JP2003303541A - 電界電子放出電極用インクおよびそれを用いた電界電子放出膜・電界電子放出電極・電界電子放出表示装置の製造方法 - Google Patents

電界電子放出電極用インクおよびそれを用いた電界電子放出膜・電界電子放出電極・電界電子放出表示装置の製造方法

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JP2003303541A JP2002108990A JP2002108990A JP2003303541A JP 2003303541 A JP2003303541 A JP 2003303541A JP 2002108990 A JP2002108990 A JP 2002108990A JP 2002108990 A JP2002108990 A JP 2002108990A JP 2003303541 A JP2003303541 A JP 2003303541A
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electron emission
field electron
electrode
ink
film
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Hiroyuki Ito
啓之 伊藤
Takao Yagi
貴郎 八木
Masakazu Muroyama
雅和 室山
Makoto Inoue
誠 井上
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Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 薄膜で平滑性に優れ、高い電子放出効率を有
する電界電子放出膜を作製することができ、電界電子放
出型ディスプレイの高精細化を実現可能な電界電子放出
電極用インクを提供する。 【解決手段】 電界電子放出電極用インクは、カーボン
ナノチューブ構造体を0.005〜5重量%と、熱分解
性の金属化合物と、溶剤とを含むことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電界放出型ディス
プレイ、走査トンネル顕微鏡あるいは電界放出顕微鏡な
どの用途に用いられる電界電子放出電極用のインクに関
し、特にカーボンナノチューブ構造体を含有する電界電
子放出電極用インクに関する。
【0002】
【従来の技術】カーボンナノチューブの研究は、199
1年にフラーレンの副生成物として多層カーボンナノチ
ューブが飯島らによって発見されたことから始まった。
多層カーボンナノチューブはグラファイト棒のアーク放
電によるフラーレン合成の際の陰極堆積物に含まれ、多
層のグラファイトシート(グラフェンシート)が丸まっ
た同心円筒状の構造を持ち、直径は数十nm程度の微細
物である。その後、1993年に飯島らは鉄粉末を触媒
としたアーク放電により、直径が1nm前後の単層カー
ボンナノチューブを含む煤の合成に成功した。また、そ
れと同時期にコバルトを触媒としたアーク放電により直
径が1.2nmの単層カーボンナノチューブを発見し
た。単層カーボンナノチューブは一枚のグラファイトシ
ート(グラフェンシート)が円筒状に巻かれた構造で、
直径は数nmである。多層カーボンナノチューブの合成
には金属触媒を必要としないが、単層カーボンナノチュ
ーブの合成には金属触媒が必要不可欠である。また、金
属触媒の種類により、異なる直径の単層カーボンナノチ
ューブを選択的に合成することができる。
【0003】カーボンナノチューブは、その幾何学的、
物理化学的特徴を利用してさまざまな分野の電子材料や
ナノテクノロジーとしての応用が考えられる。近年、こ
のような応用例として、例えばフラットパネルディスプ
レイ(電界電子放出型)、電界放出型電子源、走査型プ
ローブ顕微鏡の探針、ナノオーダー半導体集積回路、水
素ガス吸蔵物質、ナノボンベなどへの用途が期待されて
いるが、なかでも高い電界電子放出効率を利用した電界
電子放出電極が注目されている。
【0004】このような高電界電子放出電極を利用する
ものとして、電界放出型ディスプレイ(FED:Field
Emission Display)、走査トンネル顕微鏡(STM:Sc
anning Tunneling Microscope)あるいは電界放出顕微
鏡(FEM:Field EmissionMicroscope)などがあり、
これらの用途への応用を目的として研究が進められてい
る。
【0005】電界電子放出電極は、真空中で金属材料や
半導体材料に、閾値以上の電界を印加することによって
金属材料表面や半導体材料表面のエネルギー障壁が下が
り、トンネル現象によって、このエネルギー障壁を乗り
越えることができる電子が増大するため、常温でも真空
中に電子が放出される現象を利用するものである。
【0006】従来、例えば電界放出型ディスプレイ(F
ED)の電極を製造するプロセスとしては、フォトリソ
グラフィ、スパッタリングあるいは蒸着などの半導体製
造プロセスに応用される高度な加工技術が用いられてお
り、真空中での積層加工により電極が製造されている。
その製造の代表的な例としては、電極基板表面に絶縁層
を形成し、その絶縁層表面上に電子引出し用の電極膜を
形成する。その上にレジストを塗布し、所定の形状にマ
スクを形成してウエットエッチングにより電極アレイ一
つ一つに孔を形成する。次いで電子放出用の電極材料を
蒸着して電子放出電極を形成した後、レジストを除去す
ることにより電極が完成する。電子放出用の電極材料と
してはモリブデン(Mo)が用いられており、円錐形状
を形成するようにプロセス制御して作られている。円錐
形状にする理由は、先端が鋭利な形状をしていることに
より電界電子放出効率が高くなるためである。このよう
な特殊な形状に成形するために、真空中での複雑な制御
と多数の加工プロセスが必要となり、かつ加工プロセス
には長時間を要する。
【0007】前記のように従来の技術でFEDをディス
プレイとして利用するには加工プロセスに問題があり、
電極の大型化が困難であるという欠点があった。このた
め、真空中での加工プロセス数が少なく、簡便に制御で
きる技術とそれに利用できる電界電子放出材料の開発が
望まれている。
【0008】前記要求に対する材料としてカーボンナノ
チューブは先端が細長く、電圧を印加することでその先
端に強い電場が生じ、比較的低い電圧で電子を放出する
ことができるため有望視されている。
【0009】カーボンナノチューブを電界電子放出電極
として利用する方法は、従来の多数の工程を経て非常に
精巧な電子放出電極を作りこむ方法とは違い、より安定
した電流をより低い真空度で実現することができる。こ
れはカーボンナノチューブの先端が非常に細いこと、ま
た導電性が非常に高いことから仕事関数が低いことが原
因と考えられている。各カーボンナノチューブが微小電
子銃になりうるために、単位面積あたり非常に多くの電
子銃を配置することができるようになる。また基板に直
接カーボンナノチューブを成長させる方法も検討されて
いる。
【0010】従来のカーボンナノチューブを用いた電界
電子放出源の製造方法には化学的気相成長法(CVD:
Chemical Vapor Deposition)を用いて、陰極基板に直
接的に長さ、太さなどを制御したカーボンナノチューブ
を成長させて電界電子放出源として利用するという試み
