JP2003301014A - イオン性眼用レンズ及びそれを用いた薬物徐放性眼用レンズ - Google Patents

イオン性眼用レンズ及びそれを用いた薬物徐放性眼用レンズ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 眼用レンズとしての透明性、形状安定性を有
する実用的なイオン性の高分子ゲルにおいて、カチオン
性置換基を有する薬物の徐放効果が優れた眼用レンズ及
びそれを用いた薬物徐放性眼用レンズを提供する。 【解決手段】 親水性モノマーと、下記構造式(I)及
び(II)で示されるリン酸基を側鎖に有するメタクリレ
ートより選択される少なくとも1種と、これらの成分と
共重合可能なモノマーとの共重合体からなることを特徴
とするイオン性眼用レンズ及びそれを用いた薬物徐放性
眼用レンズ。 【化5】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イオン性眼用レン
ズ及び薬物徐放性眼用レンズに関するものである。さら
に詳しくは、良好な透明性、形状安定性、薬物徐放効果
を有する高分子ゲルからなるコンタクトレンズや眼内レ
ンズ等のイオン性眼用レンズ及びこれを用いた薬物徐放
性眼用レンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】高分子ゲルは、ソフトでウエットな材料
として医療分野において広く研究が行われている。中で
も、最も古くから利用されている分野の一つとして眼用
レンズが挙げられる。これは、ポリヒドロキシエチルメ
タクリレートゲルから始まり、その含水系という特性を
生かしながら機能化が図られてきた。
【0003】機能化の一つとして、薬物の生体内動態を
考慮した薬物放出システム(DDS)の開発が挙げられ
る。DDS機能を有する眼用レンズの概念は古くから提
唱されており、また研究も盛んに行われている。
【0004】眼科用製剤の中で前眼部に局所投与される
製剤には、点眼液、懸濁液、眼軟膏などがあり、それぞ
れ特徴を有している。点眼液の投与は比較的容易である
が、点眼後速やかに涙液により希釈され、涙道を通り排
出されてしまう。すなわち、薬物を十分投与するには角
膜と点眼液との接触時間を十分長くする必要がある。一
方、懸濁液や眼軟膏は、角膜との接触時間が長くなる点
では点眼液より優れているが、眼刺激や視野が曇るとい
う欠点がある。
【0005】これらの問題を解消するためのDDSデバ
イスとして、ソフトコンタクトレンズ状のプラスチック
に薬物を封入し、眼内へ挿入して一定量ずつ薬物を溶出
させ、その接触部位から薬物を吸収させるシステムがあ
る。これは、緑内障治療薬を含有し、エチレンビニルア
セテートの中にピロカルピン塩基を封入したものである
(製品名:オキュサート)。このシステムは、含有され
たピロカルピン塩基が約7日間にわたって放出されるの
で、患者を頻回点眼から解放し、投薬忘れをなくすとい
った利点がある。しかしながら、装着直後に急激に大量
の薬物が放出され、かつ、一定速度に到達するまでに約
8時間を要すること、及び異物感に伴う装着不能や眼刺
激症状などの問題点もある。
【0006】さらに、このような問題点を改良する試み
として特公昭52−32971号公報に記載されたもの
がある。これは、水和状態のポリビニルアルコールに電
解性基または極性基を持つモノマーを活性線照射処理に
よりグラフトし、得られる含水ゲルに作用物質を含浸さ
せる薬物徐放性を有する高分子ゲルである。この高分子
ゲルは、網目構造による制御に加えて、グラフトした電
解性基または極性基により含有薬物を効率よく徐放させ
るものである。電解性基または極性基としては、塩の形
のカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などのアニ
オン性官能基や第4アンモニウム塩基などを挙げてい
る。
【0007】一方で、同様に問題点を改善する試みとし
て特開平6−145456、特開平6−306250号
公報に記載されたものがある。すなわち、アニオン性置
換基を有する薬物を眼用レンズ内部に強く保持し、徐放
効果を効率よく発現させることを目的としている。詳し
くは、側鎖に第四級アンモニウム塩などのカチオン性置
換基を有する高分子ゲルを合成し、その置換基にイオン
交換によりアニオン性置換基を有する薬物を配位させ
る。イオン結合により配位した薬物は、徐放環境下にお
