が予め形成された加工済みの基板ある
いは液室を後工程で形成する未加工の基板を用いること
ができる。液体噴射ヘッドの液室は、機械加工あるいは
エッチング等により形成することができる。
【0030】そして、圧電膜1と振動板構造体8の接合
に際しては、図1の(b)に示すように、接合する圧電
膜1と振動板5の両表面にあるいはいずれか一方の表面
に、金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物あるいは
金属間化合物を接合層7(7a、7b)として成膜す
る。振動板構造体8と圧電体1の表面に成膜して接合層
7(7a、7b)を形成する金属あるいは合金として
は、Pd,In,Sn,Ni,Ga,Cu,Ag,M
o,Ti,Zr等の金属のうち少なくとも一種類以上の
金属を用いることができ、また、合金としては、例え
ば、PdIn3 ,Al−Cu,Ti−Ni等があり、金
属酸化物としては、例えば、SiO2 ,CaO2,Ti
2 ,ZnO等があり、金属窒化物としては、例えば、
TiN,Si3 4 等があり、金属間化合物としては、
例えば、Ti−Ni,Ag−Ni,Fe−Co,Cr−
Mo等がある。このように、振動板構造体8と圧電体1
の接合する両表面あるいはいずれか一方の表面に接合層
7(7a、7b)を成膜し、それらを当接させた後に、
通電加熱、通電圧接あるいは低温加熱等により両者を接
合する。
【0031】ここで、接合する際に用いる通電加熱と
は、導電層を介して電流を流し、自己発熱により接合さ
せる方法である。電流量としては0.5A/cm2 〜2
00A/cm2 で、好ましくは1A/cm2 〜50A/
cm2 である。通電圧接とは、前記通電加熱法に加えさ
らに圧力をかけ、より強固に接合させる方法である。ま
た、低温加熱とは、300℃以下の温度で合金を形成す
る異種金属を組み合わせて接合面で合金を形成して接合
させる方法である。特に、PdとInの組み合わせは、
250℃付近でPdIn3 の合金を形成することができ
ることから、低温で接合するためには好ましい組み合わ
せである。他には、例えば、Ag−Ni,Ti−Ni,
Zr−Cu等の組み合わせにより接合することも可能で
ある。
【0032】なお、圧電膜1と振動板5を金属等からな
る接合層7(7a、7b)を介して接合する際には、圧
電膜1および振動板5上にそれぞれ成膜する接合層7
a、7bの表面粗度Raは、0.01μm〜2.5μm
の範囲であることが望ましく、より好ましくは、0.0
2μm〜1.0μmである。接合層7a、7bの表面粗
度Raは、成膜する圧電膜1や振動板5の表面性に影響
を受けるものの、圧電膜1を振動板構造体8に接合する
(図1の(b)参照)際に、より低温かつ低圧で接合す
ることができるように、そして、アクチュエータの耐久
性を上げるために、上記範囲内の表面粗度Raであるこ
とが好ましい。接合層の表面粗度Raが0.01μm未
満では、接合強度が不足し、後工程の剥離工程で振動板
構造体8と圧電膜1が剥離するという問題が発生する場
合がある。また、接合層の表面粗度Raが2.5μmを
超えても接合不良が起こり、好ましくない。このよう
に、接合層の表面粗度Raを上記範囲内とすることによ
り、接合強度があがり、特に信頼性の高いアクチュエー
タを得ることができる。また、接合層7aと7bの表面
粗度Raの絶対値の差が0.5μm以下であることが望
ましい。なお、表面粗度は、小坂研究所製の表面粗さ計
「サーフコーダー」で測定することができる。
【0033】第3の工程である中間転写体を電極(およ
び圧電膜)から剥離する工程は、図1の(c)に示すよ
うに、圧電膜1と振動板構造体8が接合されて構成する
アクチュエータから中間転写体2を切り離す工程であ
り、中間転写体2を剥離する手法としては、中間転写体
2と電極4の間に形成されている多孔質層3を機械的に
破壊して中間転写体2を剥離する手法と、多孔質層3を
ウォータージェット法により破壊して中間転写体2を剥
離する手法と、レーザ光を照射し急速加熱により中間転
写体2を剥離する手法等がある。なお、レーザ光を照射
し剥離する手法では、多孔質層3がなくても良い。
【0034】前者の2手法(機械的剥離とウォータージ
ェット法)においては、圧電膜1と電極4の形成時に、
電極4と中間転写体2の界面に、密度が30%〜95
%、好ましくは50%〜95%の多孔質層3を形成して
おくことが好ましく、多孔質層3の膜厚は、0.5μm
〜200μm、好ましくは、1.0μm〜100μmと
