JP2003293037A - 打抜き加工性に優れるFe−Ni系合金の製造方法 - Google Patents
打抜き加工性に優れるFe−Ni系合金の製造方法Info
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Abstract
散させたFe−Ni合金を安定かつ低コストで製造す
る。 【解決手段】 Niを30〜55重量%含むFe−Ni
系合金の溶湯に、Si及びMnを投入して酸素濃度を5
0ppm以下まで下げた後に鋳造し、熱間圧延および冷
間圧延を施して圧延方向および板厚方向に対して平行な
断面の中に、粒径3μm以下のMnSと粒径3μm以下
の酸化物系介在物を、マトリックス中に合計で3000
〜10000個/mm2の密度で均一分散させる。
Description
ードフレーム用材料として好適なプレス打抜き性を向上
させたFe−Ni系合金を安定して製造するための製造
方法に関するものである。
i−Fe合金(42Ni合金)は、ガラスやセラミック
スと熱膨張係数が近似していることから、薄板に加工さ
れた後に、打抜きあるいはエッチングされ、ICリード
フレームとして使用される。このリードフレームは高い
寸法精度が要求されていることから、プレス打抜きの際
に発生するバリを極力抑制しなければならない。さら
に、バリが発生する場合には金型寿命も短くなってしま
うため、打抜き性の改善は、近年、急務となっている。
は、従来からも改善がなされてきている。たとえば、特
開昭60−255953、特開昭60−255954、
特開昭61−9552、特開昭64−11094では、
粒径3μm以下の非金属介在物を組織内に均一に分散さ
せることが提案されている。特開平4−346637、
特開平6−184703、特開平9−87808では、
微細なMnSを分散させることを提案している。しかし
ながら、これらの提案では、非金属介在物やMnSの分
布状況や形状については考慮していない。たとえそのよ
うな介在物が存在していたとしても、介在物の分布に片
寄りが生じていたり、形状が角張っていたりすると、打
抜き性を阻害する可能性がある。また、特開平9−24
9943においては、MnSの個数を特定しているもの
の、その形状については重要視していない。
業ベースで製造するための手段が確立していたとは言い
難い。たとえば、特開平9−249943では、清浄度
の高い原料のみで溶解している。たとえ清浄度の高い原
料を溶解しても、その原料には通常数百ppmの酸素は
必然的に含まれているのが普通で、脱酸工程は必預であ
ると言える。脱酸工程を必要としない溶解方法で製造す
るためには、非常に高価な原料を購入し、酸素濃度の増
加を完全に防止するべく、超高真空度(例えば10−5
torr)において溶解する必要があり、原料面、設備
面の双方においてコスト高と言える。
が所定量に達さない場合は、雰囲気の酸素濃度を高くし
て、酸化を進めて介在物数を増すことを提案している
が、酸化しすぎた場合は溶鋼表面にスカムを生じてしま
い、粗大介在物を巻き込む危険性を常に伴うため得策と
は言い難い。このように、従来の提案では、脱酸方法が
不確定であり、製品歩留りは著しく低くならざるを得な
い。
たもので、打抜き性に優れたFe−Ni系合金を低コス
トで安定して製造するための方法を提供することを目的
としている。具体的には、本発明の目的は、粒径3μm
以下のMnSと粒径3μm以下の酸化物系介在物を、マ
トリックス中に合計で3000〜10000個/mm 2
の密度で均一に分散させた打抜き性に優れたFe−Ni
系合金の製造方法を提供することにある。
ち抜いた後の破面を示すもので、パンチが入って来る側
に剪断面、パンチが出て行く側に破断面が形成される。
剪断面では塑性変形が生じ、破断面では脆性破壊が生じ
る。材料にはある程度の脆性があった方が加工性に優れ
るから、板厚に対して剪断面の割合が多くなる材料では
バリが生じ易くなる。よって、(剪断面/板厚)の値が
小さい方が良いことになる。また、剪断面と破断面の境
界が乱れていると、剪断面の割合が部分的に多くなるか
ら、剪断面と破断面との境界の直線性も打抜き性を評価
する指標となる。本発明者等は、以上の原理を踏まえて
打抜き性に及ぼす各種の影響を鋭意研究した結果、以下
の知見を見い出すに至った。
nSあるいは酸化物系介在物を圧延方向および板厚方向
に対して平行な断面の中に、合計で3000〜1000
0個/mm2の密度で均一に分散させる必要がある。 (2)MnSまたは酸化物系介在物の粒径は、最終の薄
