JP2003292981A - グリースおよびこれを用いた転がり軸受、電動モータ - Google Patents

グリースおよびこれを用いた転がり軸受、電動モータ

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JP2003292981A JP2002358363A JP2002358363A JP2003292981A JP 2003292981 A JP2003292981 A JP 2003292981A JP 2002358363 A JP2002358363 A JP 2002358363A JP 2002358363 A JP2002358363 A JP 2002358363A JP 2003292981 A JP2003292981 A JP 2003292981A
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Atsushi Kuraishi
淳 倉石
Atsushi Yokouchi
敦 横内
Michiharu Naka
道治 中
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NSK Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】内外輪と玉との接触部に十分な潤滑油膜が形成
され難い条件下であっても、短時間で摩耗が生じること
が防止できる転がり軸受を提供する。 【解決手段】軸受内部空間に、リチウム石けん繊維を増
ちょう剤として含有するグリースを封入する。前記繊維
として、長さが3μm以上で太さが0.2μm以上のも
のを使用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グリースおよびこ
れを用いた転がり軸受と、この転がり軸受が組み込まれ
ている電動モータに関する。
【0002】
【従来の技術】コンピュータ、家電製品、音響機器、自
動車電装品等に使用される各種モータで、音響、摩耗が
重要視される回転部位に使用される転がり軸受には、潤
滑グリースとして、例えば、基油にエステル油を、増ち
ょう剤にリチウム石けんを使用したリチウム石けん/エ
ステル油系グリースや、基油にエステル油とエーテル油
の混合油を、増ちょう剤にリチウム石けんを使用したリ
チウム石けん/エステルエーテル油系グリースが封入さ
れている。
【0003】これらのグリースとしては、40℃での基
油動粘度が26〜53mm2 /sであり、ちょう度が2
40〜260程度のものが主に使用されている。また、
従来よりグリースの増ちょう剤として使用されている石
けん繊維の寸法は、繊維の長さが1μm以下であって、
太さが0.1μm以下のものである。なお、特許文献1
には、基油成分の50重量%以上がエステル系合成油で
あり、増ちょう剤が3.0μm以上の長さを有するリチ
ウム石けん繊維を含有するグリースが開示されている。
特許文献2には、分子構造中に極性基を有する潤滑油と
無極性潤滑油との配合油からなる基油と、長径部の長さ
が少なくとも3μmである長繊維状物を含む金属石けん
系増ちょう剤と、を含有する転がり軸受用グリースが開
示されている。なお、特許文献2は本願の基礎出願(特
願2002−24516号)の出願後に公開されてい
る。
【0004】
【特許文献1】特開2000−328087号公報
【特許文献2】特開2002−047499号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記用途の転がり軸受
には、内外輪と玉との接触部に十分な潤滑油膜が形成さ
れ難い条件(回転速度が低い場合等)下で短時間で摩耗
し、軸受の音響が上昇したり、トルクが上昇したりする
という問題点がある。本発明は、内外輪と玉との接触部
に十分な潤滑油膜が形成され難い条件下であっても、短
時間で摩耗が生じることを防止できる転がり軸受を提供
することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、増ちょう剤としてリチウム石けん繊維を
含有し、前記繊維の太さ(投影像の幅)が0.2μm以
上であることを特徴とするグリースを提供する。本発明
は、また、増ちょう剤としてリチウム石けん繊維を含有
し、前記繊維の長さが3μm以上且つ太さ(投影像の
幅)が0.2μm以上であることを特徴とするグリース
を提供する。
【0007】本発明のグリースの増ちょう剤をなすリチ
ウム石けん繊維は、従来使用されているものよりも太く
て長いため、繊維が破壊され難い。そのため、この繊維
が内外輪と玉との接触部で固定潤滑剤として機能する。
これにより、回転速度が低い場合等の、前記接触部に十
分な潤滑油膜が形成され難い条件下であっても、短時間
で摩耗が生じることを防止できる。
【0008】リチウム石けん繊維の長さと太さは、リチ
ウム石けん繊維を製造する際の反応条件を調整すること
等によって制御可能である。長さが3μm以上で太さが
0.2μm以上である、太くて長いリチウム石けん繊維
は、製造工程において短繊維状物質が合体、成長したも
のであって、その三次元構造は短繊維状物質に比べ発達
している。そのため、転がり軸受の内外輪と玉との接触
部に入り込んだ際に、強固な潤滑保護膜を形成すること
ができる。
【0009】リチウム石けん繊維が長くなりすぎると、
回転時に転がり軸受の接触面に入り込んだときに抵抗と
なり、起動トルクや音響に悪影響を及ぼすため、リチウ
ム石けん繊維の長さは10μm以下であることが好まし
い。ここで、増ちょう剤として太さが0.2μm未満の
リチウム石けん繊維を含有したグリースAと、太さが
0.2μm以上のリチウム石けん繊維を含有したグリー
スBについて、各グリースが封入された転がり軸受の内
外輪と転動体との接触部に生じるグリース膜の厚さと、
基油の動粘度との関係を図8に、各グリースが封入され
た転がり軸受に生じるトルクと基油の動粘度との関係を
図9に示す。
【0010】これらの図から分かるように、基油の動粘
度が同じ場合のグリース膜の厚さはグリースBの方が厚
く、基油の動粘度が同じ場合の軸受トルクはグリースB
の方が小さい。そのため、グリース膜の厚さを同じにし
た場合、グリースBはグリースAよりも(動粘度の低い
基油を用いることで)軸受トルクが低くなる。また、軸
受トルクが同じになる基油の動粘度は、グリースAより
もグリースBが高い。これにより、軸受トルクが同じ場
合の耐摩耗性は、グリースBがグリースAよりも(高い
動粘度の基油を用いるためにグリース膜の厚さが厚くな
ることで)高くなる。
【0011】リチウム石けん繊維は、1価あるいは2価
の有機脂肪酸または有機ヒドロキシ脂肪酸と、リチウム
の水酸化物と、を合成して得られる有機脂肪酸リチウム
塩または有機ヒドロキシ脂肪酸リチウム塩からなること
が好ましい。前記合成に使用される有機脂肪酸として
は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガ
リン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグ
ノセリン酸、牛脂脂肪酸などが挙げられる。また、有機
ビドロキシ脂肪酸としては、9−ヒドロキシステアリン
酸、10−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシ
ステアリン酸、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、
リシノール酸、リシノエライジン酸などが挙げられる。
【0012】上記の有機脂肪酸または有機ヒドロキシ脂
肪酸と、リチウムの水酸化物との組み合わせとしては、
ステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸と水酸化リ
チウムとの組み合わせが特に好ましい。本発明のグリー
スにおいて、増ちょう剤以外の成分は従来より公知のも
のを使用することができる。
