JP2003287199A - ガスハイドレートの移送方法、貯蔵方法、および製造方法 - Google Patents

ガスハイドレートの移送方法、貯蔵方法、および製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガスハイドレートを粉体、ペレット、圧密ブ
ロック等の形態で移送、貯蔵する場合において、ガスハ
イドレートの自己保存性を高め、移送時・貯蔵時におけ
るガスハイドレートの分解を出来るだけ少なくして効率
的な移送や貯蔵を可能にすること。 【解決手段】 ガスハイドレートの分解条件下でガスハ
イドレートを移送・貯蔵するガスハイドレートの移送・
貯蔵方法は、自己保存効果により分解が抑制される粒径
にガスハイドレートを分級した後、移送・貯蔵するか、
および/または、移送・貯蔵する前に、ガスハイドレー
トをガスハイドレートの分解条件下に所定時間おくこと
により自己保存効果を発現させた後、移送・貯蔵するこ
とにより実施される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、天然ガス、メタン
ガス、炭酸ガス等のガスハイドレートを形成する気体と
水との包接水和物であるガスハイドレートを移送(輸
送)、貯蔵および製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ガスハイドレートは、水分子と気体分子
からなる氷状の固体物質であり、水分子により形成され
るかご状構造の内部に気体分子を取り込んだ構造の包接
水和物である。このガスハイドレートは、所定の圧力と
温度の下で水と気体分子とを気液接触させることにより
生成し、圧力および/または温度を変化させることによ
り、水と気体分子とに解離する。また、ガスハイドレー
トは、高いガス包蔵性、大きな生成・解離熱や小さな温
度変化により高い圧力を発生させる性質、さらにはハイ
ドレート化気体分子の選択性等の性質を有するため、例
えば天然ガス等の移送・貯蔵手段や、蓄熱システム、ア
クチュエータ、ガスの分離回収等多様な用途での利用を
図るべく研究が行われている。例えば、天然ガスをハイ
ドレート化して移送・貯蔵する利点として、天然ガスハ
イドレート(以下、「NGH」と記すことがある)の大
気圧下の平衡温度条件は、約−80℃(純メタンの場
合)であるため、従来実用化されている液化天然ガス
(LNG)の大気圧下における移送・貯蔵温度(−16
3℃)よりも大幅に緩やかな温度条件で移送・貯蔵が可
能であり、移送・貯蔵設備の耐性や断熱性を格段に簡略
化できることが期待されている。
【0003】天然ガスをガスハイドレートとして生成・
移送・貯蔵するシステム(NGHシステム:Natural Ga
s Hydrate System)は、例えば、図1のようなシステム
フローに基づいて行われることが想定されている。ここ
では、NGHの移送・貯蔵は、ガスハイドレートを製造
後、スラリー、粉体、ペレット、圧密ブロックなどの形
態で行うことが考えられている。
【0004】ガスハイドレートを移送・貯蔵等する温度
は、前記した液化天然ガス(LNG)に対する優位性
や、設備費、運転費などの経済性を考慮すると、できる
だけ0℃以下の常温に近い温度に設定することが望まし
い。しかし、温度が高いとそれだけガスハイドレートの
分解量が多くなるという問題がある。例えば、図2は、
大気圧、−20℃の条件でNGHを貯蔵した場合の経時
的な分解率の推移を示しているが、この条件で貯蔵する
場合、従来提案されているシステムでは、2週間で約8
0%以上のガスハイドレートが分解してしまう。ガスハ
イドレートの分解量が多くなると、移送・貯蔵されるガ
スハイドレート単位重量当たりの包蔵ガス量が少なくな
り、移送や貯蔵の効率の低下に繋がる。そして、移送や
貯蔵の効率を維持するためには、移送時や貯蔵時にガス
ハイドレートの分解により生じたガス化した気体分子
(「ボイルオフガス」と呼ばれる)から再度ガスハイド
レートを生成させるための設備が必要になる。つまり、
移送設備や貯蔵設備に分解ガスの回収装置やタンク、再
ハイドレート化を行う装置等を付設する必要がある。こ
れでは、設備費や運転費が増大してしまい、移送・貯蔵
システム全体のコストパフォーマンスを低下させてしま
う。
