JP2003294750A - 細胞チップ作製方法と標的蛋白質スクリーニング方法 - Google Patents
細胞チップ作製方法と標的蛋白質スクリーニング方法Info
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Abstract
定した細胞チップと、アレイアー等の特別な装置を必要
とせずにこの細胞チップを作製する方法、さらにはこの
細胞チップを用いた標的蛋白質スクリーニング方法を提
供する。 【解決手段】 発現パターンの違いによってそれぞれが
発現する標的蛋白質が特定可能である複数種の真核細胞
の混合培養物を、担体上の微小領域に高密度で固定配置
することを特徴とする細胞チップ作製方法と、この方法
で作製された細胞チップ、並びにこの細胞チップの各細
胞にプローブを反応させて、プローブと結合する標的蛋
白質を検出することを特徴とする標的蛋白質スクリーニ
ング方法。
Description
質と各種物質との相互作用を調べるために利用できる細
胞チップの作製方法と、この方法で作製した細胞チッ
プ、並びにこの細胞チップを用いた標的蛋白質スクリー
ニング方法に関するものである。
遺伝子が発見されている。これらの遺伝子がコードして
いる蛋白質の機能を調べたり、これらの蛋白質を利用し
て新しい医薬品を開発するためには、これらの蛋白質
(標的蛋白質)と結合する物質を見つける必要がある。
そこで、そのためのアッセイ法が種々開発されてきた
(E.M. Phizicky and S. Fields, Microbiol. Rev. 59:
94-123, 1995; A. R. Mendelsohn and R. Brent, Scien
ce 284: 1948-1950, 1999)。最も一般的な方法は、複
数の標的蛋白質を担体に固定し、これに標識したプロー
ブを作用させて、結合するかどうかを調べる方法であ
る。従来、標的蛋白質の固定化が容易なウエスタンブロ
ッティング法とELISA法が広く用いられているが、次の
ような問題点がある。 (a) 多量の標的蛋白質を調製する必要がある。 (b) 標的蛋白質の単離精製に、時間と労力を要する。 (c) 単離精製や固定化の過程で標的蛋白質が分解・変
性することがある。 (d) スクリーニングするのに多量のプローブが必要で
ある。
に、最近、蛋白質マイクロアレイ法が開発された。すな
わち、標的蛋白質をスライドグラス上の微少領域に格子
状に高密度で固定化した蛋白質チップを用いる方法であ
る(MacBeath & Schreiber,Science 289:1760-1763, 20
00)。
(b)と(c)の問題点は残されていた。そこで、標的蛋白質
の単離精製プロセスを省くために、標的蛋白質の発現ベ
クターをスライドグラス上に格子上のスポットに固定し
たのち、この上で細胞を培養し、発現ベクターを培養細
胞内に導入することによって、標的蛋白質発現細胞を格
子状に配置した細胞チップを作製し、各細胞が発現する
標的蛋白質にプローブを作用させる方法も開発されてい
る(J. Ziauddin & D.M. Sabatini, Nature 411:107-11
0, 2001)。
チップの場合には、標的蛋白質の単離精製に多くの労力
や時間を必要とした。また、蛋白質の単離精製や担体へ
の固定化の過程で蛋白質が分解したり変性したりして、
標的蛋白質としての機能を喪失してしまう危険性も存在
した。
した担体上で細胞を培養し、発現ベクターを培養細胞内
に導入することによって標的蛋白質発現細胞を担体上に
固定配置した細胞チップ(Nature 411:107-110, 2001)
の場合には、蛋白質を単離精製したり、担体上へ固定配
置したりする行程は省略することができる。しかしなが
ら、この従来の細胞チップの作製には、発現ベクターを
1スポットづつ固定するために、アレイアーやドットブ
ロッターのような特別の装置を必要とし、しかも発現ベ
クターは一定間隔を置いて1スポットづつ固定するた
め、1枚の担体に固定配置することのできる標的蛋白質
発現細胞の種類は制限され、多数の標的蛋白質を1枚の
細胞チップで試験することができないという問題点を有
してもいた。
点に鑑みてなされたものであって、蛋白質の単離精製や
担体への固定プロセスを省き、特別な装置を必要とせず
に、高密度で細胞を固定配置した細胞チップを提供する
ことを課題としている。
した細胞チップ、この細胞チップを用いた標的蛋白質ス
クリーニング方法を提供することを課題としてもいる。
を解決するための第1の発明として、発現パターンの違