と、既存の方法によって製造したカーボンナノチューブ
を適当な溶媒や接着剤と混合することでインクを作成
し、基板上に塗布、乾燥することで電極を作成する方式
が試みられている。
【0011】このうち、カーボンナノチューブを適当な
溶媒や接着剤と混合したインクを用いる技術には、次の
ようなものがある。
【0012】(1)有機樹脂を接着剤として使用する技
術 有機樹脂を接着剤として用いて、導電性粒子などと一緒
にカーボンナノチューブを混合し、インクを作成する方
法で、溶媒を相対的に少なくし、粘度の高いインクを作
成する。目標とするような膜厚になるようにスクリーン
を選定し、印刷して膜を作成する。導電性を確保するた
めに金属粒子やITO粒子を溶液中に分散させる。得ら
れたペーストをスクリーン印刷法で基板に製膜する。乾
燥させた膜は適当な温度にて焼成を行い、有機樹脂を炭
化した後、適当な表面処理によってカーボンナノチュー
ブを表面に出す(特開2001−176380、特開2
001−93404)。
【0013】(2)無機接着剤を使用する技術 ケイ酸、ホウ酸などのナトリウム塩、カリウム塩、リチ
ウム塩など一般的に水ガラスと呼ばれているもの、もし
くはシリカ分散コロイドなどを接着剤として使用する。
一般にナトリウム、カリウム、リチウムなどのイオンは
除去され、アンモニアなどがpH調整用に添加されてい
る。溶媒には水を使用し、カーボンナノチューブを適当
な配合にて混合し、インクを作成する。インクは上記と
同じようにスクリーン印刷法によって塗布され、焼成後
表面処理される(特開2000−100318)。
【0014】(3)はんだ等を使用する方法 Sn、In、Bi、Pbなどの少なくとも1つの元素を
含む金属はんだを接着剤として用いてカーボンナノチュ
ーブを基板上に固定する方法。カーボンナノチューブを
前記金属はんだ、もしくは炭素溶解性金属、もしくはカ
ーバイド形成金属、もしくは低融点金属、もしくは導電
性ポリマー(銀ペースト)と十分に混合し、膜形成後最
終的に真空中で800℃で焼成して接着する(特開20
00−141056)。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】電界電子放出型ディス
プレイは各画素に複数の微小な電子銃が配置されている
ために電子銃とアノード電極すなわち蛍光体との距離が
小さいほど画素の大きさを小さくできる。電子銃から放
出された電子は放出源よりもやや広がって蛍光体に衝突
するために、同じ特性を持つ電界電子放出電極ならば蛍
光体が近いほどその広がりを小さく抑制できる。画素を
小さくするためには電子銃全体を小さくする必要があ
り、そのためには絶縁膜、そしてカーボンナノチューブ
塗布膜も薄くする必要がある。
【0016】しかしながら、上記したような従来の技術
では各々に問題点がある。すなわち、有機樹脂を接着剤
として使用すると、焼成後も接着性を確保するためには
厚膜でしか塗布できない。また無機接着剤では膜の抵抗
が高いために電子放出源の分布にムラが発生すると共
に、溶媒に水を使用しているので、焼成後の残存気体が
多い膜となる。また両者とも膜の導電性は導電性粒子を
インクに添加することによって確保しているために導電
性粒子の大きさに膜厚を左右されてしまう。すなわち導
電性粒子の大きさが塗布膜よりも大きい場合は膜の面内
での抵抗値にムラができることとなる。このために従来
のインクの組成では十分に満足できる電界電子放出薄膜
を形成することは困難であった。
【0017】さらに、電界電子放出膜の残存気体につい
ていえば、電界電子放出型ディスプレイでは陰極から発
生した電子を陽極に向けて電子を加速し、蛍光体に衝突
させ励起し発光させる。電子発生のためには陰極、陽極
間の雰囲気を真空排気しておく必要がある。カーボンナ
ノチューブ含有のインクを塗布した電極は陰極として使
用されるために真空中に設置されることとなる。
【0018】したがって塗布されたインクは真空中に封
止される前に十分に残存気体を排出させておく必要があ
る。有機溶媒を使用した場合は乾燥だけでなく十分な温
度まで焼成することが必要不可欠である。また無機接着
剤を使用した場合も溶媒として使用する水を十分に除去
する必要がある。
【0019】しかし、接着剤中に含有される溶媒分、特
に水分は非常に除去しづらく、残留気体としてディスプ
レイ基板上に残る。このために、カーボンナノチューブ
から放出される電子流が非常に不安定になる。ディスプ
レイとして考えるとこのような現象が起こると画面のち
らつきなどの原因となる。
【0020】本発明は上記したような従来の事情に対処
してなされたもので、高い電子放出効率を有する薄膜の
電界電子放出膜を容易に作製することができ、電界電子
放出型ディスプレイの高精細化を実現可能な電界電子放
出電極用インクを提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、電子放出
量の均一性を確保するためには、基本的に電界電子放出
電極はできるだけ膜表面の平滑性を確保しなければいけ
ないという点から、接着剤の成分そのものに導電性を付
与することができる場合は、導電性の粒子を混合させる
必要がないために、導電性粒子の大きさによって膜厚を
制限されることがなく、薄膜化が可能であると考えた。
かかる観点からインク組成の検討を行った結果、本発明
に到達した。
【0022】本発明は第1に、カーボンナノチューブ構
造体を0.005〜5重量%と、熱分解性の金属化合物
と、溶剤とを含むことを特徴とする電界電子放出電極用
インクである(請求項1)。
【0023】本発明ではインクの作製に際し、接着剤と
して熱分解性の金属化合物(有機金属化合物、金属塩ま
たは有機金属塩化合物)を使用することで、焼成後に残
存気体の少ない膜を形成することができ、薄膜にて塗布
することによって充分な電子放出量を示す電界電子放出
電極塗膜を形成することができる。従来の方法では、塗
布膜が厚いため、ディスプレイとして使用する場合に、
後加工プロセスに対し耐性が低かったが、電子放出材料
が薄膜中に充分に分散した塗膜を形成することができる
ため、電子放出電極部分の膜厚をより薄くすることがで
き、ディスプレイの高精細化などに寄与できる。
【0024】上記熱分解性の金属化合物としては有機金
属化合物、金属塩または有機金属塩化合物が好ましい。
また、上記熱分解性の金属化合物は、複数の金属からな
るものが好ましい。これら複数の金属はSnと、Inお
よびSbから選ばれる少なくとも1種の添加金属である
ことが特に好ましい。また、上記複数の金属がSnとI
nであり、Inに対するSnの割合が6原子%以上であ
ることが特に望ましい。
【0025】また、本発明のインクでは、キレート剤が
さらに含有されていること、粘度が0.001〜0.5
Pa・sであること、固形分濃度が0.5〜50重量%
であることが、それぞれ好ましい。
【0026】本発明は第2に、電界電子放出電極に用い
られる電界電子放出膜の製造方法であって、カーボンナ
ノチューブ構造体を0.005〜5重量%と、熱分解性
の金属化合物と、溶剤とを含むインクを電極基板上に塗
布する工程を少なくとも含むことを特徴とする電界電子
放出膜の製造方法である(請求項11)。
【0027】本発明は第3に、支持体上に順次形成され
たカソード電極および電界電子放出膜からなる2極型の
電界電子放出電極の製造方法であって、前記電界電子放
出膜の製造工程に、カーボンナノチューブ構造体を0.