する。この多孔質層3は、例えば、中間転写体2上にカ
ーボン含有酸化物セラミックス層を予め作成しておき、
圧電膜1が高温で焼成される時に界面にカーボンが燃焼
することにより多孔質層が形成される。このように形成
された脆弱な多孔質層を機械的に破壊することで、電極
4と中間転写体2を容易に剥離することができる。な
お、多孔質の密度は、多孔質層の断面をTEM(透過電
子顕微鏡)観察し、空隙面積を測定することにより判定
することができる。
【0035】また、多孔質層3を介して中間転写体2を
剥離する際に、多孔質層3に高圧の束状の流体(ウォー
タージェット)を衝突させることによっても容易に分離
することができる。ウォータージェット法は、一般に、
水を高速でかつ高圧の束状の流れにして対象物に対して
噴射して、セラミックス、金属、樹脂、ゴム、木材等の
切断、加工、あるいは表面の洗浄等を行う方法である。
ウォータージェット法を用いた例としては、K.Ohm
iらの「Water Jet Splitting of Thin Porous S
i for ELTRAN」The Japan Society of Applied
Physics,Tokyo,pp.345〜355(1999);
R.Herinoらの「Microstructure of Porous
Silicon and its Evaluation with Temperature」
Mater.Lett.2,pp.519〜523(1984)
に記載がある。本発明では、ウォータージェットを多孔
質層3に噴射し、多孔質層3を選択的に崩壊させて中間
転写体2の剥離を行うものである。ウォータージェット
として使用する流体の圧力は、5.0×104 kPa〜
80.0×104 kPaで、好ましくは、10.0×1
4 kPa〜50.0×104 kPaである。
【0036】レーザ光を照射して中間転写体を剥離する
手法においては、中間転写体2上に圧電膜1を形成し
て、これに振動板構造体8を接合した後に、レーザ光を
振動板5の反対側から中間転写体2を通して照射して急
速加熱し、その瞬間的な熱膨張の差あるいは熱分解によ
り、圧電膜1と透明基板である中間転写体2とを分離す
る。レーザ光としては、エキシマレーザ、赤外レーザを
用いることができ、エキシマレーザ光を用いる場合は、
中間転写体2として、波長230nm〜260nmの光
の透過率が20%以上ある材料を用い、また、赤外レー
ザ光を用いる場合は、700nm〜1250nmの光の
透過率が20%以上の材料を中間転写体として用いる。
レーザ光の照射エネルギーとしては、好ましくは50〜
1000mJ/cm2 である。
【0037】エキシマレーザ光を用いて剥離する場合、
中間転写体2としては、230nm〜260nm付近に
透光性があり、圧電膜アレイの焼成の際に900℃以上
の温度に耐えられる材料であれば、本方式の中間転写体
として充分な機能を果たし、例えば、MgO基板やアル
ミナ、サファイア、石英ガラス、CaCO3 、LiF等
を使用することができる。また、炭酸ガスレーザ、YA
Gレーザ等の赤外レーザを用いて剥離する場合には、7
00nm〜1250nm付近に透光性があり、圧電膜ア
レイの焼成の際に900℃以上の温度に耐えられる材料
であれば、本方式の中間転写体として充分な機能を果た
すことができ、例えば、MgO、MgF 2 、Y23
CaF2 、石英ガラス、アルミナ、サファイア、SrT
iO3 単結晶基板等を使用することができる。
【0038】以上のような工程により、図1の(d)に
示すような圧電膜1と振動板構造体8が接合された圧電
膜型アクチュエータを形成することができる。なお、同
図(d)において、4は、多孔質層3上に成膜されてい
た電極であり、アクチュエータの上部電極として使用さ
れる。
【0039】以上のように圧電膜型アクチュエータを製
造することにより、圧電膜1を形成する工程と圧電膜1
を振動板構造体8に接合する工程が分離され、圧電膜1
の成膜プロセスとアクチュエータの製造プロセスが機能
分離されていることより、アクチュエータとしての振動
板構造体8の材料を幅広く選択出来ることができ、さら
に圧電膜1の性能を任意に調整した膜を得ることができ
る利点がある。
【0040】圧電膜と振動板構造体の接合に際して、接
合の加熱温度を500℃以下の低温とすることができ、
また、接合層の表面粗度Raを0.01μm〜2.5μ
mとし、金属、合金、金属酸化物、金属窒化物、または
金属間化合物を介して、通電加熱、低温加熱、あるいは
