JP2003269527A - 液体封入式エンジンマウント - Google Patents
液体封入式エンジンマウントInfo
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- JP2003269527A JP2003269527A JP2003037077A JP2003037077A JP2003269527A JP 2003269527 A JP2003269527 A JP 2003269527A JP 2003037077 A JP2003037077 A JP 2003037077A JP 2003037077 A JP2003037077 A JP 2003037077A JP 2003269527 A JP2003269527 A JP 2003269527A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 全体の小型化、軽量化並びに消費電力の軽減
を図りながら、磁束を効率よく収束して磁性流体の粘度
を急速かつ大きく増減変化させ広範囲の周波数領域の振
動に対して常に十分な防振効果を発揮させ得るようにす
る。 【解決手段】 振動発生源側の取付部材10と振動受部
側の磁性材料製筒状部材11を円錐状弾性ゴム12を介
して連結した中空状本体ボディ13内の空間を主液室1
4と副液室15に仕切る弾性変位可能な可動壁16の周
囲に連結支持の磁性材料製環状部材1と筒状部材11の
内周に固定連結の磁性材料製環状部材2との間に、カプ
セル状磁性流体4が介在されているとともに、筒状部材
11側に同極対向状態に固定保持された二つの電磁石5
A,5Bの磁力を変化させて磁気回路6に発生される磁
束の大きさを調整する磁束制御装置7が設けられてい
る。
を図りながら、磁束を効率よく収束して磁性流体の粘度
を急速かつ大きく増減変化させ広範囲の周波数領域の振
動に対して常に十分な防振効果を発揮させ得るようにす
る。 【解決手段】 振動発生源側の取付部材10と振動受部
側の磁性材料製筒状部材11を円錐状弾性ゴム12を介
して連結した中空状本体ボディ13内の空間を主液室1
4と副液室15に仕切る弾性変位可能な可動壁16の周
囲に連結支持の磁性材料製環状部材1と筒状部材11の
内周に固定連結の磁性材料製環状部材2との間に、カプ
セル状磁性流体4が介在されているとともに、筒状部材
11側に同極対向状態に固定保持された二つの電磁石5
A,5Bの磁力を変化させて磁気回路6に発生される磁
束の大きさを調整する磁束制御装置7が設けられてい
る。
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として自動車用
エンジンを車体に弾性支持させて振動を吸収し減衰する
ように用いられる液体封入式エンジンマウントで、詳し
くは、電磁石と、その磁力の変化に伴い磁束の大きさを
調整することで粘度が変化する磁性流体とを用いて減衰
性能、ひいては振動吸収性能を調整可能としている液体
封入式エンジンマウントに関するものである。 【0002】 【従来の技術】液体封入式エンジンマウントにおいて、
封入液体としての磁性流体が封入された密閉空間内に可
動板を配設して該可動板によって密閉空間を弾性ゴム側
の主室と副室とに仕切り、この主室と副室とを流動抵抗
が異なる二つのオリフィス通路を介して磁性流体が相互
に流動可能な状態に接続するとともに、流動抵抗の小さ
い側のオリフィス通路内の上下対向壁面に一対の板状電
極を配設し、これら一対の板状電極間に対する直流高電
圧の印加状態の切換制御により流動抵抗の小さい側のオ
リフィス通路内に位置する磁性流体の粘度を増減変化さ
せて主室内から副室内への磁性流体の通過するオリフィ
ス通路を選択させることによって、同一周波数域のアイ
ドリング時における振動及び自動車走行時におけるシェ
イク振動に対して共に良好な防振効果を発揮させるよう
にしたものが従来より知られている(例えば、特許文献
1参照)。 【0003】また、エンジンマウントにも応用可能な装
置として、磁性流体を充填した空間内部に電磁石を配設
し、この電磁石の磁力を調整し磁性流体に付与する磁束
の大きさを変化させて該磁性流体の粘度を増減制御する