板において0.01〜3μmである必要がある。介在物
の粒径が0.01μmを下回ると、介在物が打抜き時に
破断の起点となり難くなる。逆に、介在物の粒径が3μ
mを上回ると、介在物による破断の範囲が大きくなり過
ぎて、剪断面と破断面の境界の直線性を乱してしまうと
ともに、材料に残留応力を生じて経時変形が生じ易くな
る。介在物の粒径の好ましい範囲は0.1〜3μmであ
り、0.1〜2μmであればさらに好適である。 (3)上記のような介在物の分布が圧延方向および板厚
と平行な断面中に3000個/mm未満では、打ち抜き
性を向上させるに至らず、10000個/mm2を上回
ると、剪断面と破断面の境界が乱れる。 (4)MnSまたは酸化物系介在物の形状は球状である
ことが望ましい。球状の介在物は破断の起点になり易
く、また金型との潤滑に効果がある。逆に、尖った形状
であると金型に砥粒として作用し、その寿命を低下させ
てしまう。
らかになったが、この合金を安定して低コストで製造す
ることが商業的に重要である。そこで、本発明者等は、
上記のような合金を製造するために種々の実験を行い、
以下の知見を得るに至った。
は酸化物系介在物をマトリックス中に分散させるには、
脱酸と同時に生成する一次脱酸生成物を完全に浮上除去
する必要がある。これは、一次脱酸生成物は比較的大型
であり、薄板になった時に粒径3μmを超える介在物を
生じさせるからである。また、一次脱酸生成物が存在す
ると、MnSはそこに優先的に晶出ないし析出して除去
されてしまうので、この観点からも、一次脱酸生成物は
完全に除去されなければならない。この際、CaO−S
iO2系、CaO−Al2O3系のスラグを湯面に浮か
べ、積極的に介在物を除去するとより効果的である。
時の温度低下により生成する酸化物系介在物(二次脱酸
生成物)の組成をMnO−SiO2系にすることが効果
的であることが判明している。MnSの微細分散につい
てのメカニズムはまだ不明な点もあるが、次のように推
察される。すなわち、凝固が進行すると、溶鋼中のSが
比較的溶解度の高いMnO−SiO2系介在物中に溶解
し、インゴット中に微細に分散する。その後、インゴッ
トを鍛造し、熱間圧延する際に、再加熱を受け、MnS
とMnO−SiO2が分離すると推測される。ただし、
これはあくまでも推測であって、かかる効果の有無によ
り本発明が限定されないことは言うまでもない。よっ
て、本発明で用いる脱酸剤の元素はSi及びMnであ
る。
なされたもので、Niを30〜55重量%含むFe−N
i系合金の溶湯に、Si及びMnを投入して酸素濃度を
50ppm以下まで下げた後に鋳造し、熱間圧延および
冷間圧延を施して圧延方向および板厚方向に対して平行
な断面の中に、粒径0.01〜3μmのMnSと粒径
0.01〜3μm以下の酸化物系介在物を、マトリック
ス中に合計で3000〜10000個/mm2の密度で
均一分散させることを特徴としている。
物が浮揚するのが遅いため、これを完全に除去するのに
時間がかかってしまうことは否めない。そこで、最も有
効な方法は、一次脱酸生成物を生成しないことである。
すなわち、Fe−Niが溶け落ちた直後にCを0.1%
程度添加し、最低でも20torrの減圧雰囲気にする
ことでC−O反応を活発に行わせ、酸素濃度を100p
pm以下に制御した後、Si及びMnを例えばそれぞれ
0.15%、0.5%ほど添加する。そうすることによ
り、比較的大きな脱酸生成物の生成を回避することがで
きる。また、清浄度に優れる高級鋼を製造する際には、
真空溶解後、ESR(Electro Slag Remelting)あるい
はVAR(Vacuum Arc Remelting)に代表される特殊溶
解を行うと、残留した少量の一次脱酸生成物が完全除去
できることから有効である。また、SはMnと結合して
MnSを生成する重要な元素であり、さらに、AlはM
nSの微細分散を妨げる働きがある。
iを30〜55重量%含むFe−Ni系合金の溶湯にS
i及びMnを投入する前に、該溶湯のAlを0.002
重量%以下に調整した後、20torr以下の減圧下で
Cを用いて予備脱酸して酸素濃度を100ppm以下と
し、次いで、S濃度を0.0005〜0.02重量%に
調整することが好ましい。この後、Si及びMnを投入
して酸素濃度を50ppm以下まで下げた後に鋳造し、
熱間圧延および冷間圧延を施して、粒径0.01〜3μ
mのMnSと粒径0.01〜3μmの酸化物系介在物
を、マトリックス中に合計で3000〜10000個/