いによってそれぞれが発現する標的蛋白質が特定可能で
ある複数種の真核細胞混合培養物を、担体上の微小領域
に高密度で固定配置することを特徴とする細胞チップ作
製方法を提供する。
ては、真核細胞が標的蛋白質の発現ベクターを導入した
真核細胞であることを好ましい態様としている。
様においては、真核細胞が哺乳動物培養細胞であること
を別の好ましい態様としてもいる。
発明の方法で作製した細胞チップであって、発現パター
ンの違いによってそれぞれが発現する標的蛋白質が特定
可能である複数種の真核細胞が、担体上の微小領域に高
密度でランダムに固定配置されていることを特徴とする
細胞チップを提供する。
第3発明の細胞チップの各細胞にプローブを反応させ
て、プローブと結合する標的蛋白質を検出することを特
徴とする標的蛋白質スクリーニング方法を提供する。
いて詳しく説明する。
「細胞チップ」は、標的蛋白質を発現する1個の真核細
胞を構成成分とする。すなわち、標的蛋白質を発現する
1個の真核細胞が、従来の蛋白質アレイにおける標的蛋
白質の1個のスポットに相当する。そして、標的蛋白質
の発現パターンがそれぞれに異なる複数種の真核細胞
が、担体上の微少領域に高密度で固定配置されている。
は、それぞれが発現する標的蛋白質の発現パターンの違
いによって互いに他の真核細胞と区別される。「発現パ
ターンの違い」とは、例えば、発現する蛋白質の種類の
違い、発現量の違い、蛋白質の発現局在の違い等であ
る。例えば、特定の細胞種でのみ発現する標的蛋白質を
発現する真核細胞は、その標的蛋白質を発現しない他の
細胞種と区別される。また、他の生物種由来の外来性蛋
白質を発現する真核細胞は、その内在性蛋白質のみを発
現する同一細胞種と区別される。さらに、特定の蛋白質
を過剰発現する真核細胞は、その蛋白質の発現量が正常
である同一細胞種と区別される。またさらに、特定蛋白
質の発現が特定の細胞部位に局在する細胞種は、その発
現局在部位が異なる同一細胞種と区別される。そして、
真核細胞が互いに区別されることによって、それぞれが
発現する標的蛋白質が特定可能である。
生物種由来の、あらゆる蛋白質を対象とすることができ
る。その機能が既知であってもよく、あるいは機能未知
のものであってもよい。標的蛋白質のアミノ酸配列、ま
たはそれをコードするDNA配列は未知であってもよい
が、既知であることが好ましい。アミノ酸配列は、天然
に存在する蛋白質由来の配列であっても、人工的にデザ
インした配列であってもよい。さらにこの標的蛋白質
は、天然蛋白質のアミノ酸配列における一部連続配列か
らなるポリペプチドまたはオリゴペプチドであってもよ
い。
イニーズハムスター卵巣細胞CHO、各種ヒト腫瘍株化細
胞などの哺乳動物培養細胞、出芽酵母、分裂酵母、カイ
コ細胞、アフリカツメガエル卵細胞など、いかなる真核
細胞でもよい。浮遊細胞よりは、培養器に付着する細胞
の方が好ましい。また、混合培養が可能であれば、由来
する種や組織が異なる2種類以上の真核細胞を用いても
良い。
蛋白質が内在性蛋白質である真核細胞である。ただし、
その場合は、その内在性蛋白質の発現パターンによっ
て、他の細胞種と区別可能な細胞であることを条件とす
る。例えば、癌遺伝子産物や変異蛋白質等を発現する真
核細胞である。
質の発現ベクターを導入した真核細胞である。この場合
の発現ベクターは、例えば、標的蛋白質として外来性蛋
白質を発現するベクター、外来性または内在性蛋白質を
過剰発現するベクター、外来性または内在性蛋白質を特
定の細胞内局在で発現するベクター等である。また、1
個の細胞に2種類以上の標的蛋白質を発現させるように
してもよい。
プライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細
胞用発現ベクターであれば、プラスミドベクター、ウイ
ルスベクターを問わずいかなるものでもよく、pKA1、pC
DM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK-CMV、pBK-RSV、EBVベク
ター、pRS、pYES2などが例示できる。これらのベクター
に、標的蛋白質をコードするcDNAやDNA断片をクローン
化して発現ベクターを作製する。また、標的蛋白質を過
剰発現させる場合には、標的蛋白質コード配列に、その
真核細胞で作用する高発現プロモーター等を連結すれば
よい。さらに、標的蛋白質を特定の細胞内局在で発現さ
せる場合には、細胞内の特定の部位(例えば、細胞膜、
オルガネラ膜、核膜など)に局在化することが知られて