005〜5重量%と、熱分解性の金属化合物と、溶剤と
を含むインクを前記カソード電極上に塗布する工程と、
該塗布膜を焼成する工程とを含むことを特徴とする電界
電子放出電極の製造方法である(請求項12)。
【0028】本発明は第4に、支持体上に順次形成され
たカソード電極、絶縁層およびゲート電極と、前記絶縁
層およびゲート電極に共通に形成された開口部と、少な
くとも該開口部におけるカソード電極上に形成された電
界電子放出膜とからなる3極型の電界電子放出電極の製
造方法であって、前記電界電子放出膜の製造工程に、カ
ーボンナノチューブ構造体を0.005〜5重量%と、
熱分解性の金属化合物と、溶剤とを含むインクを前記カ
ソード電極上に塗布する工程と、該塗布膜を焼成する工
程とを含むことを特徴とする電界電子放出電極の製造方
法である(請求項13)。
【0029】本発明は第5に、複数の電界電子放出電極
を備えたカソードパネルと、蛍光体層およびアノード電
極を備えたアノードパネルとが、それぞれの周縁部で接
合されてなる電界電子放出表示装置の製造方法であっ
て、前記電界電子放出電極を上記請求項12または13
に記載の方法で製造したことを特徴とする電界電子放出
表示装置の製造方法である(請求項14)。
【0030】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態につ
いて詳細に説明する。 (1)実施の形態1(電界電子放出電極用インク) 本発明において、カーボンナノチューブ構造体とは、カ
ーボンナノチューブ及び/又はカーボンナノファイバー
を意味する。本発明では、カーボンナノチューブまたは
カーボンナノファイバーを用いてもよいし、これらの混
合物を用いてもよい。
【0031】カーボンナノチューブとカーボンナノファ
イバーとの相違点は、これらの結晶性にある。sp2
合を有する炭素原子は通常、6個の炭素原子から六員環
を構成し、これらの六員環の集まりがカーボングラファ
イトシートを構成する。このカーボングラファイトシー
トが巻かれたチューブ構造を有するものがカーボンナノ
チューブである。なお、1層のカーボングラファイトシ
ートが巻かれた構造を有する単層カーボンナノチューブ
であってもよいし、2層以上のカーボングラファイトシ
ートが巻かれた構造を有する多層カーボンナノチューブ
であってもよい。一方、カーボングラファイトシートが
巻かれておらず、カーボングラファイトシートのフラグ
メントが重なってファイバー状になったものが、カーボ
ンナノファイバーである。カーボンナノチューブあるい
はカーボンナノファイバーとカーボンウィスカーとの違
いは明確ではないが、一般にカーボンナノチューブある
いはカーボンナノファイバーの直径は1μm以下、例え
ば1nm〜300nm程度である。
【0032】また、カーボンナノチューブ構造体である
カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーは、巨
視的には粉末状であることが好ましい。カーボンナノチ
ューブやカーボンナノファイバーの製造方法として、周
知のアーク放電法やレーザアブレーション法といったP
VD法、プラズマCVD法やレーザCVD法、熱CVD
法、気相合成法、気相成長法といった各種のCVD法を
挙げることができる。
【0033】本発明で用いられるカーボンナノチューブ
構造体の好ましいサイズは、直径0.7〜100nm、
長さが0.5〜100μmである。
【0034】本発明において、カーボンナノチューブ構
造体の配合量は、インク全量中、0.005重量%以
上、5重量%以下であることが好ましい。
【0035】本発明では、焼成により無機物となる熱分
解性の金属化合物とともに溶媒、特に有機溶媒を使用し
て所定のインクを調製することで残留気体の発生を抑
え、十分な接着性を確保することができる。残存気体が
少ない接着剤を使用することで、電子放出が安定し、デ
ィスプレイとして使用した場合に画像が不安定になるこ
とがない。また、上記金属化合物を焼成で熱分解して緻
密な無機膜を形成するようにしているため、ディスプレ
イを作製する際に、後加工での塗膜へのダメージが殆ど
ない。また本発明では、接着剤自体に導電性を付与する
ことができるので、インクの設計が容易となり、絶縁性
粒子などを添加しても、塗膜の抵抗値が大きく上昇する
ことはない。
【0036】また、本発明のインクにおいては、熱分解
性の金属化合物を用いることによりインク中に粒子状導
電性物質を配合することなく所期の特性を有する電界電
子放出膜を形成することができる。
【0037】本発明に係る電界電子放出膜を形成するた
めのインクを調製する方法の一例としては、上記熱分解
性の金属化合物を適当な濃度まで溶剤で希釈した溶液に
カーボンナノチューブ構造体を均一に分散させたものが
挙げられる。また、カーボンナノチューブ構造体を熱分
解性の金属化合物とともに適当な溶剤中に均一に分散さ
せることによっても、上記膜形成用のインクを作製する
ことが可能である。
【0038】上記金属化合物としては、例えば、有機金
属化合物(有機酸金属化合物を含む)、金属塩および有
機金属塩化合物を挙げることができる。金属塩として例
えば、ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩を挙げることがで
きる。本発明では上記金属塩のうち特に有効なものとし
て、ハロゲン化物が挙げられる。有機酸金属化合物溶液
としては例えば、有機錫化合物、有機インジウム化合
物、有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物を酸(例え
ば、塩酸、硝酸、あるいは硫酸)に溶解し、これを有機
溶媒で希釈したものを挙げることができる。また、有機
金属化合物溶液としては例えば、有機錫化合物、有機イ
ンジウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合
物を有機溶媒に溶解したものを例示することができる。
また、熱分解性の金属化合物として、有機鎖−ハロゲン
−金属を併せ持った有機金属塩化合物を使用することも
できる。
【0039】本発明の電界電子放出電極用インクの成分
である熱分解性の金属化合物を形成する金属元素として
はインジウム(In)、すず(Sn)、アンチモン(S
b)以外に亜鉛、アルミニウム、金、銀、珪素、ゲルマ
ニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、ニッケル、
白金、マンガンなどが挙げられる。また、本発明のイン
クの成分である上記金属化合物としては、しきい値の低
減化の点から複数の金属からなるものが好ましい。その
具体例としては、後記実施例のようにインジウム−ス
ズ、スズ−アンチモン等が挙げられる。また、スズ−フ
ッ素(F)などのような金属とハロゲンとの組み合わせ
であってもよい。特に、上記単一または複数の金属のう
ち一つはSnであることが、ドーパントとの親和性の点
から好ましい。
【0040】ここで、In−Snを組み合わせた場合、
その混合比はIn原子100に対してSn原子が6以上
であることが好ましい。Sn−Sbを組み合わせた場
合、その混合比はSn原子100に対してSb原子が4
以上であることが好ましい。Sn−Fを組み合わせた場
合、その混合比はSn原子100に対してF原子が4以
上であることが好ましい。
【0041】また、金属元素と結合して上記有機金属
(塩)化合物を形成する有機鎖の官能基としては直鎖、
側鎖のアルキル基、アルコキシ基、エステル基、カルボ
ニル基、エーテル基、アミド基、ベンゾイル基、フェニ
ル基、エポキシド、アミノ基、アミド基などが挙げられ
る。
【0042】本発明のインク成分として使用可能な熱分
解性の金属化合物の例を挙げると、三酢酸インジウム、
三酢酸インジウム水和物、インジウムアセチルアセトネ
ート、ハロゲン化インジウム、トリ-tert-ブトキシイン
ジウム、トリメトキシインジウム、トリエトキシインジ
ウム、トリイソプロポキシインジウムなどアルコキシ
基、アルキル基、アセチル基、ハロゲン、フェニル基な
どが1種類もしくは2種類結合した化合物、ハロゲン化
スズ、テトラエトキシスズ、テトライソポロポキシす
ず、テトラブトキシすずなどアルコキシ基、アルキル
基、アセチル基、ハロゲン、フェニル基などが1種類も
しくは2種類結合した化合物などである。
【0043】本発明において、熱分解性の金属化合物の