ことにより減衰力を調整可能としたダンパーの減衰力調
整装置も従来より提案されている(例えば、特許文献2
参照)。 【0004】 【特許文献1】特開平2−203001号公報 【特許文献2】特開平5−26287号公報 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、磁性流
体を挟んで電気的に対向するように設けられた一対の電
極間への印加電圧を制御して磁性流体の粘度を増減変化
させるようになした特許文献1に示す従来の液体封入式
エンジンマウントでは、磁性流体の温度上昇に伴う電気
抵抗値の急激な低下によって電流密度が増大し、この電
流密度の増大に伴って自己発熱して磁性流体温度が更に
増大し、その繰り返しによって消費電流が実質的に無制
限に増大し、その結果、電源の過負荷を招き、電源や周
辺機器に支障を及ぼすという問題がある。また、このよ
うな問題解決のために、電極と電源との間に抵抗体を直
列に介在させ、この抵抗体の抵抗値の適宜設定により磁
性流体の温度上昇による流体の電気抵抗値の低下に起因
する消費電流の最大値を規制することも考えられている
が、この場合、装置の信頼性の向上を図ることは可能で
あるものの、消費電力が非常に大きく、また、オリフィ
ス通路を通過する磁性流体自体の粘度変化によりその通
過量を制御して防振効果を発揮させるものであるから、
防振効果が期待できる周波数領域は自ずと狭く、少ない
消費電力のもとで広範囲の周波数領域に対する振動吸収
性能が要求される自動車用等のエンジンマウントとして
は実用的でない。 【0006】一方、電磁石の磁力を調整して磁性流体に
付与する磁束の大きさを変化させて該磁性流体の粘度を
増減制御するようになされた特許文献2に示す従来の減
衰力の調整装置を自動車用エンジンマウントの振動吸収
に応用するものでは、磁性流体の周りに単一の電磁石が
環状形に配置されているだけであるから、磁束が発散し
てロスを生じやすいために、磁性流体の粘度変化のみで
減衰力、つまり、振動吸収力を広い範囲にわたり可変と
することが技術的に難しく、単一の電磁石を用いて減衰
力の可変範囲を大きくするには、磁束を収束するために
磁性体で作られた大きな磁気回路を使用するか、もしく
は、大出力の電磁石を使用する必要があり、その結果、
装置全体が大型化、重量化しやすい。また、前者の従来
技術に比べれば磁性流体の温度上昇に起因する消費電流
の増大がない分だけ最大消費電力の低減が図れるもの
の、磁束ロスによる消費電力の増加があるという問題が
あった。 【0007】本発明は上記のような実情に鑑みてなされ
たもので、小型化、軽量化が図れ、かつ、消費電力の軽
減が図れるものでありながらも、効率よい磁束の収束に
より磁性流体の粘度を急速かつ大きく増減変化させて広
範囲の周波数領域の振動に対して常に十分な防振効果を
発揮させることができる液体封入式エンジンマウントを
提供することを目的としている。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る液体封入式エンジンマウントは、振動
発生源側の取付部材と振動受部側に取付け可能な磁性材
料製の筒状部材とを円錐状弾性ゴムを介して連結してな
る中空状本体ボディ内に、その内部空間を主、副二つの
液室に仕切る弾性変位可能な可動壁が張設されていると
ともに、主液室と副液室との間には、振動付加時の弾性
ゴムの弾性変形に伴い圧縮される主液室内の封入液体の
一部を副液室に流動させる制限流路が設けられている液
体封入式エンジンマウントにおいて、上記可動壁の周囲
に連結支持された磁性材料製環状部材と該環状部材の外
周で上記筒状部材の内周に固定連結された磁性材料製環
状部材との間に、その全周囲がシール材で密封状に包囲
されてカプセル状に構成された磁性流体が介在されてい
るとともに、上記筒状部材側には二つの電磁石がそれら
の同極を対向させて固定保持されており、これら電磁石
の磁力を変化させて該電磁石と上記両環状部材と筒状部
材とで形成される磁気回路の磁束の大きさを調整する磁
束制御装置が設けられていることを特徴とするものであ
る。 【0009】上記のような特徴構成を有する本発明によ
れば、主液室と副液室とを仕切る可動壁側の磁性材料製