いる公知の局在化シグナルペプチドのコード配列を、標
的蛋白質コード配列に所定の位置関係となるように連結
して発現ベクターを構築すればよい。なお、標的蛋白質
を細胞内の特定の部位に局在化させることは、プローブ
と標的蛋白質との結合が容易に検出できるため、特に好
ましい。
するには、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソー
ム法、DEAEデキストラン法など公知の方法を用いること
ができる。
養物」は、それぞれに異なる標的蛋白質を発現する複数
種の真核細胞を、それぞれ均等(例えば、各細胞1個づ
つ)に混合培養してもよく、あるいは特定の1種以上の
細胞を他の細胞より多く、または少なく混合培養しても
よい。真核細胞の混合培養物を調製するには、それぞれ
の細胞を個別に培養してから混合する方法と、予め混合
した細胞を培養する方法のいずれを採用することもでき
るが、混合比を正確に制御できることから、前者が好ま
しい。その場合、個別に培養した細胞をプロテアーゼ処
理などによって培養器から剥離させ、それぞれに所定の
数の細胞を含む懸濁液を調製し、それぞれの懸濁細胞液
を各細胞が均一になるように十分混合したのち、細胞チ
ップの担体の上に蒔き、さらに培養を続ける。この時、
植える細胞数をコントロールし、あるいは細胞の種類を
選ぶことによって、1 mm2当たり最大5,000個の高い細胞
密度のチップが得られる。
ては、培養細胞が接着でき、顕微鏡観察が可能な透明の
ものであれば、その材質はいかなるものであってもよ
く、例えばスライドグラスやプラスチック製の培養容器
が例示できる。また、コラーゲンやラミニン等の蛋白質
によるコート処理、あるいは化学的な処理によって、担
体表面の細胞接着能が高められているものも用いられ
る。
胞の混合培養物を担体上に蒔くことによって細胞チップ
を作製するため、従来技術において必要とされるアレイ
アー等の特別な装置は必要としない。
細胞チップは、発現パターンの違いによってそれぞれが
発現する標的蛋白質が特定可能である複数種の真核細胞
が、担体上の微小領域に高密度でランダムに固定配置さ
れている。そして、ランダムに配置されている各細胞が
発現する標的蛋白質は、前記のとおり、それぞれの発現
パターンの違いによって特定可能であり、それによって
第3発明のスクリーニング方法に使用することができ
る。
を担体上に固定した後ただちにプローブと反応させて第
3発明のスクリーニングに用いることができる。あるい
は、パラホルムアルデヒドなどで固定してもよい。さら
には、冷凍庫で使用時まで保存することもできる。
2発明の細胞チップの各細胞にプローブを反応させて、
プローブと結合する標的蛋白質を検出することを特徴と
する方法である。プローブが既知の場合は、既知物質に
結合する未知蛋白質として標的蛋白質が同定される。一
方、標的蛋白質が既知の場合には、この標的蛋白質と結
合する新規の物質(例えば、薬剤開発のためのリード化
合物等)が同定される。
密度で細胞を固定配置した細胞チップ使用するため、ス
クリーニングする範囲が狭まり、必要なプローブの量は
μlオーダーの極微量とすることができる。例えば、0.4
cm2の面積のウェルのカルチャースライドを用いた場
合、最大200,000個の細胞のスクリーニングを20μlのプ
ローブを用いて行える。
蛍光色素などで標識した天然物質または合成物質等を用
いることができる。酵素は、代謝回転数が大であるこ
と、プローブ候補物質と結合させても安定であること、
基質を特異的に着色させる等の条件を満たすものであれ
ば特段の制限はなく、例えば、ペルオキシダーゼ、β−
ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコ
ースオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グル
コース−6−リン酸化脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素
等を用いることもできる。これら酵素とプローブ候補物
質との結合は、マレイミド化合物等の架橋剤を用いる公
知の方法によって行うことができる。基質としては、使
用する酵素の種類に応じて公知の物質を使用することが
できる。例えば酵素としてペルオキシダーゼを使用する
場合には、3,3',5,5'−テトラメチルベンジシンを、ま
た酵素としてアルカリフォスファターゼを用いる場合に
は、パラニトロフェノール等を用いることができる。放
