JP2008041826A - アクチュエータ装置及びその製造方法並びに液体噴射ヘッド - Google Patents

アクチュエータ装置及びその製造方法並びに液体噴射ヘッド Download PDF

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Abstract

【課題】圧電素子の破壊を防止すると共に優れた変位特性を有するアクチュエータ装置及びその製造方法並びに液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】基板10上に変位可能に設けられた下電極60、圧電体層70及び上電極80からなる圧電素子300を具備し、前記圧電体層70が、前記下電極60の端部の外側まで設けられていると共に、前記下電極60の前記端部に、前記圧電素子300の外側に向かって厚さが段階的に漸小する側面部61を設け、該側面部61を前記基板の面方向と同一方向の第1の面62と、該第1の面62に垂直な第2の面63とで画成された階段状に形成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、基板上に変位可能に設けられた圧電素子を具備するアクチュエータ装置及びその製造方法並びに液体噴射ヘッドに関する。
電圧を印加することにより変位する圧電素子を具備するアクチュエータ装置は、例えば、液滴を噴射する液体噴射装置に搭載される液体噴射ヘッドの液体吐出手段として用いられる。このような液体噴射ヘッドとしては、例えば、ノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドが知られている。
このようなアクチュエータ装置としては、基板上に設けられて所定形状にパターニングされた下電極と、下電極上に下電極の端面を覆うように設けられた圧電体層と、圧電体層上に設けられた上電極とからなる圧電素子を具備し、下電極の端面を基板の面に対して10〜50度の範囲で傾斜する傾斜面としたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、下電極の端面を傾斜面としても、下電極の端面に電界集中が発生し、圧電体層が破壊されてしまうという問題がある。
また、下電極の端面を傾斜面とした場合、傾斜面上に圧電体層をゾル−ゲル法又はMOD法等により形成すると、傾斜面上に形成された圧電体層の結晶粒子が傾いて成長し、歪な形状で形成されてしまうため、圧電体層の結晶が優先配向しておらず、変位特性が劣化してしまうという問題がある。
特開2005−35282号公報(第7及び8頁、第2及び3図)
本発明はこのような事情に鑑み、圧電素子の破壊を防止すると共に優れた変位特性を有するアクチュエータ装置及びその製造方法並びに液体噴射ヘッドを提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、基板上に変位可能に設けられた下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を具備し、前記圧電体層が、前記下電極の端部の外側まで設けられていると共に、前記下電極の前記端部には、前記圧電素子の外側に向かって厚さが段階的に漸小する側面部が設けられ、該側面部が、前記基板の面方向と同一方向の第1の面と、該第1の面に垂直な第2の面とで画成された階段状に形成されていることを特徴とするアクチュエータ装置にある。
かかる第1の態様では、下電極の端部に階段状の側面部を設けることで、下電極の端部の抵抗を他の領域に比べて高くして、下電極の端部に印加される電界を弱めることができ、電界集中を防止できる。これにより、圧電素子全体の変位を小さくすることなく、下電極の端部近傍での変位を小さくして、下電極の端部に対応する領域の応力集中を分散させることができ、圧電素子及び振動板にクラックなどの破壊が発生するのを防止することができると共に、圧電素子の各層の剥離を防止することができる。また、下電極の圧電体層によって覆われた端部に階段状の側面部を設けることで、側面部の第1の面上に圧電体層の結晶を垂直に形成することができる。これにより、圧電体層全体の結晶を菱面体晶系の(100)又は(111)に優先配向させることができ、圧電素子の変位特性を向上することができる。
本発明の第2の態様は、前記下電極の前記端部が、当該下電極の長手方向の両端部であることを特徴とする第1の態様のアクチュエータ装置にある。
かかる第2の態様では、下電極の端部によって圧電素子の長手方向の両端部を規定することができる。
本発明の第3の態様は、前記側面部の前記第1の面が、前記圧電体層の結晶粒径よりも大きな幅で形成されていることを特徴とする第1又は2の態様のアクチュエータ装置にある。
かかる第3の態様では、第1の面を圧電体層の結晶粒径よりも大きな幅で形成することで、第1の面上に確実に圧電体層の結晶を垂直に形成することができる。
本発明の第4の態様は、前記第1の面が、2〜300μmの幅で形成されていることを特徴とする第1〜3の何れかの態様のアクチュエータ装置にある。
かかる第4の態様では、第1の面を圧電体層の結晶粒径よりも大きな幅で形成することで、第1の面上に確実に圧電体層の結晶を垂直に形成することができる。
本発明の第5の態様は、前記圧電体層は、結晶が前記基板に対して柱状となっていることを特徴とする第1〜4の何れかの態様のアクチュエータ装置にある。
かかる第5の態様では、変位特性に優れた圧電体層とすることができる。
本発明の第6の態様は、前記圧電素子の長手方向における前記圧電体層の長さが、前記上電極に向かって漸小し、その側面が傾斜面となっていることを特徴とする第1〜5の何れかの態様のアクチュエータ装置にある。
かかる第6の態様では、圧電素子の側面を傾斜面とすることで、圧電素子を耐湿度性の保護膜で覆う場合や、圧電素子から引き出されたリード電極等を設ける場合などに、保護膜やリード電極のカバレッジを向上することができる。