配合量は、0.5重量%以上、5重量%以下であること
が好ましい。
【0044】本発明のインク成分である溶剤としては、
例えばエチルアルコール、酢酸ブチル、トルエン、イソ
プロピルアルコール等の有機溶媒や水が使用できるが、
好ましくは有機溶媒である。配合量は、インク粘度が後
記するようであればよく、特に限定されない。
【0045】本発明のインクでは、キレート剤がさらに
含有されていることが好ましい。キレート剤を配合する
ことで、上記熱分解性の金属化合物の分散性が高まる
(分散状態の安定性が向上する)ため、特性がより均一
な電界電子放出膜を高い歩留りで製造することができ
る。
【0046】上記キレート化剤としてはエチレンジアミ
ン、ピリジン、プロピレンジアミン、ジエチレントリア
ミン、トリエチレンテトラミン、2,2'−ビピリジ
ン、1,10−フェナントロリン、エチレンジアミン四
酢酸イオン、ジメチルグリオキシマト、グリシナト、ト
リフェニルホスフィン、シクロペンタジエニルなどのキ
レート剤が挙げられる。
【0047】また、インクの粘度を0.001〜0.5
Pa・sとすることで、このインクを電極基板上に塗布
する場合に、薄膜である電界電子放出膜塗膜を、より均
一な膜厚で形成することが可能となる。また、インクの
固形分濃度は0.5〜50重量%とすることが好まし
い。
【0048】本発明によるインキには、上記成分の他、
分散剤や界面活性剤が含まれていてもよい。また、マト
リックスの厚さを増加させるといった観点から、金属化
合物溶液に、例えばカーボンブラック等の添加物を添加
してもよい。また、上記した理由からインク中に粒子状
の導電性物質を配合する必要はないが、かかる導電性物
質の添加を排除するものではない。
【0049】(2)実施の形態2(電界電子放出膜) 本発明に係る電界電子放出膜は、上記の電界電子放出電
極用インクを電極上に塗布し、焼成することによって得
ることができる。塗布方法としては、スプレー塗布、ダ
イ塗布、ロール塗布、ディップ塗布、カーテン塗布、ス
ピン塗布、グラビア塗布などが挙げられるが、スプレー
塗布が特に好ましい。上記電界電子放出膜は、上記方法
で電極上に塗膜を形成した後、焼成する。ここでインク
塗膜の好ましい焼成条件は、インクの成分である金属化
合物の組成を考慮して適宜に設定されるが、一般的に、
焼成温度は300℃〜600℃の範囲が好ましい。有機
官能基もしくはハロゲンの分解反応は比較的低温で進行
するために、基板として低融点ガラスを使用することが
可能となる。焼成により、インク構成成分である熱分解
性の金属化合物が分解し、金属の種類によって異なる無
機物、特に金属酸化物、ハロゲン化金属酸化物、遊離金
属が生成する。例えば、DBTDA(二酢酸ジブチル
錫)からは錫酸化物が、IC(塩化インジウム)とTC
T(テトラクロロ錫)との混合物からはITO(インジ
ウム錫酸化物)がそれぞれ生成する。なお、焼成に替え
てUV照射を適用することもできる。
【0050】電界電子放出膜には、Snが必ず含まれて
いることが、特に好ましい。Snはドーパントに対する
親和性が高いため、均一物性の電極膜を容易に形成する
ことができる。金属錫が含まれている電界電子放出膜と
しては、例えばITO,FTO(フッ素錫酸化物)、A
TO(アンチモン錫酸化物)が挙げられる。
【0051】(3)実施の形態3(2極型の電界電子放
出電極・電界電子放出表示装置) 本実施の形態による電界電子放出電極を図1から図3を
参照しながら説明する。電界電子放出電極は、図1に示
すような電界電子放出表示装置に用いられる。そして図
2および図3に示すように、支持体10上に設けられた
カソード電極11と、カソード電極11上に設けられた
電界電子放出膜15から成る。そして、電界電子放出膜
15は、マトリックス(金属化合物の熱分解生成物)2
1、及び先端部が突出した状態でマトリックス21中に
埋め込まれたカーボンナノチューブ構造体から成る。こ
こで、電界電子放出膜の製造方法は、既に述べた実施の
形態2による。
【0052】本実施の形態における表示装置は、図1に
示すように、電界放出電極が複数設けられたカソードパ
ネルCP、及び、蛍光体層31とアノードパネルAP
が、それらの周縁部で接合されて成り、複数の画素を有
する。本実施の形態の表示装置におけるカソードパネル
CPにおいては、上述のような電界放出電極の複数から
構成された電子放出領域が有効領域に2次元マトリック
ス状に多数形成されている。
【0053】カソードパネルCPの無効領域には、真空
排気用の貫通孔(図示せず)が設けられており、この貫
通孔には、真空排気後に封じ切られるチップ管(図示せ
ず)が接続されている。枠体34は、セラミックス又は
ガラスから成り、高さは、例えば1.0mmである。場
合によっては、枠体34の代わりに接着層のみを用いる
こともできる。
【0054】アノードパネルAPは、具体的には、基板
30と、基板30上に形成され、所定のパターン(例え
ば、ストライプ状やドット状)に従って形成された蛍光
体層31と、有効領域の全面を覆う例えばアルミニウム
薄膜から成るアノード電極33から構成されている。蛍
光体層31と蛍光体層31との間の基板30上には、ブ
ラックマトリックス32が形成されている。尚、ブラッ
クマトリックス32を省略することもできる。また、単
色表示装置を想定した場合、蛍光体層31は必ずしも所
定のパターンに従って設けられる必要はない。更には、
ITO等の透明導電膜から成るアノード電極を基板30
と蛍光体層31との間に設けてもよく、あるいは、基板
30上に設けられた透明導電膜から成るアノード電極3
3と、アノード電極33上に形成された蛍光体層31及
びブラックマトリックス32と、蛍光体層31及びブラ
ックマトリックス32の上に形成されたアルミニウム
(Al)から成り、アノード電極33と電気的に接続さ
れた光反射導電膜から構成することもできる。
【0055】1画素は、カソードパネル側において矩形
形状のカソード電極11と、その上に形成された電界電
子放出膜15と、電界電子放出膜15に対面するように
アノードパネルAPの有効領域に配列された蛍光体層3
1とによって構成されている。有効領域には、かかる画
素が、例えば数十万〜数百万個ものオーダーにて配列さ
れている。
【0056】また、カソードパネルCPとアノードパネ
ルAPとの間には、両パネル間の距離を一定に維持する
ための補助的手段として、有効領域内に等間隔にスペー
サ35が配置されている。尚、スペーサ35の形状は、
円柱形に限らず、例えば球状でもよいし、ストライプ状
の隔壁(リブ)であってもよい。また、スペーサ35
は、必ずしも全てのカソード電極の重複領域の四隅に配
置されている必要はなく、より疎に配置されていてもよ
いし、配置が不規則であってもよい。
【0057】この表示装置においては、1画素単位で、
カソード電極11に印加する電圧の制御を行う。カソー
ド電極11の平面形状は、図2に模式的に示すように、
略矩形であり、各カソード電極11は、配線11A、及
び、例えばトランジスタから成るスイッチング素子(図
示せず)を介してカソード電極制御回路40Aに接続さ
れている。また、アノード電極33はアノード電極制御
回路42に接続されている。各カソード電極11に閾値
電圧以上の電圧が印加されると、アノード電極33によ
って形成される電界により、量子トンネル効果に基づき
電界電子放出膜15から電子が放出され、この電子がア
ノード電極33に引き付けられ、蛍光体層31に衝突す
る。輝度は、カソード電極11に印加される電圧によっ
て制御される。
【0058】次に、表示装置の組み立てを行う。具体的
には、図1において、蛍光体層31と電界放出電極とが
対向するようにアノードパネルAPとカソードパネルC
Pとを配置し、アノードパネルAPとカソードパネルC
P(より具体的には、基板30と支持体10)とを、枠
体34を介して、周縁部において接合する。接合に際し
ては、枠体34とアノードパネルAPとの接合部位、及
び枠体34とカソードパネルCPとの接合部位にフリッ
トガラスを塗布し、アノードパネルAPとカソードパネ
ルCPと枠体34とを貼り合わせ、予備焼成にてフリッ
トガラスを乾燥した後、約450℃で10〜30分の本
焼成を行う。その後、アノードパネルAPとカソードパ
ネルCPと枠体34とフリットガラスとによって囲まれ
た空間を、貫通孔及びチップ管を通じて排気し、空間の
圧力が10-4Pa程度に達した時点でチップ管を加熱溶
