JP2003292823A - 耐食光輝性顔料 - Google Patents

耐食光輝性顔料

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JP2003292823A
JP2003292823A JP2002100156A JP2002100156A JP2003292823A JP 2003292823 A JP2003292823 A JP 2003292823A JP 2002100156 A JP2002100156 A JP 2002100156A JP 2002100156 A JP2002100156 A JP 2002100156A JP 2003292823 A JP2003292823 A JP 2003292823A
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直明 北川
Isao Ando
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気クロムメッキに近い外観および優れた耐
食性・耐薬品性を有する塗膜を得ることができる耐食光
輝性顔料を、アルミニウムフレークに代わって提供す
る。 【解決手段】 チタンを15〜50質量%含み、残部がアル
ミニウムおよび不可避不純物であるフレーク状合金片か
らなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車部品や家電
部品などの基材を光輝化する際に用いて好適な耐食光輝
性顔料に関する。
【0002】
【従来の技術】基材を光輝化する手段として、湿式メッ
キや真空蒸着やメタリック塗装がある。特に、メタリッ
ク塗装は、手法が簡便であり、広く用いられている。す
なわち、基材を光輝化するためにアルミニウムの顔料や
フレークを塗料に混入させ、アルミニウムを保護するた
めにその上にクリアーコートを塗布する塗装方法であ
る。一般的に、アルミニウムフレークは、スタンプミル
法、乾式ボールミル法、湿式ボールミル法などにより機
械的に金属アルミニウムを粉砕したり、金属アルミニウ
ムを真空中で蒸発させてアルミニウム膜を成膜する真空
蒸着法を用いたりして作製される。
【0003】ところで、アルミニウムは価格が安く表面
反射率が高い金属であるという利点があるので、箔や膜
が顔料として使用される。
【0004】しかし、アルミニウムは、表面反射率が可
視光で80%以上と高く、外観が白っぽく、クロムメッキ
のような高級感に欠けるという外観上の欠点がある。
【0005】なお、クロムメッキの使用は次の理由で問
題がある。すなわち、クロム薄膜を乾式メッキで形成す
ると、成膜中に酸素、窒素、アルゴンなどのガスの影響
を受けて薄膜の色が黒ずむ。乾式メッキ薄膜の表面反射
率が約30〜40%で、電気メッキ薄膜の約60%と比較すると
低い。また、耐クラック性が低い。環境に対する配慮が
欠かせない。さらに、異種金属が混じることで、アルミ
ニウムホイールをリサイクルできない。
【0006】上記外観上の欠陥を補うために、黒っぽい
アンダーコートを下地に塗布する方法が取られている
(特開昭62-13565号公報、特開平9-290213号公報)。
【0007】また、アルミニウムの箔や薄膜は活性で大
気に触れると、酸化物被膜を形成して光輝感が失われ
る。それだけでなく、酸化物被膜の成長に伴って、基材
と塗膜との密着性(塗膜密着性)が低下する。水分を含
む環境下では、酸化物被膜ではなく水酸化物被膜を形成
する。アルミニウムの箔や薄膜に形成した水酸化物被膜
はそれを含む塗膜の乾燥・加熱により容易に酸化物被膜
になるが、乾燥・加熱したこの塗膜には透水性がある。
そのため、塗膜を通過してきた水分とアルミニウムが塗
膜内で反応する。すなわち、水和反応を起こし(水分子
と結合し)、塗膜の腐食・剥離に到る可能性がある。具
体的にいえば、膜厚0.05〜1.0μmのアルミニウム薄膜
は、トップコートなしで40〜60℃の温水に浸すと、水和
反応により、24〜100時間で溶解する。また、キャス試
