JP2003293275A - リグノセルロース材料の蒸解法 - Google Patents

リグノセルロース材料の蒸解法

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JP2003293275A
JP2003293275A JP2002132134A JP2002132134A JP2003293275A JP 2003293275 A JP2003293275 A JP 2003293275A JP 2002132134 A JP2002132134 A JP 2002132134A JP 2002132134 A JP2002132134 A JP 2002132134A JP 2003293275 A JP2003293275 A JP 2003293275A
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cooking
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cooking liquor
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Hiroshi Oi
洋 大井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】アルカリ性蒸解におけるキノン化合物とポリサ
ルファイドの効率的な使用方法を提供し、修正連続蒸解
法あるいは全缶等温蒸解法におけるパルプ収率向上を達
成する方法を提供する。 【解決手段】修正連続蒸解法あるいは全缶等温蒸解法を
行い、かつ蒸解系に導入される全蒸解液の50〜90%
に相当するポリサルファイド蒸解液がチップフィード系
から供給され、10〜50%に相当するクラフト蒸解液
が蒸解釜の液循環系から供給され、浸透、蒸解および洗
浄が行われる蒸解法において、キノン化合物をチップフ
ィード系から供給して蒸解する。また前述において、キ
ノン化合物を0.001〜2.0重量%含むリグノセル
ロース材料をチップフィード系から供給し、かつ/また
はキノン化合物を0.001〜2.0重量%含むポリサ
ルファイド蒸解液をチップフィード系から供給して蒸解
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リグノセルロース
材料の蒸解法に関し、さらに詳しくはリグノセルロース
材料のアルカリ性蒸解においてキノン化合物とポリサル
ファイドを用いる修正連続蒸解法あるいは全缶等温蒸解
法に関する。
【0002】
【従来の技術】工業的に実施されているリグノセルロー
ス材料からの化学パルプ製造法の主流は、アルカリ性の
蒸解液を用いる蒸解法である。特に、硫化ナトリウム含
有蒸解液を用いるクラフト蒸解法が大規模に実施されて
いる。クラフト法における問題点を改善する目的で、未
晒パルプの粘度を保持しながら残留リグニンを減少させ
る方法の可能性が示唆された。(スベンスクペーパース
テドニング(Svensk Papperstidni
ng)、81巻、15号、483頁(1978年)、タ
ッピー(Tappi)、62巻、7号、49頁(197
9年))この脱リグニン選択性をもつ蒸解法は、一般に
修正連続蒸解法(以下MCC法と称する)と呼ばれてい
る。さらにMCC法は、洗浄ゾーンの温度を上げて向流
蒸解領域を拡大することで、逆に並流蒸解ゾーンの温度
を下げ、蒸解釜全体において低温化し、かつ温度ピーク
のない全缶等温蒸解法(以下ITC法と称する)に発展
している。(紙パルプ技術協会誌、53巻、1号、67
頁(1999年))
【0003】ITC法とMCC法は、蒸解釜最上部の浸
透ゾーンあるいは浸透ベッセル、および蒸解釜の各蒸解
ゾーンと蒸解洗浄ゾーンにおいて、新鮮な蒸解液を常に
補充し、蒸解温度とアルカリ濃度を最適化する点、蒸解
釜内部において並流蒸解と向流蒸解を実施する点にその
特徴を有している。パルプ品質を同一カッパー価で測定
すると、従来の蒸解と比較して粘度の高いものが得られ
