JP2003277145A - 圧電磁器 - Google Patents

圧電磁器

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JP2003277145A JP2002078577A JP2002078577A JP2003277145A JP 2003277145 A JP2003277145 A JP 2003277145A JP 2002078577 A JP2002078577 A JP 2002078577A JP 2002078577 A JP2002078577 A JP 2002078577A JP 2003277145 A JP2003277145 A JP 2003277145A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大きな変位量を得ることができ、低公害化、
対環境性および生態学的見地からも優れた圧電磁器を提
供する。 【解決手段】 圧電基板1は、主成分として、ペロブス
カイト型酸化物(Na1- x-y-z x Liy Agz )(N
1-w Taw )O3 を含有する。x,yおよびzは0.
1≦x≦0.9、0<y≦0.2、0≦z≦0.05の
範囲内が好ましい。また、主成分として、このペロブス
カイト型酸化物に加えて、タングステンブロンズ型酸化
物M(Nb1-v Tav 2 6 (Mは長周期型周期表2
族元素)を含む組成物を含有するようにしてもよい。組
成物におけるタングステンブロンズ型酸化物の含有量は
5.3mol%以下であることが好ましい。これによ
り、変位量を大きくすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ペロブスカイト型
酸化物を含む圧電磁器に係り、特に、アクチュエータな
どの振動素子,発音体またはセンサーなどに適した圧電
磁器に関する。
【0002】
【従来の技術】圧電磁器を用いたアクチュエータは、電
界を加えると機械的な歪みおよび応力を発生するという
圧電現象を利用したものである。このアクチュエータ
は、微量な変位を高精度に得ることができると共に、発
生応力が大きい等の特徴を有し、例えば、精密工作機械
や光学装置の位置決めに用いられている。アクチュエー
タに用いる圧電磁器としては、従来より、優れた圧電性
を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が最も多く利
用されている。しかし、チタン酸ジルコン酸鉛は鉛を多
く含んでいるので、最近では、酸性雨による鉛の溶出な
ど地球環境におよぼす悪影響が問題となっている。そこ
で、チタン酸ジルコン酸鉛に代替する、鉛を含有しない
圧電磁器の開発が望まれている。
【0003】鉛を含有しない圧電磁器としては、例え
ば、ニオブ酸ナトリウム銀を主成分として含むもの(特
公昭55−18058号公報参照)、または、ニオブ酸
ナトリウムカリウムリチウムを主成分として含むものが
知られている(特開昭49−125900号公報または
特公昭57−6713号公報参照)。この圧電磁器は、
キュリー温度が350℃以上と高く、電気機械結合係数
krも優れていることから、圧電材料として期待されて
いる。更に、最近では、ニオブ酸ナトリウムカリウムと
タングステンブロンズ型酸化物とを複合化したものも報
告されている(特開平9−165262号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の鉛を含まない圧電磁器は、鉛系の圧電磁器に比べて圧
電特性が低く、十分に大きな発生変位量を得ることがで
きないという問題があった。
【0005】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
ので、その目的は、大きな発生変位量を得ることがで
き、低公害化、対環境性および生態学的見地からも優れ
た圧電磁器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による圧電磁器
は、ナトリウム(Na),カリウム(K),リチウム
(Li),および銀(Ag)を含む第1の元素と、ニオ
ブ(Nb)およびタンタル(Ta)からなる群のうちの
少なくともニオブを含む第2の元素と、酸素(O)とか
らなるペロブスカイト型酸化物を含むものである。
【0007】本発明による圧電磁器では、第1の元素と