【0013】グリースの基油としては、エステル油、エ
ーテル油、合成炭化水素油等の合成油や鉱油を使用する
ことができる。これらの基油は単独でも良いし、複数を
併用しても良い。エステル油としては、二塩基酸と分岐
アルコールとの反応から得られるジエステル油、炭酸エ
ステル油、芳香族系三塩基酸と分岐アルコールとの反応
から得られる芳香族エステル油、一塩基酸と多価アルコ
ールとの反応から得られるポリオールエステル油などが
好適である。
【0014】ジエステル油としては、ジオクチルアジペ
ート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIB
A)、ジブチルアジペート(DBA)、ジオクチルアジ
ペート(DOZ)、ジブチルセバケート(DBS)、ジ
オクチルセバケート(DOS)、メチルアセチルリシノ
レート(MAR−N)などが挙げられる。炭酸エステル
油としては、直鎖または分岐アルキル基の炭素数6〜3
0のものが好ましい。
【0015】芳香族エステル油としては、トリオクチル
トリメリテート(TOTM)、トリデシルトリメリテー
ト、テトラオクチルピロメリテートなどが挙げられる。
ポリオールエステル油としては、以下に示す多価アルコ
ールと一塩基酸とを適宜反応させて得られるものが挙げ
られる。多価アルコールに反応させる一塩基酸は、単独
でも良いし、複数用いても良い。さらに、多価アルコー
ルと二塩基酸/一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステ
ルである、コンプレックスエステルとして用いても良
い。
【0016】多価アルコールとしては、トリメチロール
プロパン(TMP)、ペンタエリスリトール(PE)、
ジペンタエリスリトール(DPE)、ネオペンチルグリ
コール(NPG)、2−メチル−2−プロピル−1 ,3
−プロパンジオール(MPPD)などが挙げられる。一
塩基酸としては、主に炭素数4〜16の一価脂肪酸が用
いられる。具体的には、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カ
プリル酸、エナント酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウ
ンデカン酸、ラウリン酸、ミステリン酸、パルミチン
酸、牛脂脂肪酸、ステアリン酸、カプロレイン酸、パル
ミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジ
ン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノイン酸、リシノー
ル酸などが挙げられる、エーテル油としては、例えば
(ジ)アルキルジフェニルニーテル油、(ジ)アルキル
ポリフェニルエーテル油、ポリアルキレングリコール油
などが挙げられる。
【0017】鉱油としては、パラフィン系鉱油、ナフテ
ン系鉱油を挙げることができる。合成炭化水素油として
は、ポリ−α−オレフィン油などが挙げられる。基油の
動粘度は40℃で18〜200mm2 /sであればよ
く、低トルク性を考慮すると40℃で18〜100mm
2 /sであることが好ましい。また、本発明のグリース
には、必要に応じて従来より公知の酸化防止剤、防錆
剤、金属不活性化剤、油性剤等が含有されていてもよ
い。
【0018】本発明はまた、基油と増ちょう剤とを主成
分として構成されるグリースにおいて、前記増ちょう剤
は、繊維の太さが0.2μm以上であるリチウム石けん
繊維を、20%以上の割合で含有することを特徴とする
グリースを提供する。本発明はまた、基油と増ちょう剤
とを主成分として構成されるグリースにおいて、前記増
ちょう剤は、繊維の長さが3μm以上且つ太さが0.2
μm以上であるリチウム石けん繊維を、20%以上の割
合で含有することを特徴とするグリースを提供する。
【0019】ここで、増ちょう剤中の「繊維の太さが
0.2μm以上であるリチウム石けん繊維」および「繊