環状部材とその外周の筒状部材側の磁性材料製環状部材
及び二つの電磁石とにより形成される磁気回路のうち、
二つの電磁石の同極対向間は磁束が最も高密度に収束さ
れる箇所であり、この箇所の磁気回路部分にカプセル状
に構成された少量の磁性流体が介在されているため、こ
のカプセル状磁性流体の粘度を増減変化させるために要
する磁力は少なくてよい。つまり、少ない消費電力のも
とでカプセル状磁性流体を急速に大きく、かつ、効率よ
く増減変化させることが可能である。これによって、電
磁石自体の出力は小さくてよく、また、大型の磁気回路
を用いる必要もないので、エンジンマウント全体の小形
化、軽量化が図れる。そのうえ、カプセル状磁性流体の
粘度変化により液封式エンジンマウントの主液室と副液
室とを仕切るために張設した弾性変位可能な可動壁を固
定したり、その剛性を変化させることが可能であるか
ら、低周波領域の振動が作用する条件下では、磁性流体
の粘度を増加させて可動壁を固定することにより、主液
室内の封入液体の一部を制限通路を通して副液室に制限
流動させるという液体封入式エンジンマウント本来の作
用によって高い振動減衰性能を確保しつつ、高周波領域
の振動が作用する条件下では、磁性流体の粘度を増減変
化させて可動壁の剛性を調整することにより、この可動
壁が有する弾性変位特性を有効に活用して広い周波数範
囲の振動に対して十分な振動吸収効果、すなわち、防振
効果を発揮させることが可能である。 【0010】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面にも
とづいて説明する。図1は本発明に係る液体封入式エン
ジンマウントの実施例を示す縦断面構造図である。この
液体封入式エンジンマウントMは、振動発生源側に取付
け可能な部材10と振動受部側に取付け可能な磁性材料
製の筒状部材11とを円錐状弾性ゴム12を介して連結
してなる中空状本体ボディ13内に、その内部空間を仕
切って主,副二つの液室14,15を形成するように弾
性変位可能な可動壁16が水平姿勢に張設されており、
振動付加時の弾性ゴム12の変形に伴い圧縮される主液
室14の封入液体の一部を制限流路17を通して副液室
15側に流動させることと、可動壁16を弾性変位させ
ることとにより主液室14内の液圧変動を吸収するよう
に構成されている。 【0011】上記のごとき基本構成を有する液体封入式
エンジンマウントMにおける中空状本体ボディ13の筒
状部材11の内周に、振動吸収力調整装置Aの一方(外
側)となる磁性材料製の環状部材2が固定連結され、か
つ、この環状部材2の内周で上記可動壁16の周囲には
磁性材料製の環状部材1が連結支持されている。これら
内外の環状部材1,2の対向面間には、その周囲がシー
ル材3で密封状態に包囲されてカプセル状に構成された
磁性流体4が環状形に介在されているとともに、筒状部
材11側で上記カプセル状磁性流体4の上下位置に二つ
の電磁石5A,5Bが同極(NとNまたはSとS)対向
状態に配置され固定保持されている。 【0012】上記二つの電磁石5A,5Bを構成するコ
イル(図示省略する)には、通電電流を調整して磁力を
変化させることにより、各電磁石5A,5Bと両環状部
材1.2及び筒状部材11とで形成される磁気回路6に
形成される磁束の大きさを調整することが可能な磁束制
御装置7が電気的に接続されている。 【0013】上記のような構成を有する実施例の液体封
入式エンジンマウントMにおいては、磁束制御装置7を
通して二つの電磁石5A,5Bのコイルに通電電流を流
して磁気回路6に磁束を発生させると、二つの電磁石5
A,5Bの同極が対向している磁気回路部分6aに磁束
が高密度状態に収束される。この磁束が高密度に収束さ
れる箇所にカプセル状に構成された少量の磁性流体4が
介在されているため、二つの電磁石5A,5Bへの通電
電流を磁束制御装置7を介してコントロールして磁気回
路6及び磁気回路部分6aに発生される磁束の大きさを
調整することによって、カプセル状磁性流体4の粘度を
少ない消費電力のもとで急速に、かつ、大きく増減変化
させることが可能である。 【0014】したがって、低周波領域の振動が作用する
条件下では、カプセル状磁性流体4の粘度を最大に増加