【0005】一方、図1のシステムフローで、移送・貯
蔵中のNGHの分解量を0(ゼロ)にするためには、大
気圧下の平衡温度条件(純メタンの場合は約−80℃)
以下の温度で移送・貯蔵を行えばよいことは明らかであ
るが、分解量が十分少なくなる温度(例えば−80℃近
く)まで冷却する方法では、冷却に要するエネルギーが
増加するとともに、移送時や貯蔵時の温度が低いと侵入
熱量も多くなるため、貯槽や配管の保温材を厚くする必
要があり、設備費用が増加する。従って、前記した液化
天然ガス(LNG)に対する優位性の多くが損なわれて
しまうことになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、ガスハ
イドレートを粉体、ペレット、圧密ブロック等の形態で
移送・貯蔵する場合において、ガスハイドレートの分解
を出来るだけ少なくして、安定に移送・貯蔵する技術の
提供が求められている。
【0007】本発明の課題は、ガスハイドレートの自己
保存性を高め、移送時または貯蔵時におけるガスハイド
レートの分解を抑制し、効率的な移送や貯蔵を可能にす
ることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、請求項1に記載のガスハイドレートの移送方法の発
明は、ガスハイドレートの分解条件下でガスハイドレー
トを移送するガスハイドレートの移送方法であって、自
己保存効果により分解が抑制される粒径にガスハイドレ
ートを分級した後、移送することを特徴とする。この特
徴によれば、自己保存効果により分解が抑制される粒径
にガスハイドレートを分級した後、移送を行うことによ
り、移送時のガスハイドレートの分解量を低く抑えるこ
とが可能になり、移送効率を向上させることが可能にな
る。また、移送時の分解量が少なくなるため、ボイルオ
フガスの再ハイドレート化や移送燃料として有効利用す
るための設備を省略もしくは簡略化できる。
【0009】また、請求項2に記載のガスハイドレート
の移送方法の発明は、ガスハイドレートの分解条件下で
ガスハイドレートを移送するガスハイドレートの移送方
法であって、移送する前に、ガスハイドレートをガスハ
イドレートの分解条件下に所定時間おくことにより自己
保存効果を発現させた後、移送することを特徴とする。
【0010】この特徴によれば、ガスハイドレートの分
解条件下に所定時間おくこと(養生)により、自己保存
効果を発現させた後、移送することによって、移送時の
ガスハイドレートの分解量を低く抑えることが可能にな
り、移送効率を向上させることが可能になる。また、移
送時の分解量が少なくなるため、ボイルオフガスの再ハ
イドレート化や移送燃料として有効利用するための設備
を省略もしくは簡略化できる。さらに、移送前の養生期
間中に分解したボイルオフガスは、生成容器等に回収し
て容易に再ハイドレート化できる。
【0011】また、請求項3に記載のガスハイドレート
の貯蔵方法の発明は、ガスハイドレートの分解条件下で
ガスハイドレートを貯蔵するガスハイドレートの貯蔵方
法であって、自己保存効果により分解が抑制される粒径
にガスハイドレートを分級した後、貯蔵することを特徴
とする。
【0012】この特徴によれば、自己保存効果により分
解が抑制される粒径にガスハイドレートを分級した後、
貯蔵を行うことにより、貯蔵時のガスハイドレートの分
解量を低く抑えることが可能になり、貯蔵効率を向上さ
せることが可能になる。また、貯蔵時の分解量が少なく
なるため、ボイルオフガスの再ハイドレート化のための
設備を省略もしくは簡略化できる。さらに、貯蔵前の養
生期間中に分解したボイルオフガスは、生成容器等に回
収して容易に再ハイドレート化できるので、有効利用で
きる。
【0013】また、請求項4に記載のガスハイドレート
の貯蔵方法の発明は、ガスハイドレートの分解条件下で
ガスハイドレートを貯蔵するガスハイドレートの貯蔵方
法であって、貯蔵する前に、ガスハイドレートをガスハ
イドレートの分解条件下に所定時間おくことにより自己
保存効果を発現させた後、貯蔵することを特徴とする。
【0014】この特徴によれば、ガスハイドレートの分
解条件下に所定時間おくことにより自己保存効果を発現
させた後、貯蔵することにより、貯蔵時のガスハイドレ
ートの分解量を低く抑えることが可能になり、貯蔵効率