本発明の第7の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が設けられた流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に前記圧力発生室に圧力変化を生じさせて前記ノズル開口から液体を噴射させる液体噴射手段として第1〜6の何れかの態様のアクチュエータ装置とを具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第7の態様では、液体噴射特性及び耐久性に優れた液体噴射ヘッドを実現できる。
本発明の第8の態様は、基板上に変位可能に設けられた下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を具備し、前記圧電体層が、前記下電極の端部の外側まで設けられていると共に、前記下電極の前記端部には、前記圧電素子の外側に向かって厚さが段階的に漸小する側面部が設けられ、該側面部が、前記基板の面方向と同一方向の第1の面と、該第1の面に垂直な第2の面とで画成された階段状に形成されたアクチュエータ装置の製造方法であって、前記基板上に前記下電極を形成する工程と、前記基板の前記下電極上を含む一方面側に圧電体前駆体膜を塗布し、該圧電体前駆体膜を焼成することで圧電体膜を形成する圧電体膜形成工程を複数回繰り返し行って複数層の前記圧電体膜からなる前記圧電体層を形成する工程と、該圧電体層上に前記上電極を形成する工程とを具備し、前記圧電体層を形成する工程では、前記圧電体膜形成工程で前記圧電体膜を形成する毎に、当該圧電体膜と前記下電極の厚さ方向の一部とをエッチングにより除去して、前記下電極の前記端部に前記第1の面と前記第2の面とを形成する除去工程を行うことで、前記下電極の前記端部に前記側面部を形成することを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第8の態様では、下電極の端部に階段状の側面部を容易に且つ高精度に形成することができると共に、側面部上に圧電体膜を形成するようにしたため、側面部上に垂直に結晶を成長させて、圧電体膜を形成することができる。これにより、圧電体層全体の結晶粒子を均一に成長させて形成して、圧電体層全体の結晶を菱面体晶系の(100)又は(111)に優先配向させることができ、圧電素子の変位特性を向上することができる。また、2回目以降の圧電体膜の成膜時に、圧電体膜の下地として全面に下電極が形成されているため、圧電体前駆体膜の焼成温度にばらつきが生じるのを防止して、圧電体膜の結晶化を均一に行うことができる。
本発明の第9の態様は、2回目以降の前記除去工程では、前回の除去工程で形成した前記第2の面よりも前記圧電素子の長手方向の外側を、前回の除去工程で除去した当該下電極の厚さよりも厚く除去することを特徴とする第8の態様のアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第9の態様では、側面部を容易に且つ高精度に形成することができる。
本発明の第10の態様は、前記除去工程では、反応性イオンエッチングを行うことを特徴とする第8又は9の態様のアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第10の態様では、基板の面方向と同一方向の第1の面と、第1の面に垂直な第2の面とを有する階段状の側面部を容易に且つ高精度に形成することができる。
本発明の第11の態様は、前記上電極を形成する工程の後に、当該上電極と前記圧電体層とをエッチングすることによりパターニングすることを特徴とする第8〜10の何れかの態様のアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第11の態様では、圧電素子を高密度に配設することができる。
本発明の第12の態様は、基板上に変位可能に設けられた下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を具備し、前記圧電体層が、前記下電極の端部の外側まで設けられていると共に、前記下電極の前記端部には、前記圧電素子の外側に向かって厚さが段階的に漸小する側面部が設けられ、該側面部が、前記基板の面方向と同一方向の第1の面と、該第1の面に垂直な第2の面とで画成された階段状に形成されたアクチュエータ装置の製造方法であって、前記基板上の全面に亘って前記下電極を形成すると共に、該下電極をパターニングすることにより、当該下電極の端部に前記側面部を形成する工程と、前記下電極上に前記側面部の外側まで前記圧電体層を形成する工程と、前記圧電体層上に前記上電極を形成する工程とを具備することを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第12の態様では、下電極の端部に階段状の側面部を容易に且つ高精度に形成することができると共に、側面部上に圧電体膜を形成するようにしたため、側面部上に垂直に結晶を成長させて、圧電体膜を形成することができる。これにより、圧電体層全体の結晶粒子を均一に成長させて形成して、圧電体層全体の結晶を菱面体晶系の(100)又は(111)に優先配向させることができ、圧電素子の変位特性を向上することができる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図であり、図3は、図2の要部拡大断面図である。
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化によって二酸化シリコンからなる厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、インク供給路14と連通路15とが隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられている。