る。また、パルプの強度、粘度の損失なしに蒸解後のカ
ッパー価で針葉樹材では5〜7ポイント、また広葉樹材
では3〜4ポイント低く蒸解することが可能である。こ
れらの方法の利点は、その後に続く漂白工程においても
維持される。
【0004】図2に示す一反応器型連続蒸解釜を用いる
系統図により、ITC法について説明する。図2におい
て、リグノセルロース材料、具体的には木材チップ1は
チップビン2に供給され、スチーミングベッセル3にお
いて加熱脱気され、次いで高圧フィーダー4によって蒸
解釜最上部の浸透ゾーンへチップフィード系導管5を通
って送給される。一方、アルカリ性蒸解液(以下蒸解液
と称する)は導管17から供給される。蒸解液の主分岐
流は導管18,18bを通り、チップフィード系導管5
bに供給される。浸透ゾーン6からの抽出液は導管5b
を流れ、高圧フィーダー4において木材チップと混合さ
れ、次いでこの混合物はチップフィード系導管5を通っ
て浸透ゾーン6に送給される。浸透ゾーン6に充填され
た木材チップは蒸解液とともに下降する。
【0005】浸透ゾーン6にはストレーナー39が設け
られており、ストレーナー39よりの抽出液は温調循環
液導管40を通り浸透ゾーン6の内部のストレーナー3
9の近傍へと循環される。ストレーナー39の位置を通
過した木材チップと蒸解液は浸透ゾーン6の最終部に達
する。一方、蒸解液導入管17から分岐した蒸解液は蒸
解液分岐管19を通り、さらに分岐して蒸解液分岐管2
0を通り、さらに分岐して蒸解液分岐管21を通り、温
調循環液導管40に供給される。抽出液と蒸解液は温調
循環ヒーター40bで加熱される。
【0006】並流蒸解ゾーン7にはストレーナー41が
設けられており、ストレーナー41より黒液抽出導管4
2を通り、フラッシュタンク12に送られる。並流また
は向流蒸解ゾーン8にはストレーナー43が設けられて
おり、ストレーナー43よりの抽出液は蒸解循環液導管
44を通り並流または向流蒸解ゾーン8の内部のストレ
ーナー43の近傍へと循環される。一方、蒸解液分岐管
19から分岐した蒸解液は蒸解液分岐管22を通り、さ
らに蒸解液ヒーター22bで加熱され、蒸解循環液導管
44に供給される。また、ストレーナー43よりの抽出
液の一部は、黒液抽出導管45を通り、フラッシュタン
ク12に送られる。
【0007】向流蒸解洗浄ゾーン9にはストレーナー4
6が設けられており、ストレーナー46よりの抽出液は
ITC循環導管47を通り、新たに供給された蒸解液と
もにITC循環ヒーター47bで加熱されて、向流蒸解
洗浄ゾーン9の内部のストレーナー46の近傍へと循環
される。一方、蒸解液分岐管20から分岐した蒸解液
は、蒸解液分岐管23を通り、さらに分岐して蒸解液分
岐管24を通り、ITC循環導管47に供給される。ま
た、向流蒸解洗浄ゾーン9にはストレーナー48が設け
られており、ストレーナー48よりの抽出液はハイヒー
ト循環導管49を通り、新たに供給された蒸解液ともに
ハイヒート循環ヒーター49bで加熱されて、向流蒸解
洗浄ゾーン9の内部のストレーナー48の近傍へと循環
される。一方、蒸解液分岐管23から分岐した蒸解液
は、さらに分岐して蒸解液分岐管25を通り、ハイヒー
ト循環導管49に供給される。
【0008】蒸解釜本体は最上部から底部にかけて浸透
ゾーン6、並流蒸解ゾーン7、並流または向流蒸解ゾー
ン8、向流蒸解洗浄ゾーン9の4種類の機能を異にする
ゾーンに大別されており、それぞれのゾーンを区画する
ために、ストレーナー39、41、43、46と48が
設置されている。並流蒸解ゾーン7で脱リグニンされた
木材チップは、下降して並流または向流蒸解ゾーンに入
る。このゾーンにおいて木材チップは並流または向流蒸
解され、脱リグニン反応がさらに進行する。
【0009】並流または向流蒸解ゾーン8において、あ
る程度脱リグニンの進行した木材チップは下降して向流
蒸解洗浄ゾーン9に入る。このゾーンで脱リグニンの進
行した木材チップは向流蒸解され、脱リグニン反応がさ