して、ナトリウム,カリウム,リチウムおよび銀を含ん
でいるので、大きな発生変位量が得られる。
【0008】なお、このペロブスカイト型酸化物を主成
分とし、更に、副成分として、長周期型周期表における
3〜12族元素のうちの少なくとも1種を含む酸化物を
含有することが好ましい。中でも、マンガン(Mn)を
含む酸化物を含有することが好ましく、酸化マンガンの
含有量は、MnOに換算して、主成分に対して0.01
質量%以上1質量%以下の範囲内であることが好まし
い。
【0009】また、ペロブスカイト型酸化物に加えて、
タングステンブロンズ型酸化物を含む組成物を含有する
ようにしてもよく、タングステンブロンズ型酸化物は、
長周期型周期表2族元素のうちの少なくとも1種を含む
第3の元素と、ニオブおよびタンタルからなる群のうち
の少なくともニオブを含む第4の元素と、酸素とからな
ることが好ましい。
【0010】この場合も、この組成物を主成分とし、更
に、副成分として、長周期型周期表における3〜12族
元素のうちの少なくとも1種を含む酸化物を含有するこ
とが好ましい。中でも、マンガンを含む酸化物を含有す
ることが好ましく、酸化マンガンの含有量は、MnOに
換算して、主成分に対して0.01質量%以上1質量%
以下の範囲内であることが好ましい。
【0011】更に、ペロブスカイト型酸化物の第1の元
素における銀の含有量は5mol%以下の範囲内である
ことが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。
【0013】(第1の実施の形態)本発明の第1の実施
の形態に係る圧電磁器は、主成分として、第1の元素と
第2の元素と酸素とからなるペロブスカイト型酸化物を
含有している。第1の元素はナトリウム,カリウムおよ
びリチウムに加えて、銀を含んでいる。第2の元素はニ
オブおよびタンタルからなる群のうちの少なくともニオ
ブを含み、更にタンタルも含むことが好ましい。このよ
うな場合に、鉛を含有せずあるいは鉛の含有量を少なく
して、より優れた圧電特性を得ることができるからであ
る。このペロブスカイト型酸化物の化学式は、例えば化
1で表される。
【0014】
【化1】 式中、xは0<x<1、yは0<y<1、zは0<z<
1、wは0≦w<1の範囲内の値である。mは化学量論
組成であれば1であるが、化学量論組成からずれていて
もよい。酸素の組成は化学量論的に求めたものであり、
化学量論組成からずれていてもよい。
【0015】なお、第1の元素におけるカリウムの含有
量は、10mol%以上90mol%以下の範囲内であ
ることが好ましい。すなわち、例えば化1におけるx
は、モル比で、0.1≦x≦0.9の範囲内であること
が好ましい。カリウムの含有量が少なすぎると、比誘電
率εr,電気機械結合係数krおよび発生変位量を十分
に大きくすることができず、カリウムの含有量が多すぎ
ると、焼成時におけるカリウムの揮発が激しく、焼成が
難しいからである。
【0016】第1の元素におけるリチウムの含有量は2
0mol%以下であることが好ましい。すなわち、例え
ば化1におけるyは、モル比で、0<y≦0.2の範囲
内であることが好ましい。リチウムの含有量が多すぎる
と、比誘電率εr,電気機械結合係数krおよび発生変
位量を十分に大きくすることができないからである。
【0017】第1の元素における銀の含有量は5mol
%以下であることが好ましい。すなわち、例えば化1に
おけるzは、モル比で、0<z≦0.05の範囲内であ
ることが好ましい。銀の含有量が多すぎると、比誘電率
εr,電気機械結合係数krおよび発生変位量を十分に
大きくすることができないからである。
【0018】第2の元素におけるタンタルの含有量は、
50mol%以下であることが好ましい。すなわち、例
えば化1におけるwは、モル比で、0≦w≦0.50で
あることが好ましい。タンタルの含有量が多くなり過ぎ
ると、キュリー温度が低くなると共に、電気機械結合係
数krおよび発生変位量も小さくなってしまうからであ
る。
【0019】第2の元素に対する第1の元素の組成比
(第1の元素/第2の元素)、例えば化1におけるm
は、モル比で0.95以上1.05以下の範囲内である
ことが好ましい。0.95未満であると、比誘電率ε
r,電気機械結合係数krおよび発生変位量が小さくな
り、1.05を超えると、焼結密度が低下することによ
り分極が難しくなってしまうからである。