験(JIS H 8502)では、トップコートを塗布していても、
トップコートを通じて試験液が浸透し、60時間以上でア
ルミニウム薄膜が溶解する。
【0008】このような性質のアルミニウムの箔や薄膜
を使用していても、保護膜としてのトップコートが厚い
か傷などを生じない場合は、大きな問題は発生しない。
しかし、例えば奥まった個所では保護膜が薄くなり、酸
・アルカリなどの薬品が保護膜を浸透し、アルミニウム
の箔や薄膜を溶解する。また、悪路地帯、海岸地帯、凍
結防止のため塩を散布する地帯、高温多湿地帯などで使
用してトップコートに傷が入った場合、例えば実車が走
行中に飛び石により傷が入ったり清掃中に実車に傷が付
いた場合には、アルミニウムの箔や薄膜が外部環境に触
れ、その傷から塗膜の腐食が始まる。塗膜の腐食がいっ
たん始まり進行していくと、アルミニウムの箔や薄膜は
溶解消失し、アンダーコートが露出する。すると、本来
の光輝面が損なわれるだけでなく、アンダーコートとト
ップコートとの密着がなくなり、膨れが発生する。さら
に、そこを基点として基材の腐食へと進展する可能性が
ある。
【0009】従来、アルミニウムの箔や薄膜の耐食性・
耐薬品性を向上させようとする処理方法が種々提案され
ている。しかしながら、アルミニウム自体の耐食性・耐
薬品性が低いので、あまり大きな効果が得られていない
のが実状である。これらの提案例とその欠点を、次の
(1)〜(5)に示す。
【0010】(1)特開平2000-354828号公報 有機または無機の着色顔料にアルミニウムフレークを混
入させたメッキ調コートで、アルミニウムホイールの表
面を被覆する。この着色顔料の反射とアルミニウムフレ
ークの反射との混合で、外観意匠ニーズに合った特殊な
色調ができる。クロムメッキの外観を得るために、各種
の顔料と混合する。
【0011】しかし、光輝化する材質がアルミニウムで
あり、このメッキ調コートは耐食性・耐薬品性が低い。
そのため、ホイールなどの隅や縦面など保護膜が塗布し
づらい個所では、フレークが溶解する可能性が高い。ま
た、アルミニウムフレークを使用しているため、白っぽ
く高級感のない外観しか得られない。さらに、アルミニ
ウムフレークの混合比率を調整すると、光輝感が低下す
る。
【0012】(2)特開平9-311561号公報 アルミニウムフレークを燐酸基含有樹脂の上に塗装す
る。アルミニウムフレーク塗膜を改善するために、特殊
な塗装を行っている。しかし、この方法は、作業性が悪
く、コスト高になり、広い範囲で適用できない。
【0013】(3)特開平9-122575号公報 アルミニウムフレークが有機溶剤によって変色するのを
防止するために、有機溶剤に浸漬した後の色変化が汚染
用グレースケールで色票4号以上の色差を有するアルミ
ニウムフレークを用いる。しかし、この塗膜も、アルミ
ニウムフレークを含むため、耐薬品性が低い。
【0014】(4)特開平6-200932号公報 耐食性を付与するために、アルミニウムフレークを腐食
防止剤で処理する。腐食防止剤は、イットリウムおよび
希土類金属などの水溶性塩などを含む。しかし、このよ
うな貴重な金属を使用する複雑な工程を経てアルミニウ
ムフレークが処理されるので、この工程に難があり、ま
たアルミニウムフレークがコスト高になる。
【0015】(5)特開平7-133440号公報、特開平6-57
171号公報 アルミニウムに対してMo金属換算量で0.1〜10質量%のモ
リブデン酸被膜を成膜し、その上に、アルミニウムに対
してP元素換算量で0.05〜5質量%の燐酸エステルを吸着
させる。しかし、この処理は、複雑で時間がかかり、コ
ストアップの原因にもなる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
問題点を解決し、電気クロムメッキに近い外観および優
れた耐食性・耐薬品性を有する塗膜を得ることができる
耐食光輝性顔料を、アルミニウムフレークに代わって提
供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため
に、本発明の耐食光輝性顔料は、チタンを10質量%より
多く、かつ60質量%以下、残部がアルミニウムおよび不
可避不純物であるフレーク状合金片(以下、フレーク片
という)からなる。チタンは、15〜50質量%含むことが
好ましく、15〜40質量%含むことがさらに好ましく、15
〜25質量%含むことがさらに好ましい。
【0018】上記本発明の耐食光輝性顔料において、フ
レーク片は、厚さが0.02〜0.2μmであるのが望ましい。
また、大きさが20〜500μmであるのが望ましい。さら
に、表面反射率が550nmの波長の光で25%より大きく、か
つ80%より小さいことが望ましい。さらに望ましくは、3
8〜71%である。
【0019】このようなフレーク片は、スパッタリング
法で形成した薄膜を粉砕して製造することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の耐食光輝性顔料におい
て、チタンは表面反射率を下げ、アルミニウムは表面反
射率を上げる。そのため、本発明の耐食光輝性顔料は、
電気クロムメッキに近い表面反射率や外観を有する塗膜
を得ることができる。また、適当な組成を選ぶことによ
って望ましい色調の塗膜も得ることができる。さらに、
チタンは耐食性・耐薬品性を、アルミニウムは耐クラッ
ク性を著しく向上させる。チタンの含有量が15質量%未
満でも、50質量%を超えても、表面反射率や外観が電気
クロムメッキから遠くなる。
【0021】本発明の耐食光輝性顔料(フレーク材)は
フレーク片で構成される。耐食光輝性顔料は表面反射が
重要な性能の一つであり、フレーク片は表面のうちに平
面が占める割合が高いからである。
【0022】フレーク片の厚さが0.02μmより薄いと、
下地(樹脂塗膜)が透けて見え、白っぽい外観になり、
表面反射率が下がりすぎる。一方、フレーク片の厚さが
0.2μmを超えると、フレーク片の応力が高くなり、フレ
ーク片に割れが入る可能性が高い。また、フレーク片の
厚さが0.2μmを超えても表面反射率に変化はなく、却っ
てコストが上昇する。何故なら、フレーク片の原料とな
る薄膜の成膜時間が延びて生産時間が長期化するからで
ある。
【0023】フレーク片の大きさが20μm未満では、反
射面が小さくなり光輝感が損なわれる。一方、フレーク
片の大きさが500μmを超えると、反射面が広がり表面反
射率は上がるが、フレーク片とフレーク片との隙間が大
きくなって下地が見える可能性がある。
【0024】電気クロムメッキに近い表面反射率や外観
を有する塗膜を得るために、フレーク片の表面反射率を
550nmの波長の光で25〜65%とするのが望ましい。そのた
めに、フレーク片の合金比率、厚み、一辺の長さなどを
調整する。
【0025】フレーク片の原料となる薄膜を形成する際
に用いるスパッタリング法は、真空中でアルゴンイオン
をターゲットにぶつけてエネルギーを与え、該ターゲッ
トを構成する原子を飛び出させ、対象物(基板)に付着
させる方法である。熱で蒸気化して飛ばす方法でないの
で、蒸気圧による成分の狂いがない。そのため、一つの
組成のターゲットのみが用いられれば、そのターゲット
組成とほぼ同じ組成の膜が得られる。また、アルミニウ
ムターゲットとチタンターゲットとをそれぞれ配置し同
時に成膜することにより、アルミニウム−チタン合金薄
膜を得ることも可能である。この場合は、それぞれのタ
ーゲットの投入電流を調整することにより合金比率を調
整する。スパッタリング方式は、DCマグネトロンとRFマ
グネトロンのどちらでも良い。ターゲットは、溶解法や
焼結法で作製する。
【0026】基板に形成した薄膜は、こさいだり剥ぎ取
ったりして回収した後、ボールミルなどの従来の手法を
用いたり、溶液中に入れた後に超音波を適用したりして
粉砕する。あるいは、基板に形成した薄膜は、基板ごと
溶液中に入れた後に化学的に剥離しながら粉砕する。
【0027】
【実施例】[実施例1]アルミニウム−チタン合金薄膜
を直流マグネトロンスパッタリングで基板に形成した。
基板には、10cm角、厚さ1mmのステンレス板を用いた。
ターゲットは、焼結法で作製したアルミニウム−チタン