いてそのイオン交換反応により、配位した薬物が徐々に
放出されるメカニズムとなっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公昭
52−32971号公報に記載された官能基を高分子ゲ
ル中への導入方法は、ガンマ線という特殊な設備を有す
るものであり、汎用性、実用性といった点で問題とな
る。また、眼用レンズとしての形状安定性など、実用上
必要な網目構造を得るためにはガンマ線の照射量を制御
する必要があり、照射量が多すぎると網目構造が完全に
形成され、極性基と作用物質との間の相互作用が発揮さ
れず、効果的な薬物徐放性が得られない問題を有してい
る。
【0009】一方、特開平6−145456、特開平6
−306250号公報では、眼用レンズ中にカチオン性
官能基を有するために、温度、pHなどの外部環境変化
に対して非常に敏感に反応し、眼用レンズとして必要不
可欠な形状安定性を得ることが難しい。すなわち、眼用
レンズとしての視力矯正能が安定して発現され難いとい
った問題点がある。また、カチオン性官能基の性質も薬
物の徐放前後で異なるため、同様に眼用レンズとしての
形状安定性などの物性にも影響を与える。
【0010】また、特公昭52−32971、特開平6
−145456、特開平6−306250号公報の高分
子ゲルでは、約60%の官能基のみしか薬物含有量に関
与できないので、導入した官能基に相応する量の薬物を
含有させることは困難である。このため、高分子ゲルの
設計時に薬物の含有量と徐放量との相関が得られないの
で実用的ではない。
【0011】ところで、カチオン性官能基やアニオン性
官能基を有するモノマーを成分とする含水性ソフトコン
タクトレンズは、イオン性であるがために汚れが付着し
やすい、レンズの含水率、膨潤率の制御が困難であると
いう課題を有している。
【0012】例えば、第四級アンモニウム塩基、アミノ
基、スルホン酸基、カルボキシル基等の電解性基や極性
基を有するモノマーを用いた場合は、その適用に際して
は様々な工夫を講じる必要がある。
【0013】従って、本発明の目的は、眼用レンズとし
ての透明性、形状安定性を有する実用的なイオン性の高
分子ゲルにおいて、カチオン性置換基を有する薬物をイ
オン交換反応により、眼用レンズ内部に保持して良好な
徐放効果を発揮できる眼用レンズ及びそれを用いた薬物
徐放性眼用レンズを提供することである。また、高分子
ゲル中に導入したリン酸基に相応した量の薬物を含有す
ることができるので、使用する薬物の薬効に合わせてそ
の含有量を制御することが可能な薬物徐放性を有するイ
オン性高分子ゲルからなる眼用レンズ及びそれを用いた
薬物徐放性眼用レンズを提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、電解性基や極
性基を有する各種モノマーについて鋭意検討を重ねた結
果、リン酸基を有する特定構造のモノマーを共重合した
高分子ゲルの場合、適度なイオン性、優れた透明性と形
状安定性を有することを見出した。さらに本発明は、リ
ン酸基を側鎖に有する高分子ゲルの場合、カチオン性置
換基を有する薬物を効果的に保持して徐放させることが
でき、かつ、透明性、形状安定性にも優れるという知見
に基づくものである。
【0015】すなわち、本発明は、親水性モノマーと、
下記構造式(I)及び(II)で示されるリン酸基を側鎖
に有するメタクリレートより選択される少なくとも1種
と、これらの成分と共重合可能なモノマーとの共重合体
からなることを特徴とするイオン性眼用レンズである。
【0016】
【化3】
【0017】また、本発明は、親水性モノマーと、上記
構造式(I)及び(II)で示されるリン酸基を側鎖に有
するメタクリレートより選択される少なくとも1種と、
これらの成分と共重合可能なモノマーとの共重合体から
なる薬物徐放性眼用レンズにおいて、該共重合体内部に
カチオン性置換基を有する薬物を含有することを特徴と
する薬物徐放性眼用レンズである。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明す
る。
【0019】本発明における共重合体を構成するモノマ
ーである親水性モノマーとしては、少なくとも1種の親
水基を分子内に有するものである。例えば、ヒドロキシ
メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート、2−ポリエチレングリコール(メ