を向上させることが可能になる。また、貯蔵時の分解量
が少なくなるため、ボイルオフガスの再ハイドレート化
のための設備を省略もしくは簡略化できる。
【0015】また、請求項5に記載のガスハイドレート
の製造方法の発明は、ガスハイドレートの生成条件でガ
スハイドレートを生成させた後、生成したガスハイドレ
ートを、自己保存効果により分解が抑制される粒径に分
級する工程を含むことを特徴とする。
【0016】この特徴によれば、自己保存効果により分
解が抑制される粒径にガスハイドレートを分級する工程
を設けることにより、移送時や貯蔵時のガスハイドレー
トの分解量が少ないガスハイドレートを製造できる。従
って、この方法により製造されたガスハイドレートは、
移送・貯蔵効率に優れ、移送時や貯蔵時の分解量も少な
くなるため、ボイルオフガスの再ハイドレート化のため
の設備を省略もしくは簡略化できる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明におけるガスハイドレート
の種類は、特に制限はない。すなわち、ガスハイドレー
トを形成する気体の種類は、所定の圧力、温度条件でガ
スハイドレートを形成するものであれば特に限定され
ず、例えば、メタン、天然ガス(メタンを主成分とし、
エタン、プロパン、ブタン等を含む混合ガス)、炭酸ガ
ス(二酸化炭素)等の常温・常圧で気体である物質(ガ
ス)を挙げることができる。
【0018】本発明では、移送時および/または貯蔵時
におけるガスハイドレートの分解を自己保存効果を利用
して抑制するために、分級による粒径の制御と、自己保
存効果の発現までの時間的制御(養生)と、のいずれ
か、または両方を実施する。以下では、分級と養生に分
けて説明を行う。
【0019】<分級>ガスハイドレートは通常、大気圧
以上の圧力に加圧された圧力容器内で製造し、大気中で
の分解を抑制するため、通常0℃以下に冷却され、粉体
状で大気圧条件中に取り出している。この粉体状のガス
ハイドレートは、数mm程度の大きな粒子から、数十μ
m程度の微細な粉体粒子までが混ざった状態であり、粒
径が不均一である。本発明者らは、ガスハイドレートの
粒径ごとの分解特性を調べた結果、粒径の小さなガスハ
イドレートは非常に分解が早く、ある大きさ以上のガス
ハイドレートになると、自己保存効果により分解速度が
著しく遅くなることを見いだした。
【0020】従って、本発明における第1のガスハイド
レートの移送方法は、自己保存効果により分解が抑制さ
れる粒径にガスハイドレートを分級した後、ガスハイド
レートの分解条件下で移送することにより実施される。
また、本発明における第1のガスハイドレートの貯蔵方
法は、自己保存効果により分解が抑制される粒径にガス
ハイドレートを分級した後、ガスハイドレートの分解条
件下で貯蔵することにより実施される。
【0021】分級工程は、移送または貯蔵よりも前に実
施すればよい。一例として、図3は、前記した図1のN
GHの生成・移送・貯蔵システムに分級工程を組み入れ
たフローを示すものである。分級操作は、ガスハイドレ
ート生成条件(例えば、加圧、冷却下)で行うことが好
ましいが、ガスハイドレートが急速に分解していくよう
な厳しい条件でなければ、ガスハイドレート分解条件に
おいても実施できる。
【0022】分級は、一般に粉粒体の分級に使用される
方法に従って行うことが可能であり、例えばふるい式分
級機、空力式分級機などの装置を使用することができ
る。分級により選別する粒径範囲は、「自己保存効果に
より分解が抑制される粒径」であればよく、ガスハイド
レートの種類によって異なるが、例えばNGHであれば
0.15mm以上、好ましくは0.5mm以上である。
この粒径範囲であれば、移送中、貯蔵中のガスハイドレ
ートの分解を低減することができる。分級によって選別
されなかった小粒径のガスハイドレートは、生成工程へ
戻すことにより、ガスハイドレートを形成するガスやエ
ネルギーは有効利用される。
【0023】ペレットや圧密ブロックにして移送、貯蔵
をする場合は、分級された一定粒度以上のガスハイドレ
ートを原料としてペレットや圧密ブロックの成形を行っ
た後、移送、貯蔵することができる。
【0024】このように、ガスハイドレートを移送・貯