mm2の密度で均一分散させる。この場合において、A
lを0.002重量%以下とするためには、溶解後大気
中で保持することでAlを酸化除去すれば良い。また、
添加するCの量は、0.05〜0.2重量%が望まし
く、投入するSi及びMnの総量は、0.5〜1.0重
量%が望ましい。さらに、Sの含有量は、溶湯へSを添
加するかあるいは脱硫により調整する。
i、Zrの少なくともいずれか一方を添加するとより効
果的であることがわかった。この理由についても、現在
研究中であるが次のように推察される。まず最初に、凝
固時に酸素が過飽和になって微細なTiO2あるいはZ
rO2介在物が析出する。続いて、溶鋼中のSが過飽和
になり、介在物の上に優先的にMnSが析出するためと
推測される。ただし、これについても推測であって、か
かる作用の有無により本発明が限定されることはない。
なお、この場合も、一次脱酸生成物は、MnSの微細分
散を阻害する有害物質であるので、積極的に除去してお
かなければならない。以上の知見から、本発明では、S
i及びMnを投入した後に、TiおよびZrの少なくと
もいずれか一方を合計で0.0001〜0.01%添加
することが好ましい。
30〜55%、S:0.0005〜0.02%、O:5
0ppm以下、残部Feおよび合金元素ならびに不可避
的不純物からなり、圧延方向および板厚方向に対して平
行な断面の中に、粒径0.01〜3μmのMnSと粒径
0.01〜3μmの酸化物系介在物を、マトリックス中
に合計で3000〜10000個/mm2の密度で均一
分散させたFe−Ni系合金を得ることが可能である。
なお、合金元素としてはSi、Mn、C、Co、Crな
どがあり、不可避的不純物としては、N、Ca、Mg、
Nbなどがある。以下に本発明で限定されている成分組
成の根拠を説明する。
成分としては、最も重要な成分である。Niが30重量
%を下回ると、熱膨張係数が大きくなり、リードフレー
ム用材料としての機能を失う。Niが55重量%を超え
るものは、熱膨張係数が大きくなってしまうのみでな
く、合金のコスト高につながる。よって、Niの含有量
は30〜55%である必要がある。
し、打ち抜き性を向上させることから、本発明上、重要
な元素である。Sの含有量が0.0005重量%未満で
は十分な数のMnS粒子を生成できず、0.02重量%
を超える添加量では、熱間加工性を阻害することから、
0.0005〜0.02%の範囲である必要がある。
介在物を生成する。もし、それらが、粗大であると打抜
き破面を乱すので、極力低減する必要がある。酸素濃度
が50ppmを超えると、粗大な一次脱酸生成物の発生
が顕著になることが確認されている。よって、最終製品
での酸素濃度は50ppm以下とした。好ましくは、3
0ppm以下である
で、Cの添加による脱酸を行って酸素濃度を下げた後
に、脱酸剤としてのSi及びMnを投入すると、一次脱
酸生成物を殆ど生じないことが確認されている。また、
C脱酸後の酸素濃度が100ppmを超える状態でSi
及びMnを投入すると、粗大な一次脱酸生成物を生じる
ことが確認されている。よって、C脱酸後の酸素濃度は
100ppm以下とした。好ましくは、50ppm以下
である。また、20torrを超える真空度であると、
C−O反応が効果的に進まないため、20torr以下
の真空度とした。好ましくは、1torr以下である。
0.002%を超えると、脱酸生成物中のAl2O3の
割合が増加してくるが、このようなAl2O3を含む介
在物にはMnSを微細に分散する効果がない。よって、
Alの含有量は0.002重量%以下とした。Tiおよ
びZrは基本的にSi及びMnと同様、MnSを微細分
散させる能力に富む。これは、凝固時に晶出する微細な
TiO2あるいはZrO2の上に選択的にMnSが晶出
するためである。0.0001重量%未満ではその効果
を発揮せず、また、0.01重量%を上回ると、合金の
熱膨張係数が大きくなる。よって、TiおよびZrの総
含有量は0.0001〜0.01重量%が望ましい。
細に説明する。表1に示す溶解、鋳造プロセスを用いて
13種類の鋼塊を製造し、それらに熱間圧延及び冷間圧
延を施し、0.15mm厚の薄板とした。表1におい
て、#1〜#3、#9、#10は一次脱酸生成物を生成
しない溶解プロセスであり、それ以外の#3〜#8、#
11〜#13は、一次脱酸生成物を生成した後、浮上分
離するプロセスである。表1の本発明例:#1〜#8
は、Niを30〜55重量%含むFe−Ni系合金の溶
湯にSi及びMnを投入する前に、該溶湯のAlを0.