タ)アクリレート、2−ポリプロピレングリコール(メ
タ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、
N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリ
ドンなどが挙げられるが、これらを2種以上併用するこ
ともできる(本明細書の「(メタ)アクリレート」は、
アクリレートとメタクリレートの両方を意味する)。
【0020】本発明において、共重合体を構成するもう
一つのモノマーであるリン酸基を側鎖に有するモノマー
は、共重合体中のリン酸基がイオン相互作用によりカチ
オン性薬物を適度に保持し、良好な徐放効果を奏するも
のである。
【0021】本発明に用いられるリン酸基を側鎖に有す
るモノマーとしては、下記構造式(I)及び/または
(II)で示されるメタクリレートである。nは構造式
(I)では1〜3が好ましい。nが4以上になると分子
中のアルキレン鎖が長くなり薬物との相互作用が十分に
図れず、含有量や放出量に影響がで、また良好な徐放効
果も得られない。また、構造式(II)は繰り返し単位中
に酸素原子を含む化合物であり、nは1〜4が好まし
い。nが5以上になると分子鎖が長くなり薬物との相互
作用が十分に図れず、含有量や放出量に影響がで、また
良好な徐放効果も得られない。下記構造式(I)、(I
I)で示される化合物はモノエステル化合物であるが、
さらに本発明においては、これらの化合物のジエステル
化合物も本発明の効果を妨げない範囲、モノエステル化
合物とジエステル化合物の総量に対して30重量%程度
以下で含有することができる。
【0022】
【化4】
【0023】前記親水性モノマー及びリン酸基を側鎖に
有するモノマーの使用量は、親水性モノマーに対して
0.1〜40.0wt%の範囲でリン酸基含有モノマー
を使用することが好ましい。特に好ましくは、リン酸基
含有モノマーが5〜20wt%の範囲である。0.1w
t%未満では、薬物のゲル内への含有量が極端に少なく
なり、また40.0wt%を越えると、高分子ゲルとし
ての形状安定性や機械的強度が低下する場合がある。
【0024】本発明は、上記成分に加えて、架橋性モノ
マーを使用することができる。架橋性モノマーは、使用
しなくてもよいが、使用することで高分子ゲルの網目構
造の形成及び機械強度の調節を図ることができる。架橋
性モノマーとしては、例えばエチレングリコールジメタ
クリレート、メチレンビスアクリルアミド、2−ヒドロ
キシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、トリメチロ
ールプロパントリアクリレートなどが挙げられる。架橋
性モノマーの使用量は、総モノマー(架橋性モノマーを
除く)の使用量に対して0.1〜4.0wt%が好まし
い。特に好ましくは、0.1〜1.0wt%である。
【0025】本発明は、さらに任意の共重合可能なモノ
マーを使用することができる。例えば、疎水性モノマー
を用いれば、得られる高分子ゲルの含水率や膨潤率の調
節作用、高分子ゲル内への薬物の含有量の微調整などが
期待できる。使用する疎水性モノマーとしては、親水性
モノマー及びリン酸基含有モノマーと相溶性があればい
かなるものでも可能であるが、例えばメチルメタクリレ
ート、イソブチルメタクリレート、2,2,2−トリフ
ルオロメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート
などが好ましい。
【0026】本発明のイオン性眼用レンズを薬物徐放性
眼用レンズとして利用する場合、使用できる薬物はカチ
オン性置換基を有する薬物である。カチオン性置換基を
有する薬物としては、分子内に少なくとも1つの第四級
アンモニウム塩基、及び第一級〜第三級アミン塩基を有
する置換基なる群より選択される有機化合物が好まし
い。好ましい薬理効果を発現するものとして、例えばメ
チル硫酸ネオスチグミン、塩酸オキシブプロカイン、硝
酸ナファゾリン、塩酸ナファゾリン、コンドロイチン硫
酸ナトリウム、塩酸ピロカルピン、臭化ジスチグミン、
ヨウ化エコチオパート、エピネフェリン、酒石酸水素エ
ピネフェリン、塩酸カルテオロール、塩酸ベフノロール
などが挙げられる。
【0027】本発明の薬物徐放性を有する高分子ゲル
は、前記の眼用装着物以外の各種用途にも応用できる。