らに進行する。この向流蒸解洗浄ゾーン9においては、
脱リグニンの進行した木材チップはストレーナー43よ
りストレーナー46に向って下降するが、一方ストレー
ナー46および48の近傍において供給された液、すな
わち蒸解液の補充された循環液はストレーナー43に向
って上昇する。この向流蒸解洗浄によって脱リグニン反
応はさらに進行する。ストレーナー43に向って上昇し
た循環液は使用ずみ蒸解液、すなわち黒液となり、並流
または向流蒸解ゾーン8の黒液と混合されて、黒液抽出
導管45および42を通り、フラッシュタンク12へ移
送される。
【0010】脱リグニン反応がさらに進行した木材チッ
プはストレーナー48下部の向流蒸解洗浄ゾーン9最終
部へ下降する。最終部においては、蒸解釜の底部におい
て洗浄液導管50を通って洗浄液が導入される。この洗
浄液は、加圧ディフューザー10のろ液タンク11から
供給される。洗浄液はストレーナー48に向って上昇す
る。洗浄液の一部は、ストレーナー46および48によ
り抽出され、それぞれ蒸解液分岐管24および25を流
れる蒸解液と合体されて、ITC循環ヒーター47bお
よびハイヒート循環ヒーター49bによって加熱され
る。脱リグニンの終了した木材チップ(パルプ)は向流
洗浄される。洗浄されたパルプは蒸解パルプ排出管51
を通って加圧ディフューザー10に送られる。
【0011】スチーミングベッセル3における温度は1
05℃〜115℃程度であり、高圧フィーダー4、チッ
プフィード系導管5,5bの温度は115℃〜135℃
であり、浸透ゾーン6における温度は125〜145℃
程度である。そして、並流蒸解ゾーン7では温度140
〜165℃に、並流または向流蒸解ゾーン8では温度1
50〜170℃に、向流蒸解洗浄ゾーン9では温度14
0〜165℃に加熱されている。なお、黒液抽出導管4
2および45から排出される黒液温度は140〜170
℃に保持されている。
【0012】蒸解液は導管17から分岐した導管18,
18bによってチップフィード系導管5bへ供給され、
また分岐管21によって浸透ゾーン6へ、分岐管22に
よって並流または向流蒸解ゾーン8へ、分岐24および
分岐管25によって向流蒸解洗浄ゾーン9へ供給され
る。この蒸解液の分配比率は任意に変えることができ
る。
【0013】例えば、蒸解液導入管17から供給される
蒸解液を100とすれば、チップフィード系導管5bか
らはほぼ0%、浸透ゾーン6の温調循環導管40または
並流蒸解ゾーン7の温調循環導管(ここでは図示してい
ない)からは合わせて50〜90%、また並流および向
流蒸解循環導管44からは合わせて5〜45%、ITC
およびハイヒート循環導管47および49からは合わせ
て5〜45%である。同様な分配比率で行うMCC蒸解
で、0.001%〜1.0重量%のキノン化合物を含む
クラフト蒸解液、またはポリサルファイド蒸解液を供給
する蒸解法が知られている。(特許第3029453
号、特許第3029043号、特許第2971111
号)
【0014】また例えば、蒸解液導入管17から供給さ
れる蒸解液を100とし、チップフィード系導管5bか
らは70%、浸透ゾーン6の温調循環導管40および並
流および向流蒸解循環導管44からは合わせて20%、
ITCおよびハイヒート循環導管47および49からは
合わせて10%である。このような分配比率で、ポリサ
ルファイド蒸解液をチップフィード系導管5bから供給
し、クラフト蒸解液を浸透ゾーン6の温調循環導管40
および並流および向流蒸解循環導管44から合わせて2
0%、ITCおよびハイヒート循環導管47および49
からは合わせて10%供給する蒸解法が知られている。
(紙パルプ技術協会誌、53巻、1号、67頁(199
9年))
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記のMCC
法を用いるキノン添加クラフト蒸解法、またはITC法
を用いるポリサルファイド蒸解法では、未晒パルプの漂
白薬品および排水の負荷を確実に低減するが、パルプ収
率の低下、蒸解温度の上昇あるいはリグノセルロース材