合金であり、チタンを20質量%含み、残部がアルミニウ
ムおよび不可避不純物である。まず、5×10-5Torrまで
排気し、アルゴンガスを1.5×10-3Torrになるまで導入
した。その他の成膜条件は、ターゲットと基板との距
離:107mm、基板回転数:9rpm、ターゲット電流:3A(電圧:
650V)、コーティング時間:2分間であった。その後、機
械的に薄膜を剥ぎ取り、溶剤(MEK)中に入れ、超音波(90
W、43kW)で60秒間粉砕した。
【0028】得られたチタン合金フレーク材は、化学分
析の結果、チタンが20質量%で、残部がアルミニウムお
よび不可避不純物であった。また、フレーク片は、厚さ
が0.07μm、大きさが50μmであった。さらに、フレーク
片の表面反射率を分光光度計(日立製作所製)で550nm
の波長の光で測定した結果、63%であった。
【0029】このようにして得たフレーク材を塗布する
基材を、次に示すように作成した。まず、アルミニウム
合金鋳物AC4C(Al-Si-Mg系)製の板材(厚さ3mm)にクロ
メート処理で化成被膜をクロム量で80〜150g/m2に形成
した。次に、表面を平滑にするためアクリル粉体塗料を
100μm塗布し、150℃で1時間乾燥した。さらに、アンダ
ーコートとしてクリアーのポリエステル・メラミン樹脂
をエアースプレーガンで30μm形成し、140℃で30分乾燥
した。
【0030】上記チタン合金フレーク材1gを溶剤(MEK)9
9gに調合し、上記基材上にエアースプレーで塗布した。
その上に、アクリル・メラミン樹脂のトップコートをエ
アースプレーガンで5、10および25μm形成し、140℃で3
0分乾燥した。
【0031】以上のようにして得た3種の表面処理材の
外観は、クラックや割れがなく、従来のメタリック塗装
材に比べて高い光輝感とクロムメッキに近い色調を持っ
ていた。また、電気メッキ規格を主にした試験項目につ
いて、これらの表面処理材を評価した。その結果、全て
の試験項目に合格した。試験項目、試験方法および得ら
れた試験結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】[実施例2]アルミニウム−チタン合金薄
膜を形成する際に用いたターゲットは、焼結法で作製し
たアルミニウム−チタン合金であり、チタンを30質量%
含み、残部がアルミニウムおよび不可避不純物であっ
た。それ以外は、実施例1と同様に試験を行った。
【0034】得られたチタン合金フレーク材は、化学分
析の結果、チタンが30質量%で、残部がアルミニウムお
よび不可避不純物であった。また、フレーク片は、厚さ
が0.04μm、大きさが50μmであった。さらに、フレーク
片の表面反射率は550nmの波長の光で56%であった。作製
した表面処理材の外観はクラックや割れがなく、光輝化
クロムメッキ色であった。また表面処理材は全ての試験
項目に合格した。
【0035】[実施例3]アルミニウム−チタン合金薄
膜を形成する際に用いたターゲットは、焼結法で作製し
たアルミニウム−チタン合金であり、チタンを40質量%
含み、残部がアルミニウムおよび不可避不純物であっ
た。それ以外は、実施例1と同様に試験を行った。
【0036】得られたチタン合金フレーク材は、化学分
析の結果、チタンが40質量%で、残部がアルミニウムお
よび不可避不純物であった。また、フレーク片は、厚さ
が0.05μm、大きさが40μmであった。さらに、フレーク
片の表面反射率は550nmの波長の光で51%であった。作製
した表面処理材の外観はクラックや割れがなく、光輝化
クロムメッキ色であった。また表面処理材は全ての試験
項目に合格した。
【0037】[実施例4]アルミニウム−チタン合金薄
膜を形成する際に用いたターゲットは、焼結法で作製し
たアルミニウム−チタン合金であり、チタンを50質量%
含み、残部がアルミニウムおよび不可避不純物であっ
た。それ以外は、実施例1と同様に試験を行った。
【0038】得られたチタン合金フレーク材は、化学分
析の結果、チタンが50質量%で、残部がアルミニウムお
