JP2003268435A - 低炭素薄鋼板の製造方法とその鋳片 - Google Patents

低炭素薄鋼板の製造方法とその鋳片

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルミナ介在物を生成させることがないよう
に、Tiを主とした脱酸を行うことにより、確実に表面
疵を防止できる薄鋼板用素材の低炭素溶鋼を製造する方
法およびこれによって得られる鋳片を提供すること。 【解決手段】 炭素濃度を0.01質量%以下にした溶
鋼に0.005質量%以上のTiを添加して脱酸し、そ
の後Ndを添加した溶鋼を鋳造することを特徴とする低
炭素薄鋼板の溶製方法。Ndの添加量は、Ti脱酸後に
残留した少量の溶存酸素とTiOn系介在物を還元分解
するに必要な量以上であって、且つNdが耐火物やモー
ルドパウダーと反応して溶鋼を汚染させない量以下であ
り、溶鋼中のNd濃度の適正範囲は0.0001以上
0.01質量%以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加工性、成形性に
優れた低炭素薄鋼板の製造方法およびこの方法によって
得られた鋳片に関するものである。
【0002】
【従来の技術】転炉や真空処理容器で精錬された溶鋼中
には、多量の溶存酸素が含まれており、この過剰酸素は
酸素との親和力が強い強脱酸元素であるAlにより脱酸
されるのが一般的である。しかし、Alは脱酸によりア
ルミナ系介在物を生成し、これが凝集合体して粗大なア
ルミナクラスターとなる。このアルミナクラスターは鋼
板製造時に表面疵発生の原因となり、薄鋼板の品質を大
きく劣化させる。特に、炭素濃度が低く、精錬後の溶存
酸素濃度が高い薄鋼板用素材である低炭素溶鋼では、ア
ルミナクラスターの量が非常に多く、表面疵の発生率が
極めて高く、アルミナ系介在物の低減対策は大きな課題
となっている。
【0003】これに対して、従来は特開平5−1042
19号公報の介在物吸着用フラックスを溶鋼表面に添加
してアルミナ系介在物を除去する方法、或いは特開昭6
3−149057号公報の注入流を利用してCaOフラ
ックスを溶鋼中に添加し、これによりアルミナ系介在物
を吸着除去する方法が提案、実施されてきた。一方、ア
ルミナ系介在物を除去するのではなく、生成させない方
法として、特開平5−302112号公報にあるように
溶鋼をMgで脱酸し、Alでは殆ど脱酸しない薄鋼板用
溶鋼の溶製方法も開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たアルミナ系介在物を除去する方法では、低炭素溶鋼中
に多量に生成したアルミナ系介在物を表面疵が発生しな
い程度まで低減することは非常に難しい。また、アルミ
ナ系介在物を全く生成しないMg脱酸では、Mgの蒸気
圧が高く、溶鋼への歩留まりが非常に低いため、低炭素
鋼のように溶存酸素濃度が高い溶鋼をMgだけで脱酸す
るには多量のMgを必要とし、製造コストを考えると実
用的なプロセスとは言えない。
【0005】これらの問題を鑑み、本発明はアルミナ系
介在物を生成させることがないように、Tiを主とした
脱酸を行うことにより、確実に表面疵を防止できる薄鋼
板用素材の低炭素溶鋼を製造する方法とこの方法によっ
て得られた鋳片を提示することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は以下の構成を要旨とする。 (1)低炭素薄鋼板の製造方法において、炭素濃度を
0.01質量%以下まで脱炭した後、該溶鋼にTiを添
加して脱酸し、その後Ndを添加した溶鋼を鋳造するこ
とを特徴とする低炭素薄鋼板の製造方法。 (2)低炭素薄鋼板の製造方法において、真空脱ガス処
理により炭素濃度を0.01質量%以下まで脱炭した
後、該溶鋼にTiを添加して脱酸し、その後Ndを添加
した溶鋼を鋳造することを特徴とする低炭素薄鋼板の製
造方法。 (3)低炭素薄鋼板の製造方法において、炭素濃度を
0.01質量%以下まで脱炭した後、該溶鋼に0.00
5質量%以上のTiを添加して脱酸し、その後Ndを添
加した溶鋼を鋳造することを特徴とする低炭素薄鋼板の
製造方法。 (4)低炭素薄鋼板の製造方法において、真空脱ガス処
理により炭素濃度を0.01質量%以下まで脱炭した
後、該溶鋼に0.005質量%以上のTiを添加して脱
酸し、その後Ndを添加した溶鋼を鋳造することを特徴
とする低炭素薄鋼板の製造方法。 (5)低炭素薄鋼板の製造方法において、炭素濃度を
0.01質量%以下まで脱炭した後、該溶鋼に0.00
5質量%以上のTiを添加して脱酸し、その後Ndを
0.0001質量%以上0.01質量%以下添加した溶
鋼を鋳造することを特徴とする低炭素薄鋼板の製造方
法。 (6)低炭素薄鋼板の製造方法において、真空脱ガス処
理により炭素濃度を0.01質量%以下まで脱炭した
後、該溶鋼に0.005質量%以上のTiを添加して脱
酸し、その後Ndを0.0001質量%以上0.01質
量%以下添加した溶鋼を鋳造することを特徴とする低炭
素薄鋼板の製造方法。 (7)前記(1)から(6)の何れかの方法で鋳造して
得られた低炭素薄鋼板の鋳片において、直径0.5から
30μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範囲内に
1000個/cm2以上100000個/cm2未満分散して