融により封じ切る。このようにして、アノードパネルA
PとカソードパネルCPと枠体34とに囲まれた空間を
真空にすることができる。その後、必要な外部回路との
配線を行い、表示装置を完成させる。
【0059】尚、図1に示した表示装置におけるアノー
ドパネルAPの製造方法の一例を、以下、図4の(A)
〜(D)を参照して説明する。
【0060】先ず、発光性結晶粒子組成物を調製する。
そのために、例えば、純水に分散剤を分散させ、ホモミ
キサーを用いて3000rpmにて1分間、撹拌を行
う。次に、発光性結晶粒子を分散剤が分散した純水中に
投入し、ホモミキサーを用いて5000rpmにて5分
間、撹拌を行う。その後、例えば、ポリビニルアルコー
ル及び重クロム酸アンモニウムを添加して、十分に撹拌
し、濾過する。
【0061】アノードパネルAPの製造においては、例
えばガラスから成る基板30上の全面に感光性被膜50
を形成(塗布)する。そして、露光光源(図示せず)か
ら射出され、マスク53に設けられた孔部54を通過し
た紫外線によって、基板30上に形成された感光性被膜
50を露光して感光領域51を形成する(図4の(A)
参照)。その後、感光性被膜50を現像して選択的に除
去し、感光性被膜の残部(露光、現像後の感光性被膜)
52を基板30上に残す(図4の(B)参照)。次に、
全面にカーボン剤(カーボンスラリー)を塗布し、乾
燥、焼成した後、リフトオフ法にて感光性被膜の残部5
2及びその上のカーボン剤を除去することによって、露
出した基板30上にカーボン剤から成るブラックマトリ
ックス32を形成し、併せて、感光性被膜の残部52を
除去する(図4の(C)参照)。その後、露出した基板
30上に、赤、緑、青の各蛍光体層31を形成する(図
4の(D)参照)。具体的には、各発光性結晶粒子(蛍
光体粒子)から調製された発光性結晶粒子組成物を使用
し、例えば、赤色の感光性の発光性結晶粒子組成物(蛍
光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像し、次い
で、緑色の感光性の発光性結晶粒子組成物(蛍光体スラ
リー)を全面に塗布し、露光、現像し、更に、青色の感
光性の発光性結晶粒子組成物(蛍光体スラリー)を全面
に塗布し、露光、現像すればよい。その後、蛍光体層3
1及びブラックマトリックス32上にスパッタリング法
にて厚さ約0.07μmのアルミニウム薄膜から成るア
ノード電極33を形成する。尚、スクリーン印刷法等に
より各蛍光体層31を形成することもできる。
【0062】尚、アノード電極は、有効領域を1枚のシ
ート状の導電材料で被覆した形式のアノード電極として
もよいし、1又は複数の電界電子放出膜、あるいは、1
又は複数の画素に対応するアノード電極ユニットが集合
した形式のアノード電極としてもよい。
【0063】1画素を、ストライプ状のカソード電極
と、その上に形成された電界電子放出膜と、電界電子放
出膜に対面するようにアノードパネルの有効領域に配列
された蛍光体層とによって構成してもよい。この場合、
アノード電極もストライプ形状を有する。ストライプ状
のカソード電極の射影像と、ストライプ状のアノード電
極の射影像は直交している。アノード電極の射影像とカ
ソード電極の射影像とが重複する領域に位置する電界電
子放出膜から電子が放出される。このような構成の表示
装置の駆動は、所謂単純マトリクス方式により行われ
る。即ち、カソード電極に相対的に負の電圧を、アノー
ド電極に相対的に正の電圧を印加する。その結果、列選
択されたカソード電極と行選択されたアノード電極(あ
るいは、行選択されたカソード電極と列選択されたアノ
ード電極)とのアノード電極/カソード電極重複領域に
位置する電界電子放出膜から選択的に真空空間中へ電子
が放出され、この電子がアノード電極に引きつけられて
アノードパネルを構成する蛍光体層に衝突し、蛍光体層
を励起・発光させる。
【0064】このような構造の電界放出電極の製造にあ
たっては、例えばガラス基板から成る支持体10上に、
例えばスパッタリング法により形成されたクロム(C
r)層から成るカソード電極形成用の導電材料層を形成
した後、周知のリソグラフィ技術及びRIE法に基づ
き、導電材料層をパターニングすることによって、矩形
形状のカソード電極の代わりにストライプ状のカソード
電極11を支持体10上に形成すればよい。
【0065】また、プラズマ処理、電場による配向処
理、及び、加熱処理や各種のプラズマ処理等の順序は、
本質的に任意とすることができる。以下の実施の形態に
おいても同様である。
【0066】(4)実施の形態4(3極型の電界電子放
出電極・電界電子放出表示装置) 本実施の形態の電界放出電極の一例の模式的な一部端面
図を図5に示し、表示装置の模式的な一部端面図を図6
に示す。この電界放出電極は、支持体10上に形成され
たカソード電極11、支持体10及びカソード電極11
上に形成された絶縁層12、絶縁層12上に形成された
ゲート電極13、ゲート電極13及び絶縁層12に形成
された開口部(ゲート電極13に形成された第1の開口
部14A、及び、絶縁層12に形成された第2の開口部
14B)、並びに、第2の開口部14Bの底部に露出し
た電界電子放出膜15から成る。電界電子放出膜15は
実施の形態2によるものであり、マトリックス21、及
び、先端部が突出した状態でマトリックス21中に埋め
込まれたカーボンナノチューブ20から成る。
【0067】表示装置は、上述のような電界放出電極が
有効領域に多数形成されたカソードパネルCPと、アノ
ードパネルAPから構成されており、複数の画素から構
成され、各画素は、複数の電界放出電極と、電界放出電
極に対向して基板30上に設けられたアノード電極33
及び蛍光体層31から構成されている。アノード電極3
3は有効領域を覆うシート状である。カソードパネルC
PとアノードパネルAPとは、それらの周縁部におい
て、枠体34を介して接合されている。図6に示す一部
端面図には、カソードパネルCPにおいて、1本のカソ
ード電極11につき開口部14A,14B及び電界電子
放出膜15を、図面の簡素化のために2つずつ示してい
るが、これに限定するものではなく、また、電界放出電
極の基本的な構成は図5に示したとおりである。更に
は、カソードパネルCPの無効領域には、真空排気用の
貫通孔36が設けられており、この貫通孔36には、真
空排気後に封じ切られるチップ管37が接続されてい
る。但し、図6は表示装置の完成状態を示しており、図
示したチップ管37は既に封じ切られている。また、ス
ペーサの図示は省略した。
【0068】アノードパネルAPの構造は、実施の形態
3にて説明したアノードパネルAPと同様の構造とする
ことができるので、詳細な説明は省略する。
【0069】この表示装置において表示を行う場合に
は、カソード電極11には相対的な負電圧がカソード電
極制御回路40から印加され、ゲート電極13には相対
的な正電圧がゲート電極制御回路41から印加され、ア
ノード電極33にはゲート電極13よりも更に高い正電
圧がアノード電極制御回路42から印加される。かかる
表示装置において表示を行う場合、例えば、カソード電
極11にカソード電極制御回路40から走査信号を入力
し、ゲート電極13にゲート電極制御回路41からビデ
オ信号を入力する。あるいは又、カソード電極11にカ
ソード電極制御回路40からビデオ信号を入力し、ゲー
ト電極13にゲート電極制御回路41から走査信号を入
力してもよい。カソード電極11とゲート電極13との
間に電圧を印加した際に生ずる電界により、量子トンネ
ル効果に基づき電界電子放出膜15から電子が放出さ
れ、この電子がアノード電極33に引き付けられ、蛍光
体層31に衝突する。その結果、蛍光体層31が励起さ
れて発光し、所望の画像を得ることができる。
【0070】以下、電界電子放出電極、電界電子放出表
示装置のその他の実施形態については、既に実施の形態
3において述べた方法と同様であり、それ以外について
は通常の公知技術を用いることによって可能であるので
省略する。
【0071】
【実施例】つぎに、本発明の実施例について、図面を参
照して説明する。 試験例1〜36 カーボンナノチューブは、図7に示すアーク放電装置6
0(カーボンナノチューブ製造装置)を用いて作製した
SWNTs(単層カーボンナノチューブ)を湿式精製に
よって精製し、80%以上の純度のものを使用した。ま
た、直径100nm、長さ100μmのカーボンナノチ
ューブは、昭和電工社製のVGCF−Gを使用した。