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、リザーバ100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお、このように、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。さらに、各連通路15は、インク供給路14の圧力発生室12とは反対側に連通し、インク供給路14の幅方向(短手方向)より大きい断面積を有する。本実施形態では、連通路15を圧力発生室12と同じ断面積で形成した。
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、圧力発生室12の短手方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の短手方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路15とが複数の隔壁11により区画されて設けられている。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、厚さが例えば約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.1μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部320という。
本実施形態では、下電極膜60を複数の圧電素子300に亘って設けることで、下電極膜60を複数の圧電素子300の共通電極とし、圧電体層70及び上電極膜80を各圧電素子300毎に設けることで上電極膜80を各圧電素子300の個別電極としている。なお、本実施形態では、下電極膜60を複数の圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を各圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室12毎に圧電体能動部320が形成されていることになる。
また、図2及び図3に示すように、本実施形態では、下電極膜60は、複数の圧電素子300に亘って設けられているが、当該下電極膜60の圧力発生室12の長手方向に相当する方向を長手方向とし、圧力発生室12の幅方向に相当する方向を下電極膜60の短手方向(幅方向)とする。そこで、下電極膜60の長手方向の端部を圧力発生室12に相対向する領域内に設けることで、圧電素子300の実質的な駆動部となる圧電体能動部320の長手方向の端部(長さ)を規定している。また、圧電素子300の短手方向である上電極膜80の短手方向の端部を圧力発生室12に相対向する領域内に設けることで、圧電体能動部320の短手方向の端部(幅)を規定している。すなわち、圧電体能動部320は、パターニングされた下電極膜60及び上電極膜80によって、圧力発生室12に相対向する領域にのみ設けられていることになる。さらに、圧電体層70及び上電極膜80は、圧電素子300の長手方向で、下電極膜60の両端部の外側まで延設されて設けられており、下電極膜60の長手方向の両端面は、圧電体層70によって覆われている。
また、下電極膜60の圧電体層70によって覆われた端部、すなわち、圧電素子300の長手方向である下電極膜60の両端部には、圧電素子300の外側に向かって厚さが段階的に漸小する側面部61が設けられている。
側面部61は、流路形成基板10の圧電素子300が設けられた面方向と同一方向の第1の面62と、第1の面62(又は弾性膜50)に対して垂直な第2の面63とで画成された階段状に設けられている。本実施形態では、側面部61に第1の面62が2つ設けられた2段の階段状の段差を設けるようにした。
このような側面部61の第1の面62は、図3に示すように、その幅w、すなわち、隣接する第2の面63の間の第1の面62の幅wは、圧電体層70の結晶粒径よりも大きな幅で形成されている。圧電体層70としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて、圧電体層70を詳しくは後述するゾル−ゲル法又はMOD法により形成した際には、圧電体層70の1つの結晶粒径は、2〜300μmとなるため、第1の面62の幅wは、圧電体層70の1つの結晶が乗る大きさである2〜300μmの幅で形成するのが好ましい。
このように、下電極膜60の圧電体層70によって覆われた端部に階段状の側面部61を設けることで、側面部61の第1の面62上に圧電体層70の結晶を垂直に形成することができる。これにより、圧電体層70全体の結晶を菱面体晶系の(100)又は(111)に優先配向させることができ、圧電素子300の変位特性を向上することができる。
また、下電極膜60の長手方向の端部に階段状の側面部61を設けることで、下電極膜60の端部の抵抗を他の領域に比べて高くして、下電極膜60の端部(側面部61)に印加される電界を弱めることができ、電界集中を防止することができる。これにより、圧電素子300全体の変位を小さくすることなく、下電極膜60の端部近傍での変位を小さくして、下電極膜60の端部への応力集中を分散させることができ、圧電素子300及び振動板にクラックなどの破壊が発生するのを防止することができると共に、圧電素子300の各層の剥離を防止することができる。なお、このような圧電体層70のクラック等の破壊は、例えば、下電極膜の端面を傾斜した傾斜面で形成すると、下電極膜の傾斜面上に圧電体層70の結晶が流路形成基板10に対して垂直に形成されるのではなく、当該流路形成基板50に対して斜めに形成され、圧電体層の下電極膜の端部に相対向する領域に結晶が斜めに形成された結晶性の悪い領域が存在する場合に頻繁に発生するが、本実施形態では、上述のように、下電極膜60の端部に階段状の側面部61を設け、側面部61上に結晶が流路形成基板10に対して垂直に形成された圧電体層70を設けたため、結晶性が悪い領域が存在することなく、圧電体層70の破壊を防止することができる。
また、本実施形態では、圧電体層70及び上電極膜80が、図2に示すように、上電極膜80側の幅が狭くなるようにパターニングされ、その側面は傾斜面となっている。