このような用途としては、種々の薬物放出システム(D
DS)、殺菌シート、抗菌シート、創傷被覆材、湿布材
などが挙げられ、使用する薬物も用途に応じて適宜選択
することができる。
【0028】本発明の眼用レンズの製造に際しては、ま
ず上記モノマーの混合物に重合開始剤を添加し、さらに
撹拌・溶解させる。重合開始剤としては、一般的なラジ
カル重合開始剤であるラウロイルパーオキサイド、クメ
ンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド
などの過酸化物やアゾビスバレロニトリル、アゾビスイ
ソブチロニトリル(AIBN)などが使用できる。上記
重合開始剤の添加量としては、モノマー総量に対して1
0〜3500ppm程度が好ましい。
【0029】上記モノマー混合液を金属、ガラス、プラ
スチックなどの眼用レンズの成形型に入れ、密閉し、恒
温槽などにより段階的もしくは連続的に25〜120℃
の範囲で昇温し、5〜120時間で重合を完結させる。
重合に際しては、紫外線や電子線、ガンマ線などを利用
することも可能である。また、上記モノマー混合液に水
や有機溶媒を添加し、溶液重合を適用することもでき
る。
【0030】上記の重合終了後、室温に冷却し、得られ
た重合物を成形型から取り出し、必要に応じて切削、研
磨加工する。得られた眼用レンズは水和膨潤させて含水
ゲルとする。この水和膨潤に使用される液体(膨潤液)
としては、例えば水、生理食塩水、等張性緩衝液などが
挙げられる。前記膨潤液を60〜100℃に加温し、一
定時間浸漬させ、速やかに水和膨潤状態にする。また、
前記膨潤処理により、重合体中に含まれる未反応性モノ
マーを除去することも可能となる。
【0031】次に、本発明の眼用レンズを薬物徐放性眼
用レンズとして用いる場合の説明をする。カチオン性置
換基を有する薬物を溶解させた薬物溶液を調製し、その
薬物溶液中に前記含水ゲルを浸漬することにより、含水
ゲル中に薬物を含有した薬物徐放性高分子ゲルを得る。
【0032】薬物を溶解させる溶媒としては、水、親水
性溶媒、水と親水性溶媒との混合溶媒などがあり、親水
性溶媒としては、例えばエタノール、メタノール、イソ
プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類やジメ
チルスルホキシドなどが挙げられる。
【0033】前記薬物溶液中に含有される薬物濃度は、
薬物の溶解度、薬効が発現するための最小有効濃度、最
大安全濃度などにより、それぞれの薬物によって適宜選
定されるものであるが、1.0×10-6〜1.0×10
-2mol/Lの濃度が一般的に好ましい。
【0034】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
【0035】(実施例1)2−ヒドロキシエチルメタク
リレート(HEMA)90wt%、リン酸基含有モノマ
ー(化I;n=2)(PhMA)10wt%、エチレン
グリコールジメタクリレート(EDMA)0.2wt%
(外部添加)、AIBN2000ppmを混合し、十分
に窒素置換をしながら約1時間撹拌した。撹拌後、モノ
マー混合液を眼用レンズ用の成形型に入れ、50〜10
0℃の範囲で25時間かけて昇温させ、重合体を得た。
得られた重合体を室温に戻し、容器から取り出し、約8
0℃の生理食塩水中に約4時間浸漬することで水和膨潤
させた。得られた眼用レンズは、含水率38%の無色透
明な含水ゲルであった。
【0036】次に、この含水ゲルからなるレンズを生理
食塩水中にて、121℃で20分間の加熱処理を施し、
加熱処理の前後における生理食塩中のレンズのサイズを
常温にて測定した。
【0037】また、この含水ゲルからなるレンズをあら
かじめ調製しておいた薬物モデルである硝酸ナファゾリ
ンの0.5wt%水溶液10mL中に25℃、48時間
浸漬させることで含水ゲル中に硝酸ナファゾリンを含有
させた。さらに、硝酸ナファゾリンを含有した含水ゲル
を蒸留水20mL中に25℃、24時間浸漬し、リン酸
基とイオン相互作用していない遊離の薬物を除去した。
【0038】前記の硝酸ナファゾリン含有ゲルを25
℃、10mLの生理食塩水中に浸漬させ、その浸漬液を
経時的に24時間サンプリングし、それらに含有される
硝酸ナファゾリン量をHPLC(日本分光(株)製)を
用いて定量した。この定量を、浸漬液中に完全に薬物放
出が確認できなくなるまで繰り返し、その薬物の積算溶