【0072】ここで、上記カーボンナノチューブの製造
装置60について説明する。放電室63はロータリーポ
ンプ61により減圧可能となっている。放電室63の減
圧状態は、真空計62によって測定される。放電室63
の陽極69側に、触媒含有黒鉛材65が設置され、陰極
68側に黒鉛材64が設置される。カーボンナノチュー
ブ製造時には、Heガス導入口66からヘリウムガスが
放電室63に導入され、直流電源71により陽極69お
よび陰極68間に電圧が印加され、両者間に放電が生じ
る。この放電により、触媒含有黒鉛材65が蒸発し、蒸
発した炭素の一部が気相で凝縮し、放電室63の内壁に
煤(スス)となって付着する。生じた煤は、放電室63
の下部に設けられた煤回収口67により回収される。こ
の煤を公知の湿式精製方法で処理することによりカーボ
ンナノチューブが得られる。
【0073】本発明に従い、上記カーボンナノチューブ
と、熱分解性の金属化合物と、溶剤とを含む電界電子放
出電極用インクを作製した。この場合上記溶剤と、カー
ボンナノチューブと、金属化合物粒子とをそれぞれ所定
濃度で十分に混合してインクを調製した。溶剤としては
エチルアルコール(各試験例で共通)を使用した。
【0074】下記表1、表2に示すように、金属化合物
としては、試験例1〜4および試験例13〜20では二
酢酸ジブチル錫(DBTDA)を、試験例5〜8ではテ
トラブトキシ錫(TButT)を、試験例9〜12では
四塩化錫(TCT:テトラクロロ錫)をそれぞれ使用し
た。また、試験例21〜25では四塩化錫とフッ化アン
モニウム(AF)を、試験例26〜30では四塩化錫と
トリフェニルアンチモン(TPA)を、試験例31〜3
6では塩化インジウム(IC)と四塩化錫を、それぞれ
併用した。
【0075】さらに、試験例21〜36では添加剤の配
合量を、母材を100とした場合のモル%で示した。例
えば、試験例21では母材TCT100モルに対してA
Fを5モル%添加した。なお、上記添加剤は、母材を構
成する金属元素に対してドーパントとして機能する元素
を含有するものであり、インク塗膜の焼成により、ドー
パント元素が上記金属元素に結合した酸化物もしくはハ
ロゲン化酸化物が生成する。具体的には、試験例21〜
25ではTCTが母材、AFが添加剤(フッ素原子がド
ーパント)であり、試験例26〜30ではTCTが母
材、TPAが添加剤(アンチモンがドーパント)であ
る。試験例31〜36ではICが母材、TCTが添加剤
(錫がドーパント)である。
【0076】試験例21〜25では、TCTに対するA
F(フッ化アンモニウム)の配合割合を振って、その効
果を検討した。これらの試験例では、上記焼成によりF
TOが生成する。この場合、ドーパントはフッ素原子で
ある。試験例26〜30では、TCTに対するTPAの
配合割合を振って、その効果を検討した。これらの試験
例では、焼成によりATOが生成する。この場合ドーパ
ントはアンチモンである。試験例31〜36では、IC
に対するTCTの配合割合を振って、その効果を検討し
た。これらの試験例では、焼成によりITOが生成す
る。この場合、ドーパントは錫である。
【0077】また、表1,2において、「インク中のC
NT(カーボンナノチューブ)濃度(wt%)」は、イ
ンクの全重量を100とした場合のカーボンナノチュー
ブの重量を示している。さらに、試験例17〜20に係
るインクでは、キレート剤としてアセチルアセトンを金
属化合物と同モル量添加した。
【0078】つぎに、得られたインクを用いて電極基板
上に電界電子放出膜を形成し、評価した。電極基板への
インク塗布(電界電子放出膜の塗膜形成)は、図8のス
プレー塗布装置を使用した。なお、スプレー塗布による
乾燥後の塗膜膜厚は1μmとした。
【0079】使用したスプレー塗布装置の構造および、
これによるインク塗布方法について図8を参照して説明
する。上部にインク用タンク72、下部にノズル75、
中央部にコック72aと、これらコック72a・ノズル
75間の所定部位に図略の流量制御弁とを設けることに
より、塗布装置本体を構成する。この本体の上記ノズル
75直近直上部位にエアー配管76および弁制御用エア
ー配管77を接続する。上記本体は矢印方向および紙面
に垂直方向に前後動自在(X,Y方向に移動自在)とす
る。
【0080】インク塗布に際しては、電界電子放出電極
基板73aをエアーチャック74の所定位置に真空吸着
により固定する。コック72aを開放し、弁制御用エア
ー配管77から所定圧に制御された加圧エアーを上記流
量制御弁に供給するとともに、エアー配管76から加圧
エアーを供給する。これによりインク用タンク72内の
インクがノズル75から電極基板73a上にスプレーさ
れる。この塗布工程では、電極基板73aをX,Y方向
に移動自在させる。なお、図8において符号73は電界
電子放出電極であり、符号73bはインク塗膜である。
【0081】このインク塗膜を200℃にて大気中で乾
燥し、470℃にて30分間焼成後、表面処理を行って
カーボンナノチューブを表面に突出させ、かくて電界電
子放出電極用の電極基板(サンプル)を作製した。この
電極基板を適当な大きさに切断することにより、以下に
述べるような2極型の電界電子放出電極および3極型の
電界電子放出電極を得た後、これら電極の評価を行っ
た。
【0082】図9は、2極型の電界電子放出電極を評価
するための装置を示す概略図である。図9に記載された
符号について説明すると、78はガラス押さえ用錘、7
9はガラス基板上にITO膜79aを蒸着形成したアノ
ード電極(ガラスアノード)、80はガラススペーサー
(ガラスファイバー)、81は本発明に係る電界電子放
出膜81aを塗布したカソード電極、82は電源およ
び、電圧・電流測定器である。
【0083】カソード電極81上にガラススペーサー8
0を配置し、このスペーサー上にアノード電極79を、
ITO膜79aが電界電子放出膜81aと対面するよう
に設置した。スペース保持のためにアノード電極79上
に錘78を載せた。カソード電極81・アノード電極7
9間に電源82にて電圧を印加し、電圧および電流値を
測定した。また、アノード電極79の裏面側(錘78を
載置した側)に高感度カメラを設置し、ITO膜79a
の発光を確認し、発光が著しく偏っている場合のデータ
は評価の対象から外した。
【0084】図10は本発明のインクを用いた電界電子
放出膜を評価するための3極型の電界電子放出電極構造
の模式的断面図である。この3極構造は、基材(支持
体)87上に順次形成されたカソード電極86、絶縁層
(絶縁膜)85およびゲート電極84と、絶縁層85お
よびゲート電極4に共通に形成された開口部(孔)88
と、この開口部88におけるカソード電極86上に形成
された電界電子放出膜83とを備えてなる3極型の電界
電子放出電極である。
【0085】この3極構造を構成するに際しては、ガラ
ス板からなる基材87上にカソード電極86となる金属
膜を形成した。この場合、例えばスパッタによりCr膜
を成膜してカソード電極86を作製する。このカソード
電極86上に電界電子放出膜83を形成し、その上に絶
縁膜85をCVD法によって形成した。上記電界電子放
出膜83は、インク焼成後にカソード電極86上にパタ
ーニングを施して直径10μmに形成した。絶縁膜85
は例えば、テトラエトキシシランを反応性気体として使
用したCVD法によって形成することができる。絶縁膜
85の膜厚は、すべての例で10μmとした。また、電
子の引き出し用電極としてのゲート電極84を、絶縁膜
85膜上にCr膜スパッタまたは蒸着によって膜厚1μ
mに形成した。その後、エッチングによって直径30μ
mの開口部88を複数形成した。これらの開口部は縦横
方向に、それぞれのピッチを100μmとして形成し
た。
【0086】このようにして得られた3極構造を、2極
構造評価用のカソード部分に設置し、ゲート電極に電圧
を印加できるように配線を行い、その他は2極構造評価
と同様にして電圧−電流プロットを測定した。
【0087】上記で得られた2極構造および3極構造の
サンプルを用いて、本発明のインク使用の電界電子放出
膜からなる電極の評価を以下の要領で行った。両極間に
流れる電流が1μA/cm2以上になったときの、単位
電極間距離の電圧値を「しきい値電圧」として評価し
た。この場合、しきい値電圧が3V/μm未満を◎、3
V/μm以上,5V/μm未満を○、5V/μm以上,
15V/μm未満を△、15V/μm以上を×とした。