料当りの蒸解使用量の増加という新たな問題点が発生し
た。本発明は、キノン化合物の蒸解助剤としての機能、
およびポリサルファイドの機能を使用するMCC法とI
TC法における問題点を解決するためになされたもので
ある。その目的は、キノン化合物の機能とポリサルファ
イド蒸解液の効率的な使用方法を提供する点にある。本
発明は、MCC法とITC法におけるパルプ収率向上を
達成する改良方法を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者は、リグノセル
ロース材料のアルカリ性蒸解を行うに当り、キノン化合
物およびポリサルファイド蒸解液を添加して蒸解する方
法について鋭意研究を積み重ね、MCC法およびITC
法における問題点を解決するために、検討を重ねてき
た。
【0017】アルカリ性蒸解におけるパルプ収率を向上
させるためには、化学反応的に考えてリグノセルロース
材料中の炭水化物の還元性末端基を酸化することが重要
である。その酸化により、アルカリ性蒸解における炭水
化物のピーリング反応が抑えられ、炭水化物の分解が抑
制される。アルカリ性蒸解条件において、炭水化物の還
元性末端を酸化することができる物質として、キノン化
合物とポリサルファイドが知られている。(紙パルプ技
術協会誌、48巻、4号、531頁(1994年)、
紙パルプ技術協会誌、54巻、7号、873頁(200
0年))
【0018】キノン化合物による炭水化物の酸化は温度
80℃から開始する。ポリサルファイドによる酸化が始
まる温度は、今までキノン化合物による温度と比較され
ていなかった。検討の結果、ポリサルファイドによる炭
水化物の酸化はキノン化合物による酸化よりも遅く、ポ
リサルファイドによる酸化が始まる温度は80℃よりも
高いことがわかった。一方、ポリサルファイドは温度1
00℃を超えると自己分解が始まることが知られてい
る。(パルプアンドペーパー化学と化学技術第3版(P
ulp and Paper Chemistry a
nd Chemical Technology Th
ird Edition)、1巻、433頁、(198
0年))ポリサルファイドは分解すると、炭水化物を酸
化することができない。検討の結果、キノン化合物が存
在する条件でポリサルファイドを用いると、80〜11
5℃の条件で、ポリサルファイドが還元型のキノン化合
物をすみやかに酸化することがわかった。生成した酸化
型のキノン化合物が炭水化物を酸化できるのは、前述の
とおりである。
【0019】一方、80〜115℃の条件では、言い換
えると、MCC法およびITC法の浸透ゾーンの温度よ
りも低い温度では、リグニン分解反応が十分に行われて
いない。還元型のキノン化合物によるリグニン分解の促
進反応についても十分に行われていない。また、ポリサ
ルファイドが存在しないかぎり、蒸解反応系内には還元
型のキノン化合物が蓄積し、酸化型のキノン化合物が形
成しない。このことが炭水化物の酸化が行われないこと
を意味するのは前述のとおりである。
【0020】本発明者は、鋭意検討の結果、前述の課題
を解決することができた。すなわち本発明の方法は、M
CC法およびITC法において、前述のキノン化合物の
機能とポリサルファイドの機能を効率的に発揮するため
の方法を考え、温度115℃〜135℃の工程である高
圧フィーダー4およびチップフィード系導管5,5bに
おいて、キノン化合物およびポリサルファイド蒸解液を
混入することを特徴とする。同時に温度135℃を超え
る工程、すなわち浸透ゾーン6(125〜145℃)、
並流蒸解ゾーン7(140〜165℃)、並流または向
流蒸解ゾーン8(150〜170℃)、向流蒸解洗浄ゾ
ーン9(140〜165℃)では、ポリサルファイド蒸
解液以外のアルカリ性蒸解液、たとえばクラフト蒸解液
を混入することを特徴とする。かつ/または、木材チッ
プ1、チップビン2、スチーミングベッセル3におい
て、リグノセルロース材料にあらかじめキノン化合物を
含有させることを特徴とする。特許第3029453号