通電圧接等により接合することによって、接着剤を用い
ることなく、接合強度および耐久性を向上させることが
でき、信頼性の高い圧電膜型アクチュエータを得ること
ができる。さらに、中間転写体を、多孔質層を介して機
械的にあるいはレーザ光の照射により、容易にかつ圧電
膜や電極を損傷させることなく剥離することができ、中
間転写体を再利用することが可能となる。
【0041】これにより、低駆動電圧で大変位が得ら
れ、応答速度が速く、発生力の大きい、大面積化・高集
積化が可能である素子を得ることができる。このよう
に、信頼性の高い大面積の圧電膜型アクチュエータを作
製することができ、液体噴射ヘッドの他に、マイクロホ
ン、スピーカーなどの発音体、各種振動子・発振子、さ
らには加速度センサー、圧力センサー、振動センサー、
角速度センサー等の各種センサーに好適に用いることが
できる。
【0042】次に、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法
について、図2ないし図8を参照して説明する。
【0043】本発明の製造方法により作製される液体噴
射ヘッド11は、図2の(a)および(b)に示すよう
に、複数の液吐出口12と、各液吐出口12に対応して
設けられた液室13と、液室13に対してそれぞれ設け
られた圧電膜14と振動板17からなる圧電膜型アクチ
ュエータ19を備えて以下のように構成される。なお、
本図面では、液吐出口12が下面側に設けられている
が、側面側に設けることもできる。
【0044】液体噴射ヘッド11において、液吐出口1
2は、ノズルプレート15に所定の間隔をもって形成さ
れ、液室13は、基板部16に液吐出口12にそれぞれ
対応するように並列して形成されており、各液吐出口1
2とそれに対応する液室13は、基板部16に形成され
た液流路16aを介して接続される。また、基板部16
の上面には各液室13にそれぞれ対応して開口部16b
が形成され、基板部16の上面には開口部16bを塞ぐ
ように振動板17が配置され、この振動板17の上に各
液室13に対応して位置するように圧電膜14が配設さ
れている。
【0045】また、圧電膜14は、図2の(c)に示す
ように、その上下の面にそれぞれPt、Au、Al、金
属酸化物等の電極18が位置付けられ、振動板17上に
配置されている。圧電膜14の組成としては、前述した
ように、鉛、チタン、ジルコニウムから構成される酸化
物であるペロブスカイト構造をもつチタン酸ジルコン酸
鉛(PZT)、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸
バリウム、あるいはそれらにMn,Nb,La,Ge等
を添加した組成でも良い。このように電極18が形成さ
れた圧電膜14と振動板17とによって圧電膜型アクチ
ュエータ(圧電振動部)19が構成される。
【0046】液体噴射ヘッド11は、前述した圧電膜型
アクチュエータの製造方法と同様の方法で製造されるデ
バイスであり、特に、圧電膜は高密度に並列して形成さ
れるとともに、振動板と基板部で構成する振動板構造体
の基板部に形成する液室も圧電膜と同様に高密度に並列
されている。なお、基板部は、アクチュエータの作製時
には、液室が予め形成された加工済みの基板であっても
よく、あるいは、液室が未加工の基板であってもよい。
また、基板部は、振動板と一体成形されたものであって
も良く、振動板に接合されたものでも良い。基板部に形
成する液室は、液体が流れ込む空間として、機械加工、
あるいはエッチングにより作製され、この液室は矩形で
あっても楕円形状等でも良い。また、この液室は液体タ
ンクから液体が供給される液流路と連結される。また、
液室と液体タンクの間には逆流防止の加工がされていて
も良い。
【0047】また、複数の圧電膜と振動板構造体の液室
はそれぞれ対応するように構成されるが、圧電膜の寸法
精度のばらつきを±5%以内に抑えるように寸法精度の
揃った液体噴射ヘッドを形成することができる。ここ
で、圧電膜の寸法精度とは、圧電膜の幅、長さ、高さに
おいて、各ばらつきが±5%以内にあることをいう。
【0048】振動板構造体と圧電膜の接合強度およびア
クチュエータや液体噴射ヘッドとしての耐久性を向上さ
せるために、圧電膜を振動板に接合するための接合層の
表面粗度Raが0.01μm〜2.5μmにあることが
好ましく、接合層の表面粗度Raが前記範囲に入ること
により、各素子間の変位量や振動特性のばらつきの少な
いデバイスを得ることができる。ここで、変位量のばら