させて該エンジンマウントMの主液室14と副液室15
とを仕切るために張設した弾性変位可能な可動壁16を
固定することによって、振動付加時の弾性ゴム12の変
形に伴い圧縮される主液室14の封入液体の一部を制限
流路17を通して副液室15側に流動させるという封入
液体の制限流動により本来の高い減衰性能を確保しつ
つ、高周波領域の振動が作用する条件下では、二つの電
磁石5A,5Bへの通電電流をコントロールし磁気回路
6及び磁気回路部分6aに発生される磁束の大きさを調
整してカプセル状磁性流体4の粘度を増減変化させて可
動壁16の剛性を調整することにより、この可動壁16
が有する弾性変位特性を活用して広い周波数範囲の振動
に対して十分な防振効果を発揮させることが可能であ
る。 【0015】なお、本発明におけるカプセル状磁性流体
としては、磁束の大きさによって粘度が変化するもので
あればよいが、特に、高濃度の懸濁液中に1〜10μm
程度の粒子径をもつ強磁性金属微粒子を分散させてなる
ビンガム流体で、−40〜150℃の作動温度域を有し
磁束の大きさによって粘度が変化する磁気粘性流体ある
いは磁気流動学的流体と呼ばれるカプセル状のMR流体
を使用することが望ましい。 【0016】 【発明の効果】以上のように、本発明によれば、二つの
電磁石の同極対向間という磁束が最も高密度に収束され
る箇所の磁気回路部分にカプセル状の少量磁性流体を介
在させることにより、少ない消費電力のもとでカプセル
状磁性流体を急速に大きく、かつ、効率よく増減変化さ
せることができる。したがって、電磁石自体の出力は小
さくてよく、大型の磁気回路を用いる必要もないので、
エンジンマウント全体の小形化、軽量化を図ることがで
きる。それでいて、カプセル状磁性流体の粘度変化によ
り該エンジンマウントの主液室と副液室とを仕切るため
に張設した弾性変位可能な可動壁を固定したり、その剛
性を調整することが可能であるから、低周波領域の振動
が作用する条件下では、可動壁を固定して主液室内の封
入液体の一部を制限通路を通して副液室に制限流動させ
るという液体封入式エンジンマウント本来の作用によっ
て高い振動減衰性能を確保しつつ、高周波領域の振動が
作用する条件下では、可動壁の剛性を調整して該可動壁
のもつ弾性変位特性を有効に活用して広い周波数範囲の
振動に対し十分な振動吸収効果、すなわち、防振効果を
発揮させることができるという効果を奏する。
エンジンを車体に弾性支持させて振動を吸収し減衰する
ように用いられる液体封入式エンジンマウントで、詳し
くは、電磁石と、その磁力の変化に伴い磁束の大きさを
調整することで粘度が変化する磁性流体とを用いて減衰
性能、ひいては振動吸収性能を調整可能としている液体
封入式エンジンマウントに関するものである。 【0002】 【従来の技術】液体封入式エンジンマウントにおいて、
封入液体としての磁性流体が封入された密閉空間内に可
動板を配設して該可動板によって密閉空間を弾性ゴム側
の主室と副室とに仕切り、この主室と副室とを流動抵抗
が異なる二つのオリフィス通路を介して磁性流体が相互
に流動可能な状態に接続するとともに、流動抵抗の小さ
い側のオリフィス通路内の上下対向壁面に一対の板状電
極を配設し、これら一対の板状電極間に対する直流高電
圧の印加状態の切換制御により流動抵抗の小さい側のオ
リフィス通路内に位置する磁性流体の粘度を増減変化さ
せて主室内から副室内への磁性流体の通過するオリフィ
ス通路を選択させることによって、同一周波数域のアイ
ドリング時における振動及び自動車走行時におけるシェ
イク振動に対して共に良好な防振効果を発揮させるよう
にしたものが従来より知られている(例えば、特許文献
1参照)。 【0003】また、エンジンマウントにも応用可能な装
置として、磁性流体を充填した空間内部に電磁石を配設
し、この電磁石の磁力を調整し磁性流体に付与する磁束
の大きさを変化させて該磁性流体の粘度を増減制御する
ことにより減衰力を調整可能としたダンパーの減衰力調
整装置も従来より提案されている(例えば、特許文献2
参照)。 【0004】 【特許文献1】特開平2−203001号公報 【特許文献2】特開平5−26287号公報 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、磁性流