にある方法、すなわち、温度が125〜145℃程度で
ある浸透ゾーン6に、キノン化合物とポリサルファイド
蒸解液を供給する方法は適当ではない。
【0021】前記目的を達成する本発明のリグノセルロ
ース材料の蒸解法は、最上部から底部にかけて、浸透ゾ
ーン、並流蒸解ゾーン、並流または向流蒸解ゾーン、お
よび向流蒸解洗浄ゾーンが設けられている一反応器型連
続蒸解釜を使用し、または蒸解釜の前段階に浸透ベッセ
ルが設けられ、かつ蒸解釜の上部から底部にかけて、並
流蒸解ゾーン、並流または向流蒸解ゾーン、および向流
蒸解洗浄ゾーンが設けられている二反応器型連続蒸解釜
を使用し、蒸解系に導入される全アルカリ性蒸解液の5
0〜90%に相当するポリサルファイド蒸解液がチップ
フィード系から供給され、10〜50%に相当するクラ
フト蒸解液が浸透ゾーン、並流蒸解ゾーン、並流または
向流蒸解ゾーン、および向流蒸解洗浄ゾーンの温度調節
循環系から供給され、浸透、蒸解および洗浄が行われる
蒸解法において、キノン化合物をチップフィード系から
供給して蒸解することを特徴とする。また、キノン化合
物をリグノセルロース材料に基づき0.001〜2.0
重量%含むリグノセルロース材料をチップフィード系か
ら供給し、かつ/またはキノン化合物をリグノセルロー
ス材料に基づき0.001〜2.0重量%含むポリサル
ファイド蒸解液をチップフィード系から供給して蒸解す
ることを特徴とする。
【0022】
【本発明の実施の形態】以下に本発明について概説す
る。MCC法およびITC法に使用するアルカリ性蒸解
薬液としては、ソーダ蒸解法、クラフト蒸解法、ポリサ
ルファイド蒸解法に使用される薬液の使用が可能である
が、好ましいのは前記した一反応器型連続蒸解釜を適用
するクラフト蒸解法、ポリサルファイド蒸解法である。
硫化度は1〜50%である。また前述した蒸解液の有効
アルカリ添加率は10〜30%である。
【0023】本発明において使用されるキノン化合物と
しては、アントラキノン、アントロンおよび前記キノン
系化合物の核置換体、例えばそのメチル、エチルなどの
アルキル、ヒドロキシもしくはカルボキシ誘導体、スル
ホン酸塩、またはカルボン酸塩が適している。また前記
キノン系化合物の還元型であるヒドロキノン系化合物が
使用される。キノン化合物としてはさらに、ディールス
−アルダー法によるアントラキノン合成法の中間体とし
て安定な化合物として得られる9,10−ジケトヒドロ
アントラセン系化合物からなる群から選ばれた一種以上
の化合物が使用できる。例えば、1,4,4a,9a−
テトラヒドロ−9,10−ジケトアントラセン、2−メ
チル−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9,10−
ジケトアントラセン、2−エチル−1,4,4a,9a
−テトラヒドロ−9,10−ジケトアントラセンが適し
ている。
【0024】本発明では、キノン化合物をリグノセルロ
ース材料に基づき、0.001〜2.0重量%混合して
蒸解を行う。通常は、リグノセルロース材料に含有させ
るか、リグノセルロース材料に添加されるか、アルカリ
性蒸解液の一部に対して添加される。液比(蒸解液/リ
グノセルロース材料)を考慮して対リグノセルロース材
料に基づき0.001〜2.0重量%となるようにキノ
ン化合物をチップフィード系導管に導入されるポリサル
ファイド蒸解液に添加すればよい。リグノセルロース材
料に含有させる場合は、アカシア、ユーカリなどの2−
メチルアントラキノンを含まない樹種に育種の段階で改
良を行い、2−メチルアントアキノンを含有するように
改質したリグノセルロース材料を用いればよい。あるい
は、チークなどの2−メチルアントラキノンを0.00
1〜2.0重量%含むリグノセルロース材料を用いれば
よい。
【0025】このようにしてキノン化合物およびポリサ
ルファイドを混合したリグノセルロース材料をチップフ
ィード系導管5,5bから採取して分析すると、アント
ラキノンまたは2−メチルアントラキノンを定量するこ