射性同位体としては、125Iや3H等の通常のRIA等で用
いられているものを使用することができる。蛍光色素と
しては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)や
テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)
等の通常の蛍光法に用いられるものの他、緑色蛍光蛋白
質等の蛍光蛋白質を使用することができる。
せ、プローブからのシグナルを標識に対応する公知の方
法で検出する。標識として酵素を用いる場合には、酵素
作用によって分解して発色する基質を加え、基質の分解
量を光学的に測定する。放射生同位体を用いる場合に
は、放射性同位体の発する放射線をオートラジオグラフ
ィーなどにより検出する。また、蛍光色素を用いる場合
には、蛍光顕微鏡を組み合わせた測定装置によって蛍光
量を測定すればよい。ただし、細胞内に局在化させた標
的蛋白質の場合には、蛍光標識プローブを用い、顕微鏡
観察によって結合を検出する方法が好ましい。顕微鏡下
で観察することによって、標的蛋白質を局在化させた部
位に結合が認められるようであれば、その結合はプロー
ブと標的蛋白質の結合である可能性が高い。なお、標的
蛋白質が細胞内蛋白質、または標的蛋白質を細胞内に局
在化させた細胞であって、細胞膜を透過できないプロー
ブを用いる場合には、細胞を界面活性剤や有機溶剤で処
理して、細胞膜を透過性にしてからプローブと反応させ
る。
に詳細かつ具体的に説明するが、この出願の発明はこれ
らの例に限定されるものではない。なお、DNAの組換え
に関する基本的な操作および酵素反応は、文献("Molec
ular Cloning. A laboratory manual", Cold Spring Ha
rbor Laboratory, 1989)に従った。制限酵素および各
種修飾酵素は特に記載の無い場合宝酒造社製のものを用
いた。各酵素反応の緩衝液組成、並びに反応条件は付属
の説明書に従った。 実施例1:発現ベクターの作製 (1)蛍光蛋白質発現ベクター pEGFP-N1、pEYFP-N1、pDsRed2-N1(いずれもClontech
社)のそれぞれから調製した蛍光蛋白質(EGFP、EYFP、
DsRed2)のcDNAを含むEcoRI-NotI断片をpKA1(Kato et
al., Gene 150:243-250, 1994)のEcoRI-NotIに挿入
し、蛍光蛋白質発現ベクターpKA1-EGFP-N1、pKA1-EYFP-
N1およびpKA1-DsRed2-N1を作製した。 (2)膜局在化蛍光蛋白質発現ベクター ヒトグリコホリンC様蛋白質(GPCL)をコードするcDNA
を有するpHP10524(WO00/00506号公報に記載)を鋳型に
して、T7プライマーと、終止コドンの下流にSmaI部位を
付加したプライマーを用いてPCR産物を調製した。このP
CR産物をEcoRIとSmaIで消化した後、前記(1)で作製した
蛍光蛋白質発現ベクターpKA1-EGFP-N1、pKA1-EYFP-N1お
よびpKA1-DsRed2-N1のそれぞれのEcoRI−SmaI開裂部位
に挿入し、膜局在化蛍光蛋白質発現ベクターpKA1-GPCL-
EGFP、pKA1-GPCL-EYFPおよびpKA1-GPCL-DsRed2を作製し
た。融合蛋白質GPCL-EGFP、GPCL-EYFPおよびGPCL-DsRed
2の模式図を図2(a)に示す。 (3)ミトコンドリア局在化蛍光蛋白質発現ベクター ヒトミトコンドリア3-ヒドロキシイソブチレートデヒド
ロゲナーゼ(MHIBDH)をコードするcDNAを有するpHP006
98(特開2001-037482号公報に記載)を鋳型にして、T7
プライマーと、終止コドンの下流にBamHI部位を付加し
たプライマーを用いてPCR産物を調製した。このPCR産物
をEcoRIとBamHIで消化した後、蛍光蛋白質発現ベクター
pEGFP-N1、pEYFP-N1およびpDsRed2-N1のEcoRI−BamHI開
裂部位に挿入し、ミトコンドリア局在化蛍光蛋白質発現
ベクターpMHIBDH-EGFP、pMHIBDH-EYFPおよびpMHIBDH-Ds
Red2を作製した。融合蛋白質MHIBDH-EGFP、MHIBDH-EYFP
およびMHIBDH-DsRed2の模式図を図2(b)に示す。 (4)核局在化蛍光蛋白質発現ベクター ヒトアシルCoA結合蛋白質様蛋白質(ACoABPL)をコード
するcDNAを有するpHP01124(特開2001-333781号公報に