つきが少ないとは、振動板の最大変位量のばらつきが±
7%以内に入ることを意味する。また、振動特性のばら
つきが少ないとは、周波数10kHz〜25kHzの間
で変位量の増減量が各素子間で一定であることを意味す
る。
【0049】次に、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法
の詳細について、具体的な実施例を挙げてさらに説明す
る。
【0050】図3ないし図7は、本発明の液体噴射ヘッ
ドの製造方法の具体的な第1の実施例における各工程を
図示する概略図である。
【0051】圧電膜を中間転写体上に形成する工程にお
いては、中間転写体22として、板厚1mm、縦横5c
m×1cmのMgO多結晶基板を用いる。MgO中間転
写体22上に、光感光性の樹脂20aを用いて、図3の
(a)および(b)に示すような300dpiの密度間
隔の短冊状の鋳型20を形成する。
【0052】MgO中間転写体22上に形成された鋳型
20の間に、図3の(c)に示すように、先ず、主成分
がアルミナの層と主成分がジルコニアの層を積層して多
孔質層(23)を形成する。そして、その上にSrRu
3 を主成分とした電極ペースト(24)とPZT(チ
タン酸ジルコン酸鉛)ペースト(21)をスクリーン印
刷によりレジストからなる鋳型20に埋め込み、その後
に、100℃〜150℃で乾燥処理を行い、1200℃
で本焼成を行う。この本焼成と同時に樹脂20aを燃焼
させる。これにより、図4に示すように、300dpi
の密度間隔の短冊状のPZT圧電膜21が並列したPZ
Tアレイを形成した。
【0053】次の中間転写体上の圧電膜と振動板構造体
を接合する工程において、圧電膜21に接合する振動板
構造体28は、図5に図示するように、BドープのSi
振動板25と液室29が形成されているSi基板部26
とで構成されており、この振動板構造体28と図4に示
すように形成されたPZTアレイの接合に際しては、図
6に示すように、PZTアレイの圧電膜21の表面にP
dの接合層31(表面粗度Raが0.1μm)を成膜す
るとともに、Si振動板25の表面にPd層31とIn
層32の接合層を順次成膜する。そして、それらを当接
させた後に、250℃に加熱してPdIn3 の合金層3
3(図7参照)を形成して圧電膜21と振動板25を接
合した。
【0054】そして、中間転写体を圧電膜から剥離する
工程において、MgO中間転写体22を電極24および
圧電膜21から剥離する。本実施例ではMgO中間転写
体22と電極24の間には多孔質層(アルミナとジルコ
ニアの積層)23を形成してあることにより、機械的に
容易に剥離することが可能であった。また、圧電膜21
の上には電極層24が損傷することなく積層されてい
た。
【0055】本実施例では25.4mm(1インチ)当
り300本のPZT圧電膜21のアレイを形成し、それ
を寸法変動なく、振動板構造体28上に転写接合するこ
とが可能であった。こうして作製したアクチュエータの
寸法のばらつきは±2.5%以内であった。
【0056】最後に、ノズル(液吐出口)35を液室2
9に対応するように配列して形成されたシリコン製のノ
ズルプレート34を、図7に示すように、振動板構造体
28に接合することで、長尺でかつ高密度の液体噴射ヘ
ッド(図2も参照)が作製できた。なお、図7におい
て、24はSrRuO3 からなる上部電極である。
【0057】また、接合合金層33として、接合する片
面にそれぞれPd、Inを単層成膜して接合することも
可能であったし、また、In/Pdの積層を接合する両
面につけて接合することもできた。
【0058】以上のように作製された液体噴射ヘッドに
おいては、18Vの駆動電圧、15kHzの周波数で、
液体を12m/sの速度で安定して吐出させることがで
きた。
【0059】次に、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法
の具体的な第2の実施例について図8を参照して説明す
る。
【0060】本実施例における圧電膜を中間転写体上に
形成する工程においては、図8の(a)に示すように、
単結晶MgOの中間転写体(230〜260nmの平均
透過率65%)52上に、約0.4μmのAl23
子と約0.3μmのZrO2粒子を等量混合した分散液
をSiのアルコキサイドのゾル液に加えて塗布し、これ
に対して最高温度430℃で加熱処理を行い、有機成分
を燃焼除去させて、密度が92%の9μm厚の多孔質層
53を形成した。