維の長さが3μm以上且つ太さが0.2μm以上である
リチウム石けん繊維」の含有割合は、例えば以下の方法
で測定できる。先ず、グリースをヘキサンで希釈した液
体を、コロジオン膜を貼った銅製メッシュに付着させ
る。次に、このメッシュを透過型電子顕微鏡にかけて6
000倍に拡大し、この拡大像を観察して、その拡大像
に含まれる全ての繊維について太さ(または太さと長
さ)を測定する。次に、この測定結果から前記含有割合
を算出する。そして、この観察および測定をメッシュの
複数箇所で行い、各箇所で算出された前記含有割合の平
均値を、このグリースの増ちょう剤中の「繊維の太さが
0.2μm以上であるリチウム石けん繊維」および「繊
維の長さが3μm以上且つ太さが0.2μm以上である
リチウム石けん繊維」の含有割合とする。
【0020】本発明のグリースは、前記基油が鉱油を3
0質量%以上の割合で含有することが好ましい。このグ
リースは、基油として鉱油の含有率が30質量%未満で
あるグリースと比較して、転がり軸受の耐摩耗性を向上
させる効果が高い。これは、鉱油に含まれる特に硫黄
(S)成分の寄与によるものと推定される。ここで、二
硫化モリブデン(MoS2 )等の固体潤滑剤の添加によ
り、転がり軸受の耐摩耗性が向上することが知られてい
るが、本発明のグリースでは、増ちょう剤中の繊維の太
さ(および長さ)の特定と、鉱油を30質量%以上含有
する基油を使用することによって、二硫化モリブデン
(MoS2 )の添加の場合と同じ耐摩耗性向上効果が得
られる。さらに、本発明のグリースでは、基油と増ちょ
う剤の特定により耐摩耗性向上効果を得ているため、固
体潤滑剤をグリースに添加した場合のように、グリース
としての基本的な特性が損なわれることがない。
【0021】本発明はまた、基油と増ちょう剤とを主成
分として構成されるグリースにおいて、前記増ちょう剤
は、繊維の太さが0.2μm以上であるリチウム石けん
繊維を、20%以上の割合で含有し、前記基油は鉱油を
30質量%以上の割合で含有するグリース(第1のグリ
ース)を提供する。本発明はまた、基油と増ちょう剤と
を主成分として構成されるグリースにおいて、前記増ち
ょう剤は、繊維の長さが3μm以上且つ太さが0.2μ
m以上であるリチウム石けん繊維を、20%以上の割合
で含有し、前記基油は鉱油を30質量%以上の割合で含
有するグリース(第2のグリース)を提供する。
【0022】前記第1のグリースおよび第2のグリース
は、これらのグリースが封入された転がり軸受のフレッ
チング(振動による微小滑りによって転動体と軌道面と
の接触面に生じる圧痕状の摩耗)を生じ難くする作用を
有する。本発明はまた、本発明のグリースが封入されて
いることを特徴とする転がり軸受を提供する。
【0023】本発明はまた、回転軸を支持する軸受とし
て、正の内部すきまを有する転がり軸受が、予圧を付与
され、所定の接触角を有する状態で組み込まれている電
動モータにおいて、前記転がり軸受として、「基油と増
ちょう剤とを主成分として構成されるグリースにおい
て、前記増ちょう剤は、繊維の太さが0.2μm以上で
あるリチウム石けん繊維を、20%以上の割合で含有
し、前記基油は鉱油を30質量%以上の割合で含有する
グリース(第1のグリース)が封入されている転がり軸
受」あるいは「基油と増ちょう剤とを主成分として構成
されるグリースにおいて、前記増ちょう剤は、繊維の長
さが3μm以上且つ太さが0.2μm以上であるリチウ
ム石けん繊維を、20%以上の割合で含有し、前記基油
は鉱油を30質量%以上の割合で含有するグリース(第
2のグリース)が封入されている転がり軸受」が組み込
まれている電動モータを提供する。
【0024】ここで、正の内部すきまを有する転がり軸
受を電動モータに組み込む際に、予圧を付与することな
く組み込むと、転動体及び軌道面は全く拘束されないか
ら、転動体と軌道面との接触位置は自由に変化しうる状
態となっている。このような状態で転がり軸受が組み込
まれていると、電動モータの運搬時や携帯時等に振動を