002重量%以下に調整した後、20torr以下の減
圧下でCを用いて予備脱酸して酸素濃度を100ppm
以下とし、次いで、S濃度を0.0005〜0.02重
量%に調整した条件を、請求項1,2に加えた製造方法
を適用している。そして、この製造方法を満足しない#
9〜#13を比較例とした。また、#13は、請求項2
の条件を満足しないので、比較例とした。
顕微鏡観察し、切断面に観察されるMnSの個数を測定
した。この測定結果を表1に併記した。また、打抜き試
験は、実験室用500kg精密金型プレス機にて、板厚
の3%のクリアランスを設定し、5mm角の穴を圧延方
向直角に10mm間隔で5個開けることにより実施し
た。打抜き後の破面における剪断面/破断面の比率を測
定し、5個の平均値が0.75を上回る場合に○、0.
75以下の場合に×と評価してこれを表1に併記した。
れも打抜き性に優れ、しかも熱間加工性も良好であるこ
とが確認された。これに対して、#9では、Sの含有量
が0.0005重量%を下回っているためにMnSの密
度が低く、その結果、打抜き性が劣化した。また、#1
0及び#11では、Sの含有量が0.02重量%を上回
っているためにMnSの密度が大きくなり過ぎ、その結
果、破断面が乱れて打抜き性が劣化するとともに、熱間
加工性も劣化した。また、#12では、Alの含有量が
0.002重量%を上回っているため、脱酸生成物とし
てAl2O3が生成し、この生成物はMnSを微細に分
散する機能が無いためにMnSの密度が低下した。な
お、#13では、請求項2の条件を満足するために、打
抜き性は良好であったが、Tiの含有量が多過ぎるため
に熱膨張係数が増加した。
は、バフ研磨後SPEED法にて電解を行った表面をX
線マイクロアナライザーにより50μm×50μmの範
囲を各試料10視野観察し、マッピングにてMnSの分
布を点としてカウントし、その平均を1mm平方あたり
の数として求めた。
nS及び酸化物系介在物を程良く分散させたFe−Ni
合金を安定かつ低コストで製造することができるので、
リードフレーム材の打抜き工程でのバリ発生による材料
不具合や、ハンドリングによる不具合がなくなるととも
に、金型の寿命を大幅に向上することが期待でき、近年
のICパッケージ用リードフレーム材の高精細化、高信
頼性化および生産効率の向上に対して優れた部品を供給
することが可能となる。
Claims (2)
- 【請求項1】 Niを30〜55重量%含むFe−Ni
系合金の溶湯に、Si及びMnを投入して酸素濃度を5
0ppm以下まで下げた後に鋳造し、熱間圧延および冷
間圧延を施して圧延方向および板厚方向に対して平行な
断面の中に、粒径0.01〜3μmのMnSと粒径0.
01〜3μmの酸化物系介在物を、マトリックス中に合
計で3000〜10000個/mm2の密度で均一分散
させることを特徴とする打抜き性に優れるFe−Ni系
合金の製造方法。 - 【請求項2】 前記Si及びMnを投入した後に、Ti
およびZrの少なくともいずれか一方を合計で0.00
01〜0.01%添加することを特徴とする請求項1に
記載の打抜き性に優れるFe−Ni系合金の製造方法。
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JP2003013091A JP4091446B2 (ja) | 2003-01-22 | 2003-01-22 | 打抜き加工性に優れるFe−Ni系合金の製造方法 |
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