よび不可避不純物であった。また、フレーク片は、厚さ
が0.04μm、大きさが40μmであった。さらに、フレーク
片の表面反射率は550nmの波長の光で40%であった。作製
した表面処理材の外観はクラックや割れがなく、光輝化
クロムメッキ色であった。また表面処理材は全ての試験
項目に合格した。
【0039】[実施例5]アルミニウム−チタン合金薄
膜を形成する際に用いたターゲットは、焼結法で作製し
たアルミニウム−チタン合金であり、チタンを15質量%
含み、残部がアルミニウムおよび不可避不純物であっ
た。また、作製したフレーク材を塗布する基材に、アル
ミニウム合金鋳物AC4C(Al-Si-Mg系)製で直径380mmのア
ルミニウムホイールを用いた。それら以外は、実施例1
と同様に試験を行った。
【0040】得られたチタン合金フレーク材は、化学分
析の結果、チタンが15質量%で、残部がアルミニウムお
よび不可避不純物であった。また、フレーク片は、厚さ
が0.035μm、大きさが35μmであった。さらに、フレー
ク片の表面反射率は550nmの波長の光で70%であった。表
面処理したアルミニウムホイールの外観はクラックや割
れがなく、光輝化クロムメッキ色であった。また表面処
理材は全ての試験項目に合格した。
【0041】[実施例6]アルミニウム−チタン合金薄
膜を形成する際に用いたターゲットは、焼結法で作製し
たアルミニウム−チタン合金であり、チタンを20質量%
含み、残部がアルミニウムおよび不可避不純物であっ
た。それ以外は、実施例5と同様に試験を行った。
【0042】得られたチタン合金フレーク材は、化学分
析の結果、チタンが20質量%で、残部がアルミニウムお
よび不可避不純物であった。また、フレーク片は、厚さ
が0.07μm、大きさが50μmであった。さらに、フレーク
片の表面反射率は550nmの波長の光で63%であった。表面
処理したアルミニウムホイールの外観はクラックや割れ
がなく、光輝化クロムメッキ色であった。また表面処理
材は全ての試験項目に合格した。
【0043】[実施例7]アルミニウム−チタン合金薄
膜を形成する際に用いたターゲットは、焼結法で作製し
たアルミニウム−チタン合金であり、チタンを30質量%
含み、残部がアルミニウムおよび不可避不純物であっ
た。それ以外は、実施例5と同様に試験を行った。
【0044】得られたチタン合金フレーク材は、化学分
析の結果、チタンが30質量%で、残部がアルミニウムお
よび不可避不純物であった。また、フレーク片は、厚さ
が0.04μm、大きさが48μmであった。さらに、フレーク
片の表面反射率は550nmの波長の光で56%であった。表面
処理したアルミニウムホイールの外観はクラックや割れ
がなく、光輝化クロムメッキ色であった。また表面処理
材は全ての試験項目に合格した。
【0045】[実施例8]アルミニウム−チタン合金薄
膜を形成する際に用いたターゲットは、焼結法で作製し
たアルミニウム−チタン合金であり、チタンを40質量%
含み、残部がアルミニウムおよび不可避不純物であっ
た。それ以外は、実施例5と同様に試験を行った。
【0046】得られたチタン合金フレーク材は、化学分
析の結果、チタンが40質量%で、残部がアルミニウムお
よび不可避不純物であった。また、フレーク片は、厚さ
が0.04μm、大きさが38μmであった。さらに、フレーク
片の表面反射率は550nmの波長の光で52%であった。表面
処理したアルミニウムホイールの外観はクラックや割れ
がなく、光輝化クロムメッキ色であった。また表面処理
材は全ての試験項目に合格した。
【0047】[実施例9]アルミニウム−チタン合金薄
膜を形成する際に用いたターゲットは、焼結法で作製し
たアルミニウム−チタン合金であり、チタンを50質量%
含み、残部がアルミニウムおよび不可避不純物であっ
た。それ以外は、実施例5と同様に試験を行った。
【0048】得られたチタン合金フレーク材は、化学分
析の結果、チタンが50質量%で、残部がアルミニウムお
よび不可避不純物であった。また、フレーク片は、厚さ
が0.05μm、大きさが43μmであった。さらに、フレーク