なお、評価結果は2極および3極のうち悪い方を優先し
た。また、電界電子放出膜83の「表面性(表面粗
度)」に関しては、非接触型3次元顕微鏡:Micro
map 530(Micromap社製)にて任意の3
点のRaを測定し、このRaが1000nm未満を○、
1000nm以上,1500nm未満を△、1500n
m以上を×とし、○を「合格」とした。
【0088】比較例1〔有機バインダーを使用し、スク
リーン印刷法で塗布した場合〕 カーボンナノチューブは、図7に示すアーク放電装置7
0(カーボンナノチューブ製造装置)を用いて作製した
SWNTs(単層ナノチューブ)を湿式精製によって精
製し、80%以上の純度のものを使用した。
【0089】この精製カーボンナノチューブと、接着剤
として酢酸ビニルと、導電粒子として銀粒子(平均粒径
1μm)と、溶剤としてエタノールとを所望の量で十分
に混合して電界電子放出電極用のインクを調製した。こ
のインクをスクリーン印刷法により、所定の電極基板上
に10μmの膜厚にて塗布した。このインク塗布膜を2
00℃にて大気中で乾燥し、470℃にて30分間焼成
後、表面処理を行ってカーボンナノチューブを表面に突
出させ、かくして2極型の電界電子放出電極を得た後、
上記と同様にして評価を行った。
【0090】比較例2〔有機バインダーを使用し、スプ
レー装置にて塗布した場合〕 比較例1で使用したものと同一のカーボンナノチューブ
と、接着剤として酢酸ビニルと、導電性粒子として銀粒
子(平均粒径1μm)と、溶剤としてエタノールとを所
望の量で十分に混合して電界電子放出電極用のインクを
調製した。このインクを、図8に示すスプレー装置によ
り電極基板73a上に5μmの膜厚にて塗布した。その
後、このインク塗膜を200℃にて大気中で乾燥し、4
70℃にて30分間焼成後、表面処理を行ってカーボン
ナノチューブを表面に突出させ、かくして2極型の電界
電子放出電極および3極型の電界電子放出電極を得た
後、これら電極の評価を行った。
【0091】比較例3〔ケイ酸ナトリウムを使用し、ス
プレー装置にて塗布した場合〕 無機接着剤としてケイ酸ナトリウムと、溶剤としてイオ
ン交換水とを混合し、イオン交換樹脂でナトリウムイオ
ンを除去した後、アンモニア水を添加してpHを11に
調整した。この混合液に、比較例1で使用したものと同
一のカーボンナノチューブと、導電性粒子として銀粒子
(平均粒径1μm)とを加え、十分に混合し、図8のス
プレー装置にて5μmの膜厚で塗布した。以下、比較例
2と同一の要領・条件で2極型の電界電子放出電極およ
び3極型の電界電子放出電極を得た後、これら電極の評
価を行った。
【0092】比較例4 〔ケイ酸ナトリウムを使用し、スプレー装置にて塗布し
た場合(低粘度)〕無機接着剤としてケイ酸ナトリウム
と、溶剤としてイオン交換水とを混合し、イオン交換樹
脂でナトリウムイオンを除去した後、アンモニア水を添
加してpHを11に調整にした。この混合液に、比較例
1で使用したものと同一のカーボンナノチューブと、導
電性粒子として銀粒子(平均粒径1μm)とを加え、十
分に混合し、図8のスプレー装置にて1μmの膜厚で塗
布した。以下、比較例2と同一の要領・条件で2極型の
電界電子放出電極および3極型の電界電子放出電極を得
た後、これら電極の評価を行った。
【0093】下記表1,2に、比較例1〜4および試験
例1〜36に係るインクの成分・組成等および、このイ
ンクを使用して作製した電界放出電極の評価結果(しき
い値電圧と表面粗度)をまとめた。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】表1,2の結果から、試験例1〜36によ
れば、比較例1〜4に比べてしきい値電圧がより低く、
かつ表面が平滑な電極が得られることが分かる。また、
試験例1〜20のインクを焼成した場合には、一種類の
金属と酸素が結合した金属酸化物からなる電界電子放出
膜が形成されるが、試験例1〜20と試験例21〜36
との対比で明らかなように、電界電子放出膜を複数の金
属と酸素とからなる化合物、あるいは金属とハロゲンと
酸素で形成することにより、しきい値電圧がより低い電
極を作製することができる。さらに、試験例21〜36
では、添加剤(ドーパント成分)の配合割合を比較的多
くすることで、しきい値電圧が著しく低い電極を作製す
ることができる。
【0097】表1,2で明らかなように、本発明に係る
電界放出電極によれば、比較例に係る電極に比べて、し
きい値電圧がより低く、表面性がより高い。このよう
に、本発明のインクを使用することで、従来方法で作製
した電界電子放出電極塗膜に比べて平滑性が高く、かつ
電子放出特性の高い薄膜を形成することができることが
分かる。
【0098】図11は試験例21〜36で作製した電界
電子放出電極についての、ドーパント濃度と抵抗率との
関係を示すグラフであって、電界電子放出膜を形成する
化合物の種類をパラメータとするものである。図11の
横軸(ドーパント濃度)は、インク塗膜を焼成した後の
「金属・ドーパント・酸素」からなる電界電子放出膜に
ついての、金属元素100モルに対するドーパント元素
のモル数を示しており、このドーパント濃度は、焼成前
のインクにおける母材100モルに対する添加剤のモル
数と等しくなっている。
【0099】ところで、電界電子放出電極では、抵抗率
が小さいほど好ましく、しきい値電圧についての特性の
優れた電界電子放出表示装置が可能になる。図11で明
らかなように、抵抗率の大小関係はITO<FTO<A
TOとなっており、ITOが最も低い。すなわち、試験
例21〜36の中では、試験例31〜36により、抵抗
率が最も低い電極が得られることが分かる。
【0100】図12は試験例32で得られた、2極型構
造における電界電子放出電極のIV特性曲線であり、評
価条件は300μmのスペーサによりアノード電極とカ
ソード電極を分け、アノード電極に電圧を印加すること
により、カソード電極上の電界電子放出電極から電子を
抽出して行った。典型的な2極型構造における電界電子
放出電極のIV特性では、しきい値電圧が0.1〜15
V/μmの範囲内にあり、ドライブ電圧は0.03〜5
V/μmの範囲内にある。試験例32では、しきい値電
圧が0.9V/μm、ドライブ電圧が0.3V/μmで
あった。
【0101】さらに、図13は試験例32で得られた、
3極型構造における電界電子放出電極の特性曲線であっ
て、絶縁層の膜厚をパラメータとして示したものである
(図10を参照)。この特性曲線を得るに際しては、カ
ソード電極上に絶縁層を設け、その上にさらにゲート電
極を設け、スペーサ(典型的に0.3mmから3mm)
を挟んでアノード電極を設置した。そして、ゲート電極
にカソード電極から電子を放出させるために電圧を印加
し、アノード電極上に形成された蛍光体を発光させるた
めに必要な運動量を電子に与えるため(電子を加速させ
るため)の電圧を印加した。カソード電極上の絶縁層の
厚みを1μm、5μm、10μmとしたときの評価結果
は図13に示すとおりである。典型的な3極型構造にお
ける電界電子放出電極のIV特性では、絶縁層の厚み1
μmでは、しきい値電圧が0.1〜15Vの範囲内にあ
り、ドライブ電圧は0.03〜5Vの範囲内にある。絶
縁層の厚み5μmでは、しきい値電圧が0.5〜75V
の範囲内にあり、ドライブ電圧は0.15〜25Vの範
囲内にある。絶縁層の厚み10μmでは、しきい値電圧
が1〜150Vの範囲内にあり、ドライブ電圧は0.3
〜50Vの範囲内にある。
【0102】試験例32のしきい値電圧とドライブ電圧
の値は、(a)絶縁層の厚み1μmの場合は、しきい値
電圧が0.9V、ドライブ電圧が0.3V、(b)絶縁
層の厚み5μmの場合は、しきい値電圧は4.5V、ド
ライブ電圧が1.5V、(c)絶縁層の厚み10μmの
場合は、しきい値電圧が9V、ドライブ電圧が3Vであ
った。
【0103】本発明では熱分解性の金属化合物を接着剤
としてカーボンナノチューブ含有電子放出膜に使用する
ことで、焼成後に残存気体の少ない膜を形成することが
できた。なお、上記実施例では、代表的な熱分解性の有
機金属化合物として二酢酸ジブチル錫、テトラクロロ
錫、テトラブトキシ錫、塩化インジウム、トリフェニル
アンチモンまたは塩化アンチモンを使用し、溶剤として
エチルアルコールを使用したが、本発明はこれらに限定
されるものではなく、他の熱分解性金属化合物および溶
剤を使用することで、同様に優れた結果を得ることがで