とができる。以下に分析法の概要を述べる。乾燥させた
リグノセルロース材料約0.150mgを採取し、日本
分析工業製の熱分解装置を装着した熱分解ガスクマトグ
ラフ・マススペクトルメーターを用いて、500℃で熱
分解して定量する。検量線を作成し、リグノセルロース
材料に基づき0.001〜2.0%のアントラキノンま
たは2−メチルアントラキノンが定量される。リグノセ
ルロース材料とともに採取された蒸解液からは、ポリサ
ルファイドを定量することができる。
【0026】本発明の蒸解法を実施するには、種々のリ
グノセルロース材料を用いることができ、例えばパルプ
製造用リグノセルロース材料としては、針葉樹チップ、
広葉樹チップ、ソーダスト、並びに非木材セルロース材
料、例えばバガス、ケナフ、ワラ、アシおよび他の一年
生植物を挙げることができる。
【0027】
【実施例】以下本発明を実施例により説明するが、本発
明はこれによって何ら限定されるものではない。図2に
示した一反応器型連続蒸解釜の蒸解液の分岐管18に開
閉バルブ31を設置し、別にチップフィード系導管5,
5bに新たな蒸解液を導入するための導管32、および
分岐管18bに開閉バルブ38を設けた。また、蒸解液
導入管17に開閉バルブ38bを設置した。また、蒸解
液導入管32にキノン化合物導入管33を設け、さらに
蒸解液の分岐管21,22,23にそれぞれに対応して
キノン化合物導入管34,35,36を設けた。このよ
うな配管を備えた装置の系統図を図1に示す。
【0028】本発明においては、開閉バルブ31を閉じ
て導管18からのクラフト蒸解液の供給を止め、蒸解液
導入管32,18bからポリサルファイド蒸解液を供給
した。また、キノン化合物を導入管33より蒸解液に添
加し、導入管34,35,36をそれぞれ閉鎖して添加
を止めた。かつ/または、キノン化合物の一部をチップ
ビン2に混合し、または木材チップ1として、2−メチ
ルアントラキノンを含有するチーク材チップをチップビ
ン2に供給した。
【0029】図1に示す装置を用いてITC法によるキ
ノン添加・ポリサルファイド蒸解を実施した。木材チッ
プ1、チップビン2からキノン化合物を、導入管32,
33からそれぞれポリサルファイド蒸解液とキノン化合
物を導入することにより、該化合物はチップフィード系
に供給される。蒸解液の分割比率、および浸透ゾーン
6、並流蒸解ゾーン7、並流または向流蒸解ゾーン8、
向流蒸解洗浄ゾーン9の温度条件は以下の表1に示し
た。
【表1】 比較例1はキノン化合物を添加しない従来のITCポリ
サルファイド法である。(紙パルプ技術協会誌、53
巻、1号、67頁(1999年))
【0030】比較例2は、キノン化合物を主に浸透ゾー
ンから供給する特許3029453にある方法で、クラ
フト蒸解である。すなわち、開閉バルブ31,38を閉
じ、キノン化合物導入管34を主に開き、キノン化合物
導入管33,35,36を閉じる。蒸解液であるクラフ
ト蒸解液は導管17から供給される。比較例3は、キノ
ン化合物を主に浸透ゾーンから供給する特許30294
53にある方法で、ポリサルファイド蒸解である。すな
わち、開閉バルブ38,38bを閉じ、31を開き、キ
ノン化合物導入管34を主に開いて、キノン化合物導入
管33,35,36を閉じる。蒸解液であるポリサルフ
ァイド蒸解液は導管32から供給される。
【0031】実施例1においてはアカシア材を、実施例
2,3においてはアカシア材とチーク材を、比較例1〜
3においてはアカシア材を蒸解した。キノン化合物は、
実施例1においては9,10−アントラキノン(AQ)
を、実施例2においては2−メチルアントラキノン(M
AQ)を、実施例3においてはAQおよびMAQを使用
した。
【0032】漂白性の試験については、粕を除去した精
選パルプを常法によるO(酸素)−D(二酸化塩素)−
Eop(過酸化水素と酸素を用いるアルカリ性抽出)−
D(二酸化塩素)の順序で行った。パルプの物理的性
質、カッパー価、パルプ粘度、白色度、裂断長、比破
裂、比引裂については TAPPIおよびJISの各試