さらに、ここでは、圧電素子300を所定の基板上(流路形成基板10上)に設け、当該圧電素子300を駆動させた装置をアクチュエータ装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、下電極膜60のみが振動板として作用するようにしてもよい。
なお、圧電体層70は、下電極膜60上に形成される電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜である。圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO)ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O)等を用いることができる。圧電体層70の厚さについては、製造工程でクラックが発生しない程度に厚さを抑え、且つ十分な変位特性を呈する程度に厚く形成する。例えば、本実施形態では、圧電体層70を1〜2μm前後の厚さで形成した。
さらに、圧電素子300の個別電極である各上電極膜80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、下電極膜60、弾性膜50及びリード電極90上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバ部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路200が固定されている。この駆動回路200としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路200とリード電極90とは、ボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線210を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路200からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図4〜図10を参照して説明する。なお、図4〜図10は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す圧力発生室の長手方向の断面図である。まず、図4(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO)からなる二酸化シリコン膜51を形成する。なお、本実施形態では、流路形成基板用ウェハ110として、膜厚が約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハを用いている。
次いで、図4(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜55を形成する。
次いで、図4(c)に示すように、例えば、白金及びイリジウムからなる下電極膜60を絶縁体膜55の全面に亘って形成する。下電極膜60は、例えば、スパッタリング法により形成することができる。
次に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛に限定されず、例えば、リラクサ強誘電体(例えば、PMN−PT、PZN-PT、PNN-PT等)の他の圧電材料を用いてもよい。また、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。
圧電体層70の具体的な形成手順としては、まず、図5(a)に示すように、下電極膜60上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜71を成膜する。すなわち、下電極膜60が形成された流路形成基板10上に金属有機化合物を含むゾル(溶液)を塗布する(塗布工程)。次いで、この圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜71を170〜180℃で8〜30分間保持することで乾燥することができる。また、乾燥工程での昇温レートは0.5〜1.5℃/secが好適である。なお、ここで言う「昇温レート」とは、加熱開始時の温度(室温)と到達温度との温度差の20%上昇した温度から、温度差の80%の温度に達するまでの温度の時間変化率と規定する。例えば、室温25℃から100℃まで50秒で昇温させた場合の昇温レートは、(100−25)×(0.8−0.2)/50=0.9[℃/sec]となる。
次に、乾燥した圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜71を300〜400℃程度の温度に加熱して約10〜30分保持することで脱脂した。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、NO、CO、HO等として離脱させることである。また、脱脂工程では、昇温レートを0.5〜1.5℃/secとするのが好ましい。
次に、図5(b)に示すように、圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜72を形成する(焼成工程)。焼成工程では、圧電体前駆体膜71を680〜900℃に加熱するのが好ましく、本実施形態では、680℃で5〜30分間加熱を行って圧電体前駆体膜71を焼成して圧電体膜72を形成した。また、焼成工程では、昇温レートを15℃/sec以下とするのが好ましい。このように、圧電体膜72を焼成により形成する際には、圧電体前駆体膜71を30分以上加熱するのが好ましい。これにより優れた特性の圧電体膜72を得ることができる。
なお、このような乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、ホットプレートや、赤外線ランプの照射により加熱するRTP(Rapid Thermal Processing)装置などを用いることができる。