出量から含水ゲル中の薬物取り込み量を算出した。
【0039】(実施例2)HEMA90wt%、リン酸
基含有モノマー(化I,n=2)(PhMA)10wt
%、AIBN2000ppmを混合し、実施例1と同様
の方法で含水ゲルを得た。得られた含水ゲルのサイズ変
化、含水ゲルの硝酸ナファゾリンの薬物取り込み量を実
施例1と同様の方法で定量し、放出挙動を調べた。
【0040】(比較例1)表1に示した配合量でHEM
A、カルボキシル酸基を有する有機化合物としてメタク
リル酸(MAA)及びEDMAからなるモノマー混合物
を用いて実施例1と同様の方法で含水ゲルを得た。得ら
れた含水ゲルのサイズ変化、含水ゲルの硝酸ナファゾリ
ンの生理食塩水中への放出挙動及び、ゲル中の薬物取り
込み量の定量は、実施例1と同様に行った。
【0041】(比較例2)表1に示した配合量でHEM
A、スルホン酸基を有する化合物としてスチレンスルホ
ン酸(StSA)及びEDMAからなるモノマー混合物
を用いて実施例1と同様の方法で含水ゲルを得た。含水
ゲルのサイズ変化、得られた含水ゲルの硝酸ナファゾリ
ンの生理食塩水中への放出挙動及び、ゲル中の薬物取り
込み量の定量は、実施例1と同様に行った。
【0042】実施例1、2、比較例1、2の含水ゲルの
薬物を含む前のサイズの測定結果を表2に示した。
【0043】この結果より、実施例2の含水ゲルは、実
施例1の含水ゲルと同様にサイズ変化が少なく、優れた
形状安定性が認められた。すなわち、本発明のイオン性
高分子ゲルは、架橋性モノマーを用いない場合でも優れ
た形状安定性を有することが確認できる。
【0044】実施例1、比較例1、2の含水ゲルからの
薬物徐放曲線を図1に示す。実施例1では約15時間に
わたって安定した徐放性を有するが、比較例1、2は約
4時間程度で80%以上が放出され、約6時間で飽和放
出量に達している。この結果、本発明のリン酸基含有の
高分子ゲルの徐放能力が確認できる。
【0045】実施例2の架橋性モノマーを使用しない高
分子ゲルと実施例1の薬物徐放曲線を図2に示した。実
施例1、2による薬物徐放性高分子ゲルは、一定の徐放
挙動を示した。すなわち、本発明による薬物徐放性は架
橋成分が形成する網目構造による薬物の制御ではなく、
リン酸置換基とのイオン交換反応による影響が大きいこ
とが確認できる。
【0046】薬物徐放前後における含水ゲルのサイズの
測定結果を表3に示した。
【0047】この結果より、実施例2の含水ゲルは、実
施例1の含水ゲルと同様にサイズ変化が少なく、優れた
形状安定性が認められた。すなわち、本発明のイオン性
高分子ゲルは、架橋性モノマーを用いない場合でも優れ
た形状安定性を有することが確認できる。
【0048】また、実施例1、2の含水ゲルは、比較例
1、2の含水ゲルよりもサイズ変化が少なく、薬物除放
前後で優れた形状安定性が認められた。これは、含有し
た薬物の放出後にフリーになった含水ゲル中の官能基同
士の反発が、比較例1、2に比べて実施例1、2は弱い
ためであると考えられる。この結果から本発明のイオン
性眼用レンズの形状安定性、特に薬物徐放性眼用レンズ
の課題とされていた装用時のサイズ変化について解消さ
れたことが確認できる。
【0049】(実施例3〜5)表1に示した配合量でH
EMA、EDMA及び異なる側鎖構造を有するリン酸基
含有モノマーを混合し、実施例1と同様の方法で含水ゲ
ルを得た。得られた含水ゲルに対して実施例1と同様の
操作を行い、含水ゲル中に硝酸ナファゾリンを含有さ
せ、次いでゲル中の遊離の薬物を除去した。含水ゲル中
に含有した硝酸ナファゾリンの生理食塩水中への放出挙
動及び、ゲル中の薬物取り込み量の定量は、実施例1と
同様に行った。
【0050】本例の含水ゲルからの薬物徐放曲線を図3
に示した。実施例1及び3〜5の各含水ゲルにおいてそ
れぞれ異なる徐放曲線が得られた。これはリン酸基を有
するモノマーの側鎖長に起因するもので、側鎖の自由度
が小さい(側鎖長が短い)ほど徐放速度は緩やかになる
ためである。すなわち、使用する薬物によって適当な側
鎖構造を有するリン酸基含有モノマーを選択すること
で、薬物の徐放性を制御することが可能である。
【0051】また、表4で示すように実施例1及び3〜
5は、含水ゲル中のリン酸基の含有量に相応してほぼ一
定の薬物取り込み量が得られる。
【0052】(実施例6)実施例1で使用したリン酸基
含有モノマー(PhMA)の配合量を表5の割合で含む