【0020】この圧電磁器は、また、主成分であるペロ
ブスカイト型酸化物に加え、副成分として、長周期型周
期表における3〜12族元素のうちの少なくとも1種を
含む酸化物を含有することが好ましい。焼結性を向上さ
せることにより圧電特性をより向上させることができる
からである。中でも、副成分として、マンガンを含む酸
化物を含有するようにすれば高い効果を得ることができ
るので好ましい。酸化マンガンの含有量は、MnOに換
算して、主成分に対して0.01質量%以上1質量%以
下の範囲内であることが好ましい。副成分の含有量が多
くなりすぎると、主成分の本来の特性が得られず、発生
変位量が小さくなってしまうからである。この副成分の
酸化物は、主成分の粒界に存在していることもあるが、
主成分の一部に拡散して存在していることもある。
【0021】なお、この圧電磁器は鉛(Pb)を含んで
いてもよいが、その含有量は1質量%以下であることが
好ましく、鉛を全く含んでいなければより好ましい。焼
成時における鉛の揮発、および圧電部品として市場に流
通し廃棄された後における環境中への鉛の放出を最小限
に抑制することができ、低公害化、対環境性および生態
学的見地から好ましいからである。
【0022】この圧電磁器は、例えば、圧電素子である
アクチュエータなどの振動素子,発音体あるいはセンサ
ーなどの材料として好ましく用いられる。
【0023】図1は本実施の形態に係る圧電磁器を用い
た圧電素子の一構成例を表すものである。この圧電素子
は、本実施の形態の圧電磁器よりなる圧電基板1と、こ
の圧電基板1の一対の対向面1a,1bにそれぞれ設け
られた一対の電極2,3とを備えている。圧電基板1
は、例えば、厚さ方向、すなわち電極2,3の対向方向
に分極されており、電極2,3を介して電圧が印加され
ることにより、厚み方向に縦振動および径方向に広がり
振動するようになっている。
【0024】電極2,3は、例えば、金(Au)などの
金属によりそれぞれ構成されており、圧電基板1の対向
面1a,1bの全面にぞれぞれ設けられている。これら
電極2,3には、例えば、図示しないワイヤなどを介し
て図示しない外部電源が電気的に接続される。
【0025】このような構成を有する圧電磁器および圧
電素子は、例えば、次のようにして製造することができ
る。
【0026】まず、主成分の原料として、例えば、ナト
リウム,カリウム,リチウム,銀,ニオブおよびタンタ
ルを含む酸化物粉末を必要に応じてそれぞれ用意する。
また、副成分の原料として、必要に応じて、長周期型周
期表における3〜12族元素のうちの少なくとも1種を
含む酸化物粉末を用意する。なお、これら主成分および
副成分の原料には、酸化物でなく、炭酸塩あるいはシュ
ウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いても
よい。次いで、これら原料を十分に乾燥させたのち、最
終組成が上述した範囲となるように秤量する。
【0027】続いて、例えば、秤量した原料をボールミ
ルなどにより有機溶媒中または水中で十分に混合したの
ち、乾燥し、プレス成形して、750℃〜1100℃で
1時間〜4時間仮焼する。仮焼したのち、例えば、この
仮焼物をボールミルなどにより有機溶媒中または水中で
十分に粉砕し、再び乾燥して、バインダを加えて造粒す
る。造粒したのち、この造粒粉を一軸プレス成形機ある
いは静水圧成形機(CIP)などを用いプレス成形す
る。
【0028】成形したのち、例えば、この成形体を加熱
して脱バインダを行い、更に950℃〜1350℃で2
時間〜4時間焼成する。焼成ののち、得られた焼結体を
必要に応じて加工して圧電基板1を形成し、電極2,3
を設け、加熱したシリコーンオイル中で電界を印加して
分極処理を行う。これにより、上述した圧電磁器および
図1に示した圧電素子が得られる。
【0029】このように本実施の形態によれば、ナトリ
ウム,カリウムおよびリチウムに加えて銀を含むペロブ
スカイト型酸化物を含有するようにしたので、比誘電率
εr,電気機械結合係数krおよび発生変位量を大きく
することができる。よって、鉛を含有しない、あるいは
鉛の含有量が少ない圧電磁器および圧電素子について
も、利用の可能性を高めることができる。すなわち、焼
成時における鉛の揮発が少なく、市場に流通し廃棄され
た後も環境中に鉛が放出される危険性が低く、低公害
化、対環境性および生態学的見地から極めて優れた圧電