いることを特徴とする鋳片。 (8)前記(1)から(6)の何れかの方法で鋳造して
得られた低炭素薄鋼板の鋳片において、直径0.5から
30μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範囲内に
1000個/cm2以上100000個/cm2未満分散し、
且つその60%以上がNdを含んだ球状酸化物であるこ
とを特徴とする鋳片。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の溶製法では、転炉や電気炉等の製鋼炉で精錬
し、その後好ましくは真空脱ガス処理して炭素濃度を
0.01質量%以下とした溶鋼に、Tiを0.005質
量%以上添加して脱酸を行った上で、Ndを添加する。
この溶製法の基本思想は、溶存酸素濃度の高い溶鋼にT
iを添加して、固相のTiOn系介在物を生成させ、こ
れをNdで還元分解することにより微細なNd23系介
在物またはTiOn−Nd23系複合介在物を溶鋼中に
分散させることにある。
【0008】溶鋼中の溶存酸素濃度が高い状態で添加さ
れたTiは溶鋼中の溶存酸素と反応し、TiOn系介在
物を生成する。TiOn系介在物は溶鋼中で固相であ
り、凝集合体し難いため、比較的微細な介在物となる。
このTiOn系介在物はさらに添加されたNdにより還
元分解され、より微細なNd23系介在物またはTiO
n−Nd23系複合介在物を生成する。溶鋼は事前にT
iで脱酸されているため、残存している少量の溶存酸素
とTiOn系介在物を還元分解するに必要なNd量を添
加すれば良い。このため、真空脱ガス処理後の溶存酸素
濃度が非常に高い溶鋼をNdだけで単独脱酸する溶製方
法に比べてNd添加量を大幅に低減できる。さらに、N
dの蒸気圧は非常に低く、溶鋼に添加しても蒸発するこ
とがないため、Mgの添加に比べて歩留まりが非常に高
く、コスト面でも有利である。Nd23系介在物または
TiOn−Nd23系複合介在物は非常に凝集合体し難
い性質を有しているため、上記製造方法で一度微細なN
23系介在物またはTiOn−Nd23系複合介在物
を生成させれば、取鍋内、タンディッシュ内及び鋳型内
でも介在物は粗大化することなく、溶鋼中に微細に分散
する。
【0009】本発明によって得られた鋳片の表層から2
0mmの範囲内における介在物分散状態を評価したとこ
ろ、直径0.5から30μmの微細酸化物が鋳片内に1
000以上100000個/cm2未満分散しており、そ
の60%以上はNdを含んだ球状酸化物であった。この
ような酸化物分散状態、組成および形状を有する鋳片で
は圧延後に表面欠陥は発生しなかった。本願で鋳造とは
インゴット鋳造および連続鋳造を含む。また、表層から
20mmの範囲内における介在物分布に注目したのは、こ
の範囲内の介在物が圧延後に表層に露出して、表面疵に
なる可能性が高いためである。なお、介在物の分散状態
は、鋳片の研磨面を100倍と1000倍の光学顕微鏡
で観察し、単位面積内の介在物粒径分布を評価した。
【0010】以上の結果から、本発明により介在物を溶
鋼中に微細分散させることができるため、鋼板製造時に
介在物は表面疵発生の原因とならず、薄鋼板の品質は大
きく向上する。
【0011】自動車用外板向けの加工が厳しい極低炭素
鋼板等では、加工性を付加するためにCをできるだけ低
くする必要があり、C濃度は0.01質量%以下、好ま
しくは0.005質量%以下にするのが良い。
【0012】Ti濃度は0.005質量%以上にするこ
とが好ましく、Ti濃度が0.005質量%未満になる
と、TiOn−FeOm系の液相介在物となるため、凝集
合体が促進され粗大な液相介在物となってしまう。添加
するTiはスポンジ状Tiのように高純度Tiに限られ
たものではなく、Fe−Tiのような合金として添加し
ても上記効果は損なわれない。
【0013】Ndの添加量は、Ti脱酸後に生成したT
iOn系介在物を還元するに必要な量以上であって、且
つNdが耐火物やモールドパウダーと反応して溶鋼を汚
染させない量以下である。実験的検討では、溶鋼中のN
d濃度で0.0001質量%以上0.01質量%以下が
適正範囲である。取鍋内でNdを添加する場合、Ti添
加から1分以上置き、確実にTiOn系介在物が生成し
てからNdを添加し、TiOn系介在物を還元する方
が、微細化効果は高い。また、Ndの添加は、必ずしも
取鍋内で添加する必要はなく、Ti脱酸後から鋳型内に
流入するまでの間で添加すれば良く、例えばタンディッ
シュ内で添加することも可能である。さらに、Nd添加
は純Ndで行うことも可能であるが、ミッシュメタル等
のNdを含む合金で添加しても良い。
【0014】溶鋼中にAlは添加しないのが好ましい
が、必要な場合には0.01質量%以下で添加しても、
本発明の効果は損なわれない。このAl濃度であれば、
Nd添加によりアルミナ系介在物も還元され、微細な介
在物に改質されるためである。
【0015】
【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明
について説明する。 実施例1:転炉での精錬と環流式真空脱ガス装置での処
理により炭素濃度を0.003質量%とした取鍋内溶鋼
をTiで脱酸し、Ti濃度0.01質量%とした。Ti
添加から1分後に、取鍋内溶鋼中にNdを添加し、Nd
濃度0.002%の溶鋼を溶製した。この溶鋼を連続鋳
造法で厚み250mm、幅1800mmのスラブに鋳造し