受けても、転動体や軌道面の特定の位置に繰り返し負荷
が作用することがないので、転動体や軌道面に損傷が生
じる可能性はほとんどない。
【0025】また、負の内部すきまを有する転がり軸受
は、軸受単体で転動体と軌道面とが接触し拘束された状
態で組み立てられている。このような状態で転がり軸受
が電動モータに組み込まれていると、電動モータの運搬
時や携帯時等に振動を受けても、転動体と軌道面との相
対移動はフレッチングを発生させる振幅より小さく抑え
られるので、転動体や軌道面に損傷が生じる可能性はほ
とんどない。
【0026】これに対して、正の内部すきまを有する転
がり軸受を電動モータに組み込む際に、予圧を付与して
組み込んで所定の接触角を有する状態にすると、転動体
と軌道面とが接触して拘束はされているが、その接触位
置が移動しうる状態となっている。その結果、電動モー
タの運搬時や携帯時等に振動を受けた際に、初期の接触
位置を中心として接触位置が移動を繰り返すため、初期
の接触位置の近傍に繰り返し負荷が作用することとなっ
て、フレッチングが生じやすい。
【0027】前記第1のグリースおよび第2のグリース
は、これらのグリースが封入された転がり軸受のフレッ
チングを生じ難くする作用を有する。そのため、上述の
ように、フレッチングが生じやすい状態で転がり軸受が
組み込まれた電動モータ(すなわち、正の内部すきまを
有する転がり軸受が、予圧を付与され、所定の接触角を
有する状態で組み込まれている電動モータ)において、
この転がり軸受に前記第1のグリースまたは第2のグリ
ースを封入することにより、この転がり軸受にフレッチ
ングが生じ難くなる。その結果、この電動モータの寿命
を長くすることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
説明する。 [第1実施形態]図1は、本発明の実施形態に相当する
転がり軸受を示す断面図である。この転がり軸受は、外
輪1と、内輪2と、玉(転動体)3と、保持器4と、シ
ール5とで構成されている。シール5により、軸受の内
部空間に封入されたグリースが外部に漏洩したり、外部
から塵粉等が進入することを防止している。
【0029】図1の構造の転がり軸受として、内径5m
m、外径13mm、幅4mm、軸受内部すきま5〜10
μmであるものを用意した。この軸受内に、下記の表1
に示す組成の各グリースを10mg封入して60時間の
回転試験を行い、試験前後の軸受音響上昇を比較した。
なお、この音響上昇値が高いほど、転がり軸受の摩耗の
程度が大きいことになる。
【0030】具体的には、図2に示すように、図1の構
造の転がり軸受10を2個、電動モータに組み込んだ状
態で回転させた。この電動モータ55は、シャフト51
の外周面に固定されたステータ53と、円筒状のケーシ
ング52の内周面に固定されたロータ54とで構成され
ている。このシャフト51とケーシング52との間に同
じ構成の2個の転がり軸受10を、予圧を付与して所定
の接触角を有する状態で組み込んだ。
【0031】なお、軸受の音響は、試験軸受のアキシア
ル方向の加速度振動値(G値)を測定した。サンプルは
各4組用意し、各サンプルについて音響上昇値を測定し
て、その結果を表1に併せて示した。軸受回転試験条件
は、外輪回転、回転速度:2800rpm、アキシアル
荷重:17.6N、雰囲気温度:90℃である。この条
件では、内外輪と玉との接触部に十分な潤滑油膜が形成
され難い。
【0032】
【表1】
【0033】なお、表1の基油の動粘度は40℃での値
を示す。また、各基油はK1、K2、鉱油が各100%
であるものを使用した。また、各グリースにおいて、増
ちょう剤としては、表1に記載した各太さおよび長さの
リチウム石けん繊維の含有率が100%であるものを用
いた。また、鉱油としては、工業用潤滑油「ISOVG
100」を使用した。
【0034】この結果から分かるように、No. 1−1〜
1−6,1−13の転がり軸受は、太さが0.2μm以
上であるリチウム石けん繊維を増ちょう剤として含有す