きる。
【0104】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の
電界電子放出電極用インクによれば、熱分解性の金属化
合物を使用することで、基板との接着性と導電性の付与
とを共に確保することができ、かつ焼成後に残存気体の
少ない膜を形成することができる。このため、膜の導電
性を従来のように導電性粒子を添加することによって確
保する必要がないため、薄膜で平滑性に優れた、電子放
出特性の高い電界電子放出膜を形成することができる。
またこの電界電子放出膜を用いれば、高精細な画素を有
する電界電子放出表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態3の電界電子放出表示装置
の模式的な一部断面図である。
【図2】本発明の実施の形態3の電界電子放出表示装置
における1つの電界電子放出膜の模式的な斜視図であ
る。
【図3】本発明の実施の形態3における電界電子放出膜
の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部端
面図である。
【図4】本発明の実施の形態3の電界電子放出表示装置
におけるアノードパネルの製造方法を説明するための基
板等の模式的な一部端面図である。
【図5】本発明の実施の形態4における電界電子放出素
子の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部
端面図である。
【図6】本発明の実施の形態4の電界電子放出表示装置
の模式的な一部端面図である。
【図7】カーボンナノチューブの製造装置の一例を示し
た模式図である。
【図8】スプレー塗布装置の概略図である。
【図9】2極評価装置の概略図である。
【図10】3極評価装置における電界電子放出電極の構
造を示す断面図である。
【図11】複数の試験例の結果に係るもので、ドーパン
ト濃度と電界電子放出電極の抵抗率を、電界電子放出膜
を形成する化合物の種類をパラメータとして示すグラフ
である。
【図12】試験例32で得られた、2極型構造における
電界電子放出電極の特性曲線である。
【図13】試験例32で得られた、3極型構造における
電界電子放出電極の特性曲線であって、絶縁層の膜厚を
パラメータとして示したものである。
【符号の説明】
CP…カソードパネル、AP…アノードパネル、10…
支持体、11A…配線、11カソード電極、12…絶縁
層、13…ゲート電極、14,14A,14B…開口
部、15…電界電子放出膜、20…カーボンナノチュー
ブ、21…マトリックス、30…基板、32…ブラック
マトリックス、33…アノード電極、34…枠体、35
…スペーサ、36…貫通孔、37…チップ管、40,4
0A…カソード電極制御回路、41…ゲート電極制御回
路、42…アノード電極制御回路、50…感光性被膜、
51…感光性被膜の露光部分、52…感光性被膜の残
部、53…マスク、54…孔部、61…ロータリーポン
プ、62…真空計、63…放熱室、64…黒鉛材、65
…触媒含有黒鉛材、66…Heガス導入口、67…煤回
収口、68…陰極、69…陽極、70…カーボンナノチ
ューブ製造装置、71…直流電源、72…インク用タン
ク、72a…コック、73…電界電子放出電極、73a
…電極基板、73b…インク塗膜、74…エアーチャッ
ク、75…ノズル、76…エアー配管、77…弁制御用
エアー配管、78…ガラス押さえ用錘、79…アノード
電極、79a…ITO膜、80…ガラススペーサー、8
1…カソード電極、81a…電界電子放出膜、82…電
源および、電圧・電流測定器、83…電界電子放出膜、
84…ゲート電極、85…絶縁膜、86…カソード電
極、87…基材(支持体)、88…開口部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 室山 雅和 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 井上 誠 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 Fターム(参考) 5C127 AA01 AA04 AA20 BA09 BA15 BB07 CC02 CC10 DD13 DD64 EE08 EE20

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カーボンナノチューブ構造体を0.00
    5〜5重量%と、熱分解性の金属化合物と、溶剤とを含
    むことを特徴とする電界電子放出電極用インク。
  2. 【請求項2】 前記熱分解性の金属化合物が有機金属化
    合物であることを特徴とする請求項1に記載の電界電子
    放出電極用インク。
  3. 【請求項3】 前記熱分解性の金属化合物が金属塩であ
    ることを特徴とする請求項1に記載の電界電子放出電極
    用インク。
  4. 【請求項4】 前記熱分解性の金属化合物が有機金属塩
    化合物であることを特徴とする請求項1に記載の電界電
    子放出電極用インク。
  5. 【請求項5】 前記熱分解性の金属化合物が複数の金属
    からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の
    電界電子放出電極用インク。
  6. 【請求項6】 前記複数の金属が、Snと、Inおよび
    Sbから選ばれる少なくとも1種の添加金属であること
    を特徴とする請求項5に記載の電界電子放出電極用イン
    ク。
  7. 【請求項7】 前記複数の金属が、SnとInであり、
    Inに対するSnの割合が6原子%以上であることを特
    徴とする請求項6に記載の電界電子放出電極用インク。
  8. 【請求項8】 キレート剤がさらに含有されていること
    を特徴とする請求項1に記載の電界電子放出電極用イン
    ク。
  9. 【請求項9】 粘度が0.001〜0.5Pa・sであ
    ることを特徴とする請求項1に記載の電界電子放出電極
    用インク。
  10. 【請求項10】 固形分濃度が0.5〜50重量%であ
    ることを特徴とする請求項1に記載の電界電子放出電極
    用インク。
  11. 【請求項11】 電界電子放出電極に用いられる電界電
    子放出膜の製造方法であって、カーボンナノチューブ構
    造体を0.005〜5重量%と、熱分解性の金属化合物
    と、溶剤とを含むインクを電極基板上に塗布する工程を
    少なくとも含むことを特徴とする電界電子放出膜の製造
    方法。
  12. 【請求項12】 支持体上に順次形成されたカソード電
    極および電界電子放出膜からなる2極型の電界電子放出
    電極の製造方法であって、 前記電界電子放出膜の製造工程に、カーボンナノチュー
    ブ構造体を0.005〜5重量%と、熱分解性の金属化
    合物と、溶剤とを含むインクを前記カソード電極上に塗
    布する工程と、該塗布膜を焼成する工程とを含むことを
    特徴とする電界電子放出電極の製造方法。
  13. 【請求項13】 支持体上に順次形成されたカソード電
    極、絶縁層およびゲート電極と、前記絶縁層およびゲー
    ト電極に共通に形成された開口部と、少なくとも該開口
    部におけるカソード電極上に形成された電界電子放出膜
    とからなる3極型の電界電子放出電極の製造方法であっ
    て、 前記電界電子放出膜の製造工程に、カーボンナノチュー
    ブ構造体を0.005〜5重量%と、熱分解性の金属化
    合物と、溶剤とを含むインクを前記カソード電極上に塗
    布する工程と、該塗布膜を焼成する工程とを含むことを
    特徴とする電界電子放出電極の製造方法。
  14. 【請求項14】 複数の電界電子放出電極を備えたカソ
    ードパネルと、蛍光体層およびアノード電極を備えたア
    ノードパネルとが、それぞれの周縁部で接合されてなる
    電界電子放出表示装置の製造方法であって、 前記電界電子放出電極を請求項12または13に記載の
    方法で製造したことを特徴とする電界電子放出表示装置
    の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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