体を挟んで電気的に対向するように設けられた一対の電
極間への印加電圧を制御して磁性流体の粘度を増減変化
させるようになした特許文献1に示す従来の液体封入式
エンジンマウントでは、磁性流体の温度上昇に伴う電気
抵抗値の急激な低下によって電流密度が増大し、この電
流密度の増大に伴って自己発熱して磁性流体温度が更に
増大し、その繰り返しによって消費電流が実質的に無制
限に増大し、その結果、電源の過負荷を招き、電源や周
辺機器に支障を及ぼすという問題がある。また、このよ
うな問題解決のために、電極と電源との間に抵抗体を直
列に介在させ、この抵抗体の抵抗値の適宜設定により磁
性流体の温度上昇による流体の電気抵抗値の低下に起因
する消費電流の最大値を規制することも考えられている
が、この場合、装置の信頼性の向上を図ることは可能で
あるものの、消費電力が非常に大きく、また、オリフィ
ス通路を通過する磁性流体自体の粘度変化によりその通
過量を制御して防振効果を発揮させるものであるから、
防振効果が期待できる周波数領域は自ずと狭く、少ない
消費電力のもとで広範囲の周波数領域に対する振動吸収
性能が要求される自動車用等のエンジンマウントとして
は実用的でない。 【0006】一方、電磁石の磁力を調整して磁性流体に
付与する磁束の大きさを変化させて該磁性流体の粘度を
増減制御するようになされた特許文献2に示す従来の減
衰力の調整装置を自動車用エンジンマウントの振動吸収
に応用するものでは、磁性流体の周りに単一の電磁石が
環状形に配置されているだけであるから、磁束が発散し
てロスを生じやすいために、磁性流体の粘度変化のみで
減衰力、つまり、振動吸収力を広い範囲にわたり可変と
することが技術的に難しく、単一の電磁石を用いて減衰
力の可変範囲を大きくするには、磁束を収束するために
磁性体で作られた大きな磁気回路を使用するか、もしく
は、大出力の電磁石を使用する必要があり、その結果、
装置全体が大型化、重量化しやすい。また、前者の従来
技術に比べれば磁性流体の温度上昇に起因する消費電流
の増大がない分だけ最大消費電力の低減が図れるもの
の、磁束ロスによる消費電力の増加があるという問題が
あった。 【0007】本発明は上記のような実情に鑑みてなされ
たもので、小型化、軽量化が図れ、かつ、消費電力の軽
減が図れるものでありながらも、効率よい磁束の収束に
より磁性流体の粘度を急速かつ大きく増減変化させて広
範囲の周波数領域の振動に対して常に十分な防振効果を
発揮させることができる液体封入式エンジンマウントを
提供することを目的としている。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る液体封入式エンジンマウントは、振動
発生源側の取付部材と振動受部側に取付け可能な磁性材
料製の筒状部材とを円錐状弾性ゴムを介して連結してな
る中空状本体ボディ内に、その内部空間を主、副二つの
液室に仕切る弾性変位可能な可動壁が張設されていると
ともに、主液室と副液室との間には、振動付加時の弾性
ゴムの弾性変形に伴い圧縮される主液室内の封入液体の
一部を副液室に流動させる制限流路が設けられている液
体封入式エンジンマウントにおいて、上記可動壁の周囲
に連結支持された磁性材料製環状部材と該環状部材の外
周で上記筒状部材の内周に固定連結された磁性材料製環
状部材との間に、その全周囲がシール材で密封状に包囲
されてカプセル状に構成された磁性流体が介在されてい
るとともに、上記筒状部材側には二つの電磁石がそれら
の同極を対向させて固定保持されており、これら電磁石
の磁力を変化させて該電磁石と上記両環状部材と筒状部
材とで形成される磁気回路の磁束の大きさを調整する磁
束制御装置が設けられていることを特徴とするものであ
る。 【0009】上記のような特徴構成を有する本発明によ
れば、主液室と副液室とを仕切る可動壁側の磁性材料製
環状部材とその外周の筒状部材側の磁性材料製環状部材
及び二つの電磁石とにより形成される磁気回路のうち、
二つの電磁石の同極対向間は磁束が最も高密度に収束さ
れる箇所であり、この箇所の磁気回路部分にカプセル状
に構成された少量の磁性流体が介在されているため、こ
のカプセル状磁性流体の粘度を増減変化させるために要