含水ゲルを調製した。HEMA量とAIBN量は実施例
1と同様である。得られた各含水ゲルに対して実施例1
と同様の操作を行い、含水ゲル中に取り込まれた硝酸ナ
ファゾリン量を定量した。結果を表5に示す。
【0053】含水ゲル中のリン酸基含有モノマーの配合
量と薬物取り込み量との関係を図4に示した。本実施例
によりリン酸基含有モノマー濃度に対し薬物取り込み量
が比例的に増加することが確認できる。したがって、リ
ン酸基含有モノマー量を調節して高分子ゲルを合成すれ
ば薬物動態に関しての制御が可能である。
【0054】(実施例7)実施例1の含水ゲルを、あら
かじめ調製しておいた別の薬物モデルであるビタミンB
6の0.5wt%水溶液10mL中に25℃、48時間
浸漬して含水ゲル中にビタミンB6を含有させた。さら
に、ビタミンB6が吸着した含水ゲルを蒸留水20mL
中に25℃、24時間浸漬し、リン酸基とイオン相互作
用していない遊離の薬物を除去した。
【0055】その後、実施例1と同様の方法で、含有さ
れるビタミンB6量を定量した。
【0056】本例の含水ゲルからのビタミンB6の徐放
曲線を図5に示した。この結果から、分子量が異なる薬
物においても、カチオン性置換基の存在による徐放制御
は有効であることが分かる。すなわち、本発明の薬物徐
放性高分子ゲルは、一定の徐放挙動を発揮できるリガン
ドであるリン酸基を有するので、薬物の化学構造によら
ず、幅広い応用範囲が期待できる。また、薬物取り込み
量は、表4に示すように5.97×10-5mol/1枚
となり、含水ゲル中のリン酸基量に相応している。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【発明の効果】本発明によれば、眼用レンズとして必要
な透明性や形状安定性を有するイオン性高分子ゲルを提
供できる。また、含水ゲル内部にリガンドとしてのリン
酸基を有するので、カチオン性置換基を有する薬物をイ
オン交換反応により保持して良好に徐放させることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基を有
する高分子ゲルの薬物徐放挙動。
【図2】架橋性モノマーを用いない場合の含水高分子ゲ
ルの薬物徐放挙動。
【図3】リン酸基含有モノマーの側鎖構造の変化に伴う
薬物徐放挙動の変化。
【図4】リン酸基含有モノマー配合量と薬物取り込み量
との関係。
【図5】ビタミンB6の徐放挙動。
フロントページの続き Fターム(参考) 2H006 BB06 4C081 AB22 AB23 CA081 CC01 CE02 DA02 DA12 EA05 4J027 AC03 AC04 AC06 BA07 BA08 BA14 BA15 BA20 BA24 CA25 CA31 CB04 CC02 CC05 CC06 CD04 4J100 AL03S AL08Q AL08S AL09P AL62R AL63R AL66R AM19P AM24R AQ08P BA03P BA03R BA08P BA08Q BA65Q BC04S CA04 CA05 DA37 DA62 JA33

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 親水性モノマーと、下記構造式(I)及
    び(II)で示されるリン酸基を側鎖に有するメタクリレ
    ートより選択される少なくとも1種と、これらの成分と
    共重合可能なモノマーとの共重合体からなることを特徴
    とするイオン性眼用レンズ。 【化1】
  2. 【請求項2】 親水性モノマーと、下記構造式(I)及
    び(II)で示されるリン酸基を側鎖に有するメタクリレ
    ートより選択される少なくとも1種と、これらの成分と
    共重合可能なモノマーとの共重合体からなる薬物徐放性
    眼用レンズにおいて、該共重合体内部にカチオン性置換
    基を有する薬物を含有することを特徴とする薬物徐放性
    眼用レンズ。 【化2】
  3. 【請求項3】 カチオン性置換基を有する薬物が、分子
    内に少なくとも1つの第四級アンモニウム塩基、及び第
    一級〜第三級アミン塩基を有する置換基なる群より選択
    される有機化合物である請求項2記載の薬物徐放性眼用
    レンズ。
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