そして、このような塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程からなる圧電体膜形成工程を複数回繰り返すことで、複数層の圧電体膜72からなる所定厚さの圧電体層70を形成する。例えば、ゾルの1回あたりの膜厚が0.1μm程度の場合には、例えば、10層の圧電体膜72からなる圧電体層70全体の膜厚は約1.1μm程度となる。
また、本実施形態では、図6(a)に示すように、圧電体膜形成工程によって、1層目の圧電体膜72を形成した段階で、圧電体膜72と下電極膜60の厚さ方向の一部とを同時にエッチングにより除去する(1回目の除去工程)。
1回目の除去工程では、下電極膜60の長手方向の端部に、流路形成基板用ウェハ110の面方向と同一方向の第1の面62aと、この第1の面62aに垂直な第2の面63aとをエッチングにより形成する。すなわち、下電極膜60の面方向の一部で、厚さ方向の一部を除去することにより、下電極膜60にエッチングされていない領域と、エッチングされることでエッチングされていない領域よりも厚さの薄い第1の面62aが設けられた領域とを形成し、これらエッチングされていない領域の表面と、第1の面62aとの間に第1の面62aに垂直な第2の面63aを形成する。
なお、1層目の圧電体膜72は、上述のように下電極膜60の全面に亘って形成するため、圧電体前駆体膜71を加熱して焼成する際に、圧電体前駆体膜71の下地として、下電極膜60が全面に設けられていることになり、圧電体前駆体膜71の加熱温度のばらつきをなくして、圧電体膜72の結晶化を均一にすることができ、優れた特性の圧電体膜72を得ることができる。
次に、図6(b)に示すように、上述した圧電体膜形成工程を繰り返し行って、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って複数層の圧電体膜72を形成する。本実施形態では、1回目の除去工程でエッチングした圧電体膜72上及び下電極膜60上に亘って3層の圧電体膜72を形成するようにした。
このとき、下電極膜60には、1回目の除去工程で、第1の面62aと第2の面63aとが設けられ、第1の面62a上の圧電体膜72は除去されているが、第2の面63aは流路形成基板用ウェハ110の面に対して垂直に形成されているため、圧電体膜72を1層目の圧電体膜72上及び下電極膜60の第1の面62a上に結晶粒子を均一に成長させて形成することができる。すなわち、第2の面63aは、第1の面62aに対して垂直に形成されているため、第2の面63aを基点として圧電体膜72の結晶粒子が成長することがなく、結晶粒子を均一に成長させて圧電体膜72を形成することができる。
また、圧電体膜72を形成する際に、圧電体膜72の下地として全面に下電極膜60が形成されているため、圧電体前駆体膜71を加熱する加熱温度にばらつきが生じるのを防止して、圧電体膜72の結晶化を均一にすることができ、優れた特性の圧電体膜72を得ることができる。
次に、図6(c)に示すように、図6(b)で形成した3層の圧電体膜72と下電極膜60の厚さ方向の一部を同時にエッチングにより除去する(2回目の除去工程)。
2回目の除去工程では、1回目の除去工程で形成した第2の面63aよりも外側に第2の面63bと、第1の面62bとをエッチングにより形成する。すなわち、2回目の除去工程では、下電極膜60の第1の面62aが設けられた領域を、1回目の除去工程で下電極膜60をエッチングにより除去した厚さよりも厚く除去する。これにより、下電極膜60には、エッチングされていない領域よりも厚さの薄い第1の面62aが設けられた領域と、第1の面62aが設けられた領域よりもさらに厚さの薄い第1の面62bが設けられた領域とが形成される。
次に、図7(a)に示すように、上述した圧電体膜形成工程を繰り返し行って、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って複数層の圧電体膜72を形成する。本実施形態では、2回目の除去工程でエッチングした圧電体膜72上及び下電極膜60上に亘って3層の圧電体膜72を形成するようにした。
このとき、下電極膜60には、2回目の除去工程で第1の面62bと第2の面63bとが設けられ、第1の面62b上の圧電体膜72は除去されているが、第2の面63bは流路形成基板用ウェハ110の面に対して垂直に形成されているため、圧電体膜72を圧電体膜72上及び下電極膜60の第1の面62b上に結晶粒子を均一に成長させて形成することができる。すなわち、第2の面63bは、第1の面62bに対して垂直に形成されているため、第2の面63bを基点として圧電体膜72の結晶粒子が成長することがなく、圧電体膜72及び第1の面63bを基点として結晶粒子を均一に成長させることができる。
また、圧電体膜72を形成する際に、圧電体膜72の下地として全面に下電極膜60が形成されているため、圧電体前駆体膜71を加熱する加熱温度にばらつきが生じるのを防止して、圧電体膜72の結晶化を均一にすることができ、優れた特性の圧電体膜72を得ることができる。
次に、図7(b)に示すように、図7(a)で形成した3層の圧電体膜72と下電極膜60の厚さ方向の一部を同時にエッチングにより除去する(3回目の除去工程)。
3回目の除去工程では、2回目の除去工程で形成した第2の面63bよりも外側をエッチングにより除去して第2の面63cを形成すると共に、下電極膜60を厚さ方向に貫通して絶縁体膜55に達するまでエッチングすることで下電極膜60をパターニングする。すなわち、3回目の除去工程では、下電極膜60の第1の面62bが設けられた領域を、2回目の除去工程で下電極膜60をエッチングにより除去した厚さよりも厚く、本実施形態では、下電極膜60を厚さ方向に完全に除去する。これにより、下電極膜60をパターニングして、下電極膜60の長手方向の端部に、圧電素子300の外側に向かって厚さが段階的に漸小すると共に、第1の面62a〜62b及び第2の面63a〜63cにより画成された階段状の側面部61を形成する。