【0061】この多孔質層53の上に、1100℃の焼
結処理により、12μm厚のLaNiO3 膜(抵抗値1
×10-2Ω・cm)54とPMN−PZT膜51を形成
した。この上に表面粗度Raが0.5μmの160nm
のPd層61をスパッタ成膜し、さらに900nmのI
n層62をのせた。
【0062】また、図8の(b)に示すように、200
μm厚のSUS基板56の上に5μm厚のZrO2 振動
板(ヤング率:192GPa)55を積層した振動板構
造体58を準備した。この振動板57上に100nmの
Pd層61(表面粗度Raが0.8μm)を成膜した。
【0063】次いで、図8の(c)に示すように、PZ
T圧電膜51と振動板構造体58とを重ね、2×103
kPaの圧力をかけ、200℃で30分間加熱処理を行
い、PdIn3 の合金層63を形成して接合した。
【0064】その後、図8の(d)に示すように、ウォ
ータージェット法で15×104 kPaの圧力でウォー
タージェット65を多孔質層53に噴射して、多孔質層
53を崩壊させた。これにより、MgO中間転写体52
を電極54の層から容易に剥離することができた(図8
の(e)参照)。
【0065】その後に、図8の(f)に示すように、振
動板構造体58の上に接合した圧電膜51および電極5
4をエッチング処理により180dpiの解像度でパタ
ーニングした後、SUS基板56もエッチングにより圧
電膜51の下部に液室59を作製した。そして、液吐出
口(ノズル)67を液室59に対応するように配列して
形成されたシリコン製のノズルプレート66を振動板構
造体58に接合することで、長尺でかつ高密度の液体噴
射ヘッドデバイスが形成でき、圧電膜型アクチュエータ
を備える液体噴射ヘッド(図2も参照)を得た。ZrO
2 振動板55と圧電膜51の接合強度も強固であり、駆
動電圧20V、周波数15kHzで10 7 回の耐久試験
を行っても変位量の低減はほとんどなかった。
【0066】また、圧電膜51をパターニングしてアレ
イ状にした後に振動板構造体58に接合し、ウォーター
ジェット法により中間転写体52を剥離した場合も、同
様に良好な圧電膜型アクチュエータを得ることができ
た。また、接続層にSiO2 を用い450℃加熱処理に
より接合させた場合やSi34 を用い500℃で接合
させた場合も強固な接合強度が得られた。
【0067】次に、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法
の具体的な第3の実施例について説明する。
【0068】本実施例においては、MgO中間転写体
(230〜260nmの平均透過率65%)上に形成し
たアレイ状の圧電膜を用い、前述した第2の実施例と同
様に、このアレイ状圧電膜を振動板構造体に接合した後
にMgO中間転写体を剥離する手段としてレーザ光を用
いた。
【0069】MgO中間転写体側から圧電膜が付着した
部分に約300mJ/cm2 のエネルギーでエキシマレ
ーザ光を照射した。すべての圧電膜部分に照射し、室温
下放置した後、MgO中間転写体を剥離したところ容易
に圧電膜から分離することができた。また、YAGレー
ザ光でも400mJ/cm2 のエネルギーで同様に剥離
が確認できた。
【0070】その後に、アレイ状の圧電膜にポリマーの
保護膜をつけた後、SUS基板をエッチングして液室を
作製し、そして、圧電膜の保護膜を除去した後に、圧電
膜をイオンミリングで洗浄、加熱処理の工程を経て、圧
電膜型アクチュエータを得た。
【0071】このように作製した圧電膜型アクチュエー
タにおいても、駆動電圧20Vで周波数30kHzまで
十分な変位量が確認された。また、駆動電圧の周波数に
対して対応良い変位が確認された。これを前述した実施
例と同様に液体噴射ヘッドヘッドを作製し、吐出検討を
行ったところ、駆動電圧20V、周波数18kHzで1
3m/sの速度で安定して液滴を吐出させることができ
た。
【0072】次に、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法
の具体的な第4の実施例について説明する。
【0073】本実施例においては、圧電膜として、前述
した第2の実施例と同様に作製した圧電膜を用いて、振
動板構造体としては第1の実施例と同様に作製した振動
板構造体を用い、これらの接合を通電圧接法により接合
した。圧電膜にNi層の接合層をつけ、振動板側にAg
層を設けたのち、2.0×103 kPaの加圧下で振動
板側から圧電膜の端面へ20Aの電気を流した。接合処