験法を用いて測定した。
【0033】結果を表2に示した。
【表2】 以上、実施例1〜3、比較例1〜3との対比より本発明
の方法は、従来の方法であるITCポリサルファイド蒸
解法、およびキノン化合物を主として浸透ゾーンに添加
することによる修正クラフト蒸解法または修正ポリサル
ファイド蒸解法(特許3029453にある方法)に比
較して、その効果が著しいことは明白である。さらに本
発明は二反応器型連続蒸解釜による修正アルカリ性蒸解
法に適用できることはいうまでもない。
【0034】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、キノン
化合物およびポリサルファイドをチップフィード系に添
加することによるITC法およびMCC法により、パル
プ収率の向上が達成された。またパルプ粘度、パルプ強
度が改善され、その結果として紙の抄造スピードが向上
するという副次的効果もあり、本発明は紙パルプ産業に
寄与するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のITC法によるキノン添加・ポリサル
ファイド蒸解を実施する装置の系統図である。なお、従
来のITCポリサルファイド法および特許302945
3にある蒸解法も実施できる。
【図2】従来のITC法を実施できる装置の系統図であ
る。
【符号の説明】
1……木材チップ、2……チップビン、3……スチーミ
ングベッセル、4……高圧フィーダー、5,5b……チ
ップフィード系導管、6……浸透ゾーン、7……並流蒸
解ゾーン、8……並流および向流蒸解ゾーン、9……向
流蒸解洗浄ゾーン、10……加圧ディフューザー、11
……ろ液タンク、12……フラッシュタンク、17……
クラフト蒸解液導入管、18,18b,19,20,2
1,22,23,24,25……蒸解液分岐管、22b
……蒸解液ヒーター 31,38,38b……開閉バルブ、32……ポリサル
ファイド蒸解液導入管、33,34,35,36……キ
ノン化合物導入管、39,41,43,46,48……
ストレーナー、40,44,47,49……循環導管、
42,45……黒液抽出導管、40b……温調循環ヒー
ター、47b……ITC循環ヒーター、49b……ハイ
ヒート循環ヒーター、50……洗浄液導入管、51……
蒸解パルプ排出管、

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 最上部から底部にかけて、浸透ゾーン、
    並流蒸解ゾーン、並流または向流蒸解ゾーン、および向
    流蒸解洗浄ゾーンが設けられている一反応器型連続蒸解
    釜を使用し、または蒸解釜の前段階に浸透ベッセルが設
    けられ、かつ蒸解釜の上部から底部にかけて、並流蒸解
    ゾーン、並流または向流蒸解ゾーン、および向流蒸解洗
    浄ゾーンが設けられている二反応器型連続蒸解釜を使用
    し、蒸解系に導入される全アルカリ性蒸解液の50〜9
    0%に相当するポリサルファイド蒸解液がチップフィー
    ド系から供給され、10〜50%に相当するクラフト蒸
    解液が浸透ゾーン、並流蒸解ゾーン、並流または向流蒸
    解ゾーン、および向流蒸解洗浄ゾーンの温度調節循環系
    から供給され、浸透、蒸解および洗浄が行われる蒸解法
    において、キノン化合物をチップフィード系から供給し
    て蒸解することを特徴とするリグノセルロース材料の蒸
    解法。
  2. 【請求項2】 キノン化合物をリグノセルロース材料に
    基づき0.001〜2.0重量%含むリグノセルロース
    材料をチップフィード系から供給し、かつ/またはキノ
    ン化合物をリグノセルロース材料に基づき0.001〜
    2.0重量%含むポリサルファイド蒸解液をチップフィ
    ード系から供給して蒸解することを特徴とする請求項1
    に記載のリグノセルロース材料の蒸解法。
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