する磁力は少なくてよい。つまり、少ない消費電力のも
とでカプセル状磁性流体を急速に大きく、かつ、効率よ
く増減変化させることが可能である。これによって、電
磁石自体の出力は小さくてよく、また、大型の磁気回路
を用いる必要もないので、エンジンマウント全体の小形
化、軽量化が図れる。そのうえ、カプセル状磁性流体の
粘度変化により液封式エンジンマウントの主液室と副液
室とを仕切るために張設した弾性変位可能な可動壁を固
定したり、その剛性を変化させることが可能であるか
ら、低周波領域の振動が作用する条件下では、磁性流体
の粘度を増加させて可動壁を固定することにより、主液
室内の封入液体の一部を制限通路を通して副液室に制限
流動させるという液体封入式エンジンマウント本来の作
用によって高い振動減衰性能を確保しつつ、高周波領域
の振動が作用する条件下では、磁性流体の粘度を増減変
化させて可動壁の剛性を調整することにより、この可動
壁が有する弾性変位特性を有効に活用して広い周波数範
囲の振動に対して十分な振動吸収効果、すなわち、防振
効果を発揮させることが可能である。 【0010】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面にも
とづいて説明する。図1は本発明に係る液体封入式エン
ジンマウントの実施例を示す縦断面構造図である。この
液体封入式エンジンマウントMは、振動発生源側に取付
け可能な部材10と振動受部側に取付け可能な磁性材料
製の筒状部材11とを円錐状弾性ゴム12を介して連結
してなる中空状本体ボディ13内に、その内部空間を仕
切って主,副二つの液室14,15を形成するように弾
性変位可能な可動壁16が水平姿勢に張設されており、
振動付加時の弾性ゴム12の変形に伴い圧縮される主液
室14の封入液体の一部を制限流路17を通して副液室
15側に流動させることと、可動壁16を弾性変位させ
ることとにより主液室14内の液圧変動を吸収するよう
に構成されている。 【0011】上記のごとき基本構成を有する液体封入式
エンジンマウントMにおける中空状本体ボディ13の筒
状部材11の内周に、振動吸収力調整装置Aの一方(外
側)となる磁性材料製の環状部材2が固定連結され、か
つ、この環状部材2の内周で上記可動壁16の周囲には
磁性材料製の環状部材1が連結支持されている。これら
内外の環状部材1,2の対向面間には、その周囲がシー
ル材3で密封状態に包囲されてカプセル状に構成された
磁性流体4が環状形に介在されているとともに、筒状部
材11側で上記カプセル状磁性流体4の上下位置に二つ
の電磁石5A,5Bが同極(NとNまたはSとS)対向
状態に配置され固定保持されている。 【0012】上記二つの電磁石5A,5Bを構成するコ
イル(図示省略する)には、通電電流を調整して磁力を
変化させることにより、各電磁石5A,5Bと両環状部
材1.2及び筒状部材11とで形成される磁気回路6に
形成される磁束の大きさを調整することが可能な磁束制
御装置7が電気的に接続されている。 【0013】上記のような構成を有する実施例の液体封
入式エンジンマウントMにおいては、磁束制御装置7を
通して二つの電磁石5A,5Bのコイルに通電電流を流
して磁気回路6に磁束を発生させると、二つの電磁石5
A,5Bの同極が対向している磁気回路部分6aに磁束
が高密度状態に収束される。この磁束が高密度に収束さ
れる箇所にカプセル状に構成された少量の磁性流体4が
介在されているため、二つの電磁石5A,5Bへの通電
電流を磁束制御装置7を介してコントロールして磁気回
路6及び磁気回路部分6aに発生される磁束の大きさを
調整することによって、カプセル状磁性流体4の粘度を
少ない消費電力のもとで急速に、かつ、大きく増減変化
させることが可能である。 【0014】したがって、低周波領域の振動が作用する
条件下では、カプセル状磁性流体4の粘度を最大に増加
させて該エンジンマウントMの主液室14と副液室15
とを仕切るために張設した弾性変位可能な可動壁16を
固定することによって、振動付加時の弾性ゴム12の変
形に伴い圧縮される主液室14の封入液体の一部を制限
流路17を通して副液室15側に流動させるという封入
液体の制限流動により本来の高い減衰性能を確保しつ