片の表面反射率は550nmの波長の光で42%であった。表面
処理したアルミニウムホイールの外観はクラックや割れ
がなく、光輝化クロムメッキ色であった。また表面処理
材は全ての試験項目に合格した。
【0049】なお、実施例5〜9で表面処理したアルミ
ニウムホイールの外観はいずれも光輝化クロムメッキ色
であったが、これらを比べてみると、実施例5から実施
例9になるにつれて明るい色から黒色に変わっていた。
【0050】[実施例10]ポリエステルポリマーを1
μm塗布した厚さ1mmのポリプロピレンシートを、アルミ
ニウム−チタン合金薄膜を形成する基板に用いた。それ
以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム−チタン
合金薄膜をこの基板に形成した。その後、シートごと溶
剤(MEK)中に入れ、超音波(90W、43kW)で60秒間振動させ
た。すると、ポリエステルポリマーが溶解し、薄膜が剥
離し、細かくフレーク片に粉砕された。得られたチタン
合金フレーク材は、化学分析の結果、チタンが20質量%
で、残部がアルミニウムおよび不可避不純物であった。
また、フレーク片は、厚さが0.045μm、大きさが30μm
であった。さらに、フレーク片の表面反射率を分光光度
計(日立製作所製)で550nmの波長の光で測定した結
果、60%であった。
【0051】このようにして得たフレーク材を用いた以
外は、実施例1と同様に表面処理および評価を行った。
作製した表面処理材の外観はクラックや割れがなく、光
輝化クロムメッキ色であった。また表面処理材は全ての
試験項目に合格した。
【0052】[参考例1]アルミニウム−チタン合金薄
膜を形成したシートごと溶剤(MEK)中に入れ、超音波(90
W、43kW)で300秒間振動させた以外は、実施例10と同
様に行った。得られたフレーク片の大きさは15μmであ
った。作製した表面処理材の外観はクラックや割れがな
かったが、光輝感が低く、グレーに近い色調を持ってい
た。
【0053】[参考例2]アルミニウム−チタン合金薄
膜を形成したシートごと溶剤(MEK)中に入れ、超音波(90
W、43kW)で15秒間振動させた以外は、実施例10と同様
に行った。得られたフレーク片の大きさは550μmであっ
た。作製した表面処理材の外観はクラックや割れがなか
ったが、フレーク片とフレーク片との隙間から下地のア
ンダーコートが見え光輝感が若干低くなった。
【0054】[参考例3]スパッタ成膜時間を50秒とし
た以外は実施例1と同様に行った。得られたフレーク片
の厚さは0.018μmであった。作製した表面処理材の外観
はクラックや割れがなかったが、光輝感が低く、グレー
に近い色調を持っていた。
【0055】[参考例4]スパッタ成膜時間を7分とし
た以外は実施例1と同様に行った。得られたフレーク片
の厚さは0.25μmであった。作製した表面処理材の外観
はクラックや割れがなかったが、フレーク片が重なって
段差が発生し、乱反射を起こし、外観が白っぽくなって
光輝感が低くなった。
【0056】[従来例]アルミニウムフレーク材を塗布
する基材を次に示すように作成した。まず、アルミニウ
ム合金鋳物AC4C(Al-Si-Mg系)製の板材(厚さ3mm)にク
ロメート処理で化成被膜を形成した。次に、表面を平滑
にするためアクリル粉体塗料を100μm塗布し、150℃で1
時間乾燥した。さらに、アンダーコートとしてクリアー
のポリエステル・メラミン樹脂をエアースプレーガンで
30μm形成し、140℃で30分乾燥した。
【0057】アルミニウムフレーク材1gを溶剤(MEK)99g
に調合し、上記基材上にエアースプレーで塗布した。そ
の上に、アクリル・メラミン樹脂のトップコートをエア
ースプレーガンで5μmと10μm形成し、140℃で30分乾燥
した。
【0058】得られた2種の表面処理材に5質量%硫酸を
1cc垂らし、4時間放置した。その結果、トップコートの
膜厚が5μmの表面処理材では、滴定した部分のアルミニ
ウムフレーク材が100%溶解した。また、トップコートの