磁器および圧電素子の活用を図ることができる。
【0030】特に、第1の元素における銀の含有量が5
mol%以下となるようにすれば、比誘電率εr,電気
機械結合係数krおよび発生変位量をより大きくするこ
とができる。
【0031】また、副成分として長周期型周期表におけ
る3〜12族元素のうちの少なくとも1種を含む酸化物
を含有するようにすれば、焼結性を向上させることがで
き、圧電特性をより向上させることができる。中でも、
マンガンを含む酸化物を、酸化マンガンの含有量がMn
Oに換算して主成分に対して0.01質量%以上1質量
%以下の範囲内で含有するようにすればより高い効果を
得ることができる。
【0032】(第2の実施の形態)本発明の第2の実施
の形態に係る圧電磁器は、第1の実施の形態で説明した
ペロブスカイト型酸化物に加えて、タングステンブロン
ズ型酸化物を含む組成物を、主成分として含有すること
を除き、第1の実施の形態と同様の構成を有している。
また、第1の実施の形態と同様にして用いられ、同様に
して製造することができる。よって、ここでは、第1の
実施の形態と同一部分についての詳細な説明を省略す
る。
【0033】この圧電磁器は、タングステンブロンズ型
酸化物を含むことにより、焼成を容易とすると共に、比
誘電率εr,電気機械結合係数krおよび発生変位量を
より大きくするものである。主成分の組成物において、
ペロブスカイト型酸化物とタングステンブロンズ型酸化
物とは、固溶していてもよく、完全に固溶していなくて
もよい。
【0034】タングステンブロンズ型酸化物は、第3の
元素と第4の元素と酸素とからなる。第3の元素は、例
えば、長周期型周期表2族元素のうちの少なくとも1種
を含むことが好ましく、中でも、マグネシウム,カルシ
ウム,ストロンチウムおよびバリウムからなる群のうち
の少なくとも1種を含むことが好ましい。第4の元素
は、例えば、ニオブおよびタンタルからなる群のうちの
少なくともニオブを含むことが好ましく、更にタンタル
も含んでいればより好ましい。このような場合に、鉛を
含有せずあるいは鉛の含有量を少なくして、より優れた
圧電特性を得ることができるからである。このタングス
テンブロンズ型酸化物の化学式は、例えば化2で表され
る。
【0035】
【化2】M(Nb1-v Tav 2 6 式中、Mは第3の元素を表し、vは0≦v<1の範囲内
の値である。なお、第3の元素と第4の元素と酸素との
組成比は化学量論的に求めたものであり、化学量論組成
からずれていてもよい。
【0036】なお、ペロブスカイト型酸化物の第2の元
素と、タングステンブロンズ型酸化物の第4の元素と
は、同一でもよく、異なっていてもよい。第2の元素と
第4の元素との合計におけるタンタルの含有量は、50
mol%以下であることが好ましい。第1の実施の形態
で説明したように、タンタルの含有量が多くなり過ぎる
と、キュリー温度が低くなると共に、電気機械結合係数
krおよび発生変位量も小さくなってしまうからであ
る。
【0037】ペロブスカイト型酸化物とタングステンブ
ロンズ型酸化物との組成比は、モル比で、化3に示した
範囲内であることが好ましい。すなわち、組成物におけ
るタングステンブロンズ型酸化物の含有量は、0mol
%よりも大きく5.3mol%以下であることが好まし
い。タングステンブロンズ型酸化物の含有量が多すぎる
と、電気機械結合係数krおよび発生変位量が小さくな
ってしまうからである。
【0038】
【化3】(1−n)A+nB 式中、Aはペロブスカイト型酸化物、Bはタングステン
ブロンズ型酸化物をそれぞれ表し、nは0<n≦0.0
53の範囲内の値である。
【0039】なお、副成分および鉛の含有量については
第1の実施の形態と同一である。
【0040】このように本実施の形態によれば、ナトリ
ウム,カリウム,リチウムおよび銀を含むペロブスカイ
ト型酸化物と、タングステンブロンズ型酸化物とを含む
ようにしたので、焼成を容易とすることができると共
に、発生変位量をより大きくすることができる。よっ
て、鉛を含有しない、あるいは鉛の含有量が少ない圧電
磁器および圧電素子について、利用の可能性をより高め
ることができる。
【0041】
【実施例】更に、本発明の具体的な実施例について説明
する。
【0042】(実施例1−1〜1−3)化4に示したペ
ロブスカイト型酸化物を主成分として含有する圧電磁器
を用い、図1に示したような圧電素子を作製した。本実