つ、高周波領域の振動が作用する条件下では、二つの電
磁石5A,5Bへの通電電流をコントロールし磁気回路
6及び磁気回路部分6aに発生される磁束の大きさを調
整してカプセル状磁性流体4の粘度を増減変化させて可
動壁16の剛性を調整することにより、この可動壁16
が有する弾性変位特性を活用して広い周波数範囲の振動
に対して十分な防振効果を発揮させることが可能であ
る。 【0015】なお、本発明におけるカプセル状磁性流体
としては、磁束の大きさによって粘度が変化するもので
あればよいが、特に、高濃度の懸濁液中に1〜10μm
程度の粒子径をもつ強磁性金属微粒子を分散させてなる
ビンガム流体で、−40〜150℃の作動温度域を有し
磁束の大きさによって粘度が変化する磁気粘性流体ある
いは磁気流動学的流体と呼ばれるカプセル状のMR流体
を使用することが望ましい。 【0016】 【発明の効果】以上のように、本発明によれば、二つの
電磁石の同極対向間という磁束が最も高密度に収束され
る箇所の磁気回路部分にカプセル状の少量磁性流体を介
在させることにより、少ない消費電力のもとでカプセル
状磁性流体を急速に大きく、かつ、効率よく増減変化さ
せることができる。したがって、電磁石自体の出力は小
さくてよく、大型の磁気回路を用いる必要もないので、
エンジンマウント全体の小形化、軽量化を図ることがで
きる。それでいて、カプセル状磁性流体の粘度変化によ
り該エンジンマウントの主液室と副液室とを仕切るため
に張設した弾性変位可能な可動壁を固定したり、その剛
性を調整することが可能であるから、低周波領域の振動
が作用する条件下では、可動壁を固定して主液室内の封
入液体の一部を制限通路を通して副液室に制限流動させ
るという液体封入式エンジンマウント本来の作用によっ
て高い振動減衰性能を確保しつつ、高周波領域の振動が
作用する条件下では、可動壁の剛性を調整して該可動壁
のもつ弾性変位特性を有効に活用して広い周波数範囲の
振動に対し十分な振動吸収効果、すなわち、防振効果を
発揮させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液体封入式エンジンマウントの実
施例を示す縦断面構造図である。 【符号の説明】 1,2 磁性材料製環状部材 3 シール材 4 カプセル状磁性流体 5A,5B 電磁石 6 磁気回路 6a 磁気回路部分 7 磁束制御装置 10 取付部材 11 筒状部材 12 円錐状弾性ゴム 13 中空本体ボディ 14 主液室 15 副液室 16 可動壁 M 液体封入式エンジンマウント A 振動吸収力調整装置
施例を示す縦断面構造図である。 【符号の説明】 1,2 磁性材料製環状部材 3 シール材 4 カプセル状磁性流体 5A,5B 電磁石 6 磁気回路 6a 磁気回路部分 7 磁束制御装置 10 取付部材 11 筒状部材 12 円錐状弾性ゴム 13 中空本体ボディ 14 主液室 15 副液室 16 可動壁 M 液体封入式エンジンマウント A 振動吸収力調整装置
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(72)発明者 奥 岳史
大阪府大阪市西区江戸堀1丁目17番18号
東洋ゴム工業株式会社内
(72)発明者 岡本 修一
大阪府大阪市西区江戸堀1丁目17番18号
東洋ゴム工業株式会社内
Fターム(参考) 3J047 AA03 AB01 AB05 CA02 CB05
CB10 DA01 FA02
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 振動発生源側の取付部材と振動受部側に
取付け可能な磁性材料製の筒状部材とを円錐状弾性ゴム
を介して連結してなる中空状本体ボディ内に、その内部
空間を主、副二つの液室に仕切る弾性変位可能な可動壁
が張設されているとともに、主液室と副液室との間に
は、振動付加時の弾性ゴムの弾性変形に伴い圧縮される
主液室内の封入液体の一部を副液室に流動させる制限流
路が設けられている液体封入式エンジンマウントにおい
て、 上記可動壁の周囲に連結支持された磁性材料製環状部材
と該環状部材の外周で上記筒状部材の内周に固定連結さ
れた磁性材料製環状部材との間に、その全周囲がシール