蔵する前に、分級機により分級し、所定粒径以上のガス
ハイドレートだけを移送、貯蔵することにより、自己保
存効果を向上させ、移送時、貯蔵時の分解を抑制でき
る。
【0025】以上のように、移送時、貯蔵時のガスハイ
ドレートの分解を抑制する目的で行われる分級は、ガス
ハイドレート製造工程の一部として把握することも可能
である。すなわち、本発明のガスハイドレートの製造方
法は、既知のガスハイドレート製造方法において生成し
たガスハイドレートを、自己保存効果により分解が抑制
される粒径に分級する工程を含むものである。ガスハイ
ドレートの製造は、圧力および温度が所定のガスハイド
レート生成条件となるようにして、例えばバッチ式生成
装置、連続式生成装置等の既知の製造装置によって行う
ことができる。
【0026】<養生>本発明における養生とは、緩やか
なガスハイドレート分解条件下で、自己保存効果が発現
するまで時間的制御を行うことを意味する。ガスハイド
レートは、平衡状態図において、生成領域から分解領域
へ温度・圧力を変化させた場合、あるいは、ペレット
化、圧密ブロック等に成形後の初期数時間における分解
量が著しく大きい。これらの工程の直後に、一定期間1
次貯槽で養生を行い、自己保存効果を発現させるととも
に、初期に分解するガスの多くを放出させた後、移送ま
たは貯蔵することにより、移送または貯蔵中のガス放出
量を減少させて、移送・貯蔵の効率を向上させることが
できる。
【0027】従って、本発明における第2のガスハイド
レートの移送方法は、ガスハイドレートの分解条件下で
ガスハイドレートを移送する前に、当該分解条件下に所
定時間おくことにより自己保存効果を発現させた後、移
送することにより実施される。また、本発明における第
2のガスハイドレートの貯蔵方法は、ガスハイドレート
の分解条件下でガスハイドレートを貯蔵する前に、当該
分解条件下に所定時間おくことにより自己保存効果を発
現させた後、貯蔵することにより実施される。
【0028】養生の圧力、温度は、移送時・貯蔵時の圧
力、温度とすることが好ましい。移送時・貯蔵時の圧
力、温度は、ガスハイドレートの種類によって異なる
が、NGHの場合は、例えば温度は0℃以下−80℃以
上、圧力は大気圧以上に設定することが可能であり、特
に温度は−5℃以下−80℃以上とすることが好まし
い。この条件は、NGHにおける緩やかな分解条件であ
る。緩やかな分解条件は、ガスハイドレートの種類によ
って異なるので、他のガスハイドレートについても平衡
状態図より適宜範囲を設定することができる。
【0029】養生工程は、移送または貯蔵よりも前に実
施すればよい。一例として、図4は、前記した図1のN
GHの生成・移送・貯蔵システムに養生工程を組み入れ
たフローを示すものである。
【0030】養生期間は、1時間以上7日間以下が好ま
しく18〜36時間程度が望ましい。養生期間が7日間
以上になると、養生期間中に分解、放出されるガス量が
多くなり、移送もしくは貯蔵システム全体を通してのガ
スハイドレートのガス包蔵量が低下するという問題があ
る。
【0031】養生期間中に放出されたガスハイドレート
を形成するガス分子は、移送中や貯蔵中に比べ容易に回
収できるので、生成工程へ戻すことにより、ガスやエネ
ルギーは有効に利用される。
【0032】以上の分級および/または養生を実施する
ことにより、ガスハイドレート分解条件における移送・
貯蔵の効率を向上させることができる。移送時・貯蔵時
の圧力と温度は、エネルギー消費や設備負担を軽減する
ためには、圧力は大気圧程度、温度は−20℃以上0℃
以下が望ましいが、分級および/または養生を実施する
ことにより、大気圧下で−15℃程度の温度での移送・
貯蔵も可能になる。なお、温度が0℃を超えると、ガス
ハイドレートが激しく分解してしまうことがある。
【0033】
【作用】ガスハイドレートは、平衡温度以上の温度にお
いて自己保存効果(セルフプリザベーション効果)と呼
ばれる、分解が抑制される効果を有することが知られて
いる。この自己保存効果については、未解明な点も多い
が、以下のような説明がなされている(兼子弘、日本造
船学会誌第842号、p38-48)。
【0034】図5は、NGH粒子の断面を模式的に示し
た図面である。低温高圧で生成したガスハイドレート5