施例では図1を参照し、図1に示した符号を用いて説明
する。
【0043】
【化4】(Na0.95-x-zx Li0.05Agz )NbO3
【0044】まず、主成分の原料として、炭酸ナトリウ
ム(Na2 CO3 )粉末、炭酸カリウム(K2 CO3
粉末、炭酸リチウム(Li2 CO3 )粉末、酸化銀(A
2O)粉末、および酸化ニオブ(Nb2 5 )粉末を
それぞれ用意した。また、副成分の原料として、炭酸マ
ンガン(MnCO3 )粉末を用意した。次いで、これら
主成分および副成分の原料を十分に乾燥させ秤量したの
ち、ボールミルにより水中で5時間混合し、乾燥して原
料混合粉末を得た。
【0045】その際、実施例1−1〜1−3の原料混合
粉末の配合比を調整し、ペロブスカイト型酸化物の組
成、すなわち化4におけるxおよびzの値を表1に示し
たように変化させた。また、副成分である酸化マンガン
の含有量はMnOを基準とし主成分に対して0.31質
量%となるようにした。なお、副成分の含有量は、主成
分の原料のうち炭酸塩をCO2 が解離した酸化物に換算
し、その換算した主成分の原料の合計質量に対して副成
分の原料である炭酸マンガン粉末の混合量が0.5質量
%となるようにしたものである。
【0046】
【表1】
【0047】続いて、この原料混合粉末をプレス成形し
て、850℃〜1000℃で2時間仮焼した。仮焼した
のち、ボールミルを用いて水中で粉砕し、再び乾燥し
て、ポリビニルアルコールを加えて造粒した。造粒した
のち、この造粒粉を一軸プレス成形機により約40MP
aの圧力で直径17mmの円柱状に成形し、更に約40
0MPaの圧力で静水圧成形した。
【0048】成形したのち、この成形体を650℃で4
時間加熱して脱バインダを行い、更に950℃〜135
0℃で4時間焼成した。そののち、この焼成体をスライ
ス加工およびラップ加工により厚さ0.6mmの円板状
として圧電基板1を作製し、両面に銀ペーストを印刷し
て650℃で焼き付け、電極2,3を形成した。電極
2,3を形成したのち、30℃〜250℃のシリコーン
オイル中で3kV/mm〜10kV/mmの電界を1分
〜30分間印加して分極処理を行った。これにより、実
施例1−1〜1−3の圧電磁器を用いた圧電素子を得
た。
【0049】得られた実施例1−1〜1−3の圧電素子
について、24時間放置したのち、圧電特性として、比
誘電率εr、電気機械結合係数kr、および3kV/m
mの電界を印加した際の発生変位量を測定した。比誘電
率εrおよび電気機械結合係数krの測定にはインピー
ダンスアナライザー(ヒューレット・パッカード社製H
P4194A)を用い、比誘電率εrを測定する際の周
波数は1kHzとした。発生変位量の測定には、図2に
示したような渦電流による変位測定装置を用いた。この
変位測定装置は、一対の電極11,12の間に試料13
を挟み、直流電流を印加した場合の試料13の変位を変
位センサ14により検出し、変位検出器15によりその
発生変位量を求めるものである。それらの結果を表1に
示す。なお、表1に示した発生変位量は、測定値を試料
の厚さで割り100を掛けた値(測定値/試料の厚さ×
100)である。
【0050】また、本実施例に対する比較例1−1とし
て、銀を含まないようにしたことを除き、すなわち化4
におけるzの値を零にしたことを除き、他は実施例1−
1〜1−3と同様にして圧電素子を作製した。比較例1
−1についても、本実施例と同様にして、比誘電率ε
r、電気機械結合係数krおよび3kV/mmの電界を
印加した際の発生変位量を測定した。それらの結果につ
いても表1に合わせて示す。
【0051】表1に示したように、銀を含む実施例1−
1〜1−3によれば、銀を含まない比較例1−1より
も、比誘電率εr,電気機械結合係数krおよび発生変
位量について大きな値が得られた。また、第1の元素に
おける銀の含有量が0.5mol%の場合に発生変位量
が最も大きくなり、銀の含有量が多くなると、それより
は小さくなる傾向が見られた。
【0052】すなわち、ナトリウム,カリウム,リチウ
ムおよび銀を含むペロブスカイト酸化物を含有するよう
にすれば、発生変位量を大きくできることが分かった。
また、第1の元素における銀の含有量を5mol%以下
とすれば、より好ましいことも分かった。
【0053】(実施例2−1〜2−3)化5に示した組
成物を主成分として含むようにしたことを除き、他は実