材で密封状に包囲されてカプセル状に構成された磁性流
体が介在されているとともに、上記筒状部材側には二つ
の電磁石がそれらの同極を対向させて固定保持されてお
り、これら電磁石の磁力を変化させて該電磁石と上記両
環状部材と筒状部材とで形成される磁気回路の磁束の大
きさを調整する磁束制御装置が設けられていることを特
徴とする液体封入式エンジンマウント。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003037077A JP2003269527A (ja) | 2003-02-14 | 2003-02-14 | 液体封入式エンジンマウント |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003037077A JP2003269527A (ja) | 2003-02-14 | 2003-02-14 | 液体封入式エンジンマウント |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001006380A Division JP3548721B2 (ja) | 2001-01-15 | 2001-01-15 | 磁性流体利用の減衰力調整装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003269527A true JP2003269527A (ja) | 2003-09-25 |
Family
ID=29208445
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003037077A Withdrawn JP2003269527A (ja) | 2003-02-14 | 2003-02-14 | 液体封入式エンジンマウント |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003269527A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101223447B1 (ko) | 2011-07-22 | 2013-01-17 | 현대자동차주식회사 | Mr유체가 봉입된 엔진마운트용 오리피스플레이트 |
KR101263009B1 (ko) | 2011-11-24 | 2013-05-13 | 현대자동차주식회사 | Mr유체가 봉입된 엔진마운트용 오리피스플레이트 |
KR101298267B1 (ko) * | 2011-08-01 | 2013-08-22 | 현대자동차주식회사 | Mr유체가 봉입된 엔진마운트용 오리피스플레이트 |
JP2021080992A (ja) * | 2019-11-19 | 2021-05-27 | 本田技研工業株式会社 | 能動型防振装置 |
-
2003
- 2003-02-14 JP JP2003037077A patent/JP2003269527A/ja not_active Withdrawn
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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KR101263009B1 (ko) | 2011-11-24 | 2013-05-13 | 현대자동차주식회사 | Mr유체가 봉입된 엔진마운트용 오리피스플레이트 |
JP2021080992A (ja) * | 2019-11-19 | 2021-05-27 | 本田技研工業株式会社 | 能動型防振装置 |
JP7028849B2 (ja) | 2019-11-19 | 2022-03-02 | 本田技研工業株式会社 | 能動型防振装置 |
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Legal Events
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---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20080401 |