理後、第2の実施例と同様にウォータージェットを多孔
質層に噴射しウォータージェット法で剥離した。このよ
うにして作製された圧電膜型アクチュエータは、駆動電
圧30Vで十分な変位を示した。
【0074】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
圧電膜を振動板構造体に直接成膜するのではなく中間転
写体を介在させて圧電膜を形成するものであって、圧電
膜を形成する工程と圧電膜を振動板構造体に接合する工
程が分離され、圧電膜の成膜プロセスとアクチュエータ
の製造プロセスが機能分離されていることより、圧電膜
と振動板構造体の接合の加熱温度を500℃以下の低温
とすることができ、アクチュエータとしての振動板構造
体の材料を幅広く選択することができ、圧電膜の性能を
任意に調整した膜を得ることができる利点がある。ま
た、圧電膜と振動板構造体の接合に際して、金属、合
金、金属酸化物、金属窒化物、または金属間化合物から
なる接合層を介して、通電加熱、低温加熱、あるいは通
電圧接により接合することによって、そして、接合層の
表面粗度Raを0.01μm〜2.5μmとして接合す
ることによって、接着剤を用いることなく、接合強度お
よび耐久性を向上させることができ、信頼性の高い圧電
膜型アクチュエータを得ることができる。
【0075】さらに、圧電膜を形成した中間転写体を剥
離する際に、圧電膜上には電極が残された状態で剥離を
起こすため、これを圧電膜型アクチュエータの上部電極
として利用することができ、プロセス上簡便な方法とな
る。また、機械的にあるいはレーザ光の照射によって、
圧電膜や電極を損傷させることなく容易に中間転写体を
剥離することができ、これにより、剥離後に圧電膜上へ
の電極の作製を不要にするとともに中間転写体を再利用
することが可能となる。
【0076】このように、低駆動電圧で大変位が得ら
れ、応答速度が速く、発生力の大きい、大面積化・高集
積化が可能な圧電膜型アクチュエータを得ることができ
る。
【0077】さらに、低駆動電圧で大変位が得られ、高
速応答が可能で安定した信頼性の高い長尺で高密度の液
体噴射ヘッドを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電膜型アクチュエータの製造方法の
主要工程を示す工程図である。
【図2】(a)は本発明の製造方法により作製される液
体噴射ヘッドの斜視図であり、(b)は同(a)のA−
A線に沿って破断して示す断面図であり、(c)は液体
噴射ヘッドにおける圧電膜型アクチュエータを拡大して
示す部分断面図である。
【図3】本発明の液体噴射ヘッドの製造方法の一実施例
における中間転写体上に圧電膜を形成する工程を示す図
であり、(a)は中間転写体に樹脂パターンを形成した
状態を示す上面図であり、(b)は(a)における線B
−Bに沿った断面図であり、(c)は中間転写体上に形
成された鋳型の間に多孔質層、電極ペーストおよび圧電
膜ペーストを埋め込んだ状態を示す断面図である。
【図4】本発明の液体噴射ヘッドの製造方法の一実施例
における中間転写体上に圧電膜を形成する工程により、
圧電膜をアレイ状に形成した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の液体噴射ヘッドの製造方法の一実施例
における圧電膜に接合する振動板構造体の斜視図であ
る。
【図6】本発明の液体噴射ヘッドの製造方法の一実施例
における圧電膜と振動板構造体を接合する工程を示す断
面図である。
【図7】本発明の液体噴射ヘッドの製造方法の一実施例
において作製された液体噴射ヘッドの断面図である。
【図8】本発明の液体噴射ヘッドの製造方法の他の実施
例について主要工程を概略的に示す工程図である。
【符号の説明】
1 圧電膜 2 中間転写体 3 多孔質層 4 電極 5 振動板 6 基板部 7a、7b 接合層 8 振動板構造体 9 接合合金層(下部電極) 11 液体噴射ヘッド 12 液吐出口 13 液室 14 圧電膜 15 ノズルプレート 16 基板部 17 振動板 18 電極 19 (圧電膜型)アクチュエータ 20 鋳型 21 (PZT)圧電膜 22 (MgO)中間転写体 23 多孔質層 24 電極 25 振動板 26 基板部 28 振動板構造体 29 液室 31、32 接合層 33 接合合金層 34 ノズルプレート 35 液吐出口 51 (PZT)圧電膜 52 (MgO)中間転写体 53 多孔質層 54 電極 55 (ZrO2 )振動板 56 (SUS)基板部 58 振動板構造体 59 液室 63 接合合金層 65 ウォータージェット 66 ノズルプレート 67 液吐出口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 香川 豊 東京都立川市柴崎町4丁目6番33号 Fターム(参考) 2C057 AF55 AF65 AF93 AG12 AG44 AP02 AP14 AP21 AP23 AP27 AP31 AQ02