記載)を鋳型にして、T7プライマーと、終止コドンの下
流にKpnI部位を付加したプライマーを用いてPCR産物を
調製した。このPCR産物をEcoRIとKpnIで消化した後、前
記(1)で作製した蛍光蛋白質発現ベクターpKA1-EGFP-N
1、pKA1-EYFP-N1およびpKA1-DsRed2-N1のEcoRI−KpnI開
裂部位に挿入し、核局在化蛍光蛋白質発現ベクターpKA1
-ACoABPL-EGFP、pKA1-ACoABPL-EYFPおよびpKA1-ACoABPL
-DsRed2を作製した。融合蛋白質ACoABPL-EGFP、ACoABPL
-EYFPおよびACoABPL-DsRed2の模式図を図2(c)に示
す。 (5)核小体局在化蛍光蛋白質発現ベクター ヒトATP-依存性RNAヘリカーゼ(ARH)をコードするcDNA
を有するpHP02644(特開2001-218584号公報に記載)を
鋳型にして、T7プライマーと、終止コドンの下流にSmaI
部位を付加したプライマーを用いてPCR産物を調製し
た。このPCR産物をEcoRIとSmaIで消化した後、前記(1)
で作製した蛍光蛋白質発現ベクターpKA1-EGFP-N1、pKA1
-EYFP-N1およびpKA1-DsRed2-N1のEcoRI−SmaI開裂部位
に挿入し、核小体局在化蛍光蛋白質発現ベクターpKA1-A
RH-EGFP、pKA1-ARH-EYFPおよびpKA1-ARH-DsRed2を作製
した。融合蛋白質ARH-EGFP、ARH-EYFPおよびARH-DsRed2
の模式図を図2(d)に示す。 実施例2:細胞チップAの作製 (1)培養細胞 ヒトフィブロサルコーマ細胞株HT-1080は、10%ウシ胎児
血清(FBS)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)
中、5% CO2存在下、37℃で培養した。2x105個のHT-108
0細胞を6ウェルマルチディッシュ(ヌンク社)に植
え、5% CO2存在下、37℃で22時間培養した。培地除去
後、リン酸緩衝液(PBS)で細胞表面を洗浄し、さらに10%
FBSを含むDMEM 1.5 mlを添加した。 (2)細胞への発現ベクターの導入 実施例1(1)〜(5)で作製した5種類の発現ベクター(pK
A1-GPCL-EGFP、pMHIBDH-EGFP、pMHIBDH-DsRed2、pKA1-A
CoABPL-DsRed2、pKA1-ARH-EYFP)それぞれの溶液1μl
(1.5 μg相当分)を無血清DMEM 100μlに添加したの
ち、トランスフェクション試薬PolyFectTM(キアゲン
社)10μlと混合し10分間室温でインキュベートする
ことによってDNA複合体を形成した。前記(1)の培養細胞
HT-1080をPBSで一回洗浄し、10%FBSを含むDMEM 1.5 ml
を添加した。先に調製したDNA複合体に10%FBSを含むDME
M 600μlを添加したものを、この細胞に添加し、5% CO2
存在下、37℃で22時間培養した。 (3)融合蛋白質発現細胞の担体への固定 前記(2)で作製した5種類の融合蛋白質発現細胞を、それ
ぞれ0.05%トリプシン-EDTA溶液1 mlと37℃で5分間反応
させて培養基材から剥離した。10% FBSを含むDMEM 2 ml
を添加して細胞を回収したのち、これら5種類の融合蛋
白質発現細胞を2x105細胞/mlになるように調製し、均
一に混合した。この細胞混合懸濁液1 mlをコラーゲンI
カルチャースライド(ファルコン社)に蒔き、5% CO2存
在下、37℃でさらに32時間培養した。細胞をPBSで洗浄
した後、4%パラホルムアルデヒド含有PBSで室温15分間
固定し、細胞チップAを作製した。
io-Rad社MRC1024ES)で観察し、チップ上の各細胞が発
現するGFP融合蛋白質に由来する蛍光を測定した。その
結果を図3に示す。5種類の融合蛋白質を発現した細胞
が顕微鏡視野内に観察できる。この時の細胞の密度は、
約1,300個/mm2であった。 実施例3:細胞チップBの作製 実施例2(1)および(2)と同様の方法により、実施例1
(1)で作製したpKA1-EGFP-N1およびpKA1(対照ベクタ
ー)をそれぞれ導入したHT-1080細胞を作製した。それ
ぞれの細胞を1:100の割合で混合し、この細胞混合懸濁
液100μlを16ウェルチェンバースライド(ヌンク社)に
植え、実施例2(3)と同様の方法で細胞チップBを作製し
た。 実施例4:抗体を用いたスクリーニング 実施例3で作製した細胞チップBをPBSで洗浄した後、0.