なお、上述した1回目〜3回目の除去工程では、圧電体膜72上に所定形状に形成したレジスト等のマスクを介して反応性イオンエッチング(RIE)することにより第2の面63a〜63cを垂直に形成することができる。
次に、図7(c)に示すように、上述した圧電体膜形成工程を繰り返し行って、流路形成基板用ウェハ110の一方面側の全面に亘って複数層の圧電体膜72を形成して圧電体層70を形成する。本実施形態では、パターニングされた圧電体膜72上及び絶縁体膜55上に、圧電体膜72をさらに3層形成することで、合計10層の圧電体膜72からなる圧電体層70を形成した。
次に、図8(a)に示すように、例えば、イリジウム(Ir)からなる上電極膜80を流路形成基板用ウェハ110の全面に形成する。
そして、図8(b)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。本実施形態では、上電極膜80側の幅が狭くなるようにパターニングして、その側面を傾斜面とした。なお、圧電体層70及び上電極膜80のパターニングでは、上述した除去工程と同様に反応性イオンエッチングを用いてもよいが、圧電素子300の側面を傾斜面にするため、反応性イオンエッチングに限定されず、例えば、イオンミリング等のドライエッチングであってもよい。
このように、本実施形態では、圧電体膜72を形成してから、圧電体膜72と下電極膜60とをエッチングにより同時に除去し、その後、エッチングした下電極膜60上に圧電体膜72を形成する工程を繰り返し行うことで、下電極膜60の端部に階段状の側面部61を容易に且つ高精度に形成することができると共に、側面部61上に圧電体膜72を形成するようにしたため、側面部61上に垂直に結晶を成長させて、圧電体膜72を形成することができる。これにより、圧電体層70全体の結晶粒子を均一に成長させて形成して、圧電体層70全体の結晶を菱面体晶系の(100)又は(111)に優先配向させることができ、圧電素子300の変位特性を向上することができる。
また、7層目までの圧電体膜72を形成する際に、圧電体膜72の下地として全面に下電極膜60が形成されているため、圧電体前駆体膜71を加熱する加熱温度にばらつきが生じるのを防止して、圧電体膜72の結晶化を均一にすることができ、優れた特性の圧電体膜72を得ることができる。なお、8〜10層目の圧電体膜72を形成する際の下地は、下電極膜60が設けられた領域と、下電極膜60が存在しない絶縁体膜55のみが設けられた領域とが存在するが、8〜10層目の圧電体膜72は、下電極膜60の外側に形成された領域が、実質的に駆動する圧電体能動部320の外側の実質的に駆動しない非圧電体能動部となるため、この領域の圧電体膜72の結晶性は特に問題になることはなく、圧電体層70の下電極膜60上に設けられた領域は、結晶化が均一になっている。
次に、リード電極90を形成する。具体的には、図8(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングすることで形成される。このとき、上述のように圧電素子300の側面は傾斜面で形成されているため、リード電極90の付きまわりを向上して、均一な厚さのリード電極90を形成することができる。これにより、リード電極90の抵抗のばらつきや、断線等を防止することができる。
次に、図9(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の圧電素子300側に、シリコンウェハであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハ130を接着剤35を介して接合する。なお、この保護基板用ウェハ130は、例えば、400μm程度の厚さを有するため、保護基板用ウェハ130を接合することによって流路形成基板用ウェハ110の剛性は著しく向上することになる。
次に、図9(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研磨した後、さらにフッ硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みにする。例えば、本実施形態では、約70μm厚になるように流路形成基板用ウェハ110をエッチング加工した。
次いで、図9(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110のエッチング加工した面に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなるマスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図10に示すように、流路形成基板用ウェハ110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
(実施形態2)
図11及び図12は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す圧力発生室の長手方向の断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法としては、上述した実施形態1と同様に、上述した図4(a)及び図4(b)に示す工程を行うことで、流路形成基板用ウェハ110に弾性膜50、絶縁体膜55を形成した後、図11(a)に示すように、例えば、白金及びイリジウムからなる下電極膜60を絶縁体膜55の全面に亘って形成する。
次に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。具体的には、上述した実施形態1と同様に、図11(b)に示すように、下電極膜60上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜71を成膜する(塗布工程)。そして、この圧電体前駆体膜71を乾燥する乾燥工程、乾燥した圧電体前駆体膜71を脱脂する脱脂工程を行った後、図11(c)に示すように、脱脂した圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、1層目の圧電体膜72を形成する(焼成工程)。