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧電膜と振動板構造体とが接合された圧
    電膜型アクチュエータの製造方法において、圧電膜を中
    間転写体上に形成された電極上に形成する工程と、中間
    転写体上の圧電膜と振動板構造体を接合層を介して接合
    する工程と、中間転写体を電極から剥離する工程を含む
    ことを特徴とする圧電膜型アクチュエータの製造方法。
  2. 【請求項2】 電極が金属および/または金属酸化物で
    あることを特徴とする請求項1記載の圧電膜型アクチュ
    エータの製造方法。
  3. 【請求項3】 圧電膜がパターニングされていることを
    特徴とする請求項1または2記載の圧電膜型アクチュエ
    ータの製造方法。
  4. 【請求項4】 接合層の表面粗度Raが0.01μm〜
    2.5μmであることを特徴とする請求項1ないし3の
    いずれか1項に記載の圧電膜型アクチュエータの製造方
    法。
  5. 【請求項5】 接合層が、金属単体、合金、金属酸化
    物、金属窒化物または金属間化合物であることを特徴と
    する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の圧電膜型
    アクチュエータの製造方法。
  6. 【請求項6】 中間転写体を電極から剥離する工程にお
    いて、中間転写体側からレーザ光を照射して、該中間転
    写体を剥離することを特徴とする請求項1ないし5のい
    ずれか1項に記載の圧電膜型アクチュエータの製造方
    法。
  7. 【請求項7】 レーザ光が、エキシマレーザ光であるこ
    とを特徴とする請求項6記載の圧電膜型アクチュエータ
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 レーザ光が、赤外レーザ光であることを
    特徴とする請求項6記載の圧電膜型アクチュエータの製
    造方法。
  9. 【請求項9】 中間転写体は波長230nm〜260n
    mの透過率が20%以上であることを特徴とする請求項
    7記載の圧電膜型アクチュエータの製造方法。
  10. 【請求項10】 中間転写体は波長700nm〜125
    0nmの透過率が20%以上であることを特徴とする請
    求項8記載の圧電膜型アクチュエータの製造方法。
  11. 【請求項11】 中間転写体を電極から剥離する工程に
    おいて、束状の流体を中間転写体と電極の間に噴射し
    て、該中間転写体を剥離することを特徴とする請求項1
    ないし5のいずれか1項に記載の圧電膜型アクチュエー
    タの製造方法。
  12. 【請求項12】 中間転写体と電極との間に多孔質層が
    形成されていることを特徴とする請求項1ないし5およ
    び11のいずれか1項に記載の圧電膜型アクチュエータ
    の製造方法。
  13. 【請求項13】 多孔質層は金属酸化物を含有すること
    を特徴とする請求項12記載の圧電膜型アクチュエータ
    の製造方法。
  14. 【請求項14】 液吐出口と、該液吐出口に接続された
    液室と、該液室の一部に設けられた振動板と圧電膜から
    なる圧電膜型アクチュエータとを備え、前記圧電膜型ア
    クチュエータを作動させることにより液吐出口から液体
    を吐出させる液体噴射ヘッドの製造方法において、中間
    転写体上に形成された電極上に圧電膜を形成する工程
    と、中間転写体上の圧電膜と振動板構造体を接合層を介
    して接合する工程と、中間転写体を電極から剥離する工
    程を含むことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
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