膜厚が10μmの表面処理材では、滴定した部分のアルミ
ニウムフレーク材が50%溶解した。
【0059】上記と同様に2種の表面処理材を作製した
後、クロスカットを入れてキャス試験を実施した。その
結果、12時間後にクロスカット部から幅5mmでアルミニ
ウムフレーク材の溶解が起こった。
【0060】また、上記と同様に2種の表面処理材を作
製した後、クロスカットを入れて60℃温水試験を実施し
た。その結果、36時間後にクロスカット部からアルミニ
ウムフレーク材の溶解が起こった。
【0061】[参考例5]各種薄膜(膜厚0.1μm)の表
面反射率を分光光度計(日立製作所製)で測定したデー
タを表2に示す。表2からも、電気クロムメッキに近い
表面反射率を有するのは、チタン含有量が15〜50質量%
の薄膜であることが分かる。
【0062】
【表2】
【0063】[参考例6]JIS H 8502で規定されている
キャス試験で各種薄膜(膜厚0.1μm)の耐食性を評価し
た結果を表3に示す。なお、この試験では、塩化第二銅
を添加した酢酸酸性の塩化ナトリウム溶液(pH:3)を噴霧
する。表3から、チタン含有量が15質量%以上の薄膜が
優れた耐食性を有することが分かる。
【0064】
【表3】
【0065】[参考例7]各種薄膜(膜厚0.1μm)につ
いて温水試験を行った結果を表4に示す。なお、温水の
温度は60℃とした。表4から、チタン含有量が15質量%
以上の薄膜が、温水に対して優れた耐食性を有すること
が分かる。
【0066】
【表4】
【0067】[参考例8]各種スパッタ薄膜(膜厚0.1
μm)について耐クラック性を評価した結果を表5に示
す。表5から、チタン含有量15〜50質量%の薄膜が優れ
た耐クラック性を有することが分かる。
【0068】
【表5】
【0069】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の耐食光輝性顔料によれば、電気クロムメッキに近い外
観を有し、例えば耐食性・耐薬品性・耐クラック性のよ
うな性能に優れ、色調も変えられる塗膜を得ることがで
きる。また、本発明の耐食光輝性顔料は、環境に優しく
安全なためリサイクル性に優れ、簡単な塗装法により表
面処理ができるので施工性にも優れている。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタンを10質量%より多く、かつ60質量%
    以下含み、残部がアルミニウムおよび不可避不純物であ
    るフレーク状合金片からなる耐食光輝性顔料。
  2. 【請求項2】 チタンを15〜50質量%含み、残部がアル
    ミニウムおよび不可避不純物であるフレーク状合金片か
    らなる耐食光輝性顔料。
  3. 【請求項3】 チタンを15〜40質量%含み、残部がアル
    ミニウムおよび不可避不純物であるフレーク状合金片か
    らなる耐食光輝性顔料。
  4. 【請求項4】 チタンを15〜25質量%含み、残部がアル
    ミニウムおよび不可避不純物であるフレーク状合金片か
    らなる耐食光輝性顔料。
  5. 【請求項5】 フレーク状合金片は、厚さが0.02〜0.2
    μmである請求項1〜4のいずれかに記載の耐食光輝性
    顔料。
  6. 【請求項6】 フレーク状合金片は、大きさが20〜500
    μmである請求項1〜5のいずれかに記載の耐食光輝性
    顔料。
  7. 【請求項7】 フレーク状合金片は、表面反射率が550n
    mの波長の光で25%より大きく、かつ80%より小さい請求
    項1〜6のいずれかに記載の耐食光輝性顔料。
  8. 【請求項8】 フレーク状合金片は、表面反射率が550n
    mの波長の光で38〜71%である請求項1〜7のいずれかに
    記載の耐食光輝性顔料。
  9. 【請求項9】 フレーク状合金片は、スパッタリング法
    で形成した薄膜を粉砕して製造した請求項1〜8のいず
    れかに記載の耐食光輝性顔料。
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