施例1−1〜1−3と同様にして圧電素子を作製した。
その際、実施例2−1〜2−3で、ペロブスカイト型酸
化物の組成、すなわち化5におけるxおよびzの値を表
2に示したように変化させた。タングステンブロンズ型
酸化物の含有量、すなわち化5におけるnの値は0.0
05とし、副成分の含有量は実施例1−1〜1−3と同
様に主成分に対して0.31質量%とした。なお、主成
分のうちペロブスカイト型酸化物の組成は、実施例2−
1は実施例1−2と同一であり、実施例2−2は実施例
1−3と同一である。
【0054】
【化5】
【0055】
【表2】
【0056】実施例2−1〜2−3についても、実施例
1−1〜1−3と同様にして、比誘電率εr,電気機械
結合係数krおよび3kV/mmの電界を印加した際の
発生変位量を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0057】表2と表1とを比較すれば明らかなよう
に、ペロブスカイト型酸化物が銀を含み、かつ、タング
ステンブロンズ型酸化物を含有するようにした実施例2
−1〜2−3によれば、比較例1−1よりも、比誘電率
εr,電気機械結合係数krおよび発生変位量について
大きな値が得られた。また、実施例2−2,2−3の方
が、タングステンブロンズ型酸化物を含有しない実施例
1−2,1−3よりも大きな発生変位量が得られた。す
なわち、ペロブスカイト型酸化物に加えて、タングステ
ンブロンズ型酸化物を含むようにすれば、発生変位量を
より大きくできることが分かった。
【0058】更に、化5におけるzの値が大きくなるに
従い、つまり銀の含有量が多くなるに従い、比誘電率ε
r,電気機械結合係数krおよび発生変位量は極大値を
示したのち、小さくなる傾向が見られた。すなわち、第
1の元素における銀の含有量を5mol%以下とすれ
ば、より好ましいことも分かった。
【0059】なお、上記実施例では、主成分および副成
分の組成について例を挙げて具体的に説明したが、上記
実施の形態において説明した組成の範囲内であれば、他
の組成であっても同様の結果を得ることができる。
【0060】以上、実施の形態および実施例を挙げて本
発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態および実
施例に限定されるものではなく、種々変形することがで
きる。例えば、上記実施の形態および実施例では、ペロ
ブスカイト型酸化物とタングステンブロンズ型酸化物と
の組成物を含有する場合について説明したが、この組成
物にペロブスカイト型酸化物およびタングステンブロン
ズ型酸化物以外の他の成分を更に含んでいてもよい。
【0061】また、上記実施の形態および実施例では、
主成分の組成物が第1の元素としてナトリウム,カリウ
ム,リチウムおよび銀を含み、第2の元素としてニオブ
およびタンタルからなる群のうちの少なくともニオブを
含み、第3の元素として長周期型周期表2族元素のうち
の少なくとも1種を含み、第4の元素としてニオブおよ
びタンタルからなる群のうちの少なくともニオブを含む
場合について説明したが、これら第1の元素,第2の元
素,第3の元素および第4の元素は、これら以外の他の
元素を更に含んでいてもよい。
【0062】更に、上記実施の形態および実施例では、
主成分の組成物に加えて副成分を含む場合について説明
したが、本発明は、主成分の組成物を含んでいれば副成
分を含まない場合についても広く適用することができ
る。また、他の副成分を含む場合についても同様に適用
することができる。
【0063】加えて、上記実施の形態では、単層構造の
圧電素子を例に挙げて説明したが、積層構造など他の構
造を有する圧電素子についても、本発明を同様に適用す
ることができる。また、圧電素子としてアクチュエータ
などの振動素子,発音体およびセンサを例に挙げたが、
他の圧電素子についても本発明を適用することができ
る。
【0064】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1ないし請
求項7のいずれかに記載の圧電磁器によれば、ナトリウ
ム,カリウムおよびリチウムに加えて銀を含むペロブス
カイト型酸化物を含有するようにしたので、比誘電率ε
r,電気機械結合係数krおよび発生変位量を大きくす
ることができる。よって、鉛を含有しない、あるいは鉛
の含有量が少ない圧電磁器および圧電素子についても、