1% Triton X-100で処理した。これに10% Block Ace(大
日本製薬社)中で抗GFP抗体20μlを90分間反応させ、PB
S洗浄後、10% Block Ace中でローダミン結合二次抗体と
40分間反応させた。共焦点蛍光顕微鏡により抗体に由来
する赤色蛍光の分布を観察した結果、赤色蛍光を発する
細胞が、10個/mm2の割合で見られた。赤色蛍光を発す
る細胞は、EGFP本来の緑色蛍光をも示した。
は、微量のプローブ(抗体)を用いて、100個に1個の割
合で含まれている標的蛋白質の有無を調べることが可能
であることが確認された。
よって、微少領域に高密度で標的蛋白質発現細胞を固定
した細胞チップと、アレイアー等の特別な装置を必要と
せずにこの細胞チップを作製する方法、さらにはこの細
胞チップを用いた標的蛋白質スクリーニング方法が提供
される。細胞チップやスクリーニング方法は、標的蛋白
質と各種物質との相互作用を調べるために利用すること
ができ、その情報は、病気の分子レベルでの解明や新し
い医薬の創製に役立つ。
的に表示した図である。
示した図である。GPCL-XFP(a)、MHIBDH-XFP(b)、AC
oABPL-XFP(c)、ARH-XFP(d)をそれぞれ示す。ここ
で、XFPは、EGFP、EYFP、DsRed2のいずれかを表す。ま
た、図中、TMDは膜貫通ドメインを、MtLSはミトコンド
リア局在化シグナルを、NLSは核局在化シグナルをそれ
ぞれ表す。
P、MHIBDH-DsRed2、ACoABPL-DsRed2、ARH-EYFP)を発現
する細胞からなる蛋白質チップを観察した共焦点顕微鏡
写真を作図したものである。微分干渉像(a)、蛍光画
像(b)をそれぞれ示す。目盛りの単位はμmである。
Claims (5)
- 【請求項1】 発現パターンの違いによってそれぞれが
発現する標的蛋白質が特定可能である複数種の真核細胞
の混合培養物を、担体上の微小領域に高密度で固定配置
することを特徴とする細胞チップ作製方法。 - 【請求項2】 真核細胞が標的蛋白質の発現ベクターを
導入した真核細胞である請求項1の細胞チップ作製方
法。 - 【請求項3】 真核細胞が哺乳動物培養細胞である請求
項1または2の細胞チップ作製方法。 - 【請求項4】 請求項1から3のいずれかの方法で作製
した細胞チップであって、発現パターンの違いによって
それぞれが発現する標的蛋白質が特定可能である複数種
の真核細胞が、担体上の微小領域に高密度でランダムに
固定配置されていることを特徴とする細胞チップ。 - 【請求項5】 請求項4の細胞チップの各細胞にプロー
ブを反応させて、プローブと結合する標的蛋白質を検出
することを特徴とする標的蛋白質スクリーニング方法。
Priority Applications (5)
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2002
- 2002-04-01 JP JP2002099323A patent/JP4033697B2/ja not_active Expired - Lifetime
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