0[図5(a)]を大気圧などの分解条件におくと、表
面から部分的に分解が始まり、ガスハイドレートを形成
しているガス分子はガス化するとともに、水膜51がガ
スハイドレート表面を覆う[同図(b)]。表面でのガ
スハイドレートの分解により熱が奪われると、ガスハイ
ドレート表面の水膜51は氷の膜52となってガスハイ
ドレート表面を覆う[同図(c)]。この氷の膜52が
ある厚さ以上まで成長すると、内部のガスハイドレート
と外部との熱交換が遮断され、大気圧などの分解条件で
も内部のガスハイドレートは安定する。つまり、この氷
の膜52が、分解(ガス化)しようとするガスハイドレ
ートの圧力に抗するだけの機械的強度を持つことによ
り、ガスハイドレートが安定化して、それ以上の分解が
抑制される自己保存効果が生ずると考えられている。従
来検討されているNGHシステムの貯蔵移送温度は−1
5℃に仮定されている例[例えば、J. S. Gudmundsson
and A. Borrehaug : Frozen hydrate for transportof
natural gas, pp.415-422, IBID(1996)]があるが、自
己保存効果がどのくらい維持できるか、という点につい
ては現在までのところ、まとまった報告例がない(上
掲:日本造船学会誌第842号)。
【0035】本発明では、上記自己保存効果を利用し
て、ガスハイドレートの安定性を高めた状態で、移送・
貯蔵を行うようにしたものである。すなわち、本発明は
第1に、所定粒径以上のガスハイドレートは、自己保存
効果に優れ、分解速度が著しく遅くなるという知見に基
づき、移送、貯蔵前のガスハイドレートを分級すること
により、移送時・貯蔵時の分解量を抑制するものであ
る。
【0036】また、第2に、分解条件下で自己保存効果
が発現するまでの間養生を行うという時間的制御によっ
て、初期の分解によるボイルオフガスを回収、再利用す
るとともに、自己保存効果によって分解が抑制されたガ
スハイドレートのみを移送、貯蔵することによって、移
送・貯蔵の効率を高めることが可能になる。
【0037】
【実施例】次に実施例を挙げ本発明を更に詳しく説明す
るが、本発明はこれによって何ら制約されるものではな
い。 実施例1 常法により製造したNGHについて、大気圧、−20℃
のガスハイドレート分解条件下で以下のように分級を行
った。 A : 6.7mm超(図6中、+6.7mmと記す) B : 4.0mm超6.7mm以下(図6中、+4.
0mmと記す) C : 1.0mm超4.0mm以下(図6中、+1.
0mmと記す) D : 0.5mm超1.0mm以下(図6中、+0.
5mmと記す) E : 0.15mm超0.5mm以下(図6中、+
0.15mmと記す) F : 0.15mm以下(図6中、−0.15mmと
記す) 得られた各粒径のNGHについて、大気圧、−20℃の
条件における分解率を経時的に測定した。その結果を図
6に示す。
【0038】図6から、粒径の小さなNGHの方が粒径
の大きなNGHに比べ分解率が高く、粒径と分解率との
間に相関があること、および、粒径が0.15mm以下
になると特に分解率が高まることが示された。
【0039】実施例2 常法により製造したNGHについて、粒径を4mmに揃
えた後、大気圧、−20℃の条件で24時間養生を実施
した場合と、養生を実施しない場合における分解率を、
同様に大気圧、−20℃の条件で経時的に測定した。そ
の結果を図7に示す。図7から、養生を実施することに
より、その後の分解率が低く抑えられることが明らかと
なった。従って、養生を行ってから移送・貯蔵する方が
効率が良いことが判る。
【0040】
【発明の効果】本発明のガスハイドレートの移送方法ま
たは貯蔵方法によれば、移送時・貯蔵時のガスハイドレ
ートの分解量が少なくなるため、移送・貯蔵効率の向上
が図られるとともに、ボイルオフガスの再ハイドレート
化や燃料としての有効利用するための設備を省略もしく
は簡略化できる。
【0041】より具体的には、例えば、NGHの場合で
は、以下の(1)〜(5)のような効果が得られる。 (1)分解領域である大気圧、−15℃程度の条件でも
NGHの自己保存効果が十分に得られ、少ないガス分解
量で移送、貯蔵が可能になる。従って移送天然ガス量、
貯蔵天然ガス量を増加させることができ、高い移送・貯