利用の可能性を高めることができる。すなわち、焼成時
における鉛の揮発が少なく、市場に流通し廃棄された後
も環境中に鉛が放出される危険性が低く、低公害化、対
環境性および生態学的見地から極めて優れた圧電磁器お
よび圧電素子の活用を図ることができる。
【0065】特に、請求項2または請求項3または請求
項5または請求項6記載の圧電磁器によれば、副成分と
して長周期型周期表における3〜12族元素のうちの少
なくとも1種を含む酸化物を含有するようにしたので、
焼結性を向上させることができ、圧電特性をより向上さ
せることができる。
【0066】また、請求項4ないし請求項6のいずれか
に記載の圧電磁器によれば、ペロブスカイト型酸化物に
加えて、タングステンブロンズ型酸化物を含有するよう
にしたので、焼成を容易とすることができると共に、発
生変位量をより大きくすることができる。
【0067】更に、請求項7記載の圧電磁器によれば、
第1の元素における銀の含有量が5mol%以下となる
ようにしたので、比誘電率εr,電気機械結合係数kr
および発生変位量をより大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る圧電磁器を用いた
圧電素子を表す構成図である。
【図2】本発明の実施例において発生変位量の測定に用
いた変位測定装置を表す構成図である。
【符号の説明】
1…圧電基板、1a,1b…対向面、2,3…電極、1
1,12…電極、13…試料、14…変位センサ、15
…変位検出器。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古川 正仁 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 Fターム(参考) 4G030 AA02 AA03 AA04 AA25 AA30 BA10 CA01

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ナトリウム(Na),カリウム(K),
    リチウム(Li)および銀(Ag)を含む第1の元素
    と、ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)からなる群
    のうちの少なくともニオブを含む第2の元素と、酸素
    (O)とからなるペロブスカイト型酸化物を含むことを
    特徴とする圧電磁器。
  2. 【請求項2】 前記ペロブスカイト型酸化物を主成分と
    し、更に、副成分として、長周期型周期表における3〜
    12族元素のうちの少なくとも1種を含む酸化物を含有
    することを特徴とする請求項1記載の圧電磁器。
  3. 【請求項3】 前記副成分としてマンガン(Mn)を含
    む酸化物を含有し、 酸化マンガンの含有量は、MnOに換算して、前記主成
    分に対して0.01質量%以上1質量%以下の範囲内で
    あることを特徴とする請求項2に記載の圧電磁器。
  4. 【請求項4】 前記ペロブスカイト型酸化物に加えて、
    タングステンブロンズ型酸化物を含む組成物を含有し、 前記タングステンブロンズ型酸化物は、長周期型周期表
    2族元素のうちの少なくとも1種を含む第3の元素と、
    ニオブおよびタンタルからなる群のうちの少なくともニ
    オブを含む第4の元素と、酸素とからなることを特徴と
    する請求項1記載の圧電磁器。
  5. 【請求項5】 前記組成物を主成分とし、更に、副成分
    として、長周期型周期表における3〜12族元素のうち
    の少なくとも1種を含む酸化物を含有することを特徴と
    する請求項4記載の圧電磁器。
  6. 【請求項6】 前記副成分としてマンガン(Mn)を含
    む酸化物を含有し、 酸化マンガンの含有量は、MnOに換算して、前記主成
    分に対して0.01質量%以上1質量%以下の範囲内で
    あることを特徴とする請求項5に記載の圧電磁器。
  7. 【請求項7】 前記第1の元素における銀の含有量は5
    mol%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1
    ないし請求項6のいずれかに記載の圧電磁器。
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