次に、図12(a)に示すように、1層目の圧電体膜72と下電極膜60とを同時にエッチングすることによりパターニングする。このとき、例えば、圧電体膜72上に所定形状のマスクを形成して、このマスクを介してエッチングする工程を繰り返し行うことで、下電極膜60の端部に第1の面62と第2の面63とで画成された階段状の側面部61を形成する。
次に、図12(b)に示すように、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程からなる圧電体膜形成工程を繰り返し行うことで、流路形成基板用ウェハ110の一方面に複数層の圧電体膜72からなる圧電体層70を形成する。
次に、図13(a)に示すように、例えば、イリジウム(Ir)からなる上電極膜80を流路形成基板用ウェハ110の全面に形成する。
そして、図13(b)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。
その後は、上述した実施形態1の図8(c)〜図10に示す工程と同様の工程を行うことで、インクジェット式記録ヘッドを形成することができる。
このように、本実施形態では、下電極膜60をパターニングして階段状の側面部61を形成した後、側面部61上に複数層の圧電体膜72を形成するようにしたため、側面部61の第1の面62上に垂直に結晶を成長させて、圧電体膜72を形成することができる。これにより、圧電体層70全体の結晶粒子を均一に成長させて形成して、圧電体層70全体の結晶を菱面体晶系の(100)又は(111)に優先配向させることができ、圧電素子300の変位特性を向上することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、インクジェット式記録ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、除去工程を、圧電体膜72の1層目、4層目及び7層目で行うようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、1層の圧電体膜72を形成する毎に除去工程を行うようにしてもよく、複数層の圧電体膜72を形成する毎に除去工程を行うようにしてもよい。また、除去工程の回数は特に限定されず、側面部61の段数に応じて複数回行うようにすればよい。
また、上述した実施形態1では、圧電体前駆体膜71を塗布、乾燥及び脱脂した後、焼成して圧電体膜72を形成するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、圧電体前駆体膜71を塗布、乾燥及び脱脂する工程を複数回、例えば、2回繰り返し行った後、焼成することで圧電体膜72を形成するようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態1及び2では、下電極膜60として、白金及びイリジウムを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、下電極膜60の絶縁体膜55側の最下層に密着性を向上するチタン(Ti)等の密着層を設けるようにしてもよい。また、下電極膜60として、絶縁体膜55側から白金とイリジウムとを積層した構成としても、絶縁体膜55側からイリジウムと白金とを積層した構成としても、絶縁体膜55側からイリジウムと白金とイリジウムとを積層した構成としてもよい。何れの下電極膜60の構成であっても、下電極膜60の端部に階段状の側面部61を設けることで、下電極膜60の側面部61上に結晶が垂直に設けられた圧電体層70を形成することができる。
また、上述した実施形態1及び2の下電極膜60の圧電体層70を形成する表面に、厚さが、3.5〜5.5nmのチタン(Ti)からなる種チタン層を設けた後、下電極膜60上に圧電体層70を形成するようにしてもよい。このように種チタン層を設けることで、下電極膜60上に種チタン層を介して1層目の圧電体膜72を形成する際に、圧電体膜72の優先配向方位を(100)又は(111)に制御することができ、電気機械変換素子として好適な圧電体層70を得ることができる。なお、種チタン層は、圧電体膜72が結晶化する際に、結晶化を促進させるシードとして機能し、圧電体膜72の焼成後には圧電体膜72内に拡散するものである。また、上述した実施形態1及び2では、下電極膜60をエッチングにより除去した第1の面62a、62b上にも圧電体膜72を形成するが、種チタン層をスパッタリング法等により形成した際に、チタンは下電極膜60内に拡散されているため、下電極膜60の第1の面62a、62b上にもチタンを種として良好な結晶の圧電体膜72を形成することができる。
また、上述した実施形態1では、流路形成基板10として、結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、結晶面方位が(100)面のシリコン単結晶基板を用いるようにしてもよく、また、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
なお、上述した実施形態1では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載されるアクチュエータ装置及びその製造方法に限られず、他の装置に搭載されるアクチュエータ装置及びその製造方法にも適用することができる。
実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの要部拡大断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態2に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態2に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態2に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