蔵効率が確保される。 (2)移送・貯蔵温度を−15℃程度まで高くすること
ができるので、冷却に要するエネルギーを低減し、設備
を簡略化できる。 (3)移送・貯蔵温度を−15℃程度まで高くすること
ができるので、再ガス化に要するエネルギーを低減し、
設備を簡略化できる。 (4)侵入熱が小さくなるので、保温材の厚み(保温材
量)を低減できる。従って、同一体積の容器では、外形
寸法を小さくすることが可能になり、体積効率が上昇す
る。 (5)分解ガス量を低減できるので、分解ガスの回収装
置、再ハイドレート化設備が不要になる。
【0042】また、本発明のガスハイドレートの製造方
法によれば、自己保存効果により分解が抑制される粒径
にガスハイドレートを分級する工程を設けることによ
り、移送時や貯蔵時のガスハイドレートの分解量が少な
いガスハイドレートを製造できる。従って、この方法に
より製造されたガスハイドレートは、移送・貯蔵効率に
優れ、移送時や貯蔵時の分解量が少ないため、ボイルオ
フガスの再ハイドレート化のための設備を省略もしくは
簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の天然ガスハイドレートの移送、貯蔵のシ
ステムフローを示す図面。
【図2】天然ガスハイドレートの分解率と時間の関係を
示すグラフ図面。
【図3】本発明の天然ガスハイドレートの移送、貯蔵の
システムの一例を示すフロー図面。
【図4】本発明の天然ガスハイドレートの移送、貯蔵の
システムの一例を示すフロー図面。
【図5】天然ガスハイドレートの自己保存効果の機構の
説明に供する原理図。
【図6】粒径の相違による天然ガスハイドレートの分解
率の時間的推移の関係を示すグラフ図面。
【図7】養生の有無による天然ガスハイドレートの分解
率の時間的推移を示すグラフ図面。
【符号の説明】
50 天然ガスハイドレート 51 水膜 52 氷の膜
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C10L 3/06 F17C 11/00 B F17C 11/00 C10L 3/00 A (72)発明者 堀口 清司 千葉県市原市八幡海岸通1番地 三井造船 株式会社千葉事業所内 Fターム(参考) 3E072 EA10 3E073 DD05 4H006 AA02 AC93 AD33

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガスハイドレートの分解条件下でガスハ
    イドレートを移送するガスハイドレートの移送方法であ
    って、 自己保存効果により分解が抑制される粒径にガスハイド
    レートを分級した後、移送することを特徴とする、ガス
    ハイドレートの移送方法。
  2. 【請求項2】 ガスハイドレートの分解条件下でガスハ
    イドレートを移送するガスハイドレートの移送方法であ
    って、 移送する前に、ガスハイドレートをガスハイドレートの
    分解条件下に所定時間おくことにより自己保存効果を発
    現させた後、移送することを特徴とする、ガスハイドレ
    ートの移送方法。
  3. 【請求項3】 ガスハイドレートの分解条件下でガスハ
    イドレートを貯蔵するガスハイドレートの貯蔵方法であ
    って、 自己保存効果により分解が抑制される粒径にガスハイド
    レートを分級した後、貯蔵することを特徴とする、ガス
    ハイドレートの貯蔵方法。
  4. 【請求項4】 ガスハイドレートの分解条件下でガスハ
    イドレートを貯蔵するガスハイドレートの貯蔵方法であ
    って、 貯蔵する前に、ガスハイドレートをガスハイドレートの
    分解条件下に所定時間おくことにより自己保存効果を発
    現させた後、貯蔵することを特徴とする、ガスハイドレ
    ートの貯蔵方法。
  5. 【請求項5】 ガスハイドレートの生成条件でガスハイ
    ドレートを生成させた後、 生成したガスハイドレートを、自己保存効果により分解
    が抑制される粒径に分級する工程を含むことを特徴とす
    る、ガスハイドレートの製造方法。
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