るグリースが封入されているため、音響上昇値が2×
9.8×10-3〜13×9.8×10-3m/s2 と小さ
かった。これに対して、No. 1−7〜1−12の転がり
軸受は、太さが0.2μm未満であるリチウム石けん繊
維を増ちょう剤として含有するグリースが封入されてい
るため、音響上昇値が20×9.8×10-3〜76×
9.8×10-3m/s2 と大きかった。
【0035】また、No. 1−1〜1−6の転がり軸受
は、長さが3μm以上且つ太さが0.2μm以上である
リチウム石けん繊維を増ちょう剤として含有するグリー
スが封入されており、その音響上昇値は2×9.8×1
-3〜9×9.8×10-3m/s2 であった。 [第2実施形態]図1の構造の転がり軸受として、内径
5mm、外径13mm、幅4mm、軸受内部すきま5〜
10μmであるものを用意した。
【0036】この軸受内に、下記の表2に示す組成の各
グリースを10mg封入して、60時間の回転試験と1
0万回の揺動試験を行い、試験前後の軸受音響上昇を比
較した。なお、この音響上昇値が高いほど、転がり軸受
の摩耗の程度が大きいことになる。また、揺動試験によ
る音響上昇値が小さいほど、転がり軸受にフレッチング
が生じ難いことを示している。
【0037】回転試験は、第1実施形態と同じ方法で行
った。揺動試験は、図3に示す揺動試験装置を用いて行
った。この試験装置は、台20と、揺動モータ21と、
揺動軸22と、揺動シリンダ23と、シリンダ保持部材
24と、固定軸25と、支柱26とからなる。台20の
中央に貫通穴20aが形成されている。揺動モータ21
は台20の下面に固定され、その揺動軸22が貫通穴2
0aから上方に延びて台20より突出している。この揺
動軸22の上に固定されたシリンダ保持部材24によ
り、揺動シリンダ23の下部が保持されている。固定軸
25は支柱26により台20に固定されている。この固
定軸25と揺動シリンダ23との間に、同じ構成の4個
の試験軸受10を取り付け、揺動モータ21を駆動する
ことにより揺動軸22を揺動させる。これにより、揺動
シリンダ23、シリンダ保持部材24、および試験軸受
10の外輪が一体に揺動する。
【0038】なお、軸受の音響は、試験軸受のアキシア
ル方向の加速度振動値(G値)を測定した。サンプルは
各4組用意し、各サンプルについて音響上昇値を測定し
て、その結果を表2に併せて示した。軸受回転試験条件
は、アキシアル荷重:14.7N、雰囲気温度:室温
(25℃)、揺動角度:4°、揺動周波数:9Hzであ
る。この条件では、内外輪と玉との接触部に十分な潤滑
油膜が形成され難い。
【0039】
【表2】
【0040】なお、表2の基油の動粘度は40℃での値
を示す。また、各グリースでは、基油として、鉱油、K
1、またはK2が100%であるものと、鉱油とK1ま
たはK2とを各割合で混合したものを使用した。また、
鉱油としては、No. 2−5では工業用潤滑油「ISO
VG32」をそれ以外では同「ISO VG100」を
使用した。また、各グリースにおいて、増ちょう剤とし
ては、表2に記載した各太さおよび長さのリチウム石け
ん繊維の含有率が100%であるものを用いた。
【0041】また、前記軸受回転試験のデータを、図4
に示すように、グリースの増ちょう剤の石けん繊維の太
さを横軸、長さを縦軸にしたグラフにプロットした。前
記軸受揺動試験のデータを、図5に示すように、グリー
スの増ちょう剤の石けん繊維の太さを横軸、長さを縦軸
にしたグラフにプロットした。両図において、「●」は
音響上昇値が10×9.8×10-3m/s2 未満である
場合、「▲」は音響上昇値が10×9.8×10-3m/
2 以上20×9.8×10-3m/s2 未満である場
合、「□」は音響上昇値が20×9.8×10-3m/s
2 以上30×9.8×10-3m/s2 未満である場合、
「×」は音響上昇値が30×9.8×10-3m/s2
上40×9.8×10-3m/s2 未満である場合、
「◇」は40×9.8×10-3m/s2 以上50×9.