符号の説明
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバ部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 60 下電極膜、 61 側面部、 62、62a、62b 第1の面、 63、63a、63b、63c 第2の面、 70 圧電体層、 72 圧電体膜、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 200 駆動回路、 210 接続配線、 300 圧電素子

Claims (12)

  1. 基板上に変位可能に設けられた下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を具備し、
    前記圧電体層が、前記下電極の端部の外側まで設けられていると共に、前記下電極の前記端部には、前記圧電素子の外側に向かって厚さが段階的に漸小する側面部が設けられ、該側面部が、前記基板の面方向と同一方向の第1の面と、該第1の面に垂直な第2の面とで画成された階段状に形成されていることを特徴とするアクチュエータ装置。
  2. 前記下電極の前記端部が、当該下電極の長手方向の両端部であることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ装置。
  3. 前記側面部の前記第1の面が、前記圧電体層の結晶粒径よりも大きな幅で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のアクチュエータ装置。
  4. 前記第1の面が、2〜300μmの幅で形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアクチュエータ装置。
  5. 前記圧電体層は、結晶が前記基板に対して柱状となっていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のアクチュエータ装置。
  6. 前記圧電素子の長手方向における前記圧電体層の長さが、前記上電極に向かって漸小し、その側面が傾斜面となっていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のアクチュエータ装置。
  7. 液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が設けられた流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に前記圧力発生室に圧力変化を生じさせて前記ノズル開口から液体を噴射させる液体噴射手段として請求項1〜6の何れかに記載のアクチュエータ装置とを具備することを特徴とする液体噴射ヘッド。
  8. 基板上に変位可能に設けられた下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を具備し、前記圧電体層が、前記下電極の端部の外側まで設けられていると共に、前記下電極の前記端部には、前記圧電素子の外側に向かって厚さが段階的に漸小する側面部が設けられ、該側面部が、前記基板の面方向と同一方向の第1の面と、該第1の面に垂直な第2の面とで画成された階段状に形成されたアクチュエータ装置の製造方法であって、
    前記基板上に前記下電極を形成する工程と、前記基板の前記下電極上を含む一方面側に圧電体前駆体膜を塗布し、該圧電体前駆体膜を焼成することで圧電体膜を形成する圧電体膜形成工程を複数回繰り返し行って複数層の前記圧電体膜からなる前記圧電体層を形成する工程と、該圧電体層上に前記上電極を形成する工程とを具備し、
    前記圧電体層を形成する工程では、前記圧電体膜形成工程で前記圧電体膜を形成する毎に、当該圧電体膜と前記下電極の厚さ方向の一部とをエッチングにより除去して、前記下電極の前記端部に前記第1の面と前記第2の面とを形成する除去工程を行うことで、前記下電極の前記端部に前記側面部を形成することを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。
  9. 2回目以降の前記除去工程では、前回の除去工程で形成した前記第2の面よりも前記圧電素子の長手方向の外側を、前回の除去工程で除去した当該下電極の厚さよりも厚く除去することを特徴とする請求項8記載のアクチュエータ装置の製造方法。
  10. 前記除去工程では、反応性イオンエッチングを行うことを特徴とする請求項8又は9記載のアクチュエータ装置の製造方法。
  11. 前記上電極を形成する工程の後に、当該上電極と前記圧電体層とをエッチングすることによりパターニングすることを特徴とする請求項8〜10の何れかに記載のアクチュエータ装置の製造方法。
  12. 基板上に変位可能に設けられた下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を具備し、前記圧電体層が、前記下電極の端部の外側まで設けられていると共に、前記下電極の前記端部には、前記圧電素子の外側に向かって厚さが段階的に漸小する側面部が設けられ、該側面部が、前記基板の面方向と同一方向の第1の面と、該第1の面に垂直な第2の面とで画成された階段状に形成されたアクチュエータ装置の製造方法であって、
    前記基板上の全面に亘って前記下電極を形成すると共に、該下電極をパターニングすることにより、当該下電極の端部に前記側面部を形成する工程と、前記下電極上に前記側面部の外側まで前記圧電体層を形成する工程と、前記圧電体層上に前記上電極を形成する工程とを具備することを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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