た。鋳造した鋳片は8500mm長さに切断し、1コイル
単位とした。このようにして得られたスラブは、常法に
より熱間圧延、冷間圧延し、最終的には0.7mm厚みで
幅1800mmコイルの冷延鋼板とした。鋳片品質につい
ては、冷間圧延後の検査ラインで目視観察を行い、1コ
イル当たりに発生する表面欠陥の発生個数を評価した。
その結果、表面欠陥は発生しなかった。
【0016】比較例1:転炉での精錬と環流式真空脱ガ
ス装置での処理により炭素濃度を0.003質量%とし
た取鍋内溶鋼をAlで脱酸し、Al濃度0.03質量%
とした。さらに、Tiを添加し、Ti濃度0.01質量
%の溶鋼を溶製した。この溶鋼を連続鋳造法で厚み25
0mm、幅1800mmのスラブに鋳造した。鋳造した鋳片
は8500mm長さに切断し、1コイル単位とした。この
ようにして得られたスラブは、常法により熱間圧延、冷
間圧延し、最終的には0.7mm厚みで幅1800mmコイ
ルの冷延鋼板とした。鋳片品質については、冷間圧延後
の検査ラインで目視観察を行い、1コイル当たりに発生
する表面欠陥の発生個数を評価した。その結果、スラブ
平均で5個/コイルの表面欠陥が発生した。
【0017】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明による
と、アルミナ系介在物を生成することなく、溶鋼中の介
在物を微細化することができるため、確実に表面疵を防
止できる加工性、成形性に優れた薄鋼板用の低炭素溶鋼
を製造することが可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C21C 7/068 C21C 7/068 7/10 7/10 A (72)発明者 大橋 渡 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4K013 AA07 AA09 BA02 BA08 BA14 CE01 EA18 EA26

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低炭素薄鋼板の製造方法において、炭素
    濃度を0.01質量%以下まで脱炭した後、該溶鋼にT
    iを添加して脱酸し、その後Ndを添加した溶鋼を鋳造
    することを特徴とする低炭素薄鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 低炭素薄鋼板の製造方法において、真空
    脱ガス処理により炭素濃度を0.01質量%以下まで脱
    炭した後、該溶鋼にTiを添加して脱酸し、その後Nd
    を添加した溶鋼を鋳造することを特徴とする低炭素薄鋼
    板の製造方法。
  3. 【請求項3】 低炭素薄鋼板の製造方法において、炭素
    濃度を0.01質量%以下まで脱炭した後、該溶鋼に
    0.005質量%以上のTiを添加して脱酸し、その後
    Ndを添加した溶鋼を鋳造することを特徴とする低炭素
    薄鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 低炭素薄鋼板の製造方法において、真空
    脱ガス処理により炭素濃度を0.01質量%以下まで脱
    炭した後、該溶鋼に0.005質量%以上のTiを添加
    して脱酸し、その後Ndを添加した溶鋼を鋳造すること
    を特徴とする低炭素薄鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 低炭素薄鋼板の製造方法において、炭素
    濃度を0.01質量%以下まで脱炭した後、該溶鋼に
    0.005質量%以上のTiを添加して脱酸し、その後
    Ndを0.0001質量%以上0.01質量%以下添加
    した溶鋼を鋳造することを特徴とする低炭素薄鋼板の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 低炭素薄鋼板の製造方法において、真空
    脱ガス処理により炭素濃度を0.01質量%以下まで脱
    炭した後、該溶鋼に0.005質量%以上のTiを添加
    して脱酸し、その後Ndを0.0001質量%以上0.
    01質量%以下添加した溶鋼を鋳造することを特徴とす
    る低炭素薄鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1から6の何れかの方法で鋳造し
    て得られた低炭素薄鋼板の鋳片において、直径0.5か
    ら30μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範囲内
    に1000個/cm2以上100000個/cm2未満分散し
    ていることを特徴とする鋳片。
  8. 【請求項8】 請求項1から6の何れかの方法で鋳造し
    て得られた低炭素薄鋼板の鋳片において、直径0.5か
    ら30μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範囲内
    に1000個/cm2以上100000個/cm2未満分散
    し、且つその60%以上がNdを含んだ球状酸化物であ
    ることを特徴とする鋳片。
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