8×10-3m/s2 未満である場合のプロットを示す。
【0042】また、前記軸受揺動試験で得られた音響上
昇値のデータを、使用したグリースの基油中の鉱油含有
率との関係を示すグラフ(図6)にまとめた。このグラ
フは、増ちょう剤の繊維の寸法が長さ5.0μm、太さ
0.3μmであって、基油が鉱油とK1との混合油であ
るか、いずれか100%からなるNo. 2−4,No. 2−
6,No. 2−8〜2−11,およびNo. 2−13の結果
をプロットしたものである。
【0043】さらに、平均太さ0.3μm且つ平均長さ
5μmの12−ヒドロキシステアリン酸リチウム繊維A
と、平均太さ0.15μm且つ平均長さ3μmの12−
ヒドロキシステアリン酸リチウム繊維Bとを用意し、こ
れらの合計量における繊維Aの含有率を0〜100%の
各割合に変化させた12−ヒドロキシステアリン酸リチ
ウム繊維を増ちょう剤として使用し、基油としてNo. 2
−8と同じ鉱油とK1を1:1で混合したものを使用し
たグリースを用意し、前述の軸受揺動試験を行った。そ
して、得られた音響上昇値のデータを、使用したグリー
スの増ちょう剤中の繊維A(平均太さ0.3μm且つ平
均長さ5μmの12−ヒドロキシステアリン酸リチウム
繊維)の含有率との関係を示すグラフ(図7)にまとめ
た。
【0044】これらの結果から分かるように、No. 2−
1〜2−14の転がり軸受は、太さが0.2μm以上で
あるリチウム石けん繊維を増ちょう剤として含有するグ
リースが封入されているため、軸受回転試験での音響上
昇値が1×9.8×10-3〜18×9.8×10-3m/
2 であり、太さが0.2μm未満であるリチウム石け
ん繊維を増ちょう剤として含有するグリースが封入され
ているNo. 2−15および2−16の転がり軸受の軸受
回転試験での音響上昇値(20×9.8×10 -3〜38
×9.8×10-3m/s2 )よりも小さかった。
【0045】また、鉱油100%の基油を使用している
No. 2−1〜2−5,2−12,2−16における比較
では、長さが3μm以上且つ太さが0.2μm以上であ
るリチウム石けん繊維を増ちょう剤として含有するグリ
ースが封入されているNo. 2−1〜2−5の転がり軸受
の音響上昇値は1×9.8×10-3〜5×9.8×10
-3m/s2 であり、「長さが3μm以上且つ太さが0.
2μm以上」を満たさないリチウム石けん繊維を増ちょ
う剤として含有するグリースが封入されているNo. 2−
12および2−16の転がり軸受の音響上昇値(10×
9.8×10-3〜38×9.8×10-3m/s2 )より
も小さかった。
【0046】また、図6に示すように、増ちょう剤の繊
維の寸法が長さ5.0μm、太さ0.3μmである場合
には、基油中の鉱油含有率が30質量%以上であると、
軸受揺動試験時の音響上昇値が10×9.8×10-3
/s2 未満となっている。これに対して、基油中の鉱油
含有率が20質量%以下であると、軸受揺動試験時の音
響上昇値は20×9.8×10-3m/s2 以上となって
いる。
【0047】また、図7に示すように、増ちょう剤の繊
維A(太さ0.3μm且つ長さ5μmの12−ヒドロキ
システアリン酸リチウム繊維)の含有率が20%以上で
あると、軸受揺動試験時の音響上昇値が15×9.8×
10-3m/s2 未満となっている。これに対して、増ち
ょう剤の繊維Aの含有率が10%以下であると、軸受揺
動試験時の音響上昇値は25×9.8×10-3m/s2
以上となっている。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のグリース
を転がり軸受に封入することにより、内外輪と玉との接
触部に十分な潤滑油膜が形成され難い条件下で使用され
た場合も、短時間で摩耗が生じることを防止できる。特
に、フレッチングが生じやすい状態で電動モータに組み
込まれた転がり軸受に本発明のグリースを封入すること
により、この転がり軸受にフレッチングが生じ難くなる
ため、フレッチングが生じやすい状態で転がり軸受が組
み込まれた電動モータの寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に相当する転がり軸受を示す
断面図である。
【図2】本発明の実施形態で行った軸受回転試験を説明
するための、電動モータを示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態で行った軸受揺動試験で使用
した試験装置を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態で行った軸受回転試験の
データをまとめたグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態で行った軸受揺動試験の
データをまとめたグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態で行った軸受揺動試験の
データをまとめたグラフであって、使用したグリースの
基油中の鉱油含有率と音響上昇値との関係を示す。
【図7】本発明の第2実施形態で行った軸受揺動試験の
データをまとめたグラフであって、使用したグリースの
増ちょう剤中の繊維A(太さ0.3μm且つ長さ5μm
の12−ヒドロキシステアリン酸リチウム繊維)の含有
率と音響上昇値との関係を示す。
【図8】増ちょう剤として太さが0.2μm未満のリチ
ウム石けん繊維を含有したグリースAと、太さが0.2
μm以上のリチウム石けん繊維を含有したグリースBに
ついて、各グリースが封された転がり軸受の内外輪と転
動体との接触部に生じる油膜の厚さと、基油の動粘度と
の関係を示すグラフである。
【図9】増ちょう剤として太さが0.2μm未満のリチ
ウム石けん繊維を含有したグリースAと、太さが0.2
μm以上のリチウム石けん繊維を含有したグリースBに
ついて、各グリースが封入された転がり軸受に生じるト
ルクと基油の動粘度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 外輪 2 内輪 3 玉(転動体) 4 保持器 5 シール 10 試験軸受 20 台 21 揺動モータ 22 揺動軸 23 揺動シリンダ 24 シリンダ保持部材 25 固定軸 26 支柱 20a 貫通穴 55 電動モータ 51 シャフト 53 ステータ 52 ケーシング 54 ロータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C10M 105/48 C10M 105/48 117/02 117/02 F16C 25/06 F16C 25/06 33/66 33/66 Z H02K 5/173 H02K 5/173 A // C10N 10:02 C10N 10:02 30:06 30:06 40:02 40:02 50:10 50:10 (72)発明者 中 道治 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 Fターム(参考) 3J012 AB04 AB12 BB01 EB14 FB10 HB02 3J101 AA02 AA32 AA42 AA54 AA62 CA12 EA63 FA32 GA24 4H104 BB15B BB33A BB34A BB37A BB41A DA02A EA02A EA10B FA01 LA03 PA01 QA18 5H605 AA05 BB05 CC04 EB10 EB18 EB23

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 増ちょう剤としてリチウム石けん繊維を
    含有し、前記繊維の太さが0.2μm以上であることを
    特徴とするグリース。
  2. 【請求項2】 増ちょう剤としてリチウム石けん繊維を
    含有し、前記繊維の長さが3μm以上且つ太さが0.2
    μm以上であることを特徴とするグリース。
  3. 【請求項3】 基油と増ちょう剤とを主成分として構成
    されるグリースにおいて、 前記増ちょう剤は、繊維の太さが0.2μm以上である
    リチウム石けん繊維を、20%以上の割合で含有するこ
    とを特徴とするグリース。
  4. 【請求項4】 基油と増ちょう剤とを主成分として構成
    されるグリースにおいて、 前記増ちょう剤は、繊維の長さが3μm以上且つ太さが
    0.2μm以上であるリチウム石けん繊維を、20%以
    上の割合で含有することを特徴とするグリース。
  5. 【請求項5】 前記基油は鉱油を30質量%以上の割合
    で含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか
    1項に記載のグリース。
  6. 【請求項6】 前記基油は、40℃での動粘度が18m
    2 /s以上200mm2 /s以下である請求項1乃至
    5のいずれか1項に記載のグリース。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の
    グリースが封入されていることを特徴とする転がり軸
    受。
  8. 【請求項8】 回転軸を支持する軸受として、正の内部
    すきまを有する転がり軸受が、予圧を付与され、所定の
    接触角を有する状態で組み込まれている電動モータにお
    いて、 前記転がり軸受として、請求項5記載のグリースが封入
    されている転がり軸受が組み込まれている電動モータ。
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